2015-07-13 15:53:08 更新

概要

ひょんなことから狂戦士(バーサーカー)の霊に取り憑かれた花陽。その溢れる力は世にはびこる悪を駆逐していくものの、行き過ぎた暴力に花陽自身は思い悩み…。かよちん主役のバイオレンスコメディなお話です。


前書き

完結はさせていたのですが、せっかくコメントをいただいたのでお話を続けてみました。かよちんのキャラぶれは心臓によくないという方は閲覧注意です。念のためタグでグロテスク描写とは入れてますが、そうでもないと思います…。


【第1章 目覚める力】


休日 商店街


凛「かよちん、早く早く~」


花陽「り、凛ちゃん待ってぇ」ゼイゼイ


凛「早くしないと野菜たっぷり粗塩らーめん売り切れちゃうよー」


花陽「そ、そうは言っても、これ以上早くは走れないよぉ~」ハァハァ


凛「ランチタイムは炊き立て白飯がおかわり自由だよ」


花陽「凛ちゃん、何してるの急ぐよ!」ダッ


凛「は、早いにゃあ…」


――

ラーメン屋前


凛「かよちん、ここだよ」


花陽「まだ開店前なのに、もう列ができてるね」


凛「ここの粗塩らーめんはテレビで紹介されるくらい美味しいんだよ」


花陽「確か、一日限定10杯までだっけ?」


凛「そう!スープにこだわってるから、10杯限定なんだよね」


花陽「人が多いけど…私たちの分まで残るかなぁ?」


凛「えーと、1人、2人…」


――

凛「…7人、8人。やった!ちょうど凛たちで10人だよ!」


花陽「よかったね、凛ちゃん!」


凛「テレビで紹介されてるから、一度は食べてみたかったんだよね~」ワクワク


花陽「私も楽しみだよ。塩味の効いたスープとご飯…きっとすっごく合うはず!」


凛「そろそろ開店するはずにゃー」


女子高生1「…」スッ


凛「にゃ?」


――

凛「あ、あのー…。すみません、並んでるんですけど…」


女子高生1「はぁ?それが何?」


凛「そ、その、順番はちゃんと守ってください…」


女子高生1「意味わかんないし。ねー、私たちちゃんと並んでたよねー?」クスクス


女子高生2「そーそー。言いがかりとかまぢやめてくれませんー?」ケラケラ


凛「そ、そんな…。どう見たって横入りしてるのに…」


――

女子高生1「あー、もううざい!何?アンタたちが先に並んでたってでも言うわけ?ないわー」


女子高生2「てゆーかさァ、今は私たちが前でしょ?ほら、順番はちゃんと守らなきゃ」アハハ


凛「こ、こんなのひどいよ。せっかく並んだのに…」グスッ


花陽「凛ちゃん…」


花陽「…」


ブチッ


――

花陽「…」スッ


女子高生1「は?何ですかー、まだ文句あるんですかー?」


花陽「…もう一度だけ言います。順番はちゃんと守ってください」


女子高生2「うっざ。もうやめてくれませんー?」


花陽「…」


女子高生1「何だよ、その顔は。文句あんのかよ!」


ドンッ


花陽「…ッ!」ヨロッ


凛「か、かよちん!」


――

女子高生2「ほらほら、さっさとおうちに帰りなって」ゲラゲラ


花陽「…」


女子高生1「あァン?やんのかよ、おまえ?」ズイッ


花陽「…どうやら言っても無駄のようですね」


ドスッ


――

女子高生1「…ッがは!?」ガクッ


女子高生2「…え?お、おい!何したんだよおまえ!?」


花陽「…肋骨を4対へし折っただけです。死ぬことはありません」


女子高生1「ぐ…かっ、はー、はー…」ガクガク


花陽「…もっとも、次は肋間動脈を破裂させますけどね。そうなればただでは済みませんよ?」スッ


女子高生2「ひぃっ!?こ、こいつやばい…!に、逃げなきゃ…」


花陽「逃がしません」


ガッ


女子高生2「ぎゃあぁああっ!?」


――

女子高生2「痛いっ、痛いぃいい!」ジタバタ


花陽「前十字靭帯を断裂させました。その脚では逃げることは不可能です」


女子高生2「ひいぃいっ!ち、近寄るなぁああぁ!」


花陽「いま楽にしてあげますよ…」スッ


女子高生2「や、やだっ!た、助けて!何でもするからっ!」


――

花陽「それなら…横入りしたことを認めて、凛ちゃんに謝ってください」


女子高生2「す、すみませんでした!許してください、お願いします!ほら、おまえも!」ゲザァ


女子高生1「す、すみません、でし…た…」ガクガク


花陽「…凛ちゃん、もう少し痛めつけておく?」


女子高生2「ひぃいぃっ!?」


凛「り、凛はもう十分だよ!」アセアセ


花陽「…命拾いしましたね。さぁ、早くどこへなりとも消え失せてください」


女子高生2「し、失礼しましたぁ…」ヨロヨロ


女子高生1「かっ…げほっ、ごほっ。うぅ…」フラフラ


――

花陽「…あれ?」


凛「かよちん、いくらなんでもやりすぎだよ…」ビクビク


花陽「…いけない。私、またやっちゃった…」


凛「で、でも…かよちんが凛のために怒ってくれて…嬉しかったよ」


花陽「凛ちゃん…」


――

花陽「(こんな風に怒りが抑えられずに暴力に訴えてしまうこと…今回が初めてではありません)」


花陽「(最近、どうにも怒りの感情が抑えきれないことがよくあります)」


花陽「(つい先日だって…)」


――

3日前 近所のスーパー


花陽「何かご飯に合うおかずはないかなー」キョロキョロ


花陽「イカの塩辛!これは白いご飯が止まらなくなりそう!」


花陽「でも、塩分が多いんだよね…」ハァ


花陽「カロリーだけじゃなくて、塩分にも気を付けないとね」


花陽「他にはないかなー」


花陽「あれっ?あそこにいるのは…」


――

亜里沙「だ、だから違います!私、やってません!」


店員「嘘つけ!おまえがうちの商品をカバンに入れたの、こちとらしっかり見てんだよ!」


花陽「絵里ちゃんの妹さんの…亜里沙ちゃんだ」


花陽「な、何かもめてるみたい…」


――

店員「盗んでねぇって言うなら、カバンの中身おとなしく見せろ!」


亜里沙「い、いやです!私、本当にやってません!」


花陽「亜里沙ちゃん、大丈夫…?」


亜里沙「は、花陽さん…」


花陽「いったい何があったんですか?」


――

店員「どうもこうもねぇよ。このガキがうちの商品を万引きしやがったんだよ!」


亜里沙「違います!そんなことしてません!」


店員「だったらカバンよこしやがれ!あんまり大人を舐めてんじゃねぇぞコラ!」


亜里沙「ひっ…」ビクッ


店員「とっととよこすんだよ!」グイッ


亜里沙「あっ!か、返してください!」


――

店員「往生際が悪ぃな。見てろ、いまに動かぬ証拠が出るんだからな」ガサゴソ


店員「ん…?」ガサゴソ


店員「あり…?入ってねぇや」


店員「ちっ!次からは紛らわしいことすんじゃねーぞ!」ポイッ


ドサッ


――

亜里沙「こんな…こんなことって…」グスッ


亜里沙「私、何もしてないのに…万引きしたって疑われるなんて…」


亜里沙「ひ、ひどいよぉ…」グスン


花陽「亜里沙ちゃん…」


花陽「…」


ブチッ


――

花陽「…」スッ


店員「あ?何だおめーは」


花陽「…謝ってください」


店員「はぁ?」


花陽「亜里沙ちゃんを疑ったこと…謝ってください」


店員「なんじゃそりゃ、意味わかんねーし」


――

店員「こちとらよ、万引きは死活問題なんだよ」


店員「その万引きをしょっぴくのが俺の仕事なの。仕事にケチつけられちゃたまんねぇぜ」


店員「だいたいよぉ、あのガキが紛らわしいことするからいけねーんだよ!」


花陽「…言い訳はそれだけですか?」


店員「はァ!?」


――

店員「てめぇ、俺をおちょくってんのか?あ?」グッ


花陽「…」


亜里沙「は、花陽さん…!」


店員「なんだその生意気な顔は?痛い目みねぇとわかんねぇってか?」スッ


亜里沙「や、やめてェ!」


バキッ


――

店員「ご、ごふっ…!?」バタ


花陽「…汚い手で私に触らないでください」


ズンッ


店員「ぐぎゃぁあああぁッ!?」ビクン


花陽「…顔を踏まれたくらいで大袈裟ですね」スッ


店員「ひぃっ!?」


グチャッ


――

店員「びゃああぁぁああッ!血、血がぁああっ!」ジタバタ


花陽「…額はわずかな切傷でも出血します。それくらい、何ともないはずですが?」


ゲシッ


店員「うぶっ!げ、げぇぇえぇッ」


花陽「…醜いですね」


花陽「…あなたのような屑に人間の身体は不相応です。返してもらいましょうか」


花陽「…四肢をもいで、臓物を引き抜きます。覚悟してくださいね」


店員「た、た、助けてェ!」


――

花陽「…その眼、何よりも汚らわしいです。他人を見下すことにしか使ってこなかったのですか?」


花陽「…決めました。まずはその眼を返してもらいます」


店員「いっ、いひぃいぃッ!?」


花陽「…安心してください。眼球を引き抜かれた痛みは視神経の麻痺でそう長くは続きません」


花陽「…せいぜい痛みのピークは90秒です」スッ


店員「は、はひ…ひ…や、やめ…」ガタガタ


シャアアァ


――

花陽「…恐怖のあまり失禁しましたね」


花陽「そんなことをするひまがあったら、亜里沙ちゃんに非礼をわびてください」


店員「あ、あひ…す、すみ…すみませんでした…」ガタガタ


花陽「…どうします。右腕の一本でももらっておきますか」


店員「あばばばっ、や、やめ、ひぃっ…許じでぇえ…」ゲザァ


亜里沙「は、花陽さん、もう十分です!」


――

回想終わり


花陽「(私、いったいどうしちゃったんだろう…)」


花陽「(何かの病気なのかなぁ)」


花陽「(このままだと、凛ちゃんたちも怖がらせちゃうし…)」


花陽「(困ったなぁ…)」ハァ


――

翌日 放課後 部室


花陽「またあんな風になるかと思うと…憂鬱だなぁ」


希「どないしたん、花陽ちゃん?なんや元気なさそうやけど」


花陽「希ちゃん…」


花陽「(希ちゃんなら、何かいい解決方法を知ってないかな?)」


花陽「あのね、希ちゃん。ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」


希「うちでよければ喜んで協力するよ」


――

花陽「…かいつまんで言うと、こういう感じなんだけど」


希「なるほど。もしかすると花陽ちゃんには何か憑いてるのかもしれんなぁ」


花陽「ま、まさか幽霊!?」ビクビク


希「ちょっと確かめてみよか」


――

希「蜜蝋3本に青銅縁の鏡が3台、それに香木…」


にこ「ちょっと、何を始める気よ?」


希「花陽ちゃんに何か憑いとるかもしれんから、対話して確かめるんや」


にこ「た、対話?誰とよ?」


希「それはあちらさんに聞いてみないとわからんなぁ。あ、にこっち。部室の電気消してもらってもえぇかな?」


にこ「…まったくスピリチュアルね」カチッ


――

希「これで準備万端や。花陽ちゃん、この鏡を並べた中心に座ってもらえる?」


花陽「は、はい…」


希「それじゃあ、蜜蝋に火ぃ点けるで」シュッ


にこ「マッチ常備してるスクールアイドルってのもどうなのよ…」


希「せやかて、これが顕霊術式に必要なんやもん」


にこ「というか、そもそも何で蝋燭やら鏡が部室にあるのよ」


希「にこっち、細かいこと気にしたらあかんよ」


――

希「香木を焚いて…っと」


にこ「煙いわねー」ゲホゲホ


希「花陽ちゃん、眼を閉じてリラックスしてみて」


花陽「はい…」


希「うん…波長もちょうどええ感じや」


にこ「あたしには何がナニやらさっぱりよ…」


フワァ


にこ「ひっ!?」


――

にこ「な、何よコレ!?ひ、人魂?エクトプラズム?」アタフタ


希「どうやらうまくいったみたいやね」


にこ「あわわわ…」


希「それじゃあ、ぼちぼち話を始めよか」


希「…うんうん、なるほど。そういうこと、なるほどねぇ」


希「…ようわかったわ。ほな、まいどおおきに」


フッ


にこ「消えた!?」


――

希「花陽ちゃん、原因がわかったよ」


花陽「いったい私の身に何が…」


希「花陽ちゃんには古代の狂戦士の霊が憑いてるみたいや」


にこ「それはまたすごいモノが憑いたわね…」


希「花陽ちゃんに怒りの感情が芽生える時、狂戦士の魂が目覚めて、とてつもない力が溢れるみたいやね」


花陽「だから私にあんな力が…」


――

にこ「物騒な話ね。希、なんとか除霊できないの?」


希「別に何ともせんでええんちゃう?」


