2020-04-16 19:53:53 更新

概要

chirutan.txt_6の続きです。今お読みchirutan.txtは最新です。仮名にもほどがあるだろ。更新は期待しないでください。遅筆ながら一生書き続ける所存であります。


300

基茂「おっす、先生」

磨夢「さっきの授業寝てた」

基茂「オレは寝ながらでも頭に入ってるぞ」

磨夢「うそ」

基茂「半覚醒状態ならな」

磨夢「そう」

純治「先生のありがたい話に耳を傾けるべきだぜぃ」

磨夢「純治も寝てた」

純治「やや、バレてましたか」

基茂「逆に起きてた輩がいるのかってぇ話だ」

磨夢「十数人ってとこ」

基茂「半分切ってらぁ」

磨夢「基茂、昨日何時に寝た?」

基茂「分からんなぁ、空想の中じゃ」

磨夢「訊いたこっちが悪かった」

純治「オレは1時に寝ました」

磨夢「正直でよろしい」

基茂「寝たのは寝たぞ?」

磨夢「八城がずっと呼んでたけど」

純治「やしろん泣かすなよ」

基茂「泣かねーよ、やしろんは」

磨夢「ゆいが無能」

基茂「ゆいゆいは満足したら帰っていくからな」

純治「ナニの話かね」

基茂「大体合ってる」

純治「この変態め」

磨夢「変態変態変態」

基茂「なんでこういうときは気が合うんだよ」

純治「ハーレムなんて許されないもんだ」

基茂「別にハーレムなんて作ってねーし。彼女と愛人だけだし」

純治「などと供述していますが」

磨夢「愛する人は一人いればいい」

基茂「先生様が愛を語るとはな」

純治「先生だかんなぁ。オレらとは経験が違うのだよ。もっと狩りを行わきゃいかんぞ。放置狩りでもいい。レベルを上げるんだ」

基茂「なるほどな、先生は経験人数が違うということか」

磨夢「そう」

基茂「そこ認めるとこじゃないと思うが」

磨夢「そう」

基茂「………」

純治「先生やしろんを嫁にください」

磨夢「基茂ならいつでも」

基茂「オレにそのケはねーよ」

純治「冷遇されてんなら友人としてなら住まわしてやんよ」

基茂「いてもいなくても変わらねーようだから考えてはおくか」

磨夢「………」

基茂「オレが出たらある意味ひどいことになるか」

磨夢「いや基茂がいたほうがひどい」

基茂「どっちでやがんでい」

磨夢「基茂のおかげでゆいがエロい」

純治「純粋で無垢な少女を穢すとはおのれ伊崎ぃ」

磨夢「鬼畜」

基茂「ゆいゆいは根っからの変態じゃないかと思うんだが」

純治「おめーが言うな」

基茂「オレも変態だがゆいゆいの影響も多分にあるということだ」

磨夢「なるほど、ゆいと会ってより変態に」

純治「もはや手に付けられん状態ってわけですな」

基茂「 人間たぁみんなそんなもんさ」

純治「人類みな変態論かぁ。そう思えば楽なもんだろうな」

磨夢「人間やめたい」

基茂「もっと早いうちにやめとけよ」

純治「先生はネコみたいっすね」

磨夢「基茂、レオポンに餌やった?」

基茂「知らねーよ。やしろんがやってるだろう」

純治「ネコを虐待してるのか伊崎」

基茂「レオポンはデブってるから問題ないぞ」

磨夢「ちなみに基茂は懐かれてない」

基茂「うるせー」

純治「ネコはなかなか懐かんからなぁ。ネコも可愛いが、飼うならイヌがいいな」

基茂「オレはヨウムがいい」

磨夢「子孫に迷惑」

基茂「そんときは心中してやるさ」

磨夢「ヨウムに迷惑」

純治「ちゃんと面倒見れるペットにするべきだぜぃ。うちはハムスターいるぞ」

基茂「佐竹にしては可愛いものだな」

純治「姉ちゃんが置いてったんだよ。家離れるから世話頼むって。連れてきたと思ったらこれだからなぁ」

基茂「もしかして佐竹の姉ちゃんツユネさんと付き合いあんじゃねーの?」

純治「ツユネさん?誰だねそれは」

基茂「ちるの姉ちゃんだ。世界にネタを求めて旅する作家だよ」

純治「ツユネ、なんか聞いたことがあったよ。そうだ姉ちゃんが言ってた。ちるたんの姉ちゃんとは意外だな。うちの姉ちゃんも会ってたっぽいな。ちょっと会って話したぐらいだが」

