2017-11-30 13:34:16 更新

概要

chirutan.txt_2の続きです


133

ちる「…ねーさん?」

禰夢「ちるたん、久しぶりだねぇ。相変わらず成長していないのぅ」

ちる「あの…変な所触らないでください」

禰夢「あー、悪りぃ悪りぃ。で、最近どうよ。人と話せてる?」

ちる「あまり、慣れませんね。どうしても上がってしまいます」

禰夢「あいとしかまともに話せんとは困ったもんじゃねぇ。して旦那とは?」

ちる「基茂さん、ですか?話せはしますが、わたし…」

禰夢「付き合って浅いっしょ?その内深まるわ」

ちる「基茂さんとは、仲良くなりたいです」

禰夢「うん人生は長く楽しむもんよ」

ちる「ところでねーさん、お茶欲しいですか?」

禰夢「アイスティーで」

ちる「はい」

禰夢「ちるたんは夢とかあるん?」

ちる「幸せな、家庭…なな何を言わせ…」

禰夢「お幸せにな」

ちる「ふにゅう、ねーさん…アイスティーです」

禰夢「さんくす」

ちる「ねーさんは、その…結婚とかは…考えていないんですか?」

禰夢「ん、ああ全く。これといって目当ての男もおらんし、独身で生涯を全うすっとよ」

ちる「そうですか…ねーさんならてっきり、良い人を見つけているものだと」

禰夢「旅先で出会うっちゃあ出会うけど、一度会えりゃまた数年後。そう同じ場所に長く滞在しなんよ」

ちる「ねーさんはすぐ、何処かへ行ってしまいますからね」

禰夢「この町自体も正直の話、印象薄い。ちるたんと旦那しか知らなもんだし」

ちる「かすむんにも会いませんでしたか」

禰夢「かすむん?そういや前ん来た時そんな子が居たかなァ」

ちる「恐らく、今ねーさんが頭に浮かべている人ですよ」

禰夢「一度会っただけなのに、覚えてるもんやなぁ」

ちる「ところでねーさん今回はどこまで?」

禰夢「トルコ行ってたけど、ちょっと危ないんでドイツ寄って帰ってきたぬ。はい、土産」

ちる「ビール渡しても飲めませんよ」

禰夢「後数年はまたんならんね。そん時になら祝杯あがよ」

ちる「どうなるか知りませんけど」

禰夢「それまで生きてられっかって?ちるたんなら大丈夫。免疫もついとうし」

ちる「ですが、未知の病気を発見したら」

禰夢「その時は旦那が居よる」

ちる「基茂…さん。信じていますから」

禰夢「何かお菓子ねえ?」

ちる「そこにぱりんこありますよ」

禰夢「あんがとさん」


134-1

カランコロンカラン

マスター「いらっしゃーい。るーちゃん今手放せへんから対応頼むわ」

ルイ「はーい。いらっしゃいませ。ヴゼアングロ?」

?「アイムアメリカン」

ルイ「日本語出来ますか?」

アメリカ「カタコトデスガ」

ルイ「とりあえず何か…うーん、わたしお酒分からないし。お客様初めて…ですよね」

アメリカ「ハイ、コチラデハ何ヲ頼メマスカ?」

ルイ「わたしは洋菓子専門です。チョコドーナツでよろしいですか」

アメリカ「ハイ、ソレデオ願イシマス」

マスター「おまたせ。うちがマスター。お客さん、ワイン飲める?」

アメリカ「イエ、ワタシハ学生デスカラジュースデ」

マスター「おっけ」


134-2

マスター「お客さんアメリカの方言うけど、わざわざ日本まで…留学生か。日本語習ってるとこなんや。へぇ…」

ルイ「名前とか分かった?」

マスター「いや、まだ…でもカタコトでも話せる人やなぁ」

ルイ「マスターもポルトガル語勉強する?」

マスター「いや、ええわ。うちこの国好きやし」

ルイ「わたしも居着いちゃったなぁ」

マスター「まああれよ。好きなだけ居たらええよ。うち暫くはこの店やってるからね」

ルイ「別に帰りたい訳でもないんだ。ただ…ううん、何でもないよ」

マスター「まあ、とりあえずあの白人さんと話そうや」

ルイ「そだね」

アメリカ「マスター、待チ詫ビマシタ」

マスター「申し訳ない。ちと手間がかかって」

ルイ「お詫びにドーナツ追加ですよ」

アメリカ「アリガトゴザイマス」

マスター「ところでお客さん、色々訊きたい事があるんやけど…」

アメリカ「アナタタチデモワタシガ気ニナリマスカ?」

ルイ「日本人じゃないから、おかしいですか?」

アメリカ「確カニ、ソレハ失礼シマシタ。ア、ワタシノ名前ハ、マイケル・ガルオディス。ケイドーガクエンニ通ウ留学生デス」

マスター「へーやっぱりあの学校の生徒か。渾名はガルさんで良い?」

ガル「普段ハマイクデスガ、ソウ呼ンダノアナタガ初メテデス。イイデショウ」

ルイ「よろしく、ガル。わたしはルイ。ルゥで良いですよ」

ガル「ルゥ…素敵ナニックネームダ。ナイストゥミートゥ、ルゥ、マスター」

マスター「な、ナイストゥミートゥ」

ルイ「アンシャンテ、マイク」

ガル「オイシイデスネ。コノドーナツ」

ルイ「うん、それミスドで買っ…」

マスター「あぁるーちゃんが作るドーナツは美味いなぁ」

ルイ「ん?…やだなぁ、自家製だよ」

ガル「代金置イテオキマスネ」

マスター「ああ、ガルさん待ってえな!まだ話したい事ある、それはドル札や」

ガル「オー、コレハ本国用ノサイフデス」

マスター「為替市場どうなっとるんや、るーちゃん?」

ルイ「1ドル360円だったかな」

マスター「うちの財布ん中1000円もないわぁ」

ガル「86円グライダッタ気ガシマスヨ」

マスター「そんな円高でもうちにゃあ出せへんなぁ。るーちゃんはどうなん、行けそう?」

ルイ「えっ、わたし?…今回だけだよ?ドル札なんて日本で使わないのに。アミに貰ったのがあるよ。どうぞ、マイク」

ガル「デハコレデ」

ルイ「替えた分は会計になります」

マスター「ガルさん、綺麗に出せたもんやなぁ」

ガル「シーユーアゲイン。オイシカッタデス」

マスター「おおきに。またいらしてな」

ルイ「このお金、誰か両替してくれるかなぁ」

マスター「れーちゃん辺りなら喜んで引き受けそうやな」

ルイ「明日は早めに来ないとね」カランコロンカラン

マスター「あっちの人会計や。るーちゃん入ってきたお客さんの対応を」

ルイ「ウィ。いらっしゃいませ」

客「………」

ルイ(顔面に包帯?)

客「………」

ルイ「これと、これですか?」

客(こくり)

ルイ「畏まりました」

マスター「お客さん、飲み物の方は…あっ、メニュー出した方がいいかな?好きな物をどうぞ」

客「………」

マスター「おおきに」

(厨房内)

ルイ「無口なお客さんって珍しいよね」

マスター「基本的にここに来る人はおしゃべりな人が多いからなぁ。あのお客さんの場合、喋らないというより喋れへんみたいやけど。口にも包帯巻いてはるし息苦しそうやね」

ルイ「とにかく、注文は承ったんで」

マスター「わーたわーた。無害なお客さんなら誰でも好きよ」

(カウンター)

客「………」

マスター「お待たせしましったー。お客さん気になるんやけど、どうして飲みはるん?」

客(シュルッ(口の部分を外す)グッグッグッ…)

マスター「おっ、良い飲みっぷりやなぁ…」

客「………」

マスター「もう一杯飲みはります?おおきに」

ルイ「お待たせしました。いちごショートとモンブランです」

客(カチャカチャ。パクッ)

ルイ「お口に合いますか?」

客(微笑んで親指を突き出す)

ルイ「メルシー。ジュスイコンタン」

客(ロザリオを見る)

ルイ「あっ、これですか?これは曾祖父ちゃんの形見です。大事な物なんですよ」

客(十字架をジェスチャー)

ルイ「クリスチャンかどうかですか?わたしは家がそうなので、とりあえずそれに従う形を取っていますよ」

客(腕を組んで関心する)

ルイ「お客さんもそうですか?」

客(フルフル)

ルイ「そうですか。日本は無宗教の方が多いみたいですけど」

マスター「はい、二杯目お待たせしましたぁっ。おっ、るーちゃん会話弾んでるみたいやな」

ルイ「軽くロザリオの話をしたくらいだよ」

マスター「その話なら、うちも無宗教やなぁってなるわ」

ルイ「マスターは見るからに宗教無関心そうだもんね」

マスター「自分の問題は自分で片付けたい主義やからな」

客(首を縦に振る)

マスター「おーお客さん、うちの事理解してくれるん?それは嬉しいわ」

ルイ「マスターの理解者なんて久しぶりに見たよ」

マスター「るーちゃんがそういう話しても、うちはあんま首突っ込まんしなぁ。やっぱ言ってみるもんやわ」

客「………」

ルイ「お客さん、まだ何か食べますか?アップルパイですか、畏まりました」

客「………」

マスター「やっぱりるーちゃんロザリオがよく似合うなぁ」


135

ガチャ

ちる「ただいま…」

霞「あっ、おかえりなさい。椎木先輩」

ちる「何故かすむんが…?」

霞「磨夢さんから伊崎先輩が使わないからと言って鍵を借りました。すみません、肝心の当人には無断で」

ちる「かすむんなら、合い鍵を作っても…構いませんよ?」

霞「いや、伊崎先輩みたいに孤高の存在ならともかく…わたしみたいに名の知れた存在では」

ちる「かすむん、ロッカーを…覗いたらいいと…思いますよ」

霞「南京錠掛けている筈なんですけどねぇ。最近閉まりにくいみたいです」

ちる「じゃあ、かすむんには…任せられません」

霞「それの方が安全だと思いますよ。合い鍵も来客も最小限にするべきです」

ちる「新聞、テレビ無しなら…誰も…来ませんよ」

霞「椎木先輩はメディア殺しだったんですね」

ちる「だから、わたしは…世間には、疎いんです」

霞「それは思想の問題ですか。それとも単に生活費がカツカツだったりするんですか?」

ちる「どちらでも、ない…みたいです、何でしょう…これが、自然体、とでも、云いましょう…か」

霞「集金も口座振り込みが可能ならば便利なんですけどね」

ちる「それなんですよ、結局は」

霞「わたし先輩宅に住み込んでも良いですよ?親から許可を取れば、もしもしお母さん、わたし実家に帰らせてもらいます。えっ、対戦相手が居ないと困る?ゲーセン行けば可いでしょう。アーケードは苦手ですか?では、クロちゃんは?クロちゃんも苦手ですか。全くお母さんは…はいはい、分かりましたよ。ということで無理でした、先輩」

ちる「あ、はい…」

霞「クロちゃんは居ても変わりませんからね」

ちる「そうですか」

霞「先輩もご存知だと思います。同類と見做してくれて構いませんよ」

ちる「此間の放送で…しっかり」

霞「クロちゃんにはもう少ししっかりしてほしいですよ。生徒会長にでも立候補すれば可いと思います。でも暇人のクロちゃんは面倒臭かりそうですね。なら、わたしが会長ですか?敵は多そうです」

ちる「かすむんは…学年首席じゃ、ありません、でした?」

霞「入試だけではその結果は表れないでしょう。寧ろこれからの活動が大切ですよ」

ちる「これから…ですか。かすむんは、磨夢さんの事」

霞「人間とは思ったのは最初だけでしたね。あの人、結局何者なんですか」

ちる「かすむんも、頑張ってくださいね」

霞「先輩も、頑張ってくださいね」

ちる「はい」

霞「ちょっと待ってください。わたしの場合って…何でもありません」

ちる「気楽に、行きましょう」

霞「人生楽してなんぼですよ。さてと、わたしはわたしの仕事をやりますよっと」

ちる「今日は、何を、持ってきたんですか?」

霞「ローズゼラニウムとやらを。お母さんの一押しです。最近どうですか。みんな元気に育ってますか?」

ちる「立地条件が、良いもので…この通りです」

霞「…せ、先輩、この庭は我が家を超えましたよっ!」

ちる「それ、前も、言っていましたよ」

霞「そうでしたか?しかしわたしも先輩がここまでやるとは思っていなかったんです。これなら毎回驚きますよ。では先輩、種です」

ちる「はい、大切に育てます」

霞「ところで先輩、わたし今SFにハマっています。何かおすすめありませんか?」

ちる「これなんて、如何でしょうか」

霞「アッシャー家の崩壊…エドガー・アラン・ポウですか。成程、少し借りますね」

ちる「どうぞ。きっと、気に入りますよ…あっ、そろそろ…お風呂に行く、時間…ですね。あの…かすむんも、来ます?」

霞「お風呂セット持ってきていませんね」

ちる「バスタオル…くらいなら、予備の分を、お貸し、しましょう」

霞「ありがとうございます。ご一緒させて戴きます」

ちる「はい」


136-1

磨夢「ムラムラする」

ゆい「磨夢さんもわたしの気持ちをおわかりいただけただろうか」

磨夢「ムズムズする」

ゆい「どこか触られているんですか?」

磨夢「どこかであの鏡を使っている人間が居る?」

ゆい「何エロアニメの話をしているんですか」

磨夢「時にゆい。真実を映す鏡があるならば、わたしをどう映すと思う?」

ゆい「磨夢さんは感情の塊ですから、きっとアヘ…」

磨夢「そう」

ゆい「ところでどうしました?顔色悪いですよ」

磨夢「一寸寝てくる」

ゆい「はあ…おやすみなさい」


136-2

八城「あれ、ゆいちゃん何してるの」

ゆい「見られちゃいましたか。八城ちゃんに」

八城「ゆいちゃん、本当に何してるの!?」

ゆい「八城ちゃんも見ます?磨夢さんが闇取引で又借りしてきたらしいんですけど」

八城「おー、これがえーぶいってやつかぁ」

ゆい「なかなか良いシナリオでしょう?」

八城「何かよく分かんないね」

ゆい「支離滅裂な所がまた面白かったりするんです」

八城「お兄ちゃんが見たら喜ぶかな?」

ゆい「ロリ専の兄さんはどうなんでしょうか」

八城「違法のやつじゃないとダメなんじゃ」

ゆい「路地裏行ったら露店出てるんじゃないですか?」

八城「その辺はまみーに訊いた方が可いかな。そういやまみーは?」

ゆい「ムラムラとムズムズを起こして寝ていますよ」

八城「それ、多分寝れないよ?」

ゆい「わたしもそう思います」

八城「屹度かすむんの事で悩んでいるんだよ」

ゆい「部屋には近附かない方が身のためですね」

八城「じゃあお兄ちゃんとこ行く?」

ゆい「兄さんの所も近附かない方が可いですね」

八城「おどれ兄者を何奴と」

ゆい「でも八城ちゃん、ここからですよ。兄さんが好きな体位が有るか研究するんです」

八城「(A:じゃあ、あたし一人で行くね。興味無いし

B:自分で考えた方が良いんじゃないの?

C:ゆいちゃんも勉強熱心だねぇ)

うーん…Cにしよう」

ゆい「?」

八城「ゆいちゃんも勉強熱心だねぇ」

ゆい「そうですか?こう見えてわたしは考えていますからね。人間は考える葦だ。あっ、始まりましたよ」

八城「このお姉ちゃん、ゆいちゃんみたいに簡単に折れそうだね」

ゆい「わたしは折れていませんが…って、いきなり激しいですね」

八城「ふぇぇ、蝋燭垂らしているよぉ」

ゆい「拘束具まで付けて、これは鬼畜ですねぇ…」

八城「ゆいちゃんはこういうプレイ好き?」

ゆい「実際される側としてはどうなんでしょうね…

八城「ゆいちゃんは食べる側だもんね」

ゆい「ええ、最近血肉に飢えているんです」

八城「まみーに頼むしかないの?」

ゆい「八城ちゃんに頼む訳にもいきませんし…年齢不詳って何だって出来ちゃうんですね」

八城「まみーは頼りになるね」

ゆい「この家で最も外出しているのは磨夢さんじゃありませんか?」

八城「お兄ちゃんは学校以外は引きこもっているし…まみーあたしといい勝負かも」

ゆい「八城ちゃんの知っている道は家から銭湯、学校、神社、ゲーセンくらいでしょう?」

八城「未だに駅がどっちにあるか分からないよ。あははははははは。あっ一応ちるお姉ちゃんの家も分かるよ」

ゆい「純治さんの家へは行けますか?」

八城「ジュン兄の家はちょっと遠いから忘れやすいなぁ」

ゆい「それに珠にしか行きませんからね。特に接点ありませんし」

八城「この点は出ねぇよぉっ!接点t通らない接線なんだから

ゆい「違う接点ですよね、それ…まあ、何でしたっけ?」

八城「あっ、そういえばまみーがゆいちゃんにって」

ゆい「この前言ってたコロッケですね。本人は食べていないと思いますが」

八城「毒味だね」

ゆい「それとは違うんですけどね。八城ちゃんも食べますか?」

八城「要らないよ」

ゆい「八城ちゃんがまともで助かりました」

八城「ゆいちゃんがおかしくて助かったよ」

ゆい「分かりませんかね、この甘美な味が。食べた瞬間に身体がゾクゾクしますよ」

八城「へ、変態だーっ!…そういやもうビデオ終わっちゃったね」

ゆい「一応大音量で流していたんですが、あまり気にならなかったですね」

八城「次はどれ観る?」

ゆい「全身にバターかマーガリンみたいなものを塗って犬になめられるやつ…何でしたっけ、タイトル忘れました」

八城「それはこの中に無いかなぁ」

ゆい「あれは名作ですから、そう簡単に手に入りませんか」

八城「そのまみーが借りた人の好みしかないと思うよ?」

八城「PCゲーやりゃあ可いよ。お兄ちゃんに云えば貸してもらえるよ」

ゆい「それ絶対触手ゲー…」

八城「タイトルは…ゆいちゃんとあたし」

ゆい「食べられたいんですか?」

八城「まみーが作っているんだよ」

ゆい「どこからそんな創作意欲が…」

八城「わたし達より、かすむんを使えば可いのにね」

ゆい「好きな相手なら遠慮なく使えますよね。まさかわたし達の事も性愛対象と見て…」

八城「マッサーカーありえないよ、そんな事」

ゆい「ちなみに18禁ですよね」

八城「まみーはそんなつもりは無いらしいけど」

ゆい「わたしの身体を安く見られていますよ!?」

八城「まあえーぶいじゃないだけマシじゃない?」

ゆい「それはそうですけど…」

八城「ゆいちゃん」

ゆい「何です?」

八城「あたしはゆいちゃんの事…好きだよ」

ゆい「わたしも八城ちゃん気に入っていますよ」

八城「という事で、お風呂入ろうか」

ゆい「兄さんも誘いたいですね」

八城「お兄ちゃんがいたら、ゆいちゃん不可ない娘になっちゃうよ。不潔よ」

ゆい「わたしはどうなっても構いません。我が身を犠牲にしてでも兄さんと入ります」

八城「じゃあお兄ちゃんと二人きりで入る?」

ゆい「多分長湯になりますよ?」

八城「可いよ。監視カメラ付けて見とくから」

ゆい「…はい?」


137-1

れー(メイド)がログインしました

ちぇす「れーさん、こんにちは」

れー「ちぇすさん、こんにちは。皆さんはまだですか」

ちぇす「後二人くらいは来ると思いますよ?」

れー「数がある程頼もしいですよ」

ちぇす「確か連絡によると…」

くさか「お待たせしました」

ちぇす「くさかさん、ちわー」

れー「くさか氏、今日もお仕事お疲れ様です」

くさか「今日は暑かったですね」

れー「そうですね。室内でも暑いくらいです」

ちぇす「れーさんは内職ですか?」

れー「いえ、わたしはしっかり働いていますよ。ここ数年は」

くさか「長続きするとは羨ましいですね。うちブラックなんですぐにでも辞めたいです」

ちぇす「くさかさん、良い所知っていまるんで、またメールします」

くさか「ありがとうございます」

れー「お二人はお近くにお住まいですか」

ちぇす「いや、普通にネト友なんで顔知りませんよ?」

くさか「住所流したくらいです」

れー「えらく仲良いんですね」

ちぇす「くさかさんは昔からお世話になっていますし」

くさか「以前もオンゲーやっていましたからね」

れー「それはあの有名なやつですか?」

ちぇす「あの有名なやつですw」

くさか「全盛期は3ヶ月週間ランキング3位以内でしたからね」

なだ「ちわー」

ちぇす「あっ、なださん。こんにちはー」

くさか「なださん、今日はよろしくお願いします」

なだ「ちぇすさんに任せますよ」

ちぇす「では、天空の塔に…皆さん行けますか?」

くさか「大丈夫です」

れー「もうちょっとレベルが欲しい所です」

ちぇす「れーさんは後衛なんで大丈夫ですよ」

なだ「なだの目が黒い内は怪我させませんよ」

くさか「なださん、かわいいです」

なだ「よく言われます」

ちぇす「よし、それじゃあ行きましょうか」

全員「おーっ」


137-2

れー「初めて入りましたが、迷路みたいな所ですね」

くさか「しかも暗いので、どこから出てくるか」

なだ「…と横に敵出現!」

ちぇす「まあれーさんの経験値稼ぎとして戦いましょう」

くさか「前衛はわたしとなださんにお任せください」

なだ「くさかさん、貢献度」

ちぇす「れーさん、魔法撃てますか?」

れー「弱い魔法なら使えますよ」

くさか「れーさんは魔法使いと云うより僧侶ですね」

なだ「回復は貢献度としては扱いにくいです」

ちぇす「なので、出来ればれーさんに敵を殴らせたいのですが」

れー「とりあえずメイスで殴っておきます」

くさか「もしかして魔力より攻撃力の方が高かったりするんですかw」

なだ「僧侶はHP回復力が取り柄で他の値は大差ないですからね」

ちぇす「なら、殴らせても構わないと云うことでw」

れー「実際、攻撃力は皆さんと比較すれば、デコピン程度のものですがw」

くさか「持久戦でも構わないんで、続けて下さって構いませんよw」

なだ「一度でかなり上がる筈です」

ちぇす「このダンジョンの敵はなかなか高レベルですからね」

れー「のんびり戦闘するのも悪くありませんね」

くさか「のんびり援護するのも悪くありません」

なだ「まさか前衛が回復に徹する事になるとは」

ちぇす「なださん、MP無駄に高いっすねw」

なだ「これだから魔法戦士はやめられないw」

くさか「なださん見てると、中途半端と言えませんw」

ちぇす「あれですか。やりこみが半端ないって事ですか」

なだ「はい、300時間超えました」

れー「なんと1ヶ月で300時間ですと!?」

くさか「なださん、いつも見かけますよ。特に土日は」

ちぇす「そうですね。なださんに会ったのも土曜日でしたね」

なだ「それまではソロだったんですけどね。ちぇすさんのカリスマ性に惚れました」

れー「わたしもです」

くさか「ちぇすさん万歳」

ちぇす「皆さん…買い被りすぎですよ。くさかさんが強いから目立っただけですよ」

なだ「くさかさんは見れば分かります。屈強な肉体を持ったパラディンですから。今まで沢山の敵を倒してきた事でしょう」

くさか「なださん、そこまで誉めなくても可いですよ。わたしは自分の仕事をやってきただけで…」

ちぇす「そうですよ。我々は相補性がある。それだけです」

なだ「でもわたしは知っています。ちぇすさんは沢山の弱小パーティーを育てたきたんです」

れー「ちぇすさんってそれ程有名なんですか?」

なだ「そんじょそこらのマスターとは比較しようがありません」

くさか「ちぇすさん、なださんってまさか…」

ちぇす「なださん、早くあなたに気付くべきでしたよ」

なだ「どうかしましたか」

くさか「いや、何でもありません。れーさん、行けそうですか」

れー「はい、結構上がりました」

なだ「良かったですね。潜りますか」

ちぇす「そうですね。どこか違うパーティにも会うかもしれませんし」

シム(霞)とクロ(玄那)に遭遇しました

シム「あっ、ちぇすさん。また会いましたね」

ちぇす「シムさん、こんにちは。後、クロさんも」

クロ「ちわー」

れー「二人パーティーですか?」

シム「そうですね。後二人は都合合わないみたいです

なだ「クロさんじゃないですか」

クロ「なださん、お久しぶりです」

シム「知り合いですか?」

クロ「ソロ時代にお世話になったなださんです」

なだ「シムさんにも会えるとは光栄です」

くさか「シムさんもなださんみたいな玄人ですか」

シム「いや、云う程じゃありませんよ。たまたまレベリングが上手く行っただけです」

クロ「そういえばこの奥に良いレベリング場所がありますよ」

れー「それは是非とも教えて戴きたい」

シム「クロさん、案内してください」

クロ「じゃあシムさん、金を」

シム「わたしは常に無銭です。いつ全滅しても構わないようにしています」

なだ「わたしもそうですね。BANKに貯まりまくりでw」

クロ「シムさんの場合、BANKにすら貯まっていませんよ」

シム「金が入っても、すぐ回復薬、武器防具、クエストなんかに使っちゃいます」

くさか「なんて計画的な人なんだw」

ちぇす「シムさんは消耗アイテムを日常的に使ったりしています?」

シム「ドーピング剤も杖も買います。ええ、魔法なんて使いません」

クロ「その有り余るMPをわたしに分けてくれないんですよw」

なだ「マホイミみたいなのがあれば可いですけどねw」

くさか「運営はそういうユーザーの事は考えていないでしょうねw」

れー「此処ですか?その穴場と云うのは」

クロ「はい、此処です。話している間に着いたと云うw」

ちぇす「足だけは動いていたんですねw」

シム「クロさんも甘いですね」

クロ「す、進む当てがなかっただけです」

なだ「さて、れーさん。準備は出来ていますか」

くさか「どーんといきましょう」

れー「只管殴り続けますw」


137-3

れー「ふう、疲れました」

ちぇす「なかなか可いレベリングになりましたね」

くさか「こんな穴場、わたしは知らなかったです」

クロ「さて、シムさん。情報料を」

シム「メガエーテル3個で手を打ちましょう」

ちぇす「なださん、お二人は何しているんですか?」」

なだ「わたし達には理解出来ない事でしょう」

シム「皆様もどうですか?この前のクエストで貰った褒賞を差し上げますよ」

くさか「おお、ゴーレムアーマーじゃありませんか。本当に可いんですか」

シム「どうぞ、わたし一人には勿体ないくらいです」

なだ「シムさんはソロプレイも多いんですか」

クロ「わたしがinしていない時は大抵そうですよ」

ちぇす「孤高の勇者、かっこいいですね」

れー「わたし、もう寝ますね」

くさか「れーさん、お疲れ様です」

れーがログアウトしました

メイド「マスター」

マスター「あっ、れーちゃんまだ起きてたん?るーちゃんは熱出た言うて来てへんから、この際れーちゃんをパティシエとして起用する作戦はやっぱり難しいやんな。まずるーちゃんの代役を成すのが大変や。洋菓子の味、造型は勿論、クリームの量も的確に入れるんやから、あれはもう職人技と云うか何と云うか、きっと上達するには苦労したんやろうなぁと思えばるーちゃんってなかなかの努力家やと思うで。本人は爺ちゃんから教えてもろたお家芸に過ぎない云々なんて話やけど…あれ、れーちゃんいつから居なくなってたん。お客様も向こうでヘッドフォンして曲聴いてはるし、邪魔すんのも悪いなぁ思ってる所にるーちゃんが来たから、やったー、やっと話し相手見つかったと一人嬉々していた所を急に去られるとほんま寂しいわぁ。あ、いらっしゃいませ。うん、カズさん今日はるーちゃんは居らんねん。お蔭でうちは孤独。カズさんが来てくれて本当に嬉しいわ。ゆっくりしてってな」


138-1

ルイ「宅配便でーす」

ちる「はい…ただいま」

ガチャ

ルイ「お客様、自画像と印鑑をシルヴプレ」

ちる「自画像…ですか?こんなので良ければ」

ルイ「これは小学校の頃の?」

ちる「はい、わたし絵ばかり描いていましたから」

ルイ「この町って独り身の方多いんですか?大変ですね」

ちる「知りませんけど…印鑑です」

ルイ「肉なら持ってますよ。はい、ありがとうございます」

バタン

ちる「………?」


138-2

ちる「という事がありまして」

ゆい「はあ…肉って食べる方じゃありませんよね」

ちる「勿論、朱肉の事ですよ」

ゆい「しかしよくもまあ…自画像なんて持っていましたね。ちるさんは下宿だと兄さんから聞いていますが、自画像なんて持ってくる程のものですか?」

ちる「偶然、入ってました。此方へ来た当初に、タンスにしまってあったのに、気付きました」

ゆい「分かります。思い出の品はタンスにしまうんですよね」

ちる「両親の、いずれかですね。恐らく」

ゆい「ちるさんのご両親は、その…子供思いだったんですか?」

ちる「親バカで、構いませんよ?この町にも、車で送ってもらいましたから」

ゆい「一人っ子は大事に育てられるんですね」

ちる「一人っ子は珍しいですか」

ゆい「いえ、霞さんは失踪した妹さんが居ますし、兄さんにはわたしと八城ちゃんという可愛い妹が…」

ちる「だったら可いですよね」

ゆい「ちるお姉さんは認めて戴けませんか?」

ちる「基茂さんに、言ってください」

ゆい「兄さん曰わく、こんな妹が欲しかったと」

ちる「基茂さんは、愛人の妹が好きなんですか」

ゆい「わたしは愛人止まりですか。ちるさんにはとても敵いません。しかしちるさん、わたしはまだ青い果実、まだまだ未熟なんです。長い目で見ていてください。きっとわたしはビッグになりますから」

ちる「はあ」

ゆい「今わたしはちっちゃいままで可いと思いました?確かに兄さんはそういう趣味をお持ちですが…」

ちる「そうなんですか!?」

ゆい「ええ、それ故にわたし以上にちるさんの事を愛しているんだと思いますよ」

ちる「ゆいちゃんみたいに、小さいだけでは、駄目…ですか」

ゆい「わたしとは釣り合いが取れないんです。天秤の均衡を保つのも難しいんですよ。だから、わたしよりちるさんの方が明らかに優勢なんです」

ちる「そうじゃないと、わたしは困りますけど」

ゆい「何もちるさんから兄さんを奪おうとしている訳ではありません。わたしは快楽の為に兄さんを求めています。兄さんにも同じものを与えます。しかし、それ以上発展する事は決してありえません。わたしはあくまで式神様と結ばれる運命なんです」