にこ「はぁ!?何言ってんのよ!狂戦士よ、狂戦士!下手すると学校ごと破壊されるわよ!」


花陽「わ、私のせいでそんなことになったら困るよぉ…」


希「…花陽ちゃん、思い出してみ。花陽ちゃんが力に目覚める時、それはどんな時やった?」


花陽「えぇと、それは…」


希「花陽ちゃんにとって大切なひとが困ってる時…とちゃうかな」


花陽「うん…」


――

希「それなら、そのままでもええんやないの?やり方は多少荒っぽいかもしれんけど、間違ったことはしてないやろ?」


花陽「そ、そうなのかな?」


希「大切なひとを護りたい強い心…狂戦士さんが花陽ちゃんに惹かれたのもわかる気がするわ。武人は曇りない澄んだ心を求めるゆうしなぁ」


花陽「わ、私は…」


花陽「暴力は…よくないと思う…」


花陽「でも…」


花陽「みんなが悲しんでるのは…耐えられないの…」


希「花陽ちゃん、自分の決断にもっと自信を持ってええんやで」ポン


花陽「ありがとう、希ちゃん…」


にこ「え、本当にいいのこれで?思いっきり暴力肯定してない?」


希「にこっち、あんまり難癖つけると花陽ちゃんにしばかれるで」クスッ


にこ「ぴょえっ!?」


花陽「に、にこちゃんにそんなことしないよぉ~」アセアセ


――

夕方 通学路


花陽「希ちゃんはああ言ってくれたけど…」


花陽「やっぱり、この力は危険だよね」


花陽「気を付けないと、またなるかもしれないし…」


花陽「とにかく、あんまり怒らないようにしなきゃ」


花陽「カルシウムを摂った方がいいのかな?」


花陽「そうなると、牛乳かな…」


花陽「でも、ご飯と牛乳はあんまり合わないよね」


花陽「何か牛乳に合うものは…」


花陽「そうだ、穂乃果ちゃんのお店で何かお菓子を買っていこうっと」


――

穂むら


雪穂「いらっしゃいませ」


DQN1「おう、ここだよここ」ワイワイ


DQN2「μ’sの高坂穂乃果の実家ってここだろ?テンション上がるわ~」ウェーイ


雪穂「ち、ちょっと…」


DQN3「記念写メ撮っぺ」カシャカシャ


DQN4「おい、おめーらも真ん中寄れってば」ガヤガヤ


雪穂「あ、あの…写真撮影はお断りしていまして…」


――

DQN1「は?何、それがお客様に対する態度なの?」


雪穂「い、いや、その…」


DQN2「あー!よく見たら穂乃果の妹の雪穂ちゃんじゃねーか!ナマで見た方がかわいいわ~」


DQN4「ネットにあがってる写真よりいいじゃねーか」


雪穂「ね、ネットに?」


DQN3「俺らみたいなモノホンのμ’sファンなら、メンバーの家族構成まで押さえんのは当たり前だよなァ?」


雪穂「なにそれ、怖い…」


――

穂乃果「ただいまー」ガラッ


DQN2「うぉおおー!穂乃果だ、穂乃果!」


DQN3「これは撮るしかないっしょ」カシャカシャ


DQN4「ちょ、俺とのツーショットで写せやwwww」


穂乃果「あ、あれ?どうなってるのこれは…。穂乃果、事態が飲み込めないんだけど…」


雪穂「お姉ちゃん、何とかしてー!」


穂乃果「な、何とかって言われても…」オロオロ


――

DQN2「穂乃果、何か歌ってよ。ほらほら」


穂乃果「えぇ!?そんな急に言われても…」


DQN4「ほら、雪穂ちゃんも一緒に」ギュッ


雪穂「や、やだ!離して!」ドンッ


DQN4「痛って!」ドテン


雪穂「あっ…」


――

DQN4「あー痛いわー。骨軽く折れてるわー」サスサス


雪穂「そ、そんなわけ…」


DQN1「何おまえ?俺のダチに手ェあげといて、謝罪の一言もなし?」ガシッ


雪穂「ひぃっ!」


穂乃果「や、やめて!雪穂に乱暴しないで!」


――

DQN4「あー、これは弁償モンだわ。慰謝料もらわないとなー」


DQN2「高坂穂乃果の店行ったら怪我させられましたなうって呟いちゃう?」


DQN3「きっとファンが離れるわな~」


DQN1「ついでに饅頭につまようじが刺さってたって書いとけ」


穂乃果「そ、そんなことされたら困るよ!」


DQN4「それじゃ弁償してもらわないとねー。あ、カラダで払ってもらってもいいけど」ヘラヘラ


穂乃果「うぅ…」


花陽「お邪魔しまーす」ガラッ


――

穂乃果「花陽ちゃん!?」


DQN2「おいおい、かよちんまで登場かよー!」


DQN3「キタコレ!せーのっ、ダレカタスケテー!」


DQN4「チョットマッテテー!」


DQN2「まじウケるんですけどwwww」


花陽「ほ、穂乃果ちゃん。ドウナッテルノォオ!?」


穂乃果「私にもわからないよー!」


――

DQN1「かよちん、けっこう胸あんじゃん」サワッ


花陽「ピャア!?」


DQN2「俺にも触らせてよ~」


DQN3「これいいブログのネタになるわwwww」


DQN4「てめーだけずりーぞ!」


DQN1「うっせ、早いもん勝ちだ」ワシワシ


花陽「ダ、ダレカタスケテー!」


穂乃果「やめて!」


パシッ


――

DQN1「…てめ、今何しやがった?」ギロリ


DQN2「あーこりゃまずいわー。よりによってDQN1さんにビンタしちゃうとかー」


DQN3「DQN1さん怒らせたら怖いぜー?」


DQN4「さっさと土下座しろよ、土下座wwww」


穂乃果「…嫌だ」


DQN1「あァン!?」


――

穂乃果「…私の大切な友だちにひどいことしたんだから、謝るのはそっちの方でしょ」


DQN1「うっせ、このアマ!」


バンッ


穂乃果「きゃっ!?」ドタッ


DQN1「舐めてんじゃねぇぞゴルァ!」


ゲシッ


穂乃果「あぐうっ!」


雪穂「や、やめてぇ!」


DQN1「ほれほれ、さっきの勇ましい友情ごっこ見せてみろよ」


ガッ


穂乃果「げふっ!」


花陽「穂乃果ちゃん…!」


花陽「…」


ブチッ


――

DQN1「へっ、少しばかりスクールアイドルで目立ってるからって調子乗ってんじゃねぇぞ!」


ドゴッ


DQN1「ぶふぉッ!?」ドタッ


花陽「…」


雪穂「は、花陽さん…!?」


花陽「…生きている意味がまるで見出せませんね」


ガッ


DQN1「ぎゃああぁああぁあッ!」ゴロゴロ


DQN2「DQN1さんっ!?」


花陽「…あなたのようなモノが生きているのは生命に対する冒涜です」


グシャッ


――

DQN1「びぃやぁああアッ!?痛いいだい痛いイダイぃぃいいぃッ!」ジタバタ


花陽「…腎臓を一ついただきました。まだ一つありますから安心してください」


DQN4「て、てめぇ!よくもDQN1さんを…!」


ビチャッ


DQN4「…」バタリ


花陽「…失礼。聴こえませんでしたので、もう一度言ってもらえますか?あぁ、その状況では喋ることは無理でしたね」


DQN3「ひいぃぃッ!ば、化け物だぁッ!」


DQN2「ず、ずらかるぞ!」


グチャッ メキィ


――

DQN3「…」ガクッ


DQN2「…」ピクピク


花陽「…逃がすとでも思いましたか?おめでたいひとたちですね」


DQN1「いぎゃあぁあアぁああぁッ!痛い、痛い痛い痛いぃいぃぃッ!」


花陽「…静かにしてください。ここは店内ですよ」


ブジュッ


DQN1「っうひっ、はっ、あかぁっ…」カクカク


花陽「…やかましい舌は引き抜かせてもらいました。よかったですね、地獄で引き抜く手間が省けましたよ」


――

花陽「さてと…それでは一人ずつ始末しましょうか」


DQN2「ひ、ひいぃっ!?」ガタガタ


花陽「…穂乃果ちゃんと雪穂ちゃんにしたことをわびれば、命だけは助けますがね」


DQN2「あぁあぁ、あ、謝ります!すみませんでしたァ!」ゲザァ


DQN3「も、もうごんなごとばじまぜん…。ゆ、許じでぐだざい…」エグッエグッ


DQN4「すみませんでした…。い、命だけはッ…」ゲザァ


DQN1「はっ、かはぁっ、う、えひっ…」ガタガタ


――

花陽「…穂乃果ちゃん、雪穂ちゃん。このひとたちを許す?足りなければ、私がいくらでも責め苛むけど」


DQN2「や、あわ、ゆ、許してくださいっ!お願いしますぅ!」ガタガタ


穂乃果「も、もういいよ花陽ちゃん!ね、雪穂!」


雪穂「は、はい。もう十分です!」


花陽「…二人の寛大さに感謝することですね。私がとどめをささないうちに出て行きなさい」


DQN2「す、すみませんでしたァ!し、失礼します…」


DQN3「ま、待ってくれぇ!俺、脚がもう…」


DQN4「ばかやろ、ここにいたら殺されるぞ!這ってでも出るしかねぇよ!」


DQN1「はぶっ、ふー、はっ、ひはっ…」


――

花陽「…はぁ」


花陽「さっき決めたばっかりなのに…またやっちゃったよ…」


花陽「ごめんね。穂乃果ちゃん、雪穂ちゃん。お店の中を血で汚しちゃって…」


穂乃果「そ、そんなことないよ!私たちの方が花陽ちゃんに感謝する側だよ!」


雪穂「花陽さん、本当にありがとうございました。花陽さんが来てくれなかったら、私たち今頃…」


花陽「そ、そんな…私はただ、闇雲に暴力を振るっただけで…」


――

穂乃果「でも、花陽ちゃんのおかげで、私と雪穂は助かったんだよ」


穂乃果「確かに、そばで見ててちょっと怖かったけど…」


穂乃果「花陽ちゃんが穂乃果たちを護ってくれる姿…かっこよかったよ」


花陽「穂乃果ちゃん…」


――

私には今でもわかりません


自分のしていることが正しいのか


これは正義ではなく、ただの暴力なのかもしれません


でも、護りたいひとがいるかぎり


私はこの力を使うことに迷いはありません


――

【第2章 甦りし狂戦士】


休日 夕方 駅のホーム


にこ「ったく…せっかく遠出したっていうのに、まるで収穫なしとはね」ハァ


花陽「たまにはこういうこともあるよ」


にこ「それにしたって、情報がガセってどういうことよ!?」キィー


花陽「わ、私に言われても…」


にこ「あの伝説のアイドルグループ、さわ~ぱしもんの限定サイン色紙があるって聞いたから、わざわざあんな遠いショップまで行ったってのに…」


花陽「ネットの情報じゃそんなものだよ…」


にこ「もう二度とあのサイトは信用しないわ!このにこにーに無駄足を踏ませてぇ…」イライラ


花陽「次はきっと掘り出し物が手に入るよ」


――

にこ「あ~もうっ、今日は朝から早起きしてまで行ったからへとへとよ…」


花陽「ずいぶん遠くのアイドルショップだったもんね…」


にこ「へんぴなところで個人経営とか、いかにもレアものがありそうな雰囲気だったのに…」


花陽「期待してた分、がっかりだったね」


にこ「あぁ、ようやく電車がきたわよ。もう今日は早く帰って寝たいわ…」


――

電車内


にこ「うえっ、けっこう込んでるわね…」


花陽「これじゃ座れないね」


にこ「くうぅぅ、もうにこにーの足腰のライフはゼロよ!」


花陽「立ってるしかなさそうだね」


にこ「ああもうっ、誰でもいいから早く降りないかしら…」イライラ


――

20分後


にこ「にっごおぉお!誰も降りないじゃない!」


花陽「もうあと2駅だよ?」


にこ「それどころか、ますます込んできたわね…」


花陽「にこちゃん、あと少しの辛抱だよ」


にこ「ったく、なんて日なのよ…」


サワッ


にこ「んっ!?」ビクッ


――

にこ「(な、何なの!?誰かあたしのおしりを触って…)」


サラリーマン「…」ニヤニヤ


にこ「(ぐっ、位置からいってもこいつね…)」


モニュッ


にこ「(ちょ、やめっ!//)」


花陽「にこちゃん、どうかした?」


にこ「(ぐっ…、この位置だと花陽にもばれないわね。よく考えたものだわ…)」


サワサワッ


にこ「(や、やだっ!こいつ、下着にまで手を…!)」


――

サラリーマン「~♪」ニヤニヤ


にこ「(ぐうぅ、やってくれるじゃないの!よくも大銀河宇宙ナンバーワンアイドルのにこにーのおしりを…)」


にこ「(けどね、あたしは黙って泣き寝入りなんかしないわよ!)」


にこ「(次に触ってきたら、いたずらがすぎるその腕をひっつかんでやるんだから!)」


モミッ


にこ「(きた…!)」


ガシッ


――

にこ「ちょっと、あんた!これはどういうつもりよ!?」


サラリーマン「えっ、何のことだい?」スットボケ


花陽「にこちゃん!?」


にこ「しらばっくれるんじゃないわよ!あたしのおしりを触ったでしょーが!」


サラリーマン「そ、そんなこと…」アセアセ


エーナニナニ?