磨夢「羨ましい」

基茂「ツユネさん、結構な頻度で帰ってきてるらしいけどな」

磨夢「ちるの家に張り込もう」

基茂「ちるには迷惑な話だなぁ。ちるに連絡入れてもらうだけでいいと思うがね」

磨夢「ちるの電話番号知らない」

基茂「オレの携帯電話に入ってるよ。そっから掛けろ」

純治「アドレス帳見してみれ」

基茂「大したことないぞ」

純治「ちるたんに先生にゆいゆい神社か。ふむ60点ってとこだな」

基茂「なんだか余裕っぽいな」

純治「ちるたんとも付き合ってるわけじゃねーじゃん、その分減点だ」

磨夢「言えてる」

基茂「ちるが喋るほうじゃないかんなぁ」

純治「まあその関係は羨ましいがな」

基茂「ただの用心棒だ」

磨夢「そう」

基茂「なんだか不服そうだ」

磨夢「別に」

純治「先生はその、お付き合いとかされてるんで?」

磨夢「ん」

基茂「あんまここで言える話じゃねーけどな」

純治「伊崎てめー」

基茂「オレのわけねーじゃん。まあ身近な人物だけとは言っておく」

純治「ほーん、深いものだな」

磨夢「………」

純治「さあ次終わりゃあ飯だ。音楽室に行くぞー」

基茂「歌のテストがあったけな」

磨夢「アニソン歌ってそう」

基茂「湖先生はどんな曲でも弾いてくれるぞ」

磨夢「そう」

純治「でもオレの歌いたい曲弾いてくれなかったぞ」

基茂「同人ゲーじゃねーの?」

純治「楽譜すら見つからんらしい。だから仕方なく市販ゲーにしますた」

基茂「オレも同人までは知らなんだ」

純治「この前貸したったやつだぜぃ。結構好評だった忍者ものの」

磨夢「ああ、あの鬼畜拷問ゲー」

純治「先生はやりましたか。あれは純愛ですよね」

磨夢「ん、やらなきゃ分からない純愛」

基茂「マジかやってみようかな」

純治「延長は構わんがなんかいい曲おせーて」

基茂「アニソンなら湖先生だぞ」

純治「うむ、全くその通り」

磨夢「じゃあわたしはここで」

基茂「そっちは保健室なんだが」

磨夢「これあげるから黙ってて」

基茂「クリアファイルか。この絵好きだな」

磨夢「基茂のロリコン」

基茂「何を今更」

純治「オレもなんか欲しいっすわ」

磨夢「はいバトエン」

純治「ありがとうございます。やってるやつ見たことないけど」

基茂「佐竹持ってたよな」

純治「また持ってくるぜ。魔王同士で殴り合うぞ」

基茂「勇者連れてこいし」

純治「オレはモンスターのほうが好きなのだよ。ガッハッハ」


301-1

ゆい「こんばんは」

大将「おっ、嬢ちゃん。今日も活きのいいのがいるよ」

ゆい「肉になったやつでお願いします」

大将「んじゃあいつものいっちゃおう」

ゆい「大将はなんでこんなことしてるんですか」

大将「わたしはこう見えて旅行が好きでね、若いときはいろんな国に行ったもんだよ」

ゆい「本場仕込みですか」

大将「そうそう、あまりにも美味しかったから弟子入りしたのさ。最近は食えたもんじゃないがね。嬢ちゃんの若さが羨ましいもんだ」

ゆい「人は見かけによらないんですけどね。わたしには消化出来うるのです」

大将「まあともかく美味そうに食ってくれるゆいちゃんを見てるだけでわたしゃ嬉しいよ」

ゆい「一般食が食べれなくなったときってあります?」

大将「人じゃなきゃダメなときはあったね。もちろん外国での話だけど。ゆいちゃんこそその辛さを分かってんじゃないかね」

ゆい「わたしは別に、ほらわたしいつも大将の所に通ってるわけじゃないでしょう?」

大将「別のアテがあるということかい」

ゆい「料理はしてくれることもありますが普通の食材のほうが多いですね」

大将「理解者がいるとは羨ましいね。何かしたのかね」

ゆい「何をしたものなんもただの友人ですよ」

大将「毛嫌いしないとは珍しい」

ゆい「どちかというとこういうのはすきみたいですから。作るだけで食べないんですけどね」

大将「味も分からず料理するのは大変だろう。一度食わせてやったほうがいい。コロッケからでもどうだい?持って帰りな」

ゆい「料理人としての才能はピカイチなのでグザに左右されないそうです。これはわたしがありがたく頂いときます」

大将「仲間は欲しいもんだがね」

ゆい「違う人ですが心当たりはありますよ。これぐらいなら食べてくれると思います」

大将「ほほぅそれは嬉しいね。今度連れてきとくれ」

ゆい「まあ半分悪魔ですけど」


301-2

高砂「やーやーしゃちょー、会いたかったぜべーべ」

ゆい「ちょうどよかった、高砂さん。これ食べてみませんか」

高砂「しゃちょーから勧められるものほど怪しーものはにゃい」

ゆい「むぅ、いつも食べてるやつですよ」

高砂「しゃちょーがしゅきなやつか。よしょ当たっとくれ」

ゆい「友人の誼と思って」

高砂「しぇんしぇーがちゅくるりょーりのほーがうまい」

ゆい「自炊してたのでは?」

高砂「普段はしょーしょくだ。だが出しゃれた分は食う」

ゆい「便利なお腹ですね」

高砂「うましょーな匂いは食欲を掻き立てる」

ゆい「自分で作るのは質素であると?」

高砂「一人でくーぶんにゃーりょーをひつよーとしない」

ゆい「磨夢さんは他人の分も作るからご馳走になる、一理あります」

高砂「自分が食べたいものは他人はよく食べないものだろー」

ゆい「まあ好き嫌いというものがありますからね。我々はそれが極端なのです」

高砂「だからそれを食えといわれても食べれないとゆーのは自然なことなのだ」

ゆい「これを食べてもらえるのは高砂さんくらいだと思っていただけに残念なことです」

高砂「まー気が向いたらだな。だいしょーは実験だ」

ゆい「わたし以外の頼みごとならどうするつもりです」

高砂「てーどは考える。殺しゃないよーに」

ゆい「生身の人間は結構脆いですからね」

高砂「おかげしゃまで死者0人」

ゆい「その心構え大事にしてくださいね」

高砂「まー万が一の時は事故として処理しよー。それをしゃちょーが食べればいんぺーかんりょーだ」

ゆい「そういうときのために食べれたほうがいいいのです。わたしだっていつも飢えてるわけじゃないんですよ?」

高砂「樽ぐらいなら数よーいできる。塩漬けだ」

ゆい「それで食糧に困らなくなると。名案ですね」

高砂「しゃちょーがしゅきなときに食べればいー。しょんときは頼む」

ゆい「困ったときはお互い様ですからね。任せてください」

高砂「けーやくのもんしょーか」

ゆい「信頼し合える仲ならそんなの関係ないです。対等な関係においては発動し得ず、主従関係において初めて効果が現れるのです」

高砂「確かにめーれーはしない。お願いや頼みごとだ」

ゆい「高砂さんも根は優しいんですね」

高砂「しょーかにゃ?」

ゆい「八城ちゃんにも親切にしてくれますし」

高砂「やしろんは友達だからだ」

ゆい「どっからが友達です?」

高砂「話してて楽しーことが大事」

ゆい「会話は意思疎通の基本ですからね」

高砂「他人のことを考えないやちゅは嫌いだ」

ゆい「他人のこと言う前にまず自分から」

高砂「みんなジコチューだ」

ゆい「自分の人生みんな必死に生きているわけですから」

高砂「ごじゅーねんとかはちじゅーねんなんて一瞬だろーに」

ゆい「短い人生を必死に生きているのが素敵だと思いません?」

高砂「献血にいこーかな。人間は我々の血も欲しいよーだから」

ゆい「あまり大事にしないほうがいいですよ。こちらもそんなに長くありませんから」

高砂「早く魔界に移りしゅんだほーがいーのにな」

ゆい「堕落することは誰もが望むことじゃないでしょう」

高砂「人間がどー思おーと勝手だ。しゅいぼーの途を歩むといー」

ゆい「まあいつかは滅びますよ。人も悪魔も」

高砂「しぇーめーは潰えまた芽生えを繰り返しゅ。しぇかいを支配しゅるまた新たなしぇーめーたいが現れるのだ」

ゆい「それが何かは神のみぞしる所。荒野に咲く一輪の花が世界でただ一つの輝きを見せるかもしれません。雨に恵まれし日には生命が躍動し新たな時代の幕が開くでしょう」

高砂「だから誰がしぇかいを支配しよーがかんけーない。大自然にましゃるものなし」

ゆい「だから誰かが特別なんてことはないんですよ。みんな同じ肉塊と見るべきです」

高砂「なるほど。しょーしゅればおしょるるものはなにもなし。しゃちょーだって実験どーぐにしゅぎないわけだし」

ゆい「同じレンズで捉えても特定の人物とは意思疏通が図れるはずです」

高砂「命乞いとは見しゃちょーらしくない。しゃちょーならもっと泰然自若とあるべきだが」

ゆい「いくらわたしでも生命の危機を感じるときはあるんです。その危険がすぐそばにあるならなおさらのことです」

高砂「たかしゃごが痛くしたことはにゃいはずだ」

ゆい「あまりの痛さに感覚が麻痺しちゃうんです。本当は痛いはずですよ?」

高砂「痛みを感じるのなんて一瞬だ。そのちゅぎには感覚を失っている。しょしてみるみるうちに回復だ。しゃちょーほど面白い身体の持ち主はいない。しょれだからたかしゃごはしゃちょーに病みつきになる。もっと試してみたくなる」

