2017-11-30 13:02:43 更新

概要

chirutan.txt_1の続きです


前書き

中盤よりちるたんが現在の口調に変更されます
番号振っていますが、恐らくずれているかと。関連のある話だと捉えるのは自由です。


68-1

務「よーじょ隊隊長、倉津務、ただいま参りました」

ゆい「つかさんはしっかりしていて助かります。年の始めからありがとうございます」

務「わたしたちは、わたしたちに出来る事をやっただけです。よーじょ隊のみんなもゆい殿と仕事が出来て嬉しく思ってます」

ゆい「皆さんが頑張ってくれているなら、わたしも嬉しいです」

務「まあ、わたしたちが働くのもお祭りくらいなんですが」

ゆい「祭事こそ数を求めるものです。一人では、とても運用出来ないですし。例え活躍の場が少なくてもわたしは、よーじょ隊のみんなには感謝しきれません」

務「お褒め戴き光栄です」

ゆい「ところでつかさんは何か今年の抱負や希望なんかは、ありますか?」

務「平和に暮らしたいです」

ゆい「ごもっともで。この町は意図的な人為的事件は少ないんです。必ずどこかで霊が関係します。その悪霊を管理するのが我々の仕事です」

務「殆どゆい殿が取り締まっていますけどね。ところでゆい殿は何かありますか」

ゆい「わたしは、よーじょ隊は勿論、兄さんや磨夢さんとより親密になりたいと思います」

務「また、事を構える…とでも?」

ゆい「さあ、どうでしょうね。誘いだけでも積極的には行こうと思いますが…つかさん、顔真っ赤ですよ?」

務「…別に赤くなってなどありません」

ゆい「つかさん、そういう所弱いんですか?あなたから訊いたんですよ」

務「ゆい殿、ご勘弁を」

ゆい「はい」

務「かたじけない」

ゆい「介錯ですか?」

務「是非に及ばず」

ゆい「つかさん、真面目に乗られても困りますよ」

務「ゆい殿はノリの良い人は好きだと聞きましたが」

ゆい「ご、ご飯でも食べに行きますか」

務「あ、はい」


68-2

八城「…あれ、ゆいちゃん今日は来ないの?」

磨夢「外食に行くって。八城、基茂を起こしてきて」

八城「了解だよ」

基茂「おはよう」

八城「あ、行くまでもなかった」

基茂「ゆいゆいは夜這いするし、磨夢は刃物突きつけて、やしろんは来るだけ来てergを始める。確かにPCは自由に使ってくれて構わないが、起きた頃にネタバレされちゃあ困るな」

八城「あたし大抵お兄ちゃんの進行状況分かってないから」

基茂「本当にまともな人間が居ない」

磨夢「幼女に起こされるだけ幸せに思うべし」

基茂「幼女か何か中途半端な磨夢だからこそ言える事だな」

磨夢「実際何歳に見える?」

基茂「小五ロリ」

磨夢「を合法化したのがわたし」

八城「お兄ちゃん、良かったね。まみーに手を出せるよ」

基茂「如何にして磨夢に手を出せと?」

八城「寝込みを襲うとか?」

基茂「それじゃあ、オレに対するゆいゆいと一緒だろう」

八城「じゃあまみーを朝まで口説くとか」

基茂「まず相手にしてくれないだろう。それ以前に部屋入っていいのか」

磨夢「別に構わない。基茂が言うように相手にしないし」

基茂「オレにラッキースケベなんてあると思うな」

八城「でもあたしと一緒に風呂入ったり、ちる姉ちゃんと密着して寝たりしてるんですが、それは」

磨夢「霞と一緒に寝たのもあった」

基茂「一方的だよな、お前ら…防壁を作る余裕も無い」

磨夢「でも行為に及んだのは、ゆいだけ。案外進行遅い」

八城「まみー、お兄ちゃんは、これからなんだよ」

磨夢「なら期待しておく」

基茂「磨夢はイベント起こさないのか?」

磨夢「わたしは霞ルートで忙しい」

基茂「どうしてこうなった」

磨夢「主人公争奪戦にちなんで」

八城「メインで攻略対象が多い程、主人公に近づくんだよ」

磨夢「基茂。霞に惨敗」

基茂「まさか、女の子に負けるとは…何ゲーだよ」

八城「乙ゲーではなく、百合ゲーだよ」

基茂「俺は、ちるが居ればいい。ちるさえ居れば」

磨夢「第一、基茂にハーレムは不可能」

基茂「オレは元から陰キャだから否定はしない」

八城「ハーレムは恋の愛情が無いと成立しないんだよね」

磨夢「その通り、基茂は、ちる以外を愛していない」

八城「あたしやゆいちゃんは家族愛、かすむん姉ちゃんは後輩として」

基茂は「ゆいゆいは明らかに一線超えているだろう」

磨夢「霞に関しては一進一退」

基茂「かすむんは鈍感だから仕方ない」

磨夢「わたしが接近しても難攻不落」

基茂「もはや漫才と思って見ている」

磨夢「………」

八城「それ、ゆいちゃんの前でも同じこと言えるの?」

基茂「ゆいゆいには無理だな。あいつは大胆すぎる」

八城「もうゆいゆいと結婚したら?」

基茂「無理言うな。何年待たないと行けないんだよ」

八城「ゆいちゃんは羽衣神社があるから、この町から離れる事は無い筈だよ」

基茂「その頃には、オレは実家に帰っている」

八城「またまた、そんな事言って」

基茂「まあ確かに、将来の事は分からんがな。オレがこの町で入院生活になる事もあり得るし」

八城「その時は、わたしたら毎日通うよ」

基茂「ありがとな。まあ可能性としてはちるの為が高いと思うが」

八城「そうだよ、ちる姉ちゃんの為にもこの町に」

基茂「やしろん、鍵はお前にやるよ」

八城「お兄ちゃん…」

基茂「その時が来れば、の話だから今は大丈夫だ」

八城「うん」


69

ゆい「こんばんは、皆さん」

八城「あ、ゆいちゃんいらっしゃーい」

ゆい「兄さんは?」

八城「魔道書を読んでいるって」

ゆい「誰の…影響でしょうね?」

磨夢「あれはゆいから貰った本の筈」

ゆい「六法全書なんかと一緒に渡した一つでしたか」

磨夢「ん、六法全書のついでに世界中から集められた様々な魔道書を、と言ってた」

ゆい「一度読めば、みんな頭に入りますから」

八城「ゆいちゃんってインテリさんだったんだ」

磨夢「口から出任せを言っているだけ」

ゆい「磨夢さん、口は災いの元ですよ」

磨夢「そう」

八城「まみーが素に戻っちゃったよ」

ゆい「磨夢さんの場合、寧ろこっちの攻め方が好きです」

八城「ゆいちゃん、エロい」

磨夢「昔の純粋に博学なゆいは失われた」

ゆい「思考形式が増えたと言ってほしいです。時には真面目に、時にはふざけるのが、より人間味が増すのです」

磨夢「機械的な人間は嫌いですか?」

ゆい「磨夢さん」

磨夢「………」

八城「まみーは話していて面白いよ?」

ゆい「八城ちゃんは、あまり磨夢さんと話してない気がしますが」

八城「まみー?」

磨夢「…八城?」

八城「オセロしよう」

磨夢「ん」

ゆい「磨夢さん、付き合いは良いと思います」

磨夢「遊戯は有意義に時間を潰せる」

ゆい「磨夢さん、寒いですよ」

磨夢「………」

八城「じゃああたしが先攻だね」

磨夢「勝った」

八城「始める前からはないよ!?」

ゆい「そうです、磨夢さんにはツッコミが大事なんです」

磨夢「………」

八城「じゃあここで」

磨夢「………」

八城「むぅ…じゃあここ」

磨夢「………」

八城「……どうにもしてもしょうがない」

ゆい「まだここ行けます」

八城「あ、本当だ」

磨夢「………」

八城「ふぇぇ…」

ゆい「まだ終わっていません」

磨夢「………」

八城「ねぇ、これのどこが」

ゆい「ここあります」

磨夢「はい」

八城「無くなっちゃった…」

磨夢「脱げ」

八城「それは違う気が」



1月

70

キラキーラヒーカールーミラーイ

磨夢「もしもし」

基茂「オレだ、オレ、オレオレ」

ピッ

國學院~

磨夢「もしもs」

ゆい「ご登録ありがとうございます」

ピッ

邪魔なあの子に呪☆詛

磨夢「もしm」

八城「ヘイ、お嬢さん、今夜空いてるぅ?」

ピッ

さああいつバイトない☆仕事がしてえ

磨夢「もs」

霞「全裸なう」

磨夢「え、霞全裸!?」

霞「想像にお任せします」

磨夢「ブバッ」

霞「大丈夫ですか、冗談ですから」

磨夢「おk、ありがとう」

ピッ

パラッパッパッパー

磨夢「m」

玄那「ランランルー」

磨夢「mmmmmm」

玄那「今度一緒にやらn」

ピッ

素直な気持ちだきっしめええええええええええん

磨夢「…」

ちる「磨夢さん?」

磨夢「ちるも何か持ちネタないの?」

ちる「…えと、わたしに何を期待しているんですか?」

磨夢「ちる、ここでわたしを笑わせてみて」

ちる「皆さんが無理ならわたしには出来ません…」

磨夢「そもそも笑うと云う概念をわたしは知らない」

ちる「口角を吊り上げてください」

磨夢「無理」

ちる「目を細めてください」

磨夢「わたしを狐にする気?」

ちる「泣いていいですか?」

磨夢「泣いたら切る」

ちる「怒っていいですか?」

磨夢「出来ない事は言わない」

ちる「泣きますよ?」

磨夢「泣けばいい」

ちる「磨夢さんが意地悪です…」

磨夢「ちるは泣いてない」

ちる「慰めに読書しています」

磨夢「ならわたしも何か読む」

ちる「………」

磨夢「………」

ちる「本題に入ります。次の土曜日は用事が入りましたから、そちらへは行けません」

磨夢「図書館デート?」

ちる「し…私用ですっ。個人の」

磨夢「…」

ちる「磨夢さん?」

磨夢「今レオポンが足下に居たから。そういえばちるは猫、好き?」

ちる「わたしは犬派です」

磨夢「初期設定は猫耳風紫リボンだったのに」

ちる「磨夢さんには平行世界のわたしが見えるんですね。容姿が猫だとしても、犬派かもしれませんよ?」

磨夢「しかし、ちるは雨に打たれたながらダンボールに入っていた八城を見て何と思った?」

ちる「勿論あの時は猫だと思いましたが、だからといって猫好きと確定する事は出来ません」

磨夢「猫の方には頬ずりしていたと八城から聞いている」

ちる「あ、あれは頬ずりされていたんです。人懐っこい猫ですから」

磨夢「要するに猫は好き。だけど、どちらかと云えば犬が好きと。その理由は?」

ちる「数年前から実家で犬を飼っているんです。その子が可愛くてたまりませんから。一方で猫は飼った事がありません」

磨夢「親戚は?」

ちる「祖父母宅も犬でしたからね。事実上、あんなに近くで猫を見たのは初めてでした」

磨夢「犬生まれ犬育ち…か」

ちる「何納得しているのか分かりませんけど…ちなみに磨夢さんは昔何かペット飼っていました?」

磨夢「ペドならいくらでも」

ちる「うわぁ…」

磨夢「カブトムシやスズムシ、クワガタなんかを飼っていた」

ちる「磨夢さんって虫とり少年だったんですね」

磨夢「わたしを男の娘と疑ったのはちるが初めてかもしれない」

ちる「はい?」

磨夢「もしわたしが男なら霞と結ばれたのに」

ちる「現状ラブラブじゃないですか」

磨夢「ちるがそう言うなら、そうかも」

ちる「羨ましいですね…」

磨夢「基茂とは上手くいってないの?」

ちる「ぼちぼちですね」

磨夢「ちる、昔と変わった」

ちる「磨夢さんもですよ。第一昔はかすむんにそこまで気が無かったんじゃありませんか?」

磨夢「教師を始める前は誰にも関心が無かった。霞も一人の客としてもてなすしか出来なかったから。けどちるは違う」

ちる「わたしは、そちらにはよく行きましたから」

磨夢「そういう由縁があっての今のわたし達かもしれない」

ちる「わたしは基茂さんと磨夢さんによって生かされているものですから」

磨夢「ちるは根暗過ぎる」

ちる「磨夢さんにだけは言われたくないです」

磨夢「まさかちるから言われるとは思わなかった」

ちる「わたしにも主張する権利はあります」

磨夢「ちるも成長した。もうわたしが教える事はない」

ちる「わ、わたしは料理に関してはまだ無知ですかr」

ピッ

磨夢「………夏風が心地良い」


71

純治「うぃっす」

霞「佐竹先輩、お久しぶりです」

純治「うわ、オレらのエンカウント率低すぎ…」

霞「そもそもわたしが多忙の身ですから、こうして誰かと出会う事も少ないんですよ」

純治「まず、昼休みに見つける事自体難しいよな。放送室に居る事もあるし、食堂で会うのが珍しい」

霞「わたしは別に磨夢先生みたいに、はぐメタ並の出現率ではありませんよ?確かに大抵は教室で食べていますから、食堂に来るのは久しぶりですが」

純治「で、誰と食べているんだ?」

霞「ひ…りです」

純治「よく聞こえないな」

霞「ほ、放送がある日にはDJの先輩やクロちゃんと一緒に食べられるんですからね」

純治「控え室で早弁なんだな」

霞「リトバスなら奥にピアノが置いてありますが、うちの場合奥が放送部限定のフリースペースなんです。そこで早弁するんですよ」

純治「放送部の百合の園かぁ…想像しただけで鼻血が」

霞「実際は、そう大層なものでもありません。ゆりんゆりんになるのも磨夢さんを呼んだ時くらいですし」

純治「磨夢先生なら仕方ないな。あの人、男に興味ないんだろう?」

霞「そうですね、はい出ました磨夢さん」

磨夢「お二人楽しそうで」

純治「何で、先生がこんな所に?」

磨夢「気まぐれロマンティック」

純治「はい?」

霞「磨夢さんは人混みが嫌い、そう聞いていました」

磨夢「誰の価値観か知らないけど、わたしだって忘れる事はある」

霞「設定を忘れちゃいけないと思いますよ?」

磨夢「設定は破壊する為にある一部の情報に過ぎない。いつまでも同じ価値観に束縛されていれば、人智を超える才能など身に付く筈が無い」

純治「人智を超える才能を身につけて利点はあるんすか?」

磨夢「常に他人の優位に立てる。尤も現状基茂相手にしか効果を発していないけど」

純治「確かに他人と発している気が違う気がする」

磨夢「純治も服従する?今の内に自主的に服従する事で、将来強制的支配下に置かれる事は無い筈」

純治「いや、遠慮しときますわ」

霞「磨夢さん、完全に酔ってますよね?」

磨夢「まさかこの紅茶にアルコールが。この紅茶を作ったのは、だれd…」

霞「やめてください、注目を浴びますから」

磨夢「わたしは影に潜む存在。霞の影に潜む存在」

霞「そう言って密着するのもやめてください。公共の場ですよ?」

磨夢「純治」

純治「はい、何でしょう、先生」

磨夢「霞の胸、柔らかくて温かい。何にしても雛鳥を見守る親鳥の如き包容力がある。純治もどう?」

純治「いや、どうと言われましても、オレがやる訳にはいかんでしょ」

磨夢「すや…」

霞「寝てしまいましたけど」

純治「かすむん、後は任せたぞ」

霞「ちょっと待ってくださいよ。これでは飼い猫っぽい外猫に懐かれて身動き取れない状態に相違ないじゃありませんか」

純治「何、一緒に寝れば何とかなる筈さ」

霞「いや、磨夢さんが無くてもわたしは授業ありますから、このままでいる訳にはいけません。とりあえず佐竹先輩、磨夢さんを保健室までおぶって行ってください。おにぎりせんべいがあげますから」