チカンカー?


にこ「この手が何よりの証拠よ!あたしは間違いなく触ってきた手を掴んだわ!」グイッ


サラリーマン「うぐぐ…」


バカナヤツダナー


サイテーネー


にこ「次の駅で降りてもらうわよ。逃げたら承知しないんだから!」


サラリーマン「ぷっ、ははははっ!」


花陽「!?」


――

にこ「な、何がおかしいのよ!」


サラリーマン「いやぁ、困るんだよねぇ。これってよくある痴漢冤罪ってやつでしょ?」


にこ「な…!冤罪も何も、あんたがやったんでしょうが!」


サラリーマン「じゃあ聞くけど、証拠はどこにあるの?」


にこ「あたしが掴んだあんたの手が何よりの証拠よ!」


サラリーマン「それだけ?たまたま僕の手をキミが掴んだだけじゃないの?」


にこ「そ、そんなの言いがかりよ!」


――

サラリーマン「言いがかりはキミの方だろ?どなたか、僕がこの子に痴漢をしたのを目撃した方はいますかー?」


オマエ、ミナカッタ?


ダッテ、コノコミグアイジャワカンナイワヨ


ワイワイガヤガヤ


サラリーマン「誰も見てないみたいだね」ニヤリ


にこ「そ、そんなこと言ったって惑わされないわよ!あんたのこと、警察に突き出してやるからね!」


サラリーマン「本当にそれでいいのかな?」


にこ「な、何が言いたいのよ!?」


――

サラリーマン「あのねぇ、キミが僕のことを警察に突き出したとして、僕が無実だったらどうするわけ?」


にこ「そ、そんなわけ…。あんたは明らかにやってるじゃない!」


サラリーマン「虚偽告訴罪。これは立派な犯罪だよ」


にこ「は、犯罪!?」


サラリーマン「キミは未成年だろうけど、場合によっては実刑も覚悟しておいた方がいいよ。なんせ最近はキミみたいに痴漢冤罪で慰謝料をせしめようっていう不逞な輩があふれてるから、警察も慎重に調べるだろうしね」


エー、ソレジャエンザイダッタノー?