ゆい「わたしで満足できるならいくらでも身を捧げます。できたらわたしだけで終わらせてほしいものですね」

高砂「まー一般人にはしゃちょーほどのことはしてない。びょーいんとれんけーした治験は素晴らしーものだ」

ゆい「それが健全ですね。その志を忘れないでください」

高砂「善処しゅる」

ゆい「それにしても一般人ですか。まあ耐えうる時点でおかしなわけですが。加減を知ってるんですね」

高砂「しぇんしぇーもいーな。まだいけしょーな気がしゅる」

ゆい「まぁさすがってところですかね」

高砂「しょのためにちゅくったものだし」

ゆい「あまり植え付けると破裂しちゃいますけど。その前にいただきたいところです」

高砂「だいじょーぶ、無駄にはしない」

ゆい「肉片が飛び散ってからじゃ遅いんですよ」

高砂「確かに。かいしゅーしゅるのが大変」

ゆい「契約者の命は粗末にできませんよ」

高砂「だからあるてーどの見返りがある。しょれでもこっちが得しゅるけど」

ゆい「そのへんは我々のやり方としておきましょう」


302-1

八城「おにちゃおにちゃお風呂入ろ」

基茂「悪いことは言わん。磨夢と入れ」

八城「なんでそんなに冷たいの?まみーみたい」

基茂「まあ付き合い長いから多少影響は受けるさ。でもやしろんはいい性格だよな。好きになりそう」

八城「ちるお姉ちゃんにフラれてもあたしやゆいちゃんがいるんだよ?」

基茂「そっちでもいい気がしてきた」

八城「じゃああたしお兄ちゃんのお嫁さんになる」

基茂「オレよか佐竹のほうがいいぞ」

八城「じゅんお兄ちゃんよりお兄ちゃんのほうがいい」

基茂「そりゃ参った」

八城「じゅん兄ちゃんあんま会わないし」

基茂「オレとちるみたいだな」

八城「えんきょりれんあいってやつ?」

基茂「家は離れてないけど心がな」

八城「じゃああたしが恋のキューピッドやるね。二人に永遠の愛をなんちゃらする」

基茂「ありがたい、弓矢だけでも受け取っておこう」

八城「心臓を射抜くんだってまみーが言ってた」

基茂「心臓というより心じゃないんかね」

八城「細かいこと気にしちゃ負けだよ」

基茂「そういうもんかね」

八城「お兄ちゃんが語ってもあたしにはこたえないよ」

基茂「いい環境で育ってるよなぁ。オレも赤ん坊からやり直したい」

八城「あたしが教育してあげるね。英才教育しよ」

基茂「おぅ。ノーベル賞取れるまで育ててくれ」

八城「でもあたし得意分野とかないにゃあ。魔法なら少し知ってるくらいだし」

基茂「十分誇れると思うぞ? 普通の人にゃあできんのだし」

八城「今ちょっとね、勉強してるとこなの。魔法撃てるようになったらお兄ちゃんに教えてあげるね」

基茂「おう、期待してるぜ」

八城「ということでお兄ちゃん、お風呂に入ろ」

基茂「ズボンを脱がそうとするな」

八城「ここで脱がなきゃお兄ちゃん来ないじゃん。あ、そっか、あたしがここで脱げばいいんだ」

基茂「ゆいゆいみたいな誘い方やめなさい」

八城「あたしゆいちゃんみたいにえっちじゃないもん」

基茂「なんかゆいゆいと入りたくなってきた。ゆいゆいを呼んできたら一緒に入ってやろう」

八城「わかった」


302-2

ゆい「こんばんは」

磨夢「まだご飯じゃない」

ゆい「お風呂に呼ばれました。八城ちゃんのお供をいたしましょう」

磨夢「そう」

レオポン「にゃあ」

ゆい「磨夢さんに懐いてますね」

磨夢「エサで釣ってやるだけだから簡単」

ゆい「だっこしてみていいですか」

磨夢「それは自ら死を選択するもの」

ゆい「なめてもらっちゃ困ります。今までのわたしとは違うんですよ」

磨夢「そう。ならやってみれば?」

ゆい「ものは試しですよ。よっと」

グキッ

レオポン「にゃ」

磨夢「馬鹿、レオポンに潰されたあげく逃げられてる」

ゆい「こっ、このぐらいなんてことありませんよ。わたしはお風呂に向かいますんで」

磨夢「ん」


302-3

八城「あれ、ゆいちゃんどったの?」

ゆい「なんてことはないです。さあお風呂に」

基茂「ちょっと休んでたほうがいいぞ。歩くのしんどそうだ」

ゆい「えへへ、じゃあお言葉に甘えて」

基茂「しかし困ったな。ゆいゆいが来ないとなるとオレは」

ゆい「わたしはここにいますから八城ちゃんと楽しんできてください」

八城「そうだよ、別にあたしと二人でもいーじゃん」

基茂「まあゆいゆいいなくても変わらんしな。よし、入るか」

八城「わーい、お兄ちゃん大好き」

ゆい「わたしも入ります。見てください、もうピンピンしてますよ」

基茂「どんな身体してやがる」

八城「やったー、じゃあ予定通りだね」

ゆい「うぅ」


302-3

ルイ「宅配便でーす」

ガチャ

磨夢「宅配便の格好じゃない」

ルイ「散歩してて喉が渇いたっていう」

磨夢「結構。上がって」

ルイ「お邪魔しまーす。わぁ聞いてたよりずっと広い」

磨夢「前の持ち主がそこそこ富豪だったから」

ルイ「へぇ、それを上手いこと掠め取ったことか。さすがだね」

磨夢「それほどでもない」

ルイ「これ美味しいけどなんてお茶?」

磨夢「沖縄のさんぴん茶」

ルイ「おきなわ、南の島だね、わかるよ」

磨夢「日本のことはどれくらい?」

ルイ「結構勉強したほうなんだけどなぁ。たまに抜けてることがあるよ。フランスに住んでても世界遺産全部言えるわけじゃないでしょう?」

磨夢「日本はわかる。知床、白神山地、白川郷、屋久島」

ルイ「その国に住んでても隅々までわかるわけじゃないんだから。ましてやわたしみたいなよそ者ならね?」

磨夢「本州の北にある島は?」

ルイ「ほっかいどう!」

磨夢「日本の首都は?」

ルイ「とうきょう!」

磨夢「ん、結構。日本地図も必要ない」

ルイ「でも都道府県全部なんてさすがに無理だよ?」

磨夢「それくらいわかれば、というか日本語が話せれば十分やってける」

ルイ「言語は一番最初にやらなきゃだからね。次に文化や地理。歴史はちとわかんないや」

磨夢「戦国時代や幕末が人気」

ルイ「人類の誕生が重んじられるべきだと思うなぁ。西洋も日本も同じ話。遠い昔の物語ってあまり馬鹿にできないんだよ」

磨夢「神代は一般常識だったりする。それを予備知識として各時代に固執するんだと思う」

ルイ「なるほど、革命期が好きな人がいれば100年戦争が好きな人もいるというわけだ」

磨夢「そんなとこ」

ルイ「あれ、この家は磨夢だけ?」

磨夢「いや、まだ三人と一匹いる」

ルイ「一人にしたら広いもんね。わたしもちゃんとした一軒家が欲しいなあ」

磨夢「うち住む?」

ルイ「いや、悪いよ。自分のことは自分でしたいんだ。だから自分一人が住める家があればそれでいいやって」

磨夢「そう」

ルイ「でも客として寄らせてもらおうかな。水分補給も兼ねて。あんま来ることないかもだけど」

磨夢「いつでも歓迎」

ルイ「マスターも誘えたらいいけどなあ。寝起き悪いから無理に連れ出せないや」

磨夢「マスターは完全予約制」

ルイ「マスターは好んで日光を浴びないから。稀代の夜型だね」

磨夢「正直うらやましい」

ルイ「夜中なのにおめめぱっちりなのは正直すごいよ。わたしは12時間ずっといれるわけじゃないし」

磨夢「起きてる時間が違うから」

ルイ「わたしも夜型になりつつあるよ。朝は朝でやってるけど昼間は寝てるから」

磨夢「あんまり寝なさそう」

ルイ「かもね。だから最近背伸びてないんだ。マスターにおいてかれちゃう」

磨夢「八城も伸び盛り」

ルイ「わたし一人だけチビになるのはいやだぁ」

八城「お風呂上がったよー。あっ、るーちゃんだ」

ルイ「噂をすれば八城だ」

八城「噂されてたの!?」

ルイ「八城が一番でかくなるのかなぁ」

八城「るーちゃんのほうがおっきいのにね」

ルイ「夜にまともな時間寝てる人は育つんだよ。わたしはそれとは正反対だから将来が不安なんだ」

八城「じゃあそうしたらいいんじゃないかな。今夜泊まっていくとか。まみーがいいなら」

磨夢「わたしは一向に構わない」

ルイ「それは嬉しいけどマスター一人にしちゃうなぁ」

八城「るーちゃんは優しいんだね」

磨夢「今からでもルイ引き取りの手続きを」

ルイ「磨夢は悪魔かな? とりあえず連絡入れてみる。磨夢、電話借りるね」

磨夢「ん」

ルイ「もしもしマスター。わたしだけど。今日休んでいいかな? うん、うん。あっそうか。それもありっちゃあり。おっけーわかった。伝えとく。じゃあね」

ガチャ

磨夢「お断りします」

ルイ「まだ何も言ってないのにひどいなあ」

八城「マスター召還!」

マスター「思ってたより早う着いたな」

磨夢「あれ、どういう」

八城「やったらできた」

マスター「さすがやしろん!」

ルイ「よっ日本一!」

磨夢「仕組んでたとしか」

マスター「にゃにおぅ、うちはついさっきまで店におったけど?」

ルイ「魔法使えるのなんて魔女さん以外にやしろんしかいないよ」

ゆい「さすがるーちゃん、察しがいい」

八城「あっまみー、なんとかぷれーは終わったの?」

ゆい「喜ばしいことに兄さんを大満足させましたよ」

磨夢「腰のほうは?」

ゆい「そうだ、ちょっと横になってます」

磨夢「思い出したように」

八城「ゆいちゃん腰悪いのに無理しちゃだめだよ」

ゆい「腰に限らず全身ですよ。それでは皆さんわたしはここで失礼します」

ルイ「なんでゆいは常に満身創痍なの? 八城」

八城「あたしよか魔女さんのほうが詳しいよ」

ルイ「なるほど、魔女さんならゆいちゃんの身体くらいぼろぼろにできるね」

マスター「シャギーっておっかないんやなぁ」

ルイ「魔女は元来そういうものだから。排斥されるのも仕方ないよ」

八城「でも魔女さんいい人だよ。あたしに魔法を教えてくれるの」

マスター「なるほど、そんならやしろんに召還されたのも納得や」

八城「呼び寄せたい人を頭の中に浮かべて強く念じるの。そうしたら来てくれるって」

