奴隷少女「ごしゅじんさまに、なって」人狼「断る」〈その4〉
自分達を殺そうとする魔祓いと対峙するも、絶体絶命の危機を迎えてしまう人狼。人狼が取った手段は、彼自身にとっても危険な禁じ手だった。
引き換えに理性を無くした彼の遠吠えを聞き、一旦は奴隷少女と共に奔走を図っていた魔猫は、人狼の元へ引き返すことに。
一方、人狼を連れ戻すまでの間 その場で待機を言い渡された奴隷少女は、魔猫の態度に昔を思いだし、『いい子でいないと、嫌われて捨てられてしまうのでは』という不安を抱く。そして、そこにやって来た神使(←新キャラ。不審人物)が、奴隷少女を連れ去ろうとするのだった。
魔祓い「↓しょっぱなから、私が人狼をいたぶってるので苦手な人は注意してくれ」
人狼「……」
~~~スラム北区・ミドロ川沿い~~~
ダガー ――シュンッ!
人狼(っ、うおっ!)サッ
魔祓い「――……ふふ、コレで三本。避けるのだけは巧いな」ニヤ…
人狼「ヴルルルル……」(ふざけんなこの……!)ヒョコヒョコッ
魔祓い「私はまどろっこしいのは嫌いだ。が――……貴様をじっくりなぶるのだけは本当に楽しいなっ?」ニマ…
――リィン! シュッ
人狼「!」(っ、良い趣味しやがって……!)〈避け〉
ダガー ――耳元ヒュンッ
魔祓い リインッ「――と、これもオマケしてやろう」シュシュッ
人狼(な!? 間に合わな――)
ダガー ――ザクッサクッ
人狼「っ、ギャイッ!!」(うあ゛っ……! ……ッ、背中に……!)ポタポタッ……
? 《――ロシタィ……コロシタ――》
人狼(――うっ《狼》。……魔祓い(あっち)もアレだが、こっちもやべぇな……くっそ……)
魔祓い「ふふ。……そうだ、ただ当てるだけというのもつまらないな?〈唇に人指し指を当て〉……尻尾 十点、胴体 二十点、前足・後足 四十点、頭 五十点、……後は目玉で百点は、どうだろう?」ヘラッ
? 《――チ……、チ! コロシタィ……コロシタィ……チガ……ホシ……》
人狼「! クーンクーン……」(や、ば、い……。本格的に、『喰い』にきた……)
? 《――~~コロシタィィィ……》
人狼(~~っ、ダメだ! 殺さないぞ!)
人狼(くそ……。早く……しねェと……。確かにこの姿――)
〈チラッと後足の傷を見て〉
(――人型で立つより早く動けるが、魔祓い(コイツ)を餌食にするわけにはいカねぇぞ……!)アセ…
人狼(ッ、もう時間が無い。一か八か――『喰われる』前に、アイツから逃げ切って元に戻らねぇと……!)
――ダッ!〈←後足引きずりながら〉
魔祓い「! なぁ、おい、何処へいく? 背を向かれては、目を狙えないじゃないか」リィン!
魔祓い ――シュタッ
「私はここで貴様をいたぶりたいのだが……?」〈人狼の眼前着地〉
人狼「!!」
人狼「~~ヴルルルル……!」(こ、の、人の気も知らズに――!)バッ
人狼(ドけ! 【アッシュクロウ】!!)
――ザンッ!
魔祓い リィン…!〈距離をとり〉
「…っ! っと……」タラー……
魔祓い ジロッ「……よくもやってくれたな。窮鼠猫を噛むという、が……ハッ、鼠にしては不細工すぎるか?」〈腕から溢れる血を抑えながら〉ポタッポタッ…
? ザワッ《!! チ……!》
人狼(――新シイ血だ……ッ!)ゾクッ ウットリ
人狼 「! ヴ?!」ハッ!
(……ダ、ダメだ、呑まれるな呑まれるな!!)ブンブン
? 《――チ……チ……! コロシタィ……コロシタィ! コロシタィィィ……!!》ザワザワザワ…
人狼(コロし……だ、ダメだ! なニを考えて)
人狼「ク…クーンクーンクーン!」
人狼「クーン……!」(……嫌だ、嫌だ呑まれるのは……! 抑えろ人狼、このオンナを殺したラ、俺、ハ、俺は最後の贖(あがな)いまデ…………!)