カワイイカオシテ、コエーコトスルナー


にこ「あ、あたしは本当に…」


サラリーマン「名誉棄損でとんでもない慰謝料を払うのはキミの方だよ?そんなことになったら、キミの学校生活も、キミの家族の生活もメチャクチャだろうね」


にこ「うっ…」


サラリーマン「さぁ、どうするつもりだい。キミがその気なら、こっちも徹底的に戦わせてもらうよ」


にこ「…」


サラリーマン「無言は敗北を認めたと受け取っておくよ。それじゃあ僕は、次の駅で降りるからね」ニヤニヤ


――

花陽「にこちゃん…」


にこ「く、悔しいけど証拠がないわ。あたしのせいで、家族にまで迷惑はかけられないもの…」グスッ


花陽「ごめんね、私もあのひとが痴漢した瞬間は見てなくて…」


にこ「いいのよ。き、今日は本当に散々な日ね…」ヒクッ


花陽「にこちゃん…」


花陽「…」


ブチッ


――

サラリーマン「(やれやれ、腕を掴まれた時は冷や冷やしたよ)」


サラリーマン「(バカな女子高生で助かったなぁ。痴漢の情報交換サイトで仕入れた法律知識は役に立つね)」


サラリーマン「(もっともらしいことを言われてぐうの音も出てないでやんの。これだから偏差値の低い子はおいしいよね)」


サラリーマン「(さーてと、路線を変えてもう一人くらい触っちゃおうかな)」


ガシッ


サラリーマン「ほえっ!?」


――

花陽「…」


サラリーマン「な、なんだいキミは?」


花陽「素直に認めてください。あなた、痴漢をしましたよね?」


サラリーマン「だ、だから僕はやってないって!」


花陽「もう一度だけ言います。認めてください」


サラリーマン「はぁ、くどいなぁ。だったら、その前に証拠を見せなよ。証拠を!」


グキィ


サラリーマン「びええっ!?」


――

花陽「…証拠などいりません」


サラリーマン「そ、そんな横暴な…」


ギリギリッ


サラリーマン「びゃあああぁっ!?」


花陽「あと数秒で橈骨が砕けますよ?」


サラリーマン「ま、まさかそんな…」


ゴキイッ


――

サラリーマン「ぎゃああああぁあぁあ!?」ジタバタ


花陽「警告はしましたよ。数秒の猶予を無駄にするとは愚かですね」


サラリーマン「や、やめてくれえええぇぇ!」


花陽「それでは、にこちゃんにしたことを正直に認めて謝ってください」


サラリーマン「だ、だから証拠はないって…」


花陽「口を開けばそれですか」グイッ


ドサッ


サラリーマン「痛って!」


花陽「言い訳の前に謝罪をしておくべきでしたね」


グチャアァ


――

サラリーマン「ぴぎゃああぁぁああ!?僕の腕があああぁぁあ!」バタバタ


花陽「失礼、橈骨を砕くつもりが肘関節まで砕いてしまいました。まぁ、わざとですけどね」


サラリーマン「ひっ、ひぎいぃいぃ…」


花陽「ここは公平な裁判所ではありません。私の私刑場です。ここでの裁きには証拠はいりません。強いて言うならば、あなたの邪な心こそが裁きを下すための証拠です」


サラリーマン「ひいいいぃぃ。ゆ、許じでぐだざいいいぃ…」ガタガタ


花陽「さて、それでは歯を一本ずつ抜いていきましょうか」


サラリーマン「びええぇえぇえ!?」


――

サラリーマン「うぁ…あ、僕です!僕がやりました!痴漢をしたのは僕です!ごめんなさい、許じでぐだざいいぃいぃ!」


ヤッパリアイツダッタンダナ


ソウイウカオシテタモンネー


花陽「どうする、にこちゃん。二度とこんなことができないように、両腕を切り落とそうか?次の駅なら快速列車が通るから、簡単にできるよ」


サラリーマン「ひいいいぃぃ!?」ブルブル


にこ「も、もういいから!十分な報いは受けさせたわよ!」


花陽「そう…。ちょうど次の駅に着きましたね。不浄の輩は速やかに出て行きなさい」


サラリーマン「は、はい…。ずみまぜんでじだぁ…」ガタガタ


――

花陽「…あっ」


にこ「ようやく戻った?」


花陽「私、またやっちゃったのかな?」オロオロ


にこ「そりゃもう、派手にやってたわよ」


花陽「ううぅ、全然自制できてないよ~」


にこ「確かに加減が必要ね。まぁ、今回はあたしも助かったけど。あのムカつく痴漢男が花陽に土下座までさせられてせいせいしたわ。ありがとね、花陽」


花陽「にこちゃん…」


――

翌日 放課後 部室


花陽「この力、なんとかならないのかなぁ…」ハァ


ことり「花陽ちゃん、元気がないみたいだけど大丈夫?」


花陽「ことりちゃん…」


ことり「もしかして、例の力のこと?」


花陽「うん…」


――

ことり「穂乃果ちゃんたちから話は聞いたよ。花陽ちゃん、すごい力が使えるようになったんだよね」


花陽「すごくなんかないよ。ただの暴力だもん…」


ことり「そうかなぁ?私はすごいと思うよ。花陽ちゃんのおかげでみんなが助けてもらってるもん」


ことり「穂乃果ちゃんなんかね、花陽ちゃんにすっごく感謝してたよ。穂むらで花陽ちゃんに護ってもらったことを話すときなんか、眼をきらきらさせてたから」


ことり「私はうらやましいな、花陽ちゃんの力が。花陽ちゃんの力は、みんなを幸せにしてくれるんだよ」


花陽「ことりちゃん…」


――

ことり「だから、花陽ちゃんは自分の力にもっと自信を持っていいと思うよ」


花陽「ありがとう、ことりちゃん。ことりちゃんのおかげで元気が出てきたよ」


ことり「どういたしまして。そうだ、花陽ちゃん。よかったら今度の日曜にうちに遊びに来ない?」


花陽「いいの?」


ことり「花陽ちゃんの気分転換になればいいかなって。おいしいお菓子作って待ってるね」


花陽「ありがとう!楽しみにしてるよ」


――

日曜 午前 南家キッチン


ことり「今日は花陽ちゃんが遊びに来てくれるから、お菓子作りも張り切っちゃうよ♪」


ことり「花陽ちゃんは午後に来る予定だから、今から作り始めればちょうど間に合うよね」


ことり「とびっきりおいしいチーズケーキを作るよ~」ルンルン


ことり「まずは下準備…っと」


――

ことり「今回はタルトのところもこだわっちゃうよ」


ことり「ふわっふわのチーズケーキにはこのサクサク感が絶妙だもんね」


ことり「作り方はこの間予習しておいたし、てきぱき進めるよっ」


ことり「ふふっ、花陽ちゃんが喜んでくれるといいなぁ」


――

1時間後


ことり「そろそろ焼き終わったかなぁ。オーブンは…」ガチャッ


ことり「やった、きれいに焼けてる!」


ことり「えへへ、この間練習しておいてよかったぁ♪」


ことり「冷蔵庫で冷やしたしっとりチーズケーキもおいしいけど、今日は熱々のふわふわチーズケーキ!」


ことり「とりあえずキッチンに置いておこう」ヨイショ


ことり「そろそろ花陽ちゃんが来る頃だね」


ピンポーン


ことり「タイミングもばっちり!はーい、いま行きまーす」トテトテ


――

南家 玄関


ことり「花陽ちゃん、いらっしゃい」ガチャ


花陽「ことりちゃん、こんにちは。ちょっと早かったけどよかった?」


ことり「気にしないで。花陽ちゃんが早く来てくれた方が、ちょっとでも長く一緒にいられるから私も嬉しいよ」


花陽「ことりちゃん…」


ことり「さ、あがってあがって」


花陽「お邪魔しま~す」


――

ことり「私の部屋は突き当りの右の部屋だから、とりあえずゆっくりしていてね。いま、お茶を淹れてくるから」


花陽「ありがとう、ことりちゃん。なんだか気を遣わせちゃってごめんね」


ことり「そんなことないよ。花陽ちゃんが来てくれて嬉しいのは私の方だもん。ちょっと待っててね~」


――

キッチン


ことり「紅茶を淹れて…っと」


ことり「チーズケーキはどうしよう?もう持って行っちゃってもいいかな?」


ことり「でも、おやつの時間にはちょっと早いよね。花陽ちゃんがいつお昼を食べたのかもまだ聞いてないし…」


ことり「とりあえず紅茶だけ持って行って、チーズケーキはもう少ししたら持って行こう。おなかいっぱいの時に食べてもなんだもんね」トテトテ






ガサッ


――

カサカサ


ガサッ


(・8・)「チュン♪」ヒョコッ


(・8・)「トッテモヒロイチュン。ココヲチュンチュンノオウチニスルチュン」ルンルン


(・8・)「チュン?ナンダカイイニオイガスルチュン!」トコトコ


(・8・)「チュンチュンノオヤツニスルチュン!」


――

(・8・)「ニオイハスルノニミツカラナイチュン…」キョロキョロ


(・8・)「チュン?」チラッ


(・8・)「ミツケタチュン!チーユケーキチュン!」ピョンピョンッ


(・8・)「ムシャムシャスルチューン♪トンデクチュン!」パタパタ


(・8・)「チュン…」パタパタ


(・8・)「…」パタ…パタ…


(・8・)「コレイジョウタカクトベナイチュン…」ヘナヘナ


――

(・8・)「アキラメナイチュン!チーユケーキハチュンチュンノモノチュン!」


(・8・)「トベナイナラ、ヨジノボレバイイチュン」


(・8・)「チョウドイイヌノキレガカカッテルチュン。コレニツカマルチュン」ピョンッ


(・8・)「チュン!」ガシッ


(・8・)「ツカンダチュン!コノママウエニアガルチュン!」ヨイチョ


――

ことりの部屋


ことり「どうぞ、花陽ちゃん」


花陽「ありがとう。とっても香りのいい紅茶だね」


ことり「お母さんがよく行くお店で買ってきたんだよ。お味はどう?」


花陽「ほんのり甘味があっておいしいよ」


ことり「よかった、花陽ちゃんに気に入ってもらえて」


――

花陽「ことりちゃんのお部屋、かわいいものがたくさんあるね」


ことり「えへへ、どれもお気に入りなんだぁ」


花陽「このぬいぐるみかわいいね。どこで買ったの?」


ことり「これはね、穂乃果ちゃんにゲームセンターで取ってもらったの」


花陽「こんなに大きいのに、穂乃果ちゃんよく取れたね…」


ことり「穂乃果ちゃん、昔からクレーンゲームは得意なんだよ」


花陽「そうなんだぁ」


――

キッチン


(・8・)「ピィ…ピィ…。ヤットノボリキッタチュン…」ゼィゼィ


(・8・)「ツカレタチュン。デモ、コレデチーユケーキハチュンチュンノモノチュン!」


(・8・)「ワンダフルラッシュチュン!」トトトト


トンッ


(・8・)「チュン?」


グラァ


ガチャン


(・8・)「ヨクワカラナイモノガオチタチュン。チュンチュン、シラナイチュン」


(・8・)「ソンナコトヨリチーユケーキチュン!」


(・8・)「ムシャムシャスルチューン♪」カプッ


(・8・)「オイチイチュン!トッテモアマアマチュン!」ムシャムシャ


(・8・)「チュ~ン♪」ハムハムッムシャッ


――

ことり「ところで花陽ちゃん、お昼はいつごろ食べたの?」


花陽「お昼?けっこう前に食べちゃったけど…」


ことり「それじゃあ、おやつの時間にしても大丈夫だね。今日は花陽ちゃんのためにおいしいチーズケーキを作っておいたから、一緒に食べよう」


花陽「本当!?ありがとう、ことりちゃん!」


ことり「いま持ってくるね」


花陽「私も手伝うよ」


――

キッチン


ことり「今ならまだ焼きたてであったかいはず…あれ?」


花陽「どうしたの、ことりちゃん?」


ことり「なんだかキッチンが汚れてるの。さっきまできれいだったのに…」


花陽「本当だ。床に泥みたいなのがついてるね」


ことり「あっちにもこっちにも…。どうなってるんだろう?」


――

花陽「小さいけど、足跡みたいにも見えるね」


ことり「やだなぁ、まさかネズミでも入り込んだのかな…あっ、花瓶も割れてる!」


花陽「ひどいね。お花がぐちゃぐちゃ…」


ことり「どうしよう、もしかしてチーズケーキも…ひゃあぁっ!?」


花陽「ことりちゃん!?」


――

(・8・)「オイチイチューン♪」ムシャムシャハムッ


ことり「な、何これ…?」


花陽「鳥…なのかな?」


ことり「この子、チーズケーキをほとんど食べちゃってる…」


(・8・)「チュン?ダレチュン!コレハチュンチュンノチーユケーキチュン!」


花陽「シャ、シャベッチャウノオォォ!?」


(・8・)「チュンチュンノチーユケーキ、ヨコドリスルキナラユルサナイチュン!」ピイィィ


ことり「このチーズケーキは私が花陽ちゃんのために作ったんだよ!」


(・8・)「ソンナノシラナイチュン。チュンチュンガミツケタカラチュンチュンノモノチュン」


花陽「喋れるみたいだけど、話が全然かみ合ってないよぉ…」


ことり「床を汚したのも、お母さんが大事にしてる花瓶を壊したのもあなたなの!?」


(・8・)「ウルサイチュン。チュンチュンハコレカラオヒユネスルチュン。シズカニスルチュン」プワーオ


ことり「ちゃんと話を聞いて!」


(・8・)「アッ、ウンチュンデルチュン…」プルプル


花陽「あっ…」


プリッ


ことり「…」


(・8・)「スッキリシタチューン♪」ツヤツヤー


――

ことり「ひどい…。こんなのあんまりだよ!」


(・8・)「ピイィィ!?ヤメテチュン!チュンチュンヲイジメナイデホシイチュン!」ジタバタ


ことり「えっ…?」


(・8・)「コンナニカワイイチュンチュンヲイジメルナンテドウカシテルチュン。ドウブツギャクタイチュン!」ウルウル


ことり「わ、私はそんなつもりは…」


(・8・)「ダッタラチュンチュンニヤサシクスルチュン!トリアエズオヒユネニピッタリナマクラモッテコイチュン!」


ことり「そんなこと言われたって…」


(・8・)「ピイィィ!ギャクタイチュン!チュンチュンニヤサシクスルチューン!」ジタバタ


ことり「そんなぁ…」


――

花陽「鳥さん、あんまりことりちゃんを困らせたらだめだよ?」


(・8・)「ヤカマシイチュン!コレデモクラウチュン!」ペッ


ピシャッ


花陽「ピャア!?唾を飛ばさないで~」


ことり「花陽ちゃん、大丈夫!?」


(・8・)「ザマアミルチュン!」ケラケラ


花陽「ひぃ~ん、新しく買ったばかりのお洋服なのにぃ…」ベタァ


――

ことり「もう許さないよ!おいたする子はめっ、だよ!」


(・8・)「オッ?ヤンヤンッ?」


ことり「早くうちから出て行って!」


(・8・)「ダレニムカッテイッテルチュン?チュンチュンハココノヌシチュン」


ことり「そんなの勝手だよ!うちにはあなたなんか置いておけない!」


(・8・)「ヤレルモンナラヤッテミルチュン」


ことり「絶対に出て行ってもらうんだから!」ムギュッ


――

(・8・)「ピイィィ!ヤッパリギャクタイチュン!」


ことり「そ、その手にはもう乗らないよ!」


(・8・)「ママー!ママー!コワイチュン!」


ことり「そんな声を出したって…」


(・8・)「ドウブツギャクタイハハンザイチュン!ココロガキタナイニンゲンノヤルコトチュン!」


ことり「ううっ…」


パッ


――

ことり「だめ…やっぱり私にはできないよ…」


(・8・)「ピヒヒヒ!オモッタトオリノコシヌケチュン!」


ことり「どれだけ口が減らなくて生意気でも、こんな小さな子に手は出せないよ…」


花陽「待って、ことりちゃん。私が何か別の方法を考えるよ」


ことり「ごめんね、花陽ちゃん…」


花陽「ど、どうしてことりちゃんが謝るの?」


ことり「花陽ちゃんに元気になってもらいたくて遊びに来てもらったのに、こんな嫌な思いをさせちゃって…」


花陽「そ、そんなことないよ。ことりちゃんに誘ってもらえて、とっても嬉しかったよ!」


ことり「私が余計なことをしなければ…」グスッ


花陽「ことりちゃん…」


花陽「…」


ブチッ


――

(・8・)「サッサトマクラヲモッテクルチュン!ハヤクシナイト、チュンチュンノオヒユネノジカンガモッタイナイチュン!」


ヒョイッ


(・8・)「チュン?」


花陽「…」


(・8・)「ナニスルチュン!サッサトオロスチュン!」ジタバタ


花陽「下品極まりないですね…。文字どおりの畜生です」


(・8・)「フザケンナチュン!ガタガタイッテナイデチュンチュンヲオロスチュ…」


ブンッ


(・8・)「ピ…?」


ベチャ


――

(・8・)「ピイィィ!イタイチュン!イタイチューン!」ゴロゴロ


花陽「降ろせと言ったからその通りにしただけですが?」


(・8・)「ユカニナゲツケルナンテシンジラレナイチュン!ギャクタイチューン!」プンスカ


花陽「黙りなさい」


ゲシッ


(・8・)「ピギャアアァ!?」ゴロゴロ


花陽「これは躾です。礼儀をわきまえない畜生への躾にすぎません」


(・8・)「ユルサナイチュン!ドウブツアイゴダンタイニウッタエルチュン!」


花陽「…」チラッ


――

花陽「ことりちゃん、これを借りてもいい?」ヒョイッ


ことり「い、いいけど菜箸なんて何に使うの?」


花陽「この聞き分けのない畜生を串刺しにして焼き鳥にするの」


(・8・)「チュンッ!?」ビクゥ


ことり「そ、それはやりすぎじゃないかな…」


花陽「私はぼんじりが好きなんだよね。この畜生から取れるのかはわからないけど」


(・8・)「キ、キガクルッテルチュン…」ガタガタ


――

花陽「さてと…無礼をはたらいた分だけ、食卓を飾って報いてくださいね」


(・8・)「ヤ、ヤメルチュン!コレハリッパナギャクタイチュン!」


花陽「だからこれは躾ですよ」


(・8・)「ハ、ハナシガツウジナイチュン…」ガタガタ


花陽「おしゃべりはもう済みましたか?」スッ


(・8・)「ピイィィイィイイィ!?」


――

チュン(・8・)チュンは産まれて初めて恐怖した。


これまでは、どれだけ我儘を言おうと必ず要求が通っていた。


小さくてチャーミングなカラダからの脳溶けボイスに、誰もかれもが魅了されてきた。


チュン(・8・)チュンにかかれば老若男女が虜になる。


とりわけ女子供などは容易に魅了できる。現に、先ほどのとさか頭の女子高生は、怒りを覚えつつもチュン(・8・)チュンを追い出すことはできなかった。


――

しかし、眼前に佇む鬼にはそんなチュン(・8・)チュンの常識は通用しなかった。


甘えた声で媚びようとも、哀しげな声で怯えようとも、鬼はまったく動じなかった。


ただひたすらに、チュン(・8・)チュンを亡き者にしようと禍々しいオーラを発している。


こうなっては、つまらないプライドを守る余裕などない。


チュン(・8・)チュンは丸々とした身体を精一杯曲げて土下座をした。生き物としての本能が、ただ一つの助かる道を探りだしたのである。そして、知りうるかぎりの丁寧な言葉で謝罪をした。


