ただの空母でない
今度こそ彼女に活躍の機会を・・・ってことで書き始めました。
時代が時代だったとは言え私の運命は大して良くは無かった。
建造は終わらなかったしまともな戦いに出たこともない。
最期には自沈したがそれでもなお辱めを受けた。
無理やり引き上げられ標的艦とされた。
こんな思いをするならば生まれたくは無かった。
もし、また生を与えられる機会があるとするならばもう少し人並みに生きてみたいものだ。
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?「ん・・・ここは?」
気がつくと私は見たこともない所に立っていた。
立っていた?
私は船だぞ?
それにこの服はなんだ。
まるで人間のようではないか。
?「ん・・・この色、形は。」
見覚えがある。
いや、これは私自身だ。
腰に装着されてある鉄の塊と左手に見える甲板はまさしく航空母艦としての彼女の躯体だ。
?「いやいや、私は私だ。となるとこれは・・・?全く不思議なものだな。」
#「そこに誰か居るのですか?」
目の前にあるドアのノブが回り中へ入ってくる。
#「もう、建造ドックには勝手に入っては・・・って、貴女誰ですか!?」
腰にまで伸びる長く美しい髪とメガネが良く似合う可愛らしい女の子が目を点にしている。
?(この丸みを帯びた言語は・・・盟友の日本人か。一先ず助かったか・・・。)
?「Schön dich zu treffen. Ich bin Graf Zeppelin.」
#「えっ、英語!? え~っと・・・Nice to meet you, My name is Oyodo,where are you from?」
?(英語だと・・・!英語はからっきしだ・・・。だが顔は日本人のようだが・・・。)
?「あー・・・私は恐らくグラーフ・ツェッペリンと言う者だ。貴官は日本の将校殿であるか?」
Oyodoの肩章らしきものを見て問いかける。
Oyodo「いえ私は大淀と申しまして艦娘です・・・って日本語喋れたのですか!?」
グラーフ「まぁ少しなら喋れなくはない。」
大淀「少しってレベルじゃないですよ!・・・コホン。取り乱してすみません。グラーフさん?でしたか、貴女はここで一体何を?艤装があるという事は艦娘だと思いますが。」
グラーフ「それがさっぱり分らないのだ。気がついたらここに居た。」
大淀「気がついたら・・・。今日は建造の予定はありませんし転属命令も伺ってません・・・。」
グラーフ「となると私は正体不明の侵入者となるわけだ。捕まえるのか?」
大淀「え、いえ・・・。とりあえず提督代理の意見を聞きたいと思います。」
グラーフ「代理だと?正規のアトミラールは居ないのか?」
大淀「はい、詳しい事は後ほど説明します。それと確認なのですが。」
グラーフ「なんだ?」
大淀「身なりは艦娘なのですが私達に仇なすつもりはありませんよね?」
拳銃を額に向けられる。
グラーフ「・・・。答えはNeinだ。私自身が今置かれている立場が分らない以上貴君らの力が必要だ。そのためなら協力を惜しまないつもりだ。」
大淀「そうですか・・・。無礼を働き申し訳ありません。」
グラーフ「気にしないでくれ。私がそちらの立場だったら同じようなことをしただろう。」
大淀「そう言っていただければ助かります。館内は暗いですので足元に気をつけてください。」
グラーフ「Ja.」
大淀が先導しこの場所を後にするが、
ガン!
と金属と金属がぶつかる音が響く。
グラーフ「んあぁっ!! 何だ、被弾か!?」
艤装が壁にぶつかっただけである。
自分のものとは言え全く慣れていない。
大淀「大丈夫ですか?ここに置いていった方がよさそうですね。」
グラーフ「うむ、その進言には賛成だ。」
通路も狭くそうせざるを得ない。
艤装をドックの片隅に置き気を取り直し執務室へと向う。
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コンコンコン
大淀「提督代理、大淀他一名入ります。」
提督代理「はぁ~い。どぉ~ぞ~。」
グラーフ(日本では女性が上に立つことができるのか。)
大淀「失礼します。」
グラーフ「失礼する。なん・・・だと・・・!」
執務室の高級そうなイスに座っている少女に驚きを隠せない。
提督代理「あら~、そちらの外人さんは誰かしら。見ない顔ねぇ~。」
大淀「私にも上手く説明できないのですが建造ドックに足を運んだところお会いしました。」
提督代理「それって不法侵入じゃないのかしら~?」
大淀「まぁそういわれればそうなのですが・・・。」
グラーフ「大淀殿、それは私が説明しよう。」
大淀「はぁ・・・。」
グラーフ「申し遅れてすまない、私は恐らくグラーフ・ツェッペリンだ。」
提督代理「恐らく?それはどういうことなの?」
グラーフ「それは・・・。」
大淀に説明したことをもう一度話す。
提督代理「へぇ~、不思議なことってあるのね。」
大淀「提督代理、私が思うに俗に言われているドロップ現象の類ではないかと。」
提督代理「可能性はあるわねぇ、それに関しては私達自身でも理屈が分らないし否定できないわ。それと大淀さぁん。」
大淀「はい?」
提督代理「その提督代理って言うのやめてくれないかしら?ちょっと長いし面倒だわ。」
大淀「御命令ならば。荒潮さん。」
荒潮「♪」
グラーフ「すまない、一つ質問してもいいだろうか。」
荒潮「なぁに?」
グラーフ「貴殿がその・・・提督代理をしているのは信じられないのだが。歳はいくつなのだ?」
荒潮「あら~、女の子に歳を聞くのは御法度よ~。でも別に変なことじゃないわよ、私だって艦娘だもの。」
グラーフ「ふむ・・・度々耳にする単語なのだが艦娘とはなんだ?」
荒潮「質問は一つのはずよぉ。」
グラーフ「・・・。」
荒潮「冗談よ。艦娘と言うのは・・・。大淀さん、なんだったかしら?」
大淀「私ですか? 簡潔に説明すると人類を脅かす敵を駆逐するために存在する兵士と言ったところでしょうか。」
グラーフ「人類を?人類を脅かすのは人類ではないのか?」
荒潮「それは尤もな考えね。だけどそれ以上に驚異的な存在があるのよ。」
大淀「深海棲艦。私達はソレをこう称します。」
グラーフ「それはモンスターやエイリアンなのか?」
大淀「詳しい事は未だ解明されていません。分る事は海の底から侵攻してくることです。」
グラーフ「ふむ。」
荒潮「次から次へと湧いてきてきりがないのよ。」
グラーフ「なるほど。気になっていたのだがこの基地には男の姿が見えないようだが。」
大淀「それは何処の基地に於いても一緒です。戦闘をするのは私達ですから。」
グラーフ「日本男児は恐れを知らないと聞いていたが噂だけだったか。」
荒潮「そんなことないわよぉ。男の将校さんも先陣を切って戦っているわぁ。」
グラーフ「うん?」
大淀「ただし私が先ほどお見せした拳銃のような通常の兵器では決定打を撃てません。」
荒潮「何でかしらないけど至近距離で打ってもかすり傷程度で済んじゃうのよねぇ。」
大淀「ですからグラーフさんが装備していた艤装という物に頼らざるを得ません。」
荒潮「男の人でも使えるけれど私達ほどに完璧には扱えないのよ。」
グラーフ「だからこその艦娘と言うわけか。それともう一つ、提督代理と言うのは・・・。」
大淀「はい。前任の方が失踪したため私達が指揮を執っています。」
グラーフ「新任の方は来られないのか?」
荒潮「四方を囲まれて制海権も制空権もないのよぉ。誰が好き好んでこんな所に来たがるのかしらねぇ、ふふふ。」
グラーフ「シーメンソーカ(四面楚歌)、と言う奴か。かつての我が国のようだ。」
大淀「現在は備蓄も十分にありますし士気も高いです。当面は3日間毎の当番制で代理を務めています。」