魔祓い「――ふふ、何だ? お前らしくもないな、怯えてるのか……? 心配は無用だぞ?」シュリンッ……
魔祓い「あの魔物と奴隷をお前の目の前で殺すまで……死なない程度に痛い目を見て貰うだけさ。……ふふ、大丈夫、また会える。ちゃんと『唾』はつけてあるからな!」リィン! シュシュッ!
ダガー ――ダンダン!!
人狼「ッキャイン!?!」ビクンッ
魔祓い「四十×ニ……! ……縫い付けた」ニヤァ
? 《――……ィィィタイイタイッ、アイツ ジャマ、ジャマコロシタィコロシタィコロシタィ!》
人狼(! 痛、痛イ……! 抑、えろ、呑マれるな呑まレ――)
ジワッ…〈足元に滲み出す血〉
人狼〈! あー、デモ、血……血ダ……!〉ゾクゾクッ
? 《――モット、チ……コロシタィ、アイツジャマ、コロシタィコロシタィ……》ザワザワザワ……
人狼〈……殺、シタイ……? ナラ殺セバ良イいィィいいやダメだ! 正気を保てこわい嫌ダ イヤ殺シタい ダメダ ダメ殺シタイ殺シタイ殺シタイ? 殺シタイ?……――何でダメ……?〉
人狼「……?」首カクン
〈? ア……ア? 何がダメ? 何がダメなンダッケ? …………。……ハハッ、デモ、アッチコッチに血ダ……! ……デも、デモ ダメだ。何でダメだ。ああ、だケド、前ニ……立っテル アイツ、八ツ裂いタラ……モット……〉ゾクゾクゾクッ
――リィン! シュン!
――サクッ!
人狼「――ギャインッ?!」
魔祓い「楽しいな人狼? ――百点だぞ」シャリンッ ニマッ
――ボタボタッ
人狼「……ヴ……」〈……ソウダ、……ソゥ……〉
――――人狼の頬に、ぬるいものが流れる。
――――それは彼の命の雫で、ある意味では『火花』、だった。
――――何故ならその瞬間から痛みも葛藤も、人狼は感じていなかったからだ。
――――かろうじてとどまっていた彼の理性は、この火花が生んだ爆発に大きく削ぎ取られ、その瞬間、深層心理の奥深くにうずもれてしまった。
――――今の人狼が思うのは、ただ、一つきり。
人狼 ゾクゾクッ《――――……ソウダ、血! 殺ソう! 血ヲ! ゼンぶ壊しシタラ良ィ!!!》
――――ブワワッッ……!!
魔祓い「っ?! なっ?! 何だこの魔力……!! さっきとは段違い……」
人狼 スッ…
『――ルゥゥオオオオオォォォォーーーーーーーーーーン!!!!』〈喉を反らせ天を向き〉
魔祓い ビクッ「!」
魔祓い「何だ……貴様なにをして?!」
人狼 ザッ…、グッ……
――ッブチブチブチ……!〈両前足のダガーの束縛から、肉ごと断ち裂いて離れる〉
人狼 ――ダンッ!
……バタバタバタッ!〈←身震い〉
《コイツ、殺ス! ハハッ、殺ス……!!》ザワザワ…!!
魔祓い リィン…「は、……はは……。なんだこのオーラは。……甘く見ていた……」〈僅かに焦りの表情〉
人狼 『ヴルルル……』――ギロリ ザワザワ…!
魔祓い「っ!」
人狼『……ガルルルッ……!!!』ダッ!!