ちる「いまいち納得がいきません」

ゆい「いいですか、ちるさん。わたしは兄さんと結婚する気はありません。つまり正妻の座を奪うような野望は全く以て御座いません」

ちる「結婚、ですか…」

ゆい「ちるさんは考えているんですか?兄さんとの結婚を」

ちる「そ、そんな…け、結婚だなんて…まだ早いですよ」

ゆい「猶予は兄さんが死ぬまでなんですよ。その時は、わたしが戴きますから」

ちる「ゆい…ちゃん?」

ゆい「ですから、兄さんの事ちるさんが見てあげてください。それともあれですか、夜のお供はちるさんが行いますか?御希望なら代わっても可いです」

ちる「基茂さんと一緒に寝る…そんな事、出来ませんよ?」

ゆい「ですよね。私達には適役があるんです。兄さんは孤独なんですよ。それを励ますのがわたしの役目なんだと思っています。長くなりましたね。ではここで失礼します」

ちる「ゆいちゃん」

ゆい「はい?」

ちる「ゆいちゃんは基茂さんを愛していますか?」

ゆい「はい、表皮から骨髄まで愛していますよ」

ちる「そうですか…ありがとうございました」


139-1

ゆい「何故ちるさんはアパート住まいなのに兄さんはこんな豪邸に住んでいるんでしょう?」

磨夢「この家に居た家族が破局を迎えたから。一家心中。思わぬ事故物件。そこに霊が眠っている」

ゆい「あのピアノ、先代の居住者の所有物ですか」

磨夢「ん、それに深夜になると自動演奏される。心地よい旋律だからわたしは好き」

ゆい「磨夢さんは幽霊を信じますか?」

磨夢「わたしに見えない。でもゆいには見える。信じるべきか否か分からない」

ゆい「自分で存在を認識出来ないなら信じる必要はありませんよ。わたしの発言が必ずしも真とは言えません」

磨夢「ゆいは今まで嘘を吐いていた?」

ゆい「どう思うかはあなた次第ですよ。嘘を見抜く能力が備わっているなら別ですが」

磨夢「ちるじゃなし、他人の心理状況を解する事は出来ない」

ゆい「しかし、磨夢さんには少しながらその兆しが見えます」

磨夢「そう」

ゆい「心霊現象を恐れない、それだけなんですね」

磨夢「生きている人間と死んだ人形の見分けがつかない」

ゆい「人間は言葉を発します」

磨夢「それがその人間から発せられたものか否かは分からない」

ゆい「今度アンドロイドを呼びましょう。きっと仲良くなれますよ」

磨夢「それはゆいの家にある人形」

ゆい「最初こそ人形で御座いましたが、今ではわたしと同じ位の背丈になりました。やはり人形も育つものです。折角なのでそれに人工機能を搭載したのが、件のものです」

磨夢「作者は勿論」

ゆい「はい、かの大学の名誉教授、偶然知り合いのお向かいの知り合いの親戚筋に入りましてですね。なんと日夜の研究のおまけとして作ってくださりました」

磨夢「ゆいの知り合いと云うからにはかなり限定される」

ゆい「そうですよ。ですが、貴重な知り合いの中で恐らく磨夢さんでもご存知のない方だと思います。それはさておき、そのアンドロイドは猥談に物怖じせず、多数の外国語、プログラミング言語を理解し、おまけにエロいッ!どうですか、こんな優秀なアンドロイドが今なら39800円の240回払いです」

磨夢「とりあえずゆいより優秀なのは分かった」

ゆい「やはり博士は素晴らしいものを作りますね。人智を超えた存在を作り出すなら、しまいに神をも創造するのではないでしょうか。だとしたら式神様の存在が危うくなりますね」

磨夢「他に神は知らない?」

ゆい「式神様の知り合いに複数居るみたいですが、何せ八百万の神ですからね。一人一人の詳細は知りません」

磨夢「そう」

ゆい「一人の巫女としてはまだまだ勉強する必要があるみたいです」

磨夢「テクニックを?」

ゆい「兄さんがテクニシャンなので構いません。全くどこで得た知識でしょう」

磨夢「基茂はゆいが未知の世界を歩んでいる」

ゆい「それではわたしばかりが気持ち良くなるだけで面白くありませんよ」

磨夢「ゆい、服を脱いで」

ゆい「はい?」

磨夢「可いから」

ゆい「下着つけてませんよ」

磨夢「巫女だから当然。幼女だから当然」

ゆい「あぅ…仕方ありませんね。で、わたしの身体を使って一体何を」

磨夢「何も変な事はしない。わたしの古着で良いものがあったから」

ゆい「もう磨夢さん、それを先に言ってくださいよ」

磨夢「これ」

ゆい「はい」

磨夢「どう?」

ゆい「わたしみたいな体型で着れる寸法って磨夢さんにもそんな時分があったんですね」

磨夢「言っとくとかなりダボダボ」

ゆい「言われる必要もありませんよ」

磨夢「まるで履いていないみたい」

ゆい「元から履いていませんよ」

磨夢「八城でも履いていると云うのに」

ゆい「外着くらいは履きますが」

磨夢「何時ゆいが外着を着た?」

ゆい「む…」

磨夢「一応下もある」

ゆい「ワンピースにスカートは不要です」

磨夢「履いたら暑苦しい」

ゆい「磨夢さんは最近ズボンですよね」

磨夢「今では寝間着ぐらいにしか使っていない」

ゆい「昔の磨夢さんは可愛かったと兄さんが言ってました」

磨夢「それは嘘」

ゆい「いえ、本当ですよ。兄さん嘘ツカナーイ」

磨夢「そう」

ゆい「あまり歓喜の色が見られませんね」

磨夢「基茂、あれが殺人鬼の衣装だと知らない」

ゆい「返り血でも浴びたんですか?」

磨夢「わたしじゃない、その殺人鬼から貰ったから」

ゆい「友達だったんですか?」

磨夢「ん、よく斬り合った仲だった。今までで一番の友」

ゆい「わたしにはその人を超える事は出来ませんね。その人から連絡は?」

磨夢「今時分脱獄して、国外逃亡。とエアーメール。勿論暗号の形で。わたし達にしか分からない。これがそれ」

ゆい「いや見せられても何の事やら」

磨夢「上空を走る飛行機雲の何れかはきっと友人の軌跡。空を誰よりも愛していた。奴らから逃れる為に」

ゆい「文字通り高飛びですか」

磨夢「合い言葉はサツだ、ずらかれ。口癖のように使っていた」

ゆい「殺人現場でその捨て台詞ってどうなんですか?」

磨夢「その時点で死体はなくなっていた」

ゆい「それってミステリー?」

磨夢「ミステリーも何もプロだったから。未だにどの事件に関与したかも明確にされていない筈」

ゆい「全ては闇に眠ったまま、ですか」

磨夢「わたしが関与したものも有るかもしれない」

ゆい「それ程親密にやっていれば事件の一つや二つは関わってそうですね」

磨夢「よく思い出せない。その顔も思い出せない」

ゆい「モザイクでもかかっているんですか?加工音声ですか」

磨夢「そう、いつもヘリウムガス使って話してた」

ゆい「何ですかその人…」

磨夢「自分の声に劣等感覚えていたらしい。というより声で殺人犯とバレる?」

ゆい「既にバレていたんですか」

磨夢「訂正。息の掛かったガイシャは皆殺しにしていたとの事」

ゆい「スケッチする暇もありませんね」

磨夢「どこに行った。我が友よ」

八城「ねぇ、まみーまみー」

磨夢「ん?」

八城「お兄ちゃん知らない?部屋に忍び込んでも居なかったの」

磨夢「ゆいに連れ去られた」

八城「ゆいちゃん積極的だなぁ…」

磨夢「ゆいは食べられる喜びも知った」

八城「うわぁ…」

磨夢「とりあえず考えられる場所としては樹海の奥地」

八城「随分遠くまで行ったんだね」

磨夢「当初は慰安旅行だった。しかし、新幹線は脱線し何とか脱出するも、時は丑三つ時。ゆいは今頃自縛霊に憑依され、その華奢な肢体は」

八城「折れちゃったんだね」

磨夢「ん、そうすれば食べやすい」

八城「へぇ」

磨夢「バラバラならその辺にある」

八城「肉屋さん?」

磨夢「そう、新鮮な内に戴ける」

八城「まみーは食べた事あるの?」

磨夢「ゆいに勧められたけど遠慮した」

八城「良かった。まみーはゆいちゃんにならなくて」

磨夢「わたしが…ゆいになる?」

八城「変態さんになるの」

磨夢「確かに…一理ある。一つの変態行動を行えば、様々な変態行動に派生する。恐らくゆいもそれが原因で、可哀想に」

八城「本心は?」

磨夢「ゆいは生まれつき変態。それは先天性を持つ不治の病。本当に無様」

八城「まみーはゆいちゃん好きじゃないの?」

磨夢「わたしには霞が居る」

八城「…即答だね」

磨夢「とりあえず基茂に連絡を」

八城「りょーかい」


139-2

trrr

基茂「俺だ。どっちだ?」

八城「あたしだよ、八城だよ」

基茂「お、やしろんか。丁度良い、ガンダムでかすむんを負かしてくれ」

八城「ゲーセンに居るの?」

基茂「ああ、ド素人を相手にしてくれるプロと戦っている最中だ」

霞「先輩、動かないと撃ちますよ。そこに居るのは分かっています」

玄那「安心しろ、先輩はわたしが守る!」

霞「またクロちゃんはわたしの前に立ちはだかりますか」

玄那「さあ、先輩。今の内にもう一人を」

基茂「かかってこいや、佐竹ぇッ!オレは逃げも隠れもせんぞ」

純治「面白ぇ。貴様の敵がかすむんだけじゃねー事…教えてやんよ」

玄那「二人共怖いな」

霞「いつもの二人ですよ」

八城「あたしも行きたいなぁ…」

磨夢「行けば?夕飯までに基茂を連れ戻したら可い」

八城「うん、じゃあお言葉に甘えて…いってきまぁす」


139-3

ゆい「こんにちは」

磨夢「収穫は?」

ゆい「上物らしいです、嬉しいです。冷蔵庫、空いてますか?」

磨夢「ん、分かった。預かっておく」

ゆい「美品の為、丁重に扱ってください」

磨夢「こんな殺し方は珍しい。まさか我が友?」

ゆい「高飛びしたんじゃなかったんですか」

磨夢「たまに殺しに下りてくる」

ゆい「殺人癖を持った堕天使…いえ天使と云うより天空人ですか」

磨夢「地上を放棄した訳じゃないから」

ゆい「いえ、元々天空人だったりするんじゃないですか」

磨夢「もしくはわたしと同じ存在であるか…今度会ったら食事に誘おう」

ゆい「何の交流ですかそれ…」


140-1

ゆい「わたしがメイドですって!?」

八城「うん、CMOでゆいちゃんが作りたくなって」

ゆい「そのCMOとやらは…えちぃやつなんですか?」

八城「あったりまえだよ。まあこれがまた作業なんだけど」

ゆい「こ、この体位は如何ですか?」

八城「それは被虐が上がるよ。流石ゆいちゃんドM」

ゆい「プレイヤーが兄さんですからね。わたしの身体は兄さんに委ねるままです」

八城「鞭と蝋燭って良いね」

ゆい「鞭はともかく…蝋燭は熱いですね」

八城「赤い蝋は血に見えるのもポイントだね」

ゆい「白、もしくは黄色も良いですね。飛び散ったみたいですし」

八城「今度蝋燭買ってこようかな」

ゆい「実際やったらわたしが死にますから」

八城「蝋垂らしたら骨が見えて、鞭で叩いたら骨が折れちゃうもんね」

ゆい「これならちるさんの方がよっぽどマシですね」

基茂「…よぅ。何やってんだオレの部屋で」

ゆい「兄さんは、SですかMですか」

基茂「時と場合による」

ゆい「わたし、殺られる前に殺りますからね。兄さん、油断は禁物ですよっ!」

八城「ゆ、ゆいちゃん。落ち着いて」

基茂「可愛いな、ゆいゆいは」

ナデナデ

ゆい「あっ、もう…兄さんはいつもそうやって」

八城「お兄ちゃん、あたしも撫でて」

基茂「ああ」

ナデナデ

八城「うひゅー」

ゆい「兄さん、やりますか?」

基茂「まだ早いだろう」

八城「でもやるんだ」

ゆい「兄さん、優しいですね」

基茂「優しいと云っていいのか、これ。おい待てゆいゆい、勝手に社会の扉を」

八城「健全やしろんはここで撤退します」

基茂「ウギャアアアアアアッ!」


140-2

八城「お兄ちゃんって幸せ者だよね。ゆいちゃんにあんなにも愛されて」

磨夢「あれは愛されすぎ」

八城「でも、二人はデートしないね。やっぱちるお姉ちゃんが居るから?」

磨夢「ん、愛人は正妻の足元にも及ばない」

八城「またお兄ちゃんに外食頼んでみようかな」

磨夢「例のファミレス?」

八城「そこも良いけど、例の肉屋さんも」

磨夢「ダメ、ゼッタイ」

八城「ふぇぇ、常連客に言われちゃったよぉ」

磨夢「まともな人間でありたいなら」

八城「まみーもゆいちゃんもまともだよ。考えているよ」

磨夢「何かを失ってからでは、もう遅い」

八城「そんなにひどいの?」

磨夢「そう、わたしとゆいは既に…」

基茂「よぉ、変態諸君」

八城「あっ、お兄ちゃん。ゆいちゃんはどうしたの?」

磨夢「ゆいゆいならオレのベッドで寝ているよ。ビクンビクンしながら」

八城「へぇー、お兄ちゃんもなかなかそうろ…」

基茂「磨夢」

磨夢「ん…さて八城、ここに帽子がある。普通のシルクハット」

八城「鳩でも出るの?」

磨夢「いや、そんなものは出ない。とりあえず叩いてみる。1,2,3…」

八城「これは立派な腕だね」

磨夢「保存食」

基茂「…やしろん、怖くないのか?」

八城「作り物だよね?」

磨夢「触れば分かる」

八城「…ふぇ、ふぇぇっ!?本物だよぅ…」

磨夢「冷蔵庫にしまっておいて」

八城「いやだよ、そんなの」

基茂「ホルマリン漬けにしておくか?」

磨夢「ご自由に」


140-3

ゆい「ふああ…兄さん、おかえりなさい」

基茂「うぃ、ただいま」

ゆい「下で何話してたんですか?」

基茂「冷蔵庫見れば分かる」

ゆい「保存食ですかぁ。八城ちゃん、怖がっていません?」

基茂「やしろんは、よく分かんねぇな。素で怖がっているのか、面白半分で怖がっているふりをしているのか」

ゆい「この家の楽しさが分かっているなら十分に異常ですよ」

基茂「後者でとればそうなるか。そうか、やしろんもゆいゆいの毒牙に…」

ゆい「兄さんも原因の一人じゃないですか?」

基茂「かもな。PCゲー勧めた覚えはないが、後ろでずっと見てたしな」

ゆい「部屋を割り当ててなかったんですね?」

基茂「そうだ。だが、部屋与えても暫くはオレの部屋に居候していたな」

ゆい「兄さんの部屋、階段上がってすぐなんで入りやすいんです」

基茂「…ったく、オレの世界は未完のままだ」

ゆい「お風呂ポスターはお風呂に貼ってください」

基茂「貼ったところで…まあ可いけどな」

ゆい「わたしの写真は机の上に額に入れて置いてください」

基茂「ゆいゆい置くぐらいなら、ちるを置く」

ゆい「両方でも構いませんよ?」

基茂「右にゆいゆい、左にちる。真ん中は…やしろんかな」

ゆい「何か、違うんですよねぇ…」

基茂「オレは写真が嫌いだからな」

ゆい「では自画像お願いします」

基茂「キャンバスの向こうには屍しか映っていねえよ」

ゆい「兄さん、絵は壊滅的でしたか」

基茂「オレは音楽選択だからな。ちるが美術選択だったかな」

ゆい「では兄さん、ちるさんの為なら脱いででも…」

基茂「オレはどこの変態美術教師だ」

ゆい「彼女の為に脱ぐのは彼氏の役目ですよ」

基茂「何かオレ脱がされてばっかだな。たまには脱がせる側の身にもなってみたい」

ゆい「兄さん、わたしが居るじゃないですか」

基茂「ゆいゆいは、いつもの事じゃないか。そうだな、ちるをだな…」

ゆい「兄さん、ちるさんは神聖にしておかすべからず」

基茂「神聖すぎるぞ。ありゃあ神だ。しかしゆいゆい、風呂行った時にちるの裸は見ているだろう?」

ゆい「風呂は別ですね。そうですよ、二人で温泉旅行にでも行ったらどうですか。勿論混浴で」

基茂「そ、そいつはけしからん計画だな。しかし、ちるを騙すようで良心の呵責が」

ゆい「ちるさんは純朴ですよね。わたしや磨夢さんがひねくれているだけで」

基茂「だから尚更してやれんのだ。ついでに遠出して何かあったじゃ困るからな」

ゆい「兄さんはちるさんを守るんですよね」

基茂「当然だ。仮に旅行を実行するならそれを遂行せねばならない。一寸、一刻足りとも油断出来ない。どこも慰安旅行になんねぇな」

ゆい「一寸、一刻を争わずとも、前もってそういう心掛けをしていれば屹度楽しい旅行を満喫出来ますよ」

基茂「ふむ、それなら良いけどな」

ゆい「では兄さん、わたしは下に行きますね」

基茂「風呂入った方がいいんじゃないか?」

ゆい「兄さんも入りますか」

基茂「後でな」

ゆい「後から乱入してくるんですか!?」

基茂「それもちげえよ。早く行ってこい」

ゆい「兄さん、そんなに慌てて…ナニをする気ですか?」

基茂「何、勉強よ勉強」

ゆい「ほほぅ、政経…磨夢さんですか」

基茂「また課題出しやがって、いつもの事か」

ゆい「なら、兄さんが集中する為にわたしは出ていきますね」

基茂「もう帰ってくんなよ」

ゆい「………」


141

ゆい「はい、羽衣です。はい、そうですか、分かりました」

ガチャ

ゆい「ふぅ」

務「どうかなされましたか。ゆい殿」

ゆい「向こう側は何やら不穏の雰囲気を醸し出していました。下手すると、私たちが出動する羽目になるかもしれませんね」

務「大事でなければよろしいのですが」

ゆい「いざとなったら磨夢さんも居ますから、安心ですよ」

務「磨夢殿、いつかお会いしたものですな」

ゆい「会ってみますか家はこの近くですし」

務「いえ、わたし等そんなお偉方には顔も上げられませぬ」

ゆい「磨夢さんは組織のトップスリーに入りますからね。そんな重鎮がよくこの町に身を潜めている事で」

務「磨夢殿とは昔からお知り合いで?」

ゆい「知り合いも何も腐れ縁ですよ。それにわたしの人生を変えてくれた人でもあります。こういうのはお互い様なんですけどね」

務「人生を変えてくれた人…ですか。わたしにとってはゆい殿で…」

ゆい「何か言いましたか?」

務「いや、何事にもありませぬ!そんな事より、ゆい殿先程の件は」

ゆい「滅多な事がない限り、わたし達が動く必要はございませんね。基本的にわたし達、平和に暮らしているでしょう。そういられるのは上の人達のお蔭なんですよ」

務「こちらに居るのは磨夢殿とゆい殿ぐらいで、それ以外は本部の方でございますからね」

ゆい「はい、余程の事では崩れない。組織は信用していいんですよ」

務「羽衣ネットワーク、盤石なものですね」


142

ゆい「兄さん、おかえりですかぁ!?」

八城「お兄ちゃんは居ないよ。後まみーも帰ってきてないよ」

ゆい「お二人は密会でもしてるんですか?いつも会っていながら」

八城「二人じゃないと話せない事もあるんじゃないかなぁ」

ゆい「怪談でもしているんでしょうか?猥談なら歓迎ですけどね」

八城「ゆいちゃんエロいもんね」

ゆい「もっと誉めてください」

八城「ゆいちゃんってドスケベの割に攻められると弱いのがまた可愛いよね」

ゆい「うわー、ひどい棒読みですね」

八城「んでさ、最近ゆいちゃん出番多いけどさ、主役でも気取ってるのん?」

ゆい「わたしが居なきゃやっていけないみたいですからね。仕方ないでしょう」

八城「あたしもボケに入ったら、出番増えるかな」

ゆい「では八城ちゃん、面白い事を言ってください」

八城「んー…windowsはゆいゆいえふあいモードで起動する」

ゆい「何の話ですか、それ」

八城「お兄ちゃんが言ってたけどよく分かんない」

ゆい「何かもじったんですね屹度」

八城「そだね。お兄ちゃん渾身のギャグだったんだね」

ゆい「では、次を」

八城「まみーの物真似。ねえまみー好きなアイスある?爽」

ゆい「いや、それ寒いだけですよ」

八城「お兄ちゃんの物真似。お兄ちゃん遊ぼう。やしろん、動画制作でも頼む」

ゆい「それ多分八城ちゃんの事じゃないですよね」

八城「ちるお姉ちゃんの物真似。こんにちは、ちるお姉ちゃん。あ…はい、こんにちは。今日も良い天気…ですね、八城ちゃん」

ゆい「その喋り方で話をしようとするんですよ、ちるさんは」

八城「ゆいちゃんの物真似。兄さん、おかえりなさい。わたしにしますか、わたしにしますか、それともわ・た・し?」

ゆい「お、お風呂ぐらいなら沸かせるんですからねッ!」

八城「ゆいちゃんはヤる事しか頭にないんだよね」

ゆい「失敬な。わたしだって色々考えているんですよ。エロエロ…」

八城「ゆいちゃん、頭冷やそうか。はい、デコクール」

ゆい「ひやー。ああ、頭が真っ青にぃ」

八城「そのまま真っ白にしちゃうよ」

ゆい「あぁん、八城ちゃん耳らめぇ」

八城「敏感すぎっしょ」

ゆい「せめて腋にしてですね」

八城「腋をどうするの?」

ゆい「あはは八城ちゃん、はははどうするってはは…やめてやめて」

八城「あーでも擽られるより舐められる方がいいのか」

ゆい「腋って汚いですけどね」

八城「毛一本生えてないと清潔そうなのにね」

ゆい「いや腋を洗うと、胸も刺激されてですね…やめてください、擽った…あはは」

八城「次は足裏マッサージ行ってみよう」

ゆい「わ、わたし…足の裏も弱いんで、はは、パスします」

八城「まみーが居たらゆいちゃんを笑い死にさせられたのに」

ゆい「お、恐ろしい子…」

八城「それでどう?満足した?」

ゆい「満足も何も…あっははは、お許しください、八城様…ははは、わたしお嫁にいけなくなりま…はははは」

八城「ゆいちゃんには関係ないっしょ」

ゆい「そういえばわたし巫女でしたね」

八城「その割にエロいよね」

ゆい「まあ、あの式神様とはそこまで強く契りを交わした訳ではありませんし」

八城「あーそうか、じゃあゆるゆるなんだ。でも結婚は出来ないんでしょ」

ゆい「それは最低規則なんですよね。幾ら緩くても、それだけは壁なんです」

八城「うにゃあ、そうにゃのかーにゃあにゃあレオポンにゃあにゃあ」

ゆい「レオポン、こっちですよ」

レオポン「にゃあ」

ダッ

八城「あっ、ゆいちゃんが押し倒された」

ペロペロ

ゆい「レ、レオポン…犬じゃないんですから、わわ…」

八城「ゆいちゃん、頑張ってね」

ゆい「そ、そんなぁ…わっ」


143

霞「クロちゃーん」

玄那「かすむんだな」

ガチャ

霞「クロちゃん、わたし料理スキルはありませんが、何か作ります」

玄那「目玉焼きはもう飽きたー」

霞「なら玉子焼にしましょう」

玄那「せめて米を…だな」

霞「パンで良いでしょう。クロちゃんは普段から少食ですからね」

玄那「むぅ…やっぱり食べた方がいいのだろうか?」

霞「一日に適量の栄養を摂取しないと豊満な肉体は得られませんよ」

玄那「ん…まあ、そうだな。それは言えている。だから米を寄越せ!」

霞「そんなに米が良いのですか?あっ、ここにサ●ウのご飯がありますね」

玄那「わたしがさっきから言っていた米はそれだ」

霞「クロちゃん、自分で米は炊けますか?」

玄那「怖い動画を見る時にはよくコメをたくな」

霞「成程、悲鳴弾幕を貼るんですね。みんなで叫べば怖くないですからね。じゃありませんよ。食べるほうのお米ですよ」

玄那「研ぐまでなら出来るんだが…」

霞「研げたら十分ですよ。後は炊飯器使うだけなんですから」

玄那「悪い、うちは竈なんだ」

霞「このあからさまに置いてある炊飯器は一体何でしょう」

玄那「それはサブウェポンだ。少し改造してみた。空き巣が来た時には四輪駆動で走り、ジャンプ機能もあり、対象に噛み付くようにした」

霞「本当に車輪付いていますね、これ。よく見たらプラグもなく、電池式ですか。新しいですね」

玄那「炊飯器にコンセントを使うなら、対空き巣マシンの制御装置に使うさ」

霞「でも動いているのは炊飯器ですよね」

玄那「あくまで間接的であるがな」

霞「ところで竈はどこにあるんですか?」

玄那「庭に置いてあるぞ。部屋が狭く、庭も狭い」

霞「椎木先輩のアパートなら部屋が狭い代わりに庭が広いですよ。見たでしょう、あの壮麗な庭園を」

玄那「ふむ、椎木先輩のアパートは良さそうだな。候補に入れておこう」

霞「ここの物件は安さでしたっけ?」

玄那「そうだな。風呂付きでこの安さだから椎木先輩の所とはまるで真逆の性質を持つ安さだな」


144

基茂「某ホラゲーで詰んだ」

磨夢「これは最大の難所」

基茂「何とかならんのか」

磨夢「霞なら分かるかも」

基茂「おk、掛けてみよう」

prr

霞「もしもし先輩こんばんは。こんな夜中に何か用でしょうか。ゲームの事なら攻略サイトを頼ってくださいね」

基茂「いや、それ見ても分からんのだ。とりあえずPCにurl送るな」

霞「先輩はこういう時はPC派なんですね」

基茂「この電話自体がネット電話だからな」

霞「わたしがPC起動していなかったらどうしたんですか。…っとこのゲームのこの場面はですねぇ…何か描くものはっと、ありました。こう行ってこうじゃないですかね」

基茂「ビデオ電話を活用するのは良いが、よく見えないな」

霞「ならわたしの高画素カメラで撮影してそのデータをメールに添付して送りましょう」

基茂「おっ、届いた。成程、こいつぁ分かりやすい」

霞「昔にやったのであまり覚えていませんが…後、ver変わったりしているかもしれませんね。とりあえずその方法でやってみてください」

基茂「こう一歩出て一歩戻る感じか…難しいな。磨夢、手ぇ空いてるか」

磨夢「わたし?」

基茂「先生、お願いします」

磨夢「これ霞の方法なら」

基茂「何だその操作は!?」

霞「普通の操作だと間に合いませんからね。華麗な早業を見せつけてやるんですよ。磨夢さん、そうだったんでしょう」

磨夢「そう。基茂、やってみたら」

基茂「キーボードでやる事が間違っていると思うんだがやってみよう」

磨夢「惜しい」

基茂「もう一度手本を見せてくれ」

磨夢「ん」

基茂「どうなってるんだ…」

霞「先輩、慎重にやるのが大事ですよ。息を大きく吸って、吐いて」

基茂「スー、ハー…よし行ける。キタアアアアア」

霞「おめでとうございます先輩。そこを越えればもうクリアは目の前ですよ」

基茂「おう、ありがとよ。かすむん、磨夢」

磨夢「今日は赤飯」

基茂「深夜から次の夜の事を考えるのか」

霞「ではわたしはここで失礼しましょうか。最近夜更かしが多かったので、眠たいです。おやすみなさい先輩、磨夢さん」

基茂「ああ、おやすみ」


145

八城「どしたのゆいちゃん、顔色悪いよ?」

ゆい「今朝怖い夢を見たのです。身も心も震えるような恐ろしい夢で」

八城「じゃああたしが代わりにお仕事するよ。つっかーの電話番号は?」

ゆい「アドレス帳に入っていますよ」

八城「こちら八城。ょぅι"ょ隊のみんなぁ、お仕事お仕事ぉ」

ゆい「ふぅ…これでわたしは働かないで済みます」

八城「つっかーより、元気を取り戻したら願わくは仕事場に戻らん事を」

ゆい「ふぇぇ、わたしの事を何と思っているんですか、つかさんは」

八城「上下関係はっきりしなよ」

ゆい「今度はっきり言っておきましょう。こればっかりは譲れませんからね」

八城「ところでゆいちゃん、怖い夢って何なのよさ」

ゆい「まず怪物に追い掛けられます。わたし必死で逃げます。そもそもわたしの足で逃げるのが間違いでした。異種姦も良いものですね」

八城「それ対象ゆいちゃんだよ!?」

ゆい「物事の良さを知るには一度被験者になる必要があります。例えばタイムマシン。本当に時空を行き来出来るのか。それは実際体験した人にしか分からない。彼が如何に其れを語ろうと、誰も信じようとしないのです。なので異種姦を否定する人は一度体験してみては如何でしょう。わたしの夢にいらっしゃってください。60分フルコースでお楽しみ戴けます」

八城「あれ、怖い夢じゃなかったの?」

ゆい「恐怖は何れ快楽になるのです。実際恐怖を感じるのは最初だけだと心霊体験者ちるさんが言っておられました」

八城「ちるお姉ちゃんは楽園の人だからね」

ゆい「でもちるさんの理論は心霊に限るんですよねぇ。生身の人間なんてもってのほか、まして怪物なんかは、ちるさんは怪物と心霊は人にあらざるものとして扱うのでしょうか。人で無ければ良いんだって着ぐるみなんかに騙されそうですね」

