2017-05-17 00:05:27 更新

終戦を迎え1年半余り。


深海側と和平交渉を締結し共存繁栄の道を人類は歩み始めた。


その平和の立役者となった艦娘たちはその役目を終え次々と所属していた鎮守府を去って行った。


学業に励む者、労働に勤しむ者、彼女達の新たな人生が幕を開ける。


そんな中である二人の生活を追ってみよう。


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村雨「ふふ、山風ちゃん。心の準備は出来た?」


山風「ううん・・・。」


村雨「ほら笑顔笑顔。そんな顔じゃ笑われちゃうわよ?」


山風「でもぉ・・・。」


村雨「もう・・・えいっ!」ピンポーン


山風「ふぇ!?」


とあるお宅の前でインターホンを押すのを躊躇っていた山風を余所に満面の笑みでそのボタンを押す。


二人「・・・。」


だが反応がない。


村雨「あら・・・留守かしら?」


山風「・・・。」


村雨「この時間に来るように言われてたけれど・・・。」ピンポーン


もう一度押す。


すると・・・。


?「・・・どちら様ですか?」


やけにトーンの低い声で返事があった。


村雨「あの、今日からここでお世話になります村雨と申します。」


山風「同じく・・・山風・・・です。」


?「・・・は?どこかと間違えているんじゃないの?」


村雨「え・・・でも政光さんのお宅じゃ・・・?」


?「・・・それウチの親父。・・・ちょっと待ってて。」


二人「・・・。」


暫らくするとガチャンと鍵が開く音がして扉が開く。


?「詳しい事は中で話そうか・・・ま、入って。」


村雨「あっ、ハイ。お邪魔します。」


山風「お邪魔・・・します。」


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?「まずは・・・君たちの自己紹介から聞こうか。」


村雨「はい。私は元艦娘で村雨と申します。こちらが妹の-」


山風「山風・・・です・・・。」


?「ふーん。君たち性格がまるで反対だね。」


村雨「よく言われます。」


ヒカリ「そ。私は与内ヒカリ。政光は親父ね。それで、これは一体どういうこと?」


村雨たちが持参した契約書をちらつかせる。


村雨「はい、今日からヒカリさんの身の回りのことをさせていただきます!」


山風「・・・ます!」


ヒカリ「いやいや、別にそんなことする必要ないし頼んだ覚えも・・・」


?「契約書をよく読め。」


ヒカリ「え・・・?・・・・・・依頼主、与内政光。」


政光「その通り!」


クローゼットが突然開き登場する。


3人「!?」


政光「ヒカリ、よくもそんな事が言えるな?」


ヒカリ「お、親父。いつからそこに!」


政光「20分位前か・・・。そんな事がどうでも良い。ヒカリ、お前はまともに家事ができない愚か者だ。」


ヒカリ「愚か!?」


政光「朝昼晩とインスタントか外食らしいな。」


ヒカリ「べ、別に良いだろ!」


政光「否!そんな食生活をしていたらいつか体を壊してしまうぞ!それに洗濯も掃除もろくすっぽ出来ないときた。見ろ、埃がこんなに。」


ヒカリ「別に死には・・・。」


政光「渇!」


3人「!?」


政光「これでは不健康になるのが目に見えている。そこで二人にヒカリの面倒を見てもらうことにしたのだ。文句があるなら言ってみろ。」


ヒカリ「・・・。(文句を言ったら倍になって罵倒が返ってくるわ・・・。)」


政光「という訳で、二人ともよろしく頼んだぞ。私は会議があるのでこれまでだ。」


村雨「はい、お任せください!」


山風「・・・ん!」


政光「ふ、頼もしい限りだ。」


そういうと窓から去って行った。