魔祓い「っ!」リィイイィンッ!!――――
~~~魔猫疾走中~~~
奴隷少女「――って、ぎゅって、してくれた」
魔猫『ふっふーん? あのトウヘンボクがそこまでするとは……』ニマ
魔猫『やっぱり人狼、奴隷少女ちゃんの事すごく気に入ってるわ…………さて。〈ピタッ〉ここまで来れば魔祓いも簡単には追いつかないわね。……奴隷少女ちゃん、降りて貰える?』
奴隷少女「……。う……? わかったの」モゾモゾ…ストン
魔猫 ――ボボッ、シュルルル……〈縮〉
魔猫「……さて、人の気配も多くなって来たし、ここからは歩いて行くわよ。」
奴隷少女「ん……」コクリ
テクテク…
〈ややあって〉
奴隷少女 テクテク…「……きに、いってる……?」ボソッ
魔猫 トテトテ…「……ん? 何か言ったかしら?」
奴隷少女「ホントかな、まねこ? ホントにそうなのかな……?」
魔猫「やだ、もしかしてずっと考えてたのかしら。 ……嬉しくないの、奴隷少女ちゃんは?」
奴隷少女「だって じんろー、あたしが ついて くるのは ダメって、いやがってたの……。だから、あたしの こと、ホントは きっと キライなの」シュン
魔猫「……」トコトコトコ…〈また何か考えるような間〉
魔猫「ねえ奴隷少女ちゃん?」
奴隷少女「? なあに?」
魔猫 スッ〈徐に奴隷少女を見上げて〉「コレだけは聞いて?」ピタッ
魔猫「アナタが一緒に来るのを嫌がったのは、人狼が奴隷少女ちゃんのコト、嫌いだからじゃないわ」
奴隷少女「……う? そうじゃないの……?」
魔猫〈口を開きかけ、〉
――――ルゥオオオオォォォォーーーーーーーーーーン……
魔猫 「――?!」……ビクッ!
奴隷少女「? ? どうしたの まねこ」〈←魔猫とは聴力が違うので聞こえず〉
魔猫「人狼の、遠吠え……」〈茫然〉
奴隷少女「まねこ……?」首カクン
魔猫「あのバカ…! なんて事してるのよ……!!」
奴隷少女 オドオド…「ま、まねこ どうしたの? じんろー? なにか あったの?」
魔猫「ごめんなさい、詳しくは後で!」キッパリ
奴隷少女「え? え?!」キョドキョド
魔猫「緊急事態なの! ここで待ってて。大丈夫、ちゃんと戻るから」
奴隷少女「え? ま、なんで まねこ――」
魔猫 ボボッ…「【チェンジバーン】!』ブワッ…!
奴隷少女「ひゃ!」
奴隷少女「ま、まねこ、なんで? まって あたしも――!」
魔猫 ザリッ〈舐め〉奴隷少女「ひゃ?!」ビクッ
魔猫『ご免なさい無理よ。アナタを護りきれるかどうか解らないの。連れてけないわ』ニコ…
奴隷少女〈手を伸ばしかけ〉「あ、」
〈奴隷少女フラッシュバック〉
奴隷男〈拒絶の笑み〉「――それは無理だ。じゃあな。達者で暮らせよ――」クルッ、スタスタ……
――――――
奴隷少女「!」
魔猫『――また後でね! いい子で待ってるのよ!』クルッ、シュダダッ……
奴隷少女「うん、わかったの」コクリ
奴隷少女「…………。」ポツン…
「わかったの……」〈不安げに〉
~~~スラム北区・ミドロ川沿い~~~
人狼『――ガルルル……ガウッ、ガウ!!』ザッ
魔祓い「っ?!」リインッ! バッ!
人狼 ――ズオッ!〈←爪から斬撃〉
――ザンッ!
魔祓い 「! うぁ!?」ボタボタッ!
(?! 脇腹にっ……!)リインッ、スタッ…
魔祓い(くっ……。さっきから一撃が重い……! コイツとは何戦と殺りあったが、こんなのは初めてだ! な、何なんだ一体……!)アセッ
人狼『ヴルルルル……』ジリ…
魔祓い「!」
魔祓い ――シュリンッ
「――くそ、死ね……!」リインッ シャシャシャシャッ…!
人狼『――』シュン!
ダガー ――ズダダダンッ…〈空を切り地面に刺さる〉
魔祓い「……なっ?! 消えっ……!?」
太陽 ――チラチラッッ
魔祓い バッ (?! 頭上に影――?!)
人狼『――グオオオ……!!』〈太陽を背中にして〉
魔祓い「くっ、眩し…!!」リインッ シャシャシャッ!〈←当てずっぽう〉
ダガー ――ドスドスドスッ!
魔祓い(! よし! 腹に刺さ――――!)