純治「おにぎりせんべい…だと!?し、仕方ねーな。今回だけだからな。ほら、先生をこっちにおくれ」

霞「恩に着ます。しかし持ち上げようにも…磨夢さん最近重くなったんじゃありません?」

純治「そうでもないな、おぶると軽いぞ。相変わらず」

霞「ではお願いしますね」

純治「おう」


72

磨夢「…ん」

ちる「すやすや」

磨夢「いつもの…風景」

ちる「そこに居るのは…磨夢しゃん?」

磨夢「ん、ここに居る」

ちる「良かったです…くぅ」

磨夢「実家のような安心感」


73

ゆい「こんにちは。お、年賀状ですか」

基茂「この一枚だけである」

八城「お兄ちゃん、もっとフラグを立てないと」

基茂「うるせぇ。オレはちるが居れば、それで幸せだ」

磨夢「バカップル」

ゆい「お似合いすぎなんですよ」

八城「お互い補いあってるんだね」

ゆい「そうです。お互い肌を密着させて抱き合っているのです。ねぇ、兄さん?」

基茂「だからそこまで行っていないからな」

磨夢「ベッドで弄りあったりは?」

基茂「それはゆいゆいだろう」

ゆい「わたしはされるがままでしたけど」

八城「ゆいちゃん、気持ちよかったんだよね」

ゆい「はい、あの時の快感は一生忘れません」

基茂「ところで年賀状の話だが、ゆいゆいは誰かから貰ったりはしてないのか?」

ゆい「ふっふーん。この町随一の巫女をなめてもらっちゃあ困りますよ。よーじょ隊は勿論の事、常連の参拝客さんから数十枚貰ってますから」

基茂「客の年齢層は?」

ゆい「一桁台2割十代6割それ以上は2割ですね」

基茂「これは道理であると云えるのだろうか」

八城「よーじょ隊少ないもんね」

磨夢「ゆい宛に手書き少なそう」

ゆい「いえ、皆さん書いてくれますよ。萌え絵から達筆まで」

基茂「萌え絵は10代後半以降の大きいお友達だな」

ゆい「大方正解ですが、よーじょ隊のみんなも萌えレベルは高いですよ」

磨夢「基茂、萌えは本人が認めて初めて萌えになるの」

基茂「つまり、ゆいゆいの萌えは常軌を逸した変態級である。やしろんもそう思うだろう?」

八城「ゆいちゃんが変態なのはあたしが見ても分かるよ」

ゆい「み、皆さんこそ変態じゃないですかぁ。ふぇぇ」

磨夢「ちょっとおせち準備してくる」

八城「ちょっと凧上げてくるね」

基茂「じゃあオレは独楽を回してくるとするか」

ゆい「兄さん、ちるさんの年賀状の命はありませんよ?」

基茂「幼女がライター振りかざすな」

ゆい「止める所、そこですか!?あっ、でも何か文字が浮かんできましたよ。I wanna be your princess…どこかで聞いたフレーズですね」

基茂「かすむんに訊いたら分かるぞ」

ゆい「兄さんの方が専門ですよ」

基茂「はいはい、知ってる口だな、それは」

ゆい「タッチマイヘーッドプリィィィィズ!!!とも書いてありますよ」

基茂「捏造だな」

ゆい「書いてあります。ちなみにわたしの落書きでもありません」

基茂「一年間でちるを染め上げてしまった…」

ゆい「わたしも兄さん色に染められたいです」

基茂「スペックが足りません」

ゆい「わたしは兄さんより上級者ですから」

基茂「開き直るのが早すぎる気がするぞ」

ゆい「兄さん、凌辱は好きですか?無論、わたしもです!」

基茂「佐竹に勧められて時々やってるが、あれは良い意味でヤバいな。って答える前から肯定するな」

ゆい「兄さんは、カニバるの好きですか?無論、わたしもです!」

基茂「カニバるのは異常だな」

ゆい「明日の朝、冷蔵庫の中身…楽しみにしておいてくださいね」

基茂「新年早々、恐怖体験はしたくない。そういうのは夏にしろ」

ゆい「では兄さんの誕生日プレゼントとして」

基茂「夏生まれか…くそっ」

ゆい「磨夢さんに連絡しておきます」

基茂「待て、磨夢は本気にしかねない」

磨夢「おせち、出来た」

基茂「ふむ、何が入っている」

磨夢「栗金団、黒豆、エビチリ、枝豆、そして肉…」

ゆい「兄さん、肉ですよ肉」

基茂「普通の肉に決まっているだr」

磨夢「ワニ、カンガル、ヒト、ラクダ…何から何まで揃っている」

基茂「さり気なくヒト入れるな」

磨夢「ゆいが好きだから。嫌なら食べなくてもいい」

ゆい「最近飢えているんです、幼女に」

基茂「よーじょ隊でも呼んどけ」

ゆい「あっ、それ良いですね。磨夢さん、三人追加で」

磨夢「なら基茂は抜きで」

基茂「代価を払うのがオレというのは非合理的だ」

ゆい「兄さん、わたし達はお互い協力しあって生きているんですから」

基茂「一方的な犠牲が協力であるかは誠に度し難いな」

磨夢「じゃあゆいも…と言ったらわたしの話し相手が無くなるから」

ゆい「磨夢さん、どちらを取りますか」

磨夢「ゆい」

基茂「即答かよっ!!」

ゆい「磨夢さん、あなたを信じてました。やはり持つべきものは親友です」

磨夢「手を離せ」


74-1

八城「まみーは、あたしの事どう見てるの?」

磨夢「飼い猫」

八城「にゃー」

レオポン「にゃー」

ゆい「八城ちゃんは人間ですよ」

八城「あっ、そうだった」

磨夢「秋刀魚焼くけど食べる?」

八城「にゃー」

磨夢「七輪…どこにやった」

ゆい「うちわならここにあります。って本格的にやる必要もないでしょう?」

磨夢「まあ間食程度だから」

ゆい「思いっきりお昼ですけど」

磨夢「細かい事は気にしない」

八城「平日はお兄ちゃん居ないし暇だなぁ」

ゆい「兄さんも同じこと考えていますよ」

八城「お昼にまみーが居る時はまだ良いけど居ない時は」

ゆい「インスタントですよね」

磨夢「昼挟むのは週に二日だから大丈夫」

八城「確かにそうだけど」

磨夢「昼休みは短いから仕方ない」

八城「コーンフレークは美味しいから許す」

ゆい「八城ちゃん、まんざらでもないでしょう」

八城「えへへ」

磨夢「ゆい、フルグラは贅沢だからダメ」

ゆい「何故それを」

八城「ゆいちゃん舌肥えてるもん」

磨夢「外食行ってる?」

ゆい「あまり行きませんよ。こないだも隊長と行ったばかりで」

磨夢「ゆいは友達が少ない」

八城「あはは、ゆいちゃん、はがない」

ゆい「他人の事言えないでしょうに」

八城「みんな友達居ないもんねー」

ゆい「うう…」

八城「さらに胸もないよねー」

磨夢「幼女だから仕方ない」

ゆい「うぷ…」

八城「ゆいちゃん、あたしがしゃぶってあげるよ」

ゆい「別に出ませんから…」

磨夢「でも固くなる」

八城「ゆいちゃんのぼうぎょがあがった」

ゆい「嬉しくないですよ。まあ別の意味で嬉しいですが」

磨夢「じゃあわたしが右で、八城は左」

八城「あいさー」

磨夢「ゆい」

ゆい「圧力かけないでくださいよ!」

八城「そうだ、ゆいちゃん。今度またお兄ちゃんと一緒に寝たらいいよ」

ゆい「最近泊まってませんし、久しぶりに、そうしましょうか」

八城「ゆいちゃん、泊まる=お兄ちゃんと一緒に寝るなんだね」

ゆい「あくまで一縷の望みですけどね。実際は八城ちゃんと寝てますし」

八城「あたしは一人でも寝れるから、大丈夫だよ」

ゆい「ありがとうございます。問題は、兄さんから許可が出るか…ですが。その辺は自分で何とかしましょう」

八城「うん、いつもの作戦で大丈夫だよ」

ゆい「まあ気が向いたら挑戦してみます」

磨夢「ゆい、最近消極的」

ゆい「いつも追い出されて空しさを感じたのです」

磨夢「それは本人に言うべき」

ゆい「そうですね、不満をぶつけてやります」


74-2

基茂「へっくしょん、畜生め」

純治「どった、風邪か?」

基茂「いや急に鼻がむず痒くなってだな」

純治「鼻の咬みすぎじゃないのか?」

基茂「時折鼻づまりは起こしていたが」

純治「よく見たら鼻が赤いな」

剣「やあやあクリスマスでサンタさんの手伝いするつもりが、風邪引いてお役御免になったんでしょう、しげるん」

純治「ちーす、村雲」

基茂「剣には、その呼び方を許可していないぞ」

剣「まさか既出だったとは!?やはり定説通りにシゲで良いかな。まあシゲリンガルもあるんだけど、呼びやすいのは前者だから。隣の眼鏡は…メガネで良いか」

純治「おい、オレだけ扱い酷くねえか!?」

剣「最近新しい渾名を考えるのも難航してるんだよ。絡みが濃い野球部やその関係者は別としてね」

純治「どうせオレは女を寄りつかせない陰キャだっつの」

基茂「男はそれが自然だ」

剣「あんたたち、それじゃあ、いつまで経っても彼女出来ないよ?」

基茂「ちるは嫁。異論は認めない」

純治「ぐぬう、正論」

剣「そういや、ちるしーは男子ではシゲだけに心許すんだっけ」

基茂「まあ、性別に関係なしに消極的だろ、ちるは」

剣「そだねー。わたしが他の子と話していると一切寄ってこないよ」

純治「まるでオレみたいだな」

剣「メガネは、いつも女子見てニヤニヤしてるじゃん」

純治「生まれつき、こういう顔してるんだよ」

基茂「それなら仕方ないな」

純治「幸い、気付いてる女子は少ない筈だからな、村雲」

剣「さあ、どうだろうね」

純治「いや何で自信無いんだよ」

剣「自分で確かめた方が良いと思うよ。ねえ、あすぽん」

飛鳥「ん、たっけーがどうしたって?」

純治「飛鳥はオレの事、どう思ってるんだ」

飛鳥「んー、優しくて面白い幼なじみだと思うよ。ただ一つ言いたいのは」

純治「何だって言ってくれ」

飛鳥「指宿君と発展してください」

純治「ちょっ…ハードル急に上げんな。しかもそこまで行きたくないし。なあ、伊崎」

基茂「オレの代わりに佐竹が味わってくれれば、感謝しきれんぞ」

剣「メガネさえ頑張ってくれれば、野球部みんなと仲良くなれるよ」

純治「…うーむ。村雲しかまともな意見が無い」

飛鳥「わたしは、真面目な発言をしています」

純治「真面目だと困る発言なんだよ」

剣「野球部主将候補と仲良くやっていれば、老後も安心」

純治「うむ、村雲は黙ってろ」

剣「うぅ…メガネに通らないとは」

基茂「世も末だな。しかし佐竹、まともなのは剣だけだろう」

純治「オレがいつ村雲をまともと言った?あくまで発言を誉めただけで村雲自体は」

剣「メガネのくせに、メガネのくせに…」

基茂「剣は、まだコサックダンスをしているのか」

飛鳥「あー、あの子変な子だから」

剣「どこかロシア成分が抜けてなかった…」

純治「ロシアの女性って綺麗だよな。村雲の母さんがどうか知んねーけど」

飛鳥「剣ちゃんのお母さんはナイスバディなんだよ」

剣「少しはわたしに遺伝しても良かったのになぁ…」

純治「…ほぅ」

剣「メガネ、殴られたい?」

純治「ハゲで満足しているだろう」

剣「まあ剛以外とバトった事は、あまりないね」

純治「オレも言葉責めだけで満足だよ」

基茂「流石紳士、いや紳士と言えるのかこいつ」

飛鳥「たっけー、相変わらずだねぇ」

純治「飛鳥は理解者だからな、ハッハッハ」

剣「ただの幼なじみ、だよね?」

飛鳥「それで理解者だなんて言ってるんだよ、多分」

剣「な、成程」


74-3

磨夢「さて、そろそろ出ようか」

八城「うん」

ゆい「この時間はまるまる空き家になるんですね」

八城「レオポンが居るから大丈夫だよ」

ゆい「安心出来るんですか、それ」

レオポン「にゃっ」

八城「家の事はお願いね」

レオポン「にゃーにゃにゃっにゃー」

ゆい「!?」

八城「サー、イエッサーです、サー」

ゆい「着眼点はそこじゃないです、サー」

八城「サー、では何が気にかかるんです」

ゆい「言葉、いえ発音の高低を理解した猫は何でしょう」

八城「サー、レオポンは優秀なんです」

レオポン「サー」

ゆい「今、自然にサーって言ったのは気のせいですかね」

八城「サー」

ゆい「逃げてますよね、これ」

八城「さあ」

ゆい「はあ、磨夢さん、もう行きましたよ」

八城「見ていたなら言ってほしかったサー」

ゆい「………」


75

磨夢「雪、積もってる」

霞「こんにちは、磨夢さん」

磨夢「ちわ。この雪だるまは、霞が一人で?」

霞「一応クロちゃんにも依頼しましたが、殆ど単独作業でした」

磨夢「…血の臭い」

霞「はい?」

磨夢「あの桜の木の下を掘り返して」

霞「は、春まで待たせて戴きます」

磨夢「わたしの心は既に春」

霞「発句が欲しいですね」

磨夢「冬篭もりわたしの心は既に春」

霞「色々と残念な人ですね」

磨夢「夢の中わたしの心は既に春」

霞「春の夢ならかっこいいですけどね」

磨夢「わたしは磨夢、春夢はわたしの妹」

霞「磨夢さんまで脳内妹ですか」

磨夢「実は春夢が基茂の妹だったりする」

霞「それはないですね」

磨夢「そう、わたしは基茂の妹を一切知らない」

霞「あっさり認めましたか」

磨夢「敢えて言えば密約を交わしているから。相互不干渉状態」

霞「お互い知る事もありませんか」

磨夢「ん、わたしたちは謎に包まれし一族」

霞「本人が言うのも変ですが、事実ですからね」

磨夢「知ってて安心した」

霞「磨夢さんに飽きる程聞かされました」

磨夢「そうは言えど伏線でもない。ただのギャグ系なので」

霞「シリアスもディオニスも無いでしょうね」

磨夢「平和がええわ」

霞「はい、授業お願いしますね」


76

ちる「基茂さん」

基茂「おはよう、ちる」

ちる「寝ていたのは、基茂さんです」

基茂「今日も起こしてもらったのか」

ちる「はい、他の皆さんが完全に居なくなるのを見計らって」

基茂「ちるは、用心深いな」

ちる「後は、わたしの身に異変が無いように気をつければ大丈夫です」

基茂「まあ、ちるは突然倒れない限り大丈夫だからな」

ちる「わたしはいつ死ぬか分かりませんからね」

基茂「まあ無理はしないでくれよ。例え生死の境界線にあろうと、人に生まれたなら、人生を楽しむべきだ」

ちる「余命なんて言われてもお医者さんの推測に過ぎませんからね」

基茂「こうやって元気に学校に来れてるなら問題ない」

ちる「そうですね、基茂さんとも話せて元気百倍です」

基茂「アンパンマン」

ちる「基茂さんはアンパンマンだったんですか?」

基茂「彼のようなアンパンになりたい」

ちる「人とは言い難いですね」

基茂「ちるのほっぺ、旨そうだな。もちもちしているんだろう」

ちる「基茂さん、お腹空いてます?なら、飴をあげましょう」

基茂「いちごミルク…磨夢から貰ったな?」

ちる「廊下ですれ違ったら無言で渡されました」

基茂「きっと口の中がいっぱいだったんだぜ。かすむん辺りから色々貰ってもらったんだろう」

ちる「磨夢さんってお菓子があれば、支配下に置く事も」

基茂「そいつは無理な話だ。磨夢は基本的に他人を見下しているからな、猫が如く」

ちる「猫さんだらけですね」

基茂「猫カフェでも開くか」

ちる「…普通の喫茶店で」

基茂「下心は一切ない」

ちる「全く信用出来ません」

基茂「ちるこそ猫耳が似合うぞ、ほれ」

ちる「み?」

基茂「小切手で三万な」

ちる「わ、渡されても困りますよぉ」

基茂「そうか、残念だ」

ちる「後数年待ってください」

基茂「今じゃダメなのか?」

ちる「わたしにも…帰る家はあります」

基茂「たまにツユネさんも遊びに来るからな」

ちる「基茂さんの他は、かすむんとツユネさんぐらいしかお客さんは居ませんけどね」

基茂「セールスお断りってか」

ちる「わたしの方から断っていますから」

基茂「成程、だからポストがあんなに大きいんだな」

ちる「あのポストなら何でも入りますからね」

基茂「ゆいゆい入れていいか?」

ちる「流石にそれは可哀想です…」

基茂「夜引き取ってもらえるとありがたいんだがな」

ちる「神社に送るのは…」

基茂「面倒」

ちる「はあ…」

基茂「ああなれば朝まで居るぞ、あやつ」

ちる「その時は、頑張ってください…間違ってもポストに突っ込まないであげてくださいね?」

基茂「善処する。しかし宅配便の担当はるーちゃんだろう?あの金髪幼女」

ちる「そうですが…平日だけですよね。それ以外の為に」

基茂「まあそれだけ用心深くしていれば、詐欺にも遭わないから良いよな」

ちる「あ、はい…」

基茂「ちなみにどうやって確認しているんだ?」

ちる「透視です。お宅の磨夢さんに伝授された技です」

基茂「またあいつか。確か元はゆいゆいの技だった筈だ」

ちる「そうなんですか?」

基茂「ああ。あの二人の関係は俺にも分からん」

ちる「まあ、何となく察しはつきますが…」

基茂「深く関わらない方が良いぞ」

ちる「そうですか…」

基茂「洗脳されるぞ」

ちる「確かにおかしくなりそうです」

基茂「ちるはオレの味方だ。ちるはオレの味方だ。ちるはオレの味方だ」

ちる「基茂さん、わたしを信用してください。わたしも基茂さんを信用しています」

基茂「はっ、ちるとは一生上手くやっていけそうだ」

ちる「死ぬまでお付き合いしますよ」

基茂「今死んだらどうする」

ちる「わたしもご一緒させてもらいます」

基茂「これは死ぬに死ねないって事か」

ちる「そのくらい、基茂さんは大切ですから」

基茂「数少ない友人、か。オレも友人は少ないが、ちる程ではない」

ちる「むむぅ…」

基茂「ちるは対人恐怖症という点では昔のオレとそっくりだ」


77

ゆい「こんにちは」

ちる「ゆいちゃん、そこはベランダです」

ゆい「わたしにとっての玄関はベランダなのです」

ちる「正面に迂回お願いします」

ゆい「では裏口より失礼します」

ちる「こんにちは、ゆいちゃん。相変わらずですね」

ゆい「ちるさんはボケが出来ないので、せめてツッコミだけでも、と思うのです」

ちる「わたしは、いずれもセンスありませんから」

ゆい「ちるさん、相変わらずですね」

ちる「まさか同じ返しをされるとは…」

ゆい「何でしょうねいまいち」

ちる「ところで何の用ですか?」

ゆい「あ、そうでした。用があって来た気がします。ちるさん、相変わらずわたしが趣味なんですね」

ちる「わたしじゃありませんよ、かすむんですよ」

ゆい「か、霞さんでしたか。磨夢さんが影響受けていなければ良いですが」

ちる「心当たりは?」

ゆい「あ、既に手遅れでしたね、あの人。知っていました。付き合いが一番長いのはわたしですし」

ちる「それは本当ですか?」

ゆい「…さあ、かれこれ2,3年の記憶は御座いますが」

ちる「でもゆいちゃん昨年は基茂さんに会ってないんですね?」

ゆい「はい、わたしは磨夢さんから八城ちゃんを紹介してもらってから、あの家にお世話になっていますからね」

ちる「では磨夢さんが個人的にゆいちゃんに会っていたんですね?」

ゆい「そういう事になりますね。兄さんなんて一切知らなかったんですよ?」

ちる「ゆいちゃんは嘘吐いたりしませんよね?」

ゆい「真実の定かは兄さんに訊けば分かります」

ちる「素直じゃないんですから」

ゆい「わたしも夢と現実を往来していますから、記憶が曖昧なのですよ」

ちる「よく寝ているんですか…基茂さんと一緒です」

ゆい「ちるさんに言われたくないです」

ちる「…確かに昼寝は多いですがね」

ゆい「学校は学習の場ですよ。真面目に授業を受けないと、何の為の学校か分からなくなります。友達が居ないちるさんは特に」

ちる「わたしには…基茂さんが居ますから」

ゆい「まあ、それで幸せなら良いですけど」

ちる「ゆいちゃんも学校行きたいですか?」

ゆい「働く幼女に、そんな望みはありませんよ」

ちる「八城ちゃんは違う気がしますが」

ゆい「八城ちゃんは、廃人幼女ですね。学校行った方が良いと思います」

ちる「本人の意思次第ですよ」

ゆい「それは、そうですが…まあ、八城ちゃんは手伝ってくれますし、これも悪くはないですね」

ちる「巫女って忙しいんですか?」

ゆい「わたしの場合、結構自由にやってますよ。参拝客もあまり居ませんし」

ちる「要するに暇なんですね」

ゆい「その中間地点ですね。人が多い時は行事の時くらいなので」

ちる「今度行っても良いですか」

ゆい「是非お越しください。式神様には会えないと思いますが。まず見れませんからね」

ちる「式神様からどう見られるんでしょうか」

ゆい「ロリ専ですよ、あの神…」


78

trrrrrr

磨夢「ん」

親父「わたしだ」

磨夢「ん」

親父「倅がお世話になっている」

磨夢「そう」

親父「倅、少しは成長したんではないか?」

磨夢「寧ろ退化したと思う」

親父「嬢ちゃんは手厳しいな」

磨夢「ところで用件は?」

親父「幼女を拾った」

磨夢「そう」

親父「あまり喋らないが、笑顔が可愛い子だ」

磨夢「そう」

親父「預かってもらえるか?」

磨夢「八城と引き換えなら」

親父「家計が厳しいか」

磨夢「そうでもない」

親父「なら預かってくれ」

磨夢「おじさんが育てて」

親父「そうしたいのはやまやまだが、わたしは罪を犯してしまいそうだ」

磨夢「じゃあ何故拾った」

親父「好奇心だ」

磨夢「いい年して」

親父「わたしの心は多分嬢ちゃんより若いな」

磨夢「そう」

親父「では宅配便で」

磨夢「飛行機で連れてくる事」

親父「ちっ、有給でも使うか」

磨夢「漁師のくせに…」


79

基茂「ただいま」

八城「おかえり、お兄ちゃん」

ゆい「おかえりなさい、あなた。ご飯にする、お風呂にする、それとも…」

基茂「選択肢が少なすぎるだろ、それ」

八城「先生、お風呂が良いです」

基茂「ゆいゆいと入っとけ」

ゆい「わたしは兄さんと入りますから。そういえば、兄さんとは、まだ入った事ないんですよね」

八城「わたしは入った事あるけどね」

ゆい「え、八城ちゃんずるいです。あなた何様ですか?」

八城「秋刀魚はまだ早すぎると思うよ」

ゆい「最近食べた気もしますけどね…あれ、兄さんは?」

八城「きっとどこかに瞬間移動出来る場所があったんだよ」

ゆい「この家も近未来的になったんですね。ドラ○もんでも連れてきましたか?」

八城「マムえもんしか居ないなぁ」

磨夢「ん?」

八城「最近秘密道具使った?」

磨夢「秘密兵器なら蔵の方にあるけど」

ゆい「それはリアルな兵器ですね、分かります」

磨夢「この町ぐらいは容易に吹き飛ばす」

八城「それが魔王復活の火種になるんだよね」

磨夢「それが理想」

ゆい「でも封印の力が強かった故に魔王も大分弱体化しているんですよね」

磨夢「かの伝説の勇者エウムダルトは、その剣に聖なる力を込めて、魔王を封じ込めた。それには多大なる精力が…」

ゆい「磨夢さん…」

八城「つまり魔王は元気な状態で復活するんだね」

ゆい「女子供はみな文字通り蹂躙されるのです」

磨夢「基茂を盾にすれば魔王は恐れをなして逃げ出すだろう」

ゆい「それは、どういうことでしょう?」

磨夢「ゆいには分かる筈」

ゆい「そんな変態なら分かるみたいな言い方しないでくださいよ」

八城「ゆいちゃん、自覚あるんだ」

ゆい「こうなれば、兄さんとの関係は、皆さんの記憶を操作して無かったことにしましょう」

磨夢「でもゆいは昔から…」

ゆい「先に言わせていただきますと、わたしもあれが初めてだったんですからね」

磨夢「成程、通りでシーツも赤かった訳」

ゆい「………」

八城「ゆいちゃん、シーツを汚したらまみーが大変なんだよ?」

ゆい「磨夢さん。シーツなんて、いつの選手の話をしているのですか」

磨夢「確かにシーツは一時期赤かった。最初赤ヘルだったから」

ゆい「チャンチャカチャーン、磨夢さん。チャンチャカチャーン、磨夢さん」

八城「厨二だ、母ちゃんだ、無表情」

磨夢「ゆい、懲戒処分」

ゆい「なんで、わたしなんですか!?」

磨夢「問答無用」

ゆい「話せば分かる」

八城「うわー、まみー容赦ない」

磨夢「後でprprの刑」

ゆい「ふええ…」


80

基茂「………」

磨夢「ん?ん、ん。ん」

ガチャ

基茂「何のやり取りだろうな」

磨夢「電話、相手は不明」

基茂「どうせオヤジだろう、固定電話に掛ける物好きなんてさ」

磨夢「嘉寿夫はわたしのマブダチ」

基茂「そう言ってもらえば、オヤジの嬉しいことこの上ないな」

磨夢「一応わたしの番号も知っている筈…」

基茂「オヤジ、0077を付けないからな…」

磨夢「あーうー」

基茂「偶然だ偶然」

磨夢「そう」



2月

81-1

ピンポーン

ちる「じーっ」

ゆい「覗き窓ついてないですよ?」

ちる「ゆい…ちゃんですか?」

ゆい「はい、わたしが神です」

ちる「神でしたか」

ゆい「ちるさん、今日は特別講義を行う為に、参りました」

ちる「い、一体何をすると…いうんですか?」

ゆい「ズバリ、ツッコミ指導です」

ちる「え…ええー!?」


81-2

ゆい「これで4コマ作れるでしょう」

ちる「わたしは小説が良いんですが…」

ゆい「作者の気分次第でしょうね。それでは本題に入りましょう。現在、深刻なツッコミ要員の不足と報告されています。奇しくもわたしが貴重な存在と認識されているのです」

ちる「それは嬉しい事ですか?」

ゆい「嬉しい以上に疲れます。ですから、ツッコミ要員を増やす事にしました」

ちる「わたしは基本的に一人ですから、関係ありません」

ゆい「ちるさん、兄さんにツッコみたくありませんか?」

ちる「わたしは基茂さんとは純粋な付き合いしかしていませんから」

ゆい「純愛ですか。兄さんもそういう対象として、ちるさんを見ているなら必要無いかもしれませんね。しかし、人間ギャグ無しに生きていけません。ちるさんの身近にそういう方がいらっしゃる筈です」

ちる「ゆいちゃんは、楽しい基茂さんが見れて良いですね」

ゆい「ちるさん相手の方が、より楽しんでいると思いますよ」

ちる「楽しむ意味合いが少し違う気がしますけど」

ゆい「ちるさんが今より兄さんと楽しむ、交流を深めたいなら、ツッコミの習得が不可欠です。わたしが保証します」

ちる「基茂さんって、そこまでボケましたっけ?」

ゆい「では、兄さんの家に向かいますよ」


81-3

八城「ゆいちゃん、こんにちは。ちる姉ちゃんとなんて珍しいね」

ゆい「わたし、ちるさんと付き合う事にしました」

八城「おめでとう。これでお兄ちゃんも要らないね」

ゆい「しかし八城ちゃん、わたしは愛人として、ちるさんと付き合うんですよ。そこの所お間違いなく」

八城「どっちにしろ、お兄ちゃんは主人公とは縁遠そうだなぁ」

ゆい「ところで八城ちゃん、磨夢さんは居ます?」

八城「何か空港行くとか言ってたよ。夕飯に間に合わないって」

ゆい「それ、一大事じゃないですか。ここは…ちるさん、お願い出来ます?」

ちる「お役に立てるのなら是非お任せください」

八城「ちる姉ちゃんの手料理、久しぶりで楽しみだなぁ」

ゆい「ちるさん、あの磨夢さんから教えてもらってますからね。期待します」

ちる「…はい」


82-1

オヤジ「よぅ嬢ちゃん、久しぶりだ」

磨夢「手短に」

オヤジ「この子が、今日から世話になる蕨ちゃんだ」

蕨(ニコッ)

磨夢「年齢は?」

蕨「…」

オヤジ「彼女が指で表す3つで正解だ」

磨夢「わたしが言うのも変だけど、蕨は無口?」

オヤジ「わたしは、まだ喋った所を見た事がないな。いつも微笑んでばかりだ」

磨夢「無償で受け取る」

オヤジ「それは、ありがたい事だ」

磨夢「期間は?」

オヤジ「とりあえず様子見で2,3ヶ月と云った所か。希望があるなら、それより短くても構わない。余程早くないなら、連絡くれりゃあ、いつでも交渉しよう」

磨夢「了解。寿夫はどうする?」

オヤジ「泊めてもらうのも悪いし、その辺で数泊して帰る事にしよう。では蕨ちゃんの事は頼んだぞ。じゃあな」

磨夢「ん。蕨、行こう」

蕨(こくり)


82-2

八城「ゆいちゃん、マヨネくださいな」

ゆい「はい、どうぞ」

基茂「ちる、このサラダが大変美味いぞ。キャベツにトマトの酸味が、よく絡んでいる」

ちる「マヨネーズかけたら、その味も消えてしまいますけどね」

八城「わたしゃマヨラーなんでよ。カレーにマヨネも普通だよね」

ゆい「誰に同意を求めても、応える人は居ませんよ」

八城「ゆいちゃんもオムカレーとかやってるじゃん」

ゆい「あれは磨夢さん特注で作ってもらっているものですから、自分でやっている訳じゃありませんよ」

八城「そしてオムの上にケチャップがかかっている。マヨとケチャは親戚みたいなものだよ」

ゆい「どちらかと云えば、ソースとケチャップ、マヨネーズとタルタルソースが親戚だと思いますよ」

八城「そだねー。最近エビフリャー食べないからタルタルとか忘れてたよ」

ゆい「さてちるさん、ここで八城ちゃんにどう突っ込むべきでしょう」

ちる「え、ここで振りますか!?…では、八城ちゃんは名古屋人ですか?」

八城「うーん、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

基茂「この辺に住んでいたなら名古屋人でもおかしくない筈だ」

八城「お兄ちゃんが言うと本当に範囲が限られてくるね」

基茂「悪かったな、ひきこもりで」

ちる「ゆいちゃん、正解は?」

ゆい「今のも間違えてはいませんが、わたしの求めていた答えは、昼に食べたでしょう。ですよ」

ちる「それは忘れる事もあるんじゃないですか」

八城「あたい忘れんぼなの。とりあえずゆいちゃん、昨日の晩御飯言ってみてよ」

ゆい「わたしは覚えていますよ。ハヤシライスです」

基茂「オレはハッシュドビーフを食べたぞ」

ゆい「呼び方が違うだけですよ、それ」

ちる「わたしはハヤシライス派ですね」

八城「あー、あたしもハヤシライス」

ゆい「何だか兄さんが哀れです」

基茂「オレもそっちにするかな」

ゆい「切り替え早すぎませんか!?」

八城「ところでハヤシライスのハヤシってなあに、ちる姉ちゃん。林さんが関係しているのかなあ」

ちる「その可能性はありますけど」

ゆい「もしくは林で食べたものだったりするんじゃないですか」

八城「なる、そいつもありだな」

ちる「林で鍋パーティーなら鳥さんやリスさんが集まるんですかね」

基茂「それはどちらかと云うとお菓子パーティじゃないか」

八城「そういえば次回の菓子パは、いつやるの?」

基茂「今でs」

ゆい「磨夢さんに訊いてください」

基茂「ゆいゆいキャンセルか」

ちる「そういうこともありますよ」

八城「まみーの気分次第かぁ」


82-3

磨夢「……ただいま」

八城「おかえり、まみー」

ちる「お邪魔しています」

磨夢「ご飯食べた?」

基茂「ああ、ちるに作ってもらった。うまかったぞ」

磨夢「流石我が弟子と言わんばかり」

ちる「本当に磨夢さんのお蔭です」

八城「ゆいちゃんもちる姉ちゃんを見習いなよ」

ゆい「八城ちゃんに言われたくありませんが、確かにわたしは一人暮らしなので考えてはいます」

磨夢「ゆいは駄目な所が良い」

ゆい「そんなストレートに言わなくても」

磨夢「って基茂が言ってた」

ゆい「兄さん。ぽんこつが好きなんですか」

基茂「自覚したら、ぽんこつと言えないな」

ちる「ぽんこつ?」

八城「スープの味だよ」

ちる「わたしはスープだったんですか」

基茂「ポンコツ違いだろ、それ」

磨夢「基茂もみずいろをやった方が良い」

基茂「左様で。ちなみにゆいゆい、オレは軟骨の方が好きだ」

ゆい「何で食べ物の話になっているんですか。ひょっとして兄さんはわたしを食べ物と見ている…」

ちる「………」

基茂「なあ、ちる。ゆいゆいって変な奴だと思わないか?」

ちる「…え、いきなり何ですか。ゆいちゃんは良い子だと思いますよ」

八城「そだよ、ゆいちゃんは良い友達なんだよ」

磨夢「…チッ」

ゆい「磨夢さん、少数派で怒っています?」

磨夢「別に悪い人間とは思っていない」

ゆい「ちなみに腹黒くもありません」

八城「ゆいちゃんって、どす黒いもんね」

磨夢「八城、信じてた」

ゆい「磨夢さん、八城ちゃんを飴玉で買収しないでください」

磨夢「ちるも要る?」

ちる「ありがとうございます」

基茂「………」

ゆい「兄さんはわたしの味方ですよね?」

基茂「ゆいゆい、人間は必ずしも信用出来るものではないぞ」

ゆい「四面楚歌ですよ、これ…」


82-4

基茂「そういえば新しい幼女とか言っていたな」

磨夢「蕨の事?」

八城「またお友達を紹介してくれるの?」

磨夢「友達には不相応かもしれない、蕨」

ガララッ

蕨(ニコッ

ちる「基茂さん、急に倒れて大丈夫ですか?」

基茂「ああ大丈夫だ。しかしここまで幼女だとは」

八城「あたし達よりも年下」

ゆい「わたし達は厳しい方ですが」

磨夢「この子が蕨。食用幼女」

蕨(ペコリ

基茂「おい」

ゆい「わたし、負けを認めます」

八城「ゆいちゃんじゃとても敵わないね」

ちる「お人形さんみたいで可愛い子ですね」

磨夢「基茂」

基茂「ちるも人形みたいで可愛い」

磨夢「おい」

ちる「あわわ…」

ゆい「何してるんですか、三人で」

八城「蕨ちゃん、この子がレオポンだよ」

レオポン「にゃあ」

蕨(ニコッ

レオポン「なうー」

ゆい「あのレオポンを数秒で手懐けましたよ」

ちる「わたしには寄ってもきませんけど」

基茂「ちるはレオポンと最悪の出会いでもしたのか」

ちる「いえ、既に八城ちゃんに懐いていたからです」

基茂「まあ、一緒に鳴いてたぐらいだからな」

ちる「実際八城ちゃんを猫と間違えたくらいですから」

ゆい「きっと八城の前世が猫だったんですよ」

ちる「にゃあ」

ゆい「どうなさいました、いきなり」

ちる「…いえ、何でもないです」

磨夢「ちるは猫、ちるは猫…」

ちる「にゃ、にゃあ…」

ゆい「兄さん、ここに催眠術をかけている人が居ますよ」

基茂「いいぞ、もっとやれ」

ゆい「おい」

八城「蕨ちゃんはレオポンの事気に入った?」

蕨(コクリ

八城「良かったね、レオポン」

レオポン「にゃあ」

磨夢「…さて基茂、風呂」

基茂「そういえば入ってなかったな」

ゆい「今日は誰と入るんですか?」

基茂「そうだな、ちるにするか」

ちる「わ、わたしはそろそろ帰りますから…」

バタリ

八城「あはは、お兄ちゃん嫌われた」

磨夢「いや好感度は少なからずや上がった筈」

ゆい「兄さん、他に選択肢は無かったんですか!?」

基茂「上がったのか、下がったのか、どっちだと云うのだ?」

磨夢「今度ちるに会えば分かる話」

ゆい「兄さんに明日はありませんね」

八城「絶望の日は2月だって言ったでしょ」

基茂「やしろん、それは節分な」

蕨(?)

ゆい「蕨ちゃん、この人がダメヒモ兄さんです」

蕨(こくり

基茂「磨夢が居る限りヒモと呼ばれ続けるんだろうな」

磨夢「じゃあ、わたしは故国に帰らせてもらう」

ゆい「兄さんが良くても、わたしが困ります。死んでしまいます」

ちる「ゆいちゃん、料理の事ならわたしが居ますよ。安心してください」

ゆい「いえ、わたしが心配しているのはそこではありません。何と言いますか、わたしと磨夢さんは運命共同体で」

八城「離れると死んじゃうのっていうペターンだね」

基茂「そうだな、みんなペターンだな」

ちる「基茂さん…」

基茂「オレはつるぺたが好きだ」

ゆい「兄さん、その一言でここに居る全員を籠絡する気ですか?」

基茂「ゆいゆいよ、オレはその程度な人間ではない。やるからには一人ずつ落とす」

八城「少しでも主人公らしく振舞いた…ふがが」

磨夢「まず基茂は主人公として苦しい」

ゆい「八城ちゃん塞いでも意味無いじゃないですかー」

基茂「磨夢を止められる奴は居ないからな。で、何だ。どうやらオレは主人公と思われていないらしい。ではオレの立ち位置は」

八城「わたし達のお兄ちゃん」

ゆい「同意です」

蕨(こくり

磨夢「………」

基茂「成程、満場一致…」

ちる「あの…」

基茂「ん、ちるにとっては何なんだ?」

ちる「わたしは、その…」

磨夢「今後基茂出入り禁止で」

基茂「いや、オレが借りている家だし。理由は?」

磨夢「ちるを困らせたから」

蕨(こくり)

基茂「今のでか!?」

八城「お兄ちゃん、ちる姉ちゃんは愛ゆえに死も恐れずー」

ゆい「八城ちゃん、それは少し、いや全く違うと思いますよ」

八城「そだね、ちる姉ちゃんは、お兄ちゃんの為に死…あれ?」

ちる「それも良いかもしれませんね」

ゆい「死ぬ程愛されて、兄さんは幸せ者ですね」

基茂「あ、ああ…喜んでおこう」

磨夢「ちるは、自分か基茂、どっちが先に死にたい?」

ちる「わたしは良いですが、基茂さんが亡くなったら、わたしも死にます」

八城「ちるさん、そこはお兄ちゃんを殺してわたしも死にます、だよ」

基茂「由宇かわいいよな」

磨夢「基茂はヤンデレ好き…」

蕨(?)

ゆい「ちるさんは一途すぎますよ。兄さん」

基茂「ヒューイ」

ちる「基茂さん、実際の所は、その…どうなんです?」

基茂「受け取ってはいるぞ。オレは幸せ者だ、ハハハ」

磨夢「頭が幸せなだけ…」

蕨(こくり)


82-5

ちる「さてと」

基茂「泊まっていくか?明日休日だし」

ちる「…そうですね、夜も暗いですから。ゆいちゃんは、帰りましたか?」

八城「ゆいちゃんはテレポート使って帰ったから大丈夫だよ」

ちる「ゆいちゃんは超能力者だったんですね」

磨夢「ちる、好きな所で寝たらいい」

ちる「好きな、所ですか…基茂さんは大丈夫ですか?」

基茂「好きにしろ。手は出さないから」

ちる「ふふ、ありがとうございます」

八城「お兄ちゃん、わたしも一緒に寝たい」

ちる「川の字で寝ましょう。基茂さんを挟んで、八城ちゃん、これで良いですか?」

八城「うー、一応わたしを挟んで寝よう」

ちる「……はい」

八城「まみーはどうすんの」

磨夢「いつも一人だから構わない。それに今日から蕨が居るから」

八城「蕨ちゃんの初夜をまみーに奪われる」

蕨(?)

磨夢「ではわたし達は先に。行こう、蕨」

蕨(コクリ)

基茂(今夜は荒れるな)


82-6

ゆい「おはようございます。磨夢さん、今何時ですか?」

磨夢「7時。わたししか起きていないのは、よくあること」

ゆい「兄さん達も、起きてないのですか」

磨夢「散歩に行っている。蕨に町案内込みで。その内帰ってくると思う」

ゆい「そうですか。では何か軽いものでもお願いします」

磨夢「ん。待ってても遅いし」



83

剣「しげっち、しげっち」

基茂「なんすか。そんなに慌てて」

剣「これをプレゼントしよう」

基茂「今治タオル…しかも今治のサイン付き、だと!?」

剣「サブ兄がくれたんだけど、どうかな?」

基茂「俺今治好きなんだ。あざっす。ちなみに他の選手のもあるのか?」

剣「あるよ。吉平さんは、わたしが貰うけど。シュミットは説得さんで喜ぶかな」

基茂「かすむんとあまり野球の話しないから分からんが、アリゲイツだけは詳しいんだよな。だから誰でも喜びそうだ」

剣「仮にシュミットの贔屓選手じゃなくても誤魔化せそうだね」

基茂「あぁ、恐らくな」

剣「じゃ、行ってくるわ」

基茂「てら」

純治「伊崎、そりゃなんだ」

基茂「よう佐竹。こいつはちょっとしたレアもんだ」

純治「ほーん。まあ幼女のイラストが無いなら俺の管轄外だな」

基茂「そういうのは雑誌特典なんかで手に入れなさい」

純治「抱き枕カバーなら幾らでもあるんだけどな。幼女限定で」

基茂「そいつはとくと味わうべきだ」

純治「ああ、お気に入りの子とはいつも一緒に寝てるよ」

基茂「朝気付いたらフガ」

純治「おっと、ゆいちゃんの話はさせねーぞ」

基茂「今度佐竹宅に来るよう頼んでみようか、断られるかもしれんが」

純治「普通に遊びに来てもらうだけで結構だ…」

基茂「まあ、やしろん共々時間があるなら遊んでやってくれ。ゲーセン行ったらかすむんにも会えるしな」

純治「そういや最近格ゲーの腕鈍っているからな。クロちゃんならそこそこだろ?」

基茂「事前にかすむんとやっていなかったら大丈夫だろう」

純治「コピー能力…か。ある意味最強だよな」

基茂「カー○ィみたいなもんだな。完全模倣と云う点で格が違う。然るに多種多様な攻め方をしないと勝てないぞ」

純治「あれ、殆ど勝てないだろう。しかしやしろんも強い、後ろで見ているだけで良いわ」

基茂「情けないな。やしろんは割と勝てるぞ」

純治「かすむん基準でやっているお前なら勝てるさ」

基茂「かすむんには滅多打ちにされるけどな」

純治「かすむんがぁ!近づいてぇ!かすむんがぁ!画面端ぃっ!」

基茂「本人は黙って首を振るな」

純治「俺達の中では強い。そういう話にしておこうぜ」

基茂「井の中の蛙…じゃないだろうなあの強さは」

純治「前言撤回サーセン」

基茂「磨夢は素直な強さだぞ」

純治「但し、飲み込みが早い。またカービ○か」

基茂「コピーしないだけクロちゃんよりマシだ」

純治「独特の癖がついたら厄介だぜ。ああいうの」

基茂「まあ慣れてないから、少しはやりやすいと思うぞ。ただゲーセンに来た事は無い。それくらいだ」

純治「孤独が好きなのは趣を分かっていらっしゃる」

基茂「ちなみに磨夢は好みか?」

純治「合法か否か曖昧な線上に居るのは悪くないな。ただはっきり幼女かと云うと首を傾げる」

基茂「性格悪いのは俺が知っている。まあ慣れたら勝ちだ」

純治「マゾっ気がある伊崎なら大丈夫だな」

基茂「絶対服従はマゾの領域を超えているぜ。ってそこまで行ってねえよ。俺は健全な紳士だ」

純治「ならば、共に紳士の道を究めよう。シゲリンガル」

基茂「おうとも、ジュンジーク」

純治「今度、師匠呼ぶわ。また語り合おう」

基茂「サンクス、期待しているぜ」


84

ゆい「兄さん、今日は誰も飛び降りませんでしたか」

基茂「我が学校はオカルト方向に向かってはいない…て、また人のベッドで寝ていたのか」

ゆい「日々の疲れを癒やしていました。特に下心はありません」

基茂「まだ寝ないし構わないが。日中使ってくれる人が居てそいつも喜んでいるよ」

ゆい「兄さん、今夜こそは」

基茂「最近疲れているんだ。また今度な」

ゆい「もしかして倦怠期ですか。ちるさんが出ないのもその為で」

基茂「だからといって、ゆいゆいと戯る事で、ちると話す機会が増える訳じゃないぞ」

ゆい「ちるさんは対人恐怖症ですし、その辺りは仕方が無い事ですね」

基茂「一応姿は見ているけどな」

ゆい「やっぱり倦怠期なんですね。わたしが慰めて…」

基茂「うるせえよ…」

ゆい「兄さん、冷酷無情な人間とか噂されません?」

基茂「いや、それは磨夢だと思うな。俺が思う一番の人間だよ」

ゆい「わたしもそう思います。ですが他人からはそう見えないんですよね」

基茂「外での猫被り具合は異常、しかし職務を全うする点では優秀なんだろうな」

ゆい「しかし兄さん。幾ら磨夢さんの横暴に振り回れていると言えど、わたし達は磨夢さんによって生かされているんですから。たまにそういう事を忘れます」

基茂「確かにな。若し磨夢が出ていったら、俺達は生きる希望を失うってか。皮肉な話だ」

ゆい「特にわたしは…その重大さが分かります。契りを交わせし者として、勿論兄さんもですよ」

基茂「その二つは全く違う風にしか聞こえないぞ」

ゆい「人生、後戻りは出来ませんよ」

基茂「はあ、俺のちるは何処に…」

ゆい「兄さんは重婚待ったなしの人間です」

基茂「重婚可能な国にでも移住するか」


85

霞「お邪魔します」

玄那「ちゃーす」

ちる「あっ、二人共いらっしゃい。お茶でも入れますね」

玄那「先輩は如何にしてわたし達と判断しているんだ?」

ちる「声で分かります。後、ゆいちゃんに結界やらを張ってもらっています」

玄那「未知なる他者の干渉をさせない結界。霞、どう思う?」

霞「ゆいちゃんは何処か変な魔力を放っていますから、その実体が如何なるものか判断に苦しみますね」

玄那「本人に訊いた方が良さそうだ。今度神社に行くか」

ちる「わたしにも理解出来ませんでした」

玄那「あれは常人の手には負えないから仕方の無い話だぞ、先輩。寧ろ理解出来たらわたしみたいな変態になる」

霞「うわ、自ら変態語ってますよ。この人…」

玄那「別に隠す必要も無い事だろう。こういう状況でこそ自分を晒しだすのが潔くて良いものだ」

霞「先輩、分かりましたか。クロちゃんは自他共に認める変態です。まあ、磨夢さんみたいのではありませんから」

玄那「磨夢さんはこっちの意味でも変わった人間だが、しかし伊崎先輩自身がまともに磨夢さんの性格を把握している訳じゃないからな。わたしにも分からない」

ちる「磨夢さんが反応するのってかすむんだけじゃありません?」

霞「あー、確かにそうかもしれませんね。でも最近では国王陛下が云々って話していた気がします」

玄那「国王陛下…そんなお偉方と」

ちる「名前が某国の国王に似ているとかそんなのじゃありませんかね」

玄那「ああ、一理ある。それでその際霞はどうなるんだ」

霞「それを漏らすと磨夢さんは愛人だからと取り繕いますね」

玄那「先輩、これと同じような事で心当たりあるだろう?」

ちる「わたしはゆいちゃんが迷惑なんて思ってませんけど…」

玄那「そこが甘いんだ、先輩。例え愛人設定であっても油断してはならない。正妻の意地を見せないと、やがて自分すらも見失うぞ」

ちる「正妻の意地ですか…かすむんは意識した事あります?」

霞「何故そこでわたしに振るんですかね!?正妻というのはあまり意識した事はありません。しかし改めて思えば磨夢さんから見ればその立ち位置に当てはまるのでしょう。あの人わたしが居なくなったらどうなるんでしょう。と言っても、わたしが磨夢さんに会ったのも今年になってからですし、何とかやっていけそうですね」

ちる「わたしは基茂さんが居なくなったらやっていけそうにありません」

玄那「そこでこそ、正妻の本気を顕現させるべきだろう。卒業してからも、何としても引き留める。若しくは同じ屋根の下に住むとか」

霞「磨夢さんならきっと理解してくれますよ。寧ろ伊崎先輩が町から出るなら、潔く去りそうですね。と、磨夢さんは大した障壁でもありませんが」

ちる「むぅ…基茂さんを引っ張りだすにも他人に迷惑をかけるのなら、その選択は間違っているかもしれませんね」

玄那「色々言ったが、この二年気長に考えたら良いんじゃないか?決して短くはない」

ちる「ん、んんー…」

霞「先輩、気休めに何かやりませんか。わたしの鞄にwiiがありますが、テレビ無いんでしたね」

ちる「ラジオで間に合ってますからね」

玄那「霞のゲーム用のテレビを先輩に譲ったらどうだ?」

霞「あのクローゼットに隠してあるやつですか。テレビゲームするなら居間のやつで間に合っています。しかし、あのテレビはアナログ放送ですからね。デジタルチューナー買うのも癪でしょう?」