ヒカリ「・・・もうどうにでもなれ。それで村雨ちゃんと山風だっけ?」


村雨「ですです♪」


山風「・・・うん。」


ヒカリ「家事は得意・・・なんだよね?」


村雨「はい、何でもお任せください!」


ヒカリ「そう・・・。家事のほかに何か出来るの?」


村雨「何かって聞かれると・・・まぁ御要望があればたいていの事はできますね。あ、夜の相手も可能ですよ?」ムフフ


ヒカリ「夜!?」


村雨「小さい子がお好きでしたら山風ちゃんでも・・・ね?」


山風「あたし・・・?別に・・・いいよ。」


ヒカリ「いやいやいや!ないない!女だよ私!」


村雨「女の方でも村雨は大丈夫です♪」


ヒカリ「ひぃ・・・!とっ、とりあえずお昼!昼飯を作って頂戴!」


村雨「あら、残念。了解です。」


山風「・・・。」


村雨「何か希望はありますか?」


ヒカリ「任せるよ!」


村雨「はいはーい。ちょっと待っててくださいね♪」


ヒカリ「あの眼はマジだった・・・ん?」


山風「・・・。」ジー


ヒカリ「えと・・・、山風ちゃんは作ってくれないのかな?」


山風「お料理は・・・苦手。」


ヒカリ「・・・。」


山風「でもお掃除とか・・・お洗濯は大丈夫・・・任せて・・・!」


ヒカリ「そう・・・じゃああの籠に入ってるの洗ってくれるかな?」


山風「うん・・・!」


ヒカリ「・・・どうも調子狂うなぁ。親父から聞いたことあるけど艦娘って言っても私達と何も変わらないように見えるけど・・・。」


鼻歌を奏でながら料理する村雨、色物とそうでないものを区別している山風。


艦娘の情報は機密とされ一般社会にはなかなか流れてこなかった。


それ故、艦娘は感情の無い兵器だとかはたまた慈愛を有する女神だとか様々な噂がたつ。


だが実際に見てみると普通の少女だ。


ヒカリ「ツインテのお嬢様にくせ毛のお姫様か・・・。容姿は絵に描いたようにイケてるよね、正直。」


目つきの悪い自分と比べ少々僻む。


ヒカリ「・・・。」


村雨「ご主人様。」


ヒカリ「・・・。」


村雨「もう、ご主人様ったら!」


ヒカリ「・・・へ?もしかして私のこと?」


村雨「他に誰がいるんですか?はい、村雨特製の野菜炒め完成でーす!」


ヒカリ「おぉ、美味しそうじゃん。」


村雨「ふっふっふ。隠し味を入れたのだけれど分りますかねぇ、分らないでしょうね~。」


ヒカリ「あっ、ちょっとイラっと来た。」


村雨「そうカッカしないで冷めないうちに召し上がってください。」


ヒカリ「ん・・・うん。いただきます。」


村雨「んふふ~、どうですか?」


ヒカリ「・・・素直に美味しい。野菜炒めってこんなに美味しかったんだね。」


村雨「野菜本来の美味しさを生かしてますからね♪」


ヒカリ「そう・・・あれ?」


村雨「どうかしました?」


ヒカリ「二人の分は?」


村雨「ありませんけど?」


ヒカリ「へ・・・?どうして?」


村雨「どうしてと申されても、お給料を貰う上でご主人様の食材を私達が頂くわけにいかないですよね?」


ヒカリ「・・・それはダメだよ。」


村雨「はい?」


ヒカリ「だって同じどころに住むんだよ。それでご飯が別々って何か寂しいじゃん。」


村雨「ですけど・・・。」


ヒカリ「まぁ私もそれなりに収入はあるし別に二人増えたからって大した出費にはならないよ。それによく言うよね。ご飯は明るく楽しくって。」


村雨「ご主人様・・・。でも・・・。」


ヒカリ「まだ何か?」


村雨「冷蔵庫にあった食材はそれで全てですけど・・・。」


ヒカリ「・・・あ。しまった、ここ1週間買い物に行ってなかったわ・・・。」


村雨「じゃあ買出しに行ってきますね。」


ヒカリ「行くったってここからだとスーパー遠いよ?」


村雨「車があるから大丈夫です♪」