人狼 イラッ…ギロッ
『~~グルオオォォォォーー!』牙グワッ
魔祓い「な、なんだと!?」リン…
人狼『グオォン!!』ザシュッ
魔祓い「っ、あっ!?」プシッ…〈頸動脈を掠める〉
(! ぐっ……、も、もう少し深かったら……)
人狼『グァオオォォォ!!』〈その一瞬の怯みを見逃さず〉
魔祓い ハッ「?! しまっ……」
……ドタッ、シャリーーン…
人狼『……グルルルルル……』ノスッ〈魔祓いの上〉
魔祓い「っ!?」(しまっ……転んだ弾みに武器も……!)
人狼『グ、ルルるるル! グルルルルル……!!』
魔祓い「……どうしてだ? どうして! 私の全てを奪った、お前ばかりがああぁぁぁ!!」ジタバタ
人狼 ピクッ〈~~――だ、ダメ殺――な……抑――〉『ヴ、るる……?!」
〈一瞬だけ、目に光が戻った……かに見えるも〉
人狼『――……ゥ……。グァオオオオオオオオオオ……!!』グワッ
――ガブッ……!
魔祓い「っ、ッ゛あ゛ああ゛あ゛ああ゛あぁぁぁ゛ぁ……!」
魔猫『――――こっのっ、大バカ犬があぁあああ……!!!』シュダダダダダダッ!!!
人狼 ピクッ!
魔猫『――うにゃあぁぁああ!!』――ドーンッ!〈体当たり〉
人狼『グォオオ!』
魔猫 バッ
魔猫『続いて喰らえ、閃光目眩し!』ボボッ……
魔猫『――【セント・アルバ・フラッシュ】!!』
――ピカーーッ!!
人狼『グルォ――?!』
人狼『……フッ、ガフッ……?!?!』〈光線直視で前後不覚・錯乱〉
魔猫『――い、ま、だぁぁぁああ!!!!』ダッ!
魔猫『技名無し! とにかくのし掛かりぃ!!』ピョーン、ドスッ!!
人狼『ッ、?!〈ドサッ〉 ――グオオオオオ!! グルオオォォォン!!』ジタバタ
魔猫『ッ、ッ、もう、暴、れ、ないで人狼っ!! ――ホント、なに考えてるのよ?! 『次』の夜明けまで、ッ、戻らないつもり?!』〈どうにか押さえつけながら〉
魔猫『変身がまだ、新月にもなる前、でッ、今が昼間だったから私でも、ッ、押さえていられるけどっ……!』
魔猫 ハッ『っ、そうよ、魔祓いはっ?!』チラッ
魔祓い「」〈意識混濁〉
魔猫『……胸は、動いてる。息はある、ッ、みたいだけど、血まみれだし、気を失ったのかしら……。どっかで手加減したのね、人狼?』ジッ〈目を細めて〉
人狼『グルォォォォ!! ガフッ、グオオオォォン!!』ジタバタバタ…
魔猫『っ、だから、暴れ、ないで!!』
魔猫『……ッ、こんな、役目ッ、本当は嫌だけど……、私しかッ、いないのよねえ……』バッ、ギュッ…モフ〈羽交い締め〉
人狼『グルルルォォオオッ!! ヴルルル! ガウオオオオオオ!!』
魔猫 ボボッ…『酷い怪我……。……でも、いいわね、人狼……? あんたが暴走した時のための約束通り、『火炙りの刑』。少し失神して貰うわよ……?』ボボボッ!