八城「着ぐるみって可愛いよね」

ゆい「良いものですよ、本当に」

コンコン

ゆい「八城ちゃん」

八城「あいあい。出るね」

ガラガラ

務「ははっ此は此は八城殿。貴君の要請によりわたくし倉津務、並びにょぅι"ょ隊、馳せ参じました」

八城「みんなは今働いてくれているの」

務「はっ皆はそれぞれ持ち場に付き、各々ゆい殿の事を思って仕事をしております」

八城「うわっゆいちゃんモテすぎっ…」

務「わたし達は仕事人でありまする。主が苦難に見舞われた場合、喜んでその代理を承ります」

八城「ゆいちゃんはいつからお偉いさんになったの?」

務「ゆい殿は昔からお偉いさんで御座います」

八城「実はあたしもね…ゴニョゴニョ」

務「そ、それは本当で御座いますか!?若しそうであられるなら、其方の方にも部隊をお回ししましょう」

八城「でもあれ一人で余裕なんだよねぇ。ゆいちゃんみたいに無理ある仕事もしてないし」

務「ならば、代表でわたくしめが影武者を果たして差し上げましょう」

八城「どうしてゆいちゃんにそこまで出来るの?」

務「八城殿、ゆい殿は我々の事を信頼して仕事を与えて下さっています。ゆい殿の命令なら何であれ我々はそれに応える必要があります

八城「ゆいちゃんはょぅι"ょ隊に何を求めてるのかな」

務「絶対的信頼でございましょう。いざという時に駆けつける。丁度今回のようなものです」

八城「なぁる。あたしも手伝おっか?」

務「いえ我が隊で人手は足りております。八城殿はゆい殿の看病をお願いします。それではわたしは現場に戻りますので」

八城「頑張ってね」

カラカラカラ

八城「つっかーって声でかいよね」

ゆい「軍人は覇気がないと不可ませんからね」

八城「あたし達みたいな話し方だと首刎ねられるね」

ゆい「その首はわたしが頂きます」

八城「あーでもあたしの首ボンドで治るよ」

ゆい「わたしの腕はガムテープで治りますよ」

八城「ゆいちゃん、出来る…っ」


146

prr

ちる「もしもし…」

?「お姉ちゃんだよ」

ちる「どちら様…ですか」

?「ネムでぇす」

ちる「わたしには…お姉さんは、居ませんから」

?「待て、待て。わたしだ、ちるたん。オレだよオレ、オレオレ」

ちる「姉さん…姉さんなんですよね?」

禰夢?「そうよ、わしが流離の作家、ツユネだべ」

ちる「姉さんは、もう少し上品な喋り方を…します」

禰夢?「そうですわ、わたくしがちるちゃまを教育したザマス。ちるちゃまがそこまでお上品なんザマスから、わたくしはそれ以上に上品な必要があるザマス」

ちる「でも姉さんは、いなかっぺの方が…お似合いです」

禰夢?「そりゃなぁ、全国津々浦々長期滞在するとこだら田舎ばっかだかんなぁ。ちるたんの住んでる町すんら都会に思えるわ。けど、ちるたんの家には長居出来んだな」

ちる「姉さんにも…ぼろアパートの良さが、分かりますか?」

禰夢?「んだんだ、だってわっちも旅に出る前はアパート暮らしだったもの。風呂はありんしたけど」

ちる「姉さんは、都会にある、スカイマンションの…最上階に、住んでいました」

禰夢?「あっ、今のは合わせただけだから」

ちる「本当に、姉さん…ですか?」

禰夢?「ちるたん、まだ警戒しとん。わしの前くれえ、気兼ねなぐ話さんと?」

ちる「どこかの、お婆さん…ですか」

禰夢?「お姉ちゃんだよ」

ちる「………」

ピッ

prrr

ちる「はい、もしもし」

禰夢「わたしだ」

ちる「姉さんじゃありませんか!?じゃあ先程のも姉さんですか?」

禰夢「む、わたしゃあ掛けとらんぞ?こん電話が数週間ぶりなんだから」

ちる「姉さん、ひょっとしてわたしの電話番号、外に漏らしましたか?」

禰夢「いや、漏らしとらんよ。何だ、わしみてえな人から掛かってきたん?」

ちる「あは、あははは」

禰夢「ど、どったちるたん、その笑い方怖かよ」

ちる「いえ、一寸面白いと思いましたから」

禰夢「まあちるたんが楽しそうにしとんならそんでよか。で、病気の方は大丈夫け?」

ちる「たまに寝込む事が有る位で生活に支障はありませんよ」

禰夢「良かった良かった。けど無理せんでよ?入院だけはならんようにな」

ちる「病院生活はもうこりごりです」


147-1

八城「夜なのにまみー居ないよ」

ゆい「最近多いですよね。磨夢さんが居ないのって」

八城「まみーってこういう時いつも携帯電話置いていくよね」

ゆい「磨夢さんなりの癖じゃないですか?磨夢さん一度帰ってきてたりしていませんか」

八城「朝から居ないよ。午後も」

ゆい「寄り道ですかね?」

八城「お兄ちゃん呼んでくるね」


147-2

基茂「磨夢の行方は知らないな」

八城「去年もこんな感じだったの?」

基茂「多少はあったが、ここまでしょっちゅうと云う程じゃあなかったな」

ゆい「当時の磨夢さんは兄さんにべったりだったんですか」

八城「へぇ、二人は熱かったんだね」

基茂「オレ一人じゃ何も出来なかったから、お互い依存していたのは確かだな。勿論恋情は無かった」

ゆい「つまりツーカーで通じる間柄だったんですね」

基茂「その通りだ。二人だとどうも手が足りないからな。言われる前に動いた」

ゆい「今でいうわたしと兄さんですね」

八城「お兄ちゃん、最近ゆいちゃんに弱いよ」

ゆい「兄さんは既にわたしの虜ですからね」

八城「ゆいちゃんって、お兄ちゃんが絡みじゃないと面白くないよね」

基茂「そうか?ゆいゆいは痛い子と見ているだけで楽しいけどな」

ゆい「でも兄さん、その情報源となる磨夢さんが居ないんですよ?」

八城「えっ、ゆいちゃん仕入れてたの?」

ゆい「磨夢さんは昔のわたしを根本から変えたんですよ。当たり前じゃないですか」

基茂「そうやってすぐ責任転嫁するのは良くないな」

ゆい「に、兄さんはともかくですね…八城ちゃんも多少なり影響受けていると思います」

八城「あたしの場合、お兄ちゃんかな。まみーとは、あんま喋んないから」

基茂「オレの性格を受け継いでいるなら、その内対処出来るようになるだろう」

ゆい「そもそも兄さんってあまり下に降りてきませんよね?」

基茂「ネトゲに忙しいのだ」

八城「霞姉ちゃんも来てた?」

基茂「さっきやった所、こっちの知り合いには会わなかったな。モリサクさんなら居た」

八城「モリサクさんってあの良い人?」

基茂「あぁ。この前も一緒に戦ったんだが、前線では実に頼りになる」

八城「へぇー。今度会ってみようかな」

基茂「やしろんのレベルなら多分会えるだろう」

ゆい「兄さん兄さん」

基茂「どうしたゆいゆい、腹減ったか?」

ゆい「さっきから減りっぱなしですよ」

八城「まみーは台所のどっかにお菓子隠していたよ」

基茂「ふむ…どっかじゃ分からんな」

ゆい「兄さん、肉が欲しいです」

基茂「ゆいゆいが欲しい肉は何処に有るか知らんなぁ」

ゆい「冷蔵庫覗いてみたらどうですか」

ガラッ

八城「ゆいちゃん、牛乳があるよ」

ゆい「今のままじゃ兄さんを満足させられませんからね」

八城「ゆいちゃん、気にしてるの?」

ゆい「そ、そりゃ…こう、さらけ出しますから…ねぇ兄さん?」

基茂「だそうだ、やしろん」

八城「ゆいちゃん、フロンさんが逃げていくよ」

ゆい「フロンさんはなるべく排出しないようにしないとですね」

基茂「それで、見つかったのか?」

ゆい「あっ、そうでした。牛乳に目が行きまして」

八城「もう牛乳で良いんじゃない?」

ゆい「いえ、牛乳よりも兄さんの…」

基茂「食えるものさっさと探せ」

ゆい「はい、分かりました。あっ、チキンライスを発見しました。兄さん、卵は焼けますか?」

基茂「それぐらいなら出来るかな」

八城「という事はオムライス?やたー」

ゆい「八城ちゃんはオムライス好きでした?」

八城「うん、大好きだよ」

ゆい「ケチャップでお絵描きしますか」

八城「お兄ちゃんの似顔絵頑張るよ」


147-3

八城「事の外思ったようにいかんな」

ゆい「兄さん顔中血塗れですね。まさか兄さんも食人仲間でしたか」

基茂「いやそれ食ったとは限らんぞ。操でもあったじゃないか、死体の中に入るやつ」

八城「決して食べるとは言っていないんだよ!」

ゆい「あっ、はあ…」


148-1

八城「ゆいちゃんって魔族だったりするの?」

磨夢「月の人かもしれない」

八城「いやそれだと成長が逆だよ?」

磨夢「そう」

八城「そういやお兄ちゃんは?」

磨夢「朝早くから髪切りに行ってる」

八城「そうなんだぁ…まみーは切ってあげないの?」

磨夢「基茂のは切った事ない。ただ八城なら」

八城「ちょっとうっとしくなってきたし丁度良いかも」

磨夢「はい、野口。いってらっしゃい」

八城「あれ、さっきの話はどこ行ったのさ?」

磨夢「切ろうにも鋏が見当たらない」

八城「洗面所の方は?」

磨夢「基茂のひげ剃り、基茂の鼻毛カッター…」

八城「うわぁ、お兄ちゃんの私物だらけだぁ」

磨夢「此はわたしのブラシ」

八城「まみー髪長いもんね」

磨夢「ん」

八城「髪、解くね」

磨夢「下ろしてもちるくらいしかない」

八城「まみーとゆいちゃんは長いよね」

磨夢「ゆいはかなりある」

八城「お風呂で下ろしてるの見て色っぽく見えるよ」

磨夢「何故か分かる?」

八城「ゆいちゃんって美人の分類に入る…訳ないしね」

磨夢「ゆいは可愛い止まり」

八城「そだねー。お兄ちゃんも多分そう思ってるよ」

磨夢「でも基茂はゆいを女として見ている」

八城「何でかな」

磨夢「さあ、人は見かけによらず」

八城「初めてゆいちゃんを見てエロいと思う人なんて居ないよ」

磨夢「そもそもゆいは他人と関わらない」

八城「ゆいちゃん、うちやょぅι"ょ隊関連じゃないと自分から動かないもんね」

磨夢「ん」

八城「でもあたし達に内緒で行動してるかも」

磨夢「訊いてみれば可い」

八城「今度調査してみるね」

磨夢「さて、今日はどうする?」

八城「んー…後ろ髪がちょっと伸びてきたの」

磨夢「前髪は?」

八城「そんなに長いかな?」

磨夢「そう」


148-2

ゆい「こんにちは」

八城「あっ、…ゆいちゃんだ」

ゆい「barbar磨夢さん、ご来店ありがとうございます」

磨夢「ゆいも後で切る?」

ゆい「いえ、結構です。お邪魔したら悪い様ですので下がっておきますね」


148-3

ゆい「八城ちゃん、すっきりしましたね」

八城「前髪も切られたぁ、うぅ…」

ゆい「八城ちゃん目にかかって鬱陶しかったんじゃないですか?」

八城「それはあるけど」

磨夢「八城は主人公じゃないから」

八城「前髪が主人公の最低条件だよぉ」

ゆい「ふと思ったんですが、二人はよく話をするんですか」

八城「まみーは暇だからまだ聞いてくれる方だよ」

磨夢「そう」

ゆい「少し怪しいですが、可いでしょう。えっと…つかさんが旅行行ってきたらしいんですけどね」

八城「食いもんけ?」

ゆい「ボトルのドクペです」

磨夢「ボトルは存在した…!?」

八城「でも中身シークァーサードリンクだよ」

ゆい「これは昨日遊んでた分ですね。ょぅι"ょ隊でパーティーした際に余ったものです」

八城「えー!?パーティーなら呼んでcrayon」

ゆい「6時頃家に掛けても誰も居ませんでしたよ」

八城「そだったけ…?」

磨夢「5時半から基茂の部屋でユリユリ団地の上映会をしていた」

八城「あの映画、最後まで百合だったねぇ」

磨夢「あれは悪くない団地」

八城「主人公ゆいちゃんみたいだったよ」

ゆい「巫女でもやっていたんですか?」

八城「んにゃ、ひたすらエロかったんだよ」

ゆい「でも百合は磨夢さんでしょ」

磨夢「そう」

八城「じゃあまみーとゆいちゃんが混ざったやつかぁ。難しいね」

ゆい「わたしが言うのもなんですが、酷い主人公ですね」

八城「主人公の女の子はモテモテなの。あれ、これじゃあ二人と合わないみたい」

ゆい「モテモテ…ずばり兄さんです」

磨夢「いや、ゆいと八城を除けばちるだけだから」

ゆい「そうですかねぇ…兄さん、学校ではあんまりですか?」

磨夢「基茂は自分から動こうとしないから」

八城「お兄ちゃん、いつも寝ているんでしょ、まみー」

磨夢「わたしの授業では起きている。他は知らない」

八城「まみーにしたら意外だね」

ゆい「関心無いだけだと思いますが」

八城「無関心ー」

磨夢「そう、知る必要性が感じられない」

ピンポーン

八城「お客さんかな?」

磨夢「出なくていい」

ドンドンドン

ゆい「気が短いですね」

ガタガタガタ

八城「地震だ、地震だぁ」

ゆい「横に長い事揺れていますよぉ」

磨夢「ドアの音しなくなった」

八城「まだ揺れているよぉ」

ゆい「収まってきました…八城ちゃん大丈夫ですか?」

八城「ふぇぇん、怖かったよぉ」

基茂「震度4を観測したそうだ。津波の心配はありません」

磨夢「どこかで大地震?」

基茂「いや、最大が震度4」

磨夢「そう」

八城「ホラー観るなら?」

磨夢「Saw」

基茂「アイス食べるなら?」

磨夢「爽」

ゆい「正直其のネタ飽きません?」

磨夢「そう」

八城「で、何の話だっけ」

磨夢「ルネサンスの三大発明」

八城「ん?知らないあ」

ゆい「兄さん、それは…パソコンパラダイス!?」

基茂「これって優れた情報誌だったんだな」

磨夢「それ最近見ない」

基茂「これオヤジが通読していたやつだからなぁ。まあ10年くらい前のやつだ」

八城「へぇあたしより年上だ。今じゃ名作と呼ばれているものが沢山あるね」

基茂「読みたきゃ倉庫の方にあるぞ」

八城「やふー」


149-1

霞「こんにちは皆さん、お昼の放送です。この番組はわたくしかすむんのトークとクロちゃんの出資、リスナー皆様のお便りにより成り立っております」

玄那「この番組でわたしは何千円持っていかれるんだ?」

霞「なぁに善意ですよ善意。クロちゃんがこの番組にどれだけ思いを込めているかです。尚、クロちゃんの出資が止まり次第、放送部は突如崩壊致します」

玄那「部費はみな平等でなければならない。部活動に努める諸君には分かる筈だ。加入者全員の支援により部は存続されると」

霞「でもねクロちゃん、中には給食費が払えない人も居るんですよ。彼らの代わりにお金を出すのがクロちゃんの務めです」

玄那「かすむん、てまえのお金はどうしてんだい?」

霞「はは、家族共々ゲームに費やしてござぁい。最近はお父さんもゲーマーになったんですよ。いつかは社長の座を奪ってやる、がっはっはとの事です」

玄那「うむ、ならばおじさんとも対決しないと不可ないな。味方が居ない」

霞「さて、opは華暦でも流しましょう」

玄那「和風ロックってかっこいいよな」


149-2

霞「クロちゃんにお便りです。珍しいですね」

玄那「こんにちは。T.Wさんこんにちは。わたしには好きな人が居ます。クロちゃんは好きな人居ますか。うむ、居ないな」

霞「クロちゃんは彼女募集中だそうです。早く良い人が見つかると可いですね」

玄那「うむ、わたしは女だからな」

霞「いいえ、どこからどう見てもネカマです。だってね皆さん、幾ら女の子のアバターが可愛いと云ってもね、あなたが男ならガチムチのおっさんを選択するべきです」

玄那「それならイケメンの勇者様が良いな」

霞「美形のお兄さんなんて実在しませんよ?歴戦を勝ち抜いてきた強者はみんなおっさんです」

玄那「でも伊達政宗はかっこいいんだろう」

霞「クロちゃんも眼帯付けたいんですか?」

玄那「いや、そういうつもりは無い。次行こう」

霞「R.Nさんからです。クロちゃんにお願いです。最近猫を拾ったんですがうちではペットが飼えません。貰ってください」

玄那「ウーム、猫か。うちのアパートは大家さんが猫好きだからか猫だけは許可されているんだよな。それを知らず他人に届ける人も居たが」

霞「ではこの件は解決ですね。あーわたしの家は不可ませんよ。わたしが猫アレルギーですからね」

玄那「へぇ意外だな。家でもにゃんにゃんしてそうなのに」

霞「という事でR.Nさん、今度クロちゃんと猫カフェに行ったら可いですよ」

玄那「天海の方にあったよな。わたしも行こうと思っていた。R.Nさん、放課後に屋上で会おう」

霞「普通の人は入り口すら知りませんって。でも放課後すぐだと下駄箱なんかはすぐ混み合いますからね」

玄那「じゃあ正門前な、R.Nさん」

霞「果たして、R.Nさんはクロちゃんに会えるのか!?クロちゃん、いつも裏門から使っているでしょう?」

玄那「そうだな、今回だけは正門使わなければ」

霞「You got a mail」

玄那「またわたしか。好きな人が居ます。鬼太郎ヘアのちびっ子で…ん、待て。これ父さんからじゃないか!?」

霞「おかしいですね。部外者はお便り出せない筈ですが…なりすましじゃないですか?」

玄那「なりすましにしたらひどいな。父さん入学したのか?」

霞「教員にでもなったんじゃありませんか。さて次へ行きましょう」

玄那「其れが真であるなら退学するぞ」

霞「曲でも流しますか?コーナーです」

玄那「バックでずっと流れているけどな」

霞「其れと此とは違いますよ。わたしが好きで流しているのとリスナーさんのリクエストですからね。M.Iさん、かすむんの歌声が聴きたい。却下です。S.Kさんのリクエスト、罠…良いですね!」

玄那「オレがDJだッ!」


149-3

霞「いやー、良かったですね。輝いていましたよ」

玄那「次は…これとか?」

霞「Y.Tさん、かすむん秘蔵の電波ソングメドレー、何でそれを知っているんですか!?」

玄那「放送で可く流しているから、みんな知ってんだよ」

霞「かすむん秘蔵の厨二ソングメドレーはまた来週ですね」


150-1

磨夢「………」

ルイ「………」

磨夢「実に良い」

マスター「ムー…割ったつもりやないんやけど」

磨夢「わたしは素面だから」

マスター「だそうや、ルーちゃん、どうする?」

ルイ「えっ、何?今他のお客さん相手していたから」

マスター「いや、あんな、ルーちゃん。ムーがルーちゃんを不審な目で見つめてたんや

ルイ「磨夢?」

磨夢「モンブランを一つ」

ルイ「おっけー」

マスター「…あっ、トッシーや。いらっしゃい」

敏樹「こんばんは、マスター。そこに居るのは延原先生ですか?」

磨夢「うみ先生、こんばんは」

マスター「そういや二人は同僚なんやっけ?トッシーとリトさんが友達なんは知ってるけど」

敏樹「そうだよ、あまり会う訳でもないけどね。延原先生職員室には居ないんだね」

磨夢「わたしにはわたしの居場所があるから」

敏樹「マスター、其れは何処か考えてくれるかい?」

マスター「一人で居れそうな所やろ?トイレとか」

敏樹「延原先生籠もっていらっしゃるのか」

磨夢「席を外す手には向いている。たまに用いている」

敏樹「一人って訳でもないんだったら、図書館とか?」

磨夢「おそらく今のうみ先生には分かるまい」

敏樹「あの学校には僕も知らない場所があるのかなぁ」

マスター「…そやトッシー、ピアノ弾いてもらえる?BGMがあんま単調すぎてお客さんも退屈やろうし」

敏樹「うん、任せてよ。で、肝心のピアノは何処にあるんだい」

マスター「確か地下の倉庫にあるんやけど…」

磨夢「何でわたしを見る?」

マスター「ムー超能力使って地下から持ってきてェな」

磨夢「取りに行った方が早い」

敏樹「あのー、僕が取ってこようか?」

マスター「じゃあうちも尾いてくわ。るーちゃん、頼んだで」

ルイ「マスター、何か用事?」

マスター「うん、ちょっと抜けるからよろしくな」

ルイ「うぃー、マスター。お客さんお会計ですか?只今参ります」

磨夢「ルイ、大変?」

ルイ「うーん、お菓子なら間に合うけど、お酒は無知だからね。磨夢、頼める?」

磨夢「ん」

おっさん「いつものやつ、頼むよ」

磨夢「どうぞ」

おっさん「何故分かったんだい!?」

磨夢「勘が働いた」

ルイ「磨夢、トレビアン!ソムリエだよ」

磨夢「ん…」

マスター「ふぃ、おまたせ。二人掛かりでも重かったわこれ。あっムー代わりやってくれてん?おおきに」

ルイ「磨夢、そこのお客さんの注文見事に当てたんだよ」

マスター「ほーそいつはすごいなぁ。それならうちもサボれる」

ルイ「マスターが居ないと一日で潰れるよ?」

マスター「辛辣やなぁ。でもるーちゃんでさえバイトなんやし、それは言えてるかも」

ルイ「マスター人気者さんだからってのもあるね」

マスター「最近るーちゃん目当てのお客さんも多いみたいやし、どれ、マスター変わってみるか」

ルイ「そしたらマスターがマスターじゃなくなるよ?」

マスター「るーちゃんはわたしの名前知っているやろ」

ルイ「リリ・アークレイ」

マスター「合ってるようで間違ってるんがるーちゃんやねんな」

磨夢「りーちゃん」

マスター「ムー、うるさい」

磨夢「ん」

ルイ「マスター、今度礼拝に行こうね」

マスター「宗教なんて興味ないわぁ。後うち此処に居る方が好きやし」

ルイ「でも白くなったりしないよね」

マスター「地肌やからな。るーちゃんが黒くならんのと一緒や」

ルイ「磨夢、ジャポネはどうなの」

磨夢「うちは全員白い」

ルイ「日本人は白人が多いんだ」

マスター「汗水垂らして働く封建社会は何処に行ったんやろうなぁ」

ルイ「まみーは働いてるんじゃなかったの?」

磨夢「働いていても屋内だから」

マスター「ムーは力仕事向いてそうやし、るーちゃんとこで働いたらええんちゃう?」

ルイ「人手足りないし、募集中だよ」

磨夢「ありがとう。でも今の仕事で満足しているから」

マスター「教師はやり甲斐あるやろなぁ。どんなんか知らんけど」

敏樹「うちの学校は良い所だよ。好きな事が出来る」

磨夢「一応教科書に則った授業はした方が可い」

敏樹「教科書なんておまけだよ。もっと難しい曲が良い」

マスター「トッシー一人でお客さん楽しませてるなぁ。足下にも及ばへん、立派や。ムーも何か芸当があればええんやけど」

磨夢「………」

ルイ「華麗なフライパン返しとか」

磨夢「それはルイがやれば可い」

ルイ「わたし、出来たかなぁ。ホットケーキとか焼く時も別に魅せないから。後あれだね、お客さんから厨房見えないよ」

磨夢「遠くからでも見える」

マスター「そんな凝視してるんは磨夢くらいやろ、と思ったけどるーちゃん見てるお客さんって結構居はるな

ルイ「そうなんだ、じゃあかっこいい所見せようかな」

マスター「るーちゃんってそんな照れ屋でもないねんな。あっ、接客業やから慣れてんのか」

ルイ「宅配だって顔を見せる職業だからね」

マスター「ムーみたいなお客さんも居るんやろうし、慣れてるんやな」

磨夢「ん?」

ルイ「担当している所はお喋りな人も多いから、つい話しこんじゃうね」

マスター「うちみたいな酒場ならええけど、宅配業でそれはまずいんちゃう?」

ルイ「うぃー…けど、アミも沢山出来たよ。磨夢とかはその一人だし」

磨夢「マスター、ルイって案外社交的?」

マスター「うちに引けは取らんのは確かやな。るーちゃん、日本語はどこで覚えたんやったっけ?」

ルイ「んー…向こうでは基礎の基礎しか学ばなかったから、殆どこっちで慣れたもんだよ」

マスター「あれ、でもうちと出会った時は既に日本語ペラペラやったで」

ルイ「その頃には、あの宅配業を始めていたからね」

マスター「それまでは何かしてたん?口を使わへん仕事か」

ルイ「内職で貧乏生活していたなぁ」

磨夢「ルイ、うちに来てくれれば日給1万3食昼寝付きで雇っていた」

ルイ「その待遇ならすぐにでも会うべきだったよ」

マスター「ムー、何の話をしてるんや。それとそんな大金は何処から出るん」

磨夢「FXで荒稼ぎ中の友人よりルイの口座に振り込まれる」

ルイ「それってゆいの事?」

マスター「ユイールってそういう事に疎そうやけど」

磨夢「ゆいは機械音痴だから。そしてその稼ぎ方はもっとおかしい」

ルイ「温泉掘り当てるとか?」

マスター「いや、油田やろ。ユイールはおかしいねんで」


150-2

ゆい「ゲオフォグファ」

八城「火事かな救急かな」

ゆい「や、八城ちゃん?な、何こんな夜中に…ゴハッ、119ごっこしてるんですか?」

八城「急に目が覚めて、ゆいちゃんの声が聞きたくなったから電話したの。で、どったの、ゆいちゃん」

ゆい「と、とりあえず救急で…」

八城「うん、分かった。よっと」

ゆい「何か使いましたか?」

八城「やってみたら案外出来るもんだね。特にモデルは居ないよ。それで大丈夫ゆいちゃん。あたし血は嫌いなんだよ」

ゆい「本当の119を…お願いします…ガクリ」

八城「ゆいちゃあああああんっ!!」


150-3

磨夢「そう、ゆいが」

八城「血ゴッファゴッファしてたよ」

磨夢「副作用…ゆいは別に病原菌持ってないから」

八城「だから、ちるお姉ちゃんが元気でいられるんだよね」

磨夢「ん…本当に無茶して」

八城「あれどうにかなんないの」

磨夢「あれをやめさせたら、ちるが死にかけるくらい病状悪化するから難しい」

八城「ふぅん、難しいかぁ」

磨夢「ゆいはちるの引っ越しを予見していた」

八城「でも血吐くの初めて見たよ。ゆいちゃんがあんなに苦しそうなの」

磨夢「発症の確率としては低い。しかし発症すると、あれ程迄になる」

八城「たまに貧血っぽいのは見るけど」

磨夢「それはちるの現状と変わりにない」

八城「そうなんだ」


150-4

務「八城殿か」

八城「つっかー来てたんだ。で、ゆいちゃんは」

務「命に別状は無いとの事です。しかし退院迄三日は掛かるそうですぞ」

八城「三日かぁ、寂しいなぁ…あっ、ょぅι"ょ隊、頑張ってね」

務「はっ、ゆい殿の為なら喜んで巫女服着ます」

八城「つっかーは暫くお見舞いに来るんだよ?」

務「部下として至極当然の事であります」


150-5

基茂「ゆいゆいは来ないのか?」

八城「うん、ちょっと倒れちゃって…今病院だよ」

基茂「珍しい事もあるもんだな。あいつ体力だけが取り柄なのに」

八城「でもすぐ退院してくるよ。ゆいちゃんだからね」

基茂「ゆいゆいなら間違いないな」


151

玄那「こんにちは、椎木先輩」

ちる「こんにちは、クロちゃん。今日も…いい天気です」

玄那「こんな気持ちのいい日にはゲーセンに限る」

ちる「こんな良い日には、図書館に限ります」

玄那「伊崎先輩とは約束していないのか?」

ちる「基茂さんは最近…休日には、会っていませんね」

玄那「多分家に行ったら居るんじゃないか。居留守されるかもしれないが」

ちる「基茂さんにも屹度、一人で居たい時が、あるんですよ」

玄那「私はいつも一人で居たいくらいだ

ちる「わたしもです…でも寂しくなったら、いつでも、上がってください。クロちゃんなら、すぐ開けますから」

玄那「先輩は優しいな」

ちる「後輩の事は、ちゃんと分かっていますから」

玄那「ありがとう先輩。じゃあわたしはこっちなので」

ちる「はい、楽しんできてください」


152

ゆい「………」

磨夢「ゆい」

ゆい「磨夢さん、来てくれたんですね」

磨夢「仕事帰りのついで」

ゆい「はい、嬉しいですよ」

磨夢「具合はどう」

ゆい「吐血した後は少し体がだるい位で話す事なら出来ますよ」

磨夢「なら退院も早い」

ゆい「はい、ですから心配は無用なんですよ…zz」

磨夢「………」


153

玄那「何かお便りっぽいもの。自分はある集団に属している。その集団に活動があった。しかし来てみれば人が居ない。居るのは自分を含めあまり喋った事がない数人のみ。誰か親しい人が来ると期待しても全く来ない。遂には帰ってしまったんだ。どう思う?」

霞「受け身体質の人間が親しくない人と無理に話す人間はないんです。コミュ障のあるあるネタですね。そもそも引きこもって人間関係を絶っていれば、そうなるのは当然です」

玄那「そして現実逃避に走る、まあわたしだがな」

霞「強く悩んでいる人程改善しようとしないんですよ。寧ろそのままで良いと達観するでしょうか」

玄那「友人一人二人有れば、人生やっていけるだろう」

霞「それは正しい結論ととって良いんでしょうかね」

玄那「やめだやめだ、暗い話なんてするんじゃない。そうだな、次の大会はいつだったか」

霞「来週の土曜日ですね。普段見ない強者が集いますよ」

玄那「都会のゲーマーは強者か。楽しみだな」

霞「ナガさんとかサダさんとか有名プレーヤーは幾らでも居ますよ」

玄那「二人共全国クラスの人間だろう。本気を出した霞も入るよな」

霞「さあ、どうでしょう。今回も多分遊んで終わりになりますよ」

玄那「特にめぼしい景品も無いしなぁ。霞は全国に名を轟かせたくないのか」

霞「お母さんが居れば三宅家は安泰ですよ。尤もお母さんは匿名ですけど」

玄那「だから霞は身バレしない、と。そうだな、野望は抱かないんだったな」

霞「別にプロゲーマー目指している訳じゃないんですよ。わたしには末期の変態を治療する為に医者になるという大きな夢があるんですから」

玄那「しかし変態は治療を望まない患者も多い。大半が諦めているんだろう」

霞「有史以来、不治の病と言われてきましたからね。こんな難病相手とはわたしも腕が鳴ります」

玄那「よし、今すぐ延原先生を何とかしてこい」

霞「先生は無理です。全人類の後回しにします」

玄那「身近な存在なのにひどい言いようだな」


154

基茂「ごちそうさま」

八城「お兄ちゃん早いねぇ」

基茂「ゆいゆいが居ないからな」

八城「もう少しお話してくれてもいいのに」

基茂「ゆいゆいの事なら他当たってくれ。じゃあな」

八城「ふぇぇ…お兄ちゃんの引きこもりぃ」

基茂「外に楽しいものがねーからな」

八城「お兄ちゃんの紐男ぉっ」

基茂「何とでも言え」

八城「むむぅ」

磨夢「………」

八城「ねぇまみー、ゆいちゃんどうだったの」

磨夢「吐血無かったから、すぐ治ると思われる」

八城「それは良かった」

磨夢「そう」

八城「んー…」


155-1

ゆい「こんにちは皆さん、わたくし羽衣ゆいは予定より早く退院出来ました。これも磨夢さんが式神様にお祈りしてくださったお蔭です。式神様こういう時は働くんですね」

八城「ふぇぇん、ゆいちゃあああん。ゆいちゃん無しじゃ家庭崩壊するぅぅぅ」

基茂「家庭崩壊っておま…」

ゆい「兄さん、磨夢さんはいらっしゃらないんですか?」

基茂「そこの置き手紙の通りだ」

ゆい「一寸本屋行ってくる。捜さないで。まるで兄さんみたいですね」

八城「お兄ちゃんが目を付けた新作官能小説だよ」

基茂「あれ表紙と題名じゃまるきり識別出来んからな」

ゆい「兄さんが行けばいいんじゃないですか」

基茂「今イベントで忙しいからな。家に居れる貴重な時間を割く訳には不可んのだ」

八城「あたしは暇してるんだけどね」

ゆい「つまり二人共暇なのに家出ないんですね」

八城「だねー。だからあたしはいつでもまんまるって言われるんだぁ」

ゆい「八城ちゃんが欠けたら大変な事になりますよね」

八城「肉分け与えるのは可いと思うんだけどなぁ」

ゆい「八城ちゃんは食べませんよ」

八城「本当かなぁ」

ゆい「嘘の嘘は本当ですよ」

八城「じゃあゆいちゃん、いっつも嘘吐いてるんだね」

ゆい「さぁ、どうでしょうね…あっ、磨夢さんおかえりなさい」

八城「まみーおかーり」

磨夢「ゆい、おかえり」

ゆい「はい、ただいまです」

磨夢「ゆい、また痩せた?」

ゆい「当たり前ですよ、あんな事になったんですから」

八城「ゆいちゃん背中乗ってみて」

ゆい「お母さんになったつもりですか。まあいいですが」

八城「あっ、やっぱ軽いべや」

磨夢「計量に間に合わない」

ゆい「わたしゃ力士やレスラーですか」

八城「今度鍋しよ、まみー。お肉多めで」

磨夢「ゆいは頭蓋骨とか欲しい?」

ゆい「骨じゃなくて肉が欲しいです。後、わたし病み上がりですから遠慮しておきます」

磨夢「成程、雑草魂は失われていない」

ゆい「そんな時期もありましたね…いつだったか忘れましたが」

八城「ゆいちゃん草食べてたんだぁ」

磨夢「宝くじ当てる前はボロ神社だったから」

ゆい「最近改装したんですよ。鳥居も綺麗な朱色に染めたんです」

八城「ゆいちゃん真顔だから嘘だ」

ゆい「数多ある嘘の中に真実は隠されているのです」

磨夢「但し雀の涙程」

ゆい「でも八城ちゃん騙しても面白くないです。どうせなら磨夢さんを、ねえ八城ちゃん」

八城「え、うん。じゃあ行くよ、ゆいちゃんの経験人数は65535人なんだよ」

ゆい「兄さんがそれだけ居ればわたしも殖えないと不可ませんね。影分身の術です」

八城「あたしゆいちゃんの影分身。でもまだ早いや」

ゆい「諦めている辺り、完全に別人じゃないですか」

八城「あたし八城。ゆいちゃんの事とか分かんない」

磨夢「正直云ってゆいの事なんか分かる必要はない」

ゆい「わたしたちは分かり合えないんですか」

八城「赤の他人だもの」

ゆい「そりゃあんまりですよ。確かにわたしも八城ちゃんの本性は知りませんけど」

八城「あたし実は猫だったんだ、にゃーん」

ガサッ

磨夢「蕨?」

ピョンッ

八城「やっぱりまみーのお膝が落ち着くんだね」

蕨(こくり)