ちる「わたしは別にテレビ見ませんから、何ならうちでゲーム用に預かっても良いですよ。DVDとか観れます?」

霞「観れますよ。ブルーレイも観れます。PS3使ってあそBDなんぞも。そういえば先輩はホラー映画が好きなんでしたね」

ちる「怖いのは観るのも遊園地なんかで体験するのも好きですよ。スプラッターよりかは易しいものですが」

玄那「あー、此処でそれを観にくるならわたしはパスするぞ。逃げるように趣味を味わう為に帰宅する」

ちる「わたしとクロちゃん、そこだけが違和感ありますよね」

霞「ギャップ萌えですね」


86-1

基茂「ただいまっと。ん?やしろんが来ない」

磨夢「おかえり」

基茂「やしろんは、まだ帰っていないのか?」

磨夢「ゲーセン行ってる」

基茂「一人で行って大丈夫か」

磨夢「霞に任せてあるから大丈夫」

基茂「まあやしろん自体強いから大丈夫だな。そういう問題か」

磨夢「ゲーマーに恐るるに足るものは無し」

基茂「店内は安全だが、帰ってこれるのか」

磨夢「ゆいが動いてくれるから問題ない」

基茂「お前ら、そういう所は連携出来るのな」

磨夢「電波回線を共有すれば容易に行える」

基茂「そうか、そっちの人間だったな」

磨夢「基茂も脳いじる?新しい自分が見つかる」

基茂「帰ってこれなくなるだろうし、やめておこう」

磨夢「そう」

基茂「ちょっとシャワー浴びてくる」

磨夢「ん」


86-2

磨夢「八城はゆいと一緒に寝るらしい」

基茂「そうか今夜は二人か」

磨夢「そう、二人」

基茂「そもそも二人が懐かしい」

磨夢「そう。八城の存在は大きい」

基茂「磨夢もやしろんに対する態度が変わったな」

磨夢「ん?」

基茂「昔はペット同様に扱っていた我が家ですが、今では」

磨夢「今でもペット」

基茂「確かにやしろんが猫っぽく見えるのは否定出来ないな」

磨夢「毛玉落としたら、レオポンと競って取りに行く」

基茂「色々と可哀想な子になったな」

磨夢「小遣いを渡すと、倍になって帰ってくる。重要な収入源」

基茂「招き猫なのか、博打なのか」

磨夢「麻雀でも覚えてきたのかも」

基茂「あの年齢から雀士とは誰も想像つかないだろうな」

磨夢「今度ゆいを誘って囲む?」

基茂「やる前から勝敗が決している戦は、挑むだけ無駄だ」

磨夢「ん、基茂が脱ぐだけなら何も面白くない」

基茂「ゲームに触れもしないゆいゆいはどうした。当然麻雀なんて知る筈も無かろう」

磨夢「ゆいは、料理以外なら飲み込みが早い」

基茂「一部天災にありながら、それ以外は天才か。お前ら妙な所で似ているよな。生き別れの姉妹か何かか?」

磨夢「ゆいは分かるけど、わたしが天災って?」

基茂「無表情で他人に無頓着な所。まあ面白いやつだとは思うが」

磨夢「他人と繋がりを持たないなら、災害に及ぶ事も無い」

基茂「まあ個人的にそう思っているだけだ。言いたい事が言えるなら問題ないな」

磨夢「ん…」

基茂「怒ってるのか」

磨夢「別に」

基茂「セツミなら可愛かった」

磨夢「ん…」

基茂「ちと光の目でもしてくるぜ」

磨夢「エデン?」

基茂「ああ、ゲートは全滅したけどな。テトラが居たら何も怖くない」

磨夢「ノア頼み…」

基茂「所々縛りやったりしている。敵が可哀想だ」

磨夢「DDエデンは無双になるから仕方がない」

基茂「ゲート維持したかったぜ。じゃあおやすみ」

磨夢「ん、おやすみ」


87-1

霞「ふう」

玄那「今日もお疲れ様だな。磨夢さんは相変わらずだし」

霞「あの人はもう少し平等に当てるべきだと思いますね。連続攻撃受けているのわたしぐらいですよ?」

玄那「霞は教卓と向かい合わせの席だから仕方ない」

霞「席替えしたいと先生に要請しましょう」

玄那「うみ先生なら分かってくれる筈だ」


87-2

敏樹「ん、席替えか?確かに時期的にはしても良い希ガス」

霞「先生は、通常運転で落ち着きますね」

敏樹「こんな事言うのは君達との間だけだけどね」

霞「音楽の授業では暴走しておられるという話を聞きましたけど?」

敏樹「勿論あれは手が空いてる時にだけで、授業は教科書に沿って真面目にやっている、つもりだ。ねえ、クロチョフ」

玄那「む、わたしが霞の話に関与していると何故バレたんだ?だが敢えて弁護の立場をとるなら、発表も内容が自由なのは魅力的だ」

霞「カラオケで毎回歌っていたアニソンは、その為だったんですね。しかし先生、自由度が高いと云う事は私たちみたいなオタクに恥をかかせるんじゃないでしょうか」

敏樹「世間様はJ-popだし仕方ないと思うよ。ついでに云えば、発表は個室か公衆の面前にするかは任意制だったよね、クロチョフ」

玄那「ふむ、言われてみればそうだった気もするな。わたしは前者で熱唱した」

敏樹「あれやると、色んな曲知れてカラオケのレパートリーが増えるよ」

霞「先生、それテストの目的間違ってませんか?」

敏樹「いやいや、建て前ならあるよ。生徒の歌唱力を確認する為、まるでのど自慢大会みたいだけど」


88

カランコロンカラン

マスター「おームー、いらっしゃ…ん?」

磨夢「ん?」

蕨「?」

マスター「その子誰の子?」

磨夢「立ち位置的には八城と同じ」

蕨(コクリ)

マスター「へぇ、そうなんか」

ルイ「ボンジュール」

磨夢「ルイ、ぽんじゅーす。マスター、いつもの」

マスター「了解了解」

ルイ「その子可愛いね」

蕨(ニコッ)

磨夢「いや、天使のような可愛さを備えたルイ程ではない」

マスター「ムー、るーちゃんを口説かん事」

磨夢「軽い挨拶だから」

蕨(?)

マスター「この子が、まだ幼くて助かったな」

ルイ「?」

マスター「るーちゃんまで首を傾げてどうすんねん」

ルイ「あ、ちょっと考え事していた」

磨夢「蕨、こういうのは鈍感ガールという」

蕨(こくり

マスター「珍しいかなって思ったけど単にムーが積極的すぎるだけな気がする」

磨夢「それ、霞にも言われた」

ルイ「霞って誰?」

磨夢「相思相愛の本妻」

マスター「ムーが言うと大抵嘘に聞こえるわ」

磨夢「真実を知り得るは当事者のみ。例え情報を得ようも他者に真偽の確執は取れない」

マスター「って云う事らしいで、るーちゃん」

ルイ「磨夢は何も教えてくれないよ?」

磨夢「喋ると長くなるから」

ルイ「磨夢は面倒臭がり屋さんなんだねぇ」

マスター「まあ、別にそこまで気になる事じゃないし」

磨夢「マスターはルイの為に必死」

マスター「その言葉そっくりそのまま返してやろか?」

磨夢「ルイは愛人」

ルイ「わたしはフランス人?」

マスター「そ、そうであってほしいわ」

ルイ「そういえば蕨ちゃんも結構白いよね」

蕨(♪)

磨夢「八城と同じ境遇の人間だから国籍は分からない。蕨は本名?」

蕨(こくり)

ルイ「ワラビーニョみたいな名前だったりして」

マスター「ボールが友達みたいやな。少なくともおとんの知り合いには居らんかった」

ルイ「マスターはサッカー好きだったりしたっけ?」

マスター「本国の事あんま知らんし、スポーツも全然やから別段好きな選手が居る訳でもないで」

ルイ「ああ、そうだったね。わたしもあんまり知らないや」

磨夢「フランスも人気だった筈」

ルイ「男の子はよくやってたかな。わたしはインドアだったから」

マスター「フランス人形に囲まれて暮らしてたらしいな」

ルイ「わたしの部屋だけ沢山あったよ。大半がいとこやお母さんのお古だけど。熊さんのぬいぐるみもあったな」

磨夢「お気に入りは?」

ルイ「碧眼金髪の美少女」

磨夢「それはあなたです」

マスター「やめんか」

磨夢「予想はついていた。ちなみに日本の人形はどう?」

ルイ「あ、知ってるよ。髪の伸びるやつ。それに似た子うちに住んでいるし」

マスター「るーちゃんって霊感あったんや…」

ルイ「マスターには見えないんだよね、あの子。丁度磨夢みたいな感じで可愛いよ」

マスター「あくまで磨夢を可愛いと言っている訳やないで、この目」

磨夢「今度ルー宅に仲間入りしてくる」

マスター「ポジティブやなぁ…見た目と違って」

ルイ「うちは訳ありでも、部屋は狭いよ?わたしとあの子と人形でいっぱいいっぱい」

磨夢「マスター、片道切符を」

マスター「金積まれても、そんな商品うちにはないし、るーちゃん家行ったら生きて帰って来れへんからやめとき。磨夢ん家の人らが飢え死にしても責任取れへんで?」

ルイ「そうだよ、家の中だけじゃなくて、場所も悪いから。慣れない内はやめておいた方が良いよ」

磨夢「むぅ、そこまで言うなら…」

マスター「珍しく引き下がったな」

磨夢「わたしの生死は構わないけど、他に色々あるから」


89-1

ブンッ ブンッ

ゆい「あのー…こんばんは?」

?「………」

ゆい「幽霊?」

?「………」

ブンッ ブンッ

ゆい「どなたか知りませんが、風邪を引かれないようにしてくださいね」

ブンッ ブンッ

ゆい(しっかり寝ないといけませんね)


89-2

ゆい「なんて事があったんですが。何か情報ありませんか」

基茂「夜中に素振りをする幽霊か。聞いた事がないな」

八城 「まみーは何か知っているの?」

磨夢「ん、野球少年の霊?」

ゆい「少年というよりは兄さんと同じかそれ以上の外見をした方でした」

基茂「つまり野球親父ってのもありうる訳か」

ゆい「若い方には見えましたが」

磨夢「グラウンドで死ねなかった少年」

ゆい「死ねたら本望なんでしょうか」

八城「幽霊になっても甲子園を目指しているお兄ちゃん」

ゆい「生前に果たせなかった夢を悔やんで、今更になって努力をしているんですか」

基茂「それ以前に幽霊か否かも分からんのだろう?」

八城「あうー」

磨夢「空気嫁」

ゆい「ま、まあ、確かにその確認はしておりませんでした。でも話し掛けても答えてくれません」

八城「姿が見えて、声は聞こえないとか?」

基茂「単にゆいゆいが一方的に見えているだけだったりしてな」

磨夢「ゆいは霊体を観察し、物理的に干渉する能力を備えている」


90-1

磨夢「………」

基茂「おはよう」

磨夢「…おはよ。朝から元気で、ゆいに襲われなかった?」

基茂「今朝は居なかったな。最近頻度が高い気はするが」

磨夢「…そう」

基茂「磨夢はどうだ?」

磨夢「野口出すなら」

基茂「案外安いんだな」

磨夢「それだけ基茂の小遣いは少ない」

基茂「確かに現在の所持金では厳しいな。諦めよう」

磨夢「ちるを誘ったら?」

基茂「神聖にしておかすべからず。後、本気にされても困るしな」

磨夢「ゆいとは、いつも楽しそう」

基茂「決して浮気はしておりません」

磨夢「そう」

基茂「しかし名目上ちるを嫁に貰ったとして、その子供がゆいゆいのものなんてのもあり得るのか」

磨夢「その場合、ちるに実子は居ない事になる。ちるが可愛がるなら問題ないけど」

基茂「何というか罪悪感に苛まれるな」

磨夢「そういう未来を望まないなら、ゆいと手を切るべき」

基茂「しかし奇しくも今の付き合いが適当だという事だ。ゆいゆいもあれでちるの味方だからな」

磨夢「誰だってちるを応援したくなる。あんなに一生懸命なんだから」

基茂「無茶しなくてもオレはちるを愛してるっての」


90-2

八城「おっはよー!お兄ちゃん、まみー」

基茂「おっ、やしろんおはよう」

磨夢「おはよう」

八城「二人は何か話してたの?」

基茂「あー、ゆいゆいの話だ。ゆいゆいの為なら、オレは喜んで犯罪者になる」

八城「おまわりさん、こちらです」

磨夢「基茂がムショ行きになれば、生活費も浮く。先に言っておくとそっち方面の負担には一切関与しない」

基茂「カツ丼だけで満足だ」

八城「毎日カツ丼三食だと飽きると思うよ?」

磨夢「寧ろカツ丼に食われたら?」

基茂「どっかの食人鬼が喜ぶな」

八城「ゆいちゃんが覗いているよ」

基茂「放っておけ」

磨夢「何か肉でもあれば…」

基茂「わ、分かったよ」

ガラッ

ゆい「皆さん、おはようございます。兄さん、珍しく早かったですね」

基茂「お前ら脅迫で訴えるぞ」

ゆい「互いに脅迫すれば±0ですね」

八城「お兄ちゃんが強気で助かったね。ゆいちゃん」

基茂「幼女相手に弱気である方がおかしい気がするが」

八城「幼女恐怖症、どないやねん」

基茂「やしろんに関西弁って違和感しかない。さては御主関東の人間か?」

八城「黙秘権を行使します」

基茂「最近の幼女は賢いな」

磨夢「伊達にPCゲをやっていない」

基茂「やしろん、お前は佐竹か」

八城「ジュン兄最近見ないけど、どうしたの?」

ゆい「ジュン兄にも色々あるんですよ」

基茂「最近奴の家に行かないのか?」

八城「うん、あんまり」

ゆい「お誘いがありませんからね」

基茂「あいつはいつでもウェルカムと言っていた気がする」

八城「じゃあ今度行くって電話してくるね」

ゆい「その為の固定電話ですからね」

基茂「家電の番号教えたっけな…」

磨夢「じゃあ料理の支度してくる」

基茂「てら」

ゆい「では部屋でお待ちしております」

基茂「いや、既に朝なんだが」

ゆい「少しだけです」

基茂「………中毒か」


90-3

基茂「はあ」

純治「おはよう、シゲリンガル」

基茂「剛とは仲良いのか?」

純治「奴はあの日以来永遠の兄弟さ」

基茂「いつの話をしているんだ」

純治「師匠も喜んでいたぞ。男の娘萌えだって」

基茂「クロちゃんは女の子だろ、いい加減にしろ」

純治「しかし、お昼の放送ではかすむんもよく疑っているじゃないか」

基茂「あ、あれは漫才だから…」

純治「ちなみにゲストとして呼ばれる日を楽しみにしている俺が居る」

基茂「やめとけ、全校生徒から総スカン喰らって暫く学校に来れなくなるぞ」

純治「経験者は語るか。いや大袈裟な」

基茂「あれ以来出演を控えている俺が居る」

純治「そもそもリスナーが少ない気がする」

基茂「さっきのは冗談だ。その通りだから、ゲスト行っても問題ない」

純治「うん、そんな気がしていたぜ兄弟」

磨夢「ちわーす」

基茂「とても似合わない」

磨夢「そう」

純治「先生、クラス間違えていますよ」

磨夢「今日は学級閉鎖です」

基茂「大抵お前らは信じられない」

純治「いや、お前が言うな」

磨夢「基茂は既に手遅れ」

純治「でしょうね、付き合い長いからか」

基茂「で、どうなんだ。真実の定かは」

磨夢「適当に言っただけ。単に来ている人が少ないから」

基茂「一つ言っておくと、うちのクラスの連中は基本的に大半が遅刻間際に登校してくる」

純治「つまり、オレらが異端って訳か」

磨夢「異端というより変態」

純治「はいはいオレたちゃ変態ですよーだ」

磨夢「ちる」

基茂「ん、そんな時間か」

ちる「………」

ガララ ぴしゃり

基茂「………」

磨夢「純治、いけない子」

純治「はい?そいつぁどういう事だよ!?」

基茂「仕方のねえ奴だよ…ちょっくら行ってくる」

ガララ ぴしゃり

磨夢「………」

純治「あのですね、先生?」

磨夢「何?」

純治「何か本を貸してくれませんか?」

磨夢「ん、これを読むといい」

純治「あざっす。相変わらず分厚いな」

磨夢「わたしの愛読書」

純治「変わったご趣味で」


91-1

ゆい「ぼーっ」

務「ゆい殿」

ゆい「あっ、つかさん。どうしたんですか、珍しい」

務「最近ゆい殿に異変があると聞いてこちらへ伺いましたが、やはりどこか調子が悪いのではありませんか?」

ゆい「いえ、問題ありませんよ。こういうのは昔からですから、慣れています」

務「まあ、無理はなさらぬよう。ゆい殿がお疲れになれば、ょぅι゛ょ隊はいつでも駆けつけますよ」

ゆい「それは大変心強いです。でも大丈夫です。今日くらいは持ちますから」

務「明日は我々が力を貸します。しかしゆい殿、お顔が優れません。少し休憩を取るべきでしょう」

ゆい「そこまでは言われたら仕方ありませんね…。では、少しの間頼みます」

務「はい、お大事に」


91-2

磨夢「ゆい、寝てる?」

ゆい「あ、はい…少し横になっています。恐らく例の病気です。ちるさんの為ですから」

磨夢「ゆいは無理しすぎ。他人の病気を引き入れる必要はない」

ゆい「まあ、少しだけですから実際ちるさんの度合いもさほど変わってないんですけどね」

磨夢「ん…でもゆいが苦しいなら、それだけちるは楽になっている」

ゆい「だと良いんですけど…」

磨夢「ところで今何か欲しい?」

ゆい「兄さん」

磨夢「悪化するから無理」

ゆい「こういう時に限って遊べないんですか」

磨夢「寝る時は寝る。遊ぶ時は遊ぶ」

ゆい「まあ遊ぶ時は思いっきり遊んでいますからね」

磨夢「他に何か」

ゆい「みかん一つでお願いします」

磨夢「案外まとも」

ゆい「磨夢さんのいやーんな写真集…」

磨夢「欲しい?作るけど」

ゆい「い、いえ結構です」

磨夢「自分のは作りにくくても、他人のは作りやすい。例えばちるとか」

ゆい「ちるさんの写真集ですか…悪くありません」

磨夢「また後日発送する。とりあえず今回は適当に果物を持っていく」

ゆい「ありがとうございます」


91-3

磨夢「基茂、ちるのいやーんな写真を撮るのは、どうすればいい?」

基茂「それ、オレだけには訊いちゃいかん質問だ。それで、何に必要なんだ」

磨夢「ゆいへのプレゼント」

基茂「かすむんのポスターがバレたのか?まあ、報復のつもりならそれも面白い」

磨夢「恐らくゆいはそういう魂胆を持たず、単にわたしが勧めたのに応じただけかも」

基茂「忠実な下僕を持って、ご主人様は幸せ者だな」

磨夢「基茂もゆいぐらい素直ならなお良いのに」

基茂「俺はどこかで磨夢を警戒しているぞ」

磨夢「素直…」

基茂「違う意味で、と言いたいんだろ?まあいい。写真については、頑張ってくれ」

磨夢「基茂は協力してくれない?」

基茂「俺は健全なカメラマンだからな」

磨夢「幼女撮りまくって。でも、脱がしてはいない」

基茂「そんなの見るだけで鮮血モノだからな」

磨夢「八城と風呂入ったり、ゆいに夜這いされたりしているのに?」

基茂「どちらの場合も理性が正常に作動しないな」

磨夢「基茂も男…か」

基茂「ああ、だから協力申請は他当たってくれ」

磨夢「ん、ありがとう」


92

磨夢「ん」

ゆい「はわわ」

八城「ゆいちゃんってはわわどころじゃないよね」

ゆい「はわわ」

八城「またお前同じ事言わせんのか?」

磨夢「八城の名字は山田」

八城「おうおうおうおうバカじゃねえのオメエよぉ」

ゆい「ふぇぇ」

八城「それだけだ。俺の言いてぇ事はよぉ」

磨夢「ゆいは幼女じゃない」

ゆい「ノゥッ!アイムアヨウジョ!」

磨夢「…そう」

八城「まみー、まだ不服あり気だよ?」

ゆい「磨夢さん。幼女の定義は身長135cm以下の幼い容貌をしたおにゃのこですよ」

磨夢「不老不死なら永遠の幼女。しかし頭脳的な問題はあると思う。八城みたいに思考も幼くあるべき」

八城「えっ、あたしバカにされた!?」

ゆい「天才幼女は居ますよ。マチルダみたいに本と共に生きてきた幼女なんかがその一例です」

磨夢「確かに天才は先天的なもの、そういう事もある。ゆいが天才とは言い難いけど」

ゆい「ふぇぇ、わたしまでバカにされました…」

八城「あたし達ダメ幼女」

磨夢「いや、それが普通だから」

ゆい「そういう磨夢さんは自分が天才とでも思っているんですか?」

磨夢「さあ、天才は自分から名乗るものとは思わないから」

八城「全世界の天才キャラを敵に回しちゃったよ!?」

ゆい「電波=天才ではありませんからね」

八城「お前が言うな」

磨夢「ゆい、電波を送ってあげる」

ゆい「やっぱり電波じゃないですか」


93-1

磨夢「ちわ」

霞「久しぶりですね、窓in」

磨夢「ん、霞は不用心」

霞「わたしは暑がりですから。ところで何か用ですか。相談事なら何でも聞きますよ」

磨夢「被写体を人間にした場合、えちぃやつはどう撮る?」

霞「脱がす、は無しですか?まず撮影は被写体に断ってからするものですからね」

磨夢「脱がす。まあちるは素直だからいけるか」

霞「椎木先輩を脱がして何を考えているんでしょうか。どこか怪しい会社に送りつけるんですか?」

磨夢「それもありだけど、利用法は依頼人のみぞ知る」

霞「もしかして伊崎先輩ですか?」

磨夢「基茂はその程度では喜ばない」

霞「寧ろフラグ建築士じゃないんでしょうか。わたし達の知らない内に二人で進展があったりして」

磨夢「わたし達が干渉する事も無い」

霞「まあ、そんな所ですよね」

磨夢「今夜実行に移る。その前に菓子パしよう」

霞「人ん家で客人が主催するものではないですが…喜んで」


93-2

ちる「くー、すぴー」

磨夢「ちる」

ちる「きゅー」

磨夢「脱がすよ?」

ちる「ふにゅ?」

磨夢「………」

ちる「くー、くー」

磨夢「こちら磨夢。ちる宅に到着。本人は睡眠にあり、実行入るに難し」

霞「椎木先輩は早寝なんですか。なら、布団に入りこんで耳に息を吹く作戦です」

磨夢「ゆいの得意分野…やってみる」

もぞもぞ

ちる「…んん」

磨夢「ふぅっ」

ちる「ひゃっ…すー、すー」

磨夢「どうする?」

霞「起きませんか。では、強引にやりますか」

磨夢「被写体に無許可で脱がす?」

霞「はい、慎重に」

磨夢「了解」

ポチ ポチ

磨夢「これは…」

霞「写真撮ってすぐ撤収ですよ?」

磨夢「…仕方ない」

カシャ

磨夢「一応直しておこう」


93-3

磨夢「おはよう、ゆい」

ゆい「おはようございます。戦果はどうでしたか?」

磨夢「マニアに高値で売れるかも」

ゆい「…これは」

磨夢「どう?」

ゆい「今後の研究に使わせていただきます」

磨夢「…そう」

ゆい「あまり苦労はしてないんですか?」

磨夢「ん、侵入も容易だった」

ゆい「相変わらずのスパイダーマッ」

磨夢「さて、そろそろ家に戻るけど、ゆいも一緒に来る?」

ゆい「そうですね。朝やる事は終わったので、一緒に参りましょう」


94

ちる「基茂さん」

基茂「どうした、ちる?」

ちる「今朝寒かったんですが、どういう事でしょうかね?」

基茂「さあ、窓でも開いていたんじゃないのか?」

ちる「見た感じ、開いてなさそうでしたけどね…」

基茂「つまり、その可能性は有るという事か?」

ちる「はい。でも、肌に突き刺さるような寒さでした。具体的には、服の中に入ってきて…」

基茂「妄想は払った。でも、あいつ隠蔽出来なかったんだな…」

ちる「誰ですか?」

基茂「いや、何でもない。こっちの話だ」

ちる「?」

基茂「そうだ、ちる。今度は二人で遠くの方まで行かないか?何か現実から離れたい」

ちる「二人っきり…ですか。良いですね」

基茂「電車でも使えば誰かに追われる事も無い筈だからな」

ちる「はい、近所よりは低確率になりますからね」


95

基茂「将来の嫁?無論ちるだ」

磨夢「うるさい」

八城「夢はお兄ちゃんの部屋をオタ廃人の部屋にする事かな」

基茂「オレは廃人じゃなかったのか。良かった」

磨夢「………」

基茂「たまには片付ける」

磨夢「ん」

八城「お兄ちゃんの部屋ってPCゲ棚くらいで至って普通のオタクだよ」

基茂「そうだよな、ポスターも抱き枕も無いしな」

磨夢「そういうもの?」

基茂「そういうものじゃねえの?」

磨夢「そう」

八城「ねえねえ、あたしとお兄ちゃん、どっちが重傷?」

磨夢「基茂」

基茂「即答だな。しかしオレがやったゲームは、やしろんもみんなやっている。そこを考えるとどうだ?」

八城「お兄ちゃん」

基茂「くっ…世の中は非情だ。って何故やしろんが答えている」

八城「まみーのアイコンタクトだよ」

磨夢(じろっ)