ルイ「それならマスターを昼間でも呼べるってことだ」

マスター「昼間に呼ばれても眠いんは眠いんよ。今もさっき起きたとこやし」

ルイ「ということで磨夢、今日マスターんとこ行ってもお休みだよ。あれ、看板かけてきた?」

マスター「んなことする間もなかったわ。れーちゃんに言うとかな。ムーちよい電話借りてええか? うち来る前にるーちゃんも使ったみたいやけど」

磨夢「使わないから使っていい。アドレス帳にあるから」

マスター「使ってないのに登録してあるのはありがたいこっちゃ。こういうときのために取っておいてくれたんかな?」

ルイ「あっそれさっき、わたしが登録したんだよ」

マスター「あれ、ムーじゃないんか? まあええわ。これはありがたく使わせてもらいます」

ルイ「なんで電話線切らないの?」

八城「いんたーねっと使うのに必要なんだって」

ルイ「あーそりゃ切っちゃあもったいないね」

磨夢「これは分かってない顔」

ルイ「いんたーねっとぐらい知ってるよ。調べものに使うやつだ。あ、でも、紙の百科事典のほうが好きだよ。日本の文化とかいろいろわかって面白いよ」

マスター「ほーん、うちより滞在歴短いはずやのにずっと詳しいなあ」

ルイ「マスターは店から出ることが少ないよね。食べて寝てばっかじゃ太るよ?」

マスター「るーちゃんもちゃんと寝ないと背伸びんよ?」

ルイ「それ言われちゃだめだぁ」

八城「朝は早起きして散歩するんだよ」

磨夢「いい心がけ」

マスター「夕方に起きるのはちとしんどいなぁ。代わりにるーちゃんが歩いてくれる」

ルイ「いやさすがに自転車乗るよ? 外勤で乗り慣れてるの」

八城「へぇ、初めて知った」

ルイ「でも歩くことも多いなぁ。自転車のほうが少ないかも。置くとこないの」

マスター「あんまごちゃごちゃさせるとれーちゃんが怒るから」

ルイ「マスターはれーちゃんに弱い」

マスター「あの店半分はれーちゃんのみたいなもんやから。ほんまいつのまにってかんじで」

ルイ「昼間は完全にれーちゃんの管理下だからね」

八城「あたしもお昼にメイドさんしようなのかな」

マスター「よし、じゃあ夜もメイドさんの格好するから夜に来てーや」

磨夢「それは危ない」

八城「夜道怖いよぅ」

ルイ「夕方にわたしが連れてってあげるよ。適当な時間に帰ってくれていいし。真夜中でもれーちゃんが送ってくれるよ」

八城「んじゃそうする」

磨夢「客の質」

マスター「そない悪いお客さんはうちに入ってこれへん」

ルイ「入口が分かりにくいもんね」

磨夢「確かに。なら預けれる」

マスター「保護者から許可が下りれば万々歳や」

ルイ「八城の勇姿を見にきてくださいね。親御さん」

磨夢「親じゃない」

八城「え、お母さんじゃなかったの?」

磨夢「え」

マスター「こうして面倒見てるならお母さんみたいなもんやろ。認めーや、ムー」

ルイ「お母さんかぁ、久しぶりに国に帰らせてもらいます」

マスター「そんな気軽に帰れるもんでもあるまいに」

八城「るーちゃんって一人で日本に来たの?」

ルイ「うぃー、友達が旅行に行っていいとこだって言うから同じ旅行のつもりで行ったらすっかり居着いちゃった」

マスター「泊めてもらえませんかっていうから泊めたらすっかり居着いた。しばらくうちおってんけど、巣立ちが早かったわ」

ルイ「お仕事見つけて家買ってすぐ一人暮らしになったね。それで恩返しの気持ちもあってこうしてマスターんとこでもやらせてもらうことになったの」

磨夢「素晴らしき友情かな」

ルイ「今じゃマスターのとこはたまにお泊まりするくらいかなぁ」

磨夢「やっぱり疲れる?」

ルイ「なるべく後の仕事に差し支えがないようにしてるけど、張り切っちゃうときもあるからね。むしろパティシエこそが本業。で、そのまま昼まで寝ちゃう」

マスター「副業も必要ない働きぶりやと思うけどなぁ。るーちゃんも本格的に夜型に移行すべきやわ」

ルイ「そんなこと言ったって12時間も寝てらんないなぁ。それで起きてる時間も仕事しよかなってなっちゃう」

磨夢「恐るべき仕事人」

八城「あんま無理しちゃゆいちゃんみたいになっちゃうよ」

ルイ「わたし体力あるから大丈夫だよ。日本人はよく働くみたいだし。これくらい普通かなって」

磨夢「普通じゃない。日本人でも普通じゃない。長時間労働には休憩がつきもの」

ルイ「ちょっとひと息といっても、ご飯とお風呂くらいだよ」

八城「お散歩いいよ。あたしは海浜公園とかよく行く」

ルイ「お散歩かぁ。確かに潮風に吹かれながら砂浜を歩くのは気持ちがいいかもね」

八城「今なら人もいないしおすすめだよ。朝も寒くないし」

ルイ「秋は過ごしやすくていいよね。涼しいのがいい」

マスター「へぇー、そうなんか」

ルイ「もうちょっと外出たほうがいいよ、マスター」

マスター「夜は暗いし昼間は起きたくないわ」

八城「マスターって日光浴びたら灰になりそうだよね」

マスター「そこまではならんけど、日差しはかなんわ。だからうちの一日は陽が沈んでから」

ルイ「磨夢、どう思う?」

磨夢「不健康」

マスター「別に植物やないんやし太陽なんて関係ないですぅ。第一うちはこんなに元気なんやから問題あらへん」

ルイ「夜に活発になるからみんなとは真逆だ」

マスター「全く眠ないんやって!」

磨夢「映画でも観る? ホラー、スプラッターなんでもござれ」

マスター「怖いのやなくて普通に笑えるのがええけど」

八城「まみーは変なのしか借りてこないよ」

ルイ「和風ホラーって現実的で怖いよね。ゆいが実際に見てそうだけど」

八城「ゆいちゃんはこんなの見たら大笑いするよ。本物は怖くないって」

マスター「霊感がないうちら一般人には恐怖を与えんねん」

ルイ「好きな人は好きだし嫌いな人は嫌いなんだろうね。磨夢は恐怖が病みつきになるんだよ」

磨夢「こういうのもあるけど」

マスター「うわ、このへん題名からして生々しいけどどこで?」

磨夢「押収品」

マスター「なんでムーの手元にあるんかとか突っ込んじゃ負けな気がするわ」

八城「そのへんのやつはみんなまみーのお気に入り」

ルイ「そんな実際にあった事件のやつじゃなくて架空の話がいいよ。映画観よ映画」

磨夢「じゃあこのへんとか」

マスター「なんや普通のアニメあるやん。それにしよ」

磨夢「ちなみに50話ある」

マスター「じゃあ観れるとこまででええわ。おおきにな」

磨夢「ん」


302-4

ゆい「ん、んん」

基茂「はよっす」

ゆい「あら、兄さん。わたし寝てましたか」

基茂「そのへんに落ちてたから拾っといた」

ゆい「それはありがとうございます。ご飯はまだですか?」

基茂「夕飯は終了しました。また明日ご参加下さい」

ゆい「それ本当ですか? 仕方ないですね、どっかで食べてきます」

基茂「そのまま帰ってくれてもいいぞ」

ゆい「はい、また明日です」


302-5

高砂「やーしゃちょー。夜はこれからだ」

ゆい「真っ暗なんで早く帰ったほうがいいですよ」

高砂「たかしゃごは夜目がきく。明るしゃにはしゃゆーしゃれにゃい」

ゆい「普通の眼とは思っていませんよ。一般人のそれとは数倍も便利なものでしょう」

高砂「かつてのじょーきゅー魔族ワイアイはしゅーしぇんりしゃきの闇を見とーしたとゆー」

ゆい「魔界においては便利この上ない視力ですね」

高砂「アイ一族はほかをりょーがしゅるしょの視力で魔界の権利とゆー権利をほしーままにしていたのだ」

ゆい「現魔王様はアイ一族じゃないのはやはり滅びたので?」

高砂「しょのとーり。細かいことはわからないが、今魔界において権力を持っているのは紛れもないげんまおー。アイ一族のようなのーりょくがなくても魔族の支持を得ている」

ゆい「時代が変わったということですね。今の魔王様にはそこに立っているだけで威厳があります」

高砂「しょれだけのことを成し遂げたとゆー過去とぜんせーを敷いている現在がその威厳を表しているのだろー」

ゆい「今年のハロウィンはどうなるんでしょうか」

高砂「しゃー期待しゅることもあるまーて。れーねんどーりとしかいーよーがにゃい」

ゆい「会話にもなんないなんてあんまりです」

高砂「まおーはちょーきてきなこーしょーがひつよーであると考えている。たとえばしょのたいしょーが入れ替わろーとこーしょーを続けるだろー」

ゆい「大変熱心に取り組まれているんですね。何か可能性でも見出だしているんでしょうか」

高砂「ちょっと魅力を感じたんだろー」

ゆい「あの魔王様なら世界征服は考えてないと思いますけど」

高砂「しぇかいのためになることだ。ぼーりょくてきじゃない別の何か」

ゆい「和解しない限りは困難な話です。今月末が楽しみですね」

高砂「しょんな時期か。早いものだ」

ゆい「魔王様にまた会えること、楽しみにしています」

高砂「しゃちょーが人類だいひょーでもいいわけだが」

ゆい「何を言ってます。わたしは最初から向こう側ですよ」

高砂「あ、しょーか。じゃーましゅたーあたりでも」

ゆい「さすがに荷が重すぎると思います」

高砂「え、じゃー誰がいーかわかんなーい」

ゆい「こんな田舎に人は集まりませんし」

高砂「まーいーや。人類には解決できない課題だ。次なるせーめーたいが解決してくれるだろー」

ゆい「ゲート以外に何かありませんか?」

高砂「邪神しょーかんとか。がのあーくにめんたま奪われるぞ」

ゆい「魔界もいずれ神の支配の下に戻りますよ」

高砂「がのあーくは魔界にはきょーみないと思う。どちかとゆーとこっちのしぇかいだ」

ゆい「そうなれば魔王様の努力も水の泡です。しかし神が支配する世界、わたしにとっては理想郷ですね」

高砂「みしゃかいにゃいな」

ゆい「がのあーくですか。崇拝対象と人気きすることで支配を快く受け入れるのです。そうすれば邪気も取り払われ、聖なる光を放ち自然を再生させる神として未来永劫語り継がれることでしょう」