しかし、チュン(・8・)チュンの眼に映ったのは、満面の笑みで菜箸を振り下ろす鬼の姿だった。


チュン(・8・)チュンは死を覚悟した。


――

ことり「やめてぇええぇえ!」


花陽「…っ」ピタッ


(・8・)「ピ、ピイィィ…」ガタガタ


ことり「花陽ちゃん、もう十分だよ」


花陽「そうかな?ここで見逃したら、また同じことを繰り返すと思うよ。3歩で忘れる鳥頭そのものだし…」


ことり「違うの…。私は…花陽ちゃんにこれ以上苦しんでほしくないの」


花陽「私が苦しむ…?」


ことり「花陽ちゃん、いつも力を使った後は悩んでるよね。いつもの優しい花陽ちゃんに戻ったときに…」


花陽「それは普段の私の覚悟が足りてないだけだよ。大丈夫、今なら何の迷いもないから」


ことり「お願い、無理しないで!」


――

花陽「無理?私は無理なんかしてないよ」


ことり「嘘だよ…花陽ちゃんはいつも苦しんでる。私たちを助けるために、いつも花陽ちゃん自身は傷ついてるよ。この力を使うたびに、罪悪感に苛まれてる…」


ことり「私ね、決めたの。もう花陽ちゃんに無理はさせたくない。何かあっても、花陽ちゃんに頼らないで、自分自身で何とかするって。いま、この場でそう誓うよ」


ことり「花陽ちゃんは私の大切な友だちだもん。つらい時に力になってあげないと、本当の友だちって言えないから…」


花陽「ことりちゃん…」


花陽「…」


スウッ


――

花陽「あれ、私は何を…」


ことり「よかった、いつもの花陽ちゃんに戻ってくれたんだね!」


花陽「も、もしかして私はまたひどいことを…」オロオロ


ことり「してないよ。ほら、見て」


(・8・)「ピイィィ…」ブルブル


花陽「私が何も怪我をさせてない…!?」


ことり「花陽ちゃんの優しい心が、私の声に応えてくれたんだよ」


花陽「は、初めてだよ。やり過ぎる前に抑えられたなんて…」


(・8・)「チ、チュンチュンタスカッタチュン?」ビクビク


ことり「すぐに出て行くなら、これ以上何もしないよ」


(・8・)「ピイィィ!ゴメンナサイチューン!スグニデテイクチュン!」トトトト


ヒョイッ


パタパタ


――

ことり「あの鳥さん、キッチンの窓から入って来たんだね」


花陽「…」


ことり「花陽ちゃん?」


花陽「あっ、ごめん。こんなこと初めてだったから、なんだか変な感じで…」


ことり「そうかな?いつも通りじゃないかな」


花陽「だ、だっていつもはもっと…」


ことり「花陽ちゃんはいつも優しい女の子だもん。ね、何も変わってないでしょ?」


花陽「ことりちゃん…」


――

翌日 放課後 部室


希「なるほどなぁ、そんなことがあったん」


にこ「普段の花陽なら軽くひねりつぶしてるところよね」


凛「怒ったかよちんは容赦しないもんねー」


花陽「凛ちゃん、その言い方じゃ私がモンスターか何かみたいだよぉ…」


穂乃果「私は怒った時の花陽ちゃんもかっこよくて素敵だと思うな!」


――

にこ「それにしても、これって何かの兆候なのかしら?」


ことり「花陽ちゃんが手心を加えたことなんてなかったはずだよね」


花陽「少しでも良い方向の変化ならいいんだけど…」


希「ことりちゃんが止めたことに意味があるのかもしれんね」


凛「どういうこと?」


希「花陽ちゃんの力は大切なひとを護りたい時に発揮されるもんやろ。せやから、ことりちゃんを悲しませないように自制が働いたのかもしれんなぁ」


穂乃果「なるほどー。確かにことりちゃんなら、小さい鳥さんが焼き鳥にされちゃったら悲しむだろうね」


――

ことり「つまり、私たちが花陽ちゃんの力を制御する鍵になってる…ってことかな?」


希「どうやらそのようやね」


凛「それなら簡単だね!凛たちがいつも一緒にいればかよちんは暴走しなくて済むにゃー」


穂乃果「そんなことでいいならいつでも協力するよ!これで花陽ちゃんが悩まなくてよくなるんだもんね」


にこ「あの怪力で暴れられたら大変だものね。あたしも協力するわ」


花陽「みんな…」


ことり「よかったね、花陽ちゃん。私も昨日の約束通り、花陽ちゃんのそばにいて役に立ちたいな」


希「当面はこれで何とかなりそうやね」


花陽「ありがとう。みんな、私のために…」


――

海未「何してるのですか、早く練習を始めますよ」


穂乃果「わっ、練習の鬼の海未ちゃんだー」


海未「誰が鬼ですか!」


穂乃果「怒らせると怖いのは海未ちゃんも同じだよね」


海未「まったく…穂乃果はもう少しμ’sのリーダーである自覚を持ってください。最近は練習そっちのけで花陽にくっつきすぎですよ」


希「海未ちゃん、もしかして妬いてるん~?」


海未「や、妬いてなどいません!//」


――

夕方 練習後


海未「今日はここまでにしましょう。明日には振り付けを覚えてきてくださいね」


穂乃果「疲れたよ~」フラフラ


花陽「本当だね…」ヘロヘロ


穂乃果「何か甘くておいしいものを食べないとスクールアイドル生命の危機だって私の本能が訴えてるよ!」


海未「何ですかそれは…」


花陽「私も白いご飯が食べたいです…」


――

にこ「あれだけのパワーがあるのに、普段はあっさり疲れるのね」


希「まぁ、それが花陽ちゃんらしいとも言えるんやない?」


にこ「まぁ、花陽が力をセーブできる方法が見つかったのは良かったわ。間近で見たけど、あれはすごい迫力だったもの…。どこかで止めなきゃいずれ死人が出てもおかしくないわ」


希「そういえば、うちはまだ花陽ちゃんが狂化したところは見てないなぁ」


にこ「あれは半端じゃないわよ。見てるあたしまで膝が震えたもの」


希「うちもいずれ花陽ちゃんの力を見る日がくるかもしれんなぁ」


――

にこ「それはそうと、花陽がこうなった原因って、あれ以来わかったことはないの?」


希「あれって、狂戦士さんの霊と対話したときのこと?」


にこ「そう、それよ。もっと情報があれば、花陽も力をうまく使えるようになるんじゃないかしら?」


希「そうゆうてもなぁ、うちもあの時わかったこと以外は特に新しい発見はないんよ」


にこ「あの時わかったのって、大昔の狂戦士が取り憑いたってだけじゃないの。もっとこう、何で花陽に憑いたのかとか、そもそも誰なのかってのはわからないの?例の対話ってやつで」