基茂「は、はは…」

八城「さて、お兄ちゃん。お風呂に入りたい訳なんだけど」

基茂「ゆいゆい呼んで入ってくれ」

八城「三人も楽しいね」

基茂「そういうつもりで言ったんじゃねえ」

磨夢「わたしはあくまで傍観者」

基茂「なんつー非情な不干渉だ」

八城「ゆいちゃんもきっと喜ぶよ」

基茂「容赦ない即死魔法を使うな」


96-1

ゆい「兄さん、いつもより大きかったですね」

八城「そだね、元気そうで何よりだったよ」

基茂「幼女は無理するなよ」

八城「ゆいちゃんはともかく、あたしは心配無いからね」

基茂「ああ、全くだ」

ゆい「わたしが死んでも泣かないでくださいね」

八城「うん、お兄ちゃんが捕まっても泣かないよ」

基茂「一応殺人になるんだよな」

ゆい「寧ろわたしが殺人者になってその肉を…」

基茂「やめろやめろ」

八城「そういえばゆいちゃんカニバリストだったね」

ゆい「たまに磨夢さんが人肉シチューとかやってくれますよ」

基茂「ゆいゆいは特別にな」

八城「あたし達は食べないから」

ゆい「人間には分からないんですね。この至高の味が」

八城「お兄ちゃんのとどっちが良い?」

ゆい「それは兄さんのに決まっていますよ。都合良い時に元気なんですから」

基茂「いつものゆいゆいだな」

ゆい「兄さん、今度は二人きりで入りましょうね」

基茂「あ、うん」

八城「まみー、あたしと一緒に入ってくれるかなぁ?」

基茂「そっちの方が自然だぞ」

八城「そうなの?」

ゆい「兄さんと入る方が楽しいですよ」

八城「そうだね」

基茂「もう…好きにしてくれ」


96-2

磨夢「基茂、嬉しそう」

基茂「体も心もヘトヘトだ」

磨夢「でも下は正直だった」

基茂「はいはい。で、磨夢はどうする?蕨は居ないのか」

磨夢「蕨はまだお昼寝中。いい加減起こしてお風呂入ってくる」

基茂「ああ、いってら」

八城「お兄ちゃん発見。ゆいちゃんミサイル発射ッ!」

ゆい「ドーン!」

基茂「よしよし」

ゆい「ふにゅう」

八城「あ、良いなあたしも」

基茂「可愛い奴らめ」

ゆい「兄さん、そこのえっちなビデオでも観ましょう」

八城「あ、それあたしの!」

基茂「堂々と晒してんじゃねえよ。てか、誰から…あ、佐竹か」

八城「うん、ジュン兄ちゃん絶賛の品だよ」

基茂「二人で観といてくれ。オレは観るより…」

ゆい「プレイする。風呂上がりって良いですよね。部屋に向かいましょう」

基茂「ゆいゆい、磨夢に殺されるぞ」

ゆい「ぎゅ、牛乳で我慢しますよ…」

八城「そうだよ、しっかり飲んで大きくならないとね!」

ゆい「八城ちゃん、兄さんは小さい方が好きですよ」

八城「ロリきょぬーに魅力を感じないの!?」

基茂「実物を見た事が無いから分からんが、つるぺたの方が好きだ」

ゆい「この家にはつるぺたしか居ませんからね。兄さん、揉んでみます?」

基茂「遠慮しとく」

八城「お兄ちゃん、本読みだしちゃったよ。まみーの本読んで理解出来るの?」

基茂「難解すぎるぞ。でも、これも悪くない」

ゆい「申し訳程度に絵がありますが、作者は相当病んでいますね。確かこの本は作者が死ぬ三日前に書いたものです。精神的に追い詰められていたのです」

基茂「絵も文もお疲れ様って所だな」

八城「お兄ちゃんもいつかこういう本書こうと思っているの?」

基茂「遺書じゃあるめーし…しかしそうだな、いつ磨夢やゆいゆいに殺されるか知れたものではないからな」

ゆい「死にたくなったらいつでもお申し付けください。スタッフが笑顔でミンチにします」

基茂「出来たら痛くない方が良いぞ」

八城「ゆいちゃん、何か薬は持ってないの?」

ゆい「ちるさんの常備薬を少し貰った程度です」

八城「だってお兄ちゃん」

基茂「やはり楽には死ねないか」

ゆい「わたし達の目が黒い内は甘い考えを控えた方が良いですよ」

基茂「ゆいゆい、死にたいか?」

ゆい「さあ、どちらとも言えません」

八城「まみーと二人きりになったら、なかなか辛いかも」

基茂「それを言うな。まあ初見じゃないだけマシだろう」

八城「ある程度付き合いがあれば、かぁ…」

ゆい「兄さんの存在が必要不可欠なんですね」

八城「それはそうだよ。お兄ちゃんは一緒に遊んでくれるから」

ゆい「兄さん、生きる事を考えましょう」

基茂「そうだな」


97

ちる「あのぅ…基茂さん?」

基茂「おぅ、おはようちる」

ちる「最近目覚まし時計が欲しくなってきたんですが」

基茂「全員が教室が出る時間なんてセット出来ないだろう。それにちるの目覚ましサービスは心より感謝している」

ちる「わたしは、ただ、利用されていただけだと…」

基茂「ありがたく使わせてもらっている」

ちる「基茂さんは鬼でしたか…」

基茂「何とでも言ってくれ。オレはこういう人間だから」

ちる「泣きますよ?」

基茂「さあカモーン」

ちる「何しているんですか?腕を広げて」

基茂「来ないもんだなぁ…」

ちる「?」

基茂「まあ良い。ちるはハグは好きか?」

ちる「ぬいぐるみになら、よくしますね」

基茂「うちの磨夢も頻繁にやっているよ。まあ奴の場合、抱き締めるよりか締め付けるだが」

ちる「ぬいぐるみは…大切に扱ってくださいね?」

基茂「ちっとも女の子じゃねえぜ。あやつは」

ちる「何か、証拠でもあったんですか?」

基茂「古傷が痛むとプー○んが言ってた」

ちる「わたしに渡してくだされば、修理しますけど」

基茂「磨夢に秘密で持ってくる」

ちる「でも、お気に入りのぬいぐるみは、例え数日にしても、手放せないもの、なんですよ?」

基茂「そういやあの家に越してきた時に迎えてくれたのが、磨夢と○ーさんだったな。いつからの縁か訊いてみよう」

ちる「そうするのが賢明ですね」


98

基茂「ただいま」

八城「おかえり、お兄ちゃん」

基茂「磨夢は?」

八城「死んだぁ」

基茂「あいつは四肢断裂させても死なんような奴だ。だから生きている」

八城「お兄ちゃんはだるまっ娘が好きなんだね。やっぱちる姉ちゃんよりゆいちゃんの方がお似合いじゃない?」

基茂「食人が必ずしもグロスキーとも限らない。どちらかと言うとホラー好きのちるじゃね?スプラッター好きか知らんが」

八城「sawとか観てそうだね。あはは」

基茂「今度夜覗きに行くか」

八城「ゆいちゃんを誘えば良いと思うよ」

基茂「そういう覗きじゃないけどな。ついでに潜入操作なら磨夢の方が得意だ」

八城「お兄ちゃん本当にまみー好きだよねぇ」

基茂「付き合い長いし、まあ当然だろう。あ、念の為に言っとくと恋愛的な意味ならちるな」

八城「ついでにみたいに言わなくても」

基茂「影が薄いから仕方ないんだよな」

八城「お兄ちゃん本当にちる姉ちゃんを愛しているの」

基茂「ああ、オレはルートを一つしか選ばない」

八城「ハーレムルート要らないの」

基茂「磨夢とかすむんは攻略出来ない事になっているからな」

八城「あたしは?」

基茂「やしろんは攻略する方じゃないか?」

八城「確かに前髪長いけどね。なら、まみーもそうか」

基茂「剣はちるよりも影が薄いから無いな」

八城「人を影の薄さで判断しちゃ駄目だよ?」

基茂「もう磨夢が主役で良いよ」

八城「負けを認めるお兄ちゃん…」

基茂「あくまでその座を狙っているのはかすむんだから」

八城「お兄ちゃんはいつか落ちぶれるね」

基茂「人脈は磨夢のが断然良いからな」

八城「ところで何の話だったっけ?」

基茂「あー、忘れた。また思い出しらするか」

八城「そだね」


99

マスター「あー暇やー」

ルイ「本当に暇そうだよねぇ」

マスター「この3時4時って時間帯はどうしてもお客さんが来はらんね」

ルイ「みんな寝たんじゃない?今起きているのは大体徹夜している人だろうし」

マスター「徹夜している人を店に招く方法ってあるかな?」

ルイ「カラオケは無理だけど、家に居る人なら上手く行くかもしれないよ」

マスター「例えば?」

ルイ「夜食買いにコンビニ寄る人は居るよね。そういう人を標的にする」

マスター「何か気軽に飲みに来れる雰囲気を作るんか」

ルイ「そんな感じかな。この時間に飲みに来る人は少ないと思うけど」

マスター「別にうちに来たら必ず飲まなあかんて云うような制限はないんやけどなぁ」

ルイ「わたしの洋菓子だけを食べに来るお客さんも歓迎しているしね」

マスター「そうそう。飲み物も酒やなくて、ジュースもいっぱいあるから学生が飲み明かしてもええねんで」

ルイ「適当に話していたら、夜もすぐ明けるからね」

マスター「今のうちらがまさしくそれやんな。るーちゃんもあんま人見知りしーひんようになったし」

ルイ「わたしが人見知りしていたのは日本来て数日だけだよ?宅配便のバイトやってたらお客さんの顔も見れるから、今じゃすっかり解消された」

マスター「ええなー。こっちのお客さんにも慣れてくれた?」

ルイ「うん。常連さんは勿論面白いし、一見さんは…どうかなあ」

マスター「まだ治ってなかったん?」

ルイ「いや一見さんでも面白い人は面白いよ?でも飲み過ぎる人が居るし」

マスター「確かにな。常連さんでそういう人なら対応出来るけど、一見さんに怒鳴られちゃあかなんわな」

ルイ「うん、制御が出来ない人は色々ね。そういう時はマスターに頼っちゃうね」

マスター「うん、任しといて。でも、うちがちょっと抜けた時に来たらどうしようもないな」

ルイ「むぅ、メイドさんなら何とかしてくれるかな?」

マスター「ああ、そいつはあかんで。るーちゃんああ見えて寝起きは悪いから」

ルイ「その時はフランス語で罵声浴びせようかな」

マスター「流石るーちゃん。そのつもりでスペイン語も是非」

ルイ「マスターに話すのに要らないから勉強する気はないよ?」

マスター「やー、そう言わんといてなぁ」

ルイ「マスターは勉強しないの?」

マスター「るーちゃんに教えてもらった方が身に付くと思う」

ルイ「考えておくよ」

マスター「おおきに」


100

剣「やあやああすぽんに…誰だっけ?」

飛鳥「こちらフラミンゴのキング」

剣「本当に一本足打法だね。こんな間近に見たの初めて」

飛鳥「富士ーサファリパーク」

剣「フラミンゴじゃなかった気がするよ」

飛鳥「ライオンだったかな?」

剣「うん。しかしこんな綺麗な一本足打法なら本塁打も量産出来るでしょうな」

飛鳥「剣ちゃんは、どんなフォームだったかな」

剣「振り子になるのかな。わたしは、本塁打ではなく単打を狙っているんですよ。一番打者な訳だから。勿論先頭打者本塁打も好きだけどね」

飛鳥「剣ちゃんは十分実力あるし、フォームの調整は必要ないかも。寧ろ、下位打線の人かな。お兄ちゃんも言っていたから」

剣「部長は当然全体的に能力の向上を求めている訳でも、とりわけあすぽんの言う通りそこは重視しているなぁ。甲子園目指すにはみんなが強くならないと

いけないからね」

飛鳥「柘榴ちゃんとか深山君がその辺だったよね。二人共逸材だそうだし」

剣「ザクは守備が上手くて、ミヤマンは足が速い。ミヤマンの速さにはわたしも追いつけないな」

飛鳥「剣ちゃんを三番に回して、深山君を一番に回すのは?」

剣「それも悪くないけど、クリーンナップがずれちゃうかも」

飛鳥「そっか。指宿君、公田君、お兄ちゃんと揃っているもんね」

剣「そこにわたしが割り込んだらややこしくなりそうなんですよ」

飛鳥「へえ」

剣「ところであすぽん」

飛鳥「ん?」

剣「うちのマネージャーにならない?」

飛鳥「わたしは、お兄ちゃん専属だし…」

剣「あすぽん、男子は少し苦手だったっけ?」

飛鳥「お兄ちゃんとたっけー以外はあまり接する機会がなかったから」

剣「そういや佐竹と幼なじみだったんだ。美味しい立ち位置だよね」

飛鳥「そ、かな。剣ちゃんは、そういう人居ないの?」

剣「居ても居なくても、過去は全て振り切ったし覚えてないなぁ」

飛鳥「やっぱりサブ兄くらいなの?」

剣「うん、サブ兄くらい。今でも年賀状送ったりしているよ」

飛鳥「羨ましいな。従兄弟って」

剣「わたし勝ち組。あすぽん負け組」

飛鳥「…立ち位置なんて関係ない。寧ろその関係は破る為にあるとかお兄ちゃんが」

剣「その思考はおかしくない?」

飛鳥「わたしとお兄ちゃんは愛し合ってるもん。ふんだ」

剣「愛情じゃあ完敗です」

飛鳥「サブ兄と電話したりしないの?」

剣「サブ兄も野球で忙しいから、連絡取れないね」

飛鳥「プロ野球って大変なんだね」

剣「あすぽんはアリゲイツの選手知ってる?」

飛鳥「サブ兄と今治さんしか知らないや」

剣「他に贔屓球団とかあるの?」

飛鳥「ドルフィンズかな。國松さんとか村木さんとかかっこいい」

剣「ドルフィンズかぁ。最近調子良いよね。うちの公田と気が合いそう」

飛鳥「やっぱり目指している人も居るんだ。若手選手の育成が盛んだしね」

剣「うん。その二人も二年後には球界を代表するような選手になっているよ」


101-1

基茂「おはよう、磨夢」

磨夢「ん、もうこんにちは」

基茂「ちゃす…」

磨夢「二度寝してきたら?」

基茂「一階まで来たら起きた証拠だ」

磨夢「そう…」

基茂「やしろんは?」

磨夢「くにへかえった」

基茂「やしろんも遂にそういう年頃になったか。オレは嬉しい」

磨夢「餌代が減って助かる」

基茂「…で、実際は?」

磨夢「学会発表」

基茂「やしろんも賢くなったもんだな」

磨夢「八城は昨日出てから帰ってきていない」

基茂「やしろんも誘拐されるようになったんだな」

磨夢「ぶっちゃけどう思う?」

基茂「死んだんじゃね?」

磨夢「基茂は意外と残酷」

基茂「おみゃーに言われたかぁねーよ」

磨夢「基茂って時々物凄い訛り方する」

基茂「ほっとけ、わざとだ」

磨夢「そう…ぺっ、土人共めが」

基茂「お前なぁ…」

磨夢「これからはお兄様とお呼び、慕いますわ」

基茂「やめろ、キャラが別人だ」

磨夢「別人格って云うのも悪くない」

基茂「そう容易く別人格出されりゃ、こっちの気が狂いそうだ」

磨夢「精神病を患い、わたしを殺せばいい。医療費は全額負担で」

基茂「オレに一利の得もないな、それ」

磨夢「ん、世の中そんなもの」

基茂「どうやらオレは出る世を間違えたようだ」

磨夢「違う世に逝く?」

基茂「遠慮しておこう」

磨夢「そう…」

基茂「で、やしろんは何処に?」

磨夢「ん、朝から見てない」

基茂「やはり誘拐…な訳ないな。やしろんに限ってそんな事は」

磨夢「意外と思われる事程、自然に起こり得るもの。心当たりは?」

基茂「んや、特に。オレはやしろんを裏切った覚えはないし、向こうもそうであろう」

磨夢「基茂は鈍感だからって事も多い」

基茂「あるある過ぎて困るな、それ」

磨夢「少しは周りを見た方が良い」

基茂「たまには見るか」


101-2

八城「霞姉ちゃん、電話だよ」

霞「ふむ、伊崎先輩ですね」

玄那「匂いを嗅ぎつけたって事か」

霞「もしもし先輩?」

基茂「率直に訊こう。今そっちにやしろんは居ないか?」

玄那「八城」

八城(ササッ)

霞「今ここには居ませんよ?」

基茂「そうか、悪いな。用件はこれだけだ」

霞「いえいえ…では失礼します」

八城「ふぅ…」

霞「八城ちゃん。先輩と何かあったんですか?何でも言ってください」

玄那「うむ、我々は先輩には直接的に繋がりが無いから安心すると良い」

八城「実はお兄ちゃん…」

霞・玄那「ゴクリ」

八城「オヤジギャグをスルーするの」

霞「………」

玄那「八城ちゃんはそんなキャラだったか?」

八城「あたしはこう見えてオヤジなんです」

玄那「例えば?」

八城「歯磨きしたら歯茎から血が出ます」

霞「それは作者ですよ!」

玄那「ソース」

霞「磨夢さん」

玄那「把握した」

八城「んでwんでwんでwにゃーんで構って構ってほしいの?」

玄那「そうだな、作者なんてどうでも良かったな。議題は何故八城がオヤジなのか、だ」

霞「まああれでしょう。良い所に拾われて良かったですね」

八城「拾ってくれたのはちる姉ちゃんだけど、みんな優しくて嬉しいよ」

霞「みんな…優しい?」

玄那「笑顔のまま固まるな、霞」

霞「失礼しました。それで、家出の切欠は何ですか?」

八城「人生に一度はやってみたい事その一だよ」

霞「あぁ…ありますよね、そういうのって」

玄那「霞も過去に幾度となく修羅場を重ねてきた人だ。その全容は今明らかに」

霞「いやなりませんからね?とツッコミが多いとゆいちゃんとキャラが被りますね」

八城「あたし的定義にゃ、ツッコミ=ゆいちゃん、神聖にして侵すべからず=ちる姉ちゃん、やかまたまにドライ=かすむんだからね」

玄那「うむ、間違ってはいないな」

霞「八城ちゃんにもそういうキャラと見做されているとはかすむんショッキングなのです。しかしゆいちゃんとの違いは明らかですよ」

玄那「霞はエロくない。興奮しない」

八城「そういうもんかいね」

玄那「それくらいが一番やりやすいってもんよ」

八城「揉みたくないの?」

玄那「わたしは友人として付き合っているだけだからな。そういう気もない。たまに羨む程度だな」

霞「と言いながらクロちゃんはいつも見ているんですよ?きっとどうしたら大きくなるんだろうなあとか思っているんですよね」

玄那「お菓子だけでそこまで大きくなる訳がない。延原先生を見れば分かる」

霞「あの未発達はどういう運命なんでしょうか」

八城「あたしより食べているとは思うけどなぁ。普段は少食だけど」

霞「普段から栄養分を摂取してないといつまでも小さいままですよ」

八城「そうだね、わたしもその内まみーの身長抜きそうな気がするよ」

玄那「あの人って幾つなんだ?」

霞「しーっ。どこに盗聴器が仕掛けられているか分かりませんよ」

玄那「霞の家って無防備の棺桶なんだな」

霞「違いますよ。磨夢さんはそんな警備をもろともせずに我々に予想だにしない巧妙な手段を仕掛けてこれる技術の持ち主なんですよ」

玄那「つまりテクニシャンであると」

八城「わーかすむんえろーい」

玄那「予想外の下ネタだな」

霞「勝手な解釈して人を変態呼ばわりしないでくださいますか」

八城「そだねー。これはゆいちゃんに与えるネタだったね」

玄那「悪いな、霞を見るとついからかいたくなる」

八城「あはは。かすむんのキャラ付け変わった」

霞「神よ、見ておられるなら私を救ってくれ!」

玄那「八城、わたし達は遂に異端者扱いされたぞ」

八城「異端者…悪くないかも」

玄那「君の感性はどうなっているのか」


102

基茂「イル・ド・ドーフィネ落ちたあっ!」

磨夢「ウィトゥルス?」

基茂「ああ。ルドヴィーコさんを自動にしたら死にまくった」

磨夢「ああいう機動性がある部隊はプレイヤー操作した方が良い」

基茂「それは分かるんだが、一方でエフューシス動かして、一方でデーン二部隊動かすのは大変だ。勿論、召喚部隊もある」

磨夢「城が広すぎて面倒臭くなるのは分かる」

基茂「テッサロニキとはまた違ったうざさになってくるな」

磨夢「アンスバッハも武漢三都もある」

基茂「本シナだと周辺国が強いから却って楽に落とせる」

磨夢「オアスンも西方藩鎮も強い」

基茂「南方を忘れてやるなよ」

磨夢「鉄人兵じゃなく忍者を育てるべし。特務警察が揃ったら勝てる」

基茂「信が大陸進出する前に落とせたら良いけどなあ」

磨夢「金璧輝が来る筈なかった」

基茂「マスター、八旗強く出来るだけだしな」

磨夢「八旗には八旗…正直微妙」

基茂「当たっているか分からんだろう」

磨夢「雷鳴が欲しくなる」

基茂「本当に此処だけなんだけどな」

磨夢「佐臣雇える金があったら良いのに」

基茂「二国+拡大出来ないから流石にきついな」

磨夢「秘密外交使ってタメル攻める?」

基茂「忍者のレベルアップに貢献出来なくもないな」

磨夢「ならそれで行ける」

基茂「まあ共闘されるかもしれんが」

磨夢「怖くない怖くない」

基茂「S2の西方藩鎮ですな…」

磨夢「南方は詰んでる」

基茂「どちらにしろマゾゲーだな」

磨夢「西方藩鎮はもっと拡大出来たと思う」

基茂「はいはいプレチプレチ」

磨夢「AI何あれ」

基茂「平和主義者だと思っとけ」

磨夢「どれ、今度はフロミスタでやってみようかな」

基茂「ウゴウゴと肉壁が全てだよな」

磨夢「101010101010」

基茂「ローヴェレさんやディオスコロスとどこで差がついたのか?」

磨夢「乙女じゃないから」

基茂「確かにヒゲジジイだけどな」

磨夢「ウゴが居れば十分」

基茂「帝都はどうするんだ?」

磨夢「フッテンで止めたら良い」

基茂「ウゴウゴが攻めてフッテンさんが守る…悪くないな」

磨夢「帝都は俺が守る。本軍は北上してくれ!まあ一般のレベルが上がれば止められると思うけど」

基茂「とりあえず騎乗聖騎士で固めるか。カールさん用に下馬混ぜて」

磨夢「召喚なしで頑張れ」

基茂「まあそうなるか」


103

式神「力が…欲しいか?」

ゆい「欲しくないです」

式神「なら呼ぶでない。わたしはもう一度寝る」

ゆい「おやすみなさい」

務「何をやっておられるんですか?」

ゆい「つかさんは力が欲しいんですか?」

務「…はい?ゆい殿からは、力を感じませんが」

ゆい「わたしは既に式神様から大層な量の力を得ています。しかしわたしは、それを内に秘め解放については自分の意識に身を委ねています」

務「つまり、ある程度の力はゆい殿は持っていると云うことでございますか。では最前の行動の意図は?」

ゆい「式神様はわたしが召喚した時にしか姿を顕現されません。それも久しいものとなってしまいました。それ故の接続の確認なのです」

務「意外と大した事ではなかったのでございますね。しかしゆい殿の持ちし力、興味がございます」

ゆい「わたしから間接的に教えると時間を要します。しかし、打つ手が他にないのでは仕方ありません」

務「急は要しません。少しずつでもありがたく存じます」

ゆい「死を迎える前に体得して戴きたいものです」


104

ゆい「はい、もしもし…ご無沙汰しております。はい、問題ありません。今日も美味しくいただきました。はい、大丈夫です。はい、はい…では失礼します」

prrr

ゆい「ゆいです。ちるさん、おやすみになっていますか?薬の件、お願いします」

ゆい「…ふう」

八城「ゆーいーちゃん、あっそびましょ」

ゆい「こんにちは、八城ちゃん。お茶でもしましょうか」

八城「わびさびを感じるねっ!」

ゆい「ほうじ茶しか出せませんけどね」

八城「ねえ、どれがいい?あたしココアッ!」

ゆい「これは誰の趣味ですか?」

八城「意外と思うけど、お兄ちゃんなんだよ」

ゆい「磨夢さんがいちごオレ以外を飲んでいる所見た事ありますか?」

八城「見たら眠れないよぅ」

ゆい「でも兄さんが…こんな趣味があったんですね」

八城「お兄ちゃんはただの変態じゃないんですよ」

ゆい「兄さんってそこまで変態でしたっけ?」

八城「あっ変態はゆいちゃんだった。お兄ちゃんごめん」

ゆい「八城ちゃん、今日は帰らせませんよ?」

八城「ゆ、ゆいちゃんはそっちの気ないよね?」

ゆい「はい。それは磨夢さんの専門ですからね」

八城「また何かされたの?」

ゆい「触手プレイが好きらしいです…」

八城「愚者の地にでも行ったのかな?」

ゆい「わたしの身体はぐしゃぐしゃになりました」

八城「お兄ちゃんがよだれ垂らしそうだね」

ゆい「わたしに様々な液体を絡めて、写真集を出す気ですね」

八城「お兄ちゃんまた元気になるね」

ゆい「その元気をわたしにも分けてほしいですね」

八城「ゆいちゃん、疲れているの?」

ゆい「ふっ…わたしはすぐですから」

八城「何の話だろうなー」

ゆい「八城ちゃんも経験したら分かりますよ」

八城「あたしにはまだ早すぎるよ。ゆいお姉ちゃん」

ゆい「八城ちゃん、少子化の今だからこそやらなければならないんですよ」

八城「10人ぐらいよろしくね」

ゆい「流石に死にますよ、わたしも」

八城「冗談のつもりならやめておくんだお嬢ちゃん」

ゆい「まず作りませんから、今のわたしでは」

八城「せいぜい咥える程度だしね」

ゆい「うっ…何故それを」

八城「あたし、時々、覗いている」

ゆい「八城ちゃんはミタ!」

八城「お兄ちゃんもとんだ浮気者だよね」

ゆい「本人が見てないから大丈夫なのです」

八城「ちる姉ちゃんは生活指導の先生だったのか」

ゆい「そこ、後で校長室来なさい」

八城「えへ、えへへ」

ゆい「何でそこで喜ぶんでしょうか」

八城「あー何か笑っちゃうの」


105

マスター「るーちゃんの家、おっばけやしきぃ!」

ルイ「橋本」

マスター「な、なんでその苗字を」

ルイ「何となくそんな感じかなぁって思って…もしかして図星?」

マスター「橋本フェリア。それはうちの名前じゃないわ」

ルイ「じゃあ何だってんさ?」

マスター「うちの尊敬している人物や」

ルイ「お母さんとか?」

マスター「惜しい。お婆ちゃんやで」

ルイ「あれ、じゃあ二世とか?」

マスター「婆ちゃんブラジル関係ないハーフやで」

ルイ「一つ飛ばしてハーフかぁ…西洋系な感じだけど」

マスター「確かフランス辺りやて言うてたな。イギリスやったかな」

ルイ「フェリアさんって聞いた事ないなぁ」


106

ゆい「がくり」

八城「大変だ、ゆいちゃんが死んじゃったよ」

磨夢「ゆいは無限の再生力がある。そう容易に朽ちるものではない」

ゆい「磨夢さん、それは買い被りすぎです。わたしは矮小で貧弱な生き物です」

磨夢「あくまでも外見上は…」

八城「ゆいちゃんって見た目に反してマグロだから」

磨夢「容姿と欲求の強さは必ずしも一致しない」

八城「エロリは興奮する。しかしゆいゆいは除くってお兄ちゃんが言ってた」

ゆい「マンネリしちゃったんですね。兄さんったら…」

磨夢「基茂の、好き?」

ゆい「はい、とっても」

八城「ゆいちゃんがエロい理由って何なのよさ」

磨夢「由縁は?」

ゆい「勉強した覚えはありませんが」

磨夢「師より吸収、もしくは吹き込んだ誰かが居る、と」

八城「若い内はそういう事もあるよハッハッハ」

ゆい「あなた誰ですか?」

磨夢「八城は八城。それ以上でもそれ以下でもない」

八城「そだよ、あたしはあたしだかんね」

ゆい「…まあ、八城ちゃんがどんな人でも喰うに値しませんね」

八城「あぅ、それショック」

磨夢「喰われたければ喰われたらいい」

ゆい「誰がボケたか分からないじゃないですか!?」

八城「ゆいちゃんがツッコミって事しか分からないよね、まみー」

磨夢「ん、ゆいにボケは似合わない」

ゆい「そういうものですかねぇ…」

八城「ところでゆいちゃんは本当にあたしを食べたいの?」

ゆい「別段お腹も空いてないので、あまり欲求はありませんけど」

八城「ま、まみー。まずどこをあげたら良いかな」

磨夢「ん、指辺りで」

八城「ほーれ、指だ」

ゆい「ぱくっ」

八城「ゆいちゃんが釣れたよー」

磨夢「危険信号。10秒以内に引きはずす」

八城「は、う、はっ!」

ゆい「………チッ」

磨夢「今日はトンカツ」

ゆい「肉、嬉しいです」

八城「指がちょっとじんじんする…」

磨夢「人肉コロッケとかあったかな」


107-1

玄那「椎木先輩は居るかー!?」

ちる(ビクッ)