八城「そうだね、ゆいちゃんの膝乗ったらまた病院行きだもんね」

ゆい「早い内に接骨医の予約でもしときましょうか」

蕨(じーっ)

ゆい「蕨ちゃん、それ以上は望まないでくださいね」

蕨「………」

ぴょん バキィッ

ゆい「のわぁっ!?」

八城「ゆいちゃん大丈夫?」

ゆい「あぅあ…」

蕨(♪)

八城「ゆいちゃん多村、多村」

ゆい「磨夢さん、ベッド…借りていいですか?」

磨夢「お気兼ねなく」

八城「あっ、ゆいちゃんおぶってってあげるよ」

ゆい「あぁ、どうも…」

磨夢「蕨」

蕨(こくり)


155-2

基茂「ありゃ、ゆいゆいは?」

八城「帰ってきたと思ったらまた寝込んだよ」

基茂「でもすぐに治るんだろ?」

八城「寝たら治るってまみーが言ってた」

基茂「脆い割に再生能力は高いんだよな」


155-3

ゆい「はっ…」

磨夢「治った?」

ゆい「磨夢さん、何かしましたか。骨が元通りに」

磨夢「ドクターなんとかが治してくれた」

ゆい「あぁ、何でも治す超人的整形外科さんですか。また変な所で専門的な先生ですね」

磨夢「ん、内科医や普通の外科医でそういう先生居ないから」

ゆい「ちなみに男性ですか女性ですか」

磨夢「覆面被ってて分からなかった」

ゆい「病院でヒーロー降臨しちゃいましたか」

磨夢「どこぞの小学校の三計測に喜んで出向した変態」

ゆい「あぁ、だからわたしの所にも来たんですね」

磨夢「本人曰わく小児科に転向したいとの事。そしてゆいの専門医になるのが夢」

ゆい「変態は兄さんだけで結構ですよ」

磨夢「そう」

ゆい「お前が言うなみたいな目をしていますが」

磨夢「別に」

ゆい「でもわたしには一般的なネタが分かりません、すみません」

磨夢「昔のゆいはそんなんじゃなかった」

ゆい「当時語らぬわたしに性格なんてなかったんですよ」

磨夢「お互い無言だった」

ゆい「それでもぼくら」

磨夢「以心伝心」

ゆい「そんなわたしたちでしたからね」

磨夢「ん」


156

玄那「ドーブラエウートラ、先輩」

ちる「グーテンモルゲン、クロちゃん。ロシア語、取ったんですか?」

玄那「ダー、英語はわたしの敵だ」

ちる「クロちゃん、英語は重要な科目ですよ」

玄那「わたしはロシアに進出するから問題ないぞ、先輩」

ちる「では、わたしも、ロシアを越えて、ドイツへ…向かいます」

玄那「先輩も英語苦手なんじゃないか?」

ちる「人並みには、出来ますよ」

玄那「中間の点数を」

ちる「な、七十…」

玄那「わたしはまさかの90点台だ」

ちる「クロちゃんは、出来る子、だったんですね」

玄那「一年の試験は易しいんだろう。伊崎先輩に訊けば分かる話だ」

ちる「そうですか…ちなみに、かすむんは?」

玄那「満点だ」

ちる「教師を、買収しましたか」

玄那「ジョージ先生、それでいいのか」

ちる「英語の教師、磨夢先生じゃないん、ですね」

玄那「延原先生は基本的に社会系じゃないのか」

ちる「基本的には、そうですけどね」

玄那「では、わたしはこっちなんで」

ちる「はい、ではまた」


157

玄那「ふへぇ…何故椎木先輩は共学を選んだんだ」

霞「一応地方随一の進学校ですからね。良い女子校もそうありませんからね」

玄那「うちは平和であり、風紀も厳しいからな。不良は即退学だ」

霞「通りで不良を見ない訳です。馬鹿は居てもみないい子なんですね」

玄那「そうだな、屋上も認証コードを導入したらしいからな。選ばれた人間しか入れない。管理者が時間設定すればサボりも出来ない」

霞「何故変な所に技術を詰め込むんでしょうか」

玄那「この件に関しては、ゆいゆいネットワークが関与しているという話だからだ」

霞「また延原先生の思惑ですね。その技術は椎木先輩の為に使われ得ると云う」

玄那「昨年は伊崎先輩の占領下にあったらしい。生徒があまり来ていないからだったらしいが」

霞「屋上なんかより皆さん、食堂に行きますからね。大半が寮生で弁当も用意出来ませんからね」

玄那「やはり、わたし達は異端だな」

霞「クロちゃんはともかく、わたしは実家暮らしなんで」

玄那「いいや、実家暮らしが異端だ」

霞「今度からお母さんの弁当持ってきませんからね」

玄那「なら椎木先輩の手作りを頂くのみさ」

霞「それならわたしは延原先生の手作りを伊崎先輩に分けてもらいます。わたしの家は伊崎先輩の家と離れていますからね」

玄那「道中貰ってくりゃあいいだろう」

霞「いつ会えるんですかね」

玄那「延原先生なら早朝だ」

霞「貰ってこいと云う事ですか。クロちゃん何考えて…」

磨夢「はろー霞、弁当作ってあげようか」

霞「わたしはお母さんが居ますから」

磨夢「そう」

玄那「本当にすれ違いトークだな」

霞「また引き返してきますよ」

磨夢「やあ」

霞「何か用ですか」

磨夢「今度はいつ会えるの、霞」

霞「次の次の授業ですね」

磨夢「待ち遠しい」

玄那「去って行ったな」

霞「次の授業、ノート提出ですね」

玄那「来週出すか」


158-1

ちる「あっ、基茂さんも…ひなたぼっこですか」

基茂「そうだな、いい天気だし」

ちる「布団、出しとけば…良かったです」

基茂「洞窟行けば良かった」

ちる「基茂さん、今日の、お菓子です」

基茂「ポッキー苺味貰うぜ」

ちる「どうぞ、基茂さん」

基茂「一本ずつ手渡しなのか」

ちる「ポテチも、一枚ずつ…手渡しです。箸で、差し上げます」

基茂「ポテチは手が汚れるからな、妥当な選択だ」

ちる「飲み物も、用意して、います」

基茂「メロンクリームソーダを注いでくれ」

ちる「はい」

基茂「さんきゅ。そして片手に本だ」

ちる「難しそうな、本ですね」

基茂「磨夢一押しだ。上巻を貸そう」

ちる「ありがとうございます」

基茂「…っと、着信だ。少し外すな」

ちる「はい」

八城「あたし食うものないの」

基茂「磨夢もひどいな」

ゆい「また屋上まで行きますか?」

八城「あれは当分やりたくないなぁ」

基茂「どっかで買ってきたらどうだ」

八城「ゆいちゃん、よろしくね」

ゆい「何故わたしが…」


158-2

店員「らっしゃっせー」

ゆい「お肉ありますかね」

店員「なっしゃっせー」

ゆい「ふざけてますよね」

店員「ちゃいまっせー」

ゆい「あなた関西人ですね」

店員「そうでっせー」

ゆい「外に出た方が暖かいですよね」

店員「サウナ行けー」

ウィン

ゆい「はぁはぁはぁ」

ルイ「ボンジュールゆい、どったの疲れた顔して」

ゆい「ここの店員きついです」

ルイ「えっ、わたしは普通に話せるよ」

ゆい「では手本を見せてください」

ルイ「おけー」

ウィン

店員「いらっしゃいませ」

ルイ「ラムネください」

店員「組の方ですか、少々お待ちを…おまたせしました」

ルイ「じゃあこれでお願いします」

店員「ありがとうございました」

ルイ「ラムネだよ」

ゆい「店員さん、違いましたね」

ルイ「あの店員さん替わってないよ」

ゆい「室戸さんですよ」

ルイ「うぃー、イレムッシュー室戸」

ゆい「おかしいですね」

ウィン

店員「らっしゃい」

ゆい「お名前は」

店員「てまえは室戸でい。ご注文は何にしやそうか」

ゆい「あっ、では焼き肉弁当2つ」

店員「合点承知でい。お待たせしやした。720円でい」

ゆい「では1000円で」

店員「お釣りは280円でい。また来てくんな」

ウィン

ゆい「か、買えました」

ルイ「良かったね」

ゆい「室戸さんは双子か何かですよね」

ルイ「三つ子かもしれないよ」

ゆい「もう一パターンあるんじゃないですか」

ルイ「わたしは仕事戻るね」

ゆい「お昼ラムネなんですか」

ルイ「ノン、補充用」

ゆい「補充用?」

ルイ「たまに切れる時があるの」

ゆい「………」

ゆい「ただいま、八城ちゃん」

八城「あっ、おかえりなさーい」

ゆい「今日は焼き肉弁当ですよ」

八城「ゆいちゃんのは特注じゃないの」

ゆい「そっちまでは行っていませんから」

八城「これは豚だよね」

ゆい「豚でしょうね、わたしは」

八城「ゆいちゃんは何豚なの」

ゆい「兄豚ですね」

八城「お兄ちゃんだけどお兄ちゃんじゃない」

ゆい「それでも兄さんは兄さんです」

八城「難しいね」

ゆい「兄さんを兄さんと呼びますが、血縁上の兄さんではない。そういう事ですね」

八城「だから結婚は出来るんだよ。ゆいちゃん、おめでとう」

ゆい「いや、兄さんにはちるさんが居ます。屋上をご覧なさい、あんなにいちゃいちゃしてますよ」

八城「ゆいちゃん、目ぇ良いんだね」

ゆい「内部情報に詳しいだけです」

八城「確かにゆいちゃんにはあんなに甘くないよね」

ゆい「兄さん最近ちるさん以外には冷たいですからね」

八城「ふぇぇ、昔のお兄ちゃん帰ってきてよぉ」


159

舞浜「ノック行くぞ野郎共ォォォォォォッ!」

野球部「ウッス!」

飛鳥「あれ、舞浜さん戻ってたんだ」

潤作「たまに顔出したらあれだぞ、本当にたまらん」

飛鳥「今日はたまたま?」

潤作「そうだ。明日も来てくれたらいいな」

飛鳥「舞浜さんには適度なのかも」

潤作「だが舞浜居ると居ないでこの差なのは少し困るな」

飛鳥「お兄ちゃんも十分カリスマはあるよ」

潤作「舞浜が部長になってればこんな思いをする事も無かったのにな」

柘榴「飛鳥ちゃん、危ねーぜぃ」

飛鳥「んじゃあお兄ちゃん、頑張ってね」

潤作「うむ」

純治「やあやあ飛鳥さんじゃないですか」

飛鳥「これはこれは純治さんや。何故残ってるんですかい」

純治「美術の課題で居残りしてましたじゃい」

飛鳥「芸術選択を変更したの」

純治「人を描いてみたくなったのだ。今度の課題、飛鳥さんモデルは如何ですかな」

飛鳥「わたしはそんなに脱げませんよ、純治さんや」

純治「まあ冗談じゃ。寧ろわしが脱いでしんぜよう」

飛鳥「見飽きましたわ、純治さん」

純治「そんないつも見てるような言い方するなし」

飛鳥「わたしゃあ幼少期に見てれば、その後は想像に任せますからねぇ」

純治「ならわしもそうする事にするかのぅ」

飛鳥「ひくわぁ」

純治「いえいえ飛鳥さん程では」

飛鳥「何も嬉しくないのん」

純治「全くじゃ」


160

ゆい「やあゆうよお、こんばんは皆さん」

八城「ゆいちゃんおかえり」

ゆい「定型文は懲り懲りです」

八城「ゆいちゃんおかえり、ご飯にする、お風呂にする、それともお・兄・ちゃ・ん?」

ゆい「兄さん戴きます」

八城「もう、ゆいちゃんたら」

ゆい「兄さん」

基茂「何だ俺は忙しいんだ手短に済ませてくれ」

ゆい「兄さんってスタミナあると思いますが」

基茂「早い時は早いんだ、仕方ない」

ゆい「でも個人的には遅い方が良いんですよ」

基茂「そりゃそうだろうな」

ゆい「兄さん、早くしてください」

基茂「結局どっちなんだよ」

磨夢「………」

ゆい「磨夢さん、兄さんが遅いんですよ」

磨夢「基茂は早い方が良い」

ゆい「だそうですよ、兄さん。わたしは先に寝ていますから。いつでも来てくださいね」

基茂「キリの良い所まで行ったらな」

磨夢「八城、お湯、沸いた?」

八城「まだみたい。この漫画面白いね」

磨夢「ミステリーもまたいい」

八城「探偵さんは居ないみたいだよ」

磨夢「それはそれで奥が深い」

八城「この人、ゆいちゃんみたいに血ぃ吐いてるよぅ」

磨夢「この話は…他殺。しかし犯人が分からない」

八城「手掛かりが掴めないから、難しいよね」

磨夢「探偵が居ても登場人物に含まれなければ埒があかない」

八城「高飛びとかされちゃあ分かんないね」

磨夢「指紋、DNAが判明すればいずれは…」

八城「国際指名手配だっけ」

磨夢「ん」

キィ

八城「らびぃ?」

蕨(ニコッ)

八城「おいで、らびぃ」

蕨「………」

磨夢「ん?」

蕨(ギュー)

磨夢「蕨、八城にも」

蕨(コクリ)

蕨(タタッ。ギュー)

八城「おおぅ、らびぃ暖かい」

蕨(ニコッ)

磨夢「お湯沸いた。何か飲む?」

八城「あたしグリンティー、らびぃは牛乳?」

蕨(コクリ)

磨夢「ん、分かった…はい」

八城「ありがとう、まみー」

蕨(ニコッ)