グラーフ「そうか。それで私の処遇はどうなるのだろうか。」
大淀「本営に連絡したところ可能ならば戦力になるよう要請がありました。もちろん拒否して頂いても構いません。その場合はお客さんとして丁重におもてなしするようにと。」
グラーフ「・・・、分った。ぜひとも協力しようではないか。」
荒潮「あら、本当?嬉しいわぁ~。」
大淀「航空戦力の増強は必須でしたので大変助かります!どうぞよろしくお願い致します!」
グラーフ「こちらこそ。どれだけ力になれるか分らないが尽力しよう。」
荒潮「そうと決まれば歓迎会ねぇ。」
グラーフ「いや、そんな気を使わなくても・・・。」
大淀「グラーフさん。」
グラーフ「む。」
大淀「久しぶりのお客さんなんです。申し訳ありませんがお付き合いくださると幸いです。」
耳元で囁く。
グラーフ「・・・そうか。ではありがたくOMOTENASHIを受けようではないか。」
大淀「はい。ですがその前にグラーフさんの部屋を決めないと。」
荒潮「ここは2人部屋ばかりだけど空いているところはあったかしら?」
大淀「そうですね・・・確か萩風さんは最近の着任でまだ一人だったかと。」
荒潮「最近って言っても半年くらい前じゃなかったかしら。」
大淀「人員輸送も滞っていますからね・・・。では一度案内しますので一緒に来て下さい。」
グラーフ「ああ、了解した。」
大淀「では。」
荒潮「はぁ~い。」
二人は執務室を後にする。
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大淀「グラーフさんは着替えとか日用品は持ってないですよね?」
グラーフ「そうだな、先ほど身に着けていた艤装のみだ。」
大淀「酒保と言って便利屋さんがありますのでそこで必要なものを申請してください。在庫があれば直ぐに渡せますし無ければ来るかどうかは分りませんが発注をかけますので。」
グラーフ「わかった。」
大淀「後ほど正式な辞令が交付されますが勿論お給料も出ます。と、言いましてもここまで現金を輸送していないので本営で預かり金として管理しています。物を買うときはそこからの引き落としとなります。本土に戻れば引き出しも可能ですね。」
グラーフ「私が給金を貰ってもよいのか?」
大淀「ええ、その権利はあると思いますが何か?」
グラーフ「いや、軍艦である私が人間のような扱いを受けるなんて夢にも思わなかったからな。」
大淀「・・・一応。」
グラーフ「うん?」
大淀「一応は私達は兵士という扱いです。中にはただの船だという人も居ますけれど人間として私達に接してくれる方も多数居ます。」
グラーフ「・・・そうか。」
大淀(笑った?私、なにかおかしなことを言ったかしら・・・。)
執務室のある建屋から艦娘達が生活している寮へ移動する。
西洋建築を基礎とした趣のある建物だ。
その風格はどこか遠い祖国を髣髴させるものがある。
懐かしさを感じつつも階段を登り2階の一番奥の部屋へと案内される。
コンコンコン
大淀「大淀です、萩風さんいらっしゃいますか?」
萩風「あっ、はい!少々お待ちください。」
パタパタと小走りで自室の扉を開け敬礼する。
大淀「突然すみません。」
萩風「いえ、どうされたのですか?」
大淀「誠に勝手で申し訳ないのですが、萩風さんのルームメイトの方をお連れしました。」
萩風「ルーム・・・メイト・・・ですか?」
大淀の後ろに控えるグラーフを見つめる。
シルクのような髪と透き通るような瞳に言葉が出ない。
グラーフ「私の名はグラーフ・ツェッペリンだ。以後よろしくお願いする。」
一歩前へ動き軽く頭を下げる。
萩風「えっ、あっはい!こちりゃこしょ!」
緊張し噛む。
大淀「ふふふ♪」
萩風「あぅ・・・。」
大淀「萩風さん、重ねて申し訳ないのですが鎮守府の案内、その他諸々をお任せしても宜しいでしょうか?私は本営に提出する書類を作成したいので。」
萩風「は、はい。お任せください。」
大淀「ありがとうございます。それとグラーフさんの歓迎会を催しますので1800には食堂へ来て下さい。」
萩風「了解です。」
大淀「ではよろしくお願い致します。」
届くかどうか分らない書類を作成しに執務室へと戻る。
萩風「・・・。」
グラーフ「・・・。」
暫し無言で見つめあう。
萩風「あの・・・!」
グラーフ「すま・・・。」
今度は同時に話しかける。
グラーフ「先に。」
萩風「いえ、お先に。」
譲り合う。
グラーフ「先任が優先されるべきだ、どうぞ。」
萩風「え・・・はい。えっと、改めまして自己紹介をします。私は陽炎型駆逐艦17番艦の萩風です。よろしくお願いします。」
グラーフ「私は一応航空母艦のグラーフ・ツェッペリンだ。こちらこそよろしくお願いする。」
挨拶は大事。
どこかの本にそう書いてあった気がする。
萩風「失礼ですが外国の方・・・で合ってますか?」
グラーフ「ああ、わが祖国はDeutsches Reichだ。」
萩風「えっ。」
グラーフ「・・・あぁ。この国の言葉で言うならドイツだ。」
萩風「ドイツですか・・・。遠路遥々お疲れでしょう、とりあえずお茶にしませんか?」
グラーフ「ん、ああ頂こう。」
萩風「はい!ではお掛けになってお待ちください、直ぐに準備しますね。」
グラーフ「Danke.」
疲れてはいなかったが頭の中を整理する必要もあり少し休みたかったので正直助かる。
私自身のではないが色々な記憶が頭の中にある。
これは恐らく乗組員のものであろう。
私が人間のようにできるのはこのためなのかもしれない。
萩風「お待たせしました。」
支給品であろうか錨の絵が書いてある茶碗を差し出される。
グラーフ「ありがたい。ほう、日本の茶は緑色なのだな。」
萩風「はい。紅茶と違って発酵が浅くさっぱりとした味わいなのが特徴なんです。」
グラーフ「なるほどな、では頂こう。」
萩風「どうですか?」
グラーフ「・・・変わった味だな。香りもただの草のようだ。」
萩風「そう・・・ですか。」
シュンと落ち込む。
グラーフ「あ、いや。別に不味いわけではない、これはこれで健康によさそうだ。」
泣かせてしまったのではと思い焦る。
萩風「そうなんです!緑茶はビタミンも豊富で健康にはとっても良いんです!」
ピョンとはねたアホ毛を揺らしながら力説する。
グラーフ「そ、そうか。」
萩風「はっ・・・私ったら、すみません取り乱して・・・。」
グラーフ「気にしないでくれ。君は見ていて面白いな。」
萩風「え?」
グラーフ「感情が行動に表れていて退屈しない。」
萩風「そんなに分りやすいですか?」
心なしかアホ毛が?マークになっている気もしなくはない。
グラーフ「ああ、その分だと嘘や隠し事は苦手と見るが。」
萩風「はい、人を騙すような事は許せません。」
グラーフ「ははっ、私もだ。君とは仲良くできそうだ。改めてよろしくお願いする。」
萩風「はい!こちらこそ。」
グラーフ「世話になる身だが今日の今日でなにも準備できなくてすまない。」
萩風「そ、そんな!」
引越しそばならぬ贈り物でもと思ったが1マルクさえ持ち合わせては居ない。
グラーフ「・・・うん?」
腰にポシェットのようなものがあるのに気付く。
ボタンを外し開いてみる。
グラーフ「・・・これは。」
水色に輝く宝石がついたネックレスが出てくる。
萩風「きれい・・・。」
グラーフ「・・・ああそうか。そうだったな。」
萩風「グラーフさん?」
グラーフ「・・・なんでもない。お古ですまないがこれを君に。」
萩風「えぇ!?頂けませんよそのようなものは。」
グラーフ「やはり中古品はダメだったか・・・。」
萩風「そうじゃなくてですね、なんだかとっても大切そうな顔をしていました。」