基茂「…はあ」

霞(チラッ

純治「よぉ、かすむん」

霞「しーっ…て、全然人が居ませんね」

純治「うちの昼休みはいつもこんなもんだ。なぁ、伊崎」

基茂「あぁ。だからちるもそんなに怖がらなくてもいいぞ」

玄那「わたしの力では難しい。霞、力を貸してくれ」

霞「またそこで詰んでいるんですか。良いですか、ここをこうしてこうすれば…」

玄那「おお、いとも簡単に出来るもんだな」

純治「うちは結構自由なんだな」

霞「学生の本分は勉強です。そう認識するなら対象は何だって構わないんです」

玄那「この教室にはテレビ無いんだな」

純治「普通の教室は付いてないものじゃないのか」

玄那「いや、わたし達の所は付いているぞ。世界の亀山モデル」

霞「HDMI繋がりますからね、あれ。たまに放課後残ってやってます」

純治「聞いたか、伊崎」

基茂「何で俺に言うんだ?」

ちる「…知ってるんですか、あの人」

基茂「いや何も知らない筈だ」

霞「伊崎先輩、場所を考える事ですよ」

基茂「ちっくしょう」

玄那「霞…他に人が居るぞ」

霞「そうですね。この話は控えておきましょう」

純治「またオレだけ蚊帳の外かよ!?」

霞「あっ、ごめんなさい。今度ゲーセン来ます?」

純治「最近行ってないし、気が向いたら行くわ」

霞「いつでもかかってきてください。そういえばクロちゃん、椎木先輩に用があるんじゃ?」

玄那「そうだったな。行ってくる」


107-2

玄那「椎木先輩、実験について報告だが…」

ちる「成果…ありました?」

玄那「いや全くだ。努力しても仕方がないかもしれない」

ちる「そう…ですか。わたしも頑張りますね」

玄那「らしいぞ。伊崎先輩」

基茂「ん?何の話か知らんが、頑張ってくれ」

ちる「はい」

玄那「はあ、己の力で何とかならないものか」


108

磨夢「基茂、電車に乗った事ある?」

基茂「この町に来る時に使ったのが電車だが、自家用ヘリとかじゃない」

磨夢「そう。わたしはあまり乗った事がない」

基茂「ヘリはお前だったのか!?」

磨夢「此処に来たのもミステリツアー。目隠しツアー」

基茂「じゃあ乗ったかもしれないんだな」

磨夢「ん、更に薬漬けにされてだから。その距離に驚いた」

基茂「磨夢も余所の人間なのか?」

磨夢「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

基茂「どっちだよ」

磨夢「でも基茂が来る前にはこの町に居た」

基茂「あの時から住み込んでいたからな」

磨夢「ん、家主が居ない間は暇だった」

基茂「前の主人は、どんな人だったんだ?」

磨夢「わたしは家事担当で下働きだったから、顔すら知らない」

基茂「モザイクでもかかっていたんだな。きっと」

磨夢「その主人が去り、基茂が来てから対等な関係を維持している」

基茂「俺の事は事前から知らされていたのか」

磨夢「ん、自称平凡主人公のダメ倅が向かうから適当に扱ってくれ、と嘉寿夫が言ってた」

基茂「オヤジぃ…」

磨夢「しかし基茂は本当に主人公だったのか」

基茂「そこに疑問を持つな」

磨夢「とりあえずわたしの来歴は以上」

基茂「それ以上はもっと仲良くなったら話してくれるんだな」

磨夢「友好度?好感度?何を言っている」

基茂「もういい、無理するな」

磨夢「そう…」


109-1

磨夢「………」

八城「おはよう、まみー」

磨夢「ん」

八城「お兄ちゃんはまだ起きてないの?」

磨夢「八城が早いだけ」

八城「毎日夜更かししてると思えば大間違いだよ」

磨夢「早寝早起きは良い」

八城「ちょっと三文くらい拾ってくるね」

磨夢「ん」


109-2

八城「おはよう、ゆいちゃん」

ゆい「八城ちゃん、おはようございます」

八城「お清めは終わったの?」

ゆい「はい、お清めもトミノ朗読も黒魔法演習もみんな終わりました」

八城「お疲れ様ぁ。あたしする事ある?」

ゆい「堂の方で寝ていても構いませんよ」

八城「うん、じゃあゆっくりしておくね」


109-3

基茂「おはよう、磨夢」

磨夢「おはよう。今日は遅い」

基茂「日曜日だからな。ゆっくりするさ」

磨夢「そう」

基茂「やしろんは」

磨夢「神社でも行ったと思う」

基茂「あぁ、じゃあオレは動くのダルいし寝ておこう」

磨夢「ん、おやすみ」


110

八城「ゆいゆい」

ゆい「はい、何でしょう兄さん…と思えば八城ちゃんですか」

八城「あたしのやしろんと云い、お兄ちゃんが作る渾名は流行らないよ」

ゆい「そもそもわたしと八城ちゃんくらいしか渾名で呼んでいませんからね」

八城「まみーにも渾名考えてあげたら良いのに」

ゆい「その渾名で兄さんが呼んだらどうなりますか?」

八城「お兄ちゃん一発けーおー」

ゆい「八城ちゃんだけに許された渾名なんですね」

八城「まみーはともかく、ちるお姉ちゃんが重要かな」

ゆい「そういえば、嫁なのに呼び捨てなんですよね。いや嫁だから呼び捨てでもいい気が…」

八城「駄目だよ。みっちーとかを見習わないと」

ゆい「磨夢さんに伝えておきましょう」

八城「まみーはかすむんをどう呼ぶのか…って、かすむんもお兄ちゃんが元祖だよ。後クロちゃんも」

ゆい「兄さん意外と仕事してたんですね」

八城「お兄ちゃんは年下の魅力に勝てないんだよきっと」

ゆい「兄さん、わたし達誇りに思っています」


111

基茂「………っ!」

磨夢「ん?」

基茂「何でオレの部屋に居るんだろうな」

磨夢「なんとなく。影と思ってもらって結構」

基茂「それは何か嫌だな。まあ読書だけなら何の障害にもならんが」

磨夢「ん…」

基茂「光の目でもやろうか」

磨夢「今はどこで?」

基茂「魔王様でベルンダ狩り。セディエが帝都に籠もってもいけるだろうか」

磨夢「テッサロニキでやられるよりはマシ」

基茂「S2はきついよな」

磨夢「S1ならレベル差で何とかなる。寧ろベルンダは踏み台で問題はポツダム」

基茂「40超え突撃隊は死ねる」

磨夢「テムヘム部隊のパイク兵召喚で頑張って」

基茂「ヴェストがヌルゲー過ぎたんだ」


112-1

純治「さて、俺が主人公だ」

磨夢「おはよう」

純治「先生よ、教室はまだ人が疎らだぞ」

磨夢「こっちの方が落ち着く」

基茂「よっす」

純治「よぅ伊崎。先生はどうして早いんだ?」

基茂「さあ、俺より早く出た理由がよく分からなかったが」

磨夢「今日は私が担任」

基茂「やめろ」

磨夢「鋼田先生は現在戦地に派遣されている。一日で終わる予定」

純治「関ヶ原だぞ、伊崎」

基茂「先生はきっと東軍だな」

磨夢「いや西軍。史実を覆す、と残して旅立った」

純治「先生、分かっているじゃねぇかっ」

磨夢「と云う事で今日はわたしがこのクラスの担任を受け持つ」

基茂「担任なんて大して仕事無いが頑張ってくれ」

剣「みんなおっはよー!…て、朝から延原先生じゃないですか!?」

純治「そうなんだぜ村雲。鋼田先生は関ヶ原に行ってしまった」

剣「先生タイムスリップしちゃった!?その方法を知りたいんだけど」

基茂「鋼田先生は時空を操るなど朝飯前らしい」

剣「それは初耳だよ…ねえ、あすぽん」

飛鳥「ん、わたしは今来た所で全然話が掴めないんだけど」

純治「村雲はデコピンひとつで延原先生を倒せるらしいぞ」

磨夢「へぇ…そう」

剣「逆にわたしがデコピンでやられちゃいそうだけど!?」

飛鳥「剣ちゃん運動部でしょ?わたしたちと違って」

剣「そ、それとこれとは違うのだよっ!異次元対決なんて出来っこないよ」

飛鳥「剣ちゃんの能力は普通に常人離れしていると思うけど。たっけーも見にきたら?」

純治「おぅ、喜んで行かせてもらうぜ。変態しか居ないだろうし」

剣「ふっふっふ。変態だけじゃないよ。実力が普通の人も居るよ」

飛鳥「普通の人が居なかったら面白くないもんねぇ」

剣「でもうちよりも強い学校も有るよ。絶対的なエースが居たり」

飛鳥「エースで四番…実に美味しい場所だよ」

剣「剛は不動の四番にならないからね」

飛鳥「指宿君が四番で良いんじゃない?お兄ちゃんも次期キャプテンとして推しているし」

剣「確かによっしーがキャプテンになったら優勝も近いかも」

飛鳥「ちなみに剣ちゃんにそんな野望は…?」

磨夢「叛意などありません。これは成り行きで」

飛鳥「剣ちゃん、適応するのは大事なんだよ?」

剣「わ、わたしだっていつまでも余所者の皮は被ってないよ」

飛鳥「剣ちゃんはもうこっちの人間だから…」

磨夢「あ、ちる」

ちる「…ども」

基茂「さあ今日も一日が始まったか」


112-2

磨夢「…ふぅ、昼休み」

基茂「顔出すとは珍しい。4時間目はどこに?」

磨夢「霞のクラス。楽しかった」

基茂「そいつは何よりだ。さてちる、屋上向かうぞ」

ちる「あ…はい」


112-3

磨夢「ここが一番落ち着く」

基茂「正規でない以上準備室だから狭くて暑いだろう」

磨夢「ん、もう少しマシな生活をする為に学長に頼むのもいい」

ちる「磨夢さんは…正規で入らないんですか?」

磨夢「わたしがフルで入ったら、家はどうなる?」

基茂「やしろんとゆいゆいは間違いなく飢え死にするな」

ちる「そう…でした。それに忙しくなりますし」

磨夢「毎日多忙なら別段気にする事もない」

基茂「これ以上忙しくしたら収拾つかなくなると思うが」

磨夢「わたしを気遣うなら自分から動いて」

基茂「地道に探しておく」

ちる「基茂さんもバイトしてないんですか?」

基茂「やる気が起きないからな」

ちる「基茂さんならきっと良い所見つかると思います…」

磨夢「ちる、ゆいの下で働く?裏方の仕事なら問題ない」

ちる「神社の内部…ですか?」

磨夢「そう」

基茂「幼女限定じゃなかったのか?」

磨夢「状況次第。今度ゆいに訊いてみたら?」

基茂「なら今ここで…ちる」

ちる「…え、わたし…ですか?分かりました」

prrr

ゆい「ふぁい?羽衣神社でふ。お名前とご用件を」

ちる「椎木です。ゆいちゃん、訊きたい事が…かくかくしかじか」

ゆい「構いませんよ。空いた時間で出来高払いです。ちるさんには…そうですね、普段は軽作業しかありませんが、祭りの時が稼ぎ時ですよ」

ちる「軽作業でちまちまやらせて戴きます」

ゆい「はい。巫女はょぅι〝ょ隊で間に合ってますし、一応人との対面もありますからそれで宜しいかと」

ちる「はい、お忙しい所ありがとうございました」

ピッ

ちる「ふぅ」

基茂「その感じだと上手く行ったみたいだな」

ちる「はい。ゆいちゃん嬉しそうな声をしていました」

基茂「ゆいゆいもまともにしていれば良い奴だよ」

磨夢「さて、次は基茂の職場を…」

基茂「マスターんとことか言うんじゃないだろうな」

磨夢「そこは寧ろわたしが行きたい」

基茂「行けば良くないか?」

磨夢「ん…」

基茂「どっかに良い店は無いか」

磨夢「肉体解体業なんて楽しそう」

基茂「解剖でもするのか?ゆいゆいが好きそうだな」

磨夢「世の中真っ黒」

ちる「あ…それ、やりたいかもしれません」

磨夢「実践はちる。試食はゆい。基茂が後処理」

基茂「俺が一番嫌な作業ではないか?」

磨夢「埋めれば良いだけ」

ちる「一番楽かも…しれませんよ?」

基茂「楽でも嫌だっ!」

ちる「…ふにゅう」

基茂「世の中に正常な人間は居ない」

ちる「も、基茂さんが異端だと…思います」

基茂「俺が異端で良いから泣くな」

磨夢「これは先が思いやられる」


113-1

基茂「オレ、今日から休日でも午前は勉強する事にした」

八城「おー頑張れ、お兄ちゃん」

基茂「ということで昼になったら呼びにきてくれ」

八城「了解だよ。お兄ちゃん」


113-2

八城「…ということで来ちゃった」

ゆい「兄さん遊んでくれなくなったんですか。少し残念ですね」

八城「でも午前中だけだし、昼からまたみんなで遊べるんだよ」

ゆい「朝襲いに行くのが難しくなりますね…」

八城「ゆいちゃん…夜じゃ駄目かなぁ?」

ゆい「夜では確認出来ませんからね。大抵寝ているでしょう?」

八城「うちはみんな早いからね。ゆいちゃんも早いでしょう?」

ゆい「わたしは仕事上早起きしないといけないので当然です。鶏も飼っているんですよ?」

八城「飼ってたんだ…この境内のどこに?」

ゆい「お堂の後方に居るんですが…そういえば、八城ちゃんは知らなかったんですね。ょぅι〝ょ隊の方には紹介したんですが」

八城「ここ繋がってるのが知らなかったよ」

ゆい「鶏小屋以外何もありませんから、知らない筈です」

八城「鶏二羽、他は烏骨鶏だね」

ゆい「烏骨鶏可愛いですよね。三羽居ますけど」

八城「キングみたいなの居ないの?」

ゆい「キングは貰えなかったんですよ。残念ながら」

八城「みんな貰いもんなの?」

ゆい「近所の小学校が廃校になったので引き取りました。あっちに見える廃墟ですよ」

八城「やっぱり出るのかな。出るんならクロちゃん連れて行こうかな」

ゆい「今度みんなでやってみます?」

八城「三人で呪われたいなっ!」


113-3

八城「ど、どうもー。ご無沙汰をー」

玄那「今取り込み中だ」

八城「クロちゃん肝試し行かない?」

玄那「怖いのは無理だ」

八城「強がりもしないくらい駄目なの?」

玄那「昔殺されそうになったからな。ゾンビみたいなのに」

八城「お化け屋敷?」

玄那「あれは本物の筈だ。そいつはゾンビの癖にナイフを持っていた。バーサーカーみたいなんで腕切られるかと思ったぞ」


114-1

磨夢「………」

八城「おはよん、まみー」

磨夢「おはよ」

八城「昨日ゆいちゃんが今日の不平等で差別的な世の中を変える為に我々が立ち上がらなければならない、とクロちゃんから聞いたと言ってたよ」

磨夢「同盟の件、忘れてはいないみたい」

八城「伝わったなら良いか」

磨夢「同盟の話ならちるにも伝える必要がある」

八城「八城、行きます!」


114-2

八城「おはよう、ちるお姉ちゃん」

ちる「おはよう…ございます」

八城「実は斯く斯く然々で」

ちる「クロちゃんに…頑張って、と伝えておいてくだグー」

八城「これじゃあ話になんないや」

ちる「むにゃむにゃ、基茂さん…うふふ」

八城「とりあえずあたしゃあ帰りますよっと」


115-1

八城「お兄ちゃん、右手の使用を禁止します」

基茂「俺は左手だから問題ないな」

八城「作戦失敗。直ちに帰還する」

基茂「帰還って何処だよ」

八城「ベースキャンプに帰還して作戦を練り直すんだよ」

基茂「家出しないんだったら何でもいいや」

八城「お兄ちゃんはまだあたしを家出少女と疑っているの?」

基茂「ダンボール入れた犯人は一度拾ったがダンボールに入れるのが賢明だと思った赤の他人だったりな」

八城「あたしってそんなに面倒な人間だと思われているの!?」

基茂「関わりたくないとでも思ったんじゃないか。まあ一般的見解だろう」

八城「だったら、ちるお姉ちゃんが異端だったって事だね!」

基茂「あの性格にその思考はあながち間違ってはいないかもな」

八城「そうかもね。では某は外出します故自宅警備よろしく頼みます」

基茂「おう、任せろ!」


115-2

八城「お兄ちゃんの右手が封印出来ない件」

ゆい「磨夢さんに料理でもしてもらいましょうか」

八城「ゆいちゃん、食べるのは赤の他人じゃないとダメだよ」

ゆい「冗談ですよ。ちゃんといつもの店で買いますから」

八城「その店ってどこにあるの?」

ゆい「正確な位置をお伝えする事は出来ませんが、マスター喫茶みたいに路地裏にあるのだけは分かりますよね」

八城「そういう店だしね」

ゆい「買い手は機密事項として胸中に留める必要性がありますからね。ちなみに会員制です」

八城「ゆいちゃんって貧乏に見えて意外とお金持っているよね」

ゆい「軽く株やっていますから。予知能力を使って。それでもたまに外れる事はありますよ」

八城「ゆいちゃんの予知能力って、信用出来るのかなぁ…」

ゆい「八城ちゃん、わたしが口だけの人間だと思っています?」

八城「…いや、別に?お兄ちゃん相手に容赦ないし」

ゆい「兄さんに容赦ないのと、予知が出来る事は同列に考えてもらって結構ですよ。結果的にどちらも成功するんですから」

八城「ゆいちゃん、朝っぱらから下ネタは止めてもらえないかな」

ゆい「急に流れ断ち切るの止めてもらえませんか!?そもそもこの話は八城ちゃんから振ってきたんじゃありませんか」

八城「ゆいちゃん…」

ゆい「八城ちゃん?」

八城「あたしにゃあ何も聞こえんかってよ?」

ゆい「八城ちゃんってロリBBAだったりします?」

八城「その言葉そっくりそのまま返してやるぞ☆」

ゆい「好い加減幼女もやめませんか?わたし疲れました」

八城「そうじゃのぅ。あたしらもあるべきものに戻らんとねぇ」

ゆい「やはり八城ちゃんが一番老いて見えます。内面的に」

八城「誰がボケ老人じゃっ!ならゆいちゃんは幾つぐらいなのさ?」

ゆい「わたしは中国4000年の歴史を知っています」

八城「えっ(それ物凄くBBAじゃん)」

ゆい「えっ(知識のつもりなのにこの反応は何ですか、珍しいんですか)」

八城「ゆいちゃんって幼女の皮を被った仙人!?」

ゆい「ひーとりでーもせんにん…って違いますよ。わたしはただの巫女。それ以上でもそれ以下でもありません」

八城「どこか人間じゃない匂いがする」

ゆい「人外ごっこは磨夢さんとやって下さいね」

八城「ゆいちゃんは昔まみーと人外ごっこやってたの?」

ゆい「ぎくり」

八城「あっはは、ゆいちゃん分っかりやすいー」

ゆい「今のは腰が抜けた音です」

八城「えっお兄ちゃんが誰で抜いたって?」

ゆい「ちるさんじゃ…ないですか?」

八城「試しにこれを使ってみるといい」

ゆい「擬似的なアレを持ち出さないでください。どこで売ってたんですか?」

八城「知らないよ。そこに置いてあったから」

ゆい「八城ちゃん、帰ってもらって結構ですよ」

八城「そだね、帰るよ」


116-1

基茂「ただいま。あぢぃなくそ」

八城「おかえりお兄ちゃん。五月でこの暑さは温暖化かな」

基茂「かもな。とりあえずシャワー浴びてくる」

八城「ごゆっくりーん」


116-2

基茂「ふーすっきりした。んあ、磨夢は居ねーのか」

八城「まみー残業でもしているのかな」

基茂「学長、そんなに厳しいのか?それかあの効率主義の磨夢の失態か」

八城「居残りでやってたら、きっと夕飯は無いね」

基茂「男の料理、復活する訳にゃいかんな。さて磨夢が帰るまで仮眠だ。ゆいゆいに注意しておいてくれ」

八城「りょかーい。ってお兄ちゃん部屋戻んなくてもここで一緒に寝ない?」

基茂「ソファーなぁ。昔は寝床によく使っていたが最近はあんまり使わないし寧ろ処分しようと

八城「今こそソファーさんを使ってあげるべきだよ」

基茂「あ、はい。じゃあやしろんはそれを使ってくれ。オレは雑魚寝で」

八城「うん分かった。ところでお布団持ってこようか?」

基茂「ああ、悪いな」


116-3

ゆい「こんばんは。あれ、開いてないですね。こういう時はこれをこうして…開いたっ!お邪魔します。あら、真っ暗」

基茂「最近思うんだ。やかまキャラはゆいゆいだって」

ゆい「あ、失敗しました。やり直していいですか?」

基茂「良いぞ。静かにしていればそれで」

ゆい「わたしもお隣に」

基茂「ゆいゆいは机の下で寝てもらおうか?」

ゆい「わたしは猫じゃありませんよ!?」

基茂「しっ…やしろんはぐっすりだから」

ゆい「はい。ではおやすみなさい」

基茂「ああ、おやすみ」


116-4

ガチャ

磨夢「………」

八城「あ、まみーおかえり」

磨夢「ただいま。寝てた?」

八城「うん、まみーが帰ってくるまで寝ようってなって。ほらゆいちゃんお兄ちゃんに抱きついてで寝ているよ」

磨夢「相変わらず仲が良い」

八城「ちるお姉ちゃんいらないんじゃないかな」

磨夢「それは言わない約束」

八城「ところでどうするの。起こした方が良いかな」

磨夢「二人はそっとしておいてわたしも寝る」

八城「みんな寝るんだ。まみーもここで寝る?」

磨夢「ん、それも良い」

八城「じゃあお布団持ってくるね」

磨夢「ありがとう。来客用布団」


116-5

基茂「…昼か。既に居ない」

純治「zzz」

基茂「相変わらずだ。誘いようもないな」


117

ちる「あっ、基茂さん」

基茂「一人か?」

ちる「今の所は…そうですけど」

基茂「磨夢はその内来るだろうし。下手な真似は出来ないな」

ちる「基茂さん、何にやにやしているんです?」

基茂「何、誰も外向いてフェンスに掴まっているちるの姿なんて考えてないぜ」

ちる「むむぅ…」

基茂「この意味、分かるか?」

ちる「わたしが分かる筈…ありませんから」

基茂「あー…まあ良い。飯食べ始めよう」

ちる「はい、食べましょう」

磨夢「相変わらず楽しそう」

基茂「相変わらず無音で入ってくるな。ドアの音すらしねえ」

磨夢「ドアなんて使っていないから」

基茂「壁でも登ってきたのか?」

ちる「磨夢さんは…スパイダーマンですか」

磨夢「一階から垂直で駆け上ってきた」

基茂「スパイダーじゃなくて忍者だったな」

ちる「人間業じゃありません」

磨夢「ちる、違う。人の力では止まりませんね」

基茂「アルベルティーナさんか」

磨夢「ちるはフランドルに仕官すべき」

ちる「はい?フランドル、ですか?」

基茂「これだから人外の扱いは…」

磨夢「これだから変態の扱いは…」

基茂「もしかして聞いていたか?」

磨夢「ん、基茂がちるとキスするところまで」

ちる「きき…キスなんて、してませんよ?」

基茂「そうだ、オレはどっかのエロ巫女と大天使ちる様を同列に扱わない。何故ならあなたは特別な存在だからです」

磨夢「デーン」

ちる「ヴェルタースのおじいさんですか?」

基茂「流石に知ってたか。だが天使と言っている時点で言ってる事は間違えていない」

ちる「わたしが特別な存在って…訳ですか」

基茂「だからちるにあげるのも勿論ヴェルタースオリジナル」

ちる「わたしは基茂さんの、孫だったんですね」

磨夢「基茂孫と付き合うとはなかなかのやり手」

基茂「オレはそんなスケベ爺じゃねえよ」

磨夢「見た目は高校生。中身はスケベ爺。その名は…まだない」

基茂「吾輩は爺である。名前は…忘れた」

ちる「基茂さん、ボケちゃったんですか?」

基茂「嗚呼、オレ見た目以上に老けてるぞ。家があんなだからな」

磨夢「今の翻訳。基茂はわたしに頼ってばかりで駄目男を極めてしまった」

基茂「いや、それだけではない。やしろんと昼の遊び相手。ゆいゆいと夜の遊び相手。わたしはもう疲れてしまった」

霞「突撃!隣の先輩ハーレム」

基茂「やめとけ」

玄那「という名の昼飯会だ」

ちる「こんにちは。かすむん、クロちゃん」

霞「椎木先輩、それに磨夢さんもこんにちは」

磨夢「霞、会いたかった」

霞「さっきの授業…」

玄那「四時間目は化学の阿佐ヶ谷先生だったな。三時間目は哲学の松山先生で…」

霞「分かりました分かりました。磨夢さんには今日初めて会いました…全くクラスメートに友達を作るものじゃありませんね」

玄那「ちなみに霞のスリーサイズは上から9…」

霞「わーわー!」

磨夢「霞、貴重な情報が聞き取れない」

玄那「わたしも腹式呼吸の練習しないとな」

ちる「楽しそうですね」

基茂「ちるも交じってこいよ」

ちる「良いんです。わたしは…挨拶だけで」

基茂「雑談って難しいよな。他愛のないものって」

ちる「インドア派は基本的に喋りませんから」

基茂「俺も大抵だが、ちるは一人暮らしだからより孤独感を味わうだろうな」

ちる「基茂さんからも来てくださったら、お話し出来ますよ?」

基茂「うちでの立場が危うくなった時に心の寄りどころとさせてもらう」

ちる「基茂さん…やはり疲れて、ますか?」

基茂「ああ、日中でもそっちで寝かせてもらいたいくらいだ。休日はどうだ?」

ちる「はい、喜んで…ひ、膝枕でも…させていただきます

基茂「おいくらですか」

ちる「耳掻き込みで無料です」

基茂「ああ、一日居たいくらいだ」


118

ルイ「瑠璃猫宅配便でーす」

基茂「おー遂に来たか」

ルイ「おっ●いマウスパッド、ありがとうございます」

基茂「違うぞ、抱き枕カバーだ」

ルイ「あんまり変わらないよ。判シルヴプレ」

基茂「ほうら、この家で俺しか使わない伊崎印だ」

ルイ「メルシー。じゃあわたしは次行くから、今後ともご贔屓に」

基茂「ああ、ありがとう」


119

玄那「ここ、絶対何か出るだろう」

霞「壁を慎重に伝っていけば見つからずに済む筈ですよ」

玄那「ふむ、慎重に…か。よし、よし」

霞「その調子でゆっくりゆっくりと忍び足で行くんですよ」

玄那「明かりが見えてきたぞ」

霞「もう少しです。慎重に」

スルルル

霞「………?」

玄那「どうした?」

霞「窓で誰か移動する音がした気がしましたけど?」

玄那「窓か。外から来る事はなさそうだが?気のせいじゃないか?」

霞「そうですよね。磨夢さんが来る筈…」

磨夢「呼んだ?」

玄那「ひぃっ!?」

霞「クロちゃん迷わずスタートボタン押しましたね」

玄那「まさか後ろから来るなんて思わなんだ…」

磨夢「霞の後ろだと思ったら玄那の後ろだった」

玄那「霞、すぐカットに入らないと…タッグ解散だぞ」

霞「ははっ、クローさんはやっぱり苦労人ずら」

磨夢「ということで霞、わたしと三分間ディープキスを」

霞「ええい、やかましや。いっそ本当に王様ゲームしますか?」

玄那「三人じゃ無理だ。やめとけ。後、わたしはゲームに集中したい…と出たぞ、霞」

霞「クロちゃん、出てますよ」

シャアアアアアアッ!