希「う~ん、話してみた感じだと狂戦士さんは無口やったしなぁ。もう一回聞いても、あの時以上の収穫はないんとちゃう?」


――

翌日 放課後 部室


穂乃果「あれ、今日は絵里ちゃんと希ちゃんいないの?」


にこ「生徒会の仕事で来れないって言ってたわよ」


ことり「海未ちゃんも弓道部の練習が終わってから合流するって言ってたよ」


凛「それじゃあ、今日は誰が指示役するの?」


花陽「そういえば、3人もいない時のことなんて考えてなかったね…」


にこ「しょーがないわねェ…」チラッ


真姫「リーダーなんだから穂乃果でいいんじゃない?」


穂乃果「えっ、私が?大丈夫かなぁ…」


ことり「自主練メニューを組み合わせたらどうかな」


穂乃果「そっか、ことりちゃんナイスアイディア!よーし、みんながんばるよー!」


にこ「」


――

真姫「自主練主体なら、海未にもそう伝えといたら?その方が海未も弓道の方に集中できるでしょ」


ことり「そうだね。向こうの練習が終わってから参加すると遅くなっちゃうし、自主練レベルなら海未ちゃんには十分足りてるもんね」


花陽「それなら私が海未ちゃんに伝えてきます」


穂乃果「私も行くー!」


にこ「あんたが行ってどうすんのよ!さっき指示役するって決まったばっかりじゃない!」


穂乃果「まぁまぁ、細かいことは気にしないで」


にこ「適当なこと言って、花陽と一緒にいるつもりでしょ!」


穂乃果「それなら、私が戻ってくるまではにこちゃんが指示役してよ」


にこ「えっ、あたしが…?」


穂乃果「いいよ、にこちゃんがやっても。さ、行こう花陽ちゃん」


花陽「は、はい」


にこ「し、しょーがないわねェ…。それじゃあ、まずはにっこにっこにーを30回よ!」


凛「にこちゃん、ノリノリにゃー」


真姫「珍しく3年生らしい振る舞いができて嬉しいのね…」ハァ


――

弓道場


海未「…」スッ


海未「…」


海未「…」キッ


シュッ


カッ


海未「…まぁまぁといったところでしょうか」


――

後輩モブ1「すごいです、園田先輩!さすがですね!」


海未「これではまだ本調子ではありませんよ」


後輩モブ2「スクールアイドル活動と両立させてこの腕前ですもんね!尊敬してます!」


後輩モブ3「私も先輩みたいになりたいです!」


海未「ふふっ、私などは見本にしても役に立たないと思いますよ」


オーイ


海未「この声は…」


――

穂乃果「海未ちゃーん!」


海未「穂乃果じゃないですか。どうしてこんなところに…」


穂乃果「今日は絵里ちゃんたちも休みだから自主練に決まったんだ。海未ちゃんには弓道の方に集中してもらおうと思って」


海未「それをわざわざ伝えに来たのですね」


花陽「本当は私が伝えに来るつもりだったんだけど…」


海未「(花陽も一緒ですか…。穂乃果は本当に花陽と一緒にいることが増えましたね。私へのあてつけでしょうか?)」イライラ


――

穂乃果「せっかくだから、海未ちゃんの練習風景を見物しようかなーなんて」


海未「適当なことを言ってサボりに来ただけでしょう」


穂乃果「そ、そんなことないよー!」


海未「では、絵里も私もいないなかで誰が指示を出すのですか。リーダーである穂乃果がやるべきでしょう。それをこんなところで油を売って…」クドクド


穂乃果「(しまった、海未ちゃんのお説教が始まっちゃった。何とかして話題をそらさないと…)」キョロキョロ


――

穂乃果「そうだ、花陽ちゃん。例の力を使えば海未ちゃんよりうまく弓道できるんじゃない!?」


花陽「えぇっ、私が?」


穂乃果「あれだけの力があるんだから、きっと弓道もうまくできるよ。ね、試しにやってみよう」


花陽「そ、そんなこと言っても、私は弓道なんてやったことないよ?」


海未「そうですよ、穂乃果。弓道は付け焼刃程度の練習でできるほど甘くはないですよ」


穂乃果「あれ、もしかして海未ちゃん負けるのが怖いの~?」


海未「な…そんなわけありません!それに私は負けません!」


――

穂乃果「それじゃ決まりだね。海未ちゃんと花陽ちゃんで弓道対決!」


海未「勝手に話を進めて…。まぁ、いいです。勝負とあれば手加減はしません」


花陽「海未ちゃん、お手柔らかにお願いするね?」オロオロ


穂乃果「花陽ちゃんの分の着替えと弓を借りてもいいかな?」


後輩モブ2「いいですよ、面白そうですし」


後輩モブ3「どうぞこちらへ」


花陽「はわわ、緊張するよぉ…」


――

10分後


穂乃果「花陽ちゃん、弓道着似合ってるよー!」


花陽「あ、ありがとう…//」


海未「それで、ルールはどうします?」


穂乃果「ルール?弓道ってルールがあるの?」


海未「そんなことも知らないのですか…」ガクッ


後輩モブ2「シンプルに一発勝負でいいんじゃないでしょうか?判定は私たちがやりますから」


後輩モブ3「本来はもっと複雑なんですけど、より的に正確に中った方が勝ちにしましょう」


穂乃果「だってさ。花陽ちゃん、ファイトだよ!」


海未「(穂乃果、なぜ私の方を応援しないんですか…)」イライラ


――

後輩モブ1「こちらが弓と矢になります」


穂乃果「けっこう大きいね~」


海未「(花陽が何やら力に目覚めたとは聞いていましたが、弓道は力だけで何とかなるようなものではありませんよ)」フッ


後輩モブ1「どうぞ」スッ


花陽「あ、ありがとうございます…」


花陽「…?」


ギラッ


――

花陽「(な、何だろう?弓を手に取った瞬間、身体が熱い…?)」


後輩モブ2「それで弓の引き方なんですけど、初心者の方は…」


花陽「…」スッ


後輩モブ3「あれ、小泉さんは弓道初めてでしたよね?」


後輩モブ2「ずいぶんフォームがきれいですけど…もしかして経験者ですか?」


花陽「はぁっ!」


シュッ


ドカッ


――

海未「な…!?」


後輩モブ1「て、的中です…!」


穂乃果「すごーい!花陽ちゃんセンスあるよー!」


花陽「あ、あたったのかな…?」オロオロ


後輩モブ2「ちょ、的にヒビが入ってますよ!」


後輩モブ3「こんな強弓見たことないです!どうやってやったんですか!?」


ワイワイ ガヤガヤ


海未「ま、まぐれです。こんなもの、まぐれに決まってます…!」ワナワナ


――

海未「くっ、まだ勝負は終わっていませんよ。次は私の番です!」


海未「(ここで日々の鍛練の成果を見せつけてやります!)」


シュッ


カツッ


穂乃果「あれー?あたったみたいだけど、花陽ちゃんの方が真ん中だったね」ニヤニヤ


海未「ぐっ…!」


穂乃果「それじゃ、花陽ちゃんの勝ちだねー!」


後輩モブ2「お願いです。もう一度あの強弓を見せてください!」


後輩モブ3「私も見たいです!」


花陽「えぇっ、さっきのはまぐれなのに…」


穂乃果「やってあげなよ、花陽ちゃん。はい」スッ


花陽「…」


シュッ


ズバアッ


後輩モブ2「またまた的中!」


後輩モブ3「何かコツがあるんですか!?教えてください!」


花陽「ま、まぐれなのにぃ…」オロオロ


ワイワイ ガヤガヤ


穂乃果「海未ちゃん。あれだけ言っておいて、たいしたことなかったねー」ニヤニヤ


海未「わ、私だって中てましたよ!」


穂乃果「ラブアローシュートとかやり過ぎて、ふぬけたんじゃないの?」アハハ


海未「な…//」カアァァ


穂乃果「みんなのハート、撃ち抜くぞー♪」バキューン


海未「か、帰ります!//」クルッ


後輩モブ1「園田先輩…」

――

練習後 部室


穂乃果「いや~、それにしてもさっきの海未ちゃんは傑作だったね!」


花陽「穂乃果ちゃん、あんまり海未ちゃんをからかっちゃかわいそうだよ…」


穂乃果「ごめんごめん。花陽ちゃんがかっこよかったもんだから、つい」アハハ


ことり「初めてでそんなに弓道がうまくできるなんて…これも花陽ちゃんの力の一つなのかなぁ?」


凛「かよちん、もしかして前世はサムライだったのかにゃー?」


花陽「えぇっ、私がお侍さん!?」


真姫「前世というより、花陽に憑いてる霊が武士なんじゃないの?」


にこ「どうなのかしら。希に調べさせればもっとわかるかもしれないわね」


――

穂乃果「そっかぁ。だから花陽ちゃんが本気を出した時はあんなに迫力があるんだね!」


花陽「なんだか話のスケールが大きくて実感がわかないよ…」


凛「それじゃあ、今度はかよちんに剣道をしてもらえばいいんじゃない?」


穂乃果「それいい!花陽ちゃんサムライ説が確定するよ!」


ワイワイ ガヤガヤ


真姫「ちょっと、盛り上がってるところ悪いけど部室閉めるわよ?」


ことり「もう遅くなっちゃったもんねぇ」


穂乃果「そうだね。花陽ちゃん、一緒に帰ろうっ」


――

帰り道


穂乃果「今日もまた花陽ちゃんのかっこいいところ見れてよかった~」ルンルン


花陽「ねぇ、穂乃果ちゃん…」


穂乃果「どうしたの?」


花陽「穂乃果ちゃんは私のこと、怖くないの?」


――

穂乃果「怖い?どうして?」


花陽「だって、怒ったら見境なく暴力を振るってるんだよ。穂乃果ちゃんも見たでしょ?」


穂乃果「そうだね~。確かにあの時はすごい迫力だったね」


花陽「私、心配なんだ。穂乃果ちゃんはあれ以来いつも私のそばにいてくれるけど、近くにいるほど私の暴力に巻き込んでしまいそうで…」


穂乃果「花陽ちゃん…」


――

穂乃果「大丈夫だよ。花陽ちゃんは優しいもん」


穂乃果「確かにちょっと怖いかもしれないけど…花陽ちゃんは大切なみんなのために力を使ってくれるでしょ?」


穂乃果「それなら怖がる必要なんてないよ。花陽ちゃんは私たちを護ってくれることはあっても、傷つけるようなことは絶対しない。それだけははっきりと言えるから」


穂乃果「あの時、花陽ちゃんに護ってもらってから…気になっちゃうんだよね。花陽ちゃんのことが」


穂乃果「何て言えばいいかわからないけど、そばにいたくなっちゃうんだ。花陽ちゃんは私を護ってくれるナイトみたいだからかな…」


――

花陽「ありがとう、穂乃果ちゃん。私のこと、そんな風に想ってくれて…」


穂乃果「えへへ、今のはみんなには内緒だよ?」


花陽「うん」クスッ


穂乃果「そうだ。ちょうど神社の近くだし、お参りしていこうよ!ご利益で花陽ちゃんの悩みも解決するかもしれないよ」


花陽「そうだね、行ってみよう」


――

神社


穂乃果「学校の行き帰りでここに寄るのも久しぶりだなぁ」


花陽「最近は朝練も屋上でやることが多いもんね」


穂乃果「海未ちゃんたちと3人で練習してた頃、懐かしいなぁ」


花陽「私がμ’sに入れてもらった時は、よくここで遅くまで練習してたよね」


穂乃果「そうそう。そう考えるとしみじみするな~」


ズキッ


花陽「うっ…!?」


――

穂乃果「初めのうちはちょっとした練習でもすぐバテてたもんな~。私も成長したってことだよね」フンス


花陽「うぅ…」フラフラ


穂乃果「海未ちゃんはあの頃から厳しかったからね…って、花陽ちゃん?」


花陽「う…が…」


穂乃果「だ、大丈夫?具合でも悪いの?」


花陽「ぐ…!」ギラッ


――

穂乃果「は、花陽ちゃん…?」


花陽「ご、ごめん。急にめまいがして…」ヨロッ


穂乃果「し、しっかりして!私の肩を貸すから」


花陽「ありがとう、穂乃果ちゃん…」


穂乃果「お参りは今度にしようね。花陽ちゃんのおうちまで送っていくよ」


――

小泉家前


花陽「ごめんね、穂乃果ちゃん。わざわざうちまで送ってもらって…」


穂乃果「そんな、気にしないで。それより、具合はどう?」


花陽「だいぶ良くなってきたと思う…」


穂乃果「それならよかったよ。最近は練習もハードだし、今日は早めに休んだほうがいいね」


花陽「そうだね。今日は穂乃果ちゃんが一緒で助かったよ。ありがとう」


穂乃果「どういたしまして。花陽ちゃんの役に立てたなら嬉しいよ。それじゃあ、明日学校でね」


花陽「うん」


――

数日後 練習後 部室


凛「かーよちん。明日はお休みだから一緒にラーメン食べに行こう!」


花陽「また美味しいお店を見つけたの?」


凛「最近ネットで人気急上昇中って噂なんだよ!」


花陽「凛ちゃんはよく調べてるね。私でよければ一緒に行くよ」


凛「あともう一人ほしいなー」


花陽「もう一人?」


凛「今なら3人以上で来店すると厚切りチャーシューがサービスで付くんだよ」


花陽「誰か一緒に来てくれればいいけど」


凛「とりあえずみんなに声をかけてみるにゃ」


――

真姫「明日?明日はピアノのレッスンがあるからダメよ」


にこ「練習がない日はこころたちの遊び相手をしてあげるって決めてるから無理ね」


ことり「ごめん、明日はお母さんとお出かけする予定で…」


絵里「明日は朝から予定が入ってるわね…」


穂乃果「花陽ちゃんと一緒に行きたいんだけど、明日は店番するってお母さんに約束しちゃったんだよね。ごめーん!」


海未「私も色々と忙しいので(なるほど、明日は穂乃果は店番ですか。おまけに花陽とは別行動…。ふふふ、これなら穂むらに行けば穂乃果と二人っきりになれますね)」


――

凛「みんなだめみたいだにゃ…」


花陽「そういうこともあるよ」


チョンチョン


凛「にゃ?」クルッ


希「凛ちゃん、誰か忘れとらん?μ’sはうちを入れて9人やで?」


凛「そうだ、希ちゃんがいたにゃ!文字どおりの最後の希望にゃ!」


希「ラーメンやったっけ?普段はあんまり食べないけど、せっかくやしうちもご一緒しよかな」


凛「やっぱり希ちゃんは頼りになるにゃー!」


花陽「これで3人だね。ところで凛ちゃん、そこのお店のおすすめは?」


凛「店長がうどん職人も掛け持ちしてるみたいで、関西風のだしが効いた珍しいラーメンなんだって!」


希「ラーメンなのにおうどんさんかぁ。これはうちも俄然興味が湧いてきたわ」


――

翌日 午前 駅前


凛「お待たせー」


希「凛ちゃん、今日は遅刻せんかったね」クスッ


凛「凛はラーメンが関わるなら絶対遅刻しないよ」


花陽「凛ちゃんらしいね」


――

希「それにしても、けっこう遠いお店やったよね。電車で1時間くらいやったっけ?」


花陽「凛ちゃんは遠くのお店でも美味しいってわかれば食べに行くもんね」


凛「それがラーメン食べ歩きの醍醐味なんだよ。まだ自分の知らないおいしいラーメンがどこかにあるって考えるだけでわくわくしてくるもん!」


希「凛ちゃんは食通やなぁ。うちも焼肉は好きやけど、食べに行くのはいつも同じお店やしなぁ」


花陽「ラーメンは凛ちゃんのライフワークになってるね」


凛「それじゃあ、おいしいラーメンを求めて出発にゃー!」


――

昼 ラーメン屋


凛「とうとう噂のラーメンとご対面だよ…」ゴクリ


希「まるで未開の地に探検に来たみたいやね」アハハ


花陽「楽しみだね」モグモグ


希「花陽ちゃん、ラーメンが来る前にもうライス食べとるん…?」


花陽「えへへ、すっかりおなかが空いちゃって…。ライス大盛り追加お願いしまーす」


希「まだ食べるん!?」


――

凛「かよちん、最近になってご飯をたくさん食べるようになったよね」


花陽「うちでも買い足さないとすぐにお米がなくなって大変なんだよね…」ムシャムシャ


希「花陽ちゃんは前からご飯好きやったけど、いくらなんでも食べ過ぎちゃう?」


凛「お昼休みに持ってくるおにぎりも2倍くらい大きくなってたよね」


希「大丈夫なん、花陽ちゃん?」


花陽「確かに食べ過ぎかとは思うけど、ご飯が前よりいっそう美味しく感じて…」パクパク


凛「あの力を使うのにご飯がたくさん必要なのかな?」


希「燃料がぎょうさん必要…ってことなんやろか?」


花陽「で、でも体重は増えてないよ?」アセアセ


――

15分後 店外


凛「やっぱり凛の勘は間違ってなかったね!今までに食べたなかでも5本の指に入るおいしいラーメンだったよ!」


希「普段はラーメンは食べないんやけど、これは美味しかったわ。凛ちゃん、誘ってくれてありがとなぁ」


凛「かよちんもおいしかったよね。あれ、かよちん?」キョロキョロ


希「そういえば花陽ちゃんはどこに行ったんやろ?うちらよりも先にお会計してたはずやったよね」


凛「もー、かよちんどこ行っちゃったにゃー?」


希「花陽ちゃんを探すついでにちょこっとそのあたりを散策してみよか?」


――

10分後


凛「かよちん見つからないにゃー…」


希「あっ!凛ちゃん、あっちに…」


凛「かよちんいた!?」


希「お寺さんがあるやん。パワースポットやしちょっと寄ってこ」


凛「にゃー!希ちゃん、今はかよちんを探すのが先にゃー!」


希「いざという時は花陽ちゃんの携帯電話に連絡すればいいやん」


凛「そういえば…って、それならそうと先に教えてよ!」


希「ええやん。うちもこのあたり来るのは初めてやし気分転換に、ね」


凛「まったく希ちゃんのマイペースにはついていけないにゃ…」


――

寺院


希「やっぱりお寺さんはスピリチュアルパワーに満ち溢れとるなぁ」


凛「凛はかよちんに電話するからね…あれっ?」


花陽「…」


凛「かよちん!どうしてここに!?」


花陽「凛ちゃん…」


希「おやおや、うちのスピリチュアルパワーが花陽ちゃんに引き寄せられたのかもしれないね」


凛「かよちんってば、一人で先に行っちゃうんだから…」


花陽「ご、ごめん。気が付いたらここに来ていて…」


希「なるほど。ここのお寺さんに花陽ちゃんを引き寄せる何かがあったのかもしれんね」


――

翌日  放課後 部室


凛「昨日はかよちんが急にいなくなっちゃうから大変だったよー」


花陽「ごめんね、凛ちゃん。心配かけちゃって…」


穂乃果「それより私も花陽ちゃんと一緒に行きたかったなー」


海未「(また花陽の話ですか。昨日もせっかく穂むらまで行ったものの、穂乃果はうわの空でしたし…)」イライラ


にこ「そんなことより練習始めるわよ」


ことり「あれ、まだ希ちゃんが来てないけど」


絵里「希なら今日は休みよ。用があるみたいで放課後すぐに帰ったわ」


真姫「珍しいわね、生徒会以外で希が休みだなんて」


――

図書館


希「昨日の花陽ちゃんの様子、どうも気になるんよねぇ…」


希「花陽ちゃんもうちと同じであのへんは初めてのはずや。それが誘われるようにあのお寺さんに…。これは何かあると見たね」


希「えりちには悪いけどずる休みさせてもらうで。今日は調べものに使わせてもらおうかな」


希「帰り際に確認はしておいたけど、あのお寺さんの名前は確か…そうそう、これやった」スッ


希「ここなら調べものには最適やし、何かわかるかもしれんね。うちは調べものはネットより本派やからね」


希「ふむ…なるほど…」ペラッ


希「そうかぁ、あのお寺さんにそんな由緒が…」ペラッ


希「むっ、これは…」


希「これなら説明できる、花陽ちゃんのあの力が…。突然の怪力、古代の狂戦士、弓道場での一件、神田明神での頭痛、花陽ちゃんの食欲、そしてあのお寺さん…。これで全部がつながったわ!」