高砂「しょーうまくいくものか」

ゆい「自然と神の融合はこの世にある全てのものを光の下に導くのです」

高砂「いわば神秘的ってやつか。自然の力は素晴らしー」

ゆい「人間が邪な感情を抱くからそれが具現化されるのです。純粋な気持ちにあれば神は微笑みかけるでしょう」

高砂「邪神も魔界らしくていーと思う」

ゆい「魔族の観点ではそうなりますね。ただ、人間界に生きる身としてはこちらに偏向するのも致し方ないことです」

高砂「人間界に未練があるよーじゃだめだ。魔界の民となる日はとーくない。今の内から縁を切っておこー」

ゆい「うーんそうすると退屈な日々になっちゃいますね。まあ元々会話する相手なんてそんなにいないですけど」

高砂「やしろんにしぇんしぇー、職人にましゅたーみんな魔界に来ればいい」

ゆい「近い内に呼び掛けておきましょうか。でも好んでついてきてくれるのなんて八城ちゃんくらいだと思いますよ?」

高砂「やしろんなら間違いない」

ゆい「あれ?」

高砂「どーした、しゃちょー」

ゆい「少し揺れませんでした?」

高砂「がのあーくのほーこーだ。しゅーまちゅも近い」

ゆい「呼ばれてるんですかね」

高砂「たかしゃごは何もしないけどな」

ゆい「薄情な人ですね」

高砂「おんけーを受けていないからこっちから何かすることもない」

ゆい「情けは人の為ならずです。良いことしてればいつか自分にも返ってきます」

高砂「たかしゃごは大自然にしか感謝してない。なるほど、自然の存続には緑化かつどーがひつよーだ。全てを自然に還してやろー」

ゆい「なんか違う気がしますけど大体合ってます」

高砂「この町とたかしゃごの町で大々的に緑化かつとーを開始しゅると偉い人に伝えてほしー。しゃちょーは顔が広いからよろしく頼む」

ゆい「別に広かないですよ。隣町の首長さんなんて知りませんし」

高砂「しょーだな、たかしゃごもわからにゃい。なんしぇころころ変わるもんだから」

ゆい「役場に行けばいいですよ。町の中心にあります」

高砂「あんまり他人とは話したくないなー。かんけーがめんどくしゃい。役場までつれてくからしゃちょーがこーしょーしてきてくれ」

ゆい「言った本人がやるべきでしょう?」

高砂「まーしぇんのーしゅればいーだけか」

ゆい「……実は火魔法より得意なのでは?」

高砂「しょーかもしれない。禁断まほーは手を出しゅべきじゃにゃい。やめられなくなる」

ゆい「ヤクみたいなもんですね」

高砂「ずつーがしゅごいし、しぇんのーぐらいならしょこまでいかないけど」

ゆい「血を吐いたりすることもありますか?」

高砂「ある。魔力不足だとしょーなる。ずつーを越えたしゃきだ。眩暈や吐き気がして最悪死ぬ」

ゆい「強力な魔法を詠唱するときはわたしが側にいます。いつどこで何をしていても駆けつけます」

高砂「たかしゃごはしゃちょーのよーなゆーじんをもって幸せだと思う」

ゆい「そのような言葉を頂けて光栄です」

高砂「しゃちょーがいなきゃ孤独死してる」

ゆい「一人じゃ死なせません。地獄の底までついていきますよ」

高砂「地獄か、あのときのくしゃり残ってたかな」

ゆい「高砂さんが飲んであれほどの効果ならわたしには到底無理です」

高砂「しゃちょーは地獄の鬼の仲間入りしゅるし大治ょーぶだろ」

ゆい「地獄でも人が食えるなら喜んで仲間入りしますよ」

高砂「鬼だ。豆だ。しぇちゅぶんだ」

ゆい「二月まで待ってください。来年はお面を被ります」

高砂「まーとにかくはろうぃーんだ。魔族とのこーりゅーだ。今年も上手くやろー」

ゆい「楽しみにしてますよ」

高砂「眠くなってきた。しゃちょー泊めて」

ゆい「うちより井筒さんとこのほうが広くていいと思いますよ。お風呂も入れますし」

高砂「番台のとこか。悪くないな、じゃーしょっち行く。番台ならあぽなしよゆー」

ゆい「わたしから連絡しておきます。何も心配しもいりませんよ」

高砂「たしゅかる。んじゃおやしゅみー」

ゆい「はい、おやすみなさい」


302-6

マスター「るーちゃんるーちゃーん」

ルイ「んふふ、そんなに食べられないよ」

マスター「しょうがない1人で帰」

ガシッ

マスター「起きてるん?」

ルイ「今起きた。そこにマスターの脚があって、あれ、どうしたの。泥棒かな?」

マスター「起きたみたいやけど起きてへんなぁ。うちは帰るで。あんま長居もできやんし」

ルイ「マスター寝ないもんね」

マスター「寝ないというか覚醒状態やから。まだ起きてられる。じゃなくって帰るけど、るーちゃんはどうする?」

ルイ「うーんせっかくだから泊まってこうかなって思ってる。今日は昼夜逆転してないしね。眠たいよ」

マスター「そうか、寂しいなぁ」

ルイ「夜道一人で大丈夫? 迷わない?」

マスター「そう思うんやったらついてきてほしいけど。うち昼間でもこの町迷うで?」

ルイ「マスターアマゾン行った以来?」

マスター「うん、出る必要ないし。日差しはもちろん浴びたないし」

ルイ「マスター八城の召還なしで来れなかったんじゃない?」

マスター「そうかもなぁ。やしろんさまさまや」

ルイ「じゃああれだね、地図と懐中電灯と方位磁石。はいどうぞ」

マスター「そこまでして寝たいん?」

ルイ「うぃ」

マスター「ここはるーちゃんに従お。夜明けの前にまた来るわ」

ルイ「わたしは寝てると思うから他の人でよろしくね。おやすみー」

マスター「まぁ誰かしら起きてるか」


302-7

高砂「番台」

井筒「しゃごちゃん、しばらくぶりじゃのぅ。ろもちゃんから話ぁ聞いとる。ささ、上がって上がって」

高砂「今閉めたとこか」

井筒「いつもならやってるとこだけど、しゃごちょっとが来ると聞いて閉めた。今日は歩きかね?」

高砂「しゃしゅが番台。しゃちょーとちょっと話して歩いてきた」

井筒「二人はほんとに仲良いのぅ。わしもその中にありたいものじゃ」

高砂「番台って外出ることある?」

井筒「んーたまにかな。買い出しのときとかは出るけどここに座ってる時間のほうが長いのぅ」

高砂「あまり休みなくて大変しょー」

井筒「夕方以外は大体暇じゃのぅ、日中は誰かに任せてもいいかもしれん」

高砂「たかしゃごのよーなじゆーじんになればいー」

井筒「しゃごちゃんはどうやって生計を立ててちょる?」

高砂「けんきゅーひを貰ってくしゅりを開発してればじゅーぶんかしぇげる。まほー関連なら魔界の依頼がおいしー」

井筒「ほぉ、魔界で講師をしたりでもするんかえ?」

高砂「魔族は魔法に知識があるから教えやしゅい。知識が浅くてもしぇんざいのーりょくかしょなわっている。だからいずれは理解してくれる」

井筒「魔族も進んどるのぅ」

高砂「番台も魔界いじゅー考えておくといー。たかしゃごは何度か行ってるが悪いところじゃないぞ。みんな手を広げてかんげーしてくれる」

井筒「しゃごちゃんは魔法や薬学に秀でていて、ろもちゃんは誰にでも愛される存在。二人についていけばどんな道も怖くなかろう」

高砂「番台は魔界のことを覚えてにゃいのか?」

井筒「わしはずーっとこっちでやってきとるから、ろもちゃんもそのはずだよ。だから帰郷願望もない。でもしゃごちゃんが気に入るならいいところなんじゃろうな」

高砂「人間界にこだわるひつよーもなくなる。こっちと同じようにしぇーかつができる。どこも見劣りはしにゃい」

井筒「考えておくよ。向こうでもうまくいきゃあそれで万々歳じゃ。ところでしゃごちゃん、何かいるかのぅ」

高砂「たかしゃごは風呂が嫌いだ」

井筒「ろもちゃんがいなきゃ無理か」

高砂「んにゃ、熱いのわからにゃいから」

井筒「じゃあ水風呂じゃ」

高砂「ちべたいとひぬ」

井筒「蒸し風呂でいいかね」

高砂「うん」

井筒「これは何じゃ」

高砂「むりょーしょーたいけん。たかしゃごが作ってもしゃちょーの権力で云々」

井筒「もとから金とろうなんて思ってないよ」

高砂「しょれは最初からおみとーし。じゃー入ってくりゅ」

井筒「ゆっくりしていけばいい」


303

三郎「もしもしじいちゃんオレだよオレ」

虎徹「アリゲイツ残念じゃったのぅ」

三郎「オレオレが通用しないたぁ立派なじい様だじゃな」

虎徹「おぬしに騙されるほどわしゃモウロクしとらんわい三郎。で、村雲家に何用かな」

三郎「じいさんじゃなくて剣ちゃんと話したいんだけど」

虎徹「JKならJKしとるぞ」

三郎「わけわかんないぞぅ」

虎徹「まぁなんじゃ友達と遊びに行ってて今は留守じゃ。残念じゃったのぅ」

三郎「今季はドルフィンズが強すぎたよ。我がアリゲイツが敵わんとはな」

虎徹「アリゲイツも補強しなきゃならんな。今治ばかりにゃ頼ってられん」

三郎「今治は脂のってるけどオレらはそれ以上だから。若手が欲しいものですなぁ」

虎徹「なんじゃうちの剣はやらんぞ。わしの貴重なアニヲタ仲間じゃ」

三郎「剣ちゃんだって根は熱血野球少女だ。たまに視察行ってると思うけどみんな注目してるよ。それもオレの従妹とくりゃあそりゃねぇ」

虎徹「今治もそうじゃがおぬしは悪よのぅ」

三郎「仁はともかく弟の永介は正当なトレードさ。ザムラースだって納得してるはず」

虎徹「ザムラースも最近強いのぅ。いつまでも最強を名乗ってられまい? だからこそ頑張ってほしいんじゃが」

三郎「剣ちゃんさえ来れば安泰なんだけどなぁ」

虎徹「うちの野球部はみんな優秀じゃよ」

三郎「高木舞浜公田指宿みんな優秀だけどいくら地元とはいえみんなとるのはよろしくない。だからそこは正規でプロ入りしてもらいたいところだね」

虎徹「それでドルフィンズやドングロスにとられると。ガリーグが熱くなるのぅ」

三郎「ガリーグはここ数年ずっと熱いよ。交流戦が怖いくらいだ」

虎徹「今治のほかにも投手がおろう?」

三郎「鰐上と松本、ペスケルってところかな」

虎徹「鰐上は今治とも年が近くていいのぅ」

三郎「あと樺山と田端、矢崎。ああみんな育て甲斐があるよ。もうオレ引退してコーチやろうかな」

虎徹「ゴールデングラブ賞が抜けたら守備に穴が出来るのぅ」

三郎「オレが守備コーチになるから大丈夫さ。辯星、吉平が打撃で、投手コーチにはラッグがいる。うむ、育成に専念すればいつかまた黄金時代が来る」

虎徹「錚錚たる顔ぶれじゃ。アリゲイツの優勝も遠くないのぅ」

三郎「今治にだけ負担掛けても悪いし、オレたちも頑張らないとな」

虎徹「楽しみにしとるぞい」

ガチャ

剣「ただいまー。あーりゃじっちゃん、誰かと話しとった?」

虎徹「三郎じゃが」

剣「サブ兄だって!? じっちゃんすぐにかけ直して! まだ間に合うかもしんない」

虎徹「仲がええんじゃのぅ」

剣「サブ兄はわたしの憧れだから頑張ってほしいし」

虎徹「これは将来も安泰じゃ」


304-1

ゆい「へくちっ! ううーさぶ」

高砂「しゃちょー泊まりこみよろしーか」

ゆい「ああ、年に一度ですからね。どうぞどうぞ」

高砂「いい拠点になる」

ゆい「自分の家でもいいのでは?」

高砂「雨降ってるからいどーがめんどー」

ゆい「まあ理由はなんでもいいですけど」

高砂「しゃむいのは嫌いだ。今年はとーみんだな」

ゆい「家というものがある以上、地中に潜るなんてできませんよ。十分暖かいものですから」

高砂「しょーか、火を焚けばいいだけか」

ゆい「高砂さんじゃあ小火ならぬ大火になりますよ」

高砂「魔界のじゅーみんは太陽を知らにゃいからなぁ」

ゆい「魔界の皆さんでも加減は知ってると思いますけど」

高砂「魔力のぼーしょーは心の病。たかしゃごだって加減はできる。ほら」

ゆい「そこで焚き火してもらえるとありがたいです」

高砂「この火力で満足しゅるのはちーしゃい」

ゆい「火事になってしまったら元も子もありませんよ」

高砂「しょこはしゃちょーのじんつーりきでにゃんとでもなる」

ゆい「いやいや、わたしにそんなもんないですから。でも結界みたいなものはありますよ。この神社はある程度守られてはいます」

高砂「ならたしょーの無理は許される、と。これくらいで」

ゆい「なかなかの火力ですね」

高砂「だが強しゅぎることもない。こんなものだ。しゃてと本でも読んで時間潰しょ」

ゆい「予行演習は大丈夫ですか?」

高砂「こういうのはぶっつけ本番だから、しゅべてはたかしゃごの腕にかかっている」

ゆい「余程自信があるんですね」

高砂「一度よーりょーがわかれば後は慣れだからなー。しゃちょーもこの感覚わかるだろー」

ゆい「舞は練習しなきゃいけないですが。慣れってのは身に付くものですからね。それを当然のようにこなすのが一流というものなんでしょう」

高砂「よーしきびってやちゅか。たかしゃごがやってるのはそんなもんじゃないが」

ゆい「高砂さんは誰も知らない動きを簡単にやってしまうから誰にも理解できないのでしょう。機関の人たちはどうなんです?」

高砂「努力は認める、しかし理解ができていにゃい」

ゆい「ずいぶん厳しいんですね」

高砂「やちゅらのやってることはしゅべて無意味だ。魔界で学んだほーが早いと思う」

ゆい「明日全員送ればいいんじゃないですか」

高砂「しょれいいな。やってみよー」


304-2

八城「お兄ちゃん、トリック・オア・トリート!」

基茂「お兄ちゃん今お菓子の在庫ないんだ。また今度な」

八城「ハロウィンにはお菓子をもらわないといけないんだよ?」

基茂「オレにはいたずらしていいから磨夢にもらってくりゃあいい」

八城「え、じゃあ何しようかな。寝てる間に顔に落書きしてやる」

基茂「髭でも第三の目でも描きたまえ」

八城「はいはーい任せて」

基茂「オレもお菓子食いたい」

八城「お兄ちゃんひもじい」

基茂「言っとけ」


304-3

八城「まみーまみートリック・オア・トリート!」

磨夢「好きに持ってって」

八城「まみーは親切だね。あとお兄ちゃんもお菓子欲しいって」

磨夢「買い食いすればいいのに」

八城「お兄ちゃん買い食いしないからお腹空いてるの?」

磨夢「基茂の胃は底知れないから」

八城「まみーのご飯美味しいのにね」

磨夢「ありがと」

八城「じゃあゆいちゃんとこ行こうかな」

磨夢「ん、きっと楽しいことやってる」


304-4

ゆい「早かったですね」

高砂「これくらい朝飯前だ。彼らにはしばらく魔界でしゅごしてもらうことにした」

ゆい「地獄か天国か彼ら次第というわけですか」

高砂「今回はこれぐらいでいー気がしゅる」

ゆい「それだとずいぶんあっけないですね」

高砂「げーと開くのでしぇーいっぱいだ」

ゆい「まあ無理させる気はないですけど」

八城「来たよゆいちゃん。なんか面白いことあるってきいたけど」

ゆい「もう終わりましたよ」

八城「えぇーっ!?」

高砂「あっちに送っただけでまだやることはある」

八城「楽しみー」

ゆい「連絡してます?」

高砂「向こうもわかっていると思うが」


304-5

グタツナ「さて、今年もやるようだが」

マクセル「はっ、最前線は私にお任せくだされ」

ザーミア「使者はそうですね、カルディン辺りがよろしいかと」

グタツナ「うむ、カルディン、奴らとの交渉、任せるか」

カルディン「このカルディンめが必ずや朗報を持って帰りましょうぞ」

グタツナ「その者とはこの顔だ。しかと目に灼き付けておけ。吉報を待つ」

カルディン「はっ!行ってまいります」


304-6

ゆい「んー、なかなか来ませんねぇ」

高砂「げーとは開いてるが」

八城「退屈だねぇ」

ゆい「ん、あの人影、いやあの大きさは」

高砂「来たか。誰によーだ」

カルディン「私は魔王様からの使者カルディンと申します。八城殿はいらっしゃいますか」

八城「え、あたし?」

ゆい「よくここにいるとお気づきで」

カルディン「ひっそり高砂殿と通信をしていました次第でありますく」

ゆい「あんまり変な電波飛ばしてたらネットワークが接続されますよ」

高砂「弱いかいしぇんだなー」

八城「で、なんであたしなの?」

カルディン「八城様、あなたこそ次期魔王に相応しいのです」

八城「はにゃ?」

高砂「確かに」

ゆい「血か何かですか」

カルディン「はい。お三人方魔族の血が流れておりますが、中でも八城殿は魔王の血が濃いのです。現魔王様にあらず、過去の上級魔族出身の魔王様のような血が流れていらっしゃいます」