グラーフ「私がか?まぁ大切といえば大切だが生憎私は宝石に興味は無いのだ。宝石は身に着けてこそ輝くものだ。君に使ってもらえれば私も嬉しい。押し付けがましいが受け取ってはくれないだろうか?」
萩風「でも・・・。」
グラーフ「君のような可愛い女性には似合うと思うが?」
萩風「かわっ・・・!あぅ///」
グラーフ「ん?」
こうまで言われてしまったのでは受け取らないわけには行かない。
萩風「はい・・・。ではこの萩風、謹んで頂戴します。」
グラーフ「うむ。」
立ち上がり萩風の背後に立つ。
萩風「えっと・・・。」
グラーフ「じっとしていてくれたまえ。」
首元に手を伸ばしネックレスを付ける。
萩風「///」
グラーフ「うむ、良く似合っている。」
萩風「・・・ありがとうございます///」
グラーフ「では、鎮守府(ここ)を案内してもらうとするか。18時まであと2時間もない。」
ドイツ人は時間にうるさい。
萩風「え、あっはい。ではこの萩風が責任を持って案内役を勤めさせていただきます。」フンス
グラーフ「心強いな。あぁ、その前にケンゾーウ=ドックへ行きたいな。私の艤装を置いたままだったのでな。」
萩風「建造ドックですね?分かりました、ではこちらに。」
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?「誰の艤装だろ、見たことないなぁ。飛行甲板・・・だよね?」
?「私にも装備できるかしら・・・重っ!」
小柄な彼女にはそれは扱いにくい。
?「にしても空母って凄いわよねぇ、こんなので戦闘できるんだもん。羨ましいなぁ・・・。」
?「航空軽巡洋艦にでも転換しようかしら。全航空機、発艦!・・・なんてね。」
某戦艦のように左腕を前に伸ばし格好をつけてみる。
その視線の先には口をぽかんと開けた二人が立っていた。
グラーフ「・・・。」
萩風「・・・あの・・・えっと・・・。」
?「・・・イヤァアアアアアッ!?見ないでぇ!」
両手で顔を隠ししゃがみこむ。
グラーフ「見るなといわれてもだな・・・。」
萩風「ゆ、夕張さん・・・一体何を?」
夕張「ワタシ、ナニモシテイナイ。ミマチガエネー。」
グラーフ「ふむ、私以上に片言になったな。」
夕張「ふぇぇ・・・。あれ、あなた見ない顔だけど新入りさん?」
グラーフ「ああ、航空母艦のグラーフ・ツェッペリンだ。」
夕張「ということはこれはあなたの艤装なの?」
グラーフ「そうなるな。」
夕張「ごめんなさい、勝手に触ってしまって・・・。」
グラーフ「別にかまわない。どうせ使い方が分からないのだ。」
夕張「空母の運用は苦手だけれど簡単になら教えましょうか?」
グラーフ「なに、貴殿がか?」
萩風「夕張さんは兵装長で艤装の扱い方には詳しいんです!」
夕張「まぁ私が教えられるのは基礎の基礎。訓練は同じ空母の人に教えてくれるよう頼んでおくわ。」
グラーフ「それはありがたい、ユーバリ・サンとやら感謝する。」
夕張「オッケー、任せておいて。それと私の名前は夕張。さんは要らないわ。」
グラーフ「ふむ・・・。そのさんとはなんだ?」
萩風「え~っと・・・英語にたとえるならミスターやミスが近いでしょうか。」
グラーフ「なるほど。やはり日本語は難しいな。」
夕張「そうでしょうか?ドイツ語のほうが難しいと思いますよ?」
グラーフ「そんなことはない。試しに何か単語を言ってみてくれ。」
夕張「う~ん・・・じゃあこれは?食べてみて。」
飴を差し出す。
グラーフ「Danke.旨いな・・・。」
萩風「日本語では飴またはキャンディーと言います。」
グラーフ「ドイツ語ではSüßigkeitenだ。」
夕張・萩風「・・・。」
グラーフ「?」
夕張「じゃあ、あのモニター・・・いえ、テレビは?」
グラーフ「Fernsehapparat!」ドヤッ
夕張「・・・難しいじゃないですかーヤダー!」
グラーフ・萩風「・・・。」
夕張「・・・あれ、渾身のネタだったんだけど。」
グラーフ「・・・すまない、私には早すぎたようだ。」
萩風「あはは・・・。」
夕張「伝わなかったかぁ~・・・。まぁこれは置いといて、この後時間開いてる?直ぐにでも訓練にしましょうか?」
グラーフ「いや、今はここを案内してもらっている最中だ。すまないがまた今度頼みたい。」
夕張「そうなの?じゃあ仕方ないわね。あっ、そうそう。今は岸壁のほうにいかない方がいいわよ。あの姉妹が喧嘩してるから。」
萩風「喧嘩・・・わかりました、気をつけます。」
グラーフ「血の気の多い姉妹なのか?」
夕張「そうじゃないけれど・・・仲が良い程なんとやらってことね。多分。」
グラーフ「ふむ。」
萩風「夕張さん。グラーフさんの歓迎会がありますので1800に食堂へ集合お願いしますね。」
夕張「歓迎会?久しぶりにお箸で持てるご飯が食べられるかな?わかったわ。みんなにも伝えておく。」
萩風「はい、よろしくお願いします。ではこれで。」
ペコリと一礼しここを後にする。
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グラーフ「あのユーバリとやらはいつもあんな感じなのか?」
萩風「はい、誰にでも明るく接しますしとても優しいお姉さんのみたいですね。ちなみにニックネームはメロンさんです。」
グラーフ「メロン?何故?」
萩風「夕張メロンという品種が日本にはあってそこから夕張つながりで呼ばれるようになったそうです。」
グラーフ「そうか、それは面白いことを聞いた。・・・む、何か声がしなかったか?」
萩風「え・・・いえ何も・・・。」
?「・・・じゃ・・・ぞ!」
*「・・・だ!・・・ん!」
グラーフ「やはり聞こえる。近づいてきたな。」
萩風「・・・この声は・・・!」
猛々しく鎮守府内に響き渡るこの声はまさしく夕張が言っていた姉妹だ。
球磨「いい加減大人しく球磨に殴られるクマー!」
木曾「嫌!球磨姉ちゃん手加減しないもん!」
球磨「当たり前だクマ!球磨のとっておきだったのにー!うお゛ー!」
眼帯をしている少女を追いかけるこれまたアホ毛が凄い熊のような少女。
球磨「一撃必殺クマー!」
木曾「きゃー!?」
射程距離に入り飛び掛る。
萩風「えっ・・・。」
木曾「あ・・・。」
球磨「あっ・・・ヤベ・・・。」
木曾と球磨が萩風目掛け突っ込んでくる。
グラーフ「Vorsichtig!(危ない!)」
球磨「あべし!」
木曾「うわらば!」
突っ込んできた二人に対し竜巻旋風脚のような蹴りを入れ跳ね飛ばす。
2秒ほど飛翔し彼女らは地面に落ちる。
グラーフ「怪我はないか?」
萩風「は・・・はい・・・。」
腰を抜かした萩風にそっと手を差し伸べる。
萩風(・・・かっこいい///)
グラーフ「うん?」
目と目が合う。
萩風(////)
が、すぐに目を逸らす。
球磨「いたた・・・何するクマー!もう少しで死ぬところだったクマー!」
グラーフ「ああすまない、体が勝手に動いてしまってな。」
球磨「そうクマ?なら仕方ないクマね・・・ってそんな事で許されるとでも思っているクマ!?元はといえば球磨達が悪いけど・・・って誰クマ?」
グラーフ「今日からここで世話になることになったグラーフ・ツェッペリンだ。」
球磨「ほー・・・海外艦とは珍しいクマね。球磨は球磨だクマ。」
グラーフ「クマワ=熊田クマ?」
萩風「・・・ふふっ。」
球磨「違~うクマ!まいねーむいずクマ!おっけー?」
グラーフ「・・・No.すまないが英語はあまり分らないのだ。」
球磨「う゛ぉぉぉぉお゛!?じゃあ何語なら分るクマ!?」
グラーフ「ドイツ語だ。」
球磨「ドイツ語・・・。いっひりーべでぃっひ?」
萩風「球磨さんドイツ語分るんですか?」
球磨「これしか分らないクマ。意味は分らないクマ・・・。」
グラーフ「・・・本当に私でいいのか?今さっき会ったばかりだぞ。」
球磨・萩風「え?」