玄那「ああああああああっ!?」

霞「ナイス時間差攻撃」

磨夢「玄那出て行った」


120-1

基茂「ちるが来てないぞ、先生や」

磨夢「ちるは既に保健室へ行ってる」

基茂「そういやさっきの休み時間から居ないな。ちょっと行ってくる」

磨夢「てら」


120-2

基茂「失礼します。いつも居ないな、保健室の先生」

ちる「…あっ、基茂さんでしょうか」

基茂「ああ、そうだ俺だ。朝っぱらから大丈夫か?」

ちる「全身が火照っています」

基茂「熱いのか、氷枕持ってくるな」

ちる「…ありがとう、ございます」

基茂「困った時はお互い様だ。いつでも頼ってくれて良いからな」

ちる「…はい」

基茂「ほら、気持ちいいか」

ちる「はい、ひんやりしていて…気持ちいいです」

基茂「他にする事は…」

ちる「基茂さん。もう帰って戴いて結構ですよ?」

基茂「磨夢の授業じゃなきゃ一時間サボったんだが…ちるは大丈夫なんだな?」

ちる「はい、慣れていますから」

基茂「あまり無理するなよ」

ちる「はい、お気遣いありがとうございます」


120-3

ガラッ

基茂「だいまっと」

純治「おお、伊崎おか」

磨夢「速やかに席に着くよう」

基茂「あいあい」

キーンコーン

磨夢「ちる、どうだった?」

基茂「身体が熱いと言ってたから、氷枕作ってやった」

磨夢「そう。次の先生にも連絡しておく」

基茂「さんくす」


120-4

基茂「ああー」

ちる「…基茂さん?」

基茂「ああ」

ちる「ありがとうございます」

基茂「ああ。ちなみにちる、ノートはまた今度見せる」

ちる「珍しく…起きていたんですね」

基茂「目覚ましが居ないと寝るに寝れないだろう」

ちる「基茂さんが寝ていたら、プリント…回ってきませんよ」

基茂「そういや前の人もちると同じ事言ってたな。そんなに珍しいか?」

ちる「いつも…寝ていますよ。気持ち良さそうに」

基茂「プリントはいつも俺で止まっているのか。前の人も学習しないな」

ちる「その時、基茂さんを起こそうと思っても…起こせないんです」

基茂「俺は規定の時刻になるまで起こさなくていいぞ」

ちる「仕方なく…席を立って、貰って…います」

基茂「結構な事だ。日々の精進は欠かすなよ」

ちる「はい…せいぜい…努力します」

基茂「ところでちる。立てるか?」

ちる「もう少し…休んでいます」

基茂「おぶっていってやろうか?」

ちる「は、恥ずかしいので…遠慮しておきます」

基茂「そうか。まあ遅くなるようなら連絡してくれ。すぐに向かうからな」

ちる「はい、ありがとうございます」


120-5

基茂「ただいま」

八城「あっ、お兄ちゃんおかえり。どっか寄り道してきたの?」

基茂「ああ、ちるの件だ。あいつはよく倒れる。ゆいゆいに引けを取らない」

八城「ゆいちゃん、基本的に丈夫だけど、吸っている空気が違うとか言って急に倒れるよね」

基茂「変態だから仕方ないさ」

八城「たまによく分からない事言うよね」

基茂「いつもじゃね?」

八城「そうかな、あたしと遊んでいる時は結構まともだよ」

基茂「あれで幼女やってんだよな。大したもんだぜ」

ピンポーン

基茂「噂をすればなんとやらだぜ」

ガチャ

ゆい「こんばんは、兄さん、八城ちゃん」

八城「おーゆいちゃん朝方振りー」

基茂「ん、昼は来なかったのか?」

ゆい「はい、少し用事がありまして」

八城「買い出しかな?」

ゆい「まあ、そんな所ですね。後、珍しく参拝者の方も来ていましたし。陰陽道の講義を暫し行っていました」

基茂「同業者だったのか?」

ゆい「遠い親戚の方で、彼女も余所で後を継いだとの事です」

八城「どんな子だったの?」

ゆい「短髪で可愛らしい顔をした真面目なよい子でしたよ。是非ともょぅι〝ょ隊に入れたい人材でしたね」

基茂「この町は幼女で溢れて、尚且つ外からも幼女が訪ねてくる。俺は幸せだ。それはともかく、ゆいゆいって外でも名は知られているのか?」

ゆい「わたしは外で活動、それ以前に出た事がありませんね。生まれた時から神社育ちでしたから」

八城「じゃあそういうお客さんは珍しいんだ」

ゆい「そうですね。可能性としてはわたしを知る誰かが彼女に紹介したと云う事でしょうか。しかし当然ながら面識無いので、初めてはみんな一緒ですね」

基茂「俺の初めてを半ば強引に奪ったのもゆいゆいだしな」

ゆい「兄さん、わたしも同じです」

八城「二人とも…」

ゆい「八城社長ダブル首切りですか!?」

八城「明日樹海行き決定だね。二人仲良く青木ヶ原樹海ツアーもう帰ってこないでいいよ」

基茂「おのれ、俺が居なくなったら誰がこの家を守るというのだ」

八城「まみーが居ればオールオッケー」

ゆい「八城ちゃんも、磨夢さんを選んでしまったのですね。わたしちょっと飛び降りてきます」

基茂「待て待て早まるなっての」

ゆい「兄さん、やけに冷静ですね」

基茂「俺はちるを残して死ねない。だからゆいゆい一人でよろしくな」

ゆい「兄さん、それを伝えるだけで呼び止めたんですか」

基茂「ああ、これでゆいゆいに思い残す事はない。来世のゆいゆいにまた会おう」

八城「来世のゆいちゃん、どんな人かなぁ…」

基茂「おそらく何ら変わりようはないだろうな」

ゆい「さようなら、皆さん」


120-6

ゆい「…って事があったんです」

務「そりゃあ災難でしたね。その後はやはり飛び降りて?」

ゆい「はい。そして死を味わったんです。死というのは、実際経験しないと分からない一生の哲学なんですよ」

務「それでゆい殿はお変わりになったんですか?」

ゆい「結局何も変わりませんでした。同じ肉体を持ち、同じ精神を持ち、そして同じ場所に戻りました」

務「ならば現在のゆい殿は過去のゆい殿と同じ存在である、と」

ゆい「はい。全くとんだ茶番劇でした」

務「念の為訊くと…」

ゆい「みなまで言わずとも、向こうの世界の出来事ですよ」

務「夢なら夢と言ってください」

ゆい「虚言無しに会話なんて出来ませんよ」

務「しかし今の話はどこが事実にございましょうか」

ゆい「最後に死の勧告以前は全て真実です」

務「かの巫女は誠に参られたと云うことですね」

ゆい「はい、彼女はきっと大物になりますよ」


121-1

ゆい「ということで兄さん、こんにちは」

基茂「どういう事か知らんが、こんにちは。まあ勝手に上がってくれ。俺は今から出掛けるから。ちなみに家には誰も居ないぞ」

ゆい「休日ってこういうものなんですか」

基茂「最近はこんなものだ。いつも俺だけが残る」

ゆい「兄さん、今何でも出来るんですね」

基茂「ゆいゆいが訪ねてくる前に出掛けたら良かったな」

ゆい「あっ、別に構いませんよ。わたしもぶらぶらしていましたから。偶然ここを通っただけです」

基茂「山登りでもしてきたらどうだ?あの山ならあっという間に半日終わるぞ」

ゆい「夕飯に戻れるなら、それも…わたし体力ありませんよ」

基茂「ちるより体力ありそうだが」

ゆい「一応屋外作業していますからね」

基茂「ゆいゆいは病気持ちじゃあ無いんだろう。なら余裕だ」

ゆい「いや、その理屈はおかしい」

基茂「ユイえもん。見事なツッコミだ」

ゆい「別に高所恐怖症とかじゃありませんが、山に登った事がない、それだけの話です」

基茂「ゆいゆいは昔から神社に缶詰めか」

ゆい「磨夢さんに会うまではそうでしたね。わたしは勉強三昧でした。陰陽道から保健体育まで」

基茂「その時のゆいゆいに是非戻したいものだ」

ゆい「当時のわたしなら兄さんに関心すら持たなかったでしょう。今が幸せです」

基茂「ちるとゆいゆいって似ているな」

ゆい「ちるさんは息すらしてなかったんじゃないですか?」

基茂「さあな。事実は本人に訊いてくれ」

ゆい「別に知る気もありませんよ。その口から語られるまでは。個人の意思は尊重されます」

基茂「強要なんてするものじゃないな」

ゆい「ところで兄さん。そこまでならご一緒しますよ」

基茂「俺と行動取る訳じゃないんだな」

ゆい「兄さんが行くならどんな所でも着いていきますよ?」

基茂「悪い、そういう店じゃないから一人で行く」

ゆい「ちょ、ちょっと置いていかないでくださいよ。兄さん。速!」


121-2

ゆい「そして此処に居る訳です」

飛鳥「ゆいちゃんは野球ご存知?」

ゆい「多少は。国技でしたっけ」

飛鳥「名目上は相撲や柔道だよ。一般的にサッカーに次いで人気のスポーツではあるけど」

ゆい「人気と伝統は違いますからね。なら野球は国技になれませんね」

飛鳥「今のプロ野球、レベル的には大リーグに匹敵すると思うよ?此間のWBCも優勝した事だし」

ゆい「WBC?世界規模なら最強なのでは?」

飛鳥「でもWBCは年によって優勝する所が変わるからね。その前はベネズエラが優勝したし」

ゆい「どの国も実力が拮抗している、良い事じゃないですか」

飛鳥「この調子で世界に広がってほしいね」

ゆい「ところで飛鳥さんはマネージャーですか?」

飛鳥「わたし?わたしはお兄ちゃんこと部長の専属マネージャー。何でもご奉仕するよ」

潤作「俺が部長の高木だ。お嬢さんは見学か?」

ゆい「はい、散歩がてら寄ってみました。皆さん、凄い練習量ですね」

潤作「ああ、今夏は本気で甲子園目指しているからな。地方大会も順調に勝ち進んでいる」

飛鳥「指宿君を初め、公田君、剣ちゃん、一年生は真田君、矢内君など逸材揃いだよ」

潤作「後は飛鳥が部活のマネージャーになってくれれば…」

飛鳥「わたしはお兄ちゃん専属マネージャだからね」

潤作「茶道部活動頑張るといい」

飛鳥「今年の文化祭も特別に招待してあげるよ」

潤作「ははっ、そいつはありがたい」

ゆい「ところでお二人に質問があるんですが…良いですか?」

潤作「野球部に関する事なら任せろい」

ゆい「この野球部に、深夜に外で素振りしている人って居ます?」

潤作「んー、みんな努力家だし結構当てはまると思うが…性別とか容姿は分かるか?」

ゆい「帽子を目深に被って、よく顔が見えませんけど、恐らく男性ですね。話しかけても、答えてくれませんでした」

飛鳥「公田君でも指宿君でもお兄ちゃんでもないね。恐らく」

潤作「まあ、俺らは話し掛けられたら答えるからな」

飛鳥「お兄ちゃんはお友達多いしね」

潤作「殆どが野球部関係の人だけどな。それでお嬢さん、場所は?」

ゆい「神社の境内に居ましたね。あっ、わたし羽衣神社の巫女やってる羽衣ゆいです。今更ながらよろしくお願いします」

潤作「羽衣神社?」

飛鳥「学校から南東にある神社だって剣ちゃんが言っていたよ。分からない?」

潤作「初めて聞いた名前だな。まあいいや、そこで見かけたと言うのか?」

ゆい「はい、暗がりの中一人で真剣でした」

潤作「それが誰であるか…か。おっと少し喋り込んでたようだ。また、結果を報告する。じゃ」

ゆい「はい、お願いします」

飛鳥「ゆいちゃんはこのまま練習見てる?」

ゆい「そろそろ帰ろうと思います」

飛鳥「あっ、だったらさ、お兄ちゃんの電話番号渡しておくよ。また、連絡用に」

ゆい「ありがとうございます。わたしの方も渡しておきますね」


121-3

ゆい「にーいーさん」

基茂「全く…玄関から入ってこいって」

ゆい「裏口から入らないと兄さん、開けてくれません」

基茂「玄関なら玄関でこじ開けてくるし、もう少し厳重に施錠した方が良いな」

ゆい「兄さん、わたしの事嫌いですか?」

基茂「嫌いならこうやって二人で喋ったりしてねえよ」

基茂・ゆい「エヘヘヘ」

ゆい「バーイってまた懐かしいネタを引っ張ってきますね」

基茂「ゆいゆいの年で懐かしいって言葉使ったら、不味いんじゃね?」

ゆい「それは無問題、わたしは輪廻転生繰り返していますから」

基茂「ずっと人間で居るのも珍しいな」

ゆい「いつだったか忘れましたが…昔、古代ギリシアで皮膚剥がされて焼かれました。しかし、今ではこの通り」

基茂「その時食われたりしなかったか?」

ゆい「さあ死んだ後の事なんて覚えていませんが…もしかしてそれが原因でわたしが目覚めたとでも?」

基茂「食われたら食いたくなる。複数に渡る人生なら、そういう考えにも至るだろう」

ゆい「嗜虐性が擽られると云いますか、復讐心もない訳じゃないですが…仇敵の顔を覚えていないので為す術はありません」

基茂「そんなに昔ならとっくに死んでいるし、良いんじゃないか」


122-1

マスター「いらっしゃい、ムー」

磨夢「いつもので」

マスター「おけー。るーちゃんもよろしく」

ルイ「ウィー、マスター」

マスター「いつもおおきに。最近何かあったん、ムー?」

磨夢「家のみんなで同じ部屋で寝る日もあり、また学校で昼飯を共にした」

マスター「ほんま仲ええなぁ。うちも常連さん来はるけど、あくまで店員と客って立場やし。友達らしい友達って昔からるーちゃんしか居らんわ」

磨夢「それでも二人は同居人。一人は客。そして学校の三人は基茂経由だから」

マスター「そりゃ学校の人らはあんちゃん経由になるのは至極当然やろうな。うちらは磨夢の家の人以上には渡らんけどな」

ルイ「宅配便のお客様も、大きいお友達ばかりだしね」

磨夢「ルイのお客様は基茂みたいなのばかり?」

ルイ「ウィー。学校の近くだから、学生が多いのも仕方がないかな」

マスター「そういやうみさんも言ってはったわ。殆どが下宿生やって。そんなに場所悪いかな」

磨夢「周りに町が無いから、多少は」

マスター「るーちゃん、どうやろここって」

ルイ「一応電車は通っているけど、隣町とは離れているよ。橋を渡して」

マスター「え、この町って島やったん?」

ルイ「島は大袈裟だけど中州みたいになってたと思うよ。はい、地図」

マスター「へぇ…この町ってこんなんなってたんや」

ルイ「海以外の三方は山に囲まれているからね。未だにトンネル開通していないのもあるし。でもわたしは自然を大切にするこの町が好き」

磨夢「景観を損なわないように建物の高さ制限が条例によって定められている。山の緑も美しく映える」

ルイ「ちなみに路地裏のここからは見えないよ」

マスター「通りで土地も安かった訳かぁ。まあ好き好んでこの土地選ぶ人はまず居らんやろうし」

ルイ「ここは誰の店だったっけ?」

マスター「るーちゃん後継ぎ頼むわ」

ルイ「いや、そこはれーちゃんだよ。わたしはあくまでお手伝いだから」

マスター「れーちゃんでも良いけどなぁ…るーちゃんもうちは期待してんねんで?」

ルイ「うーん…なら考えておこうかな」

磨夢「ルイはマスターより立場的に上?」

マスター「ぎくっ」

ルイ「マスターはマスターだから、そこの力関係は絶対的だよ」

マスター「そうよ、うちはマスターなんやから。最低限言う事を聞いてもらいますお嬢様」

ルイ「…?」

磨夢「ルイ可愛い」

ルイ「えっ?」

マスター「るーちゃんって天然なのが怖いよな」

磨夢「…ん、そこがまた可愛い」

ルイ「どうしたの、二人して秘密話?」

マスター「い、いやぁ、何でもないで。誰もるーちゃんの事なんか話してないで」

ルイ「…なら構わないけど」

マスター「そんなことよりるーちゃん、仕入れお願い出来る?もう朝市開いてると思うし」

ルイ「アンタンデュ!(了解)行ってくるね」

磨夢「朝と言えどまだ未明。ルイを一人で行かせて大丈夫?」

マスター「あー、そこは大丈夫。るーちゃんはああ見えて重装備やから」

磨夢「ロザリオに何か力が?」

マスター「まあ御守りみたいなもんやろ。うち宗教にあんま関心ないけど」

磨夢「そう…」

マスター「るーちゃん気になるんやったら追跡したら?追ったら追ったでいつもと違うるーちゃんを見る事になるやろうけど」

磨夢「ん、じゃあ帰る」

マスター「そっか、おおきにな」


122-2

基茂「おはよ…って誰も居ない。もう一度寝るか」

ゆい「兄さん、開けてくださーい!」

基茂「どこからかゆいゆいの声が。俺そこまで魘されていたのか!?」

ゆい「兄さああん。気付いているならここを」

基茂「夢だよな。まだ寝足りないんだな。もう一睡」

八城「お兄ちゃん」

基茂「ん、やしろん、おはよう。どうしたんだ、怒声を効かせて」

八城「玄関、開けてあげたら?」

基茂「やだ、関わりたくない」

ガチャ

基茂「おい、何勝手に開けているんだ」

八城「えっ、あたし触ってないよ?」

基茂「まさか…」

ゆい「てへ、ちょっとばかし使わせて戴きました」

基茂「ゆいゆい、それはどこで?」

ゆい「自宅錬金です」

基茂「自宅軟禁みたいに言うな」

ゆい「八城ちゃん、兄さんがわたしを部屋に監禁するそうです」

八城「お兄ちゃん、お部屋の使用を禁止します」

ゆい「兄さんのお部屋は今日からわたしのものです」

基茂「別に構わんぞ。他の部屋使うし」

ゆい「兄さん家具移動禁止ですよ?」

八城「今ならあーんな本やこーんなゲームがてんこ盛りだよ」

基茂「そういえばやしろん、この前貸したラノベ読み終わったか?」

八城「うん、あれはラノベを超えた何かだね。次は二巻貸して」

基茂「おぅ、良いぞ。佐竹のお薦めだ。どんどん読んでくれ」

ゆい「佐竹さん…ってだけで嫌な予感しかしないんですが」

八城「ジュン兄はお兄ちゃんと違って、紳士なんだよ」

基茂「いや、俺の方が紳士だ。現にゆいゆい以外には手を出してはいない」

八城「本当だ。お兄ちゃん紳士だ」

ゆい「…まあ、こちらから文句は言えませんが。折角なので兄さん」

八城「後で学長室に来なさい」

基茂「それ断ったらどうなんだ?」

八城「打ち首じゃああああああっ」

基茂「やかま。まだ4時だぞ」

八城「金魚迷惑は不可ないんだよね」

ゆい「うちの金魚、今頃跳ねていますよ」

八城「そういえばゆいちゃん、金魚何匹買っていたっけ?」

ゆい「七夕お祭りで残ったデメキン5匹です」

八城「オールデメキン!?」

ゆい「屋台のおじさん曰わくみんなちっちゃいのしか取ってかねぇんだよッ!」

基茂「まあ小さい方が無難だな。大きいのよりは破れにくい」

ゆい「破れやすいですよね、八城ちゃん」

八城「それなら分かるよ。経験の有無だね」

基茂「小さくてもゆいゆいみたいなのは居るけどな」

ゆい「自覚あるんですか、兄さん」

基茂「俺が不干渉なら分からん」

八城「ゆいちゃん、お兄ちゃんにバレなかった事あるの?」

ゆい「さて、何の話でしょうね」

八城「ゆいちゃんは口笛を吹けない」

ゆい「八城ちゃんはどうなんですか」

八城「え、わたしも吹けないよ?ナカーマ」

基茂「口笛吹けないと仲間が増えるな」

ゆい「鶯の鳴き真似なんてどうやるんですか」

基茂「鳴くよ桓武の?」

八城「ホーホケキョ。あっ、出来た」

ゆい「ぐぬぬ」

八城「次回、ゆいちゃん口笛でエンダアアアアア」

ゆい「口笛で叫べとでも言うんですか!?」

基茂「むしろゆいゆいの場合は直接叫んだ方が良いな」

ゆい「エンダ…ゴホッゴホッ」

八城「ゆいちゃん、いつものツッコミと同じノリで」

ゆい「わたしが叫ぶのってツッコミぐらいですかね?」

基茂「まあ俺たち自身、あまり叫ばない環境にあるからな」

ゆい「逆に叫ぶ環境って何ですか。オペラでもやってるんですか?」

八城「ゆいちゃん、夜の女王のアリア行ってみよう」

ゆい「アアアア アッアッ…ごっふぁえ」

基茂「ちょっとPCゲやってくる」

八城「あっ、あたし見学する」

ゆい「ま、磨夢…ゴホッ…さん、遅い…ですねぇ…」


122-3

磨夢「………」

ゆい「おかえりなさいませ」

磨夢「寝るけんね」

ゆい「けんね?朝ご飯が食べたいんですが…」

磨夢「基茂に頼んで。おやすみ」

ゆい「あぁぁ磨夢さぁぁん…」


122-4

ゆい「ということで兄さん、朝ご飯をお願いします」

基茂「ゆいゆいは卵すら割れねーのか?」

ゆい「わたしがやったらもれなく殻が混入しますよ?」

基茂「…まあ、下りてこい。その根性叩き直してやる」

八城「あ、お兄ちゃんが本気だ」


122-5

基茂「卵割りは真上から割るべし。ほうら、フライパンだ」

ゆい「この中に直接入れるんですか?」

基茂「無駄な洗いもんは避けるよう磨夢に云われていてな」

八城「お蔭でジュースも飲めないや」

基茂「そういやジュースあったな。飲むか?」

ゆい「あれ、お二人話が噛みあってませんよ?」

基茂「安心しろ。そこで買ってきた缶ジュースだ。ゆいゆいはインカコーラが良いか?」

八城「あたしガラナが良い」

基茂「じゃあ俺はドクペにしよう。ということでゆいゆいはインカコーラでも飲んでおいてくれ」

ゆい「兄さん、わたしはいちごオ・レが良いです」

基茂「磨夢に言ってくれ。俺の管轄外だ」

ゆい「磨夢さん、帰ってきて寝ちゃいましたよ?」

基茂「やはり飲んできたか」

八城「まみーの朝帰りはいつもそうだよ」

ゆい「またあのバーですか」

基茂「知る人ぞ知るって場所だな。見つけるのすら困難なのに、マスターのシフトを知る人は…居るだろうか」

八城「やしろん、廃墟に近附かない」

基茂「あの草木に侵食された建物夜に向かう人は余程変態だな」

八城「あれ、でもゆいちゃんは行かないよ?」

ゆい「わたしは良い子は早寝するんですよ、八城ちゃん」

八城「夜遊びしなきゃ大丈夫だよ」

ゆい「だからといって家を燃やすのは不可ないと思います」

基茂「最近の小火騒動の主犯はやしろんだったのか!?」

八城「あたしは聖戦の為に異端を火にかけたんだよ」

基茂「それならゆいゆいを焼くべきだ」

八城「ち、わき、にくおどるとはこのことだ。さあたたかおう」

ゆい「わたし焼かれた記憶があると言ってませんでしたっけ!?」

基茂「あ、でもそうすりゃゆいゆいがより変態になって帰ってくるんだな。なら、やめておこう」

八城「ちにうえーい…」

ゆい「にくにうえーい…」

八城「ゆいちゃんの云う肉って肉よk…」

ゆい「バカー、八城ちゃんのバカーッ」

八城「でも飛び出して行かないんだな」

ゆい「朝ご飯食べていませんからね。兄さん、焼けましたか?」

基茂「ああ、焦げた焦げた。この得体の知れない物体、ゆいゆいに授けよう」

ゆい「えっ男の子か女の子…やはり授かるなら女の子が良いですね」

八城「体位によって授かるのが違うんだよね」

基茂「ほらゆいゆい、あーん」

ゆい「兄さん、下閉まってください」

基茂「出していねぇよ!?さっさと食え」

ゆい「はぐっ…じゃりじゃりして、塩が欲しいです」

八城「じゃあ海に行ってくるね」

ゆい「誰も塩水から作れなんて言ってないんですからね!?」

基茂「忘れやすいがこの町海に面しているんだぜ。学校からも見えるが」

八城「ヒッキーのあたしには関係ない話だね。後ゆいちゃんも」

ゆい「わたしはちゃんと仕事してるんで許されるんですよ」

八城「でもゆいちゃん海行かないよね」

ゆい「特に用もありませんからね」

八城「夏に花火大会あるらしいよ?」

ゆい「社会がわたしを知らないならわたしも社会を知らないんです」

基茂「俺たちより長く滞在しているのに、まあ気持ちは分かるけどな。俺も昔は」

八城「お兄ちゃん、前の町でも一人ぼっちだったの?」

基茂「妹が全てだった」

八城「呼ばれ方は?」

基茂「兄上」

八城「分かったよ、兄上」

基茂「やしろんが言うとボクっ娘になりそうだな」

ゆい「兄上、わたしはお腹が空いたのですわ」

基茂「そういえばお嬢様口調だったな。しかしゆいゆい、お前は駄目だ」

ゆい「あまり変わらないと思いますわよ、ねえ八城さん」

八城「誰おま」

ゆい「誰ってわたしはゆいですわ、羽衣ゆ…グハァッ」

八城「お兄ちゃん、何かした…?」

基茂「いや、指一つ触れていない」

ゆい「…わたしはゆいわたしはゆいわたしはゆい。はい、戻りました」

八城「故障してたの?」

ゆい「無理なプログラムを組むからですよ、兄さん」

基茂「誰もやれとは言ってないぞ。後ゆいゆいは機械じゃないだろう」

ゆい「人は思っている以上に機械的存在なんですよ。さて、そのハム頂きます。はむっ」

八城「あっ、それあたし貰おうと思っていたのに」

ゆい「わたしは常に飢えた狼なのです。ぎゃおぎゃお」

八城「狼男がこーいをしたー」

基茂「歌ってんじゃねえよ。ほいこれ」

八城「ありがとうお兄ちゃん」

ゆい「ありがとうございます」

基茂「ところで、何故ゆいゆいが知っている?」

ゆい「どっかで流れていました」

基茂「店内BGMかな」


122-5

八城「そういえばお兄ちゃん、今日はお休みなの?」

基茂「磨夢が飲んでくるのは金曜日の夜中だから今日は土曜だ」

八城「あっ、そっか。週休二日制にしたんだった」

基茂「その分、平日が七時間地獄ってだけはあるな」

八城「部活動出来ないんでねーの?」

基茂「いや授業が4時に終わろうが、下校時間は寛容だから意外と遅くまで居れるな」

八城「そっか。お兄ちゃんいつも遅いもんね」

基茂「まあ、7時には戻るようにしているけどな」

八城「三時間もちるお姉ちゃんと話しているの?」

基茂「話していると云うよりは、ゆっくり時を過ごしている感じだな」

ゆい「シャワー借りましたよ。ふう兄さん、はあ兄さん…」

基茂「うむ、早く仕事に向かうがよい」

ゆい「うう兄さんは吝嗇家ですか。減るもんじゃないでしょうに」

八城「うるせー、バスタオル引っ剥がすぞ」

ゆい「はい、兄さんの仰せのままに」

基茂「やしろんも最近声真似が上手くなったなぁ」

八城「まみーを真似していた結果がこれだよっ!!」

ゆい「正直言って、八城ちゃんにドスの利いた声は似合わないと思います」

八城「そっかなー。何か昔は結構使ってた声な気がするけど」

基茂「やしろんは非行幼女だったのか!?」

八城「えっ、飛行付与?」

ゆい「何となく家出の原因が分かった気がします」

八城「家出したのかなー。あたし」

基茂「あくまで推測に過ぎないからな」

八城「うむむ…」

ゆい「あっ、ではわたし服着てきますね」

基茂「ああ、何故バスタオルで来たのか知らんが」

八城「ゆいちゃんにも女の子の時期があるんだよ」

基茂「やしろん、そいつは根本的に間違っているぞ」

八城「ふぇ?」


123-1

ゆい「くぅくぅ…」

基茂「おい、昼寝キャラはちるだろうが。後俺のベッドは臭う」

ゆい「兄さんの汗の匂い、兄さんのせーえきの匂い…」

基茂「やめなさい」

ゆい「聖なる液ですからっ!別に放送禁止用語じゃありませんからっ!」

基茂「うるせー、神社へ帰れ」

ゆい「実はわたし、この町には召喚されたんです。わたしは兄さんの式神なんです」

基茂「能力は?」

ゆい「式神様を呼ぶ事です」

基茂「式神様とは電話でしか話した事ないし不要不要ッ!」

ゆい「今なら特別に式神様の知らなきゃ損!黒魔術講座三十日間無料お試しキャンペーン中です」

基茂「それは二ヶ月目から有料になるのか?」

ゆい「えっ、ああ、はい…」

基茂「ゆいゆいらしくない」

ゆい「兄さんは求めているんですか?」

基茂「今はそんな気じゃねえな」

ゆい「えっ、ああ、はい…」

基茂「………」

ゆい「兄さん、遠慮しなくて良いんですよ?」

基茂「そういや今日はちるの家に行くんだった。色々渡しに行かないといかんのだった」

ゆい「あ、わたしも一緒に出ます」


123-2

ちる「合い言葉は…何ですか?」

基茂「浮気ではありません。これは成り行きで」」

ガチャ

ちる「基茂さん…にとって…ゆいちゃんは…何ですか」

基茂「えっ、単なるセフ…いや親友だ」

ちる「友達なら…仕方ないですね」

基茂「ちる、俺みたいな人間は信用するなよ」

ちる「わたし、基茂さんしか…信用して…いませんよ?」

基茂「ツユネさんですらもか」

ちる「姉さんは、結構…いい加減ですから。わたしも影響されたんですかね?」

基茂「俺も磨夢と一年居ただけでこれだからな。まあ、あいつを立場上の人間だと思った事はないが」

ちる「案外、平等な立場で…付き合っていれば…影響は受けやすい、ものかも…しれません」

基茂「上下関係なんてあって得なんてねーしな」

ちる「基茂さん、お父さん…居ましたよね?」

基茂「ああ親父は居るが、あまり尊敬はしていない」

ちる「何故ですか?」

基茂「俺を変なものに目覚めさせやがって…」

ちる「…?」

基茂「しかし、俺は現状に満足している。ちるとも会えた事だしな」

ちる「わたしも嬉しいです、基茂さん」

基茂「さてと…かすむんから渡されたものがある。こいつなんだが」

ちる「何かの種、ですかね?」

基茂「袋には何も書いてない。大麻草とかじゃねえか?」

ちる「観葉植物としては、良いもの、ですよね」

基茂「使ったり売らなきゃ問題ねえよ…と、庭に蒔いておくぞ」

ちる「あっ…はい、お願いします」

基茂「おお庭が生い茂ってらぁ…ガーデニングってレベルじゃねーぞ!キノコとか筍も自生しているぞ」

ちる「一応、手入れは…していますが…手に負えない…みたいです」

基茂「かすむんもどっからこんなに集めたんだか…おっ、苺生っているぞ。収穫しとくか?」

ちる「本当ですか?では…お願いします」

基茂「まあ果物野菜を良いもんだな」

ちる「かすむんの選択が、食べられるものに…偏っている…という訳ではありませんが…」

基茂「ああ、植物のにおいで充満しているぜ。この庭」

ちる「基茂さんは、好きなにおいは…ございました?」

基茂「どれも同じようなにおいに思えた」

ちる「そうですか…」

基茂「ほら、収穫物だ」

ちる「ありがとうございます」

基茂「そろそろ風呂行く時間じゃねえか?」

ちる「そうですね…もう少し…基茂さんと一緒に…居たかったんですが」

基茂「また明日な」


124-1

八城「お兄ちゃんは今学校でご飯を食べている」

ゆい「そうですね」

八城「そしてちるお姉ちゃんとイチャイチャしている」

ゆい「どこにイチャイチャ出来る空間がありますか?」

八城「屋上かな。人滅多に来ないみたいだし」

ゆい「何故知っているんでしょう」

八城「まみーが言ってた。よく三人で食べるんだって。後たまにかすむんとクロちゃんも来るんだって。放送部だからあまり来ないらしい」

ゆい「磨夢さんも霞さん狙いなら直接放送局に行けばいいんですが」

八城「ん、いや、まみーはわたし達と同じぼっちさんだからね」

ゆい「だから人気のない屋上に…兄さんとちるさんが何をしているのか分かりませんのに」

八城「そこまで風紀乱しちゃいないだろうけど」

ゆい「風紀委員みたいなのはあるんですかね?」

八城「さあどうだろうね。お兄ちゃんから聞いた事は無いよ」

ゆい「磨夢さんが情報屋である一方、兄さんは役立たずですね…」

八城「まみーみたいに行動力無いからね。仕方ないよ」


124-2

prrr

基茂「家か。こういう時に使ってんだな」

基茂「どったやしろん、昼無いのか?」

八城「もしもしお兄ちゃん。ぶっちゃけちるお姉ちゃんの事はどうなの?」

基茂「どうって…好きだぞ。Je m'apeal chiru」

八城「じゃああたしは?」

基茂「愛している」

八城「うぇwwwwっうぇww」

ゆい「兄さん、わたしは?」

基茂「ゆいゆいは俺の玩具」

ゆい「ぐぬぬ、言わせておけば…」

基茂「俺もゆいゆいの玩具な訳だが」

八城「無限の彼方へさぁー行くぞ」

ゆい「わたしと兄さんは無限の可能性を秘めてますから」

八城「あ、良いな。あたしもお兄ちゃんと特別な関係に…」

基茂「その辺でやめとこうな」

八城「そういえばちるお姉ちゃん居ないの?」

基茂「ああ、一時離脱だな。現状屋上に俺一人」

八城「あはは、ぼっちだ。あはは」

ゆい「磨夢さんくらい誘っておけば…」

基茂「磨夢には他に居場所があるんだろうな」

ゆい「隣の建物の屋上とかですか?」

基茂「南館は基本開放されな…居たな」

ゆい「兄さん、声をかける機会です」

基茂「ヘエエエイ!マアアアアム!」

ゆい「どうですか?」

基茂「手振ってくれた」

ゆい「良かったですね」

八城「ふぇぇ…こっちからじゃお兄ちゃん見えないよぉ」

ゆい「そりゃあそうですよ。住宅街ですから学校の建物すら見えませんよ。ねぇ兄さん」

基茂「一応徒歩数分だけどな。こっからは容易に見つけられる」

八城「お兄ちゃん、あたしとゆいちゃんが何しているか分かる?」

基茂「そこまで判別出来んな」

ゆい「声で分かりますからね。ねぇ、八城ちゃん」

八城「あっ、う、ふん」

基茂「切らして戴こうか」

八城「待ってお兄ちゃん早まらないで。その先は地獄だよ!」

基茂「誰も飛び降りようなんざしてねーよ」

ゆい「大丈夫です。その時はその時で兄さんを丸ごと頂きますから」

八城「良かったね、天国だったね」

基茂「死んだら実感出来る訳ねーじゃねーか」

ゆい「兄さん、踊り食いされたいんですか?それもそれでよろしいかと」

基茂「今度ゆいゆいに会う時は気をつけるか。じゃあな、そろそろちるも帰ってくるだろうし」

ゆい「はい、心よりお待ちしています」

八城「で、何かあったっけ?」

ゆい「さあ何が置いてありましたっけ?」

八城「まみー作り置き忘れたっぽい?」

ゆい「困りましたねぇ…お腹ペコペコなんですが」

八城「ゆいちゃん、これで何か買ってきて」

ゆい「どこからこんな大金が…八城ちゃんはどうします?」

八城「あたし、じたくけーびやるの」

ゆい「あっ、はい…では行ってくるんで」

八城「よろしくねー」


124-3

ゆい「あっ、ルイさんこんにちは」

ルイ「ボンジュール、ゆい。お昼買いにきたの?わたしもそうだけど」

ゆい「ルイさんはお昼休みですか?」

ルイ「ウィー。で、ゆいは何買うの?」

ゆい「特に決まってませんが…」

ルイ「ゆいは、フランスパン好き?」

ゆい「固いのより柔らかいのが良いです」

ルイ「柔らかいのっと…このカツサンド美味しそう」

ゆい「サンドウィッチも良いですが、ホットドッグも美味しいですよ」

ルイ「ゆいは犬食べるの?」

ゆい「ノンノン、これホットドッグ」

ルイ「あっ、名前出てこないの。これがホットドッグかぁ。二個買っていこう」

ゆい「じゃあわたしもそれで」

ルイ「後は適当にタピオカジュースでも…これでよしっと」

ゆい「ではわたしはシークァーサードリンクを。普通のジュースはありませんか?」

ルイ「コーラとかなら向こうにあったよ。八城の分?」

ゆい「はい。依頼人ですから…このトマトジュース」

ルイ「それ、本物だよ?」

ゆい「本物?市販品なのにですか?」

ルイ「本物出さない理由が分からないよ」

ゆい「か、買いますっ!」


124-4

八城「おかえり。ゆいちゃん、ご苦労様」

ゆい「やや八城ちゃん、これ本物らしいですよ!」

八城「それ、本物なの!?」

ゆい「はい、ルイさんが言ってました。試しにストロー刺してチュー…これはいけませんね」

八城「美味しい?」

ゆい「癖になりますよ。未だに動悸が収まらなくて…」

八城「どれどれ…チュー…うっ、うっぷ」

ゆい「八城ちゃんは死んでしまった」

八城「相性悪いんだyo」

ゆい「蘇生はまだですよ、八城ちゃん」

八城「うぃーっ…」

ゆい「さて、ホットドックは二つともわたしの物です」

八城「………」

ゆい「いただきますっと」

八城「ガブガブ」

ゆい「わたしの貧相な肉体には何ら旨味もありませんよ?」

八城「肉、肉、肉…」

ゆい「流石に限度というのはありますね…はいホットドック」

八城「ガツガツガツ」

ゆい「まあ…放っといたら治りますか」

八城「………?」

蕨「………」

八城「ガウ?」

蕨「………?」

八城「くぅーん」

ナデナデ

蕨「………」

ゆい「蕨ちゃんが手懐けています!?」

蕨「………」

八城「おk」

ゆい「あっ、治るの早いですね」

八城「ん、何があったの?」

ゆい「さあ…」

八城「とりあえずシークァーサーは貰うね」

ゆい「好きなんですか?」

八城「んや、ちょっと美味しそうだなと思った」

ゆい「まあ、お好きにどうぞ」

八城「ありがとう。らびぃは何か要る?」

蕨「………」

ゆい「蕨ちゃん、それを凝視してますよ」

八城「…うぅ、私が手放すしかないのかなぁ」

蕨「………」

八城「あれ、もう手元にない」

蕨(ゴクゴク

八城「あたし、初めて敗北の味を知ったよ」

ゆい「大丈夫、コーヒー淹れてあげます」

八城「もっと苦くなっちゃうよぉ」

蕨「………」

八城「まだあるの?それ」

ゆい「とりあえず受け取ってみればどうですか」

八城「あたし、らびぃ、しんじない」

蕨「………」

ゆい「出てっちゃいましたよ」

八城「この中に何か仕組んでいるよ」

ゆい「仕方ありませんね。わたしがいただきましょう」

八城「あっ、ちょ…ま」

ゆい「シークァーサー、結構残ってましたよ」

八城「無念なりぃ…」


125

蕨「………」

八城「らびぃっていつ起きているの?」

磨夢「気付いたらそこに居る」

八城「昼は寝ているよね。そして夕飯には参加している?」

磨夢「食卓に見ない時も起きてはいる」

八城「和室がたまに明るいのってそれが理由だったのかぁ」

磨夢「蕨の居場所はそこだから」

八城「らびぃが起きたらまみーが電気点けてあげているの?」

磨夢「ん」

八城「それでたまに部屋に招いているの?」

磨夢「ん、八城は蕨と遊んであげない?」

八城「あまり会わないからなぁ。でも居場所が分かったから、今度トランプでもしようかな」

磨夢「ん、それがいい」


126-1

コンコン

霞「どうぞ」

玄那「よろしく頼もう」

霞「えっと、磨夢さんを呼んでもらえますか」

玄那「掛けた所で電波は届かないみたいだ」

霞「むしろ電波飛ばしまくっていると思いますよ」

玄那「先生はその電波をも弾き返す強力な電波を控えているぞ」

霞「ちょっと神社いってくる」

玄那「ああ、いってらっしゃい」


126-2

霞「磨夢さん、捜しましたよ」

磨夢「ようこそ時空の狭間に」

霞「廻りが歪んで見えますね」

磨夢「正常を保つ術はない。霞もわたしもいずれは」

霞「早くここから出ないといけません」

磨夢「何か急用でも?」

霞「クロちゃんから召集がかかっています」

磨夢「玄那?今日は休養日だと思っていた」

霞「突如予定が切り替わりました。今日は臨時集会です」

磨夢「そう…また俗世に戻ることに。分かった、霞。両手をこちらに」

霞「は、はい」

磨夢「転移」


126-3

玄那「おかえりだな」

霞「何とか帰ってこれました。あ、椎木先輩も」

ちる「どうも」

磨夢「玄那、手短に」

玄那「オーケー先生、話はあれだ。椎木先輩についてだ」

ちる「…はい?」

玄那「椎木先輩、伊崎先輩が倦怠期らしいが」

ちる「えっと、その…」

霞「クロちゃん、先輩は困っていますよ」

玄那「おっと、すまない。詰問は良くないな。もう少し緩くやろう。はい、深呼吸」

磨夢「お疲れ」

玄那「ちょっと先生、待ってくれないか?これは深刻な話だ」

ちる「基茂さんは、いつも…優しいですよ」

玄那「それはそうだと思うが、伊崎先輩は誰にでも優しい気がするぞ」

ちる「優しいのって、良い事だと…思いますが」

玄那「その優しさを独占するのが真の愛情…そこの二人みたいな?」

磨夢「ん?」

霞「磨夢さん、余所見しているとやられますよ」

磨夢「…っと、緊急回避」

玄那「共有出来るものがあるのは素晴らしい事哉」

霞「磨夢さんはゲーム持っていませんからねぇ」

磨夢「珠にやる位が丁度良い」

霞「それでこの腕前ですから、大したものですよね」

磨夢「霞の教え方が上手い。三分で分かる」

霞「まあ、やりこんでいますからね。後、ジャンルも変わっていないので」

磨夢「ん、楽しければ何だって良い」

玄那「椎木先輩、これが理想だ」

ちる「あまり理想的ではない…気が…」

玄那「しかし伊崎先輩と共有出来るもの…彼は趣味が偏っているからな…」

ちる「基茂さん、本が好き…なんですよ。ツユネさんの本で…盛り上がります」

玄那「伊崎先輩も苦労したんだな…」

磨夢「霞、これ倒したら、押し倒していい?」

霞「そんな、行方不明の妹も居ると云うのに」

磨夢「それわたし」

霞「好い加減な事言っていると年齢当てますよ?」

磨夢「じゃあわたしがお姉ちゃん」

霞「そいつぁねえな」

磨夢「姉が欲しいと思った事は?」

霞「確かにわたしは現在一人っ子みたいなものですが、妹すら恋しく思った事はありませんよ?まして元から居ない姉や」

磨夢「ん、やはり霞は誰かが目守っていないといけない」

霞「わたし、肩凝っていませんけど?」

磨夢「じゃあ胸?」

霞「磨夢さんいやらしい」

磨夢「霞けしからん」

玄那「仲が良いよな、二人共」

ちる「二人して、火花…飛ばしあって、いますけど」

玄那「これだけ張り合う磨夢さんも大したもんだが。しかしわたしたちは仲間だ」

ちる「あの…どこ見て言って…るんですか?」

玄那「わたしたちはこれからだぞ、先輩。伊崎先輩の為にも頑張ってくれ」

ちる「何を、どう頑張れ…と」


127

純治「伊崎は女の裸見た事あるか?」

基茂「ああ幼女ならしょっちゅう」

純治「ぶっ!誰が真面目に答えろと言った」

基茂「あいつらが勝手に入ってくるんだ。仕方ない。ただ凝視はしていない」

純治「触った事は?」

基茂「ゆいゆいには滅茶苦茶にされた」

純治「だろうな」

基茂「佐竹は?」

純治「俺は幼なじみと風呂に入った事がある」

基茂「ぶっ!そっちの方がびっくりだ…触った事は?」

純治「背中の流しあいっこはしたな。あん時は何も無かったのにな」

基茂「俺のブツを見て言うな」

純治「さてと、今日貸すゲームだが…とことん幼女もんだ」

基茂「いつも通りで良かったぜ。そっちは?」

純治「ああ、これはねーちゃん凌辱もん。かすむんから」

基茂「かすむんに何があった!?」

純治「知らねーな。だが余程辛い事があったんだろうな」

基茂「姉居ないとこうなるのか…いや俺たちの幼女愛と大して相違ないが」

純治「やしろん、ゆいゆいは大切にな」

基茂「当たり前だろう。特にゆいゆいは…な」

純治「腹上死だけはするなよ」

基茂「そこまで行ってねえよ…」

純治「でも初日はひどかったんじゃないのか?聞きようだと」

基茂「ああ、一方的だったからな。思わず力んだ」

純治「嘘吐きやがってこんにゃろう」

基茂「他にどうしろと云うんだ?」

純治「こちらは一向に動かずだ」

基茂「向こうが動く。そして勝手に楽しんでいるぞ」

純治「引っこ抜けばいいわ。バッキャロ」

基茂「それでゆいゆいが死んだらどうしようもないな」

純治「まあ日々用心する事だ」

基茂「ゆいゆいはそこまでひ弱じゃないと思うけどな。まあ大抵向こうから誘ってんだから」

純治「そろそろ二次元に向かおうな。そこが俺達本来の居場所だ」

基茂「ああ、そうしよう。こっちでこんなくだらん話付き合ってくれんの佐竹ぐらいだしな」

純治「男同士の話だからな。現実であれ理想であれ」

基茂「冗談や作り話でも通じてしまうもんだ」

純治「言ってくれるな」


128-1

八城「うーん…」

ゆい「どうしました?」

八城「何で、ゆいちゃんはそんなに上手なのかなーって」

ゆい「わたしが上手いんじゃありません。兄さんの誘導が上手なんです」

八城「ゆいちゃんは支配されているの?」

ゆい「はい、身も心も兄さんに」

八城「お兄ちゃん一色。役満」

ゆい「兄さんについてイメージカラーありますか?」

八城「んー、ピンクとは言えないかな。何となく青」

ゆい「兄さんに青髪依頼しておきますね」

八城「青髪?どっかで見たような…」

ゆい「ちるさんの方が似合いそうですか?」

八城「ちるお姉ちゃんは黒で良いと思うけど、そういうあたしは少し茶色い?」

ゆい「地毛ですよね?」

八城「うん、赤まではいかないけどね」

ゆい「逆に八城ちゃんは黒が似合わない気がします。あれですね、第一印象は強いものですね」

八城「黒に染めようとも思っているけど、お婆ちゃんみたいだね」

ゆい「八城婆さん、気になってるんですか?」

八城「年になるとねぇ、若き日の黒髪に憧れる時が来るんだよねぇ。ゆいちゃんもあたしみたいな年になるときっと思う時が来るよ」

ゆい「不老不死の身にはそんな日は訪れません」

八城「人魚の肉でも食べたの?」

ゆい「人魚は見た事ありませんねぇ…」

八城「魚屋さんで売ってそう。あっ、でも魚かな?それとも…」

ゆい「少なくとも行きつけの店には売ってなかったですよ。先ず入手が困難ですし」

八城「漁師さんもそんな島行ったら帰ってこれそうにないしね。カズおじさんはどうなんだろう?」

ゆい「電話掛けて訊いてみます?」

八城「神社の電話番号、おじさん知ってたっけ?」

ゆい「何度か非通知で掛けていますけど」

八城「悪戯電話?」

ゆい「いいえ、用件は伝えています。あなたの息子は監禁しています。解放しません、出すまでは…という感じで」

八城「て事で、うちの電話使ってね」

ゆい「振っておきながらひどいです…」


128-2

prr

ゆい「出ませんね」

八城「お仕事忙しいのかな?」

ゆい「昼間は沖の方に向かっているんじゃないですか?」

八城「いくらゆいちゃんの電波でも届かないかぁ」

ゆい「何か留守電でも残しておきましょう。おじさんが必ず反応するようなものって何があるでしょうか」

八城「ゆいちゃんの喘ぎ声」

ゆい「んはぁ…おじさま、いくらあなたがわたしを好きでも…はあ、わたし達はいけない関係で…ああっそこはっ」

八城「何か団地妻っぽいね。次はゆいちゃんのふぇぇボイス」

ゆい「ふぇぇ、おじさんが電話に出てくれないよぉ…意地悪だよぉ性悪…これは八城ちゃんの方が適格じゃありませんか?」

八城「おじさん、あたしの声聞いた事あったっけ?」

ゆい「そういえばわたしばかりが掛けている気がしますね」

八城「あたしゃあ無関係ですよっ」

ゆい「しかしいずれは関係を持つ事になりますよ…年の差はありますが」

八城「そんな関係ってただのAVじゃない?」

ゆい「おじさんは野獣でした!?」

八城「出演しないの?」

ゆい「わたしは兄さん以外に貞操を傷つけられたくありません。諭吉出てもやりませんよ?」

八城「あ、でも、まみーとも風呂場でチョメチョメェ…」

ゆい「あの時程死にたいと思った事はありません。それ以来家風呂で磨夢さんと入らなくなりました」

八城「あたしの時は優しいのに…成程、ゆいちゃんがエロいからだッ!」

ゆい「あぅ…肉体的コンプレックスぅ…」

八城「どれ、ちょっと脱いでみ?」

ゆい「ど…どこに興奮するというんですか」

八城「さあまみーはどこに弱いんだろうね」


128-3

磨夢「ん、じろじろ見て…どうしたの」

ゆい「あっ、いや、その…」

磨夢(じーっ)