高砂「どーりで魔法の理解も早いわけだ」

ゆい「わたしは下級魔族ですかね」

高砂「ぐーるだにゃ」

ゆい「飢えることはないですけど」

八城「で、どうしたらいいの?」

カルディン「今すぐにでも、と言いたいところですが、八城様もこちらでの生活に親しんでいるはず。なので当分はこの時期だけでもご挨拶に伺えればという所存です」

高砂「魔界に行きたいならいつでもゲートは開ける」

八城「気が向いたら行きたいかも」

カルディン「魔界の住民一同歓迎いたしましょう」

高砂「たかしゃごと同じう゛ぃっぷたいぐーってやちゅだ」

八城「かわいいぱーかー欲しいなぁ」

カルディン「八城様が望むものであればなんでもご用意いたしますよ」

八城「わーい、まおうだー」

ゆい「世界が欲しいと言ったら本気にしそうですね」

高砂「無理にあちゅれきを産むものでもない」

八城「気分次第かなぁ」

ゆい「ま、それも面白そうですけどね」

カルディン「真っ当な理由で人間との決着をつけられるなら我らは魔王様のために戦いますよ」

高砂「がいこーかんはまじめだなー」

カルディン「次期魔王様のお言葉に従うのが私の使命です」

ゆい「ちなみに現魔王様はどのようなお考えで?」

カルディン「現魔王様も近頃はそのようなお考えでいらっしゃいます。我らの交渉に応じない人間に痺れを切らすのも時間の問題でしょう」

ゆい「魔王様が手を下すまでもないと思いますがね。彼らは自らを滅ぼすのです」

カルディン「それは愉快ですね。しかし彼らの文化や技術は得たい。そういった存在がいなくなるのは困りますね」

ゆい「それはゆくゆく改善されるでしょう。だからカルディンさんのような方がいらっしゃるということで」

カルディン「私一人の力は微々たるもので。魔王様は貴君らが情報提供してくれることを心待ちにしておられます」

高砂「たかしゃごは人間界のことなんか全然知らにゃい」

ゆい「思想ぐらいならわかりますが」

八城「あたしもそんなに詳しくないにゃあ」

カルディン「何も専門的なものまでは求めません。まずは日常におけるものからです。どういった場所を住処にしているのか。何を食べているのか。何を生業にしているのか。これくらいで構いません」

ゆい「山奥にひきこもり人肉を食べて試薬開発を生業としています」

高砂「しょれじゃーたかしゃごが人肉を食べてるみたいじゃないか」

ゆい「では通信会社の名誉会長をやっております」

高砂「おまけに誰からもしんよーしゃれていない」

八城「お友達が少ないの」

カルディン「人間界で生活していても変わらないものですね」

ゆい「魔界知りませんけどね」

八城「きっと楽しいとこだよ」

高砂「しょれは間違いない」

カルディン「もう一人くらい例が欲しいです。八城様は?」

八城「あたしは朝起きて散歩してまみーの美味しいご飯食べてゆいちゃんとこに遊びに来ることもあるしおうちにひきこもることもある」

ゆい「散歩は朝だけなんですか?」

八城「いつも朝だよ。暑いときは朝がいいけど寒くなってきたらお昼がいいかなぁとか考えてみたり」

ゆい「ご飯は普通の野菜やお肉を食べています」

カルディン「なるほど、羽衣殿よりはずっと人間的ですね。八城様が人間界に親しんでいらっしゃるなら地盤も固めやすうございますな」

ゆい「わたしの異質な部分なんて数えるくらいですけど」

高砂「しゃちょーはじゅーぶん変人だ」

八城「おまけに変態だ」

ゆい「三大欲求知ってますか? 食欲、睡眠欲、性欲です」

カルディン「羽衣殿に関わらず人間は性欲が強いとか。生き物である以上は子孫を残そうという強い意志があるのでしょうな」

ゆい「だから決してわたしが変態というわけじゃないんですよ?」

高砂「たかしゃごはそーゆーのにいっしゃいきょーみがない」

八城「あたしもあんまし分かんないや」

ゆい「と申されますがカルディンさんのご意見は?」

カルディン「返答しかねますが、お二方が申されるならそちらが正しいのでしょう」

高砂「がいこーかんもしょー言っている」

ゆい「単純に八城ちゃんの肩を持っただけでは?」

八城「カルディンさんはあたしの味方だからね」

カルディン「はっ、八城様が魔王様となりし暁には誰よりも忠誠を誓います」

ゆい「それでですね、カルディンさん。あなたが外交官であるなら他にもここに来た理由があるはずでは?」

カルディン「はい、八城様への伝達、その次には今年の交流については既に高砂殿に連絡した次第」

ゆい「だから変な電波は……」

高砂「こっちは糸電話だ」

ゆい「ああ野球選手の佐多さんが開発したあれですね」

高砂「仮面は魔界にも繋がる糸電話を開発した」

ゆい「もはや糸電話の次元超えてません?」

カルディン「電線が張り巡らされるように糸電話が張り巡らされているんです」

ゆい「魔界は電気はともかくほかにエネルギー源があると思いますが」

カルディン「魔界には熱がこもっています。電力には何一つ不自由はございませんよ」

ゆい「地熱ですか。こちらも風力や太陽光にこだわるべきです。自然を生かした発電こそが緑のある土地としてふさわしいからです。生産量が少ないなら数を増やせばいいだけです」

高砂「ふーりょく発電ならよく見る」

八城「海沿い歩いてたら並んでるやつだよね」

ゆい「太陽光発電も見えません?」

高砂「しょんなにないにゃー。ほんと数えるくらい」

八城「ゆいちゃんもっと置いてくれないと」

ゆい「ふーむ、社員の皆さんに掛け合ってみましょう」

カルディン「この糸電話を使えばいいですよ」

ゆい「準備がよろしいことで」

八城「こんにちはー」

グタツナ「ふむ、カルディンの奴よくやった」

八城「あたしゃ八城ですよ」

グタツナ「そちらはどうかな。制圧は可能か?」

八城「あたしこの町しか知らないからわかんない」

グタツナ「魔王とは常に広い視野をもって未来を見通すものである」

八城「よくわかんないなぁ」

グタツナ「では趣味は何かな」

八城「散歩だよ。朝海沿いを散歩するのが好きなの」

グタツナ「ならより遠くに足を伸ばすといい。それだけで己の世界が広がることだろう」

八城「そうかぁ、もうちょっと遠くまで。朝ごはんに間に合うぐらいで考えてみようかな」

グタツナ「視覚や聴覚で得たものは全て脳に蓄積される。少しの歩みが知識の拡大に繋がるのだ」

八城「わかった、もう少し足を伸ばしてみる」

グタツナ「そうすれば私以上の存在となろう」

ゆい「誰と喋ってたんですか? そもそもわたしが」

カルディン「認められましたね」

八城「うーん、いまいちパッとこないなぁ」

ゆい「あ、魔王様ですか」

カルディン「何十年後、何百年後、いや何千年後でも構いません。返事を頂けるまで私はお待ちしております」

高砂「あまり待ちしゅぎると魔界が魔界だけじゃーなくなると思う」

カルディン「魔界はもっといい場所に拠点を構えることでしょう。では私はここで失礼いたします」

八城「じゃあね」

ゆい「それでなんですが」

高砂「なんだか眠くなってきた。来たら起こしてほしー」

八城「お話長くて疲れちゃったの」

ゆい「寝てる間に終わっちゃいそうですね」

高砂「今年はしょれでいーや」

八城「ねー」

ゆい「まあわたしたちが直接関わるわけでもないですし、彼らが楽しめればそれでいいんです」

高砂「しょーとー」

八城「おやすみー」

ゆい「これちゃんと消えたんですか?」

高砂「外見上は問題にゃい」

ゆい「いや外見だけではなくですね」

八城「暗くなったからいいよ」

ゆい「念のため手動で消しておきましょう」


305

土山「土山だ。ああつっちゃんでいいよ。魔界の民よ、どこに住んでんの?」

ジェイド「俺はグタツナが嫌いだから田舎に住んでるよ」

土山「アイちゃん陣営で残ってんのお前くらいだよな」

ジェイド「俺はまだやり足りなかったけどな。どうせなら貴様ら全部道連れにしてやりたかったよ。だがそれもかなわなかった。みーんなグタツナについちまった。そうするしかなかったよな」

土山「そっちが勝ってたらどうなってた?」

ジェイド「人間界の掌握も容易く行われただろうな。デビルアイ様は貴様らが気に入らなかっただけだ。別に人間界を焦土にするつもりはなかっただろう」

土山「で、グタツナのどこが悪いんだ?」

ジェイド「侵略をしないことだ。平和的解決がしたいからって慎重すぎる。それで思った以上に交渉が進まずに思い悩んでいることだろう。最初から話にならないとわかっていたはずなのにな」

土山「グタツナは侵略を行うと思う?」

ジェイド「どうだろうな。なんであれしっかり議論をした上で決定してほしいものだ。正直グタツナには期待していない。次の魔王様に期待だな。その人柄によってはオレも復帰するつもりだ」