八城「ところで晩御飯は?」

磨夢「トンカツ」

八城「わーい」

磨夢「今から揚げていく」

八城「あらま既にどついてたの」

磨夢「聞こえなかった?」

八城「お兄ちゃんの部屋に居たからね」

磨夢「そう」

八城「そういえばもうすぐハロウィンだね。お金頂戴」

磨夢「それは違う」

八城「何を貰おうかな」

磨夢「霞の所に行ったら色々ある」

八城「まみーの食糧庫じゃん」

磨夢「品揃えは豊富」

八城「らびぃもかすむん家に行こう」

蕨「♪」

trr

霞「はい、もしもし。この電話番号だと誰が掛けてきているのか分かりませんね」

八城「お兄ちゃんでもなく、まみーでもないよ」

霞「やしろん、ばんわぁ。何か用ですか。ゲームやお菓子の事なら是が非でもお姉ちゃんを頼ってください」

八城「ハロウィンにそっち向かうからよろしくね」

霞「そういえばもうそんな時期ですねぇ。やしろんは何が好きですか」

八城「お菓子なら何でもいいよ」

霞「お任せください、お嬢様。よりにかけて作りますね」

八城「それってバレンタイン」


161

ゆい「磨夢さん磨夢さん、お顔の下でゆらゆらするものありません」

磨夢「トコトンヤレトンヤレナ」

ゆい「本当に磨夢さんってぺったんこですね」

磨夢「そう、わたしはぺったんこ」

ゆい「そこ、強がる所ですよ」

磨夢「わたしは現実と向き合っているから」

ゆい「先月分は大幅黒字だったそうです」

磨夢「そう」

ゆい「………」

磨夢「ん?」

ゆい「高低差ですよ。組織は遂に息を吹き返したんです。企画の何もかもが上手くいきました、順風満帆です」

磨夢「これでゆいを信頼出来る」

ゆい「まるで今までちっとも信頼していなかったような云い様ですね」

磨夢「ゆいには特別に見せる、このノート」

ゆい「どれどれ、わたしに対する評価は…」

八城「ふぅーお茶々丸ー…あり、ゆいちゃん、固まってどったの?」

磨夢「放置で」

八城「これが放置プレイかぁ」

蕨「………」

八城「らびぃ、おはよう。まみー、最近思ったけどレオポンどこ行ったの」

磨夢「レーダーによると隣町」

八城「山越え谷越えどこさ行くべ」

磨夢「驚かない?」

八城「うん、レオポンよく居なくなるし。そういつも驚カタルーニャ」

磨夢「そう」

ゆい「主は何処に居られますか。この惨状を打開出来る存在は主に他なりません。さあ今、私を救ってください!」

磨夢「幾ら主を求めても、引きこもりだから」

ゆい「兄さんは最近伝説の存在になってきていますよね。ですが、わたしの求心力が衰える訳ではございません。その源はわたしの心中にございます」

磨夢「そう」

八城「まみーってゆいちゃんより弱いの」

ゆい「磨夢さんは兄さんに対する欲求が皆無に等しいですからね。わたしのように常日頃から想っている身にもなってみてください。兄さんを想うだけで濡れてきまして…」

磨夢「ゆい、もう寝た方がいい」

八城「ゆいちゃん、今日は泊まってきなよ」

ゆい「良いんですか?兄さんの部屋は毎朝通っていますけど」

八城「あたし朝のゆいちゃん知らないよ」

ゆい「想像にお任せします」

八城「お兄ちゃんの初めてを奪ったのも朝なの」

ゆい「はい。しかし兄さんは風俗に行った事ある顔をしていますよね」

八城「ゆいちゃん色に染まっている所為じゃないかなぁ」

ゆい「わたし色に…しかしわたしはあくまで愛人であって、ちるさんと敵対するつもりは御座いません。兄さんには技術を磨いてもらうんです」

八城「だってさ、まみー」

磨夢「それで上達してるの」

ゆい「兄さんですか?兄さんは飲み込みが早いだけではなく、独自の技術を編み出すんです。それは大変気持ちの良いものです。磨夢さんも良かったら一回どうです」

磨夢「基茂には興味は無い」

八城「あっ、じゃあ今度お風呂入ったらお兄ちゃんに洗ってもらうよ」

ゆい「兄さんは八城ちゃんには興奮しないらしいです」

八城「本当かなぁ。浴槽も覗いてみよ」

磨夢「基茂が全裸で出てくる件」

ゆい「それはわたしが予約している時です」

八城「朝も夜も忙しいんだね」


162

磨夢「ちる…」

ちる「あっ、こんにちは。磨夢さん」

磨夢「基茂は?」

ちる「そこで、読書を、しています」

磨夢「そう」

ちる「哲学書…ですか」

基茂「いや、官能小説だ」

ちる「あぅぅ…」

基茂「彼の手は私の恥部に触れる。私は一際高い嬌声をあげて、彼の毒牙に突かれたように従順になっていった」

ちる「はぅぅ…」

磨夢「ちるはどんなプレイが好き?」

ちる「ぷ、プレイって、なん…です」

玄那「何やってるん」

ちる「クロちゃん…基茂さんと先生が、寄ってたかって、わたしを…苛めてきます」

磨夢「わたしも入るとは」

基茂「さっきまでプレイプレイ叫んでたろ」

玄那「内容は知らないが、伊崎先輩も延原先生もか弱い椎木先輩を苛めるのはよろしくないな。悔い改めよう」

基茂「ちる、悪かった。ちるが可愛いあまりについ反応が見たかったんだ」

磨夢「基茂、反省してない」

基茂「そうか、なら土下座するのみよ。この通り!」

ちる「ど、土下座だなんて、そんな大層な、事では、ありませんよ」

玄那「伊崎先輩は謝った。ほら先生も」

磨夢「死んで詫びる」

基茂「止めろちる、磨夢なら普通に飛び降りるぞ」

ちる「先生、屋上は、そういう場所では、ありません」

玄那「しかし死んだ所でまたすぐ生き返るんだろう」

基茂「磨夢はそこまで改造していないだろう。なぁ?」

磨夢「わたしはゆいと似て非なる存在だから」

玄那「つまり、それぞれ長所と短所がある訳だな」

磨夢「そう」

ちる「よく、分からない…のですが、ゆいちゃんと、先生は…違うんですね」

磨夢「そう」

玄那「普通に血の繋がりのない他人だからな」

磨夢「姉妹でも良かった」

ちる「ゆいちゃんに、言ったら…屹度、驚きます…ね」

基茂「それ以上に喜びそうだけどな」


163-1

ゆい「うぅ冷えます」

八城「ゆいちゃんゆいちゃん、今からかすむん家行こう。ハッピーハロウィーン」

ゆい「変装はしないのですか?」

八城「魔女っ娘やしろん、ただいま参上。触手プレイはお任せだよ」

ゆい「ヴァンパイアゆいゆい。今宵兄さんを襲います」

八城「…で、誰の家に行くんだっけ?」

ゆい「霞さんの所ですよ」

八城「かすむんの家は一番遠いから最初だね」


163-2

ピンポーン

ガチャ

八城「トリック・オア・トリート。お酒くれないと悪戯するぞ」

ゆい「八城ちゃん、若干違いますよ」

霞「二人共可愛いですね。是非カメラに残したい所ですが、お菓子をあげたらどうですか。写真撮影でも」

八城「良いよ。可愛く撮ってね」

ゆい「とりあえずお菓子ください」

霞「約束していましたから、前もって用意していますよ。玄関のこれです。はい、此度の遠征ご苦労様です」

八城「わぁい、ありがとう」

ゆい「来た甲斐がありました」

霞「では撮りますよー。あっ、わたしは良いですよ。わたしが入ったらマニアには売れませんからね。ふっふっふ…ハイ、ハロウィン」

カシャ

霞「フィルムは今度取りに行く事にしましょう。ご協力感謝致します。また遊びに来てくださいね」

八城「こっちもありがとうだよ」

ゆい「ありがとうございます」


163-3

八城「さて、お次は何処に行きますかな」

ゆい「純兄さんとか喜ぶんじゃないですか」

八城「お兄ちゃんみたいな反応されるよ。まあいいや。二件目れっつらごー」

ピンポーン

純治「へいへい」

八城「トリック・オア・トリート!お菓子くれなきゃお命頂戴するよ」

ゆい「それはどっち貰ったらいいのか分かりにくいですよ」

純治「ぐはぁ…」

八城「倒れちゃったよ」

ゆい「純兄さんは磨夢さんと同じですからね」

八城「そこでお兄ちゃんの名前出ないんだ」

ゆい「………」

純治「ぐ…あ…」

八城「ゆいちゃんヴァンパイア出番だよ」

ゆい「甘噛みしか出来ませんけど…カプ」

純治「ふっかぁーつ!!」

ゆい「お菓子くださいな」

八城「くださいな」

純治「おっ、その包みは…どっか行ってきたのか?」

八城「うん、かすむん家に行ってきたんだよ」

純治「ならばオレも佐竹ブランドで授けよう」

ゆい「これ三宅ブランドだったんですか」

純治「こっちとて急な話だから、ちと時間掛かるかもしれないな。そこの番号札取っといてくれ」

八城「ねぇゆいちゃん、何番にする」

ゆい「無難に69番ですね」

八城「072もあるよ」

ゆい「市外局番みたいですね。では072番でお願いします」

純治「また来てくんな」


163-4

八城「さて残すは…」

ゆい「ちるさんの所のアパートですね。玄那さんも住んでいます」

八城「どうせならアパート全員に当たってみる?」

ゆい「お好きにどうぞ」


163-5

コンコン

八城「ハロー、ウィーン!グッバイベルリーンの壁」

ゆい「八城ちゃん、区切る所も言う台詞も間違っていますよ」

八城「んだった、んだった…トリック・オア・トリート」

ゆい「お肉ください」

玄那「チキンがあった筈だ。クリスマス用の」

ゆい「それ以外に肉は無いんですか?」

玄那「ゆいちゃん、オススメの自殺スポットを教えてもらえるか」

ゆい「えっとですね…神社の隣に鬱蒼とした森があるじゃないですか。あそこなら大量に」

八城「お菓子ないの?」

玄那「うちより椎木先輩宅の方があると思う。とりあえずポテチでも持っていくか」

八城「わーい子供騙しのLサイズだぁ」

玄那「BIG買おうと思ったら金が無かった」

ゆい「玄那さんってお金使っている雰囲気ありませんよね」

玄那「そういう環境で育ったからな。自然と身に付いた金銭感覚だよ。要するに、カラオケより菓子パ」

八城「ちるお姉ちゃんとか呼ぶの?」

玄那「ああ。うちでやる時は椎木先輩位しか…そうだ、今度二人も来るか?数分の余興に過ぎないが」

八城「盛り上げたい!あたし達盛り上げ隊」

ゆい「一人でやっていてください」

八城「ところでちるお姉ちゃん見た?」

玄那「今朝学校に行く時は会ったが、今頃風呂でも行ってるんじゃないか」

八城「じゃあ今日はここまでにしようかな」

ゆい「狭い町ですからねぇ」


163-6

八城「ちるお姉ちゃん居なかったね」

ゆい「純兄さん家で貰って帰りましょう」

虎徹「やあ、お嬢ちゃん達」

八城「トリック・オア・トリート!!散歩のお爺ちゃんでも遠慮はしないよ」

ゆい「少しは遠慮を知るべきだと思います」

虎徹「お嬢ちゃん達が欲しいのはこれじゃろう」

八城「わぁい、ロリゲーだ」

ゆい「わたしには?」

虎徹「…これなんてどうじゃ?」

ゆい「わぁい、ラブドールです」

虎徹「嬉しくないじゃろう」

ゆい「ええ、とっても」

虎徹「それは殿方に渡すと可い」

ゆい「兄さん、喜びますかね」

八城「お爺ちゃん、お菓子は?」

虎徹「勿論あるぞ。ほれ」

八城「わぁい、お爺ちゃんサンタさんみたい」

虎徹「こうして近所の子供達に配っていた最中だったからのぅ。君達はラッキーじゃ」

八城「わーい、ラッキー」

ゆい「運送業のフランス人形には会いましたか?」

虎徹「途中すれ違ったんじゃが、忙しそうじゃったからのぅ。あの子の家知ってるかの」

ゆい「家は知りませんけど、もう一つの勤務先なら知っていますよ」

虎徹「もう一つの勤務先じゃって?」

ゆい「かくかくしかじか」

虎徹「ほぅ、それは良い情報を貰った。ありがとう、ヴァンパイアのお嬢ちゃん。情報料としてペロキャンを追加してしんぜよう」

八城「あたし無敵になるー」

ゆい「ありがとうございます」

虎徹「良いって事よ」

八城「ところでお爺ちゃん、何処に住んでいるの」

虎徹「わしはこの近くに住んでおる紳士じゃよ」

八城「オーゥ、ジェントルメェン!」

ゆい「八城ちゃん、この人兄さんと言っている事が一緒ですよ」

八城「そういえばお兄ちゃんもそんな事言ってたっけ」

ゆい「ええ。でも兄さんの誠意は本物でした。わたしをこんなにも愛してくれるんですから」

虎徹「ヴァンパイアのお嬢ちゃんは今、幸せなんじゃな」

ゆい「はい、とっても」

八城「でもお兄ちゃんには本命が居るんだよ」

虎徹「三角関係ってやつじゃな?」

ゆい「いえ、わたしはあの方と一戦交える気はありません。彼女はみんなに愛されてるんです」

八城「確かにお姉ちゃんは愛されてるね」

ゆい「ですから、わたしは応援します。わたしは兄さんの愛人で、それ以上行く事はありません」

虎徹「ならわしと付き合ってくれんかの?」

ゆい「残念ですが、それは出来ません。わたしは主により束縛されているんです。束縛プレイです」

虎徹「人生、縛りを定める事は大事じゃな。わしもソープは月一通いじゃった」

ゆい「わたし、ぬるぬるが可いです」

虎徹「エロいのぅ。容姿も相俟って」

八城「あたしは魔女っ娘だよ」

虎徹「可愛いのぅ」

ゆい「さてとお爺さん、わたし達はそろそろお暇します」

虎徹「日が暮れる前には帰るんじゃぞ」

八城「はーい」


166-7

八城「ただいま」

ゆい「ただいまです」

シィン

ゆい「いつもこんな感じですか?」

八城「いつもこんな感じだよ」

ゆい「磨夢さんは買い物でも行ってるんですかね」

八城「まみーもハロウィン?」

ゆい「それはちょっと…」

trrr

ゆい「電話鳴ってますけど」

八城「あたしが取るね」

ガチャ

八城「もしもし」

嘉寿夫「この声は…お袋!?」

八城「まさかここであなたの声が聞けるなんてわたしは嬉しいねぇ」

嘉寿夫「死んだはずじゃなかったのか」

八城「この世に未練があってね。あなたにも最後何年か会えていなかったしね」

嘉寿夫「わたしは知らない間にお袋を悲しませていたんだ。すまない、すまない…」

八城「わたしは会えなくても今こうして電話で話せるだけ幸せさ」

ゆい「…そろそろ良いですか?」

八城「あっ、良い所だったのに」

ゆい「良い所も悪い所もありません。そもそも掛けてきたのはおじさんの方ですよ。用件を聞かないと不可ません」

八城「おじちゃんは何で掛けてきたの?」

嘉寿夫「たまにはそっちの実情を知りたくなる時がある。蕨は元気にやってるか」

八城「らびぃは今寝ているよ」

嘉寿夫「それは良かった。しっかり睡眠が取れているならそれに越したことはない」

八城「お兄ちゃんは寝れてないよ」

嘉寿夫「我が息子はそっちに行ってどこまで悪くなったんだ。伊崎家家訓その6早寝早起き元気なよいこだぞ」

八城「おじちゃんもよいこなんだ」

嘉寿夫「うむ、わたしはよいこだ。週末に飲み明かす事も最近はやってない」

八城「お母さんも喜んでいるって」

嘉寿夫「お袋の声、聞こえるのか?」

八城「なんとなく…かな」

嘉寿夫「才能は思わぬ所に潜んでいるんだな。わたしは元気だけが取り柄だからな」

八城「おじちゃんは勉強しなかったの」

嘉寿夫「そこそこの高校に行って、それからはオヤジの跡を継いだんだ。確かにあまり勉強していないな」

八城「漁師って楽しい?」

嘉寿夫「ああ、楽しいぞ。わたしにとってまさに天職だ。日の本にあり、大海原を背中にして汗水垂らして働くと、やはり日本人だなと思う」

八城「あたしも海は見ているけど、おじちゃんにはまた違って見えるんだね」

嘉寿夫「同じ海を見ているのに不思議なものだ…浜と沖合では違うんだな」

八城「鯨さんとか見た事ないよ」

嘉寿夫「飛び魚なんかも良いぞ。わたしの所ではよく見れる」

八城「いつかそっちに遊びに行きたいなぁ」

嘉寿夫「ははっ、わたしもそちらへ行きたいものだ」


166-8

八城「おかえり、まみー」

磨夢「ん」

八城「いっぱいお菓子貰ったんだよ」

磨夢「その半分は霞」

八城「何故分かったの!?まみーエスパー?」

磨夢「霞はお菓子について太っ腹だから」

八城「色々種類があって詰め合わせた結果なんだって」

磨夢「あれはお菓子工場」

八城「地下に工場があるのかな」

磨夢「地下研究所ならぬ地下工場?寧ろ地下帝国」

八城「ロマンだよね。おれちてーじん」

磨夢「但し光に弱い」

八城「魔族の宿命だね」


167

磨夢「羽衣家の一族…」

八城「今度作るアニメ?」

磨夢「そう。羽衣家の先代はみな…」

八城「ふぇぇ、怖いよぉ」

磨夢「みなゆいを心配している」

八城「どゆこと?」

磨夢「話によれば、午前二時にゆいには見えるらしい。先代の幽霊が」

八城「ゆいちゃん起きるの」

磨夢「ある晩寝れなくて、偶然見たらしい」

八城「へぇ」

磨夢「八城も眠れない時、ある?」

八城「二階でなんかやってる時かな」

磨夢「八城は余程耳が良い」

八城「声は聞こえないけどね」

磨夢「ゆいだから聞こえてもそんなに」

八城「ちるお姉ちゃんだったら?」

磨夢「ハッピーエンド」

八城「バッドエンドもあるのかな」

磨夢「バッドエンドはデッドエンドくらいだと思う」

八城「NTRないの?」

磨夢「ちるだから大丈夫」

八城「お兄ちゃんは大丈夫なのかなぁ」

磨夢「ちるは大丈夫」

八城「ふぇぇ…」


168

マスター「なぁるーちゃんるーちゃん」

ルドルフ「何だね、マスター」

マスター「おっちゃんは暇なんか?」

ルドルフ「わたくしは明日に向けてワインを嗜んでいるだけだよ。遠慮せずに続けたまえ」

マスター「明日の仕事に支障きたさんようにな」

カランコロンカラン

ルイ「お待たせマスター。パルドゥン、寝坊したよ」

マスター「るーちゃん、ちゃんと睡眠取れてんねんな。良かった良かった」

ルイ「仮眠だけどね。夕方に帰ってあまり寝れてないよ。あっ、いらっしゃいませ」

靖之「いやぁ、遅れてすまないルドルフ君。マスター、いつもの奴で」

マスター「あいよ」

ルイ「ひげのおじさんは常連?」

マスター「うん、いつも居はるで。暇なんだってさ。ルドルフさん、同じるーちゃん同士相手したって」

ルイ「いや、仕事仲間の人も居るみたいだけど」

靖之「僕には気をかけなくていいよ。少し見る書類があるからね。ルドルフ君はこう見えて紳士的なんだ」

ルドルフ「マドムワゼル、何を話そうか」

ルイ「ルドルフは普段何しているの」

ルドルフ「わたくしは丁度君と年恰好の似た娘を持っていてね。よくドライブに行くんだ」

ルイ「セラボン。わたしも向こうに居たときはよく連れていってもらったなぁ」」

ルドルフ「今度うちの娘と会うついでについてくるかね?」

ルイ「メルスィー。でもわたし忙しいからなかなか都合合わないと思うよ」

ルドルフ「この店休みは無いのかな」

マスター「ルドルフさん、うちは定休日無いけど、臨時休業入れるんやったら結構いつでも入れてるで。はいヤスさん、お待たせ」

靖之「おっ、ありがとう。マスター。ここに置いてもらえるかな」

ルイ「マスターの気分次第なんだよねぇ。私達の代わりも居ないし」

マスター「れーちゃんに言うてもこっちはあんまりしたないらしいしなぁ。いやいややってくる事も稀にあるか?まぁとにかく、気分次第なの気分次第。ヒロさんいらっしゃああああいっ!」

ルイ「ちょっと外すね」

マスター「オッケー」

ルドルフ「さて靖之、準備は出来たかな」

靖之「これが資料ね。一応企画はしているんだが、ルドルフ君はどう思う」

ルドルフ「靖之、悪くはないだろう。しかし、一つだけ抜けている所があるな。例えばこの企画の楽しさだ」

靖之「ルドルフ君は意外とお茶目なんだね。でも確かに楽しさは必要だね」

ルドルフ「そこでこのあたりを大幅に変更するべきだと思うんだが」

靖之「おぉそこを変えるかい?一応核からは離れているけど十分に重要な…でも案外いけるかもしれないな」

ルドルフ「強制はしないが、わたしの考えはこのくらいだな」

靖之「素晴らしい考えだよ、ルドルフ君」

ルイ「マスター、わたし寝てくるね」

マスター「寝間着に着替えてたん?そんままでもええのに」

ルイ「いつも持ってきてるから、着るんだよ」

マスター「荷物、重ない?」

ルイ「これくらいだし大した事ないよ」

マスター「とりあえず鍵貸すわ。いつもの部屋な」

ルイ「メルスィー、おやすみ」

マスター「起きたらまた手伝ってな」

ルイ「ウィ、分かっているよ」


169-1

磨夢「ん…」

八城「どったの、まみー」

磨夢「これ」

八城「ヴァンパイアゆいちゃんだよ」

磨夢「ゆいはいけない身体をしている」

八城「お兄ちゃんも落ちる訳だね」

磨夢「ん…」

ゆい「こんにちはこんにちは」

八城「ゆいちゃん、こんにちは」

ゆい「磨夢さん、鼻血出ていますよ」

磨夢「室内が暑いから」

ゆい「八城ちゃんもわたしも長袖ですけど?」

八城「冬服ー」

磨夢「成程、こたつの所為」

ゆい「磨夢さんもボケ期に」

磨夢「集中しているから」

ゆい「集中して何の写真見ているんですか」

磨夢「………」

ゆい「磨夢さん、そこまで上げたら見えませんって」

八城「まみー背が高いの」

磨夢「そんなに」

ゆい「に、兄さん呼んできますからねプンプン」

八城「お兄ちゃん今居ないよ」

ゆい「居ないんですか、珍しいですね」

磨夢「居留守」

ゆい「…しゅん」

八城「まみー、写真気に入った?」

磨夢「ん、ありがとう」

ゆい「結局何の写真なんですかぁ」

磨夢「子供は見てはいけない」

ゆい「磨夢さんだって…コモドドラゴン」

磨夢「………」

ゆい「磨夢さんって具体的に訊かないと怒らないんですね」

八城「そだよー、まみーいくつ?」

磨夢「………ブツブツ」

ゆい「磨夢さん、まともに喋ったらどうです?」

磨夢「それについては沈黙する」

八城「ふぇぇ、まみーがミステリーだよぉ」

ゆい「不可解存在なのです、磨夢さんは」

磨夢「ゆいに言われたくはない」

ゆい「ふぇぇ」

八城「ゆいちゃんも変だからね」

磨夢「ゆいが変なだけ」

ゆい「そうですよ。神社で一人暮らししていたら、おかしくなりますよ」

八城「あっ、ゆいちゃんが開き直った」

磨夢「いつも人間以外の生物を見ているから」

ゆい「磨夢さんも十分人間とは思えませんけどね」

磨夢「うっせー人外あばばばばー」

八城「ちわげんかっていうやつ?」

ゆい「それは少し違うと思います」

磨夢「わたしはゆいより霞やルイ、蕨が良い」

八城「ツンデレまみー」

ゆい「磨夢さんは可愛い子にしかデレません」

八城「ふぇぇ、あたし達可愛くないんだ」

磨夢「八城はあざとい。ゆいは…」

ゆい「契約の力は侮れませんよ?」

磨夢「んんぅ…」

八城「ということはまみーはゆいちゃんにもツンデレなの?」

ゆい「八城ちゃん、磨夢さんはわたしに服従しているんですよ」

磨夢「どの口が言う」

ゆい「八城ちゃん、磨夢さんにわたしは服従しているんですよ」

磨夢「それでいい」

八城「成程…ん、あれ?」

ゆい「悪魔としての立場がぁ…」

八城「やっぱりゆいちゃん悪魔だったんだ」

磨夢「ゆいの悪魔可愛かった」

ゆい「ありがとうございます。ってあれ?何で磨夢さんが知っているんです?」

磨夢「………」

八城「あ、逃げた」

ゆい「まさかあの写真…」

八城「やっぱりまみーはゆいちゃんのこと可愛いと思ってたんだ」

ゆい「何か複雑です」


169-2

磨夢「………」

霞「あっ、先生。こんな時間にどうしたんです。何か急用が出来て此処にいらしたんですか?」

磨夢「匿って」

霞「はい?」

磨夢「今夜泊めて」

霞「別に構いませんけど…お風呂とトイレは一階ですよ。寝室は失踪した妹の部屋をお使いください」

磨夢「知ってる。将来に向けて網羅している。お菓子は台所の一番上の段の右から三番目の戸棚」

霞「他にも隠していますよ。分かりますかね。お菓子の迷宮を」

磨夢「洗面所の床下倉庫」

霞「床下なのは合っていますが、洗面所ではないですねぇ。後自分の家とも言っていません」

磨夢「まさか…うち?」

霞「違います。正解は椎木先輩の家です。普段は支給品として送っていますが、実はわたしの非常食でもあります」

磨夢「このお菓子帝国が崩壊する訳がない」

霞「分かりませんよ。諸行無常の世の中です。いつ火事や地震で崩れる。内部から瓦解することだっありうるんです。わたしもいつ死ぬか分かりません」

磨夢「大丈夫、ちるよりは長生きする」

霞「確かに椎木先輩は持病を持っています。いつ発作が来るか分かりません。それと同様にわたしもいつどういう形で死ぬか分かりません」

磨夢「大丈夫、霞はわたしが守る」

霞「気持ちだけでも受け取っておきますね。でも、わたし自殺願望はないんですよ、他殺願望もございません」

磨夢「何を勘違いした」

霞「先生は殺意剥き出しです」

磨夢「わたしは好きな人は殺さないから」

霞「嫌いな人は殺すんですか?先生が嫌いでもその人はまた別の人に愛されていることでしょう。そんな簡単に殺すなんてしないでください」

磨夢「そう。じゃあこのナイフ、霞に渡しておく」

霞「はい」

磨夢「じゃあこのカラシニコフ、霞に渡しておく」

霞「どっから出したんですか」

磨夢「じゃあこのスタンガン、霞に渡しておく」

霞「これは成人式に使う予定の…」

磨夢「頂戴したものだから。じゃあこの蝋燭と鞭、霞に渡しておく」

霞「急にどうしたんですか。これを使って何をしろというんですか。まさか先生、このような…」

磨夢「ゆいから没収しただけだから。じゃあこの写真…」

霞「吸血鬼の格好をしたゆいちゃん可愛いですね。どうしたんですか、先生も写真撮ったんですか?」

磨夢「写真?」

霞「わたし八城ちゃんとゆいちゃんが来た時に撮ったんですよ。でも現像は済んでいません。今度取りに行こうと思いますけど。何故デジカメを使わないかと云うと、ある本でこういうのが良いんだと知ったんです。エエ、敢えての選択なんですよ」

磨夢「いたずらされた?」

霞「わたしはですね、この写真撮影をお菓子と引き換えに要求したんですよ。二人の欲求は満たしましたよ。だからいたずらはされていませんっ」

磨夢「わたしの欲求は満たされていない」

霞「お風呂でも入ってきてくださいね。見張りは続けますから」

磨夢「ん…」


169-3

八城「まみーは何処に行ったんだろう」

ゆい「どこかにお泊まりしているんですよ屹度」

八城「ゆいちゃんもお泊まりする?」

ゆい「えっ、わたしで良ければ」

八城「やたー、お兄ちゃん呼んでくるね」

ゆい「兄さん忙しいと思いますよー」

八城「これをお兄ちゃんと見立てよう」

ゆい「何でラブドール持ってきてるんです?」

八城「お兄ちゃんと思おう」

ゆい「性別すら違いますけど!?」

八城「この人可愛い服着てるけど貰っていいかな」

人形(うん、いいよ)

八城「ありがとう、人形さん」

ゆい「人形さん、脱いだら全裸になりますよ」

人形(やろしんの為なら脱ぐよ)

ゆい「名前間違えられていますよ、やしろん」

八城「ゆいちゃんに呼ばれると変な感じがするなぁ」

ゆい「わたしのこともゆいゆいで構いませんよ」

八城「ゆいゆい」

ゆい「あぁっ…あぁっ」

八城「濡れてない?」

ゆい「え、何のことですか」

八城「変なゆいちゃん」

ゆい「あー戻ってしまいました」

八城「やっぱりお兄ちゃんが呼んでこそだよ」

ゆい「ジュン兄さんも使ってますけどね」

八城「お兄ちゃん達には名前で呼ばれても困るのさ」

ゆい「周りに勘違いされますから」

八城「何言ってるのさ」

ゆい「えっ」

八城「えっ」

ザー

八城「あっ電話だ」

ゆい「それ磨夢さんの無線機です。置いていったんですね」

八城「ワレワレハ…チキュウシンリャクノタメニ…ヤッテキタ」

少女「お…ね…ちゃ…た…す…け…」

八城「間違い電話だよぉ」

少女「わ…た…し…も…う…奴…ら…殺…」

ゆい「一般の電話でも傍受しているんですか?それにしてもこの怪電話は一体…」

少女「あ…ああ…ああああああ!!」

ブツン

八城「あああああああ!!」

ゆい「いや、一緒に叫ばないでくださいよ」

八城「ふぇぇ、怖いよぉ」

ゆい「わたしは間近にて叫ぶ八城ちゃんが一番怖いです」

八城「ふぇぇ、ゆいちゃんに怖いって言われたぁ」

ゆい「わたしに言われてショックですか」

八城「ゆいちゃんは可愛いのになんか変だよぉ」

ゆい「嘘ばっかりです」

八城「ゆいちゃんなら頭撫でられるよ。よしよし」

ゆい「な、なんで、わたしが撫でられてるんですか」

八城「可愛いからよしよし」

ゆい「うぅ…」


169-4

磨夢「ただいま」

霞「おかえりなさい。わたしので良ければ着替えありますけど」

磨夢「霞のお古貰っていい?」

霞「一応妹の為に取っているんですけどね…帰ってこないようなら先生にあげていいかお母さんに訊いときますね」

磨夢「ありがとう」

霞「いえいえ。とりあえず今は適当に着といてください」

磨夢「ん」

霞「何かお菓子持ってきますね」

磨夢「ん」

磨夢「………」

磨夢「ゆいの写真…」

磨夢「………」

霞「お待たせしました。何ですかその格好」

磨夢「裸ワイシャツなう」

霞「靴下を履いているのはポイントですね。じゃないですよ、ちゃんと来てください」

磨夢「霞は喜ばない?」

霞「わたしは先生を性的な目で見ていませんからね」

磨夢「そう、ならもう少しはだけさせて」

霞「そういう問題じゃないんですが…そうだ、先生何かやりますか」

磨夢「桃鉄やる」

霞「なら下履いてください」

磨夢「履いている」

霞「言っておきますが、靴下じゃありませんよ」

磨夢「見る?」

霞「いや、いいです…」

磨夢「霞は上の方が好き」

霞「なら今度お風呂行きますか?」

磨夢「霞にしたら積極的」

霞「先生、嬉しそうですねー。さて、下準備は出来ましたよ。起動しましょう。何年にしますか」

磨夢「………99年」

霞「それだけやるならもう一人くらい欲しいところですね。こういう時に兄弟が居ればいいんですが。昔は兄とわたしと妹で楽しかったんですけどねぇ。みんな戦争でばらばらになりました」

磨夢「でも霞だけは実家」

霞「はい、結局無事に帰ってこれたのわたしだけです。辺り一面焼け野原でしたよ。両親も奇跡的に残っていたとか何とか」

磨夢「どこまで本当?」

霞「わたし戦後の人間です」

磨夢「ん…」

霞「何だかんだ言いながら始まってますね。まずは…長崎ですか。入りにくいんですよね」

磨夢「オレンジカードげt」

霞「特急カード3つ程買っておきましょう」

磨夢「はい6と6で12」

霞「はい3つで…6なんですが」

磨夢「あるある」

霞「みんなわたしを置いてかないでくださいよぉ」

磨夢「大丈夫、COMも目的地前で止まっている」

霞「ぶっ飛びますねー」

磨夢「残念、そこは福井」

霞「良い線行ってたんですけどね。少し計算狂ったみたいです」

磨夢「霞が来るまで待つ」

霞「Compがゴールしちゃいますよ?」

磨夢「ならわたしが」

霞「あれ?」

磨夢「ん…」

霞「次の目的地は松本です。はいはい、さっさとゴールしますね。ボンビーさん、のぞみカードありがとうございます。先生は刀狩り持っていませんよね」

磨夢「………」

霞「大分近くまで来れました。これでわたしもゴール…」

磨夢「みなぶっとび」

霞「何でそんなもの持っていたんでしょうね、先生」

磨夢「わたしのターンだけ加速しているから」

霞「まるで訳が分かりません」

磨夢「ダイス振ってから、カード使ってからしか画面を見てはいけない」

霞「ありましたねーそんなルール、でも良いカード出たら叫んでますからそれが裏目に出て…って、カードマスに止まったらどうします」

磨夢「なるべく見ないようにしている」

霞「そこまで縛るのってなかなか難しいですよね。イベントもありますし」

磨夢「霞、良いカードなら叫んでいるってさっき」

霞「そうですよね、わたし何であっても叫んでいますからね」

磨夢「ん…」

霞「さてさて、わたしは今高知に居る訳ですが…先生も東京に居ますね」

磨夢「ん、でもまだ近い」

霞「compは南と東の海に飛んでいますからねぇ。いっそのことハワイまで飛ばしたら面白かったんですが」

磨夢「そう」

霞「どうします、これ。とりあえず決算までやりますか」

磨夢「それがいい」


170

八城「ちるお姉ちゃんの家綺麗だよねー」

ゆい「本当に何もありませんよねー」

ちる「あの…」

八城「なぁに、お姉ちゃん」

ちる「どうしたん、ですか、こんな、時間に…」

八城「どったもこったも食うもんなくてよ」」

ちる「まるで、姉さん、みたいな話し方…ですね」

ゆい「姉さんの姉さん?」

ちる「あの人は、自称…ですけどね」

八城「本当の兄弟は居るの?」

ちる「わたしは、昔から、一人…です。姉さんが、姉さん、だったかは…確信しては、いません」

ゆい「わたしにもありますね。兄さんが兄さんじゃない時が」

八城「お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよ?」

ゆい「たまに…他人だって思う時があるでしょう?こう肉体的に交わる時とか」

八城「それ、ゆいちゃんだけだよ」

ちる「それは…どんな、気持ち…するの、でしょう」

八城「ああ、お姉ちゃんが…」

ゆい「何もかも、悟りますよ」

ちる「………」

八城「あれ、ちるお姉ちゃん、ちるお姉ちゃん?」

ゆい「これで分かるなんてちるさんもやりますね」

八城「ちるお姉ちゃん動かないよ?」

ゆい「揉みましょうか…」

ちる「あのですね、ゆいちゃん」

ゆい「背後を取られました!?」

八城「単にゆいちゃんが鈍かっただけだよぅ」

ちる「もう一つ、例えは、ございませんか」

ゆい「頭が真っ白になります」

ちる「真っ白…ですか」

ゆい「そして兄さんのことしか考えられなくなります」

ちる「基茂さんのこと…基茂さん、になら、わたし…」

ゆい「正妻がこんなんで良いんですかね」

ちる「…ふふ」

八城「あはは」

ゆい「わたし、兄さんから距離を置くべきでしょうか」

ちる「急に、どうされました?」

ゆい「わたし、ちるさんと比べて兄さんとくっつき過ぎだと思うんです。実際どう思われていますか」

ちる「わたしは、気にして、いませんよ。ゆいちゃんのこと

ゆい「わたしは眼中に無いということですか!?」

八城「あうと・おぶ・がんちゆー」

ゆい「わたしごときではちるさんには及びませんよね」

ちる「………」

ゆい「ちるさん?」

ちる「…あっ、失礼…しました。少し、考えごとを…していました」

八城「このお家売るの?」

ちる「誰も、買い取り、ませんよ。出ますから…」

八城「出るって何が?」

ちる「Gも、座敷、わらしも…です。後者は、歓迎…しますが」

ゆい「ちるさん、お化けとか怖いの好きって兄さんが言っていましたね」

八城「虫は?」

ちる「蜘蛛…などの、益虫なら…まだ」

ゆい「本棚の裏に蜘蛛の巣ありそうですね」

ちる「Gを、捕まえて、くださるのなら…それで、立派な…仕事です」

八城「あたしなら壁殴っちゃうよ?」

ゆい「八城ちゃんは非力でしょう?」

八城「あの家の人間はみんな非力だよ」

ゆい「磨夢さんも技術寄りですからねぇ。技ですよ技」

ちる「技、ですか…」

ゆい「兄さんも技ですよ、テクニシャンです」

ちる「………」

八城「何でツッコミいないの?」

ゆい「そう思うなら、八城ちゃんがつっこめばいいでしょう」

八城「ふぇぇ、ツッコミはゆいちゃんの専売特許だよぅ」

ちる「ふふ」

ゆい「………(やりづらいです)」

八城「ゆいちゃん、つっこまないの?」

ゆい「八城ちゃんもツッコミ出来ますよ」

八城「そうだったっけ」

ゆい「八城ちゃんってたまに難しい言葉使いますが、おばあちゃんですか」

八城「一度生まれ変わった設定なの。ゆいちゃん、こういうの好きでしょ?」

ゆい「輪廻転生ですか。わたしは畜生と餓鬼通ってきましたけどね」

ちる「修羅は…通って、きて…ないのですか」

ゆい「わたしは戦は嫌いなんです」

ちる「ゆい…ちゃん、ここは、和平…を」

ゆい「月極ですよ」

八城「ちるお姉ちゃんお金持ってないよ?」

ゆい「なら無料で契約致しましょう」

ちる「何の、契約、でしょう…」

ゆい「磨夢さんとも契約していますから。但し人間じゃなくなります」

ちる「では、お断り、します」

ゆい「今なら某ホラー映画のチケットもご用意致します」

ちる「ほ…要り、ません!」

八城「じゃあ、あたしが貰おっかな」

ゆい「磨夢さんに押し付けられて困っていたんですよ。助かります」

八城「何でゆいちゃんなんだろう」

ゆい「屹度わたしを通して誰かに…ちるさん?」

ちる「ほ、欲しい、だなんて…思って、いません…から」

ゆい「もう契約無しで良いですから、貰ってください」

八城「二枚貰っちゃってたから、ちるお姉ちゃんどうぞー」

ちる「あ…ありがとう、ござい…ます」

八城「ところで、お兄ちゃんって映画好きだっけ」

ゆい「兄さん、磨夢さんが借りてきた変なやつしか観ていませんよ」

八城「そだね、よく分かんないやつだよね」

ちる「よく、分からない、もの…ですか?」

八城「うん、よく分かんないの」

ゆい「もう少し具体的に説明したらどうです?」

八城「あたしが、再び通ったら全然違う話になっているんだよ」

ちる「展開が、早いん…ですか?」

八城「ううん、顔ぶれが違うの」

ちる「配役が、多いん…でしょうか」

八城「通行人Aと思ってた人が主役になるんだよ」

ちる「そして主人公が、脇役に、なるんですか?」

八城「んにゃ、そういうんじゃないよ。主人公は毎回居なくなるの」

ゆい「素直に死ぬって言えば可いでしょうに」

八城「毎回爆発で終わるからね」

ゆい「お約束ですね」

ちる「わたしの、観ているのでは、化けて、出るんですよ」

八城「主人公お化けになっちゃうんだ」

ゆい「むしろゾンビの方が楽しいと思います」

ちる「ゆいちゃんは、ゾンビ映画、好き…ですか?」

ゆい「はい、対象が人間じゃないんで」

ちる「人間、じゃないと…なんだか、安心して、しまいます…ね」

ゆい「わたしは好きですね、死姦モノ」

八城「ゾンビ相手かぁ…」

ゆい「兄さんなら相手してくれますよ」

八城「だったらお兄ちゃん、変な趣味だね」

ちる「………」

ゆい「どうしました、ちるさん」

ちる「た、多少変…でも、わたし、は…」

ゆい「風邪引かないでくださいよ」

ちる「はは…わたし、少し…寝て、きます」

八城「解散!」


171

磨夢「…ちる」

ちる「は…はい」

磨夢「屋上も寒くなってきた」

ちる「そう…ですね」

磨夢「………」

ちる「………」

磨夢「その本、面白い?」

ちる「あっ、はい。面白い…ですよ。敵味方、分からなく…て」

磨夢「そう。じゃあ、わたしも何か読む」

ちる「…はい」

磨夢「…霞は?」

ちる「お昼の、放送でも…してるんじゃ…ないでしょうか」

磨夢「そう」

ちる「あの…基茂さんは?」

磨夢「盲腸で寝ている」

ちる「お、お大事に」


172-1

霞「本日のOPはTrust in meです」

玄那「うむ、確かにOPだ」

霞「原稿、原稿…」

玄那「霞はカンペ無しで行けるんじゃなかったのか?」

霞「あぁ、そうでしたね。いつもわたし即興でやっていました。わたしったらうっかり」

玄那「うっかりかすむん、ここに誕生である」

霞「大食いはしませんけどね。ご飯何杯でも行きますけど」

玄那「おかずは用意していないな。ネット探したら見つかるだろう」

霞「やーですね、クロちゃん。わたしはゲームを持っていますよ。触手は少々やっております」

玄那「触手はCG見るだけでお腹一杯だ…」

霞「さて、お薦めのアニメコーナーです。今期のオススメ何かありますか?これはド●えもんとサザ●さんですね」

玄那「長編アニメじゃないだろう。深夜だろう」

霞「四肢断裂。言うまでもなく、人を選ぶ作品です。だるま好きなら、屹度喜ぶでしょう。ちなみにギャグアニメです。キチ要素はたんまりですけどね」

玄那「暗黒棋士隼も面白いな。上級の人間を潰していく感じが堪らない」

霞「騎士じゃなくて棋士なのが味噌なんですよね。コアしか狙えなさそうですけど」

玄那「わたしは将棋を昔からやっている。休日に家族総当たりで戦っていたくらいだ」

霞「クロちゃんにも家族が居たんですねぇ。お父さんは嬉しいよ」

玄那「一人暮らしが孤児なんていう思考はどう考えてもおかしい」

霞「万に一位は居そうなものですけどね。家庭に事情はつきものですから」

玄那「それこそ必死で働いて必死で学習している…主席だな」

霞「主席の方ぁ、クロちゃん殴っちゃっていいですよー。むしゃくしゃした時のストレス解消用にお使いください」

玄那「主席の人は、わたしの事なんざ知る筈がない。わたしはいないことになっているからな」

霞「クロちゃんは普段、どこに居るんですか」

玄那「体育倉庫」

霞「跳び箱の中にでも隠れているんでしょうか?危険な視線に気付いたらその人は屹度クロちゃん。ピンと来たらリクエスト用紙に書き込みをお願いします」

玄那「リク用紙は確か…図書館と旧校舎と体育倉庫にあったよな」

霞「図書館以外需要ないですよね、それ。正解は図書館と食堂と下駄箱でした。他に設置需要あるところがあるなら、延原先生にでも連絡しておいてください」

玄那「延原先生連絡されても困るだけだと思うな」

霞「ではわたしは無理なので、クロちゃん、お願いしますね」

玄那「何の為のリク用紙だァ?」

霞「曲とお便りの為です。要望なんて知りませんよ」

玄那「わたし達はともかく、運営に関する要望なんてお便りの形でも来た例がないよな」

霞「皆さんは今の運営方法で満足しているんですね。わたしが週に何回出ても構いませんよね」

玄那「何故かしら、かすむんは出番が多いんだよな。帰宅部のエースから放送部のエースになるとは大したものだ」

霞「次は学園長になってやりますよ」

玄那「それは何か違うんだよなぁ…」

霞「わたしが学園長になったら…学長室に籠もりましょう」

玄那「そして生徒は直々に訪ね、意見を述べる訳だ。旧校舎をゲーセンにしましょう」

霞「承認。とりあえずSTGから始めましょう。避けは基本ですからね。それに慣れれば弾幕STG。これを皆さんが修得することで、他ジャンルが設置されていきます」

玄那「いきなり難しい要求をするなぁ。STGは覚えゲーだ。弾幕STGはそれを応用した感じだな」

霞「敵を強くするなら、どうしても弾幕を張るようになってしまいますからね。もしく自機狙いと3wayを使って動けなくしたり…ボムは使わざるを得ないッ!」

玄那「ボム縛りは相当なもんだ。てか、それは無理ゲーだ」

霞「ユーキャンヒップミー」

玄那「当たらんよッ!な訳がなかろうよ」

霞「やってみますか?まずは易しいものから…自作なんですけどね。さてさて」

玄那「何故わたしに渡すんだ?」

霞「是非試してもらいたんです。わたしの技術を盗まずにやってみてください」

玄那「ふむ、そう言われたらやるっきゃない」


172-2

霞「どうでしたか?」

玄那「わたしも…風呂入っていいか」

霞「お風呂というのは疲弊しきってから入るのが最高なんですよ。あっ最近微調整の豆乳にハマっているんですよ。糖分が無いと流石に飲めないですから。この仄かながら甘いのが堪らないんです」