ゆい「………」

八城「やっぱりゆいちゃんはコミュ障だった!」

基茂「家族みたいなものだろう。肩の力抜けよ」

ゆい「あぅ…」

蕨(じーっ)

ゆい「蕨ちゃん…」

蕨(乗っかり)

ゆい「………」

レオポン「にゃー(乗っかり)」

ゆい「膝が重いです…」

基茂「ゆいゆいの膝の上なんてよく乗っかれるな」

八城「今にも折れそうだよね」

磨夢「蕨」

蕨(こくり)

レオポン「にゃー」

八城「両方まみーの膝の上に行っちゃったね」

基茂「見事なNTRれっぷりだ」

ゆい「うぅ…」

八城「ゆいちゃん泣いてるよ?」

基茂「ほっとけ。飯が冷めるぞ」

ゆい「兄さん。慰めてください…」

基茂「断る」

ゆい「うへえん…」

基茂「食後、部屋に来てもいいぞ?」

ゆい「はい…」


128-4

ゆい「むぅ…」

八城「ゆいちゃん遊ばないの?二人麻雀はちょっと…」

基茂「あっ、それロンで」

八城「油断していたよ…」

基茂「つまらないな」

八城「そうだね、ゆいちゃんが元気になってくれないと」

基茂「常識の範囲内なら何でも相談してくれて構わないぞ」

ゆい「わたしの中では兄さんと合体するのは常識ですよ」

基茂「ゆいゆいの常識は殆ど非常識だな」

ゆい「ふぇぇ…電波さん、出ていってください」

基茂「電波の所為…なのか?」

八城「でも、それが無くなるとゆいちゃんじゃなくなっちゃうんだよ」

ゆい「兄さん、エロくないわたしなんてつまらないだけでしょう?」

基茂「少なくとも出会った時はもっとおとなしかった気がするな」

ゆい「兄さん、人見知りってご存知ですか?」

基茂「ああ、俺もそれだ。未だに改善しない」

八城「あたしは?」

基茂「記憶喪失は黙っていていろ」

八城「がーん」

ゆい「兄さん、それはあんまりですよ。確かに八城ちゃんは人見知りじゃありませんけど」

八城「あたしはコミュ障なだけかな」

ゆい「………?」

基茂「やしろんだけ違うよな」

八城「えっ」

基茂「まあいい。ゆいゆい」

ゆい「何でしょう、兄さん。いつでも甘えてくれて良いんですよ」

基茂「だーってろ」

ゆい「ふぇぇ…兄さんいつとなく意地悪です」

八城「あたしと会った時どうだったかって?」

基茂「何だ、やしろんにしたら珍しく冴えていやがる」

八城「何でだろう、今お兄ちゃんの考えている事全部分かる」

基茂「ほぅ」

八城「ゆいちゃん、出てけっ!でしょ?あ…ゆいちゃん、あたしは思っていないよ」

ゆい「兄さんから誘ったんじゃないですか。畜生じゃないですか」

基茂「………」

八城「性的な意味では言っていない」

ゆい「わたしもそんなつもりで言っていませんが、寧ろわたしがちるさんであれば歓迎したって?兄さんとことんいやらしいですね」

基茂「だーっ!ゆいゆいまで俺の心を読むなぁっ!」

ゆい「冗談のつもりでしたが」

基茂「まあ、それなら構わんが」

八城「ところでゆいちゃん、話戻るけど、あたしと最初に出会った時どうだったっけ?」

ゆい「どうって…八城ちゃんは容易に話しかける事は出来ました。只兄さんが…」

基茂「ゆいゆいって男性恐怖症だったか?」

ゆい「いえ、八城ちゃんの話を聞く限り怖そうだったので暫く距離を置いていましたが磨夢さんから話を聞けば、何だそれ程怖い人でもないんですね。人見知りの癖に変態な、もはやわたしと同類だったなんて、思わずそこで大笑いしまして、その夜兄さんの初めてを奪いました。わたしの初めても捧げました」

基茂「…ああ」

八城「お兄ちゃん、お気の毒?」

ゆい「取り方次第じゃないですか?」

基茂「前もってあの計画は予定されていたのか?」

ゆい「はい。式神様に言われました。そんな男襲って黙らせろ、と」

基茂「まさかの神の犯行だったか…」

ゆい「磨夢さんだと思っていましたか?確かに磨夢さんも昔から親密な関係を保っていましたけど」

基茂「やしろんはこの事を知っていたか?」

八城「んまあ…それらしき事を言ってたような、言ってなかったような」

ゆい「という事で兄さんには感謝しているんですよ。何せ初めてでしたから」

基茂「何かツッコむ気も失せたぜ…消灯だ、お前らが何と言おうと消灯だ」

ゆい「兄さん、今日は泊まっていきますね」

基茂「もう好きにしろ。但し寝かせろ」

ゆい「はい、寝かせてあげます」

基茂「頼むぞ」

ゆい「兄さん、おやすみなさい」

基茂「グーグー」

八城「ゆいちゃん、頑張ってね」

ゆい「はい、今夜もいただきます」


128-5

ゆい「あっ、磨夢さん、おはようございます。昨夜は泊まらせて戴きました」

磨夢「知ってた。ご飯食べてく?」

ゆい「いえ、元気も出てきましたし、朝早いですから、一度神社に戻ります」

磨夢「そう。じゃあまた」

ゆい「はい、また来ます」


128-6

基茂「…うぃっす。何か今朝はやけにしんどい」

磨夢「ゆうべはお楽しみでしたね。ゆいならもう帰った」

基茂「ゆいゆい、今度覚えておけよ…」

八城「おはようの平手打ち!」

基茂「全然届いていないぞ」

八城「まみーの手が必要かな?」

基茂「いや、それでも足りない」

八城「むしろお兄ちゃんにおんぶしてもらおうか」

基茂「誰が殴られる為におんぶするんだよ」

八城「お兄ちゃんなら喜んでくれるカナート」

基茂「どっかのメガネと勘違いしていないか?」

八城「お兄ちゃんがメガネ掛けたらどうなるかな」

基茂「目が悪くなる」

八城「この1.5がッ!」

基茂「俺の視力はみるみるうちに回復しているぞ」

八城「この6.0がッ!」

基茂「俺はどこのスナイパーだ」

八城「あたしはこう見えて目が悪いよ?」

基茂「こう見えて画面ばっかり眺めているもんな」

八城「一応ゆいちゃんの所に通っているし、そこまで悪くないと思うけど」

基茂「ならまだ希望がある。少なくともあのメガネみたいになるな。逆にかすむんは何故裸眼なのか…ひょっとしてコンタクトレンズか?」

八城「あの痛いやつかぁ。でもかすむんならあり得そう」

基茂「まあ実際はクロちゃんの方が視力悪い訳だが」

八城「片目で視力悪かったらどうしようもないね。でも隠している方は千里眼とか?」

基茂「ハッハ、そいつは有り得るな」

磨夢「メガネメガネ…」

基茂・八城「付けてないじゃん!」

磨夢「違う、この前ツユネが置いてった」

基茂「何故ツユネさんがこっちに来ているのか」

八城「えっツユネさん来てたの!?」

磨夢「ちるが帰るまで居らせてくれと言われて、少し」

基茂「合い鍵すら持っていない姉貴ェ…」

八城「姉貴?」

基茂「自称な」

八城「へぇ、そうなんだぁ」

磨夢「…あった。基茂、渡してくれる?勿論、ちるに」

基茂「あいわかった」

八城「ツユネさんがちるお姉ちゃんのお姉ちゃん?何かこんがらがってきた」


129

ちる「あっ、ゆいちゃん。何でこっちに」

ゆい「今日は学校見学です」

ちる「…はあ」

ゆい「朝来ても無駄ですかね?」

ちる「始業も早いので…基茂さんと話すのは…難しいと…思いますよ?」

ゆい「一般人には少し無理がありますか」

ちる「授業中は…図書館も…開いていますが」

ゆい「午前は仕事しないといけないので失礼致しますね」

ちる「そう…ですか…では」


130-1

ゆい「八城ちゃん、食べましたか?」

八城「うん、食べたよ。どうしたの」

ゆい「学校に突撃しますよ」

八城「えっ」

ゆい「どうしました、怖いんですか?」

八城「こ…怖くなんかないよっ。ゆいちゃんこそ…」

ゆい「職員室にも教室にも行きません。目指すは…屋上のみ。磨夢さんのワイヤーを借りましょう。八城ちゃん、しっかり捕まってくださいね?」

八城「あっ、うん…」

ゆい「ハイヤッ!」


130-2

基茂「ぐべらっ」

ゆい「兄さん、こんにちは。あれ…兄さん?」

八城「お兄ちゃん、床に突っ伏して気絶しているよ?」

ゆい「あー、やっぱりですか…ちるさん?」

ちる「あっ、はい?」

ゆい「指輪持ってきましたから、兄さんと分けてくださいね」

ちる「基茂さんと…指輪ですか?…!」

八城「ちるお姉ちゃんが次第に赤く…」

ちる「あの…ゆいちゃん。こういうのは…ですね…基茂さんの方から…貰う物…ですよね」

ゆい「そうですか。では、兄さんに渡しておきますね。兄さん、これを」

基茂「うっ、うう…」

ちる「基茂さん、大丈夫…ですか?」

基茂「うぇっぷ…何とかな」

ゆい「兄さん、これを」

基茂「あぁ、受け取っておこう」

八城「ちるお姉ちゃん、これを」

ちる「輸血パック…ですか。ありがとう…ございます?」

八城「まみーがお兄ちゃんので作った力作なんだって」

基茂「最近だりーと思ったら、その所為か」

ゆい「兄さん、わたしには?」

基茂「ゆいゆいは肉しか言わないだろう…」

ゆい「はい、肉体です…うふふ」

基茂「…やしろん」

八城「あいあいさー」

ゆい「ちょっと八城ちゃん、わたしたち初めて…ん!?」

ちる「………」

基茂「ああちる、ほっといていいぞ。こっちはこっちでゆっくりしよう」

ちる「あ…はい」

八城「………」

ゆい「――――!!」

基茂「何やってんのか、よく分からんだろう」

ちる「そうですね…見ないように…します」

ゆい「…ぷはぁ、はぁ…はぁ」

八城「ゆいちゃん、今度はお兄ちゃんと」

ゆい「兄さん…」

基茂「ん?どった、ゆいゆい」

ゆい「今夜、覚えておいてくださいね」

基茂「連日はきついぞ」

ゆい「こういう日もあるんですよ」

基茂「ちる、どう思う?」

ちる「どうって、言われましても…」

八城「お兄ちゃんは絶倫だから大丈夫だよ」

基茂「言うほどだけどな」

ゆい「一回の消費量が少ないだけですよね」

基茂「省エネなんだぜ」

ちる「省エネですか…」

ゆい「ちるさん、今変な事考えました?」

ちる「いや、その…別に」

基茂「おい、幼女がちるを虐めるな」

ゆい「ちるさん、無礼仕り申し訳御座いません。お詫びとして紅白饅頭を差し上げます」

ちる「めでたいですね…」

八城「何かのお祝い?」

ゆい「八城ちゃんが余り物と言って、くれた物です」

八城「ああ、あの時のか。忘れてた」

基茂「いつのだ?」

ゆい「兄さんが卒業した時の祝いです」

基茂「あぁ?…あぁ」

八城「花束はまだ用意出来ていないんだ、ごめんね」

基茂「花束ならちるにやってくれ」

ちる「え…わたし、まだ、卒業して…いませんよ?」

八城「ちるお姉ちゃんはまだだよね、お兄ちゃん」

基茂「ああ、まだ一年は待たないとな」

ゆい「兄さんって、焦らしプレイ好きなんですね」

ちる「えっと…後一年で卒業…ですが」

基茂「卒業なんて遥か先の話だ」

ゆい「ちるさんが丈夫になるのはいつでしょうか」

ちる「余命幾許か…と言われて、いますが」

ゆい「兄さんッ!何で焦らすんですか」

基茂「今やるのは余計に不可んだろう」

八城「お兄ちゃんはもっと鬼畜だと思っていたのに」

ちる「………?あっ、基茂さん…そろそろ…時間です。お先に…失礼します」

基茂「ああ、もうそんな時間か。お前らも帰れよ。此処に居ても誰も来ないし」

八城「…それ、良いんじゃないの?」

ゆい「兄さんは誰も来ないから帰れと言っているんですよ」

八城「あっ、そっかー。じゃあねお兄ちゃん」

ゆい「八城ちゃん、ちょっと待ってくださああい」

基茂「どっから出てどこから去っていくんだ。あの二人は」


130-3

剣「やあシゲ、昼食帰り?」

基茂「そうだが?」

剣「わたしは今から課題を取りに行く所だッ!ではでは」

基茂「お、おぅ」

純治「村雲の声が聞こえたが?」

基茂「あいつ今から課題を取りに行くようだ。じゃあ俺は席に戻るな」

純治「あ、ああ…」

飛鳥「どうしたの、たっけー」

純治「村雲ってバカなのか?」

飛鳥「バカだよ、良い意味で…」

利登「はい、みんなおはよう。あれ、村雲は?」

基茂「ちょっと遅れるらしいっす」

利登「また課題忘れたのか、村雲は…」

剛「俺は最初からやってません」

利登「公田、君は少しは努力しよう」

剛「義斗、教えてくれよ」

義斗「幾らでも付き合ってあげるよ」

利登「では、課題を後ろから集めて…」

ガララッ

剣「お待たせしました。はあ…はあ…誰か、水を」

飛鳥「剣ちゃん、どうぞ」

剣「ありがとう…ゴクゴク…死ぬかと思った」

利登「早く席に着けよー」

剣「先生なら分かりますよね、この気持ち」

利登「いや、分からない。しかし前で良かったな。間に合うし」

剣「はい、どうぞ先生」

利登「ありがとう…さて、村雲も来たので授業始めようか」


131-1

飛鳥「ねぇ剣ちゃん」

剣「あすぽん、なぁに?」

飛鳥「アンタばかぁ?」

剣「ぼかぁバカじゃないよ」

飛鳥「誰もが認めるバカだよ?」

剣「でもわたしが居ないとクラス盛り上がんないっしょ?」

飛鳥「全体的に静かなクラスだしね。ほら窓際とか」

剣「あの列、さっきの授業ちるたん以外全滅だったよ?」

飛鳥「例えばその二つ隣の列とか?」

剣「ありゃあ、しーあの威圧感バリバリだし、みんな押し黙るよ」

飛鳥「それでもこっちは元から静かだしね」

磨夢「そうそう教師からしてもやりやすい」

飛鳥「うちのクラスは結構優秀なんですか?」

磨夢「一部を除けば」

剣「何故わたしの方を見るんですか?」

磨夢「別に」

飛鳥「さてと、今日はどこからですか?」

磨夢「p105のクロッケーの話から」

飛鳥「先生、教科書を開いてくださいね?」

磨夢「持ち物検査…飛鳥、銃引っかかった」

飛鳥「実弾込めていませんよ」

磨夢「護身用?」

飛鳥「剣ちゃんを殴る用です」

剣「銃で殴っても、わたしの頭は良い音しないよ?」

磨夢「鈍い音しそう」

剣「そんなに弱くもありませんっ」

磨夢「そう…じゃあ剣、金目の物を」

剣「我が家先祖代々伝わる魔剣です」

磨夢「魔剣新聞剣…強そう」

剣「そしてこちら、紙ボールです。ナックル投げられますが、使っている内に崩壊します。ついでにガラスも割れます」

磨夢「小学校なら仕方がない」

剣「そういえば3階音楽室前はガラスないですよね」

磨夢「うみ先生が海に声が届くようにとの理由で自らの拳で破壊した」

剣「うみ先生、学長に天の舞!」

磨夢「うみ先生は三年間停職して今年復帰したそうな」

剣「そういえば今年からか…あすぽん」

飛鳥「いやわたし、美術選択だけど?」

剣「美術教師は…松林先生だったっけ?」

飛鳥「うん、そんな名前の人だよ。うちのクラスで美術取ってるのは、椎木さん、美竜ちゃん、委員長は?」

紫餡「わたしは習字選択よ」

剣「希少種だッ!初めて聞いたよ。レッドデータ入りの習字選択者」

紫餡「そんなに驚く事かしら?確かにうちのクラスでは音楽と美術が人気を二分しているらしいけど」

飛鳥「正確には圧倒的人気を誇る音楽の定員枠から外れた人が美術選択者の大半を占めているよ。わたしもその一人だし。中には美術を第一希望にした人も居るようだけど」

紫餡「椎木さんかしら」

飛鳥「恐らくね。無口な人や純粋に美術が好きな人が多そう」

紫餡「自分の世界に入れる…と云う訳ね」

ちる(ブルッ)

磨夢「ちる」

ちる(こくり)

剣「先生がちるたんを連れ出した!?」

飛鳥「先生ったら大胆なんだから」

剣「お花摘みに行ったのかな?」

飛鳥「いや、愛を育むなら保健室だよ。椎木さん身体悪いし」

剣「成程、病弱につけこんだ策って訳ですか」

紫餡「もうチャイム鳴り…」

キーンコーンカーンコーン

鋼田「やあ諸君、こんにちは」

剣「鋼田教授…教室間違えていませんか?」

鋼田「村雲君、次のわたしの授業と交代したんですよ」

剣「…まさか、延原先生まで寝込まれました?」

鋼田「疲れた声でわたしに連絡があったんですよ。次の授業はそのまま自習になりそうですね」

剣「鋼田教授、続投ですね?」

鋼田「恐らくそうなるでしょう。何はともあれ今は授業を始めましょうか」


131-2

ちる「ここは…?」

磨夢「いつもの所」

ちる「はあ…」

磨夢「ちる、疲れていない?」

ちる「特には…」

磨夢「そう」

ちる「でも、わたし、あのまま…居られません、でした」

磨夢「連れ出して正解」

ちる「ご迷惑…掛けて、申し訳…ありません」

磨夢「日常だから」

ちる「はい」

磨夢「サボり、楽しい?」

ちる「受けられ…たら、受けて…いますよ」

磨夢「そう」

ちる「ところで…磨夢さん…どうして、授業まで…休んで…?」

磨夢「基茂が寝ていたから。動けても基茂は動かない」

ちる「内密、ですから…」

磨夢「ちるは影に隠れて行動している」

ちる「…はい」

磨夢「今、大丈夫?」

ちる「少し、苦しいです…」

磨夢「そう、おやすみ」

ちる「おやすみ…なさい」


131-3

鋼田「来週延原先生には二時間連続でやってもらいます」

剛「それは勘弁です、先生」

鋼田「2時間くらいで泣き言は言わない方が良いですよ。公田君」

剛「しかし…」

鋼田「延原先生にはしっかり言っておきましょう」

剛「それはしっかりやるという事ですか?」

鋼田「さあ、どうでしょう」

剛「先生、二時間ぶっ通しは無理です」

剣「あう…」

飛鳥「剣ちゃん?」

剣「気にするな。次だ次」

鋼田「授業間休みの有無は延原先生次第です」

剛「何としてでも阻止してやります」

鋼田「委員長はどう思いますか?」

紫餡「先生、わたしには竜瀬という苗字がありますよ」

鋼田「すみません、わたしは委員長でなれていますから、竜瀬さん」

紫餡「構いません。先生、わたしは延原先生に全権委任します。指宿君?」

義斗「僕は委員長に同意します」

剛「義斗が言うなら…」


131-4

基茂「ただいま」

八城「おかえりお兄ちゃん」

基茂「磨夢は?」

八城「ちょっと遅くなるって言っていたよ」

基茂「何かあったのか?」

ガチャ

ゆい「兄さああん」

基茂「ゆいゆい、ノックぐらいしてくれよな」

ゆい「嬉しかったのでつい…」

八城「あたしもぉ…ぎゅぅ」

基茂「玄関なんだがここは…でもゆいゆい久しぶりだな」

ゆい「先程まで寝込んでいましたからね。三日会えなかっただけで嬉しいです」

八城「ゆいちゃん、病み上がり?」

ゆい「はい、すっかり完治しましたが」

八城「そうだったんだ、お昼寂しかったよぉ」

ゆい「八城ちゃん、今日からは一緒ですからね」

八城「うん、ゆいちゃんと一緒」

基茂「とりあえず、二人共。磨夢が帰ってこない件についてどう対処するかだが…やしろんは風呂洗ってくれ」

八城「あいあいさー。任せてよ」

ゆい「わたしはベッドメイキングを」

基茂「俺、本屋行ってくるわ」

ゆい「兄さん、待っていますからね」

基茂「やしろんと風呂に入っておけ。じゃあな」

ゆい「ああ兄さん…」


131-5

ゆい「兄さん最近辛辣です」

八城「お兄ちゃんはいつもあんな感じだよ。ゆいちゃん、背中向けて」

ゆい「はい、力をなるべく入れずにお願いします」

八城「ゆいちゃん、背中ちっちゃい」

ゆい「八城ちゃんもでしょう」

八城「あたしは平均的だからね。ゆいちゃん背骨見えてるよ?」

ゆい「そんなに小さいんですか!?自分でも確認したいですが」

八城「こっち向いたら振り向き死するよ?」

ゆい「どんな死に方ですか!?肋でもやられるんですか」

八城「いや、首が…」

ゆい「あっ、はい…言いたい事は何となく分かります」

八城「ゆいちゃん、前は洗えている?」

ゆい「洗えていますよ。両手がありますから」

八城「ゆいちゃん、自分で手加減出来ているの?」

ゆい「身体がやわなら、力も入りませんよ」

八城「ゆいちゃん自虐ネタキタ━(・∀・)━!!!!」

ゆい「見てくださいよ、この細い腕…もうバッキバキでぇ」

八城「試しに折ってみていい?」

ゆい「やめてください、拷問じゃないんですから」

八城「これは拷問じゃない、幼女の戯れだよ」

ゆい「兄さんから教えられたんですか?何から何まで」

八城「いや、ゆいちゃんだよ?」

ゆい「わたしは食事係であって、調理係ではありません」

八城「調理なんてしないよ。ちょっとだけ…」

ゆい「腕の骨を折るなんてちょっとと言えませんよ!?」

八城「ゆいちゃんはお堅いナァ…」

ゆい「暴力反対ですッ」

八城「暴力なんて通り越している気がする」

ゆい「虐待ですね」

八城「とりあえず頭を洗おうよ」

ゆい「作業そこで止まってました!?」


131-6

八城「あっ、お兄ちゃんおかえりー」

ゆい「首尾は如何ですか」

基茂「道中磨夢と出くわす事なかったな。その様子だと…まだ帰っていないか」

ゆい「お腹空きました」

基茂「お前に食わせる人肉はねぇッ!」

ゆい「ふぇぇ…まだ何も言ってませんよぅ」

八城「冷蔵庫にあったような…」

ゆい「磨夢さんの買い置きですか!?」

八城「まみーもその店知ってたんだ!?」

基茂「確か会員制だったよな…」

ゆい「あの店、磨夢さんが教えてくれたんですよ?店長と顔見知りだとか言っていました」

基茂「そうだな。式神様箱入り娘だったゆいゆいが自ら外界の事を知る筈ないよな」

ゆい「そうですね…わたし昔から式神様と二人で、磨夢さんが来ない限り碌に人の相手をしていなかったですし」

八城「ゆいちゃん、昔はそこまで人を会うのを避けたの?」

ゆい「一応参拝客の方には会っていましたが、殆ど会っていないのに等しいですね。挨拶もままならぬ状況でしたから」

八城「へぇ、苦労したんだね」

ゆい「磨夢さんとだけ関わっていたらそれが悪化すると云いますか…ねぇ兄さん」

基茂「あぁ、そいつは言えているな。あの独特な気を放たれたら、他者にもそれを求めてしまい、普通の人間と話せなくなる」

ゆい「わたしは学校にすら行ってないので、今のちるさんみたいでした。ちるさんはどうしてあんなのに?」

基茂「余程人間関係に問題でもあったのか、病院通いだったからじゃないか?」

八城「どちらも当てはまりそうだね」

ゆい「そうですね。特に後者は間違いないと思えます。人と接する機会がなかったのではないかとおもいます」

八城「でもそれで人間コワイになるの?」

基茂「看護師さんは優しくても、お医者さんに問題があったとかか?」

ゆい「健康診断とかこつけて助平なお医者さんでしたか?ハッ…ちるさんは経験が」

八城「真面目な顔して触ってくる紳士さんとか?」

ゆい「それもあり得ますね。でもその場合心理的外傷を負わないと思いますよ?」

基茂「触られるのに鈍感になる。それもそれで美味しいな」

八城「お兄ちゃん、鼻血…」

基茂「…お、俺とした事がッ!」

八城「でもそんなお医者さんも目覚めたら捕まっちゃうよね」

ゆい「お医者さんもひんぬーに興奮する事はあるんですね」

八城「案外女の人だったり」

基茂「成程、それなら性に鈍感でいられるな」

ゆい「兄さんは黙っていてください」

基茂「ゆいゆいにだけは言われたくないな…」

八城「お兄ちゃん待って、行かないで」

基茂「わーってるよ。それぐらいで俺は落ち込まないさ」

ゆい「兄さんもわたしの仲間だったんですね。嬉しいです」

基茂「…やっぱり部屋行っていいか?」

八城「あーどうぞご自由に」

ゆい「兄さん、まだ行っちゃダメです」

基茂「ゆいゆいが言うと別の言葉に聞こえるな」

ゆい「わたしまだ言ってないですよ…兄さん」

基茂「何でだろう、表記は間違ってないのにな」

八城「表記?」

基茂「ああすまん、こっちの話だ」

ゆい「うにゅにゅ…」

八城「ゆいちゃん、ヨシヨシ」

ゆい「八城ちゃん…ぶべぇぇん」

八城「ヨシヨシ」

基茂「やっぱり俺が居たら邪魔か」

ゆい「…そんな事ありませんよ。兄さん居なかったら八城ちゃんが賢くなっちゃうので寧ろ兄さんが居てくれた方が良いです」

八城「えっ、何、嫉妬?」

基茂「その調整役が俺しかないのか…仕方ない、留まろう」

ゆい「というのは冗談ですが」

八城「でも馬鹿じゃないよね?」

ゆい「八城ちゃんはお婆ちゃんですからね」

八城「なになに、あたしにまた面白い話を聴かせてくれるのかね?」

ゆい「今まで散々話した気がしますけど」

八城「あら。そうかのぅ…あたしも少し呆けたのかのぅ」

基茂「やしろんがボケるのって珍しいよな」

ゆい「兄さんの方がよっぽどですよ?」

基茂「俺の弱体化の大抵はゆいゆいのお蔭だな」

ゆい「磨夢さんに教育されたんでしょう?ゆいが居るからこれからツッコミに回れって」

基茂「ゆいゆいの存在自体にツッコむ俺」

八城「ゆいちゃん自体に物理的にツッコむお兄ちゃん」

ゆい「物理的だなんて兄さん…兄さんなら構いませんが」

ジーッ

基茂「やめろゆいゆい社会の窓を開けるんじゃない」

ジーッ

ゆい「何故戻すんですか?お互い全てを晒しあった仲じゃありませんか」

基茂「やしろんが居る」

八城「ん、あたしお邪魔かな?じゃあお部屋に戻るね」

基茂「ま、待ってくれ、やしろん。お前が居なくなったら俺は…」

ゆい「兄さん、わたしはいつでも行けますよ?」

八城「ごゆっくりーん」

基茂「ああ、行ってしまわれた…」

ゆい「兄さん、お願いしますね」

基茂「この性欲の塊が…」

ゆい「兄さんも始まったら激しいじゃないですか」

基茂「何も言えねー…仕方ないな、ゆいゆい。脱げ」

ゆい「はい、兄さん。兄さんの為なら喜んでご奉仕します」


131-7

prrr

八城「お兄ちゃんの携帯電話が鳴ってる…まみーからかぁ。出ちゃおっと。よいしょっと、このボタンだっけ?」

ピッ

磨夢「その声は八城」

八城「いやまだ喋ってないからね?」

磨夢「訂正。出るのが遅かったから」

八城「あたしPC派だからこういうの慣れなくて」

磨夢「基茂はガラケ」

八城「そうだけど…何か、ねぇ」

磨夢「固定機の方に掛けたら良かった?」

八城「それもそれで…不味い気がするけど」

磨夢「二人が取り込み中?」

八城「まあそんな感じだよね」

磨夢「あの二人は結婚すればいい」

八城「お似合いだけど、年の差が…ね?」

磨夢「知ってる?ゆいはああ見えて18歳以上」

八城「でないと困るよね。二人が何しているか全く分からないから何とも言えないけど」

磨夢「ヒント、ゆいはお腹が膨らんでいない」

八城「あの二人は程度を知っているのかな。それでも不可ないよ?」

磨夢「ヒント2、この町は無法地帯」

八城「須丸さんは一体…」

磨夢「八城の事件以降、治安維持組織は形骸化している」

八城「あれが須丸さんを見た最後の姿だった」

磨夢「彼はまだ現役」

八城「だよねー。もしくは風俗に関心ないとか?」

磨夢「少子化の今、避けては通れない道になっている」

八城「我が国も大きく進歩したんだねぇ」

磨夢「だから八城も基茂と交わる日が…」

八城「あたしは純粋な幼女だよ」

磨夢「幼女は自分の事を幼女と言わない。本来なら」

八城「仕方ないよ。覚えちゃった事なんだから」

磨夢「八城さん10歳」

八城「ん?あたしは一桁だった気が」

磨夢「そう思う?」

八城「うーん…どうなんだろう」

磨夢「正確な年齢は不詳」

八城「みんなお互い様だよ」

磨夢「基茂は?」

八城「お兄ちゃん実は留年しまくっていたりして」

磨夢「ありえる」

八城「あれ、そうなの?」

磨夢「どこかの学校から追放された」

八城「お兄ちゃんならありそう」

磨夢「学園追放?」

八城「不法入学?」

磨夢「嘉寿夫の権力で」

八城「おじさん権力ないよね」

磨夢「八城の権力なら分かる」

八城「お兄ちゃんが入学したのはあたしに会う前だけど?」

磨夢「実はその前に会った事がある」

八城「記憶に無いなぁ」

磨夢「そう」

八城「ところでどっから掛けてるの?」

磨夢「羽衣ネットワーク管理下第360区245番」

八城「ゆいちゃんの権力」

磨夢「電話代も掛からない」

八城「ナイス無線機」

磨夢「羽衣ネットワーク管理下に於いては音質も高く保たれる」

八城「ゆいちゃん、もう巫女やめていいよ」

磨夢「ゆいから巫女を取ったら何が残る?」

八城「骨と皮と性欲と肉食」

磨夢「ゆいは食屍鬼」

八城「きっと誰にも止められなくなるね」

磨夢「性欲?」

八城「うん。今の流れでよく分かったね」

磨夢「基茂に止められないなら、その時点で手遅れ」

八城「お兄ちゃんはツンデレだから仕方ないよね」

磨夢「基茂は甘い。それ故にゆいに支配されてしまう」

八城「ちるお姉ちゃんという正妻が居ながら…あたしゃあ、そんな子に育てた覚えはないよ」

磨夢「あれは基茂の本能。故に他人にどうこう出来るものじゃない」

八城「あたし考え変えた。あの二人は結婚していいや」

磨夢「但しちるは死ぬ」

八城「ちるお姉ちゃんルートは簡単そうに見えるけど、ゆいちゃんが絡むと途端に面倒臭くなる。確率的にはどうだったの?」

磨夢「ほぼ確実。わたしはゆいを見抜いていた」

八城「何で止めなかったの?」

磨夢「恋人と愛人は違う」

八城「うーん、そうなのかなぁ」

磨夢「つまりちるとは交わらない」

八城「どうなるんだろうね。今後の展開に期待って所?」

磨夢「ん、わたしでも今のは断定出来ない」

八城「そこがちるお姉ちゃんルートの醍醐味だよね」

磨夢「そういう事」

八城「…ところでまみー、今何処に居るの?」

磨夢「羽衣ネットワーク第366区78番なう」

八城「その表現だとあたしゃあ分かんないよ」

磨夢「謂わば圏外ギリギリ」

八城「何処に居るの?」

ブッ、プー、プー

八城「………」


131-8

八城「お兄ちゃん、入っていい?」

ガチャ

八城「ゆいちゃん」

ゆい「………は、何でしょう?」

八城「お兄ちゃんは?」

ゆい「兄さんはまた磨夢さんを探しに行きましたよ」

八城「そうなの。ところでご飯食べていないんだよね」

ゆい「はい、体力浪費しただけですからね」

八城「お兄ちゃんは、そのまま出ていっちゃったのかぁ」

ゆい「兄さん、わたしを毛布にくるんで出ていきましたから」

八城「ゆいちゃん、服着ないの?」

ゆい「もう少し休んでたからにします」

八城「ふぅん…」

ゆい「それで兄さんに用事って?わたしに話しても仕方ありませんけど」

八城「まみーから連絡あったんだけどね。途中で圏外ギリギリって言って切れちゃったの。何かあったらどうしたらいいのかって話だよ」

ゆい「それ兄さんの電話で出たんですか?」

八城「うん、鳴っていたから。あたしが代わりに出たよ」」

ゆい「兄さん、無線機持っていきましたっけ?」

八城「羽衣ネットワークってさ」

ゆい「八城ちゃん、その名前を知っているんですか?」

八城「いや、さっきまみーから聞いたばかりだよ。具体的にどんななの?」

ゆい「携帯電話から無線通信機まで契約するだけで、一定の区域内であれば送受信無料でお届けしているサービスです。値段もお手軽の定額です。単純なものですが、この町の殆どの方に加入して戴ておりますよ」