ヒカリ「それなら安心・・・って車!?村雨ちゃん運転できるの!?」


村雨「はい、もしかしたら運転するお仕事に就くかもと思ってコンプしました。」


ヒカリ「ほへぇ~凄いね・・・。あれ・・・もしかしてそこに停まってるシルバーのワゴンЯって村雨ちゃんの?」


村雨「そうです~。15年落ちですけどまだまだ現役なんです。」


ヒカリ「随分と年季入ってるね。私も車買おうかな・・・。」


村雨「よければお貸ししますか?」


ヒカリ「良いの?」


村雨「勿論ですよ。あ、でもでもご主人様。」


ヒカリ「うん?」


村雨「マニュアル車ですけど大丈夫ですか?」


ヒカリ「・・・無理だね。免許取ってから運転したことないし。」


村雨「ですよねー・・・。」


ヒカリ「なに人の顔みて納得してんのさ。」


村雨「いーえー別にー。」


ヒカリ「・・・腑に落ちないなぁ。まぁいいか・・・とりあえずご馳走様。美味しかったよ。」


村雨「ふぇ・・・お話に夢中で気がつかなかったけどご主人様って食べるの早いですね。」


ヒカリ「そぉ?普通だと思うけど。さて、込む前に行くとしますか。山風ちゃん洗濯終わった?」


廊下の奥に居る彼女を呼ぶ。


山風「うん・・・自動乾燥コース・・・セットしたよ。」


ヒカリ「ありがと。今から私達買い物に行くけど一緒に来る?」


山風「・・・うん。」


ヒカリ「そう。ナビは私がするから運転は任せるね。」


村雨「は~い♪」


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ヒカリ「じゃあこの道を真直ぐ進んで2つ目の交差点の信号を右に曲がって。」


村雨「はいは~い。」


ヒカリ「いや~、軽だけど結構広いね。」


村雨「でしょでしょ~。発売当時から結構話題になったんですよ~。」


ヒカリ「山風ちゃんは免許持ってるの?」


山風「原付・・・ならあるよ。」


ヒカリ「あぁ、スクーターとか似合いそう。そだ、よかったら私が通学で使ってたの要る?」


山風「え・・・?」


ヒカリ「ここじゃバスも電車もあるから使わないんだ。どう?」


山風「えと・・・じゃあ使わせてもらい・・・ます。ありがとう・・・です!」


ヒカリ「ん、後で持ってくるね。」


山風「うん・・・。」


ヒカリ「あっ、村雨ちゃん。そこのコンビニに寄って。」


村雨「了解で~す。」


ヒカリ「ちょっと待っててね。」


山風「ん・・・。」


村雨「ねえ山風ちゃん。」


山風「なぁに?」


村雨「ヒカリさんと上手くやっていけそう?」


山風「・・・分らない。けど頑張る・・・お仕事だから。」


村雨「そう・・・。あっ、忘れてた!」


山風「どうかしたの?」


村雨「山風ちゃんにって江風ちゃんから餞別を渡されてたの。後ろの箱よ。」


山風「え・・・これ?」


村雨「そう、それ。」


山風「なんだろ・・・?軽いね。」


通販で買ったであろう密林と書かれたダンボールをあける。


山風「・・・お洋服?・・・じゃない、メイドさん・・・?」


村雨「おぉ、可愛い服ね。」


黒と白を基調としたメイド服。


恐らく3000円位のコスプレ用であろう。


この大雑把さがなんとも江風らしい。


山風「あ・・・手紙だ。」


(江風)「就職おめでとう。家政婦と言ったらこの服だよな!サイズは測ってあるからぴったりなはずだぜ!」


山風「・・・測ってある?」


(江風)「P.S. 胸も結構大きくなったことだしそろそろスポブラを卒業した方が良いとおもうぜ!」


山風「!?」


村雨「山風ちゃん・・・?」


山風「江風のバカぁ!」


顔を真っ赤にして手紙を真っ二つに引き裂く。


村雨「ちょ!?」


山風(絶対あの時よ・・・!寒いと言いながら妙に抱きついてきた・・・。今度あったら〆る・・・!)