玄那「仕方ない、もう少し頑張るか。しかし何で弾幕STGなのにボムがないんだ。責任者を出せ」

霞「はいはいわたしです。ボム縛りと云ったでしょう?これはただの練習用クソゲーなんでその辺気にしちゃ駄目ですよ」

玄那「まあSTGは慣れだよな、慣れ…リプレイが無いのは仕様です。おのれ…」

霞「ランキングもそのつもりは無いので作っていません。単発ものなんですよ。わたしもこれで鍛えました」

玄那「そう、か…わたしをそこまで苛めてくれるか。こんなんじゃわたしの能力生きないぜ」

霞「クロちゃん本来の能力はあると信じていますから…世の中真似事だけじゃやってけませんよ」

玄那「わたしはどこの世を彷徨っているんだ…屹度夢だな」

霞「頑張ってくださいね。わたし向こうでも応援していますから」

玄那「待て、何処に行く」

霞「やですね、ログインする時間なんですよ。今なら先輩もメイドさんもいますよ」

玄那「ご一緒させて戴きます」

霞「どこまで行きましたか。戦況は」

玄那「どうしてもラスボスで詰む」

霞「そこまで来たら根気ですよ。ヒントを言えば、ラスボスはパターン化しています。こう来たらこうです」

玄那「それなら行けるな。見とれ」

霞「…どうしてそんな?まさか今のわたしの手の動きで理解したんですか!?どんな模倣ですかそれ」

玄那「模倣じゃない。ピンと来ただけだ。風呂入ってくる」

霞「難易度上げておきますね、これ。完成したらzipファイルあげておきますね。時期的にクリスマスプレゼントです」

玄那「ふっふっふ、嬉しいなぁ」


173

ちる「あっ、クロちゃん。何処か…行って、ました」

玄那「ちょっと遠出していた。にしても椎木先輩は良いよな。クリスマスに予定があるんだろう」

ちる「あまり、外には…出たくは、ないですが」

玄那「屋内なのか野外なのか」

ちる「人気のない、場所なら…屋外、でも」

玄那「かすむん曰わく東部は未開拓らしい」

ちる「東部って…山、しか…ありません…ね」

玄那「羽衣神社を越えたら命の保証は無い」

ちる「ひぃ…」

玄那「内心嬉しそうだな」

ちる「そ、そんな事…ありません、よ」

玄那「まあ心配する事はないさ。かすむんは信じちゃならんのです」

ちる「かすむんは、嘘吐き…クロちゃん、は…意地悪です」

玄那「何つまらなそうな顔しているんだ」

ちる「少しは、期待していました、から」

玄那「しかし、真実の定かは分からない。我々余所者は探検する必要があるんだろう」

ちる「クロちゃん、クリスマス…空いてます?」

玄那「わわ、わたしは行かないからな。そんなおっとろしい」

ちる「クリスマス、パーティ…ですよ?」

玄那「何処で何時からなんだ」

ちる「わたし…の家で、いつでも」

玄那「伊崎先輩は?」

ちる「大勢、が…良いなら、基茂、さんの…所でも」

玄那「なら、かすむんも誘って其方で行おう」

ちる「ふふ、楽しみ、です…」


174

基茂「エデン化したら、ユニット数の限界超えて、雇用出来なくなるんだな」

磨夢「一般雇用は勿論の事、放浪人材も。それに内政も出来なくなる」

基茂「成程、重商主義と総動員はやっておきたいな」

磨夢「順調に東進出来ていればエデン化時には大連合になる」

基茂「まあ、そこは戦線下げたりすれば余裕だな」

磨夢「但し東方支部は死ぬ」

基茂「せ、宣教師を上手く活用すれば或いは…」

磨夢「とりあえずアンデッドは解雇。後、愚者と接続する所も死ぬ」

基茂「ナレンシフさんが出来たら愚者も頑張ってくれるだろう。その援軍をやっときゃあいいんじゃないのか」

磨夢「愚者が頑張ればアンスバッハまで行けると思う」

基茂「そこまで来てくれれば後は楽だろうな」

磨夢「そもそもDDなら強制送還もないから楽な筈なのに」

基茂「幼女UFOコンボが出来ていないんだろう。察しろ」

磨夢「使ってみれば分かるポトフの強さ」

基茂「幼女は魔力まあまああるし、強い。まあ緑には遠く及ばんが」

磨夢「一般の話。テイマーとか」

基茂「あんな農民は農民じゃない」

磨夢「育てるまでが大変」

基茂「ジェチポと戯れていれば可い話だ」

磨夢「ん、ポツダムに人材吸われないように」

基茂「コシチューが居ないとキツいからな」

磨夢「アウグストは召喚強い、ポニャランツェもなかなか」

基茂「飛行、装填ってなんだよ…そもそもls飛行ってどうやってんだ?羽でも付けているのか」

磨夢「その為にフサリアが犠牲になる。でも、ファル爺とかは」

基茂「ありゃ魔法だ。風の賢者だからな」

磨夢「成程、奴は賢者だ。此方の世界ではな」

基茂「ファル爺は十分強いと思うが…本人の種族はさておき」

磨夢「何故ガストラなのか。せめてシュペル辺りに…魔族でもいい」

基茂「前者はともかく、後者は容姿からして違うだろう」

磨夢「人魔共存ならイェニへ」

基茂「主人公勢力をあれ以上強くしたら不可んだろ」


175-1

八城「うぇwwwwwうぇwwwww」

ゆい「どうしました八城ちゃん、遂に気が狂いましたか?」

八城「あんに言われたかーなーよ」

ゆい「ふぇぇ、八城ちゃんがキチガイ扱いしますぅ」

八城「ゆいちゃんって無趣味なのに何で変人なの?」

ゆい「現世に於いて正常な人間など居ませんよ」

八城「またそう言って誤魔化すぅ…」

ゆい「変態じゃない人間なんて居ませんよ」

八城「そだねー、伊崎家の人はみんな変態さんだよね。ゆいちゃんには敵わないけど」

ゆい「磨夢さんはわたしと同等と考えても可いと思いますが」

八城「でもまみー、お兄ちゃん襲ったりしないよ?」

ゆい「ええ、肉体的には…肉体が触れ合うことで兄さんの優しさが伝わってくるんです」

八城「お兄ちゃんを起こす時以外は」

ゆい「やっぱりわたしと同じじゃないですか」

八城「刃物だよ」

ゆい「成程、磨夢さんの場合は恐怖で起こし、わたしの場合は快楽を与えることで兄さんを起こしているんですね」

八城「でもまみーには切れないんだよ。お兄ちゃんは箱に首入れて寝ているからね」

ゆい「わたし、兄さんの顔見ていませんから気付きませんでした」

八城「下ばかりじゃなくて、上も見ようね」

ゆい「でも上に乗っかった時は…いや、見てる暇ありませんね。天を仰いでます。色んな意味で」

八城「助けは来ないんだよ」

ゆい「神に仕える身でありながら、神に見放されました!?あの式神様は何もしてくれないんですね」

八城「式神様には甘えないの?」

ゆい「式神様はユーモアの欠片もないんです。よしんば、わたしが上目遣いをしようと、鼻の下を伸ばしたりしないんです」

八城「神様ってそういうのに興味ないのかな」

ゆい「我が国八万の神様がみなそうであるとは言えませんが、大半がそれを占めるでしょう。人間だから煩悩を持つんですよ」

八城「式神様は人間にならないの?」

ゆい「今まで様々な実験をしてきましたが、人間にはなれていませんね。狐や犬のような理性無き小動物なら可能ですよ」

八城「ワンちゃん飼ってみたいなぁ」

ゆい「八城ちゃんは猫派じゃありませんでした?レオポンの事いつも可愛がっています」

八城「猫も好きだけど、犬は触ったことすらない、憧れの存在なんだよ」

ゆい「駅前の商店街にペットショップありましたよね。そこに行けば可いでしょう」

八城「ゆいちゃんは忙しいの?」

ゆい「わたしは今働いているんですよ!?」

八城「とてもそうは見えないなぁ」

ゆい「神社の管理がわたしの仕事なんです。こう言うとあれですが、神社の秩序を保つことが出来れば、それで良いのです」

八城「町の事はいいの?」

ゆい「それは式神様の仕事なんです。わたしは式神様からしたら、所詮下等な存在。そんなわたしには町を守る力が備わっていません。市長さんが治めて、式神様が秩序を保つのです」

八城「市長さんって…見たことないなぁ」

ゆい「神社の下に、ポスターが貼ってあるでしょう。あの人です」

八城「あのおじさんかぁ。メガネのおじさん」

ゆい「彼も神社を訪ねてきます。式神様と話をしたいという理由で。式神様が放つ微量の電気信号を受信することが彼には出来るようです。わたしが恥ずかしい格好をしているのを彼はそっちのけです」

八城「何でゆいちゃんは身を清めるの」

ゆい「それが式神様を呼ぶ儀式だからです。最近は寒くて風邪を引くので、必要は最低限に留めていれんです」

八城「ゆいちゃん意外と身体弱いもんね」

ゆい「ちるさんの病気を半分背負うまでは、倒れることもあまりなかったんですけどね」

八城「八割じゃなかったっけ?」

ゆい「九割だったかもしれません…まあそんなに背負ったら死にますが」

八城「でも、ちるお姉ちゃん来た時は大丈夫だったみたいだよ?」

ゆい「ちるさんは恐ろしい病気をお持ちです。一人で背負ってきた忍耐は尋常じゃありません。ある意味最強と云えましょう」

八城「ちっちゃい時に何か、あったのかな」

ゆい「もしくはわたしが敏感なだけかもしれませんね。わたしの性感体は項です」

八城「そうなんだぁ。あっとぁ、こんな時間だ。このまま家においでよ」

ゆい「はい、では参りましょう…いざキャバクラッ!」

八城「何故キャバクラ?」


175-2

磨夢「………」

蕨「………」

基茂「………あのさぁ」

磨夢「ん?」

蕨「?」

基茂「何か話をしてくれ」

磨夢「本でも読んでおけばいい」

基茂「話は読書にて得るべし」

八城「たっだいまぁー」

ゆい「お邪魔します」

八城「…静かだね」

ゆい「いつもこんな感じじゃないんですか」

八城「そだけど」

ガチャ

基茂「ん、誰かと思えばやしろんとゆいゆいか」

八城「お兄ちゃんがこんな時間に居るとは珍しい」

基茂「ちとPCの調子が悪くてな。する事が無い」

ゆい「何読んでるんです?」

基茂「そこにあったマンガだ。家から持ってきたから呆れるくらい読んでいるものだ」

八城「ポロリもあるよ」

ゆい「エロリ?」

基茂「それはゆいゆいの事だろう?」

ゆい「兄さんだけが特別です」

基茂「知ってる。そもそもゆいゆいは男に会わんだろう。ちる程でなくても」

ゆい「わたしは神社と此処を往復しているだけですからねぇ。いつも決まった時間で」

八城「朝昼晩なら見る人も結構居るんじゃないの」

ゆい「朝は早いですし、昼は皆様うろついておりません。夜は遅いですから」

基茂「住宅街って実際そんなもんだろ」

八城「やっぱり商店街の方に集中しているんだ」

基茂「海沿いは学園と海浜公園の他に、店が疎らにあるだけだ」

ゆい「ひっでぇ町ですね」

基茂「ひっでぇ巫女だな」

ゆい「この町は近いうちに吸収合併されますよ」

基茂「市で合併されるとはひっでぇな」

八城「ところでお兄ちゃん、まみーは」

基茂「蕨と戯れていたぞ」

八城「らびぃが起きてるなんて珍しい!」


175-3

磨夢「…ん、おかえり」

八城「ゆいちゃんも居るよ」

ゆい「こんばんは、磨夢さん」

基茂「おいてくなよ、彼処一人で何していろと」

蕨「………」

ゆい「わたしですか?」

蕨(ギュッ)

八城「うにゃ?あ、らびぃ。おはよう」

蕨(ニコッ)

八城「らびぃ可愛い可愛いらびぃ」

蕨「♪」

ゆい「磨夢さん、わたし、久しぶりに欲しいです」

磨夢「ゆいのえっち…」

基茂「うわぁ…」

ゆい「兄さん、絶対に覗かないでくださいね」

ピシャン

基茂「ゆいゆいは鶴だったのか」

八城「あれ、二人はどしたの?」

基茂「闇の中へ消えてったぞ」

八城「キマシかな?」

基茂「そんな感じだな」

八城「覗いちゃ駄目だよ」

基茂「興味ねーし覗かねーよ。それより漫画を読もうぜ」

八城「あっ、えっちぃ漫画だ」

基茂「確かに露出はあるな。行為には入らないが」

八城「お風呂でも煙がないね」

基茂「それ位ならわりかし見るな。オヤジの持っていたのは、そんなのばっかだ」

ガララッ

八城「あっ、出てきた」

ゆい「お待たせしました、皆さん」

基茂「待ってねぇよ。一生籠もってろ」

ゆい「兄さん、なんて冷たいのでしょう。冬にその発言はきついものです」

八城「まみー、飯ぃ」

磨夢「ん、今作るから…」

八城「まみー、ちょっとフラついてない?ゆいちゃんに何かされたの」

磨夢「ゆい、量にも限度というものがある」

ゆい「申し訳ありません。約束は絶対ですから」

磨夢「それが為なら仕方ない」

蕨「…?」

八城「あたしにもよく分かんないよぅ」


176-1

マスター「クリスマスかぁ…今年はサンタさんに会えるんやろうか」

ルイ「わたしサンタさんしているよ。サンタ宅配便」

マスター「サンタの衣装で配達するんかぁ。るーちゃんなら似合うやろうな」

ルイ「赤い服に赤い帽子、それでもルリネコなんだよ」

マスター「あまり瑠璃色要素がないみたいやけど大丈夫かな」

ルイ「期間限定でアカネコ宅配便にしても悪くないと思うよ」

マスター「社長さんはどうお考えなんやろうなぁ…ロゴの色も変えるつもりでいてはったりするんやろうか」

ルイ「ロゴの猫にサンタの帽子被せるのもいいね」

マスター「ええなぁ…うちでも何かやろっか」

ルイ「マスターもサンタさんの衣装、着る?持ってきているけど」

マスター「るーちゃんのなら着れるかな。ちょっと任せたで」

ルイ「うぃ」


176-2

マスター「お待たせ。ミニスカなら先言ってや。恥ずかしいわ」

ルイ「そして寒いね」

マスター「これで作業するのはるーちゃんの方がええと思う。返すわ、これ」

ルイ「いや、着たままでいよう。一時間」

マスター「長ない?その間に何人お客さんが来るやろうか、常連さんも来るやろうし」

カランコロンカラン

磨夢「………」

マスター「あ…」

磨夢「ルイに着せて」

マスター「ムーもるーちゃんがええと言っとるで。ささ、早く」

ルイ「クリスマスだからサービスだよ」

マスター「あれ、るーちゃん何処行くん?」

磨夢「………」


176-3

ルイ「実はもう一着あったんだよ。マスターのはわたしが作ったの」

ガン

マスター「ムーが卒倒した。しかしるーちゃん、裁縫も出来てんな」

ルイ「一人暮らしだから色々出来ないと不可ないんだよ」

マスター「一人暮らし…ねぇ。あれムー何しとるん、そんな諭吉沢山出して」

磨夢「チップ」

ルイ「チップって額じゃないよ、それ」

マスター「それ大事な生活費やろ。貰う方は嬉しいけど、磨夢それ出したらまずいんとちゃうん?」

磨夢「ん、それもそう」

ルイ「これ、わたしの一カ月分はあるよ」

磨夢「元々手持ちの時点で余分な金」

マスター「襲われたらどうす…あ、いやムーなら返り討ちにするやろうな。あー怖い怖い」

ルイ「でも磨夢、腕力はどう?腕相撲しよ」

磨夢「いくら?」

マスター「うちはそういうので金取る店じゃないから。とりあえず始めよう。レディー…」

ガンッ

磨夢「ぐ、ぐぅ…」

ルイ「磨夢、自分から行かなかった?」

マスター「…何が起きたん?」

磨夢「今のは、ルイが強かった…」

ルイ「普段から荷物運んでいるからかな。持てない時もよくあるけど」

マスター「人は見かけによらずってことかぁ。うちは非力やからパスな」

磨夢「マスター、組んでみる?」

マスター「ムーは強い方やろ。るーちゃんが強すぎるだけで」

磨夢「あれなら暴漢に襲われても大丈夫」

マスター「護身術は持ってないんじゃないかなぁ」

カランコロンカラン

ルイ「いらっしゃいませー」

磨夢「あんな優しい顔しているのに」

マスター「るーちゃんは根っから優しい性格してるわ」


176-4

八城「クリスマスだねぇ」

ゆい「クリスマスですねぇ」

磨夢「ただいま」

八城「まみー、お昼まで寝る?」

磨夢「みんなが来たら起こして…」

八城「むぅー」

ゆい「ところでパーティは何時からなんですか」

八城「んとねー、夕方じゃないかな」

ゆい「お昼どうするんですか」

八城「どうするのかなぁ」

ゆい「ちるさんに訊きにいきましょう」

八城「そうしやう。そうしやう」


176-5

ピンポーン

八城「やしろんとぉー」

ゆい「ゆいゆいです!まるで漫才コンビですね、この名乗り方」

ガチャ

ちる「ふぁい…まだ、4時です…よ」

八城「ちるお姉ちゃん、この時間起きていないの?」

ちる「起きて…いるのは…起きて…います、が…起きた、ばかり…なん…です」

八城「早寝したらこの時間にゃ起きられるんだけぇね」

ゆい「兄さんのことを考えると、すぐ寝付けるんです」

八城「一人暮らしだから寂しいもんね」

ゆい「明朝に兄さんを襲うの考えて寝るんです。そのためには早起きしないと不可ないので、ちゃんと眠れますよ」

八城「一人暮らしだから頭おかしいんだよね」

ゆい「わたしより下等な人間の存在は許しません」

ちる「どういう、意味で、下等…なんですか、それ」

ゆい「わたしが二つの層の境界に立っています。常人と凡人の境目です。わたしが常人の条件を満たす模範です。要するに、わたしに及ばない者は凡人なんです」

八城「あたし凡人だぁ、嬉しいなぁ」

ちる「理想が、高すぎ…ます」

ゆい「理想とは、より高みを目指すものです。人智を超えた才能を得るにはそれくらいしなければなりません」

八城「ちるお姉ちゃん、最近お兄ちゃんと上手くいってるの」

ちる「基茂さん、とは…よくして…いただいて、いますよ」

ゆい「兄さん、ちるさんなら丁度良いんですね。近くもなく、遠くもなく…もう少し接近してもいいんですよ」

八城「ゆいちゃんはやり過ぎだと思うなぁ」

ゆい「わたしの場合、密着型なので」

ちる「実は、わたし…潔癖症、なんです」

八城「知ってた」

ゆい「それが原因で人が嫌いなんでしょう?」

ちる「はい。それに、わたし…人と、接する…機会も少なかったんです」

ゆい「………」

八城「すごいよお姉ちゃん、ゆいちゃんを黙らせた」

ゆい「少し考え事をしていただけです」

ちる「…何かありました?」

ゆい「無理しないでくださいね。ちるさん」

ちる「あっ…はい」

八城「パーティはどうするの」

ゆい「それでしたよ、ちるさん。わたし楽しみです」

ちる「泊まりがけで、よろしい…ですか」

八城「いいねいいね、昔を思い出すねぇ」

ゆい「では改めて皆様に連絡しておきましょう。有無を言わせず呼集しましょう」

八城「じゃあお姉ちゃん、また夕方ね」

ちる「はい、また…」


176-6

霞「一番乗りでーすっ」

八城「いらっしゃい、かすむん」

霞「あら、やしろんしか居ないんですか?先輩や先生は?」

八城「今ケーキを取りに行っているよ。あたしはお留守番ー」

霞「何かしましょう、八城ちゃん。クロちゃんは遅れてくるらしいのでわたしは暇なんですよ」

八城「でもうちテレビゲーム全然無いしなぁ…何か持ってきたの」

霞「据え置きは学生鞄に入ったままなんで、こっちの鞄とは使い分けていますからね。お泊まりグッズしか入っていませんけどね」

八城「じゃあ何もないんだぁ。うちにも何もないけど」

霞「何か取ってきましょうか。軽く遊べるものなんかを。バイオ辺りが良いですか」

八城「それは大晦日向けかな。大晦日は何もしないよ」

霞「冬が舞台なものなら先輩が幾らか持っている筈ですよ。わたし達はそうして年を越しているんです」

八城「年越し蕎麦食べたいなぁ」

玄那「悪い、遅くなった」

霞「あっ、クロちゃんです。クロちゃんは何か持ってきたんですか?」

玄那「わたしは殆ど手ぶらだな。近いから何も持たずに走ってきた」

霞「家に何か面白いものはなかったですか?ほら例えばエクバとかありましたよ」

玄那「一人50円徴収するぞ」

霞「何クレでも可能なら喜んで支払いますよ」

八城「お金はお兄ちゃんから出るから、幾らでも払うよ」

玄那「先輩の金はどこから出ているんだ」

霞「仕送りと聞きましたけど、先生も関係ありそうですね。やしろんは先生から貰っているんですか?」

八城「まみーからはゲーセン代くらいしか貰わないよ?一回分もそんなに」

霞「やしろんくらいの腕前なら少額で事足りますね。本当に飲み込みが早くて怖いくらいですよ」

八城「えへへ、褒められちゃった」

玄那「とりあえず何か取ってくるな」

霞「いってらっしゃい。わたし達は楽しみに待っていますね」

玄那「椎木先輩に会えるかな」


176-7

基茂「うぃーす、戻ったぜ」

八城「おお、ケークィ」

霞「このケーキ、まるまる貰っていいんですか」

磨夢「霞にならやってもいい」

基茂「8人で4つだ。ふざけんな」

玄那「それでも半分貰えるのか。4つって多い気がする」

八城「後はゆいちゃんとちるお姉ちゃんだけだね」


176-8

ゆい「こんばんは皆さん」

八城「ゆいちゃん、いらっしゃーい」

基茂「ちるは見なかったか?」

ゆい「さぁ…道中では会っていません」

蕨「………」

八城「らびぃ、おはよ」

蕨「♪」

玄那「お久しぶり、かな。なぁかすむん、わたし達もらびぃに会ったよな!?」

霞「会いました。会いましたよ。あれは今から4年程前…そう、オリンピックの年です」

八城「らびぃが来たのは今年に入ってからの事だよ?」

霞「そ…そうですね。今年に入ってからでした。確かわたし達がここを訪ねた時に八城ちゃんが会わせてくれました。我が記憶が正しければ」

玄那「もう少し確信を持って言えよ」

霞「今年の事でもあまり覚えてないんですよ。例えばクロちゃん、昨日の夢覚えています?わたしは海の方に行った時に鰐になって虎と闘っていました」

玄那「それ、どっかの昔話だろう。しかも普通夢より夕飯を訊くものだ。伊崎家の昨日の夕飯は肉じゃがだったな?」

八城「あれ、なんで分かったの?」

玄那「匂いがしたんだよ。うちのアパートとここの台所は近いだろう?」

八城「あっ、そうだったね。だったらちるお姉ちゃんも分かるんだろうなぁ」

霞「好い加減主催者呼びに行きませんか?誰か」

玄那「いやかすむん、わ主が行くのだ」

霞「近所だから伊崎先輩に次いで親しいクロちゃんが行くべきです」

玄那「でも居なかったぞ。今朝は」

霞「今朝は…でしょう?椎木先輩は遠くまで行かないのでもう帰ってきている筈です」

玄那「そう、だろうか…」

ちる「あ、あの…」

ゆい「あ、ちるさん、やっと来られましたか」

ちる「あっ、はい…み、皆さんは、あ、集まって…お、おられ…ます?」

ゆい「はい、この通り…誰も気付いておりません」

ちる「な、何故、ゆ、ゆいちゃん…だけが」

ゆい「わたしはよい子だからちるさんが見えるんです」

基茂「いや、俺も見えるが…というより気付いていないだけだろう」

磨夢「そう」

ちる「そ、そう、ですか…」

蕨(ニコッ)


176-9

ちる「み、皆さん…あ、集まった、み、みたい、です…ね。あの…その…」

基茂「タイム!」

霞「ここで伊崎監督がタイムを取ります。クロちゃん、どうですか、このタイムは」

玄那「妥当だと言えるだろう。この中で椎木先輩の一番の理解者だからな」

ゆい「こういう時に兄さんは本領を発揮するんです」

八城「お兄ちゃーん、ちるお姉ちゃーん、ヒューヒュー」

蕨「?」

磨夢「………」

基茂「分かったか、以上の要領で頼むぞ」

ちる「あ、は、はい…」

霞「椎木先輩の演説が今ここに始まります。マイク入り用ですか?メガホンならありますけど」

玄那「公園で演説するんじゃあるまいし」

ちる「あっ、いえ…け、結構…です。え、演説って…ほ、程でも、あり…ません…から」

八城「頑張って、お姉ちゃん」

蕨「………」

磨夢「ん、蕨…?」

ちる「エホン…あー…こ、これより…く、クリス…マスパー…て」

蕨(ギュッ)

八城「ちるお姉ちゃん、らびぃに懐かれちゃったね」

基茂「そのまま続けてくれ」

ちる「あ、あの…」

蕨(スリスリ)

玄那「わたしも椎木先輩に甘えたい…」

霞「クロちゃん、声に出ていますよ。可愛い所あるんですね」

玄那「み、見ていたら何となく思っただけだっ!」

ゆい「蕨ちゃん、そろそろ離れましょう」

基茂「良いぞ、このままで」

ゆい「兄さん…」

ちる「ク、クリスマ…ス…パーティを、は、始めます!」

八城「わーいお菓子お菓子」

霞「お菓子なら大量に持ってきていますよ。ほれほれ」

磨夢「わたしはこれが良い」

玄那「袋ごと取るとは…先生もやり手だな」

磨夢「キャラメルコーンのストロベリー味…らびぃも要る?」

蕨(コクリ)

ちる「あ…」

基茂「どうしたちる、寂しそうな顔をして」

ちる「いえ、別に…な、何も…」

ゆい「兄さん兄さん」

基茂「お菓子パーティーだ。横断幕を見れば分かる。お菓子パーティーだ」

ゆい「兄さん、こういう時でさえ、そんな事を考えているんですか」

基茂「俺は日々考える人間だ」

ゆい「そうです、脳は考える事が好きなんです。兄さんの脳は毎日楽しんでいる事でしょう」

基茂「まぁゆいゆいや磨夢程ではないが」

ゆい「深く考えるには新しく学ぶ必要があります。それらを糧に真理への道をまた一歩進むんです」

基茂「俺もお菓子貰ってくるわ」

ゆい「兄さん、明日の朝…覚えておく事ですね」

八城「ゆいちゃん、早く来ないとなくなっちゃうよ?」

ゆい「ここには食いしん坊しか居ないんですね」


176-10

蕨「zzzz」

八城「ケーキ食べたっけ?」

霞「わたしは食べましたよ。まるまる一ホール」

基茂「やらかしたぁっ!!見てなかった」

ゆい「兄さん、ちるさんばっか見てました」

八城「見つめ合ってたんだぁ」

ちる「そんな…も、基茂さん…ったら」

玄那「いや、霞は半分しか食べていない。わたしと二人で一つだ」

霞「そうなんです、わたし達は二人で一つなんです」

八城「わ、わたし達も二人で一つだよ。ねぇ、ゆいちゃん」

ゆい「そうです、八城ちゃんは良きパートナーです」

ゆい(チラッ)