八城「独占でもないんだよね」

ゆい「そこの所は自由ですね。他のネットワークを利用されている方もいます」

八城「その支配人がここに裸に毛布で横になっているんだね」

ゆい「やっぱり着た方が良いですかね」

八城「あたしので良かったら着る?」

ゆい「八城ちゃん、基本的にパーカーにスカートですよね。でもパーカの丈が長くて履いてないとかよく言われるんですね」

八城「えっ、履いてないのはゆいちゃんじゃないの?」

ゆい「履いていますよ、一応。付けてないだけです」

八城「ちるお姉ちゃんも無意味に付けているというのに」

ゆい「わたし達には必要無いですよ」

八城「お兄ちゃんの学校ってひんぬーは少数派なんだよ」

ゆい「巨:普:微:貧=2:5:2:1でしょう。これをどう思うかは知りませんが」

八城「その普通が結構ある方らしいんだよ。かすむん程けしからんくないけど」

ゆい「霞さんは補正受け過ぎですよね。色々と」

八城「まみールート真っ最中ってのがなんといっても強い。お兄ちゃんですら成し遂げられない偉業だよ」

ゆい「昔の話を聞けば兄さんも磨夢さんと一緒に寝たとか」

八城「お兄ちゃんは共に寝るのは得意だからね。流石に同じ布団にというのはゆいちゃんとちるお姉ちゃんくらいだけど」

ゆい「八城ちゃんは無いんですね?」

八城「あたしゃそこまでようやらんよ。ゆいちゃんは若いからのぅ」

ゆい「八城婆さんもすっかり老け込みましたね」

八城「かつてのあたしは若かったッ!」

ゆい「いや今も若いんじゃないんでしょうか!?」

八城「そりゃ見た目で分かるよね、うん…」


131-9

基茂「駄目だ、何処にも居ない」

八城「お兄ちゃんおかえりー」

ゆい「おかえりなさい。あ、な、た」

基茂「やしろん、電話繋がらんか?」

ゆい「あれ、兄さん無視ですか!?」

基茂「はは」

八城「一度連絡あったけどそれ以降は…」

ゆい「あっ、内容は斯く斯く然々だそうです」

基茂「マスターん所も訪ねてみたが見てないって話だからなぁ。その電波途絶えたのが気になる」

ゆい「つまり、電池が切れたか当ネットワークの管轄外に居るという事になります」

基茂「やしろんが電話に出た時から今まで…帰ってこれる距離に居ないのだろうか」

八城「野宿しているか監禁されているか?」

基茂「後者は無いと思う。自称人外なら容易に危機を脱する能力を有しているだろう」

ゆい「前者は微妙ですね。しかし磨夢さんを匿ってくれそうな知り合いなんて聞いた事ありませんし」

八城「警察に指導受けたとか?」

ゆい「あの人一応警察ですよ?臨職ですが」

八城「そういえばそんな話も聞いたような」

基茂「でもあり得そうだな、あの外見なら」

八城「今頃カツ丼食べているのかなぁ」

基茂「そう思ったら何故か安心出来るな」

ゆい「わたしも食べたいです」

基茂「ゆいゆいはもう満足しただろう?」

ゆい「あっ、えっと…その、兄さん」

八城「第二幕?」

ゆい「そ、そういえば八城ちゃん、磨夢さんが報告した中にネットワークの地点なんかは?」

八城「ちょっとメモしたのがこの二つだよ」

ゆい「これは徒歩じゃありませんねぇ…輸送でしょうか?」

八城「1区が大きいの?」

ゆい「はい。こういう経路の後、電波が途絶えたんですね。それから連絡も無い訳です。んー…あの辺りが怪しいですね」

基茂「大体目星は附いているのか?」

ゆい「はい、時間的に考えると」

八城「安全な所なの?」

ゆい「安全と云えば安全ですがこの時間帯ですからね」

八城「一人肝試しとか?」

ゆい「磨夢さんならやりそうです」

基茂「あいつ基本的に孤独な存在じゃねーか」

八城「モブ以外はみんなそうなるよ」

基茂「個人を目立たせる為には仕方のない事なのか」

ゆい「あくまでわたし達目線ですよね」

八城「ところでもし本当に肝試しだったら…」

ゆい「きっとそうですよ。もう寝ましょう」

八城「ゆいちゃん帰んないの?」

ゆい「もしかしてわたしの神社へ来ると思っています?」

基茂「こっちに戻る気がないならその可能性も無きにしも非ずだな。ということでまた明日だ」

八城「おやすみ、ゆいちゃん」

ゆい「いやちょっと待っ…」

基茂「俺たちも寝るからさ」

ゆい「外、真っ暗なんですけど」

基茂「ゆいゆいなら行ける」

ゆい「やめておきます。磨夢さんもわたしの神社に着けば、電話使えますし」

八城「なら、じゃんけんしよう」

基茂「よし、じゃーんけーん…ぽん」

ゆい「勝ちました…けど?」

基茂「勝者は不寝の番だ。頼むぞ」

八城「おやすみ、ゆいちゃん」

ゆい「ああ、ああ…」

蕨(ゴシゴシ

ゆい「蕨ちゃん、わたし寝れないんです…えっ、一緒に寝る?別に構いませんが」

蕨(…クゥ

ゆい「蕨ちゃん」

蕨「?」

ゆい「朝、兄さんの部屋に突撃です」

蕨(コクリ


131-10

基茂(ちょっと暑いな…またゆいゆいか?)

チラッ

基茂「蕨まで何を…」

ゆい「兄さん、おはようございます。今回は蕨ちゃんもご一緒に入らせてもらいました」

蕨(ニコッ

基茂「左右やられると金縛りにあったみたいだった」

ゆい「わたしは上ですよ?」

基茂「だからはだけてるんだな」

ゆい「布団の中で屈む上での宿命です」

基茂「ゆいゆい、おとなしくしろ」

ゆい「きゃっ、兄さん。急に抱き締めたりして大胆です」

基茂「部屋の前まで来ている」

ゆい「えっ」

磨夢「………」

基茂「おかえり、磨夢。みんな心配していたぞ。オレも二三度探しに行った」

磨夢「心配掛けて悪かった」

基茂「一番心配していたのはやしろんだ。礼はそっちに言ってやれ」

磨夢「ん、分かった」

スタスタスタ

基茂「ゆいゆい、もう良いぞ」

ゆい「いえ、まだこのままで」

基茂「無いもので挟もうとするな」

ゆい「将来きっと後悔しますよ」

基茂「ゆいゆいよかやしろんの方が成長の見込みはある」

ゆい「見込みだけでは未来を測れないものです。わたしも兄さんの為に努力すれば」

基茂「人工的なものより自然的である方が好きだ。小さければ猶良い」

ゆい「やっぱり兄さんは兄さんですね」

基茂「きょぬーなんてかすむんとメイドさんしか知らねーな」

ゆい「兄さんは相変わらず顔が狭いんですね」

基茂「学校行っても基本的に昼以外起きていないからな」

ゆい「新しい出会いなんかは?」

基茂「現状維持で増えはしないが、減りはするだろう」

ゆい「兄さん、それ維持出来ていませんよ?」

基茂「去るもの追わず。いつ関係が途絶えるも、いつ不慮の事故に見舞われて命を失うもそれが運命なんだよ」

ゆい「一年経てば関係が絶える事はありますね」

基茂「一年限りの契約ってのはなぁ…俺たち学生にゃあよくあるな。一年の時に気さくに話してくれた奴は一体どこに」

ゆい「兄さんの記憶から無くなれば良いですよね、そういう人」

基茂「ゆいゆい、えらく厳しいな」

ゆい「記憶の整理は大事ですよ。八城ちゃんを見習ってください」

基茂「記憶喪失を見本にするのはなかなか大変だぞ」

ゆい「あれぐらい過去を吹っ切れば良いんですよ。八城ちゃんの過去の良し悪しはわたしに判別出来ませんが、どちらにしろ忘れたら心機一転やり直せますよ」

基茂「嫌な思い出だけ忘れられれば、それに越した事は無いけどな」

ゆい「兄さん、日曜大工セット持ってきますね」

基茂「馬鹿野郎、やめろやい」

ゆい「兄さん、刃物持った磨夢さんに起こされる時、嬉しそうじゃありませんか」

基茂「悪寒しかしないんだが」

ゆい「刃物とわたし、どっちが良いですか?」

基茂「目覚ましやしろんが一番だな」

ゆい「ほ、他の幼女をッ!」

基茂「磨夢とゆいゆいは目覚ましに相応しくない」

ゆい「でも起きられるんですよね?」

基茂「もうちょっと優しくというか…」

ゆい「わたしは優しく起こしていますよ?」

基茂「下の処理は不要だ」

ゆい「でも兄さん、いつも気持ち良さそうに起きていますよ?素直なんですから」

基茂「くっ…」

ゆい「兄さん、えっちです」

基茂「お互い様だな」

八城「へい、お兄ちゃん。ご飯出来たってよ」

基茂「ああすぐ行くぜ。さあゆいゆい…蕨はどうしようか」

ゆい「起こさない方が良いと思いますよ」

基茂「俺の布団なんだが仕方ないか」

ゆい「兄さん出てるものをしまってくださいね」

基茂「既にしまっているさ」


131-11

八城「結局まみーは何してたの?」

磨夢「深夜徘徊」

基茂「いや、それは全員知っている」

磨夢「実のところ、自殺を眺めていた」

八城「へぇー」

ゆい「それでその肉は?」

磨夢「ん…忘れてた」

ゆい「まだ残っていますかね」

磨夢「分からない。只暗所であるから簡単には見つからないと思う」

八城「電波が切れる程だもんね」

磨夢「あれは電池が切れただけ」

八城「えっ」

ゆい「でも電池があっても、電波は切れたんですよね」

磨夢「ん、ゆいの電波は飛んでいなかった」

基茂「まるで、ゆいゆいが直接電波を飛ばしているみたいだな」

ゆい「わたしは電波じゃありませんよ。ねぇ、八城ちゃん」

八城「なに言ってんの?」

ゆい「ふぇぇ…八城ちゃんまでわたしの事を頭おかしいって思っているんですかぁ」

基茂「でも最近頻度は減った気がする」

ゆい「最近はおとなしくしていますからね」

磨夢「そしてゆいも口数が減っていく」

ゆい「いや口数は関係ないと思いますけど?」

基茂「磨夢、その事件警察に連絡しておくか?」

磨夢「お好きにどうぞ」

ゆい「生肉は問題ありますからねぇ」

磨夢「しっかり火を通せば何とかなる」

ゆい「多分死臭むんむんですよ?」

八城「お兄ちゃん、ゆいちゃんはいつもムラムラだよね」

基茂「やしろんの親友だろ、何とかしろよ」

八城「親友…だっけ?」

ゆい「八城ちゃん、今朝は冷たいですね」

八城「何でかな。ゆいちゃんお風呂に入った方が良いよ」

ゆい「兄さん、一緒に入りましょう」

基茂「一人で行っとけ」

ゆい「一人じゃ寂しいんですよ」

八城「あたしは入らないよ?」

磨夢「………」

基茂「あー…」

ゆい「兄さん、満場一致ですよ」

基茂「反論無しとはまた何ちゃるか」

ゆい「朝から兄さんと一緒に…二人っきりでお風呂♪」

磨夢「そういえば八城、蕨は?」

八城「見てないよ。どっかで寝ているんじゃないかな」

磨夢「そう」

八城「らびぃはどこでも寝られるんだよね」

磨夢「布団が有るならどこでも可能」

八城「寝袋じゃない所がらびぃっぽいね」

磨夢「蕨はまだサバイバルを受けていない」

八城「…何であたしを見たの?」

磨夢「八城、サバイバル仲間」

八城「まみーもそんな人生送っていたの?」

磨夢「特に不自由も無かった。ゆいと会うまでは」

八城「ゆいちゃん…」

磨夢「逆に云えばゆいのお蔭でわたしは目覚めた」

八城「百合に?」

磨夢「それは霞」

八城「まみーはゆいちゃんの事好きじゃないの?」

磨夢「嘗て純潔であったゆいなら」

八城「純潔なゆいちゃん?そんなのってないよ」

磨夢「今のゆいは薄汚れている?」

八城「だからお風呂を勧めたのよさ」

磨夢「そう」


131-12

ゆい「兄さん、このボディソープヌルヌルしますよ」

基茂「何で家にそんなものが」

ゆい「わたし、えっちな気持ちになってしまいます」

基茂「俺は普通の石鹸使っとくな」

ゆい「兄さん、わたしのここ固くなって…」

基茂「ちょっと今目開けられない」

ゆい「はぁ…ん、はぁ」

基茂「何してんだ?」

ゆい「何しているか分かりますか?」

基茂「出来たら分かりたくないな」

ゆい「兄さん、頭流しましょうか?」

基茂「いいよ、自分でやるから」

ゆい「兄さん、最近磨夢さんに似てきていません?」

基茂「逆に何故ゆいゆいが、こういう性格にならなかったのかと」

ゆい「兄さんと話したい、あんな事やこんな事もしたい。そういう潜在的な欲求が兄さんと出会って解放されたんですよ」

基茂「告白に見えて告白じゃないな」

ゆい「兄さん、わたしはあなたが好きです」

基茂「性的な意味で」

ゆい「ちるさんとは違った愛情の形容ですよ」

基茂「ゆいゆいの愛情は異常なものだ」

ゆい「その割に兄さんのブツは…」

基茂「だからそこを見るんじゃねぇよ」

ゆい「兄さん、本当は見えているんじゃないですか」

基茂「実は俺は視覚の余りに透視能力があって、目を瞑ったままでもそれを見る事が出来る」

ゆい「わたしの桜の蕾は?」

基茂「無いものは見えない」

ゆい「手術もしていませんよ、わたし」

基茂「だが見えにくいに変わりないな」

ゆい「ではこうすれば…」

基茂「無理するな、折れるぞ」

ゆい「まあ兄さん、八城ちゃんみたいな事を言うんですね」

基茂「改めて貧相だよな」

ゆい「兄さん、頭流しますよ」

基茂「ああ、もう好きにしてくれ」

ザバーン

基茂「わたしは新世界の夢を見てしまったのだ」

チャポン

ゆい「今度大阪に行きたいですね」

基茂「ゆいゆいみたいなのが行ったら即死するぞ」

ゆい「わたしに串カツすら恵んでくれないんですか!?」

基茂「土産に出来たら良いけどな」

ゆい「兄さん、修善寺に行きましょう」

基茂「三島からローカル線があるんだっけな。しかし風呂に入りながら温泉の話をするのか」

ゆい「わたしはあくまで旅行の話をしているんです」

基茂「でもゆいゆい、この町出た事ないんだろう?」

ゆい「だから近場が良いですか?兄さん、初めてでも足を伸ばしても良いと思いますよ」

基茂「いや、オレは十分足を伸ばしているぞ」

ゆい「兄さん、そこまで伸ばすとわたしの場所がありませんけど」

基茂「それもそうだな」

ゆい「それで話を戻しますが、何ならソープでも」

基茂「ゆいゆい、例え18歳以上であっても外見で間違えられる事はあるものだぞ」

ゆい「わたしの事、18歳以上だと思っています?」

基茂「全く」

ゆい「これだから兄さんは童貞…でしたっけ?」

基茂「奪った本人が訊くなよ」

ゆい「最近物忘れが激しいんです」

基茂「昨日の夕飯は?」

ゆい「主食は兄さん、美味しかったですね」

基茂「オレは腹減っているなぁ」

ゆい「兄さん、わたしじゃ満足出来ないって云うんですか!?何でしたら、ちるさんに睡眠薬を大量投与して…」

基茂「貴様は何を考えているんだ?違う、飯食ってないからだよ」

ゆい「兄さん、お風呂で叫んだら磨夢さんに聞こえますよ?」

基茂「大丈夫だ。オレ基本声小さいし」

ゆい「だから兄さんは童貞じゃないんですよ」

基茂「ゆいゆいの方がうるさくね?」

ゆい「いえ、兄さんの方がうるさいです」

ガラッ

磨夢「………」

基茂(口笛)

ゆい「兄さん、自分だけ逃げようなんて卑怯ですよ」

磨夢「別に何もしない」

ゆい「肉体的危害は加えないんですね?」

磨夢「ゆい、後で拷問部屋に」

ゆい「…はい?」

磨夢「別に何もしない」

ゆい「磨夢さん、わたしを痛めつけたいのですか?でもそれは無駄ですよ」

磨夢「だからゆいには何もしない」

ゆい「もしかして…」

磨夢「ゆいが考えている通り。ではごゆっくり」

ピシャン

基茂「…誰を拷問に掛けるって?」

ゆい「悪人ですよ。俗にまみれた」

基茂「誰かを襲おうとしたのか?」

ゆい「通り魔ですね。隣町で数人殺した」

基茂「そいつの逃亡先がこの町だったのか」

ゆい「バイクで逃走していたんですけどね。運悪く磨夢さんに見つかって、そりゃ虫の息ですよ」

基茂「それ以上苦を与える…か。磨夢も残忍なやつだな」

ゆい「磨夢さんの氷の精神はそうやって培われたんですよ。さあ、そろそろ良い時間ですね。上がりましょうか」

基茂「あ、ああ…」


131-13

八城「お兄ちゃん、何であたしとらびぃを連れ出したの?」

基茂「お前ら二人にあんなものは見せられない」

蕨「?」

基茂「で、どこへ向かうか」

八城「お兄ちゃんの学校」

基茂「そういえば学校だったな。磨夢に電話…出るか?」

prrr

磨夢「ん?」

基茂「おっ、磨夢か。可能ならオレの鞄を頼む」

磨夢「分かった」

ガチャ

基茂「まだ時間があるな。しかしどこも開いていない」

八城「まだ4時5時だよ?」

蕨「………」

基茂「蕨、眠いならおんぶしてやろう」

蕨(ピョン)

八城「じゃああたしは抱っこね」

基茂「やしろんは歩け」

八城「何ぇぇぇぇぇぇ!?」

基茂「とりあえず公園目指すぞ」

八城「うん」


131-14

玄那「やあ、先輩」

基茂「おっ、クロちゃんどうした。寝たのか?」

玄那「20時間は寝たな」

八城「クロちゃんの昨日」

玄那「昨日起きたら9時だ。学校なんて行ってられない」

八城「クロちゃんってサボんだね」

玄那「一昨日の体育で脚がイカレたからな。仕方ない」

基茂「走ったのか?」

玄那「うさぎ飛び100m走。ちなみにわたしだけな」

基茂「なーにやってんだか」

玄那「通り魔に遭遇した時の特別メニューだと先生が」

八城「どんな先生だYO」

玄那「わたしの心に宿る大先生だ。つまりわたしだ」

八城「うっわぁ…」

基茂「クロちゃんはきっとハブられたんだ」

玄那「霞が何故か居なかったんだ。それでわたしは自主練をしていた」

基茂「体育で自主練ってなぁ…」

玄那「体育の教師は買収済みだ。自由にやっていいんだ」

八城「何で買収したの?」

玄那「ビンゴ大会で当てた自転車」

基茂「それはやるものなのか」

玄那「わたしは自転車を使わない主義でね」

基茂「昔からこの町に居るのにか」

玄那「ちっちゃい頃に2tトラックとぶつかってなぁ。それ以来トラウマ」

八城「クロちゃんは無事だったの?」

玄那「気付いたら荷台に乗っていたな。これが危機回避能力というものかと思って家まで送ってもらった」

八城「自転車はヨッシーだったんだね」

玄那「あの自転車は、アスファルトに吸収された。きっとミミズの如く干からびたんだな」

基茂「それはスクラップされただけだな」

玄那「形見はいつでもポケットに。ほうらベルだ。もう鳴らないけど」

八城「ベルだけはお気に入りだったの?」

玄那「わたしとベルは切っても切れない関係だ。自転車初代から友達だ」

八城「ベルって名前だけ聞くと外人さんみたいだしね」

玄那「おお、ベル。お前は外国人女性だったのか!しかしすまない、わたしに英語は分からない」

基茂「クロちゃんってそんなに優秀でもないんだな」

玄那「ああ授業はまともに受けていないともさ。わたしは常に自分の事しか考えていない」

基茂「同意」

八城「どぅーい」

基茂「やしろんは結構世話焼きじゃないか?」

八城「いや、あたしは友達少ないんでね」

基茂「昨日の発言力は一体…」

玄那「昨日何かあったのか?」

八城「まみーがね、今朝になるまで帰ってこなかったの」

玄那「先生も夜遊びしたい年頃なんだろう。今日先生授業あるのか?」

基茂「あるとしても昼からだろう。でなきゃ、あんな事ぁやらねぇ」

八城「まみーの夜更かしって結構多いような」

基茂「通常は週末だから違和感はあるな」

玄那「先生は週末論者だったんだな」

基茂「週末について語られても困るぜ」

八城「何か良い時間な気がするよ」

基茂「クロちゃんはこのまま学校に向かうのか?」

玄那「荷物持ってないし、一旦帰らなければいけないな」

基茂「そうか、じゃあまたな」

八城「あたし達は帰った方が良いかな」

基茂「ならオレも戻るか」


131-15

ガラッ

純治「おう、おはよっす。朝からしんどそうだな」

基茂「正確に云うと昨夜からだ。色々あったんだ」

純治「まあ、無理すんなよ。疲れたら伊崎も保健室行きだ」

基茂「その時一人だったら寂しいな」

純治「保健室の先生なんて都市伝説だろう」

基茂「生徒は生徒同士で助け合う…か。生徒中心ってのは悪くないけどな」

純治「ここは是非ともかすむんにナース服着てもらおうぜ」

基茂「まさにあのないすばでぃに似合う服装ではないかッ!」

霞「先輩…?」

基茂「何故こっち来たし」

霞「ゲームの貸借ですよ。誰も居なければ素通りする所でしたが、そう思って戴けるとは光栄ですね」

純治「かすむん、サインくれ」

霞「既にサイン済みのボールです」

純治「あざっす」

基茂「誰かと思えばイチローか」

霞「野球選手でもないだろうってツッコミは無しですか!?」

純治「その前に箱むき出しでPCゲ持ってきてんのに驚きだぜ」

基茂「俺はこのままでも構わないが」

霞「わたしは先輩の気持ちをよく理解していますからね。注文通りと云う訳です」

純治「ここは一応学校だぜ。外部の組織なんだ。あ、でも…」

霞「はい、お昼の放送は完全に趣味の曲流しています」

基茂「青春禁止令流した時は笑ったな」

霞「電波はなるべく控えていますけどね」

基茂「かすむんも常識人だぞ、佐竹」

純治「ああ、オレがどうかしてた」

基茂「異端は佐竹だからな」

霞「佐竹先輩は基本的に話す相手居ませんよね」

純治「かすむんはともかく…伊崎には言われたくないな」

基茂「幼女と一つ屋根の下で過ごしていると常識なんて無くなるぜ」

純治「伊崎、お前が一番異端だッ!」

霞「伊崎先輩は悟ったんです。佐竹先輩も自分に正直になりましょう」

純治「そうだ、オレたちは仲間だ。数少ない無外交勢力だ」

霞「何の気無しにわたしも同類扱いしようとしていますね。構いませんけど」

純治「ところでクロちゃんはまだ来てないのか?」

霞「まだ来てないみたいですよ?」

基茂「朝に会ったから来ると思うけどな」

純治「朝っていつなんだ」

基茂「四時五時台」

霞「クロちゃんも悪い子ですねぇ」

基茂「早起きとは思わないんだな」

霞「先輩の家が珍しいだけですよ」

純治「そうだぜ、伊崎の所は早すぎる」

基茂「一人だけ夜更かしも悪いと思っているからな」

純治「そういう時こそパソコンに向かって…だな」

基茂「朝型だから朝にやっているな。見られても構わないし」

純治「全員理解者という悲劇」

霞「寧ろ、話題が広がっていいんじゃありませんか」

純治「そんな顔しているぜ、伊崎」

基茂「寛容過ぎて客が来る時しか隠す必要がないんだよな」

霞「…そろそろ集まってきますかね」

純治「ああ、そんな気がするぞ」

霞「という事で感想お願いしますね」

基茂「了解だ」

純治「それ、同人か」

基茂「最近作る側の人間になったそうだ。ちなみに声優は企業秘密」

純治「声優入れちゃ駄目なんじゃないか?」

基茂「大丈夫だ。まだ制作途中だから非エロだ」

純治「まずシナリオありき、加筆エロかよ」

基茂「ああ、楽しみだ」

純治「待て、箱のやつは?」

基茂「これは普通の奴だ。同人はディスクだけの方」

純治「ややこしいな」


132-1

霞「お昼ですね、クロちゃん」

玄那「…そうだなぁ」

霞「今日の放送、何流しましょうか」

玄那「適当に流しとけば良いさ」

霞「現に放送室ですよ?」

玄那「…ハッ、さっきまで教室に居たんじゃなかったのか!?」

霞「ではOPはこれで行きましょう」


132-2

玄那「消えろ飛行機雲ー」

霞「悪くはないですよね。後消えるですよ?」

玄那「悪くはないな、うん」

霞「さあ始まりました。最近試験の必要性を追究しているかすむんと」

玄那「クロちゃんでいいや」

霞「クロちゃんはクロちゃんですからね。皆さんもクロちゃんと呼んであげてください。外見は帽…」

玄那「わたしを全校生徒に知らせる必要はないだろう?」

霞「そうですか。クロちゃんは人見知りですからね。さて…水曜日でしたっけ?今週も折り返し地点の水曜日を迎えました。今の気持ちを一言」

玄那「明日と明後日行ったら休みだ。みんな、張り切っていこう」

霞「以上クロちゃんでした」

玄那「かすむんは何か無いのか?」

霞「あまり曜日に意義を求めていないので…この放送が月曜日なら言う事は沢山ありましたよ」

玄那「月曜日来るな発言か」

霞「何故月曜日は来るのか、皆さんも気になるでしょう。喜ぶか悲しむかはその人次第ですが」

玄那「わたしは後者だな。積みゲーが山ほどある」

霞「クロちゃんはバイトしていましたか」

玄那「こう見えてわたしは働いているぞ。どこぞのお嬢様とは違う」

霞「この学校にお嬢様は…結構いらっしゃいますね」

玄那「わたしは羨ましい。リアルメイドさんを見てみたい」

霞「メイドさんは実在するんでしょうか。舞妓さんもですね」

玄那「舞妓さんは実在する筈だが、見た事は無いな」

霞「よく言いますよね、外で見る舞妓さんは本物でないと」

玄那「そもそも京都にすら行かないけどな」

霞「という事なんで、メイドさんを雇っている大富豪様と京都に連れて行ってくれる方はお願いします」

玄那「放送局の連絡先を私情に利用したら不可んよ」

霞「では今から申し上げるクロちゃんの電話番号で」

玄那「何故そこでわたしの電話番号が」

霞「全校生徒にバラいてやりますよ」

玄那「現代の情報社会を侮る事勿れ」

霞「クロちゃんは情報社会の渦に飲まれるがいいッ!」

玄那「うああ、堕落してしまう堕落してしまう」

霞「ずばり、クロちゃんを知っている人挙手」

玄那「挙げてくれても分からないだろう」

霞「50RTで体育館クロちゃんのロックライブ」

玄那「待て、かすむんが呟いたらあっという間だ」

霞「クロちゃんやってないじゃないですか。だから代わりにわたしが」

玄那「知らない人も挙手するから駄目だ」

霞「ちっ…」

玄那「でもTwitterか…面白そうだな」

霞「botで可いなら作成しましょう」

玄那「わたしの台詞集められるのか?」

霞「まずクロちゃんより始めよ。そういうじゃないですか」

玄那「わたしから始めたら、元も子もないじゃないか」

霞「なら代わりがいたりするんですか?」

玄那「わたしそっくりの人形を持ってきた」

霞「こ、これは…おっもちかえ」

玄那「まだ試作品に過ぎないからな。ただで渡す訳にはいかない」

霞「クロちゃんって男の娘でしょう?」

玄那「だからぁ、わたしは女だって言っているだろう!?」

霞「冗談ですよ…さてお便りのコーナーでもしましょう」

玄那「ウウム、そうだな」

霞「はい、H.Tさん。かすむんこんにちは。はい、こんにちは。いつも教室で食い入るようにして聞いています。ありがとうございます」

玄那「それはかすむん宛てなのか?」

霞「クロちゃんのクの字も書いていませんよ?」

玄那「何故だッ!」

霞「確率の問題ですよ。で、H.Tさんです。最近よく髪の毛をいじられます。ポニテにされたり、イカリングにされたり」

玄那「イカリングか…あのスクイズの?」

霞「そんな感じなんでしょう。それでその事は…嫌ではありません。ただ髪の毛が乱れるのに困っています。H.Tさん喜んでいますよね」

玄那「さあ、嫌と困るについて論議を交わそうじゃないか」

霞「困るというのは一方的な嫌悪じゃないでしょう。多分H.Tさんの場合、もうクロちゃん、やめてよーって感じでしょう」

玄那「ふむ、甚だ遺憾である」

霞「わたしの三つ編みは玩具じゃないんですよ」

玄那「霞の三つ編みはとても可く似合うぞ」

霞「H.Tさんは…普通の髪型みたいですね。そりゃ髪も荒れます」

玄那「霞の三つ編みは解けないな」

霞「母さんに縛られた結果がこれだよ。ああ、これですね多分」

玄那「普段自分でやっていたら分かるな」

霞「でもクロちゃんは短髪ですよね」

玄那「前髪しか伸ばしていないからな」

霞「その前髪ですが、遊んでみたいですね」

玄那「質問内容に戻った戻った」

霞「H.Tさん、嫌なら嫌とはっきり言えばいいと思います。自己の気持ちは突如入れ替わるものですからね」

玄那「情緒不安定なんだな」

霞「まだ時間ありますね。あまり話す事が無いみたいなので、ここでクロちゃん、リクエスト曲をお願いします」

玄那「いや、わたしの意見よりリスナーさんの意見を優先しよう」

霞「クロちゃん、英国擲弾兵とかかけそうですしね」

玄那「いやわたしならジェッティン・テデンを流すが。太鼓もシンバルもうみ先生に頼めばいいし」

霞「生演奏はいいです。撤退しますから」

玄那「何か来ているだろう」

霞「ではK.Oさんのリクエストで流れとよどみを三分程ループしましょう」

玄那「まさかのBGMか」

霞「1ループで別の曲にした方が良いですね。続けてS.Kさんのリクエストでownjusticeです」

玄那「いいぞ」

霞「ジャンボ上井のワンポイントレッスンでした」

玄那「今の一つのコーナーだったのか!?」


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