少し赤くなったグラーフが問いかける。
球磨「球磨、何か悪いことでも言ったクマか!?」
グラーフ「今言ったIch liebe dich は、あなたを愛している・・・と言う意味だ。」
球磨「ご、誤解クマ!?球磨は何も知らなかったクマ!?」
グラーフ「そ、そうか。」
球磨「お前はいつまで伸びている気クマ!?」ボコン
木曾「痛い!」
球磨「お前のせいで今日は散々クマ!」
鬼の形相で再度拳を握る。
木曾「うっ、ぶたないで・・・!」
グラーフ「そのくらいにしたらどうだ?」
その拳を掴み制止する。
球磨「木曾が泣くまで殴るのをやめないクマ!」
グラーフ「まぁ待て、反省しているようだぞ。」
木曾「姉ちゃんごめん・・・。」
涙目になっている。
萩風「球磨さん・・・。」
球磨「ぐぬぬ・・・。」
木曾「千代田さんから貰った新巻鮭あげるからぁ・・・。」グスッ
グラーフ「こう言っているが?」
球磨「分ったクマ!球磨をそんな目で見んなクマ!」
木曾「うん・・・。姉ちゃんこの人は・・・?」
球磨「今日から仲間になった・・・えーっと・・・グラ・・・名倉さんだクマ。」
グラーフ「いや・・・グラーフだ。グラーフ・ツェッペリン。君も軍人だろ?そんな情けない顔をするな。」ナデナデ
木曾「は・・・はい///」
球磨(こいつぁタラシに違いないクマね・・・。)
ここの木曾は他とは違いいくらか乙女的な要素が入っている。
萩風「球磨さん、木曾さん。喧嘩の原因はなんなのですか?」
球磨「木曾が球磨のバーゲンダッチュを食ったクマ。風呂上りの楽しみにしていたクマのに・・・。」
木曾「うぅ・・・。だって溶けてたから・・・。」
球磨「球磨は半分溶けた方が好きだクマ!」
木曾「ひぃ・・・。」
グラーフ「どうどう。」
萩風「球磨さん、あとで萩風特製の健康アイスを御馳走しますので機嫌なおしてください。」
球磨「お萩がそういうなら仕方ないクマね。」
萩風「木曾さんも一緒にどうぞ。」
木曾「うん・・・ありがとう。」
球磨「名倉さん、お萩。見苦しいとこ見せたクマね。球磨達は退散するクマ。」
萩風「は、はい。この後グラーフさんの歓迎会があるのでいつもの時間に遅れないでくださいね。」
球磨「ん、分ったクマ。」
木曾「うん・・・。」
じーっとグラーフを見つめる。
グラーフ「・・・うん?」
木曾「///」
球磨「さっさと来るクマ。」
木曾「わっ。」
突っ立っている木曾の手を引く。
なんだかんだで仲のいい姉妹である。
グラーフ「姉妹か・・・。」
萩風「球磨さんたちにはあと3人姉妹が居ますね。」
グラーフ「ほう、皆あのようなな感じなのか?」
萩風「2人・・・多摩さんと北上さんは怒らせない方が良いですね。」
グラーフ「と言うと?」
萩風「多摩さんは球磨さん以上に凶暴らしいです。何でも一人で30の敵を倒したとか。」
グラーフ「それは凄いな。」
萩風「北上さんは先制攻撃が得意で戦艦の方でも歯が立たないそうです。」
グラーフ「戦艦の射程圏外からか?」
萩風「はい。まるで未来を予測したように相手の場所が分るのです。」
グラーフ「ふむ。あと一人は?」
萩風「大井さんですね。大井さんはとっても優しい方です。戦闘が苦手な私にも手取り足取り指導して頂き今の私があるのは大井さんのお陰です。」
グラーフ「なるほど。今度紹介してくれ。」
萩風「はい!」
全員が全員強烈ではないことに一安心する。
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《1800》
荒潮「みんなぁ揃ったかしら~?じゃあグラスをもって~・・・かんぱ~い!」
一同「乾杯!」
大淀「紹介します。本日付で当鎮守府へ配属となったグラーフ・ツェッペリンさんです。」
グラーフ「航空母艦のグラーフ・ツェッペリンだ。右も左も分からないが皆の力になれるよう務める、宜しくお願いする。」
大淀「第一航空戦隊に配属となりましたので加賀さん、赤城さん指導のほうお願いしますね。」
加賀「任せて。」
赤城「了解です。」
グラーフ「赤城・・・だと。」
大淀「何か仰られましたか?」
グラーフ「いや・・・何でもない。」
大淀「第二航空戦隊の大鳳さん初月さん、初霜さんにも補助的に指導について頂きたいと思います。」
大鳳「はい、喜んでお受けいたします。」
初月「わかった。」
初霜「わかりました。」
大淀「では暫らく歓談をお願いします。」
軽く紹介を終えると皆々久しぶりのご馳走に目を輝かせ箸が進む。
日向「ようこそ○○鎮守府へ。航空戦艦の日向だ、よろしく頼む。」
グラーフ「ああ、こちらこそ。」
日向「ところで君は瑞雲に興味は無いか?」
グラーフ「ズイ・・・ウン。それはどういうものだろうか。」
日向「瑞雲とは水上偵察機のことだ。爆撃もできる優れものだ、着任祝いに一つやろう。」
グラーフ「いや・・・。」
日向「なに、遠慮することはない。使ってみて気に入ったのならば更にもう一つ贈呈する。瑞雲はいいぞ。」
グラーフ「しかし・・・。」
日向「・・・分った、特別に12型をやろう。これは扶桑から貰った(奪った)ものだ、実に使いやすくて傑作とも言えるだろう。」
伊勢「日向、また宗教の勧誘?」
日向「宗教とは何だ。」
伊勢「巷じゃ瑞雲教の教主って言われてるそうじゃん。」
日向「はて、そんな宗教を開いた覚えはないが・・・。」
伊勢「物のたとえだよ。新人さん、私は日向と同じで航空戦艦の伊勢。よろしくね。」
グラーフ「ああ。」
伊勢「私達も航空機の運用は得意だから気になる事があったら言ってね、力になるから。」
グラーフ「ありがたい、感謝する。」
伊勢「じゃ、また。ほら日向行くよ。布教活動は後でもできるし。」
日向「だから布教など・・・。」
腕を引っ張られ自分の席へと連れ戻されていく。
グラーフ「水上偵察機か・・・。島国ならではだな、これはフロートか?変わった機体もあるのだな。」フムフム
赤城「隣、宜しいですか?」
グラーフ「ん、ああ。君たちは確か・・・。」
赤城「航空母艦の赤城です。」
加賀「同じく加賀よ。」
グラーフ「右も左も分からない若輩者だがよろしくお願いする。」
赤城「ふふっ、そんなに畏まらなくてもいいですよ。お近づきのしるしに一杯いかがですか。」
グラーフ「いただこう。」
赤城「加賀さん手作りの焼酎です。」
加賀「♪」
去年は芋が豊作だったのでそれを使い密かに作っていたようだ。
加賀「お口にあいましたか?」
グラーフ「・・・独特の香りが素晴らしい。変なエグミも無くて飲みやすい。こいつは・・・良いな。」
加賀「やりました。」
小さくガッツポーズをする。
グラーフ「それにしても赤城か・・・。これも縁なのだな。」
赤城「?」
加賀「・・・なるほど。」
赤城「どういうことでしょう?」
加賀「えっ?」
赤城「えっ?」
加賀は悟ったが当の本人は頭の上に?マークを浮かべている。
赤城「グラーフさん、それはどのような・・・。」
グラーフ「私の艤装には赤城、君の艤装と同じ技術が使われているらしいのだ。」
赤城「本当ですか?」
加賀「知らなかったのですか?」
赤城「はい、全く!」
グラーフ「・・・使われていると言っても極一部だからな。」
赤城「な、なら知らなくても問題ないですよね・・・ね?」
加賀「・・・こんなのでも航空戦に関しては非のつけようがありませんから御心配なく。」
赤城「こんなのってなんですかぁ・・・加賀さんの意地悪。」
グラーフ「ははは、二人は仲がいいのだな。明日からの訓練、よろしくお願いする。」
赤城「はい。」
加賀「任せておいて。」
艦娘の体になりおよそ半日。
人とはこんなにも面白いのかと感じる一方、自由に動ける体を持ったこその不安がこみ上げる。
だが今はこの時間を楽しむことにしよう。
赤城「それでは始めますか。」