基茂「あっ、俺にはちるが居るんで」

ちる「基茂さん…だ、大胆です」

ゆい「兄さん、独占欲が強いんですね」

霞「先輩は椎木先輩しか居ないんですよ。学校の屋上でもわたし達から離れてイチャイチャしているんですよ」

玄那「一人でもそういう相手が十分なんじゃないか?」

八城「お兄ちゃんの辞書にハーレムはないよ」

霞「そうです。先輩にはその意志がないんです。余所の主人公様なら此処のメンバーを全員手込めにしています」

ゆい「まだ正妻と愛人一人しか居ないんですよ」

玄那「攻略対象キャラが少ないんだろう」

霞「先輩はこんな世界に居て悲しくないんですか?」

基茂「こういう世界だと認識している」

ちる「基茂さん…は、ハンカチ、は要ります?」

基茂「ちるは優しい女の子だなぁ」

(ナデナデ

ちる「うぇふぅ…」

ゆい「兄さんわたしもわたしも」

基茂「ゆいゆいって…優しいのか?」

ゆい「まずそこから判断しますか!?まぁ言うなら…愛はありますよ」

基茂「愛かぁ…愛ってなんだろうな」

霞「どなたかー、ケーキ行く方おられませんかぁ!もれなくわたしとはんぶんこできますよ」

磨夢「じゃあわたしが」

八城「あたし達も食べよー、らびぃ」

蕨「♪」

ゆい「…えっと、ちるさん食べに行きますか」

ちる「あ…はい」

基茂「………待て、何かおかしい」

ゆい「兄さん、食べたんじゃないんですか」

基茂「食べてねぇよ、一片すら食べてねぇよッ!」

ゆい「ではわたしがあーんしてあげましょう。あーん」

基茂「あーん、おっ、うまい。やはりバターケーキに限るな。いやしかし何か足んねー」

ゆい「何ですか兄さん、まさか女体盛りでもお考えですか。いやらしいですね」

八城「でもゆいちゃんの女体盛りなら食べてみたいかも」

ゆい「しかし苺が足りないんですよ。近くに苺のショート売ってませんか」

霞「ありますよ、ゆいちゃん。この時期なので外には出たくないんですが、それでもゆいちゃんが出るというならわたしは止めません」

玄那「わたしがついていこうか。少しは気が楽になるだろう」

ゆい「玄那さんは不安にしかならないです」

玄那「誰も引きつけないのがわたしの魅力だ」

ゆい「それ魅力じゃないですよ」

霞「この中に頼られる人は居ないんですか?」

ゆい「居ませんよ。みんな頭だけのもやしです」

玄那「肉、好きなんだけどな」


176-11

八城「結局あたしになるんだ」

ゆい「八城ちゃんは安心できますからね」

八城「んで、どこ行くんだっけ」

ゆい「わたしはこの町の事、全然知りませんよ」

八城「あたしよりずっと長く住んでいるのに!?」

ゆい「わたしの行動範囲は限られているんです」

八城「そーいや、そんな事も言ってたね」

ゆい「で、八城ちゃん。どこかありませんか。適当に時間潰せそうな所は」

八城「どこって言われても…ゲーセンかなぁ」

ゆい「八城ちゃんってそこばかりですね」

八城「そだよー。でもお金無いや」

ゆい「なら適当にぶらつきましょう。我が主に導かれるままに」

八城「式神様がそんなこと、するのかなぁ」

ゆい「式神様はゆいゆいネットワーク受信可能地域全域をわたしを監視しています。GPS機能だけですけど」

八城「お兄ちゃんとのじょーじはバレてないんだ」

ゆい「全く…何が故に巫女服が白いんでしょう」

八城「ゆいちゃんちっとも白くないし」

ゆい「寧ろ黒くても良い位ですけどね」

八城「ゆいちゃんってお腹出したら孕んでそう」

ゆい「兄さんはぶっかけるのが好きなんで大丈夫です」

八城「出来ちゃったら、お兄ちゃん多分責任取れないよね」

ゆい「兄さん以前に磨夢さんが問題だと思いますよ」

八城「らびぃは大丈夫みたいだけど」

ゆい「可愛けりゃ何でもいいんですかね」

八城「あたし、可愛くないのかな…」

ゆい「此処が本屋ですか」

八城「やってないみたいだよ」

ゆい「此処が、カラオケですか」

八城「年末年始特別料金…って書いてあるよ」

ゆい「此処が…銭湯ですか」

八城「入る?」

ゆい「お金、持ってないと言ったのはどなたでしたっけ」

ルイ「アチュム」

八城「あっ、るーちゃんだ」

ルイ「イルフェフルワー」

ゆい「お風呂入りたいです。でもお金無いです」

ルイ「仕方ないネコさん達だ」

八城「みゃーみゃー」

ルイ「わたしも少し浸かっていこっかな」


176-12

八城「良い湯だねぇ」

ゆい「矢張り銭湯は格別ですねぇ」

ルイ「人、少ないね」

ゆい「クリスマスにお風呂っていうのがあまり無いんじゃないですかぁ」

ルイ「そうかなぁ。特別な感じで悪くないけど」

八城「あたしゃあ極楽ですおぅ」

ルイ「うぃー、極楽極楽」

ゆい「ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉう」

八城「温かいねぇ」

ルイ「このまま釜茹で地獄に行く?」

八城「うん、行かう行かう。やしろんの釜茹でだよぉ」

ゆい「わたしは此処で良いです

ルイ「ヴィアン、ゆい。おいで」

ゆい「わたしの釜茹では美味しくないですよ…」


176-13

ゆい「釜風呂って…サウナよりきついでふね」

ルイ「わたしはサウナの方が苦手だなぁ」

八城「あたしはどっちも好きー」

ゆい「八城ちゃんはぽっちゃりしているから余裕があるんです」

八城「ゆいちゃんが細過ぎるだけだよ」

ルイ「確かにゆいは細いね」

ゆい「じ…じろじろ見ないでくださいよぅ」

ルイ「体型としては、マスターよりはマシかな」

ゆい「そうなんですか!?わたし痩身には自信があったのですが」

ルイ「マスターは、背もあるからね。多分わたし達と比べても一番大きい」

八城「本当だ、ゆいちゃんちっぱい」

ゆい「目の付け所がやしろんでしょ」

八城「あはは、ゆいちゃんじゃあるまいし」

ゆい「………」

ルイ「あれ、どうしたの。ゆい」

ゆい「ルイさんの体型が理想的だと思います」

ルイ「本当?女優目指せるかな」

八城「るーちゃん可愛いしなれるよ」

ルイ「二人も可愛いよ」

八城「あれだね。年相応と云うやつだね」

ゆい「年相応と云えない顔の人だって居るんですよ」

八城「ゆいちゃんは人不相応の喋り方だね」

ゆい「もはや人間扱いされていないんですか!?」

ルイ「そろそろ上がるね。長居しすぎたよ」

八城「あっ、そだね。上がるぉ」


176-14

ゆい「ルイさん、これからマスターの所ですか?」

ルイ「ウィ。今日はさっぱりしたし、長時間いけるよ」

八城「クリスマスなのにお仕事なんだ」

ルイ「マスターにケーキ作っていいか訊いておかないと」

ゆい「手作りの所、流石は職人ですね」

ルイ「言っても、さほど洒落たのは作れないよ」

八城「一口サイズでもいいよ」

ゆい「それを高値で売るんですね。一体材料に何を使っているんですか」

ルイ「普通のスポンジに普通のクリームだよ」

八城「クリスマスの特別メニューとかあるの?」

ルイ「特に無し。今言ったクリスマスケーキは良いと思う。メルシー」

ゆい「一口サイズの高級ケーキですね」

ルイ「サイズを考えたら、もうちょっと大きい方がいいかな。うちは良心的価格でお客様に訴えるからね」

ゆい「何を訴えているんでしょうか…」

八城「今から食べに行こうよ。ゆいちゃん」

ゆい「肉料理があったら行くんですけど」

ルイ「カレーとかならマスターが作ってくれるよ」

ゆい「いや、いいです。八城ちゃん、帰りますよ。ルイさん、今日はありがとうございます」

ルイ「うぃー、またいつでも食べに来てね」

八城「るーちゃん、またねー」


176-15

八城「たっだいまー」

しーん

ゆい「…薄情な人達ですね」

玄那「おっ、二人ともおかえり」

八城「他のみんなは?」

玄那「みんなはホラー映画観てるから、わたしは今そこの部屋で一人でいる」

ゆい「血が出たり、人を食べたりします?」

玄那「血は多少出るが、カニバ要素はないなぁ。直接的な描写というよりは、もっと精神的に来るやつだ」

八城「お化けかな、お化けじゃないよ。ピエロだよ」

玄那「ピエロはやめてもらえないか。わたしはマ○ドナルドにも行けない」

八城「そんなに出るものじゃないよ。偉い人なんだよ」

玄那「ま、まぁ…恐怖の権化だからな。そう易々と出てこられても困る」

八城「もしかして着ぐるみとか無理?」

玄那「着ぐるみ自体は怖いと思わない。可愛いのだって居るからな」

八城「じゃあ野球も遊園地も行けるね」

玄那「まぁ、そうなるな。ゆいゆいは何してるんだ」

ゆい「腕切り落としを食べているんです」

玄那「み、見なかったことにしよう…」

八城「ゆいちゃんのことも怖くなったの」

玄那「あれを日常と認めるのは無理があるなぁ」

ガラッ

磨夢「ん?」

玄那「終わった…のか?」

磨夢「後二時間はある」

玄那「よく観ていられることだ」

八城「あたしも観ていい?」

磨夢「今から観ても話が分からないと思う」

八城「それでもいいや。まみーは休憩?」

磨夢「ん、何か疲れた」

ゆい「あっ、磨夢さん。頂きましたよ。美味しかったです」

磨夢「美味しいのは新鮮だから」

ゆい「鮮度は最高でした。特別に用意してくれたんですね、ありがとうございます」

磨夢「次はどこがいい?」

ゆい「そろそろお腹の方が欲しいですね」

玄那「映画はまだ終演を迎えないのか…?」


176-16

ちる「あの…終わり、ました…よ。クロちゃん」

玄那「わたしはずっと一人で居たよ」

霞「まぁた先生達が変な話をしていたんですか。先生、クロちゃんが怖がりなのをご存知でしょう。ほら、こうして殻に閉じこもってしまうんですよ」

磨夢「わたしは何も知らない」

霞「では被害者のクロちゃんに訊きましょう。何か貞操を傷付けられたりしませんでしたか」

玄那「先生はわたしに対して特に暴力的ではないぞ。身体よりも精神だ」

霞「先生は精神的攻撃が得意なんですね。ではわたしからも攻撃しましょう…先生の変態変態変態変態ッ!」

磨夢「何を今更」

霞「教師になった理由を教えてください」

磨夢「霞に一目惚れしたから」

霞「嘘ばっかりです」

磨夢「………」

玄那「おっ、このRPG知っているぞ。MODが多いとかすむんが言ってた」

基茂「パーティがうちメンだ」

八城「ゲームの中でもゆいちゃんと××××してる」

玄那「現実性があって…良いな」

ちる「へくちっ」

基茂「ちる、風邪か?」

ちる「ええ、少し、冷え…まして」

ゆい「温かい物、持ってきましたよ」

八城「ありがとう、ゆいちゃん」

基茂「下準備が良すぎて怖い」

ゆい「兄さん、ベットメイキングしておきましたよ。今夜は一緒に寝ましょ…」

基茂「だぁってろ」

玄那「椎木先輩はそろそろ寝るのか?」

ちる「その方が…良いみたい、です。では、お先に…」

八城「おやすみ、ちるお姉ちゃん」

ゆい「これじゃあ、いつもと変わりませんね」

玄那「一応わたしやかすむんも居るのだが?」

ゆい「お二人は新鮮です。ですが揃った所で話している内容が変わりません」

玄那「まぁわたし達はそういった集いであるからな」

ゆい「わたしにとって遠い国の物語ですね」


176-17

霞「ところで皆さん、何しますか?はい先輩、何でしょう」

基茂「そろそろ自室に戻っていいか。今日は疲れた」

霞「映画も観た事ですからね。結局完走したのは、わたしと伊崎先輩、椎木先輩の三人だけでした」

磨夢「三時間は長い」

八城「じゃあまみーは半分で抜けたんだ」

磨夢「ん、切りが良かったから」

霞「彼処から面白い所だったんですよ。確かに原作では上巻の終わりの部分でしたが。あっ、勿論ネットの情報です」

玄那「タイトルだけなら知っているぞ。本屋に並んでいるのを見た事がある」

霞「三年前ですね。その辺りからわたしは本を全く読んでいませんでした。しかし今年から椎木先輩からお薦めを聞いて本にハマりました」

玄那「椎木先輩は熱心な読書家だな。先生」

磨夢「ちるの読書量は尋常ではない」

基茂「学校ではいつも本読んでいるな」

霞「先生も認める程なんですね」

基茂「磨夢は小説をあまり読まないんだろう」

磨夢「………」

ゆい「磨夢さん、この前貸した本、どうでしたか」

磨夢「また一つ頭がおかしくなった」

ゆい「そうですか。わたしは面白いと思ったんですが」

基茂「ゆいゆい基準の面白いってなんだよ」

ゆい「一つの研究ですね。私生活に取り込む為に、その文化を知る必要があります。人間に適応させるのが困難です」

基茂「人外文化は全く知らん」

ゆい「基本的に人間と同じです。あくまで同じ形状をしたものはそうです。少し異質なだけです」

基茂「異質…ねぇ」

磨夢「霞、わたしは寝る」

霞「もう良い時間ですからねぇ。先生、案内お願いします」

磨夢「今夜は霞と二人っきり…」

霞「枕投げでもしましょうね、先生」

玄那「ふむ、二人は寝室に向かったか。やしろん、ここはご同行願おうか」

八城「だねぇ。じゃあお兄ちゃん、おやすみなさぁい」

基茂「………」

ゆい「兄さん、いつ襲ってくれても構いませんからね」

基茂「何脱いでいるんだ?」

ゆい「わたしは今すぐにでも兄さんと目合いたいのです」

基茂「部屋に戻ってからでもいいんじゃないか」

ゆい「居間に残ったのは、わたし達だけです。折角の広い空間ですよ。有効活用できましょう」

基茂「然りとて、大した玩具は無いぞ」

ゆい「何処でも寝られると云うので満足しておきます。兄さん、その辺りで横になってください」

基茂「居間で寝る事も少なくはなくなってきたな」

ゆい「さて兄さん、何に致しましょう」


176-18


磨夢「………」

ザー

磨夢「此方磨夢。居間で基茂とゆいが共寝をしていた」

ザー

八城「相変わらずだねー」

ザー

玄那「少し声が聞こえていたな」

ザー

霞「…本当に聞こえていたんですか?この家はとっても広いんですよ」

ザー

玄那「ゆいゆいってどんな嬌声を上げるんだ?」

ザー

霞「やっぱり聞こえてないじゃないですかー、ねぇ先生」」

ザー

磨夢「ゆい、ゆい…」

ゆい「あっ、磨夢さん…おはようございまぁす」

磨夢「気持ち良かった?」

ゆい「はい。兄さんもなかなか技術を上げていますから。わたしも満足しています」

磨夢「そう」

ゆい「………」

ザー

八城「ゆいちゃん黙っちゃったよぅ」

ザー

霞「もう先生はこれだから駄目なんですよ。でもわたしは行きませんよ。今、先輩の部屋を探索していますから」

ザー

玄那「何か見つかったのか、かすむん」

ザー

霞「相変わらずエロゲの量が凄いですね。わたしが見込んだ通りです」

ザー

八城「お兄ちゃん、また今度崩すって言ってたよ」

ザー

霞「確かに妹ゲーが山になっていますね。学園モノは流しているんですかね」

ザー

玄那「テンプレ展開なら飛ばしちゃうんだろう」

ザー

霞「あーわたしもよくそうしていますね。オートにしてBGMにしています、はい」

ピッ

磨夢「ゆい」

ゆい「はいっ、何でしょう!」

磨夢「やっぱり寝ぼけてる?」

ゆい「寝ていた方がいいですか?」

磨夢「意識は判然としているものの、思考出来ていない」

ゆい「起きたばかりだと頭が働かないんです」

磨夢「そう」

ゆい「馬鹿にしていますよね、絶対…」

磨夢「基茂は?」

ゆい「兄さんも結構寝た筈なんですが…兄さん」

基茂「zzz」

ゆい「仕方のない兄さんです」

磨夢「邪魔なようなのでわたしは退散する」

ゆい「磨夢さんも兄さんの咥えていきません?」

磨夢「遠慮しておく」


176-19

霞「お疲れ様です、先生。途中で切断したのは先生なりの配慮ですか」

磨夢「いや、話に集中したかったから」

霞「一対一だからこそ話せる事もありますからね」

磨夢「ん、多数は授業くらいでいい」

バフッ

霞「先生、起きたのに寝ちゃうんですか?わたし、和室に行ってゲームやりたいです」

磨夢「玄那、八城辺りを誘ってやったらいい」

霞「そんな事言ってますと、ボール投げつけますよ。えぃっ」

グシャアッ

磨夢「ん…?」

霞「中はただの水です。何の変哲もない水風船です」

磨夢「若干霞の匂いがする」

霞「わたしは基本的に無味無臭ですが?敢えて言うなら汗臭いんです」

磨夢「お風呂、入る?」

霞「そうしたら屹度目も覚めますよ。寝起きぱっちりですよ」

磨夢「………」


176-20

ちる「あ…」

磨夢「ん?」

霞「おはようございます、椎木先輩。わたし達は今からお風呂に入ります。先輩もご一緒…出来ますかね」

磨夢「浴槽はそんなに広くない」

ちる「わたしは…銭湯で、間に合って…います、から…」

霞「そうですね先輩。伊崎先輩と風呂上がりに会っても困りますからね」

磨夢「基茂ならゆいに止めておいてもらう」

ザー

八城「了解。ゆいちゃんに伝えとくね」

霞「椎木先輩は昨夜銭湯に行ってないので、わたし達が上がったら入ればいいと思います」

磨夢「わたし達に任せて」

ちる「あっ、はい…何か、頼もしい、ですね」

磨夢「ん…」

霞「先生、何照れているんですか。早く来てくださいよぉ」

磨夢「ん」

ちる「あぁ…」


176-21

ゆい「ちるさん、おはようございます」

ちる「あ…おはよう、ござい…ます」

ゆい「兄さんなら部屋に戻りましたよ。起きてから何もしていないので、何かしたいです」

ちる「本…でも、読み…ますか?」

ゆい「難しそうな本ですね」

ちる「中身は、薄っぺらいです」

ゆい「これ、誰かの日記ですか」

ちる「はい、家から、出てきました。誰の物か…分かり、かねます」

ゆい「あのアパート、昔は病院だったと云う話です。ちるさんは霊感ありますか」

ちる「ないです。見えたら、いいな…と思う、位で」

ゆい「見えても良い事ないですよ。冬でも魘されますから」

ちる「個人的、には…楽しみが、増えると…思い、ます」

ゆい「まぁ、人以外ならいいって方も居られますよね」

ちる「沢山、傷付け…られましたから」

ゆい「………」


176-22

八城「お兄ちゃんおはよう。お兄ちゃんおはよう。お兄ちゃんおはよう」

基茂「おはようさん」

八城「もうみんな帰っちゃったよ」

基茂「ゆいゆいすら居ないのか。あいつも働いているんだな」

八城「昼まで待ちきれないよぅ」

基茂「すっげぇ依存しているな」

八城「ゆいちゃんは大事な友達だもの」

基茂「良い奴ではあるけどな」

八城「お兄ちゃんはゆいちゃんの事、大好きなんだよね」

基茂「まぁ…話していて飽きる奴ではないな。一寸頭おかしいけど」

八城「どっちなの?」

基茂「ちるとは別の意味で好きだ」


176-23

ゆい「こんにちは皆さん」

八城「こんにちはゆいちゃん、あたし以外誰も居ないよ」

ゆい「お昼なのに何処行ってるんですか」

八城「ゆいちゃんの分はあると思うよ」

ゆい「材料があってもそこから何を生み出す事も出来ませんよ」

八城「台所が吹っ飛んじゃうね」

ゆい「爆発は町全体を覆う大惨事となるでしょう」

八城「ふぇぇ、危ないよぅ…」

ゆい「でもそれで肉を入手出来て損は無いですね」

八城「自分以外を爆発に巻き込むの」

ゆい「その程度の爆発なら、わたしは容易にその力を吸収出来ます。自分の身は自らの手で守るのです」

八城「あたしそんな能力持ってないから助からないや」

ゆい「八城ちゃんなら式神様が救ってくれるでしょう。身勝手な神様ですからね。特定の個人しか救出しません」

八城「式神様に会った人が少ないよね」

ゆい「普通の人には見えませんからね」

八城「ゆいちゃんは特別な存在だからね」

ゆい「人は選ばれて生まれてくるのです。わたしが羽衣の人間として生まれたのは必然的であり偶然でもあります」

八城「あたしは猫として生まれたかったなぁ。レオポンみたいな」

ゆい「磨夢さんみたいに中途半端な形と云うのもアレですけどね」

ピンポーン

ルイ「ルリネコでーす」

八城「お兄ちゃんなんか頼んでたっけ?」

ガチャ

ルイ「ボンジュール、八城。これは基茂宛てだよ」

八城「お兄ちゃんの判子判子っと。ハイッ伊崎印」

ルイ「メルスィー。お昼なのに誰も居ないの?」

八城「うん、ゆいちゃんが来て今二人だけど」

ルイ「寝てる間に居なくなったとか?」

八城「うん、お兄ちゃん起こしてから少し寝てたかも」

ルイ「多分その時だろうね。じゃあわたしは次向かうから」

八城「じゃーね、るーちゃん」

ガチャ

ゆい「誰か来てたんですか」

八城「うん、るーちゃんだよ。お兄ちゃんが注文してた奴だよ」

ゆい「兄さんの所まで運びましょう」

八城「そだね」


176-24

基茂「ただいまっと」

八城「あっ、おかえりお兄ちゃん。届け物あったから部屋に置いといたよ」

基茂「おっ、サンキューな」

八城「ところで、まみーは見てないの」

基茂「知らないぞ。どっかで仕事してんじゃないか?」

八城「まみーは忙しいんだね」

ゆい「兄さんおかえりなさい」

基茂「ゆいゆい来てたのか。昼は無いぞ」

ゆい「今とても深刻な発言しましたよね!?」

基茂「磨夢が帰ってこないからな」

八城「お兄ちゃんが作ってくれるって」

ゆい「兄さん、この肉を好きなように使ってください」

基茂「んな肉使いたかねーよ。普通に豚とか鶏をだな」

八城「炒飯作るよ」

ゆい「八城ちゃん、料理出来るんですか」

八城「出来る訳ないだろーあオイオイ」

基茂「じゃあ、いつものやつ作るわ」

八城「ありがとーお兄ちゃん」


177-1

基茂「たでーま」

八城「おかえりお兄ちゃん。今日はバレンタインだよ」

基茂「そんなものも…あったな」

八城「お兄ちゃん、貰ってないの」

基茂「全く話題にされなかった」

磨夢「遂にちるにまで見放された」

基茂「ちるはそういうことに疎いんだろう多分」

八城「その目はなんだぁー」

基茂「現実の厳しさに訴えているのさ」

磨夢「そんな基茂に」

基茂「ココア淹れてもらえるたぁ光栄だぜ」

磨夢「気分を落ち着けよう」

八城「ちょっと大人の気分だね」

基茂「砂糖は追加するがな」

磨夢「わたしはカフェモカ」

八城「まみー大人ー」

基茂「大人なのか」

磨夢「ん、悪い気はしない」

基茂「身体はこんなに小さいのに」

磨夢「………」

ゆい「兄さん、来ましたよーっ」

ガチャ

磨夢「身体はこんなに小さいのに」

ゆい「はい?」

基茂「………」

ゆい「わたしは小さいですが、磨夢さんと同等の技術を備えているのですよ」

八城「ゆいちゃんテクニシャン」

ゆい「そうです、わたしは正統な技術者なのです。磨夢さんも誇りに持った方がいいですよ」

磨夢「ん」

ゆい「兄さん、今日は何の日か問われたら何と答えましょう」

基茂「佐竹の誕生日だろう」

八城「そーだった。ジュン兄おめでとう」

ゆい「兄さんとの友情に乾杯。それが永久にあることを祈りましょう」

基茂「それは佐竹の家まで行って言ってやるもんなんだが」

ゆい「また何か貰いに行きたいですね」

八城「チョコ貰えるかなー?」

基茂「佐竹は女の子じゃないからな」


177-2

ピンポーン

純治「らっしゃーい、二人共。まま、上がって上がって」

八城「ジュン兄の家、久しぶりだなぁ」

純治「大したものはないけどな」

ゆい「一人暮らしに客の接待を求めるのは間違っています」

純治「ネットの中なら接待出来るんだよ。生活必需品も揃うし」

ゆい「此岸に不足があっても彼岸で充実していればそれで可いのです」

純治「死生観とかはっきりしてんのな。ゆいゆいは」

ゆい「人は哲学するのです。生命とは何か。生きているという実感はあるのでしょうか」

八城「あたしはよく食べてよく寝るよ」

ゆい「習慣により身体を動かしていると認識しますね。しかし、その身体は自力で動かしていると証明出来ますか」

純治「他人に動かされている、と考えると気持ち悪いなぁ」

ゆい「催眠でおかしくなるアニメ観ましたね、八城ちゃん」

八城「えっちなのはよくあるよね」

純治「クラスのアイドルや優等生に仕掛けるやつね。大抵きょぬーだよな」

八城「あるのとないのってどっちがいやらしいのかなぁ」

純治「無くてもエロい子はエロいぞ。あるいは姉妹同時にとかな」

八城「だったら、妹の方はかわいくなるね」

純治「姉の美しさと対比的な可愛さがたまんねぇな」

八城「お婆ちゃんとょぅι"ょの年の差がたまんねぇな?」

純治「BBA専は余所に当たってもらうぜ」

八城「あーうぁ」

ゆい「ところでジュン兄さん、今日はおめでとうございます」

純治「伊崎以来にありがとう。それで一人ケーキだぜ。でっかいの買ってきたから一緒に食うか?」

八城「わぁい、食う食う」

ゆい「では、お言葉に甘えて」

純治「ほら、ケーキだ。やることは分かっているよな」

八城「蝋燭立っていないよ」

ゆい「お線香なら持っているので、刺しておきますね」

純治「うわっ、線香くせえケーキになっちまった」

八城「ゆいちゃん、お経を一つ」

ゆい「お寺さん呼んできてください」

純治「なんまいだーなんまいだー。って今日は何の日だよ」

八城「ジュン兄おめー。チョコレートは無いよ」

純治「だと思って買ってきたぜ」

八城「おおぅ!きのことたけのけー」

ゆい「たけのけって何ですか。新しい里ですか」

純治「まぁ、こんな所だにゃ。線香ケーキどうするん、ゆいゆい」

ゆい「このまま仏壇に供えましょうか」

八城「食べゆよ、もったーない」

ゆい「思い出したように幼女にならないでください」

八城「ふぇぇ…」

純治「そうだ、オレの誕生日に食わないで誰の誕生日に食うんだ。やしろん、二人で食おうぜ」

八城「わぁい」

ゆい「ふぇぇ…」

八城「どったの、ゆいちゃん」

ゆい「わたしも欲しい…だなんて、今更ですよね」

純治「オレとやしろん、二人の分だからな。悪いな」

八城「はい、じゃあゆいちゃん。あーん」

ゆい「八城ちゃん…あーん」

ハグッ

ゆい「美味しいです」

八城「美味しいってジュン兄」

純治「良かったなぁ。何というか…慈悲深いオレは半分やるよ」

ゆい「え」

八城「あたしも半分あげるよ」

ゆい「え」

純治「ゆいゆいは人を信じないみたいだな」

ゆい「わたしは神様の仰ることしか信じませんからね」

八城「あたし将来ないすばでぃになるよ」

ゆい「式神様に占ってもらうと可いでしょう」

八城「式神様に訊いたらはっきり答えられるから嫌だよぅ…」

純治「占いは…当たるのか?」

ゆい「式神様の的中率は99%ですからね」

純治「ならあれだよな。将来の地球がどうなるとか分かるんだろう」

ゆい「宇宙人による地球侵略は濃厚だと仰っていました。遥か未来の話ですけど」

純治「そういうゲーム、今やってるぜ。話が重たいやつ」

八城「あー、あれか。名作だよね」

純治「3の宇宙人も残酷だけど、2は特に絶望的だ。伊崎に勧められたフリゲな」

八城「2は泣いたよ」

純治「オレは正直滅入りました」

八城「ゆいちゃん、例えばね、こんな銃でピューだよ」

ゆい「その後は美味しく戴くんですか」

八城「そこまではやんなかったかな」

純治「なにかの肉というのはあったけどな」

八城「ゆいちゃん、早く食べないと置いてくよ」

ゆい「な、何もう帰る支度してるんですか」

純治「余ったら、オレが朝にでも食っとくから安心して帰ったらいいぞ」

ゆい「明日の朝、押し掛けますよ」

純治「それはそれで、嬉しいな。ゆいゆいに起こしてもらえる」

ゆい「わたしのモーニングサービスは兄さん限定です」

純治「伊崎も幸せな野郎だぜ」


178

八城「ゆいちゃんゆいちゃんゆいちゃんゆいちゃん」

ゆい「はいはい何でしょう、八城ちゃん」

八城「春はまだぁ?」

ゆい「まだ寒いですね」

八城「よくお仕事できるね。あたしゃあ寒くて寒くて」

ゆい「八城ちゃんの服装っていつも暖かそうですね。夏はどんな格好してましたっけ」

八城「夏はあれだよ。下手したら見えちゃう薄着」

ゆい「あれ普通に見えちゃってますよ」

八城「そういうゆいちゃんも水かけられたらいやーんってなるやつだよ」

ゆい「雨の日に駆け回る訳でもないので構いません」

八城「結局どっちがえちぃのかな」

ゆい「八城ちゃんのは見えそうで見えないこともありますよね」

八城「そだね。あたしが屈んでも角度によっちゃね」

ゆい「その可能性があるなら、わたしの勝ちですね」

八城「透けたら隠しようがないよね」

ゆい「しかしわたしも正面からは見せません。腰を捻り相手を混乱させるのです」

八城「じゃあゆいちゃんの方が見えない?」

ゆい「動き次第なんですよ。誘惑するように動きます」

八城「流石ゆいちゃんだぁ」

基茂「何の猥談をしてるんだ」

ゆい「兄さん、よく来てくれました。今回の議題はこういうものです」

八城「まみーが撮ってくれたやつだ」

ゆい「ご理解いただけましたか」

基茂「ゆいゆいが卑猥すぎるな」

ゆい「兄さん、慣れていますね」

基茂「ゆいゆいのはすぐ目が行ってしまう」

八城「それじゃあ不公平かも」

ゆい「八城ちゃんも一緒にお風呂入っていますけどね」

基茂「背中流すくらいだ」

八城「お兄ちゃん遠慮するからぁ…」

ゆい「兄さんは紳士すぎるのです」

基茂「やしろんの身体はあまり興味ないしな」

八城「お兄ちゃん身体で女を選んでる」

ゆい「元はわたしの所為でもあるんですが」

八城「ゆいちゃんが敏感だから?」

ゆい「わたしは全身が性感体です」

基茂「嘘吐くな」

ゆい「はい」

八城「ゆいちゃん、こそばし弱いよ」

基茂「耐性あるやつの方が珍しい」

ゆい「わたしこの前見ましたね。そういうビデオを」

八城「アダルトなの?」

ゆい「いいえ、あれは至って健全だと磨夢さんは仰っていました」

基茂「全年齢版か」

八城「そういうことだね」

ゆい「格好は色々でしたけどね」

八城「巫女はあったの」

ゆい「巫女は少数派なので御座いません」

八城「スクミーズ」

ゆい「正解」

八城「ブールマ」

ゆい「正解です」

基茂「それにロープやガムテープを加えるんだな」

ゆい「違います。道具は用いません。抵抗出来ないよう二人係で両腕を抑えるなどして束縛します」

八城「椅子ぐらいは用いるでしょ」

ゆい「それはそうですね。椅子に座らせる、仰向けにさせるなど凡ゆるプレイが収録されています」

基茂「これはレンタルしに行かねばならないな」

八城「あたし前に見たホラーの続き気になる」

基茂「今からでも借りに行くぞ。ゆいゆい、やしろんを借りる」

八城「わーい、お兄ちゃんと一緒ー」

ゆい「いってらっしゃいませ」


179-1

基茂「渡る世間はロリばかり」

磨夢「ん?」

基茂「何故二人して海岸で黄昏れてにゃならんのだ?」

磨夢「さあ」

基茂「元々オレは一人で居たというのに」

磨夢「ん」

基茂「まあ、いいか」

磨夢「………」

基茂「人、来ねえなぁ」

磨夢「寒いから」

基茂「そだなー」

磨夢「………」

基茂「ちるは何してんだろう」

磨夢「何処かでアルバイト」

基茂「ゆいゆいがどうたら言ってたなぁ」

磨夢「基茂も働いたら?」

基茂「良い働き口がない。面接が無理」

磨夢「緊張するのが悪い」

基茂「磨夢は落ち着きすぎだ」

磨夢「そう」

基茂「磨夢は人前で緊張しないだろう?」

磨夢「わたしは対象を単なる物質と判断しているから」

基茂「同じ人間と思わない、かぁ。いや、磨夢の場合、違う種だからじゃないのか。異種間交友」

磨夢「異種姦…」

基茂「そこで切るな」

磨夢「とりあえず、それも一理ある」

基茂「同種の人間なら、磨夢の方法が手っ取り早いな。物質ね」

磨夢「肉片」

基茂「妄想やめろ」

磨夢「骸骨」

基茂「オレは理科室にゃあ居ないぞ」

磨夢「生物の浅井先生は人体模型が好き」

基茂「四隅に置かれると怖いな」

磨夢「間に骸骨も」

基茂「うげぇ…」

磨夢「憑かれた4日後に死ぬ」

基茂「オレは全く霊感が無いので安心だな。ゆいゆいじゃあるめーし」

磨夢「確かに、基茂は霊を引き付けない性質がある」

基茂「霊も人と一緒で寄ってこねーのか」

磨夢「でもゆいは引き付けるのが謎」

基茂「普段から霊媒師やってて怨み買われてんだろうな屹度」

磨夢「わたしも霊を呼ばない」

基茂「あぁ…」


179-2

八城「おかえり、珍しい組み合わせだね」

基茂「昔ならよくあったことだけどな」

磨夢「………」

八城「あ、待ってまみー」

磨夢「…ん?」

八城「ゆいちゃん見なかった?」

磨夢「方角が逆だから」

八城「そだったそだった」

コンコンコン

磨夢「ん」

ゆい「こんばんは、皆さん」

八城「あ、丁度噂していた所だよぅ」

ゆい「磨夢さん、今お帰りで」

磨夢「そう。海の方に居た」

ゆい「無様に過ぎた青春を思い出していたんですか?」

磨夢「………」

八城「まみーの青春?」

ゆい「語るまでもありませんよ。わたしに出会って終わりを告げたのですから」

磨夢「ゆいが、わたしの前に立ち塞がった」

八城「ゆいちゃん邪魔したの」

ゆい「磨夢さんが、自分から望んで選んだ道です。契約と引き換えに青春を奪いました」

八城「まみーも初めて奪われたんだ」

ゆい「兄さんの場合と同じくわたしも初めてを奪われました。さて、その初めてとは何でしょう?」

八城「一緒にお風呂入ったこと?」

ゆい「わたしは初めてでしたが、磨夢さんは違いますね。答えは親しみを込めたハグでした」

八城「アメリカンだね」

ゆい「まぁ契約との関係はからっきしありませんが」

八城「べろちゅーは?」

ゆい「兄さんには求めますが、磨夢さんは…」

磨夢「………」

八城「したことあるの?」

ゆい「磨夢さんとはありません」

八城「そーなんだ」

ゆい「磨夢さん、何か言ってくださいよ」

磨夢「八城、ご飯よそって」

八城「はーい、手伝うよ」

ゆい「どうしたことでしょうか」

磨夢「現在、圧政下に有り。民は抵抗すら出来ない」

ゆい「刃向かえば後が怖いと云うことですね。あなたに従いましょう」

磨夢「王と民が協力して、文明は発展する」

ゆい「王の失墜は自立の好機でありますが、同時に国の崩壊でもあるのです」

磨夢「民を動かす指導者が必要」

ゆい「彼は民の心を知る者でなければなりません。彼も一人の民なのです」

磨夢「ただ民にあらず。天才であること」

ゆい「彼は万事を解決する力を持つべきです。また、多大な支持を得ることです」

磨夢「それがカリスマと云うもの」

ゆい「国を維持する絶対なる権威者に必要不可欠です」

磨夢「それを持たない者は民から不平を買い、やがて暗殺される」

ゆい「この国に限って、そんなことはありませんけどね」


179-3

八城「秀切さんの時代劇面白かったね」

蕨「♪」

八城「ああいうのを濡れ場っていうんだよ。サービスだよ」

蕨(コクコク)

