奴隷少女「ごしゅじんさまに、なって」人狼「断る」〈その1〉
※このSSは一話区切りで投稿していきます。
【これからのあらすじ(一話終わり辺りまで)】
奴隷少女は、主の処刑と共に、ある日唐突に檻から解放された。しかし、幼い彼女に既に親は無く、仲間すらいない。
生きる為に盗みを働き、餓えをしのぐ日々。そんな中、奴隷少女は衰弱した、傷だらけの男を助けた。だか男は人狼で、魔払いに命を狙われている。
それでも寄る辺のない彼女は、自分に優しくしてくれる人狼に懐くが……。
役人頭「――ついに捕らえたぞ! 王陛下に逆らう国賊め!」
奴隷商人「ひ、ひいいい! い、命ばかりは……!!」ガクブル〈ぶよぶよの両手を擦り合わせながら〉
役人頭「残念ながら既に、貴様の死は王陛下の勅命による決定事項だ。……剣を抜け」
役人A・B「「はっ!」」スラァ…!
奴隷商人「さ、裁判すら許されないのですか……?!」
役人頭「……お前の悪行の証人は掃いて捨てるほどいるのだ。よって事実の確認は、死んだお前の記憶を魔術で抜き出すだけで十分事足りる。処刑の令は、ここに賜った王陛下よりの勅令にも記されている」
役人頭 カサッ「……《罪人である奴隷商人××××は、各領の領主の貴族を次々と浚った。罪人は、彼らを隣国に売り払い、敵国であるところの隣国と姦通し、私腹を肥やしている。(中略)……その罪、万死に値する》」
奴隷商人「ひいいぃ……!」ガクブルガクブル…
役人頭「《よって捕らえ次第、粛清せよ。世界歴2795年 竜月某日 青海国聖王アンヘラド(以下無駄に長い名前)の御名において命ずる》……以上だ」スッ
役人A・B「…」スチャッ
役人頭「では刑を執行する。何か言い遺すことは」
奴隷商人 ジョワアアァ「ひっ、ど、どうかお助け、」
役人頭「……やれ」サッ
役人A・B「…」ザンッ!
奴隷商人「ぐぼっ」ベチャッ…
奴隷商人「」
檻の中の奴隷たち『…………』ザワザワ…ブルブル…
奴隷少女「…………」〈同じく、檻の中から〉
〈※ちなみに奴隷少女は、髪は乾いた血のような色、目は黒、ガリガリに痩せ、見た目は7~8歳程度、です〉
役人頭「さて…」クルッ
奴隷A「ヒッ、こっち見た」ビクッ
役人頭「檻の解放は進んだか?」
役人A「はい、既にあらかた」
役人頭「では撤収だ。こんなゴミ溜めのような、汚物臭い場所には一秒とて居たくない。死骸の輸送準備が整いしだい出立だ!」
役人たち『ハッッ!!』
奴隷たち ザワザワ「……お、俺達一体どうなるんだ…」「解放って…自由なのか…?」ビクビクザワザワ…
奴隷少女「…」ジー
奴隷少女「…」テクテクジャラジャラ
奴隷少女「……おやくにんさま」ビクビク
役人頭「…〈無視、あるいは眼中にない〉」
奴隷少女「……おやくにんさま!!」袖クイッ
役人頭「ッ!?」バッ〈反射的に振り払う〉
役人頭「汚らわしい手で俺に触れるな! 《棄民(ペルデドル)》のゴミ娘が!」〈激怒〉
奴隷少女「……あ、あの! あたしは、どうすればいいのっ?!」ビクビク
役人頭「っ? どこへなりとも失せろ! お前らは貴族の方々とは違うのだ、檻を開けてやっただけありがたいと思え!」
奴隷少女「……どこ、にでも……。あたし、すきにしていいの?」
役人頭「そういうことだ」イライラ
奴隷少女「……じゃ、じゃあ、おやくにんさま、あたしをかっ」 役人頭「お前のような汚らわしい物を手元に置く趣味はない」(速答)
奴隷少女「でも、おやくにんさま、」〈怯えながらも必死〉 役人頭「黙れ。それ以上口を利くならその首切り取るぞ!」カチャッ〈剣柄に手をかけ〉
奴隷少女「ひゃぁ! ご、ごめんなさいごめんなさい……!!」〈頭抱え〉
奴隷たち『ザワッ』
役人B「――役人頭さま? 輸送の手筈、すべて整いました」
役人頭「……」ジロリ
役人頭「チッ。〈クルッ〉……ああ、Bわかった、すぐ行こう」サッ
奴隷少女「あっ……」
奴隷少女(まって、いっちゃ……!)
タタタッ
奴隷男〈肩パシッ〉「おいやめろ少女! 役人の機嫌を損ねて命がある分、ありがたいんだぞ、深追いはよせよ……!」ヒソッ
奴隷少女「でも……でも、そしたらあたしは どうすれば いいの」
奴隷男「……」
奴隷男「知らないね」
奴隷少女「うう……じゃあ、おにいちゃん、いっしょに いってもいい……?」
奴隷男「……」
奴隷男(……こいつ、いつも俺に引っ付いてくるけど。……正直鬱陶しいんだよな……)「チッ…」
奴隷男「……前から言ってるだろ少女。自分の事は自分でやれ。頼ってもいいけど甘えるなって」
ニコッ〈拒絶の笑み〉「だから……それは無理だ。じゃあな。達者で暮らせよ少女」クルッ、スタスタ
奴隷少女「あ……。ま……」〈手を伸ばしかけて〉
奴隷少女「…………。」
奴隷少女「……じゃあね……」ションボリ
――――そして、当世切っての国賊、『奴隷商人』が捕らえられ、処されたと言う報せは、その日の内に国中を駆け抜ける。
――――人々は胸を撫で下ろし、特に上流階級の者らの喜びはひとしおだった。
――――だが一方、商人が殺された地……国境線の地方都市、その西端に位置するスラムには、彼の『商品』だった多くの者が解き放たれる。
――――行き場のない彼らはスラムに留まり、界隈ではこの奴隷たちの存在が、治安維持上での大きな問題として取り沙汰されるようになっていった……。
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