魔猫『……業炎、【ブルー・カロル】!!』ブワッ……――――
~~~スラム北区外れ・奴隷少女サイド~~~
奴隷少女 「…………」ポツン〈←体育座り〉
奴隷少女(――いいこに して なきゃ、ダメだわ。ちゃんと まって なきゃ……)
奴隷少女(……あの どれいおとこの おにいちゃんも、ずっと やさしかった けど、ホントは あたしの こと、じゃまに おもってたの。きっと そうなの。だから、つれてって くれなかった……)
奴隷少女 ギュ「……じゃまに ならないように しなきゃ。いいこに して ないと、きっと また きらわれちゃう……」ジャラッ…
? ザッ「……ごきげんよう。失礼ですが、お嬢さんは奴隷の子供ですね?」
奴隷少女 「ひっ?!」ビクッ
?「あ……嗚呼、嗚呼、そんなに怯えずとも!」アセッ
奴隷少女「お、おにいさん だれ?! ひどいことする?」ビクビクッ
? アセアセッ「い、いえ、そんなことしませんよ! 自分は旅の僧侶ですが、今は都市の西端にある救貧院(きゅうひんいん)で、貧しい方々のお世話をする手伝いをしています、神使と申します」
奴隷少女「し、しんし?」ビクビク
? 改め神使「はい、巡礼の聖職者です。そんなお嬢さんは……奴隷……いえ、元・奴隷とも言うべきでしょうね。あの奴隷商人の処から逃げていらした棄民《ペルデドル》なのでしょう? 記録では、あの奴隷倉庫にいた奴隷のほとんどがそうでしたから」眼鏡クイッ
奴隷少女「ペルデ、ドル……」ビクッ
(その、ことばは……)
奴隷少女「……こ、この まちの ひと、みんなあたしを、どれいで ペルデドル だって にらんだり、おこったり なぐったりする……あの、おんなのひとも……」ビクビク
「でも、なんでなのかずっとわかんない。ペルデドルってなに? おにいさんも、なぐるんでしょ……?」
神使「ち、違います、何度も言いますが、誓ってそんなことはしませんよ!」ブンブン
奴隷少女 ビクビク…
神使「信じてください、酷い事はしません!〈アセ〉……ですが、貴女は奴隷に身をやつしながら、自分が何なのか、しらないのですか……?」
奴隷少女「?? あ、あたしは、どれいしょうじょなの……」ビクビク…
神使「そうですか、奴隷少女さんというお名前なのですね。……ですが、これは名前の話ではありません」
奴隷少女「??」(´・ω・`)
神使「いいでしょう。棄民《ペルデドル》というのは、古い昔に戦がもとで祖国から棄てられ、ついにはその祖国すら喪ってしまった民を称する名です。国ある民達からは、従属を持たない、まつろわぬ者として蔑まれています。そして棄民は、一度奴隷に堕ちてしまえば他の奴隷とさえ区別されて、胸に……焼き印を押される……。〈心臓の辺りを指しながら〉貴女はその子孫、というわけですね……」
奴隷少女「……。これ、のコト……?」襟グイッ
神使「そ、それです!〈コクコク!〉 ……ですが、あまり進んで他人に見せるものではないですよ?」
奴隷少女 「……ダメなの? よくないの?」オズオズ…
神使「自分は、あってはならない事だと思います。ですが棄民《ペルデドル》が、国ある民から良く思われていないのは本当です……。思想の行き過ぎた右派者は、時には彼らだけでなく、棄民を自分たちと対等に扱う、心ある方にまで差別の目を向けます……」ショボン
奴隷少女「……あたしが、ぺるでどるだから、いたら、めいわくって こと?」
神使「! い、いえ、そういう意味で言ったのでは断じてありませんよ!」アセアセブンブン
神使「それに、奴隷少女さんはもう、解放されたのですから……。さぁ、これを食べて話を聞いてください」ゴソゴソ……スッ〈背負っていたバスケットから取り出す〉
奴隷少女「!」(しろいパンのサンドイッチ!)
〈※白パン……奴隷少女でなくとも、硬く茶色い、安価なふすまパンばかり食べて暮らしているスラムの住人には、小麦の皮を含まず、柔らかい白パンはなかなかの高級食品〉
奴隷少女「く、くれるの……?」ソワソワ
神使「はい。〈ニコリ〉どうぞ? 言ったでしょう、僕は今、救貧院の手伝いをしているのです。私の役割は、寄る辺もなく、行き場の無い子をスラムから見つけ出して、院に連れていくこと。院に行けば、毎食ご飯も出ますし、食べるところも、寝る場所もあります。……一緒に、来ませんか?」ニコリ
奴隷少女 キュム…〈サンドイッチを両手で握りながら〉「…………」ジッ…
神使「? ど、どうしました?」
奴隷少女「じゃぁ、じゃあね、これ、いらないの」ズイッ
神使「えっ? ど、どうしてですか……?」〈すごく意外そうに〉
奴隷少女「たべたら、ついてかなきゃなら、いらないの」
神使「ええ? でもこれは、貴女にも悪い話では――」
奴隷少女「あ、あたし、どこにも いかないっ!!」ビクビク!