グラーフ「ああ、お願いする。」
加賀「空母の特性、運用についてはご存知のようですので省略します。」
赤城「私達はこの矢に念を込め弓を引くと・・・。」
流れるような動作で空に向かい矢を放つとエンジン音を轟かせ航空機が出現する。
グラーフ「おお!」
赤城「あのように発艦して行きます。」
加賀「グラーフさんはどちらかと言うと大鳳さんと発艦方法が似ていますね。」
グラーフ「ああ。一度見せてもらったがクロスボウを利用するとはいい案だ。弓より訓練期間が短くて済むのだろう?」
加賀「ええ、大鳳さんは戦局が不利なときに就役しましたので即戦力になれる装備でした。」
赤城「カタ・・・パルトでしたっけその装備、私達空母内では中々見ませんね。利根さんは好きで使っていましたが巡洋艦ですし。」
加賀「わが軍でも空母に搭載できれば戦局を覆せましょう。」
赤城「グラーフさん、使い方は分るのですか?」
グラーフ「ああ、メロンに教えてもらったから大丈夫だ。」
加賀「メロン?あぁ夕張さんですね。」
グラーフ「ここにセットして・・・。」
件のカタパルトにカードのような金属片を入れる。
グラーフ「ふぅ・・・。」
大きく息を吸い。
グラーフ「Vorwärts!」
掛け声と共にそのカードが射出される。
赤城「すごいです!」
加賀「・・・なるほど。」
ここには配備されていない青み掛かった機体が轟音をあげ上空へと飛翔する。
グラーフ「あの機体は・・・Bf109Tか。まさかこの手で運用できるとはな。」
赤城「形からすると艦戦みたいですね。」
グラーフ「ああそうだ。わがドイツ帝国の傑作機の一つだな。」
加賀「グラーフさん、機体の意識とはリンクできましたか?」
グラーフ「うむ、だが完全ではない。視界が曇っているようだ。」
赤城「私達は艦載機全てと同期しなければなりません。ある程度は妖精さんが操縦してくれますが私達の指示が頼りとなります。」
加賀「現在は一機のみですが訓練を積めば自然と同期できるようになります。頑張りましょう。」
グラーフ「ああ。少し、自由に飛ばせて貰ってもいいだろうか?」
加賀「構いません。」
グラーフ「Danke.」
その昔に叶わなかった夢が今自分の体を持って実現できた。
こんなにうれしいことはない。
グラーフ(空は・・・空はこんなにも美しいのだな。)
鮮明ではないが艦載機から見える青い空と海に心を奪われる。
赤城「ふふっ、なんだか昔の加賀さんを見ているようですね。」
加賀「私ですか?」
赤城「初めて矢から艦載機に昇華できたとき加賀さんは大はしゃぎしていたじゃないですか。」
加賀「そ・・・そんなことはないわ///」
今とは違い艤装の開発がお世辞にも発展していたとは言えず血が滲む思いの訓練に耐えやっとのことで運用するに至った。
加賀は初めて空に飛んでいく艦載機をまるでわが子を送り出す母のようにいつまでも見つめていたそうだ。
グラーフ「むっ。」
赤城「どうかしましたか?」
グラーフ「方位270の海上になにやら黒い物体が見える。」
加賀「岩礁ではありませんか?」
グラーフ「いや・・・こちらに近づいているようだ。」
赤城「警報は出てませんし友軍ではないでしょうか。」
加賀「その可能性が高いかと。」
グラーフ「・・・チィ!撃ってきたぞ!」
赤城「なんですって!?」
加賀「回避を!」
グラーフ「Scheiße!被弾した!」
加賀「赤城さん至急発艦を!私は代理に知らせてくるわ。」
赤城「分りました。全攻撃隊・・・発進!」
零戦21、九九艦爆、九七艦攻が救援へと向う。
グラーフ「なんたる不覚・・・!」
赤城「こちらには戻って来れそうですか?」
グラーフ「分らない。左翼の損傷が激しい。」
赤城「そう・・・ですか。万一のために高度を下げてください。」
グラーフ「了解した・・・。」
赤城「一体何者・・・。」
錬度の高い艦載機は瞬く間に点となり目では見えない距離まで飛んで行き目標を捕らえる。
赤城「見つけました!・・・って、あら?」
グラーフ「どうかしたのか?」
赤城「いえ・・・初、月・・・ちゃん?初月ちゃんだわ。攻撃中止!全攻撃隊は直ちに帰還してください。」
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加賀「代理!正面海域に正体不明の艦あり、グラーフさんの艦載機が攻撃を受けました!」
荒潮「あらあら、直ぐに出撃しなくちゃ。」
大淀「待ってください、え・・・、そうですか。加賀さん、正体が判明したそうです。」
加賀「・・・え?」
大淀「通信室からの報告ですと赤城航空隊は洋上にて初月さんの姿を確認、帰還させたそうです。」
加賀「・・・初月ちゃん?それは本当なの?」
大淀「本当です。」
荒潮「なんだぁ残念。このごろ出撃が無くて溜まってたのにぃ・・・。」
加賀「そう・・・ですか。お騒がせしました。失礼します。」
荒潮「またね~。」
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加賀が執務室から戻ると赤城の艦載機を見て帰港した初月の姿があった。
初月「本当に申し訳ない。この通りだ。」
地面に頭が付くのではないかと思うほど深々と頭を下げる。
グラーフ「・・・、どうして撃ったのだ?」
初月「その・・・、見た事がない戦闘機で識別帯も国籍マークも無くて敵の航空機かと・・・。」
グラーフ「そうか・・・。事前に通達していなかった私も悪かった、すまない。」
初月「そんな、君が謝る事ではないよ!」
赤城「う~ん・・・どうしたものでしょうか・・・。あ、加賀さん。」
加賀「これはどういうことでしょう?」
互いに謝っている姿を見るが理解できない。
赤城「実はですね、グラーフさんの戦闘機を敵のものだと思って誤射したのですよ。」
加賀「・・・なるほど。私の配慮不足でした、申し訳ありません。」
これまた深々と頭を下げる。
赤城(・・・私も一応。)
皆が互いに謝罪しあうなんともいえない風景だ。
グラーフ「・・・ふふっ。」
赤城「えっ?」
突如笑い出す。
加賀「グラーフさん・・・?」
グラーフ「いや、すまない。私の記憶に日本人は直ぐに謝るというのがあって本当だと実感してな。」
加賀「はぁ・・・。」
グラーフ「悪気があってのことではなかったし我らにも足らない点があった。今後このようなことがないように気をつける。それで良しとしようじゃないか。」
赤城「ですが機体が・・・。」
グラーフ「損傷はしているが直せるのだろう?これ以上咎める気はないさ。初月・・・と言ったかな?」
初月「うん。」
グラーフ「貴殿の射撃は凄いな。あの距離から命中させられるとは思いもしなかった。だがあれを回避できないようでは話になるまい。今後とも指導鞭撻をお願いしたい。」
初月「え・・・あぁ分かった。僕でよければ付き合おう。仮にも指令を受けた身だ。責任は果たそう。」
グラーフ「Danke.ところで日向から瑞雲と言う機体をもらったのだがどうも発艦ができないのだ。何が間違っているのだろうか・・・。」
赤城「・・・。」
加賀「・・・。」
初月「・・・。」
グラーフ「・・・?」
加賀「それは置いておいて初めての訓練で疲れてませんか?」
赤城(露骨に話題を逸らしましたね。)
グラーフ「うん・・・?体はそうでもないが頭の方が疲れた気がするな。」
加賀「機体の損傷も激しいのでこれ以上の訓練続行は不能だと判断します。整備班には私のほうから依頼しますので。」
グラーフ「だが・・・。」
加賀「急がば回れ。日本のことわざです。無理に運用して修理不能になってはこまりますよね?」
グラーフ「・・・あぁ分った。心遣いに感謝する。」
加賀「では解散としましょう。」
赤城「え、では晩御飯のときに~。」