八城「秀切さんってお風呂好きでしずちゃんみたい」

蕨(コクリ)

八城「らびぃ、お風呂入る?」

蕨(コクリ)

八城「おっふろ、おふろ」

蕨「♪」

ゆい「あれ、八城ちゃんどうしました?」

八城「あたしたちお風呂入るんだよ」

蕨(コクリ)

ゆい「後背の危険を察し、わたしもお供致します」

八城「後ろに誰も居ないよ?」

ゆい「あの人はいつだってわたしを監視しているのです」

八城「ゆいちゃん、とらわれの姫君」

ゆい「白馬の王子様は勿論兄さん」

八城「お兄ちゃんは白馬を残して帰るの」

ゆい「待ってください。せめて顔ぐらい見せてください。その顔は漆黒のベールに包まれていました」

八城「お兄ちゃんは正義の味方じゃないからね」

ゆい「兄さんは悪魔の手羽先です。パリパリです」

蕨(ニコッ)

八城「あっ、そいやお風呂入るんだった。ゆいちゃんも早くぅ」

ゆい「今行きますよ」


180

霞「はい、もしもし」

磨夢「ん」

霞「何か用件を言ってくださいな」

磨夢「薬が切れた」

霞「先生はヤク中だったんですか!?わたしの家は薬局もバイヤーもやってないので、何も出来ませんけど」

磨夢「霞と話したかった」

霞「それならそうと言ってくださいよ。先生はただでさえ心中を読めないんですから、そこ意識してくださいね」

磨夢「ん。霞の事は、いつも意識している」

霞「わたしが夢に出てくることはありますか」

磨夢「霞は登場回数が多いと思う。先週の日記に、霞が家に遊びに来たと記述がある」

霞「そういえば、今年になってから其方にお邪魔していませんね。クリスマス以降は」

磨夢「霞、休みに入ってから暇してる?」

霞「早朝に出て、夕方に終わる簡単なお仕事をしていますよ。土日はお休みです」

磨夢「真面目に働いている」

霞「職種が何とは今ここで申し上げませんが、笑顔のある職場です」

磨夢「うちの警察とは大違い。週一で血を見る」

霞「特殊部隊と聞きましたが、そんなに物騒なんですか」

磨夢「上司が書類整理で指を切る」

霞「事件性が全く無いですよ。事務所で起きていたら、出動も出来ないじゃないですかぁ」

磨夢「勿論事件に出くわすこともある。但し完全犯罪が余りにも多い」

霞「手掛かりを得ないと、また無能って呼ばれますよ」

磨夢「そこは正規警官の管轄。そして突撃担当と情報担当の違い」

霞「先生は情報担当でしたっけ?情報屋として有名ですからね」

磨夢「そう。でも、非正規なので担当が固定されている訳じゃあない。突撃は厳しいもの。だから基茂に押し付ける」

霞「先生、先輩に対してそんな仕打ちをしていたんですか。先輩にも隠された才能があったんですね」

磨夢「わたし達に難易度が高い任務は回ってこない。あくまで主として情報担当であるから」

霞「簡単なものだったんですか。その一例としてはどういったものがあったんですか」

磨夢「学校にて爆弾駆除作業。これは予め上官より危険性は薄いものだと聞かされていたから大丈夫」

霞「うちの学校にそんなことがあったんですね。何故先輩にやらせたかは問いませんけど、お二人は町の英雄です」

磨夢「霞に尊敬されて嬉しい」

霞「わたし先生の事は尊敬していますよ。割と真面目にです。先生には卒業まで是非付き合って戴きたいです」

磨夢「基茂が去ってもう一年…担任を超える存在でありたい」

霞「いつになったら非常勤をやめるんですか」

磨夢「本業が最重要。正式採用される気はない」

霞「では、教員になられた理由は何ですか」

磨夢「生活費の為であれば、時間の有効活用でもある」

霞「本業だけで安定した収入入ってないんですね」

磨夢「あれは一人暮らしの給料。昔は自分の分だけだったから」

霞「それが本来のアルバイトなんですよ。自分の小遣いは自分で作るというやつですね」

磨夢「ん、前の主人がそのやり方だった」

霞「それ働いた分まるまる引かれていませんか!?」

磨夢「元来低賃金契約だったから」

霞「何の為の使用人ですか、それは。ただの使い勝手の良い駒ですよ」

磨夢「だから主人が出ていって安堵した。そして基茂」

霞「今では楽しんでやってそうですね」

磨夢「ん、今では仕事じゃなくて日常だから」

霞「日常ですか…。わたしも日常的に勉強していれば学校なんて苦にならないんでしょうね」

磨夢「学校嫌い?」

霞「別に嫌いでもないんですが…ゲーセンが学校なら喜んで通いますよ」

磨夢「先生なんて要らない」

霞「上手い人が先生になりますからね。先生は自ら名乗るべきじゃなく、みんなに認められたらなれます」

磨夢「公認を目指すなら大会」

霞「そうですね。そのジャンルの王者にしましょう。また、それに相応しい成績を残せばいいと思います。だから、参加者が少ない場合、先生が生まれないこともあります」

磨夢「生徒主導とは懐かしい」

霞「懐かしいとは昔あったんですか」

磨夢「1ヶ月前の夢だから」

霞「確かに懐かしいですねぇ。わたしは日記つけ始めても三日坊主になってしまいます」

磨夢「早起きして日記をつける癖をつけた方が良い」

霞「夜更かししていると、起きた時にそんな余裕はないんですよ。ご飯を食べてすぐ学校に向かいます。そして寝ます」

磨夢「ん、起きれないなら仕方がない」

霞「よし、クエストクリアです」

磨夢「霞、inしてる?」

霞「はい。今の時間帯だとクロちゃんもinしている筈ですよ。お互いソロでやってますけど。先生も来られるなら、町の噴水迄来てください。すぐ戻りますからね」

磨夢「ん、分かった。すぐにPC立ち上げる。後はチャットで」

霞「はい、お待ちしていますよ」


181

ゆい「朝…ですか」

八城「おはよう、ゆいちゃん」

ゆい「今朝はやけに早いですね。八城ちゃん」

八城「いつものお散歩コースだよ」

ゆい「いつもは…していないですよね」

八城「た、たまたま通りかかっただけなんだよ」

ゆい「?まぁ、良いですけど」

八城「ゆいちゃん、これから着替えるの」

ゆい「兄さんの寝込みを襲うので、このまま行きますよ」

八城「そだね。お外暖かくなってきたしね」

ゆい「本当に無風ですね」

八城「朝なのにね」

ゆい「ほんっと…」


182

基茂「………ぐぐぐ、ぐぁぁ、暑い暑い暑い暑い」

ゆい「兄さん、このまま起きたら丸出しですよ」

基茂「よくそんな暗い所で作業が出来るな」

ゆい「兄さんの懐はわたしの独壇場です」

基茂「何だそれ嬉しくな…やめろやめろ、股間がジンジンする」

ゆい「兄さんには寸止めが適当です」

基茂「変な評価しやがって…」

ゆい「時間を置いて再開します」

基茂「ゆいゆいは本当にドSだな」

ゆい「兄さんを満足させるためです」

基茂「そいつぁご丁寧なこった。ゆいゆい、そろそろ乗っかってくれてもいいぞ」

ゆい「言われなくてもそのつもりです」


183-1

八城「お兄ちゃんお兄ちゃん」

基茂「何だ、やしろん」

八城「あたしで興奮してみろー」

基茂「無理」

八城「あぅぅ…ゆいちゃんより発育良いのにぃ」

基茂「やしろんは全くエロくないからな」

八城「そかなー?あたしゆいちゃんと会話出来るよ」

基茂「ゆいゆいと会話出来たら変態に結びつく訳じゃないけどな」

八城「じゃーお兄ちゃんはあたしに何を求めるの」

基茂「普通にゲームして一緒に生活しているだけで楽しいぞ」

八城「間違いは起こさないの」

基茂「間違いも何も俺は部屋に籠もっているから、ゆいゆい以外では特に異常は起きない」

八城「あたしもお兄ちゃんの布団に忍び込めばいいのかな」

基茂「ゆいゆいで間に合っているんで」

八城「もう結婚しちゃいなよ」

基茂「ゆいゆいは攻略キャラじゃないだろう。共通の愛人」

八城「ちるお姉ちゃんルートにはいつ入るの」

基茂「向こうから来なければ、発展の仕様がないな」

八城「そんなんだからループものになるんだよ」

基茂「ちるじゃなくて、ゆいゆいが何度も死んでいるけどな」

八城「ゆいちゃんが間違っているの」

基茂「どうやらそうらしい。詳細は知らんが」

八城「うー、よく分かんないよぅ…」

基茂「ゆいゆいは一体何を行っているんだ」

八城「ところでお兄ちゃん、お花見行きたいな」

基茂「ちるに連れて行ってもらえ」

八城「分かった。ちるお姉ちゃんだね」


183-2

八城「八城でーす。ちるお姉ちゃん、居る?」

ガチャ

ちる「こんな、朝から…どうし、ました」

八城「あんねあんね、今日お花見行きたいの」

ちる「お花見…ですか。おすすめは、ありますか」

八城「どこだっけ…ゆいちゃんは東の公園が綺麗だって言ってたよ」

ちる「近くにも、公園…ありましたよ」

八城「海の方は咲いてないと思うよ」

ちる「東の方まで…行きますか?」

八城「ゆいちゃんの所でもあるかな」


183-3

八城「おはよー、ゆいちゃん」

ゆい「おはようございます。八城ちゃん」

八城「ゆいちゃんの神社って桜あるの」

ゆい「うちと云うよりは前の道が桜並木ですよ」

八城「そうなんだ。いつも裏から入るから気付かなかった」

ゆい「お花見ですか」

八城「うん、ちるお姉ちゃんと一緒に行くの」

ゆい「なら隣町の森林公園に行った方が良いですね。うちの近所に広場は特にありませんから」

八城「やっぱりそうかなぁ」

ゆい「もう少し広く町を見れば、何処かにあるかもしれませんが」

八城「んー、あたしは大抵ゲーセンとゆいちゃんの神社くらいしか行かないしなぁ」

ゆい「わたしも神社と八城ちゃん達の家を行き来しているだけですね」

八城「あの山越えなにゃらんの?」

ゆい「あの山越えないと隣町には行けませんよ」

八城「山に桜も見えるけど、うーん…」

磨夢「八城、ちるから電話」

八城「あ、うん。じゃあゆいちゃん、ありがとね」

ゆい「はい」

八城「はい八城に替わったよ。どしたの、ちるお姉ちゃん」

ちる「先程、先生から、良い場所を教えて…いただき、ました」


188-4

八城「あーここはここは」

ちる「はい、先生、行きつけの…お店です」

マスター「やあ待ってたで。今朝は早めに閉じて早めに寝たけど、昼に起きるってのもええな。あっ、れーちゃんは店頼んでるから出てこーへんで」

八城「こんにちは、マスター。るーちゃんは来れなかったの」

マスター「うん。るーちゃんはああ見えて仕事中毒やから、いつもの笑顔であっさり断られたで」

八城「そっかぁ。残念だなぁ」

マスター「ところで初めて見る顔やけど、そこのねーちゃんはどなた?」

八城「あ、この人がちるお姉ちゃんだよ」

ちる「よ、よろしく…お願いします」

マスター「まあまあ、固ならんでええよ。気楽に行こうや、ねーちゃん」

ちる「は、はい…」

八城「マスターマスター、桜の木は何処にあるの?」

マスター「あぁ、お店の裏に植えてあるで。こっちや」


188-5

ちる「綺麗、です」

八城「枝垂れてるー」

マスター「綺麗やな、今年も。誰が植えたんか知らんけど」

八城「勝手に生えてた一つかな」

マスター「いや、外観が寄生されているだけで、庭はちゃんと手入れしてるで。れーちゃんが」

八城「マスターもやらなきゃ駄目だよ」

マスター「朝にお客さんが少ない時あるけど、そん時はうちも閉店気分で眠うなってるからなぁ。夜中は言うまでもなく。やから、外に出る機会なんてないわ」

ちる「出たく、ても…出れ、ないん、ですね」

マスター「まぁ、そういうこっちゃな。二人も昼夜逆転してみたらええわ」

八城「あたしがやったらまみーに無視されそうだにゃあ」

ちる「怒りは…しないん、ですね」

八城「まみーだからね」

マスター「優しいんかムーって」

八城「怖くもないし、優しくもないよ」

マスター「あぁ、それは同意やわ。ところでお二人、何か飲みもん汲んでこようか。あっ、勿論お酒は禁止で」

八城「ミックスジュースが良いなぁ」

ちる「わ、わたしは…紅茶で」

マスター「ミックスジュース一つに、紅茶一つ、そしてうちはジンジャエール。あいあい了解って」

八城「ちるお姉ちゃん」

ちる「どう、しました…八城、ちゃん」

八城「結婚、出来ないよ?」

ちる「結婚、ですか…」

八城「でもお兄ちゃんにはちるお姉ちゃんしかいないや」

ちる「………」

八城「ちるお姉ちゃん?」

ちる「え、えぇ…わ、わたし…どうす、どう、すれば…」

八城「あたしは楽しみにしてるよ」

ちる「………」

マスター「よっしょ、よっしょ…と。れーちゃん、おおきにー」

メイド「いえいえ、マスターには日頃からお世話になっていますから。ではごゆっくり」

マスター「あんがとー。さてと、今から飲み物取ってくるわ」

八城「あたしも手伝うよ」

マスター「いや、机が重かっただけやから、大丈夫や。飲み物運ぶんは慣れてるよ、トレイもあるし」

八城「ちるお姉ちゃん、トランプしよう」

ちる「いつも、持ち歩いて、いるん…ですか」

八城「ううん、さっきマスターから貰ったの」

ちる「よ、よく、見え、ません…でした」

八城「あたしもどうやって貰ったのか分かんないや。気付いたらポッケの中にあったの」

ちる「何故、貰ったと…思い、ましたか」

八城「家に出た時は無かったよ。ここに来て、さっき気付いた」

ちる「わたしは…持って、いません、でした」

八城「マスター、ディーラーもやってたのかな。まーいいや、スピードしよう」

ちる「えぇ、やりま…しょう」


188-6

マスター「こっそりやってたつもりやったのに、何か珍しがられて捕まってたさかい、ちょっと遅なった。れーちゃん一人でやれてんのに…ん、トランプしてるん」

八城「今集中してるとこだよ」

ちる「八城…ちゃん、ここ、で…中断、しま、しょう」

八城「そだねー。マスターありがとう。戴くぜぃ」

マスター「今日はうちの奢りや。お花見楽しんでな」

八城「わーい。楽しいなぁ」

ちる「ありがとう…ござい、ます」

マスター「いやいや、二人はVIPやからな。そういやVIP待遇かぁ…もっと盛大な花見をするんやったら、どこがええんやろなー。るーちゃんに聞いたら連れてってくれるやろうか。うちよりずっと外を見てるしなぁ」

八城「あたしたち、外の世界知らないよ」

ちる(こくこく)

マスター「おっと、うちを外の世界に引っ張りだそうとも無理な話や。もう忘れとるし、今の生活に満足してるからな。でも、余所から来るお客さんも居はるし、それで外の話を聞くわ。そしてみんな言うわ。この町は落ち着くって」

ちる「そもそも、住人が、少…ないです、から」

八城「だよねー。あたしも拾ってもらわなかった」

ちる「………」

マスター「学生なん、姉ちゃんは」

ちる「あっ、はい。そう…ですが」

マスター「やっぱ学生は多いんか。れーちゃんが言ってたわ。土日は学生が激増するって。さっきも結構居ったし。喫茶店は喫茶店で繁盛しとるんやなぁ」

八城「マスターも喫茶店に顔出せば」

マスター「もっかい顔見せてこよっかな。普段会わん人に話すのも楽しいし」

八城「うん、いってらっしゃーい」

ちる「………」

八城「ちるお姉ちゃん、どこまでやったっけ」

ちる「わたしの、手札が…こう、なって…いま、した」

八城「じゃあ残りがあたしのかー」

ちる「出て、いたのは…この辺り、ですね」

八城「ふぇぇ、あたしのカード減ってないよぉ」

ちる「…ふふ、始め、ましょう」

八城「せーの…わっは、無理だよぉ」

ちる「状況、忘れて、いま…した」

八城「やっぱり最初からやらないと」

ちる「まぁ…そう、です…よね」


189-1

ゆい「もしもし、羽衣です。注文の件なのですが…はい、はい、そうですか。首尾良くやっているんですね。はい、はい。そうして戴ければ…はい、ありがとうございます。失礼します」

ガチャ

ゆい「ふぅ…一仕事終わりっと」

八城「ゆーいーちゃん」

ゆい「もう黄昏時ですか。早いものですね」

八城「ゆいちゃん家は何で黒電話なの」

ゆい「曾祖母の代から使っているのですよ。単純に付喪神信仰です。物には魂が宿るというあれです」

八城「ふへぇ。でも使えんだね」

ゆい「はい、今でも健在です。年季の入りようが凄いでしょう。老体は労る必要があります」

八城「埃がいっぱいだもの」

ゆい「わたしの目が黒い内は買い換えないでしょうね。わたしが死んだ時は柩に入れてください」

八城「後は何が要るの」

ゆい「兄さんの肉ですかねぇ。どこか部位を頂きとう御座います」

八城「お兄ちゃんは断ると思うよ」

ゆい「では、爪や髪と致しましょう。でも何の面白みもありません」

八城「食べられないもの…」

ゆい「わたしはどうか死ぬ前に兄さんのをたっぷりと頂きたいのです」

八城「それでこそゆいちゃんだね」

ゆい「わたしに子種が宿れば、近親相姦待ったなしです」

八城「お兄ちゃん…」

ゆい「兄さんはそれを危惧してか、わたしの中に注ぐのを避けます」

八城「そうなったらバッドエンドだよぉ」

ゆい「しかしそれは杞憂というものです。わたしの身体はそのような内部構造はしていないのです」

八城「常に安全日なんだ」

ゆい「たまに壊れることもあります。それが人間なんです」

八城「お兄ちゃんにぐちゃぐちゃにされちゃえ」

ゆい「兄さんは絶倫ですからね。わたしはついていけなくて死にますね」

八城「ゆいちゃんがお兄ちゃんを止めないと不可ないんだよ」

ゆい「兄さんは熱しやすく冷めやすい。ここはわたしが老化すればよいのです」

八城「ゆいちゃんが老化したらお兄ちゃん自害するよ」

ゆい「兄さんにはちるさんが居ます。わたしは老後の生活を楽しみますから」

八城「ふぇぇ、ばーさん仲間が増えちゃうよぉ」

ゆい「お互いに年を取りましたね、八城お婆さん」

八城「もう仙人クラスじゃのぅ、ゆい婆さん」

ゆい「は、は、は、わたしが何千年生きているとお思いで?わたしにしてみれば人間なんて赤子同然ですよ」

八城「ばぶー。あの時が懐かしいばぶ」

ゆい「親は居たんですか」

八城「顔は覚えてないけど、居たと思うよ」

ゆい「正直憎いですよね。殺し屋雇いましょうか。無論肉は頂きますが」

八城「んー、覚えてないし…どーでもいいよ」

ゆい「では何れ頂くとしましょう。問題は特定ですよね。磨夢さんや須丸さんの調査は滞っているようです」

八城「確かな情報がないんだ」

ゆい「はい、残念ながら。そもそも八城ちゃんが八城ちゃんという名前であったという証明すら出来ていないのです。何か違う名前はありませんでしたか」

八城「うーん、あったような、なかったような…でもあたしはあたしだよ。うーん」

ゆい「思い出せないならいいです。わたしがいつか割り出してあげますから」

八城「よろしくねー。そろそろお夕飯出来てるかも」

ゆい「はい、では参らせてもらいます」


189-2

八城「今帰ったよ」

磨夢「遅い」

ゆい「はい、こんばんは」

磨夢「………」

八城「お兄ちゃんとこ行こっか」

ゆい「いや今のは留まれという合図です」

八城「え?」

磨夢「………」

八城「あ、あたしは上がっとくね」

ゆい「…さて磨夢さん。何か?」

磨夢「ちょっと手伝って。米研ぎをお願い」

ゆい「…はあ、分かりました。台ください」

磨夢「ん」

ゆい「ありがとうございます」


189-3

磨夢「………」

ゆい「磨夢さん?」

磨夢「ん」

ゆい「ん、じゃありませんよ。わたしは磨夢さんと会話したいです」

磨夢「そう」

ゆい「いつとなく会話に障害が現れていませんか!?」

磨夢「そう」

ゆい「最近人と喋っていないんですか」

磨夢「ゆいよりは喋っている」

ゆい「確かにわたしは人より神と接している方が多い訳ですが」

磨夢「そう」

ゆい「切り替えが宜しいというわけですか」

磨夢「これが通常」

ゆい「家での形態ということで」

磨夢「そう」

ゆい「もうおやすみモードに入っているんですか」

磨夢「ん」

ゆい「やっぱり」

磨夢「………」

ゆい「磨夢さん、世の中には善と悪があります。人は善意を以て他人に接するべきです」

磨夢「ん」

ゆい「悪意に満ちた目で見るのはやめましょう」

磨夢「やはり気で無いと駄目」

ゆい「気でも駄目です。わたしには見えていますから」

磨夢「そんなに分かりやすい」

ゆい「えぇ、力を使う必要もありません」

磨夢「ならこれは」

ゆい「見えます」

磨夢「………」

ゆい「手が少ないですね。尤もわたしには真似出来ませんが」

磨夢「そう」

ゆい「流していいですか」

磨夢「ん、丁寧に」

ゆい「はい」


189-4

磨夢「最近仕入れた肉」

ゆい「素晴らしいです。一体どこから」

磨夢「近所の人が処理に困っていた。貰ったのはその一部」

ゆい「成程、食べられない部分は貰っていないのですね。それは賢明です」

磨夢「臓器とかどうする」

ゆい「例の店に提供しましょう。店主がホルモンなどに使うでしょう」

磨夢「ん、分かった」

ゆい「切り方が雑だったんですね。部位と雖も範囲が広いです」

磨夢「見れば分かる初心者だった。その顔は恐怖に怯えているようだった」

ゆい「肉を食べられてないならそれで構いませんけど。あの業界の将来を担ってもらうなら、こんな切り方ではなりません」

磨夢「驕れる客」

ゆい「磨夢さんだって、いちから手をつけるのも難儀でしょう。ですから、ある程度は他者にやってもらう方が可いのです」

磨夢「確かに」

ゆい「磨夢さんも相当上手くなっていますよ」

磨夢「ん、しかし固い」

ゆい「普段切るものじゃないですからね。磨夢さんは結構切っていますが」

磨夢「時間が掛かるから面倒」

ゆい「申し訳ないです」

磨夢「ゆい、中華鍋」

ゆい「はい、今ここに」


189-5

八城「お兄ちゃんお兄ちゃん」

基茂「どした、やしろん」

八城「ゆいちゃんに絡んだら変なこと言われたよ」

基茂「やしろんの過去か」

八城「あたしが八城じゃないかもって」

基茂「やしろんはやしろんじゃないのか」

八城「名前が違うんじゃないかだって」

基茂「他の名前なんて認めんぞ。やしろんはやしろんだ」

八城「だよねー。ゆいちゃんは変なことを言うね」

基茂「他に何か言ってなかったか」

八城「食べるとか言ってたよ」

基茂「ゆいゆいはいつも腹ぺこなんだな」


189-6

ゆい「終わりましたよ、やっと兄さんに会えます。あれ、兄さんは何処に」

八城「お兄ちゃんは本屋さんに行ったよ」

ゆい「神は絶対なんですが…よく把握していなかったのですね。今後に期待しましょう」

八城「式神様不調なの」

ゆい「いいえ、式神様は故意的に真実を言わなかったのです。ひどい神様です」

八城「ゆいちゃんって騙しやすいの」

ゆい「騙されやすいわけではなく、わたしは他人の影響を受けやすいのです。かくいう私は趣味も無いので」

八城「無趣味な所ってゆいちゃんらしくて良いと思うよ」

ゆい「兄さんを襲うことが趣味なんて公に言えませんからね」

八城「そういうのは趣味に入れないんだね」

ゆい「当然ですよ。表向きには高潔な巫女をやっているんですから」

八城「ふぎぃ」

ゆい「時には倫理に反した行動をとるものです。人はみな何処かで隠し事をしています」

八城「隠し子とするなんてなかなかマニアックだに」

ゆい「ちるさんには内緒なので確かに隠し子ですね。男の子でも女の子でも食しますよ」

八城「ゆいちゃんは、好き嫌いしないんだね」

ゆい「好き嫌いしては立派な人間にはなれないのです」

八城「ゆいちゃん立派ー」

ゆい「はい、もっと誉めていいのですよ」

ガチャ

磨夢「ん、二人しか居ない」

ゆい「兄さんは本屋に行ったのです。わたしを置いて」

磨夢「そう」

八城「ふーぞくも行くって言ってたよ」

ゆい「…!?聞きましたか磨夢さん。風俗ですよ。この町のことですから法例なんてお構いなしですよ」

磨夢「ん」

八城「というのはジョークだよ。すぐ帰ってくるって」

磨夢「先に食べておくと電話しとく」

ゆい「少しは信頼しましょうよ、磨夢さん」


190

prrr

霞「はいはいクロちゃんですね。こんな時間まで起きているとはなかなかの猛者ですね」

玄那「いや、さっき起きた所だ。夢は良いところだったのに悔しい話だ」

霞「どんな夢でした?昔の友人に告白されちゃいました?」

玄那「昔の友人か。その関係は堅苦しいものだった。良家となるとな。そんなわたしにも仲のいい友人が居た。その友人と少し冒険をしたが悉く失敗に終わった。一つでも成功していれば夢から醒めることはなかっただろう」

霞「具体的に何をされました。密林探索とかでしょう」

玄那「ああ、それは冒険の一つと云えよう。このお嬢様を空から放り投げたのが我が執事だ。遠慮もなかったな。そしたら真っ逆さまさ。生きていることが奇跡だな。まさしく不幸中の幸いってやつだね」

霞「執事はその場でクビにしたことでしょうね。彼の行動はクロちゃんの肉親に監視されていたことでしょうから。ええ、そして川に落ちたことでしょう」

玄那「そうだ、川に落ちたから助かった。わたしはびしょびしょになったので、外で焚き火をして服を乾かす間、行水をしていた」

霞「随分と暢気なことですねぇ。でも全裸のクロちゃんも悪くないと思います」

玄那「幸い、凶悪な魚は生息していなかった。友人は土左衛門ごっこをしていたなぁ。わたしは潜水して溺れかけた」

霞「クロちゃんは夢でもカナヅチだったんですね。そして服が乾いた後は何をしましたか。食材は何も無い筈です」

玄那「島を少し探索していたな。近くに洞窟があったので入ってみたが、人骨の山だったので慌てて逃げた。仕方がないので釣りをした。ピラニアが美味い」

霞「食後、夜更かしはしましたか。朝の食糧を揃えるなり、未知のエリアを探索するなりと色々あった筈です」

玄那「ここで記憶は途絶えているのだ。無事生還したかも分からない」

霞「クロちゃんの強運なら何とかなったことでしょう。ではクロちゃん、現実に戻りますよ。わたしこの前映画のチケットを貰いました。見に行きますよ」

玄那「待て待て。せめてジャンルだけでも教えてほしい」

霞「それに関してはホラーじゃないので問題ありません。わたし自身もホラーは好んで観ませんよ。椎木先輩ではありませんから。ということで何だと思いますか」

玄那「ホラーじゃないのか。しかしかすむんに限って恋愛モノな訳がないよな」

霞「それがその…恋愛モノなんですよね。おまけ要素とかそういうものじゃありませんから」

玄那「わたしは誰とも恋愛する予定はないぞ。独身貴族を嗜もうではないか」

霞「放送でアンケートを採ってみましょう。クロちゃんの声に惚れている人が居るかもしれませんよ」

玄那「声に惚れても容姿に惚れるとは限らないな。そもそもわたしは声に自身がない」

霞「クロちゃんの低音は素敵だと思いますよ。男性に受けるかは知りませんが。寧ろ女の子と思われていないだろうかと」

玄那「ふむ、容姿は声によく似る…か。わたしだってタカイコェ出る訳ないだろ」

霞「クロちゃんにも幼少期があったことでしょう。わたしは当時の声が聞きたいです」

玄那「そういうものが残っているのは恐らく実家だな。たまに顔出すのも可いかもしれない」

霞「クロちゃんって、ここ数年帰省していませんよね。何かあったんですか」

玄那「今まで帰ろうという気持ちにならなかったからなぁ。と思っている間にここの住民になっていた」

霞「別に家族とは何も無いんですね。なら安心です」

玄那「らしくないなぁ、かすむん。熱でもあるのか?」

霞「いえいえ、かすむんは元気ですよ!また明日会いましょう。ははは」

玄那「そうか。じゃあ切るべ。おやすみ」

霞「あーい、おやすみんさーい」


191

玄那「椎木先輩、おはようございます」

ちる「あっ、クロちゃん、おはよう…ございます」

玄那「今日のご予定は?わたしはわたしである為にバイトへ行く。しかし、金を稼ぐだけでは何の足しにもならないのだ」

ちる「と、言うの…は?」

玄那「金というものが信用できない。実際、今日使われてきたものだが、価値に妥当性があるかといわれると疑わしい。紙幣などは特にそうだ。信用できない」

ちる「でも、使って…います、よね」

玄那「使わないと生きていけないから、そうしている。ホームレスなんてまっぴらごめんですたい」

ちる「生活費は、生命活動に…必要、不可欠…です」

玄那「どれだけ削っても、食費だけは逃れられんな。働かざるもの食うべからずだ」

ちる「はい、大いに…そう、思い…ます」

玄那「椎木先輩は料理上手いんでしたな」

ちる「磨夢、先生に…教えて、もらっ…たのです」

玄那「先生に教えてもらったとは…わたしもあんな料理人になりたい。椎木先輩、力を貸してもらえないか」

ちる「はい、当然…です。少しずつ…上手く、なって…いきます、から」

玄那「かすむんからの、差し入ればかりではなく、自分でも作れなくては。助かります」







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