土山「ふぅん、まあ頑張るがいいよ」

ジェイド「今の旅続けてるのか?」

土山「ああ、オレは旅がやめられないのさ」

ジェイド「変わった奴だ。筋トレしてればいいのに」

土山「ジェイドは鍛えすぎだな。現役時代とちっとも変わっとらん」

ジェイド「肉体の衰えは怖いからな。そんなペラペラで大丈夫なのか?」

土山「旅をするのに重い荷物はいらないってね。おかげでいつも身軽さ」

ジェイド「さすが非戦闘員だ。気合いが入っていない」

土山「オレは回避専門だから攻撃手段を持ってないのだ」

ジェイド「歯応えのないやつだ。所詮口だけの男よ」

土山「ぶっちゃけちょっと関わったぐらいだし。勝ったほうに流れてたよ」

ジェイド「魔界はいいとこだろ?」

土山「うむ、とても住みやすい」


306-1

高砂「たのもー」

マスター「うちは道場やないで」

ルイ「魔女さんハロウィンでお菓子貰えた?」

高砂「しょんなにしぇけんは甘くにゃかった」

マスター「シャギーの場合、ちゃうことやってそうやな」

ルイ「あー、魔法でなんかするんだよね」

高砂「うん、まほーでなんかしゅる」

マスター「なんか作るからどうかこの店だけは」

ルイ「魔女さんはわたしたちに危害を与えないよ」

高砂「ゆーじんと認めてる相手には何にもしにゃい」

マスター「うーん、なんか釈然とせんなぁ」

ルイ「魔女さん、甘いの好きだっけ?」

高砂「あいしゅがしゅき」

ルイ「じゃあケーキいけるね。よしはりきって作っちゃおう」

マスター「なん飲む?」

高砂「隣のしぇんしぇーが飲んでるやちゅ」

磨夢「げっ」

高砂「最近どーかな」

磨夢「体調が優れない」

高砂「じゃーこれだ。気持ちよくなる」

磨夢「その包みは危ない」

高砂「粉じゃなくてじょーざいだ」

磨夢「ヤクなのは変わらない」

マスター「不穏な雰囲気を醸し出すのはやめ」

高砂「しぇんしぇーは疑り深い」

磨夢「魔女だから警戒してる」

ルイ「そうだよね、魔女さんは怪しいところがあるよ」

マスター「るーちゃんのはただの偏見な気がする」

ルイ「うぃー、深い意味はないよ」

磨夢「知ってた」

八城「じゃあお兄ちゃんにお菓子渡したら行ってくるね」

磨夢「ん」

ルイ「なんか期待してたの?」

磨夢「そんなことはない」

マスター「………」

高砂「ましゅたーも何かひつよーかにゃ?」

マスター「うちはムーみたいに精神的に追い込まれてないから要らへん」

磨夢「別に追い込まれてない」

マスター「だからこそここに来てほしい。何か癒やしを求めてきてくれるんは嬉しく思います」

ルイ「それいいね、いただき」

マスター「笑顔を届けるみたいな?」

ルイ「笑顔を届けにきましたとか言ったらいいと思うんだよね」

磨夢「そのままうちに上がってくれてもいい」

ルイ「休憩のときくらいかな。サボるのはよくないよ?」

マスター「真面目やなぁ」

高砂「しゃーいやしぇんしぇーは保健室とやらでよくサボってる気がしゅる」

磨夢「自習にしてるからいい。あとただの体調管理だから」

ルイ「やっぱり休めなかったりするの?」

磨夢「あんまり休むとクビ切られる」

マスター「世知辛い世の中やなぁ。自営業で

ほっとするわ」

高砂「しぇんしぇーもじえーぎょーしゅればいー」

磨夢「例えば?」

高砂「じきゅーじしょくしゅるとか」

磨夢「今は一人暮らしじゃないから」

マスター「経験はあるん?」

磨夢「今の暮らしになるまでは一人だった」

マスター「あーじゃああの家でようやく落ち着いた感じか」

磨夢「ん」

ルイ「語らないね」

磨夢「聞きたい?」

ルイ「のん、暗い話は好きじゃないよ」

磨夢「そう」

ルイ「お待たせしました、タワーチョコレートケーキです」

高砂「でかい」

マスター「なんでタワーにしたん?一人分なのに」

ルイ「気分かなぁ。お値段もお得。なんと通常のチョコレートケーキに10倍するだけです」

高砂「しぇんしぇー半分食べて」

磨夢「お金持ってない?」

高砂「しゃちょーから貰った宝くじならある」

マスター「残念ながらうちは換金所ちゃうんですよ」

高砂「んーじゃーこっちりょーがえできる?」

ルイ「魔女さんはお金持ちだよね」

高砂「けんきゅーひも全部ちゅかうわけじゃないし」

マスター「もっと経済を回してくれたらええなぁ」

高砂「たかしゃごはしょんなにお金使うほうじゃないからなぁ」

磨夢「………」

ルイ「磨夢は常連さんだよね」

磨夢「ん」

マスター「常連さんは話してておもろい人多くてええわ」

高砂「たかしゃごは外食することがめずらしーから」

マスター「シャギーは自炊するほうなん?」

高砂「うん、しょっちのほーがいー。しょもしょもくーよゆーがあまりない」

ルイ「食べる余裕がないなら外食でいいと思うよ」

高砂「うちにひきこもってるときはお腹しゅかないからだいじょーぶ」

マスター「それわかるわ。外でーへんなら1日3食もいらんて」

ルイ「磨夢はちゃんと1日3食食べてる?」

磨夢「2食で平気」

ルイ「ちゃんと食べないと身体動かないんだよ?」

磨夢「疲れたら寝るから大丈夫」

マスター「るーちゃんも疲れたら寝たええよ?うちも寝るし」

ルイ「そこんとこは自由にやらせてもらってます」

高砂「くじゅれしょー」

磨夢「危ない」

高砂「じゅーりょくまほーでちょちょいのちょい」

マスター「今のは絶対倒れたよなぁ」

ルイ「美味しく食べてもらえればそれでいいよ」

高砂「しぇんしぇーの顔にかかってもなめ回してやりゅ」

磨夢「ならなくてほっとした」

高砂「時間ぎゃっこー」

磨夢「う゛っ」

マスター「吐くならトイレ行ってな」

高砂「くじゅれしょー。あれ、しぇんしぇーは

?」

マスター「一時離席中」

ルイ「何も飲まなくてよかったね」

マスター「シャギー時間戻すならゆうてな」

高砂「わかった」

ルイ「この揺れかたは芸術的だね」

高砂「倒れしょーで倒れないのがいーのだ」

マスター「そんな高いやつが倒れたらちょっとしゃれならんわ」

ルイ「我ながら傑作だよ。普段こんなはりきって作んないし」

マスター「で、どうやって食べるん」

高砂「たかしゃごは地に足をつけるのはあまりしない」

ガタガタ

マスター「ちょっ、まっ、まっ、ストーップ!」

高砂「なーに気にしゅることはにゃい」

ルイ「演出ってやつだね」

マスター「うちにはビンやグラスがある。それをひっくり返されちゃあかなんわけです」

高砂「むじゅーりょくほど心地よいくーかんもなかろーに」

マスター「解除はそーっと頼むな」

ルイ「魔女さん使える魔法増えたんだね」

高砂「ちょっとかじったてーど。しぇーかつに役立つ便利まほーはいろいろある。この本読めばわかる」

マスター「いや分かるって……うん」

ルイ「八城はこれ読んでるの?」

高砂「やしろんは目をとーしてるはずだからこのてーどならいつかできる」

マスター「いやできるって……」

ルイ「やってみなきゃわかんないじゃん。例えば爆発魔法!これいいね、どこに潜んでようと一撃で仕留められる」

マスター「るーちゃんは物騒やなぁ」

ルイ「あ、でも人体には影響はない、そのへんはやさしいんだね」

高砂「やさしいまほーだからな。無機物にしかこーかがない」

ルイ「念動力くらいでいいよね。さっきのまでといかなくても、ちょっと動かすくらい。ああこれこれ。魔女さん、そのケーキなんとかできる?」

高砂「ちょっと分けるぐらいならたやしゅいことだ。風魔法で切断しつつ、ねんどーりょくを使って皿に分ければいーだけだ。こんなふーに」

ルイ「おーこれなら食べられるね」

マスター「それでもでかい気がするわ」

ルイ「魔女さん一人に食べてもらわなくてよくなったし、あっ磨夢おかえり」

磨夢「ん、分けた?」

ルイ「魔女さんが分けてくれたんだよ」

高砂「しぇんしぇーも食べるといい」

磨夢「何も仕込んでないなら」

高砂「しぇんしぇーのだけとかしょんなきよーな真似はしない」

マスター「全部に仕込むほうが器用な気がするわ」

ルイ「ねー、それなら一つにやるよね」

磨夢「………」

高砂「しょーにんが二人いる。たかしゃごじゃなきゃ職人だ」

マスター「るーちゃんに限ってそんなこたーない。必ず持ち物検査をしてますゆえ」

ルイ「お客さんよりわたしに警戒する理由がわかんないよ?」

マスター「他人をどうこうゆーよりまずは自分からよ」

ルイ「なるほどわたしとマスターは一心同体竹馬の友刎頚の交わり」

マスター「愛が重いわ」

高砂「たかしゃごとしゃちょーみたいなものか」

マスター「二人も付き合い長そう。100年くらいとか?」

高砂「魔界時代からのをるいけーするとしょれくらい、いやしょれいじょーかも」

ルイ「でも魔法学校行ってたんだったら空白期間も長いんじゃない?」

高砂「今のよーな付き合いになったのはちゅいしゃいきんのこと。しゃちょーがしゃちょーしてたときもあまり会ってなかった」

ルイ「なるほど再会してからはまだ浅いんだ」

マスター「うちらも文通やってたよな」

ルイ「そんな離れてなかったのにね」

マスター「るーちゃん忙しそうやったし、そんなんゆーたらうちが暇人みたいや。あれこの話したときシャギーおったっけ?」

高砂「いなかった。しょーゆー機会があったの?」

磨夢「二人がうちに泊まった」

高砂「ましゅたーなんてここ以外で見ないのに珍しー」

ルイ「八城が召還したら出てきてくれたの」

高砂「ほー、やしろんがしょーかんを。どんなかんじだった?」

マスター「うちが鈍感なんかなんともなかった。ムーなら吐くレベル」

磨夢「魔法死すべし」

ルイ「異端は滅せよ」