グラーフ「Ja. Bis später.」
初月「赤城さんはいつも食べることばかり考えてるよね。」
赤城「初月ちゃんったら!」
加賀「ふふ。」
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グラーフ「おっと・・・。」
少しふらつく。
グラーフ「思っていた以上に足腰にくるようだな・・・。」
海上では艤装の浮力もありスケートのように移動するため海と陸での差に慣れるまで今しばらくかかりそうだ。
グラーフ「予定より早く終わってしまったな。さてこの後はどうするか・・・。」
金剛「ん・・・?Hey!そこの空母ガール!」
グラーフ「む、私のことか?」
金剛「Ye~s、アナタが噂のニューフェイスで確か・・・ジャーマンポテトさんデスネ!」
グラーフ「ポテ・・・!ば、馬鹿にしているのか?」
金剛「Non-non。イギリスンジョークデース!」
グラーフ「イギリスン?イングリッシュだろう。いくら英語が分らなくともそれくらいは・・・。」
金剛「そこに気が付くとは良いセンスしてますネ!申し遅れましタけどバトルシップの金剛デース!」
グラーフ「私の名はグラーフ・ツェッペリン、見ての通り航空母艦だ。」
金剛「Humm.海外艦が着任したと聞いて来ましたがまさかドイツ艦でしたカ~。」
グラーフ「何か問題でも?」
金剛「全然ありませんネ~。私も一応は英国の生まれデスし是も何かの縁ネ、これから宜しくデース。」
グラーフ「う、うむ。」
金剛「この後時間ありますカ?」
グラーフ「あぁ、時間が余ったので何か無いか検討していたところだ。」
金剛「デハ一緒にお茶しませんカ?とっておきのスイーツもありますヨ?」
グラーフ「ふむ・・・。ではお招きに預かるとしようか。」
金剛「Ye~s.Welcome-comeネ!」
グラーフ「あ、そうだ。厚かましいが萩も一緒していいだろうか?今日は非番らしいのだが。」
金剛「萩?あぁ萩風ちゃんですネ。勿論大歓迎デース!」
グラーフ「Danke.では呼びに行ってから伺うとしよう。部屋はどこだ?」
金剛「イ号棟の3号室デース!準備して待っているネ!」
グラーフ「ああ。」
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コンコンコン
グラーフ「金剛殿、入ってもいいかな?」
金剛「ドウゾー。」
グラーフ「では、失礼する。」
萩風「おじゃまします。」
金剛「待っていたネ!座って座って。」
グラーフ「うむ。」
用意された席に着くと用意されてあったカップに紅茶を注がれる。
グラーフ「・・・これは!」
金剛「?」
グラーフ「この茶葉はもしかするとティッピーゴールデンダージリンアールグレイ ではないか?」
金剛「Wow.これは驚きましタ。その通りデース。」
萩風「グラーフさん、香りで種類が分るのですか?」
グラーフ「いや、そういうわけではないのだ。」
金剛「と言いますト?」
グラーフ「大昔に嗅いだ・・・いや呑んだ事がある気がしてな。」
萩風「過去の記憶・・・でしょうか。」
金剛「デスねー。それはまぁ置いておいて冷めないうちに飲んでください。」
グラーフ「あぁ、頂こう。」
萩風「いただきます。」
グラーフ「・・・美味い。」
萩風「さすが金剛さんです。」
金剛「褒めてもお茶菓子しかでないヨ~♪」
といいながら差し出したのは黒光りする物体。
グラーフ「それは一体なんだ?チョコレートか?」
萩風「羊羹・・・ですよね?」
金剛「Ye~s!百松がヨーカンね!間宮製にも劣らない最高級品デス!食べてみてください。」
グラーフ「あぁ・・・。!」
グラーフ(何なんだこの甘さは!こんな舌触りは記憶に無いぞ。いやしかしこの美味さを言葉に出来ない。)
金剛「どうですカ~?」ニシシ
グラーフ「・・・。」
萩風「グラーフさん?」
グラーフ「あぁすまない。衝撃で少し混乱していたようだ・・・。そうだなぁ・・・敢えて言葉にするならば日本を感じた、とでも言っておこう。」
金剛「日本をデスか?」
グラーフ「そうだ。私はこんなに甘いものを食べた記憶は無いが嫌な甘さではない。どこか優しさを感じる甘さだ。」
金剛「なるほど・・・日本をデスか。ここは×××デスけどネ!」
グラーフ「・・・そうだな。」
萩風「・・・そうですね。」
金剛「二人とも湿気たフェイスで乗りが悪いデスネ~。」
なぜか一人で盛り上がる金剛を余所にどう対応すればわからない二人は見つめあう。
金剛「アレ・・・?萩風ちゃん、そんなジュエリー着けてましたカ?」
萩風「これですか?グラーフさんに頂いたものなんです。」
金剛「フムフム・・・。ベリーキュートデース。良く似合ってマス!」
萩風「あの・・・ありがとうございます///」
金剛「それにシテも・・・。」
グラーフ「うん?」
金剛「グラたんはお姫様・・・いえ、姫騎士みたいデース。」
グラーフ「グラタン・・・?私のことか?」
金剛「Ye~s.美しい髪に宝石のような瞳、そしテ凛々しく整った顔。まるで御伽噺にでてくるような感じネ。」
萩風「あぁ、どことなく王族の方のような感じがしますね。」
グラーフ「わ、私がか?馬鹿を言うんじゃない・・・恥ずかしいではないか。」
深く帽子を被り顔を隠す。
グラーフ(恥ずかしい・・・か。やはり人の体と言うものは面白いな。)
艦(ふね)では味わえない感情に生きているのだと実感するのであった。
日々の訓練、出撃。それらをこなし週1回の休日。
本土とは違い娯楽施設が少ないがここにも確かに人が住む街がある。
人口およそ2万の小さなところだ。
今日は外出許可をもらい散策することにした。
グラーフ「ほう・・・なかなか立派な通りだな。」
舗装こそされてはいないが幅の広い道路が町を南北に通る。
その両脇には商店や家屋が立ち並び人々の往来もある。
商人「おう、そこの別嬪さん。」
グラーフ「・・・。」
商人「あんたや、あんた。金髪のお嬢さん。」
グラーフ「私か?」
商人「他に誰がおるんや?ちょっちこれ見て行かへんか?」
グラーフ「・・・それは?」
青色の小箱をちらつかせる。
商人「チョコレートや。ホンマもんのやね。」
グラーフ「ここではカカオが取れるのか。」
商人「取れるっちゅうてもほんの少しなんよ。今は海空ともに封鎖されて内地には出回っておらんで、銭(ぜに)より価値があるって言われてるんや。」
グラーフ「ほう、それではさぞかし美味いのだろうな。」
商人「その通り!そうやなぁ・・・お嬢さんとの出会いを記念して大マケにマケて1粒50銭でどうや!?」
グラーフ「・・・すまない。今は(給料日前で)持ち合わせがないのだ。」
商人「・・・なんてこった。うーむ・・・ならお嬢さんの体でもええで?」
グラーフ「仕事を手伝えばいいのか?」
商人「仕事・・・まぁ仕事っちゃ仕事やね。夜の・・・アベシ!?」
にやけ顔の商人の背後から現れげんこつをお見舞いする。
?「コラ~、昼間からセクハラなんてこのスケベジジイ。」
商人「誰や!?・・・って鈴谷ちゃんか。」
鈴谷「何、あたしが居て不都合でもあるの?」
商人「そんなことあらへんで。」
鈴谷「目が泳いでるし~。」
商人「ぐぬぬ・・・。」
鈴谷「それに、一つ50銭ってぼったくりもいいところジャン?」
商人「ウチの商品やから問題あらへんやろ?」
鈴谷「原価いくらよ?」
商人「それは・・・。」
鈴谷「それにこのグラたんはうちンとこの子だからおイタしたら大変だからね?」
商人「ぬぅ・・・。分った、ウチが悪かった。持ってけドロボー!」
グラーフ「むっ!?」
チョコの入った小箱を強引に押し付け早々と店じまいをし何処かへと走り去って行った。
鈴谷「ラッキー。儲けたジャン。」
グラーフ「良かったのか?」
鈴谷「良いのいいの、いつものことだから。」