希「うちの推理が正しければ、花陽ちゃんに憑いた狂戦士さんは…」


希「おっと、もうこんな時間や。早く帰らんと遅くなってまう」


――

夕方 帰り道


希「ふふっ、花陽ちゃんに話したら驚くやろなぁ」


希「ん…雨?」


希「あかん、うち今日は傘持ってきとらんのに…」


希「うわぁ、けっこう強くなってきたなぁ」


希「雨宿りしてる時間はないし…多少濡れても走って帰ってしまった方がええかな」


――

希の部屋


希「ひゃ~、ようやく着いたわ」


希「通り雨のわりにはなかなかやまんかったなぁ。おかげでびしょ濡れや」


希「このままやと気持ち悪いし、早う着替えんと…」


希「うっ…」ブルッ


希「な、何やろ。寒気が止まらん…」ガタガタ


希「あかん、うち風邪引いてもうたんかいな…」


希「練習休むわけにはいかんのに…。頭もぼうっとするわ…」


希「そや、えりち。えりちに連絡せんと…」


希「携帯…携帯はカバンに入れたは…ず」フラッ


ガクッ


――

部室


穂乃果「ふー、今日も練習大変だったなぁ。すっかりおなか空いちゃったよー」


凛「凛も帰り道にラーメンが食べたいにゃー」


花陽「凛ちゃん、昨日食べたばっかりだよね…?」


にこ「ったく、食生活の乱れはアイドルとしての姿勢のたるみよ」


絵里「それに、この雨だと寄り道をしてたら風邪を引くわ」


穂乃果「本当だ、いつの間にか雨になってるよ!」


凛「そういえば傘を持ってきてないにゃー!」


にこ「しょーがないわねェ。あたしの予備のを貸してあげるわよ」


凛「ホント?にこちゃん、ありがとう!」


にこ「スーパーアイドルは常に万全を尽くすものよ」フッ


――

通学路


穂乃果「それじゃみんな、また明日ねー」


絵里「気をつけて帰るのよ」


穂乃果「もうっ、絵里ちゃんってば。穂乃果は子どもじゃないよ…ひゃあっ!?」パシャッ


ことり「ほ、穂乃果ちゃん大丈夫!?」


海未「よそ見をして歩くから水たまりにはまるんですよ。さ、早く帰りますよ」


穂乃果「ひえ~ん、帰ったら乾かさなきゃ…」


――

絵里「それじゃみんな、私もこっちだから」


花陽「あれ、絵里ちゃんのおうちは方角が逆だよね?」


凛「希ちゃんのところに寄るのかにゃー?」


絵里「…全部お見通しってわけね。そうよ。急に休むものだから、ちょっと気になったの」


花陽「それなら私も一緒に行ってもいいかな?」


絵里「いいの?何だか雨のなか付き合わせてしまって悪い気がするけど…」


花陽「私もちょっと希ちゃんのことが気になっちゃって」


凛「凛も付いて行くよ!」


にこ「あんまり大勢で押しかけても迷惑でしょーが。あんたは早く帰りなさい」


凛「しょうがないにゃあ…」


――

希宅前


花陽「希ちゃん、用事があるって言ってたけど…もう帰って来てるかなぁ?」


絵里「もう遅いから帰ってはいると思うわ。携帯の方はさっきからつながらないけど」


花陽「ここだよね、希ちゃんのおうち」


絵里「えぇ。希、帰ってる?」ピンポーン


シーン


花陽「返事がないね…」


絵里「おかしいわね、とっくに帰ってる時間だと思うけど…。あら、鍵がかかってないわ」ガチャ


花陽「何かあったのかな…?」


絵里「とにかくあがりましょう」ギィ


――

希宅


絵里「希、いるのー?」


花陽「希ちゃーん」


絵里「変ねぇ。まさか鍵をかけないで外に出るわけもないし…」


花陽「そうだよね…あっ!」


絵里「どうしたの、花陽!?」


花陽「の…希ちゃんが…」


――

希「…」


絵里「希!?どうしたの、しっかりして!」


希「え、えりち…」ハァハァ


絵里「ずぶ濡れじゃない、いったいどうしたっていうのよ!」


希「か、傘を忘れてしもうてな…。雨の中急いで戻ろうとして…」


絵里「ばかっ!どうしてそんな無茶なことするのよ!あぁ、ひどい熱だわ…」


花陽「と、とにかく早く着替えないと身体が冷え切っちゃうよ!」


絵里「私が探してくるわ。花陽は何か身体が温まるものを用意して」


花陽「わかった、すぐに用意するよ!」


――

絵里「着替えを持ってきたわ。脱がすわよ?」


希「すまんなぁ、えりち…」ゼェハァ


絵里「謝らなくていいから早く着替えなさい。その前にタオルで身体をよく拭くのよ」


花陽「ミルク温めてきたよー」


絵里「ありがとう、花陽。私は布団を敷いてくるから希のことをお願い」


花陽「うん、わかったよ」


――

絵里「敷き終わったわ。希、身体は動かせそう?」


希「な、なんとか…」ハァハァ


花陽「希ちゃん、私の肩につかまって」


希「あ、ありがとう花陽ちゃん…」


絵里「横になって休むのが一番いいと思うわ」


花陽「希ちゃん、熱もあるし風邪だよね?」


絵里「恐らくそのようね。希、風邪薬は常備してない?」


希「た、確か奥の戸棚に…」


絵里「探してくるわ」


――

絵里「見つかったわ。食後に1錠でいいみたいね」


花陽「希ちゃん、まだご飯は食べてないよね?何か食べられそうなものないかなぁ」


絵里「見たところあまり食欲はなさそうだし…私が何か食べられそうなものを作るわ」


希「そんなえりち、そこまでしてもらうと悪いよ…」


絵里「病人はおとなしく寝てなさい。花陽、その間タオルの交換とかお願いするわね」


花陽「うん」


――

希「ごめんな、花陽ちゃん。うちのせいでこないなことさせて…」


花陽「そんな…希ちゃんが具合が悪いのに放ってなんかおけないよ」


希「ありがとう。2人が来てくれなかったら、うち今ごろ危なかったかもしれんわ…」


花陽「絵里ちゃんが一番希ちゃんのことを心配してたよ。希ちゃん、元気になったらお礼しないとね」


希「そうやね。うちは…いつもみんなにしてもらってばっかりやな」


――

花陽「希ちゃん、額のタオルぬるくなってない?取り替えようか」


希「そうやね。そうしてもらえると助かるなぁ」


花陽「待っててね。いま水で冷やしてくるから」スッ


希「あっ…」


花陽「どうしたの、希ちゃん?」


希「あ、いや…花陽ちゃんの手がひんやりしててとっても気持ちよかったもんやから…」


花陽「私の手が?」


希「花陽ちゃん…変なお願いかもしれんけど、タオルの代わりに手を添えてもらってもいいかな…?」


花陽「わ、私は別にいいけど…こんな感じでいい?」ピトッ


希「うん…ええよ。すごく気持ちいい…」


――

絵里「お待たせ。おかゆに卵を落としただけの簡単なものだけど…って、希?」


希「スゥ…スゥ…」


花陽「希ちゃん、寝ちゃったみたい」


絵里「私たちが来て安心したのかしら。起こすのはかわいそうだけど、薬を飲むためにも食事はとらせた方がよさそうね」


花陽「そうだね。希ちゃん、絵里ちゃんがご飯作ってくれたよ」


希「んん…。あれ、うちいつの間に寝てたんやろ…」


絵里「お目覚めのようね。それより花陽、どうして希の額に手を?」


花陽「希ちゃんがこうしてた方が気持ちいいって言ってたから」


絵里「希ったら、すっかり甘えてるわね」クスッ


希「せやかて、本当に気持ちよかったんやもん…//」


絵里「それじゃあ、薬を飲み終わったら今度は私が手を添えてあげる?…あら?」スッ


花陽「どうしたの、絵里ちゃん?」


絵里「嘘っ!?熱がすっかり引いてるじゃない!薬もまだ飲ませてないのに…」


希「そ、そういえばだいぶ身体が楽な気ぃするわ」


――

絵里「不思議なこともあるものね…」


希「…やっぱりそうか。うちの見立ては間違っとらんかったみたいやね」


花陽「希ちゃん、何のこと?」


希「実はな、花陽ちゃん。今日うちが休んだのは、あることを調べとったからなんやけど…」


絵里「ちょっと、希。おしゃべりもいいけど、冷めないうちに食べちゃいなさいよ」


希「そうやね、せっかくえりちが作ってくれたんやもんなぁ。花陽ちゃん、この話はまた明日ね」


――

10分後


希「ごちそうさま。えりち、わざわざありがとな」


絵里「いいのよ。そんな状態だと自分で作れないでしょ」


花陽「希ちゃん、だいぶ顔色も良くなってきた気がするよ」


絵里「そうね。ところで花陽、そろそろ帰らないと遅くなるんじゃない?」


花陽「あっ…うっかりしてたよ。絵里ちゃんはどうするの?」


絵里「私は希が心配だから今日はここに泊まろうと思うの。亜里沙にも連絡して、こっちに来てもらうわ」


花陽「そっか…。それじゃあ、私はそろそろ戻るね。希ちゃん、早く風邪を治して学校で会おうね」


希「花陽ちゃん、今日は本当にありがとうな。もう遅いから気をつけて帰ってね」


花陽「うん。それじゃあ、また明日」


――

翌日 放課後 部室


希「みんな、昨日は練習休んでしもうてごめんなぁ」


花陽「希ちゃん、元気になったんだね。よかったぁ」


希「えりちが一晩中看病してくれたからなぁ…」


絵里「ちょ、希!誤解されるような言い方しないでよ//」


凛「何を誤解するんだにゃー?」


――

穂乃果「とにかく、希ちゃんが元気になってよかったよ!」


にこ「ったく、練習休んで風邪引くとかどういう了見よ?」


真姫「花陽から聞いたわよ。この時期の風邪は長引くと大変なんだから気をつけてよね」


海未「真姫の言う通りです。ラブライブ優勝に向けて風邪など引いていられませんよ」


希「いやぁ、ほんまにごめんごめん」


ことり「ところで希ちゃん、昨日は練習を休んで何をしてたの?」


希「ちょっと調べものをしてたんよ。例の花陽ちゃんの力の秘密についてな…」


――

穂乃果「希ちゃん、もしかして何かわかったの!?」


希「花陽ちゃんに憑いた狂戦士さんの正体…推測なんやけど、十中八九わかったと思うんよ」


穂乃果「本当に!?すごいよ、希ちゃん!早く教えて!」


海未「(穂乃果…。花陽のこととなると、こうも関心を示すのですね…)」


にこ「あたしも気になるわ!早く教えなさいよ!」


希「まぁまぁ、慌てなくてもちゃんと教えるから。まずは順を追って説明させてもらってもいいかな?」


花陽「なんだか緊張するよぉ…」


――

希「花陽ちゃん。うちと凛ちゃんとで一緒にラーメンを食べに行ったのを覚えてる?実はあの日が狂戦士さんの正体に迫るきっかけやったんよ」


凛「にゃ?それじゃあ、ヒントはラーメン?」


ことり「そ、それは何か違うんじゃないかな…」


希「凛ちゃん、残念ながらラーメンではないんやなぁ。大事なのはラーメンを食べた後のことや」


花陽「ラーメンを食べた後…?」


凛「かよちんが急にいなくなったこと?」


希「そう、それや!思い出してみぃ、花陽ちゃん。あの時、花陽ちゃんはどこにいたんやったっけ?」


――

花陽「えっと…確か、気がついたらお寺に来てたような…」


希「そうそう、それなんや。あのお寺さんが鍵だったんや!」


穂乃果「お寺が?」


希「あのお寺さんの名前は高安寺(こうあんじ)いうんよ。とある人物に縁のあるお寺さんなんやなぁ」


にこ「花陽に憑いた狂戦士ね」


希「ビンゴや、にこっち」


――

凛「それでそれで!?かよちんに憑いたサムライは誰なのにゃー!?」


希「凛ちゃんも知っとるんやないかなぁ。日本史の大物やで?」


絵里「ハラショー!歴史に残る人物だったの?」


希「そんなわけで、取り出したるは日本史Bの用語集でありまして~」パラパラ


穂乃果「おおっ!希ちゃん、準備いい!」


希「それではお披露目!このお方が花陽ちゃんに憑いた狂戦士さんや!」ジャーン


――

穂乃果「おおぉ~!」


凛「にゃああぁ~!」


穂乃果「…で、何て読むの?」


真姫「ちょっと、わからないのに感心してたの!?」


穂乃果「いやぁ~、その場の勢いで…」


凛「そうにゃそうにゃ」


ことり「穂乃果ちゃん、この間の日本史の授業で習ったところだよ」


穂乃果「えっ、そうだったけ?それで、何て読むの?」


希「藤原秀郷(ふじわらのひでさと)公やで。高安寺は元々は秀郷公の館やったと言われてるんや」


――

穂乃果「それで、その人は何をした人なの?」


希「そうやねぇ。史実から説明してもええんやけど、その前に秀郷公にまつわる伝説から話した方がおもろいかなぁ」


海未「伝説…ですか?」


希「そう。この秀郷公は巨大ムカデの怪物を討ち取った逸話で有名なんよ」


絵里「ムカデを?」


凛「なんだか面白そうにゃ。希ちゃん、早く続きを教えて!」


希「それではリクエストにお応えして…。むかーしむかしのお話やで」


――

希「舞台は近江国(おうみのくに)、つまり今の滋賀県のお話や。そこにあった瀬田の唐橋(せたのからはし)がお話の始まりや。ちなみに、この橋は改装されて今でも残っとるんよ」