奴隷少女「ぺるでどるでも、ふたりはそのコトしらないし、ここで、まって なきゃ、いいこに してなきゃ、きらわれ、ちゃうの……! あたし、いっしょに いたいし、きらわれたくないの!」プルプル…
神使「……」ポカン
神使「……ええと、良くわからないですがつまり、どなたかお連れ様を待っているのですか?」
奴隷少女 プルプル…「…………」コクン、ジャラリ
神使「……ですが、ならその……格好は……、」チラ
ポソッ「……鎖枷に麻袋の服のまま――。解き放たれたと思ったら再び奴隷、ですか……。変化を望んで差別の逆棘(さかとげ)に立ち向かうより、あるいはその方が幸せ、と思うのかもしれませんね……」〈憐憫〉
奴隷少女「……?」
神使「い、いえ、なんでもありません!〈ニコリ〉もう新しい御主人をお待ちなら、それはそれで良いのです」〈若干気落ちした声〉
神使「……貴女の今の御主人さまは、優しいですか?」ニコリ
奴隷少女 ビクビク「……。やさしいの」コクリ
奴隷少女「でも、でも、ごしゅじんさまか どうかは、わかんない。いっしょに いたい から、ごしゅじんさまに なって って おねがい した けど、ダメって、いうし、でも あたしの コト なぐらないし、ころされ そうに なったら、ふたりとも あたしの コト まもって くれたし、あたし、じんろーのこともまね――」
(……!)ハッ
奴隷少女(……そうだった、じんろーは、じんろーぞくって バレたら たいへん なん だった……。まねこも、マモノって わかったら ころされ ちゃう……)
神使「?? じ、ジンローさん? どこかで聞いたことがあるような無いような……、変わったお名前ですね……? ……それにそのお連れ様との関係、どうも、自分が思っていたより複雑そうなんですが一体……」
奴隷少女「?! ふぇ、ひゃい!? え、ええっと、えっとね……?」アワアワオドオド
――ボボッ「――奴隷少女ちゃん……!!」
奴隷少女 ビクッ「?!」(やねの うえから まねこの こえ……!)
魔猫 「――奴隷少女ちゃ……って、〈ハッ〉げ?! 人げ……!?」
神使「?! え? 今、上から声が……」クイッ〈上向く〉
奴隷少女 「っ、っ!!」アワアワアワ……
奴隷少女(ど、どうしよどうしよどうしよどうしよ……!?@@)
「え……、えいっ!>< みぞおち ぱんち!」ドムッ!〈混乱〉
神使「う、うげぇっ?!!」オエッ
神使「――ゲ、ゲェホッ、ゲホッ、ゲホッ……オウッ……、い、イキナリなにするんですか!?」
奴隷少女「ひゃ?!」〈←我にかえる〉「……ご……ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ゆるして! ゆるして! だからなぐらないで!!!」ジャラッ〈頭抱えて縮こまる〉
神使「え? い、いや、それじゃあ、まるで私が悪者のような……」アセッ
――トテトテトテッ!
魔猫(※小)「ニャーー!!」(奴隷少女ちゃん!?)
神使「お、おや? 向こうの角から猫が……」クルッ
魔猫 タタタッ
奴隷少女「あ! まね――」
魔猫「フシャーーー!!」(なに奴隷少女ちゃんを怯えさせてるのよ! この青海教会の狗が!!!)――バリバリッ!〈引っ掻き〉
神使「うひゃっ?! 痛ーーっ!!」ギャー!
奴隷少女「ま――」 (! ホントの なまえ はだしちゃ ダメ――)
魔猫「フーー、フーー!!」ギロギロ
奴隷少女「ま、ママ!! あたしは だいじょうぶ だから!!」
魔猫「……ニ゛ャ?!」(は?! ママ?!)
神使「え?」
――ダキッ、ギュッ!