グラーフ「ふむ。先ほど言っていた夜の仕事とは何だ?」
鈴谷「あー・・・。グラたんはまだ知らない方がいいと思うなー。」
グラーフ「何故だ?」
鈴谷「何でも。グラたんだけは純粋なままで居て欲しいし。」
グラーフ「まるで意味が分らないが・・・。」
鈴谷「まぁソレは気にしないで、この後時間ある?」
グラーフ「あぁ、今日一日特にすることは無いからな。」
鈴谷「じゃあ、あたしと散歩でもしない?」
グラーフ「ふむ・・・。いいだろう、こちらからもお願いしたい。」
鈴谷「決定だね♪グラたんはどこか行きたいところある?案内するよ。」
グラーフ「いや、どこに何があるか分らないから行き先は任せる。」
鈴谷「オッケー。はぐれないようにねグラたん。」
グラーフ「ああ。それと先ほどから気になっていたのだが、グラタンとはまさか私のことか?」
鈴谷「ん、そうだよ?金剛さんが言ってたね。」
グラーフ「私はグラーフであってグラタンではないのだが・・・。」
鈴谷「あれ?そのあだ名気に入らなかった?」
グラーフ「あだ名・・・?あぁ、Spitznameのことか。」
鈴谷「しゅぴっつなーむ?」
グラーフ「英語では確か・・・ニックネームだったか?」
鈴谷「そうそれ。どうかな?嫌なら止めるけど・・・。」
グラーフ「グラタンはフランスが起源で何とも不思議な気分だがまぁ悪くは無い。」
鈴谷「え、嘘!?てっきりアメリカ料理だと思っていたよ~。」
グラーフ「はは、本から得た知識だがな。む、鈴谷殿。あれは何だ?」
鈴谷「どれ・・・?あ~・・・。」
とある店先に人だかりが出来ている。
鈴谷「見ていく?」
グラーフ「ああ。」
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鈴谷「チィーッス。」
市民A「んぁ?おお、鈴谷ちゃんじゃねえか。」
市民B「おう、やってくかい?」
4人の男が机を囲んでいて、それを通りすがりの人が観戦している。
鈴谷「今日は遠慮しとくよ~。」
市民C「そっちの嬢ちゃんは見ない顔だが最近入った子か?」
鈴谷「そだよ~、2週間くらい前かな。」
グラーフ「ああ。」
市民D「嬢ちゃんはこれできるのかえ?」
グラーフ「いや、初めて見るものだ。」
市民A「そうか。これはな、同じような模様を集めて遊ぶものだ。役さえ覚えれば大体の奴はできる。」
市民B「こうやって、場から1つ引いて・・・ツモ!七対子、いっちょあがり~、」
市民C「かぁ~また負けた。チョンボしてんじゃねえのか?」
市民B「してねえよ、ほら点棒よこしな。」
市民D「とまぁこんな感じだ・・・って言っても1巡もしないで終わったら分らないか。」
グラーフ「ふむ・・・。」
鈴谷「一応言っておくけど賭けたら憲兵に捕まるからね~。」
市民A「わ~ってるよ。」
他市民「おいっ憲兵だ!」
市民B「撤収だ!急げ急げ!」
見張り役が憲兵の姿を発見し嵐の如く男達はその場から姿を消した。
グラーフ「・・・まるで忍者のようだな。」
鈴谷「グラたん忍者知ってるの?」
グラーフ「見たことはないが日本では一般市民に紛れ込んでいるそうだな。」
鈴谷「え・・・ああうん、そうだね。(この時代には居ないってこと知らないのかな・・・一人居たわ。)」
グラーフ「この目で一度見てみたいものだ。」ムフー
鈴谷「あはは・・・。そうだ、お腹空いてない?」
グラーフ「む、そういわれると小腹が空いたな。」
鈴谷「じゃあ鈴谷行きつけの喫茶店に行こ?」
グラーフ「喫茶店か・・・是非お願いしよう。」
鈴谷「お任せアレ♪」
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鈴谷「ヘイ、マスター!」
深雪「お、いらっしゃい。」
鈴谷「いつものお願いね~。」
深雪「あいよ。そちらの艦娘さんは?」
グラーフ「私か?とりあえずマスターオススメのコーヒーを頼む。」
深雪「ほ~い。」
鈴谷お気に入りの窓際に席に座る。
鈴谷「このお店、おしゃれでしょ?」
グラーフ「ああ、香りもだが雰囲気も良いな。」
鈴谷「にしし、でしょ~。」
グラーフ「鈴谷殿、一つ良いだろうか?」
鈴谷「ん、なに?」
グラーフ「あのマスターは何故私が艦娘だと分ったのだろうか?」
鈴谷「深雪ちはね元艦娘だったんだよ。」
グラーフ「そうなのか。」
鈴谷「ちょっと色々あって退役したんだ~。」
グラーフ「ほう。艦娘の鈴谷殿と一緒ならば隣の私は軍属か艦娘と考えるのが普通か・・・。」
鈴谷「噂には聞いていたけどグラたんって結構真面目だよね。」
グラーフ「私がか?」
鈴谷「そだよ。何に対しても考え深いし学ぼうとしているトコ見習いたいな~。」
グラーフ「そのようなこと言われても何も出ないぞ///」
深雪「はいよ、おまちどーさん。」
鈴谷「ん、ありがとー。」
グラーフ「Danke.」
鈴谷にはカフェオレとホットケーキ、グラーフにはコーヒーとトーストが出される。
深雪「お客さんとは初対面だな。アタシの名は・・・。」
グラーフ「深雪ち殿であろう?」
深雪「へ?」
グラーフ「間違っているか?」
鈴谷「あー・・・。グラたん、深雪ちはあだ名。」
グラーフ「なに!初対面でいきなり呼んでしまい申し訳ない、この通りだ。」
立ち上がり頭を下げる。
深雪「えっ、いいって気にしてないから。」
グラーフ「だが・・・。」
深雪「なぁに同じ艦娘だ・・・元だけど。ちぃさい事は言わないのがアタシの主義さ。さぁ冷めないうちに味わってくれよ。」
グラーフ「ああ・・・。」
諭され席につきコーヒーを口に含む。
グラーフ「・・・美味い、これはなかなかどうして。」
鈴谷「病み付きになるよね~、あぁ美味し♪」
深雪「深雪スペシャル(ブレンド)だからな!不味い訳が無いよ。」
グラーフ「味の配分が実に良い。香りも・・・言葉に出来ないくらい素晴らしい。」
深雪「だろぉ~。」
グラーフ「マスターはバリスタの経験があるのか?」
深雪「いーや、ここ1年半ってとこかな~。」
グラーフ「なに・・・では生まれながらにして持っている才能か。失礼だが何故退役したか聞いても?」
深雪「あ~、それ聞いちゃうか~。」
グラーフ「む?」
鈴谷「・・・。」
深雪「ま、いいか。特別に教えるぜ。アタシはなー」
電「ただいま戻ったのです。」
3人「・・・。」
買い物袋を腕に提げ中へと入ってくる。
電「あ、鈴谷さんいらっしゃいなのです。」
鈴谷「うん。」
電「えっと、そちらのお客様は・・・確か伯爵様・・・なのです?」
鈴谷「グラたん伯爵だったの!?」
グラーフ「え・・・いや、確かに私の名は伯爵公由来だが私自身は違うぞ。」
鈴谷「でも何か素敵ジャン。」
深雪「いーなー、かっこいいなー。」
グラーフ「むぅ///」
電「はゎ~。」
深雪「ん、どした?」
電「とても可愛らしいお姉さんなのですね♪」
グラーフ「なっ、貴殿の方が小さくて愛くるしいではないか!」
電「電は小さくないのです!」
グラーフ「どう見ても小さいではないか!」
電「はわっ、どこを見ていっているのです!」
鈴谷「はいはい二人とも落ち着いて。どっちも可愛いってことでいいじゃん。」
深雪「そうだそうだ。店ン中で騒がれちゃ営業妨害だぜ。」
グラーフ「あぁ・・・すまない。取り乱したようだ。」
電「電も熱くなってしまってごめんなさいなのです・・・。」
深雪「ったくよ~・・・まぁいいや。紹介するぜ、あたしの相棒の電だ。」
電「なのです。」
深雪「訓練中に電があたしに衝突して艤装はおじゃん。で、あたしは退役したわけだ。」
電「はわわ///」
深雪「ま、給付金も出るし遊んで暮らそうかなと思ったけどここじゃ遊ぶところもないし暇つぶしにこの店をオープンしたのさ。」
グラーフ「ほう。」
深雪「負い目を感じたのかな、電もこうして店を手伝ってくれてるんだ。」