穂乃果「今でもあるんだ!なんかすごいね!」


希「この橋にそれはそれは大きな蛇が横たわっていたそうな。そのおかげで誰も橋を渡れなくなってたんよ」


凛「にゃ?ムカデから蛇に話がすり替わったにゃ!」


希「ちゃんとお話はつながるから大丈夫やで」クスッ


真姫「凛、そこは黙って話を聞いておきなさいよ…」


凛「わかったにゃあ…」


希「そこに通りかかったのが藤原秀郷公や。秀郷公は大蛇を少しも恐れることなく、踏みつけて橋を渡り切ったんや」


絵里「ハラショー…。とんだ豪胆な人物ね」


――

希「その夜、秀郷公を訪ねて来た者がおったんや。会ったこともない、若くてべっぴんな娘さんや」


穂乃果「わかった、きっと橋にいた蛇だよ!踏みつけられた仕返しに来たんだね!」


凛「テンション上がるにゃ~!」ワクワク


希「穂乃果ちゃん、惜しい。確かにこの娘さんは橋にいた蛇が化けた姿やったんやけど、お礼参りに来たわけやないんやで」


穂乃果「それじゃあ、何をしに来たの?」


希「実はこの娘さん、琵琶湖に住む龍神の一族やったんよ。聞けば、一族の者が三上山(みかみやま)に巣食う大ムカデに苦しめられている言うんや。それで、豪胆な秀郷公にムカデ退治を頼みに来た、というわけなんや」


絵里「えっ?ムカデが龍より強いの!?」


にこ「絵里、あんたまでいちいち突っ込んでたらきりがないわよ…」


希「そりゃあ、ただのムカデやないからなぁ。なんとなんと、三上山(標高432m)を七巻き半もする巨大ムカデやったんや!」


にこ「デカすぎでしょ!ガ○ラよりもデカいじゃない!」


真姫「にこちゃんも突っ込んでるわね…」


――

希「それで話は戻るんやけど、秀郷公は龍神の頼みを二つ返事で引き受けたんよ。勇んで三上山に臨むと、例の巨大ムカデがぬうっと姿を現したんや」


穂乃果「きっとすごい迫力だよね…!」ドキドキ


希「弓の名手の秀郷公、大ムカデに強弓を放つんやけど、何しろ桁外れの怪物や。矢が当たっても平然と弾き返してしまうんやなぁ、これが」


凛「チートにゃ~!」


希「そうこうするうちに、残る矢は一本だけや。大ムカデの顔はすぐ近くまで迫ってきとる」


絵里「はらはらするわ…」ゴクリ


にこ「それで!?それでどうなったのよ!?」


希「こうなったらもう腹くくるしかあらへんなぁ。秀郷公は異形の者が嫌ういう唾を矢につけて、武神八幡大菩薩に祈りを捧げて渾身の一撃を放ったんや」


穂乃果「決まったの!?」ワクワク


希「矢は大ムカデの眉間を見事に貫いたんや!大ムカデは苦しみ悶えてそのままお陀仏やん」


凛「決まったにゃ~!」


希「大ムカデを退治した秀郷公は、龍神の一族から感謝の意を込めてたくさんの褒美をもろうたそうや。これが秀郷公のムカデ退治伝説や」


――

穂乃果「いや~面白かったね~!」キャッキャ


凛「最後は正義が勝つにゃ~!」ワイワイ


絵里「実にハラショーだわ!日本の伝承は素晴らしいわね!」


海未「ん?待ってください。長々と話していましたが、この話が花陽とどう関係してくるのですか?」


真姫「そういえばそうね…。それにしても花陽、さっきから黙りっぱなしじゃない」


花陽「希ちゃんの話につい聞き入っちゃって…」


希「ちゃーんと関係はあるんよ。さっきも話した通り、秀郷公は弓の名手やったんや。弓道経験ゼロの花陽ちゃんが、海未ちゃんよりうまく的を射抜けるなんて、憑いた人が弓の名人やないと説明がつかんよ」


にこ「例の弓道場の一件ね。確かに言われてみればその通りだけど…」


穂乃果「あの時の花陽ちゃん、かっこよかったなー!ただ的にあてるだけじゃなくて、的ごと壊しちゃうんだもん!」


絵里「大ムカデを射殺すほどの名手なら説明はつくわね」


――

希「龍神様からの褒美の一つには、とてつもない力もあったそうやで」


にこ「とてつもない力…納得できるわ」ススッ


花陽「にこちゃん、どうして後ずさりするのぉ~?」オロオロ


希「まさに龍神の加護といったところやね。秀郷公はこの後とある戦で武勲をたてることになるんやけど、それも龍神様から授かった力のおかげやったという言い伝えもあるんや」


凛「かよちんの力があれば百人力にゃ~」


希「ちなみに龍神様が司るのは水で、これはムカデが司る土には弱いと言われとるんよ。反面、水は火に強い。花陽ちゃんが手を添えただけでうちの熱がみるみる引いていったのは、龍神様の水の力が関わってるんやないかなぁ」


絵里「なるほどね。確かにあの時のことは単なる偶然では説明がつかないわ」


希「ところで、さっき話した戦のことなんやけど、実はここにも歴史上有名な人物が関わってるんやで」


穂乃果「待って!今度こそ当ててみせるよ!」


海未「穂乃果、何かあてはあるのですか?」


穂乃果「ないけど?」ケロッ


ことり「さすがにそれじゃ無理じゃないかな…」アハハ


――

希「秀郷公と戦った人物…それが平将門(たいらのまさかど)公なんよ」


穂乃果「う~ん…わからない!」


凛「凛もわからないにゃー」


真姫「次の期末試験が思いやられるわね…」ハァ


希「将門公は当時の政府に反旗を翻したんよ。その将門公を討つために政府が派遣したのが秀郷公や。結果は政府側の勝利やった。将門公は討ち死にしたんやけど、致命傷になった弓を放ったのが秀郷公だったとも言われとるんよね」


にこ「けど、その戦は花陽とどう関係するのよ?」


希「討ち死にした将門公は政府に逆らった逆賊として扱われたんよ。そのせいで将門公は怨霊になって祟ったんや。この呪いは日本史上最も恐ろしいスピリチュアルなものと言われとるんやけど…話すと長くなるからまたの機会にしよか。その将門公はとある場所で祀られてるんや」


真姫「まさかそこって…」


希「そう、神田明神なんや。将門公は神田明神の本殿に祀られておるんよ。これで花陽ちゃんに起きた頭痛も説明できるやん。花陽ちゃんに憑いた秀郷公と神田明神に祀られてる将門公が、時空を超えてにらみ合いになったゆうことやね。花陽ちゃんの頭痛はその巻き添えで起きた霊障の一種やと思うよ」


穂乃果「あの時、神社でそんなすごいことが起きてたんだ…」


――

希「どうやろ?これで花陽ちゃんに憑いたのは秀郷公だって証明できたんやないなぁ」


穂乃果「すごいよ希ちゃん!間違いないよ!」


凛「名推理にゃー!」


絵里「希の説なら今まで起きたことのすべてが説明できるわね」


海未「待ってください。確かに説得力はありますが、なぜ花陽が選ばれたのです?」


真姫「それもそうね。武人ならむしろ海未に憑く方が自然じゃないの」


希「その点も抜かりはないよ。花陽ちゃんが選ばれた最大の理由…実は龍神様からの褒美にヒントがあったんや」


にこ「褒美って…あの力のこと?」


希「秀郷公がもらった褒美は龍神様の力だけやなかったんよ。たくさんの褒美の中でも一番有名なもの…それが米俵なんや」


花陽「お米ですか!?」


――

凛「かよちんの食いつきがすごいにゃー」


にこ「さすが花陽ね…」


希「龍神様からの褒美の中には、いくら食べても減ることのない米俵があったんよ」


花陽「お米が食べ放題…なんて素晴らしい…」パアァァ


希「この米俵にちなんで、秀郷公は別名俵藤太(たわらのとうた)とも呼ばれてるんよ」


絵里「つまり、花陽が選ばれたのは無類のお米好きだったから、ってこと?」


希「うちにはそうとしか考えられんなぁ。ここ最近の花陽ちゃんの食欲も、これならばっちり説明がつくやろ」


――

花陽「私にそんなすごい人が…」


希「100%の証明はできないけど、これで間違いない思うけどなぁ」


海未「真相解明というわけですか。しかし、これからどうするのですか?」


希「んー、今まで通りでええんやないの?今の花陽ちゃんなら力の制御もできるみたいやし」


にこ「と、いうよりそれ以外に手の打ちようがないわよね」


穂乃果「今のままでいいよ!私はかっこいい花陽ちゃんが好きだもん!」


花陽「穂乃果ちゃん…」


絵里「花陽の力にみんなが助けられてきたのは事実だものね」


凛「龍神様の力があれば縁起もいいにゃー!」


真姫「あんまり大事は起こさないでよ…」


ことり「大丈夫だよ。花陽ちゃんは優しいもん」


花陽「みんな…」


穂乃果「よーっし!謎が解けたところで練習始めようか!花陽ちゃんのパワーがあればラブライブも優勝できるよ!せーのっ、μ’s、ミュージックぅ~」


花陽「ま、待って穂乃果ちゃん!」


穂乃果「どうしたの、花陽ちゃん?」


花陽「練習の前に、ごはん食べてもいいかな?もうおなかがペコペコで…」グウゥ


真姫「とんだ燃費の悪さね…」


海未「先が思いやられます…」


穂乃果「まぁまぁ、それが花陽ちゃんらしさだよ」


ことり「そうだね」


凛「凛はこっちのかよちんも好きにゃ~」


絵里「それじゃあ、少し軽食タイムを入れましょうか」


花陽「みんなありがとう!おにぎり3個だけで済ますからね」ドサッ


にこ「そ、それ全部食べるの…?」


真姫「特大サイズなんてものじゃないわよ、これ…」


希「大ムカデの頭くらいはありそうやね…」ハハハ


おわり


後書き

真姫「一応完結ってとこかしら。未完で逃走するのかと思ったけど」

にこ「一度完結させた話を再開させるもんじゃないわね。リズムが崩れてえらい目に遭ったわ…」

真姫「そんなこと言って、コメント次第ではさらに話を続ける気なんじゃないの?」

にこ「そ、そんなことはないにこー」

真姫「目が泳いでるわよ。にこちゃんのちょろさなら、万一ってこともありそうね…」ハァ


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1: SS好きの名無しさん 2015-02-08 21:15:32 ID: nMBYB7Cn

俺もこの力欲しい

2: SS好きの名無しさん 2015-02-09 02:07:13 ID: yFxCOGUx

えっ、これで終わり?

3: SS好きの名無しさん 2015-02-16 01:43:27 ID: 4rRFomzf

続いてwwwwwwwwww

4: いまてる 2015-03-01 19:41:39 ID: bchNkv2r

続き待ってます

5: SS好きの名無しさん 2015-04-02 03:53:57 ID: r_glWf40

おもしろいです^^

6: SS好きの名無しさん 2015-04-05 04:07:26 ID: aLM_1iRh

このちゅん(・8・) ゆっくりみたいな感じ

7: SS好きの名無しさん 2015-04-05 19:59:37 ID: _09bmc8k

読むとすっきりする

8: SS好きの名無しさん 2015-04-05 20:27:07 ID: 2Sqh2Yu3

害鳥処分の需要あった

9: SS好きの名無しさん 2015-05-03 07:38:39 ID: ddfgbqvM

再公開はありますか?

10: SS好きの名無しさん 2015-05-09 13:31:53 ID: Exh1DMf8

凛ちゃん「かよちんは誰よりも強いんだから!」

11: SS好きの名無しさん 2015-05-10 09:41:13 ID: xkMJAM9W

やっちゃえかよちん!

12: SS好きの名無しさん 2015-05-10 15:00:02 ID: 483DLUp2

ちゅんちゅんww

13: SS好きの名無しさん 2015-05-28 12:56:40 ID: OHPsfGnu

すごいお方がついたなかよちん

14: SS好きの名無しさん 2015-06-23 23:41:02 ID: d_uECe5T

更新きてたーーーーーーーーーーー
超楽しみにしてたからテンション上がるにゃーーー


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