村雨(これは静かに怒っている顔ね・・・。)


ヒカリ「お待たせ・・・山風ちゃん怒ってる?」


山風「ふぇ!?これは・・・その・・・違う・・・です。」


ヒカリ「そお?はいこれ。お昼まだでしょ。」


サンドイッチのパックを差し出す。


村雨「あっはい。ありがとうございます、いくらですか?」


ヒカリ「いいって、私のおごり。」


山風「でも・・・。」


ヒカリ「お腹が空いては戦(特売セール)ができないし気にしない気にしない。」


村雨「・・・そういうことでしたら頂きますね♪」


山風「・・・いただきます♪」


ヒカリ「ん。」


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<スーパーマーケット・イトーヨーソロー>


村雨「おぉっ、このお店お肉が凄く安いですね!」


ヒカリ「そうなの?気にしたことないからなぁ。」


村雨「横須賀と比べたら3分の2くらいですよ。」


ヒカリ「そりゃ安いね。山風ちゃんは今晩は何食べたい?(作るのは村雨ちゃんだけどね。)」


山風「え、なんでも・・・いいよ。」


村雨「何でも良いってのが一番困るんだけどなぁ。」


山風「あぅ・・・じゃあ・・・。」


ヒカリ「ん?」


山風「カレーライス・・・甘口が食べたい・・・です。」


ヒカリ「カレーか・・・。そういえば暫らく手作りのって食べてないなぁ・・・良い?」


村雨「お任せあれ!お肉は豚肉で良いですか?」


ヒカリ「うん、定番だよね。」


山風「♪」


村雨「あとはサラダ用に生野菜をっと・・・。」


ヒカリ「ねぇ村雨ちゃん。」


村雨「なんですか~?」


ヒカリ「食材の買い物は任せて良い?私、上の日用品コーナーに行きたいんだけど。」


村雨「はいどうぞ~。山風ちゃんも行って良いわよ、色々見たいでしょ?」


山風「え・・・?」


ヒカリ「じゃあ山風ちゃん、一緒に行こうか?」


山風「あの・・・えと・・・、うん・・・。」モジモジ


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ヒカリ「山風ちゃんたちは着替えとか歯ブラシとか持ってきたの?」


山風「うん・・・。最低限のものは持ってきました・・・。」


ヒカリ「あ、でも布団はなかったよね?」


山風「・・・大きすぎてもって来られなかった・・・です。」


ヒカリ「そっか。じゃあ買おう。」


山風「え・・・?」


ヒカリ「さすがに高級羽毛布団は買えないけどね。これで良い?」


一式がセットになったものを触ってみる。


山風「で、でも・・・そこまでして頂くなんて・・・。」


ヒカリ「? 遠慮は要らないからね、睡眠は大切だし。あ、村雨ちゃんの分も買わないと。」


山風「・・・。」


ヒカリ「これ持って歩くの大変だし先に会計済ませちゃうね。」


山風「う、うん・・・。」


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店員「複数お買い上げですので割引して2セットで1万円になります。」


ヒカリ「はい、これでお願いします。」


店員「では1万円ちょうどお預かりします。」


ヒカリ「・・・あっ!」


山風「ひゃう!?」


店員「どうかされましたか?」


ヒカリ「完全に忘れてた。これ、多分車に積めないよね・・・大きすぎて。」


真空パックではないため嵩張っており軽自動車に積むのは難しい。


ヒカリ「あのぉ配達って出来ますか?」


店員「はい、お住まいはどちらですか?」


ヒカリ「市内ですけど・・・。」


店員「市内でしたら500円にて承っております。」


ヒカリ「じゃあお願いしても良いかな?」


店員「承知いたしました。お届け先は会員登録と同じ場所で問題ありませんか?」


ヒカリ「ええ、そちらでお願いします。因みにいつ届きますか?」


店員「この時間ですと・・・明日の午前からとなります。」


ヒカリ「明日ね、よろしくお願いします。」


店員「はい、畏まりました。」


ヒカリ「じゃあ次、行こうか。」


山風「うん・・・。」



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2019-01-21 06:41:37

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このSSへのコメント

2件コメントされています

1: T蔵 2017-01-22 12:49:17 ID: ewQU4jkQ

新作、期待。
続き、ゆっくり待ってますぜ。

2: 銀のすけ 2017-01-23 00:34:40 ID: y9twm-_b

T蔵様

毎度コメありがとうございます。創作の原動力となりますね。


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