電「だって電の所為で深雪ちゃんが-」
深雪「それ以上は言わなくていいよ。」
鈴谷「責任感が強くて優しい子だってみんな知ってるもん。」ナデナデ
電「鈴谷さん///」
深雪「ま、いつもはこっちの手伝いをしてくれて非常時には艦隊に戻る。予備役みたいな感じだな。」
グラーフ「なるほど。どうりであちら(鎮守府)で見ないわけだ。以後お見知りおきを。」
電「こちらこそ、なのです。」
グラーフ「それにしても・・・このコーヒーはもちろんトーストも美味い。」
深雪「それは電が作ったんだぜ。」
グラーフ「ほう、天才バリスタに可愛いベッカライか。気に入ったぞ、今後も通わせてくれないか?」
深雪「ああ勿論だぜ!な?」
電「な、なのです!」
鈴谷「じゃあ通い仲間だねー。そうだ電ちゃん、頼まれていた砂糖持ってきたよ。」
電「いつもありがとうなのです。」
グラーフ「む、鈴谷殿は商売もしているのか?」
鈴谷「違う違う。流通が制限されてるここじゃ調味料も手に入りづらくてね。本土からたまに来る郵便で姉貴から送ってもらってるの。」
深雪「三隈さんには感謝してもしきれないぜ。」
グラーフ「なるほどな。ここでは甜菜の栽培はしていないのか?」
深雪「天才?頭良いのか?」
電「・・・?」
鈴谷「・・・あぁ、あの大根みたいなのね。ここの土が合わないみたいで誰も作ってないしそもそも日本じゃサトウキビが主流だからねぇ。」
グラーフ「ほう。同じ砂糖でも国が違うと原料も違うのか。興味深い。」
電「なんだか学者さんみたいなのです。」
鈴谷「そう思うでしょ?淀っち並の真面目ちゃんだよグラたんは。」
グラーフ「淀っち?あぁ大淀殿か、いや彼女ほどではない。彼女はまるで生きている辞書のようだ。知らぬものは無いほどの知識を持っている。」
深雪「聞いた話だと一度見た本の内容は全部覚えてるらしいぞ。」
鈴谷「それマジの話だよ。一字一句全部覚えてるンだって。」
深雪「げぇ・・・っておい。あれ、大淀さんじゃないか?」
窓の外の通りを歩いている人を指差す。
鈴谷「ん?あ、ほんとだ。(いいこと思いついた。)」
グラーフ「これが噂をすればと言うものか。」フム
鈴谷「グラたん行くよ!」
グラーフ「おい!?」
グラーフの腕を掴み走り出す。
鈴谷「お代おいておくね!」
レジに二人分のお金を置く。
電「あ、ありがとうなのです。」
深雪「全く、毎度毎度鈴やんは落ち着きがないねぇ。」
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グラーフ「鈴谷殿、こんな所に隠れて一体何を・・・?」
鈴谷「まぁ見てなって・・・。」
建物の物陰からそろりそろりと大淀の背後に回りこむ。
大淀「・・・。」
グラーフ「・・・?」
鈴谷「とぉぉ↑おう↓!!」
大淀「きゃぁあ!?」
某航巡に劣らない声で驚かす。
鈴谷「にしし~大成功♪」
大淀「す、鈴谷さん・・・一体なんのマネですか!?」
グラーフ「おぉ・・・。」
普段は冷静沈着な大淀が赤面してるのは珍しくある意味で感動する。
鈴谷「淀っちが驚かしてくださいと言わんばかりの無防備だったからね~。」
大淀「もう・・・!」
鈴谷「怒ってる淀っちもかわいい~。グラたん、もう出てきてもいいよ。」
グラーフ「あぁ。」
大淀「え、グラーフさんもいらっしゃったのですか///こほん・・・。」
わざとらしく咳払いをし自分を落ち着かせる。
鈴谷「ねぇ淀っち、何してたの?」
大淀「え・・・いえ、特にこれと言って・・・。」
そういうと手にしていたものを鞄に隠そうとする。
鈴谷「グラたん、確保して!」
グラーフ「・・・Jawohl.」
大淀「グラーフさん!?」
大淀の手を掴み制止する。
鈴谷「さてさてどんないかがわしいものを・・・ってなにこれ。月刊眼鏡女子之朋?」
紙袋を開けると雑誌が入っていた。
グラーフ「これが日本のMagazinか。表紙の人が皆眼鏡をかけているな・・・あぁなるほど!」
大淀の顔をみて合点がいったようだ。
鈴谷「流行の眼鏡特集に眼鏡でお洒落を・・・。淀っちってそういうの興味あったんだ。」
大淀「・・・黙秘します。」
グラーフ「眼鏡でお洒落・・・?一体どういうことだ・・・?」
鈴谷「おやご存知ない?メガネは一種の萌え要素なのだよワトソン君。普段は規律の塊と恐れられている淀っちがね~、ふぅ~ん。」
大淀「むぅ・・・。」
グラーフ「だが眼鏡をかけていてもいなくても大淀殿は可愛いではないか。」
鈴谷「・・・。」
大淀「///」
グラーフ「・・・?」
鈴谷「グラたん、むやみやたらにそんな事言わない方が良いと思うよ?」
グラーフ「何故だ?事実を言ったまでだが・・・。」
鈴谷「淀っちを見てみなよ。」
グラーフ「・・・?」
そこには顔を真っ赤にし俯いている大淀の姿があった。
鈴谷「グラたんは私の目から見てもかっこいいし勘違いする子も居ると思うよ。」
グラーフ「ふむ・・・?」
大淀「こほん。そういえば鈴谷さん。」
鈴谷「ん、なに?」
大淀「熊野さんが鈴谷さんのことを血眼になって探していましたよ?」
鈴谷「え・・・何かしたかなぁ・・・?」
大淀「確かこんびにで買ったサンドイッチが無くなったとか言ってましたが。」
鈴谷「・・・あ。」
グラーフ「心当たりでも?」
鈴谷「あぁ・・・うん。消費期限が今日までだから食べちゃった・・・。ごめん、新しいの買ってくる!」
グラーフ「あ、あぁ。」
大淀「全く忙しい方ですね。グラーフさん、私も小用がありますので失礼しますね。帰り道は分りますか?」
グラーフ「あぁ、問題ない。では後ほど。」
大淀「ええ。」
グラーフ「・・・遠回りで戻るとするか。」
今まで通った道の反対側を、まるで島を1週するかのように散歩をしつつ鎮守府へと戻った。
赤城「それではグラーフさん。本日最後の訓練、急降下爆撃を行いましょう。」
グラーフ「あぁ・・・。だが良いのか?」
加賀「装甲は私達の倍以上ですので問題ありません。ですよね?」
大鳳「ええ、遠慮なく攻撃してください。」
グラーフ「そうか・・・。しかし雰囲気がまるで違うな。」
真っ白で長い髪を後ろで結い艤装も禍々しいものになっている。
大鳳「深海の要素が入っていますからねぇ。」
加賀「竣工して3ヶ月で大破し、応急処置で使った深海棲艦の艤装に精神を乗っ取られるなんてね。」
大鳳「もう加賀さん!それは言わない約束でしょ!?」
加賀「そうでしたか?」
赤城「ふふ、加賀さんは物忘れが激しいですね。」
加賀(・・・ちょっと頭にきました。)
大鳳「ごほん。では私は待機ポイントへ向いますので到着の連絡後、攻撃に移ってください。」
グラーフ「了解した。」
続きが楽しみです。
グラーフって人気があるけど性能微妙と言われるみたいですが
どうなんですかね?
うちには居ないから良く分からんのですけど。
赤城との絡みが気になりますね。
ゆっくり更新お待ちしてますよー!
T蔵様
性能は悪くは無いけれどもう一声、と言ったところでしょうか。
まぁ戦艦を落としますし誰かと組み合わせて運用すれば問題ないかと。
愛さえあればなんとやらです!
荒潮さんクッソかわいいですね。
あ、突然すみません。コメント失礼致します。
荒潮さんクッソかわいいですね!
しらこ様
荒潮教徒が増えることを切に願ってます!
更新おつかれさまですー。
ドイツ語はやたら気合の入った発音になるんですよねー。
ドイツ語ネタでよく引き合いに出される蝶々にしても
英語、フランス語とかと比べて無駄に気合が入った発音になると言う(笑)
ゆっくり更新、次回おまちしております。
更新お疲れ様です。
不運のグラーフに麻雀(笑)
あっ、でも不運が逆噴射でヤオ九牌ばっかり手元に集まり
鈴谷があっ純全だーとか言ってクリーもありか?