「……美味いな」

「あら、そうかしら？私は全くそう感じないわね」

まぁ、そうだろうなと言いながら盃を傾ける。

彼の隣には人の影はない。

あるのはただの後悔と贖罪の酒だった。

「目先の欲に溺れた結果がコレだ。全く笑わせてくれる」

「ホントよね、私そのせいで沈んじゃったのよ？」

2-4攻略時、彼の艦隊は主力艦隊のひとつ手前まで進軍していた。

他の艦は小破、中破。飛龍のみが大破であったが過去の主力艦隊との対戦で大破艦が無事生還した事が何度もあったため今回も無事だろうと高を括っていた。

それに飛龍と呼ばれる少女は彼の有する艦隊の正規空母の中でも最高の練度を誇っていたため彼女に限ってそんな事はないと慢心していたのである。

「まぁ、その結果がコレだ。全くもって不甲斐ない」

「本当よ、貴方と飲むお酒、楽しみにしてたのよ？」

彼の歳は18まだ成人をしておらず酒を飲める年では無いのだ。

「バレなきゃ、問題ないさ」

「バレたら面白いのにね」

軽口を叩く２人だが飛龍は既にこの世にいない。

彼の軽率な判断で殺してしまったのだ。

「なぁ、飛龍。俺さお前に殺される覚悟は出来てる。だからサックリやっちゃってくれ」

飛龍の一言に眉をしかめた提督だったが彼は口を閉じて次の言葉を待った。

今の彼に飛龍へ文句を付ける資格など皆無なのだ。

「すぐに死ぬなんてそんなこと私が許さないわ。あなたが死んでしまったらほかの子達が悲しむじゃない」

「む、そいつは考えてなかった」

あなたは本当に周りを見ないわよねぇと飛龍

彼はこの鎮守府の守りの要なのである、自分の意思で生き死にを決められる簡単な立場ではないのである。

「あなたが好んで読んでた漫画にもあったじゃない。死ぬのは逃げてしかないって」

「確かにそんなセリフもあったけなぁ」

「あなたの鎮守府にはいづれまた私が来る。

顔が同じなだけでほかは何もかもが違う私が来るわ」

それを今までの私と同じように扱うことがあなたへの罰よ、飛龍はここまで一息にいうと口を閉じた。

「お前にしちゃなかなか優しい罰だな」

「あら？本当にそう思うのかしら？提督」

飛龍はこう言うとにこやかな笑みを浮かべながら口を開いた。

「コレが私が考えうる中でも最悪の罰だと、私を落としたペナルティだと思うわよ」

「空母戦はお任せ下さい!!」

分かっている、彼女が着任した時もまた同じ事を行っていた気がする。

「あぁ期待しているぞ飛龍」

彼女と同じ名前を持つ目の前の女性は全てが希望に満ちているかのような瞳でこちらを見ていた。

(確かにコイツは格別だな、飛龍)

目の前の女性は死んだ飛龍と顔も姿も声も服も何もかもが全て同じ

(こいつ等兵器って言えなくなんじゃん)

なのに何かが違う、決定的に何かが違うのだ。

「飛龍きたまえ」

「戦闘でしょうか？」

あぁ分かった、いや目を逸らしていたというべきか

「何を言うか、君を歓迎するために食事を用意しているんだ、それを無駄になどしたく無いだろう？」

彼女は飛龍であって飛龍ではない。

俺の知る飛龍はもうこの世に居ないのだ。

あぁ神よ、何故あなたは我々人類にこのような試練を与えるのか

コレは我ら特A級提督が辿るifの物語である