奴隷少女 「――ママ、ママ。だから、しんしさんに おこらないで!!」(棒)
魔猫 ヒソッ「ま、ママって奴隷少女ちゃん……」キョドキョド…
奴隷少女 ヒソヒソモフッ「だ、だって、まねこも じんろーも、ほんとは なんなのか バレちゃ ダメなんでしょ……?」
魔猫「そ、それはそうだけど……。ていうか神使って……あの鯨の紋章のぶら下がった数珠、どうみても青海教会の聖職者よ……? なんでアナタと一緒に……?」ヒソヒソ
奴隷少女「よ、よく わかんない、けど、あたしを ね、きゅうひんいん? て トコに いかないかって……」
魔猫「……ふふん? 偽善ね。やっぱり教会の人間なんて、私はキライだわ」
神使「? ?」(ね、猫相手になにを話しかけてるんでしょう……? でも、猫に『ママ』……、余程愛に飢えた生活をしていたんでしょうね……可哀想に……)(´・c_・`)
奴隷少女「?? ギゼンてなあに?」
魔猫「何でもないわ。それより、……じんろーは向こうの角の物陰よ。一緒に連れてきたの。案内するから、下ろしてくれないかしら?」ヒソヒソ
奴隷少女 ヒソッ「! わかったの」
魔猫 ピョインッ…トテトテッ
魔猫 …クルッ「ニャー!」 (こっちよ!)
奴隷少女「ん! 待ってママ!」タタタッ ジャラジャラッ
神使「ど、奴隷少女さん? 待ってください、ママって……その猫は貴女の飼い猫なんですかー?!」ダダッ
奴隷少女 タタタタッ、ジャラジャラッ
「……しんし、ついてくるの」ボソッ
魔猫「大丈夫。バレそうになったら……私がどうにでもするわよ」ニマッ〈若干凶悪な笑み〉
奴隷少女「?」
奴隷少女 ジャラジャラジャラッ……「じん……、ッ、おにーさん! おにーさんだいじょう――」
ジャラジャラッ〈角曲がる〉「……え」
奴隷少女 ポソッ…「じん、ろ……?」〈絶句〉
人狼「」〈←黒焦げでぶっ倒れてる〉
奴隷少女 ジャラッ、ヨロヨロ…「なん、でこんな……? まばらいと、なにがあったの……」
魔猫「…………」〈意味深な沈黙〉
神使「……ハアハア、奴隷少女さん、一体どうし……」〈追い付く〉
神使「?〈スンスン…〉 な、なんですか、この、肉と毛の焦げるような臭い」クルッ
神使「……!? こ、この方は!?」〈人狼の容態を目にして〉
魔猫 「っ!?」
(と、とりあえず、人狼の耳だけはバレないように隠してないと……)モフッ
〈魔猫、胴体で彼の頭に覆い被さる〉
奴隷少女「」〈呆然〉
神使「……ど、奴隷少女さん、この方が、貴方のお連れ様なんですか? ……なにやら貴女の猫が頭に乗っかってますけど」
奴隷少女「…………。」
神使「奴隷少女さん??」
魔猫 「――ニャー!!」(少女ちゃん返事して!)
奴隷少女「ハッ ……う、うん!」コクリ
神使 ザッ〈歩み寄って〉「そうですか。…………、それにしてもこれは、酷い火傷です……。早く手当てしないとこれは、死んでしまう……」
奴隷少女 「!」ピクッ
奴隷少女「……し(死)、ん……。 ――しんし……、この ひと、しんじゃうの……?」〈不安の目〉
神使「……い、いえ、それは……」アセ…
神使 …グッ「……それは神様のみがご存知ですよ。ですが、この方の魂はまだここに在ります。――出来うる限りの手当てを、しましょう」
奴隷少女「! おにーさんのこと、た、たすけてくれるの?!」
魔猫「!」ピクッ、モフッ〈覆い被さったまま首を上げ〉
神使「手伝っていただけますか?」
奴隷少女「!」
魔猫 ジッ…〈うろんげに神使を見つめ〉「……」
奴隷少女「う、うん!」コクコク!
魔猫「ニ゛ャー!」
――――そして神使と彼の呼んできた応援に運ばれ、人狼を連れた奴隷少女と魔猫らの物語は、舞台を路地裏から、スラム東区・ゲート周辺へと移す。
――――この地域は、掃き溜めのようなスラムの中にあっても比較的治安が良く、商店も多く立ち並ぶ地区だ。
――――神使の逗留している救貧院もこの場所にあり、運び込まれた人狼は、ここで彼の客人として、手当てを受ける事になるのだった。
いつも応援、評価、わりとマジでありがとうございます!(*´ω`*)
どなた様かわかりませんが、本当励みになりますん! 心をこめてちゅっちゅしたいですちゅっちゅ(※作者は粛清されました)
……つっ、続きも勿論書きますのでお待ちくださいませ!(*°ω°*)クワッ
続き、続きはよ ウオオオオオオ