マスター「怖い怖い」

磨夢「ルイはともかくわたしは冷静」

ルイ「そんなー。わたしだって本気で言ってたら魔女さんなんてこの世にいないよ」

高砂「しょんなじゅーじかしゅててしまえばいー」

ルイ「これはマスターの形見だからだめだよ」

マスター「勝手に殺さんでもらえん?」

ルイ「それくらい大事ってこと。よっぽどのことがなきゃこれは捨てれないや」

高砂「いずれそのときが来る」

マスター「その言葉の意味は?」

高砂「しーえむのあと!」

マスター「いやないから」

高砂「こーゆーことができないからじんしぇーはだめなんだ」

ルイ「でも魔女さんが予知能力あっても何も不思議に思わないなぁ。なんかうらやましい」

高砂「記憶、未来の記憶覚えてるってだけ。なんかじくーが歪んでるとかなんとか。あれはしゃちょーが作り出したしぇかい。たかしゃごがどーにかできるものじゃない」

ルイ「魔女さんにもどうにもできないって。夢じゃないってこと?」

高砂「夢と現実半々ってとこ。その根源さえわかれば叩きつぶしぇるのに」

ルイ「わたしも身に覚えがあるような。マスターもいたよ」

マスター「え、じゃあ寝てるうちに見とるんかなぁ」

ルイ「磨夢はいなかったよ」

磨夢「そう」

高砂「一つの未来だから必ずしもしょーなるわけじゃーない」

ルイ「磨夢もいる未来がいいなぁ」

磨夢「ん」

マスター「まあみんないるほうがええよな。ユイールもそう望んでるはず」

高砂「しゃちょーがどのような未来を描くか。しょれが問題」


306-2

ゆい「へくちゅ」

基茂「服着ろよ。風邪引くぞ」

ゆい「わたしがあんかになって兄さんを温めるんです」

基茂「いやむしろ冷たいんだが」

ゆい「兄さんのいじわる。磨夢さんに言いつけてやります」

基茂「磨夢はいないぞ」

ゆい「八城ちゃんも蕨ちゃんも寝てますし実質二人きりですね。さあ居間に駆け出しましょう」

基茂「寒くて布団から出たくない」

ゆい「お夜食なんてどうですか。カップ麺でも食べましょう」

基茂「焼きそば作ってきてけろ。いや、オレが作るわ」

ゆい「さすが兄さんです。伊達に炎の料理人やってませんね」

基茂「たまにしか料理しねーから、下手しぃゆいゆいまでになってるかも」

ゆい「そんなときこそちるさんの出番です。さあお電話を」

基茂「起きてるわけないだろ……」

ゆい「磨夢さんがいなきゃ我が家は絶滅します」

基茂「じゃあコンビニか。着込んでけよ。想像以上に寒いだろう」

ゆい「兄さんは冬の寒さがわかりますか?」

基茂「実家が恐ろしく寒かったからこっちは大したことないな」

ゆい「そんな寒いとこがあるとはつゆ知らず」

基茂「ぶっちゃけ言うとここなんざ南国じゃねーか。かっかっか全裸で外に出てやるぜ」

ゆい「全裸が認められる社会になったらいいですね」

基茂「オレ別に裸族じゃねーし。いや裸族だな。まーいいやこんぐれーならパーカ羽織るぐらいさ。やしろんとお揃いのはさすがにないが」

ゆい「八城ちゃんのは魔界特注ですからね。兄さんの分も頼んどきましょうか?」

基茂「いや、いらんえ。さてと服着たなら出っぞ。そんな腹空いてないが」

ゆい「一応納戸覗いてみましたがほぼ空ですよ」

基茂「きっと磨夢の部屋にあるぞ」

ゆい「それはさすがにやめときます」


306-3

店員「しゃーせー」

基茂「なんかエロ本読んでるやつがいるんだが」

純治「奇遇だな伊崎。残念ながらこ雑誌は健全だ。見ろ、18禁もついていまい」

基茂「ああ確かに。ゆいゆいは……どっか行きやがった」

ゆい「店員さん、こちらは何の肉を使用されてますか?」

店員「謎肉なんざ言われますが、普通の肉使ってます」

ゆい「普通ですか、普通とは」

基茂「少なくともゆいゆいが思ってるやつじゃ、あないだろうな」

ゆい「こういうのでわたしが食べたいのってなかなかないんですよね」

基茂「あったら困るんだが」

ゆい「純兄さんはおすすめありますか?」

純治「カップ麺なかでも麺の多いやつな。それ食うだけで腹一杯なる」

ゆい「辛いのだったりしょっぱいのだったり、それだったらお菓子のほうがいいですね。肉じゃなくても美味しいやつを」

基茂「結局お菓子か。綱揚げとポテチとチョコってとこかな」

ゆい「飲み物はどうしましょう」

基茂「ドクペとガラナ、品揃えがいいことで」

純治「シークァーサードリンクもうまいっすよ親方」

基茂「ゆいゆいはこっちかな」

ゆい「はい、それにします」

基茂「お願いします」

店員「お兄さんうちで働きませんか?」

基茂「まさかの勧誘!?」

純治「オレから言っといたぜ。バイト探してるって」

基茂「別に探してねーし」

ゆい「小遣い稼ぎにいいと思いますよ」

基茂「ゆいゆいに言われると説得力がない」

ゆい「兄さんはヒモになりそうですから」

純治「ゆいゆいに言われてやんの」

基茂「うっせー」

店員「今入ってくれたらグアム旅行がついてきますよ」

基茂「うちに引きこもってゲームしてたいっす」

純治「じゃあオレ入ります。エロ本読み放題なら」

店員「まかないもあります。余った弁当食べ放題です」

ゆい「ならわたしが入ります。お腹空いたときに通います」

基茂「深夜は客そんなに来ないしいいかもな。実際貸切状態じゃん?」

純治「伊崎がゆいゆい連れてきても大丈夫なわけだ」

ゆい「兄さんがおじいさんならよかったんですが」

基茂「そのへん難しいよな。店員さん、実際どう見えます?」

店員「いやお似合いですよ。末永くお幸せに」

ゆい「やっぱりそう見えるみたいですね。どっか旅行でも行きましょう」

純治「うらやまけしからん

基茂「ゆいゆいと結ばれてもこの町から出れないだけだしなぁ」

ゆい「兄さんがこの町に来たときから既に出口は閉ざされているんですよ」

基茂「引きこもってんならどこ住んでも同じだなぁ」

純治「こんなやつよりオレのほうがイカしてるぜ」

ゆい「純兄さんメガネ外したら目つき悪そうです」

純治「なるほどな、伊崎もメガネを掛けてみるといい」

基茂「目ぇくそ悪いけどメガネはしない主義でね」

ゆい「いつかはわたしすらも見えなくなってしまうのですね」

基茂「オレが見えなくなるんじゃなくてゆいゆいが消えてしまうだけじゃね?」

ゆい「わたし曖昧な存在じゃありませんよ。ここにしっかり存在しています。誰よりも濃く誰よりもはっきりと兄さんには見えているはずです。どうか見失わないでください。自身の消滅というのがあまりにも恐ろしいのです」

基茂「あーそうするよ」

純治「代わりにやしろんくれ」

基茂「そーゆー話じゃねーから」

店員「こちら温めますか」

ゆい「はい、お願いします」

基茂「えっ」

店員「えっ」

ゆい「そういうことです」

基茂「どういうことかわかんねーよ」

純治「じゃあな伊崎、また来年」

基茂「おう」


306-4

ゆい「世間はクリスマスです」

基茂「だな」

ゆい「わたしたちには関係ないですけどね」

基茂「さすがに体がもたん」

ゆい「ちるさんとはどうなんです?」

基茂「会わんから知らん」

ゆい「大丈夫なんです?」

基茂「もうおしまいだな」

ゆい「兄さんは生まれたときからわたしと結ばれる運命にあるのです」

基茂「もうそれでいいよ」

ゆい「えっ」

基茂「えっ」

ゆい「結構深刻じゃないですかそれ。一度ちるさんと直接話したほうがいいですよ。兄さん、諦めないでください」

基茂「どうしたんだ、オレはゆいゆいでいいのに」

ゆい「兄さん、しっかりしてください。わたしはヒトを伴侶としなくても構わないのです。しかしちるさんは放っておけないはずですよ。ちるさんにとっては兄さんが最高の伴侶なのです」

基茂「といえどもだな、ちるの気持ちを」

ゆい「そういうのは本人に訊かないとわかりませんよ。主観でものを言うのはよくないです。さあ、昼にでもちるさんの家を訪ねましょう。まだ間に合いますよ」

基茂「何を急いでるんたか」


306-5

ピンポーン

基茂「いないな、」

玄那「面白そうなことをやっておられますね」

基茂「居ないものは仕方ないよなぁ」

玄那「椎木先輩は居留守をよくしますよ」

基茂「いや、知っているやつなら開けるはずなんだ。それがこうも」

ちる「……さん、どうぞ」

玄那「ではごゆっくり」

基茂「あ、はい」


306-6

ちる「あのっ、も、もと、もとし」

基茂「オレが悪かった。この通りだ」

ちる「そ、そんな、わ、わたしだって、こうして、話す、機会、なかった、ですから」

基茂「この距離感、オレは程よいものだと思ってるが、ちるがどうか知りたい」

ちる「わたしも、ほ、程よいかと」

基茂「でも会わなすぎな気もする」

ちる「それは、そう、ですが」

基茂「このままお互い忘れそうな気がしてな」

ちる「………」

ルイ「宅配便でーす」

ちる「あ、ただいま」

ルイ「はんこお願いしまー、ありゃしたー」

基茂「ずいぶんとでかいな」

ちる「観葉植物、です」

基茂「ついに家にまで」

ちる「和み、ます」

基茂「金魚や小鳥は飼わないか?」

ちる「それぐらい、なら、飼いたい、です」

基茂「今度ペットショップにでも行くか。商店街のほうにあったはず」

ちる「そう、しましょう」


306-7

ポルトナ「また怖いお花です」

ちる「怖くは、ありません。可愛い、です」

花「グッヘヘヘ、オマエクッテヤル」

ポルトナ「と見えるわけですが」

ちる「水を、やれば、大丈夫、です」

ポルトナ「慣れてますね、ご主人」

玄那「いたっ」

ガララッ

ちる「クロちゃん?」

玄那「外見てたら誤って落ちました」

ポルトナ「よくご無事で」

玄那「椎木先輩の庭の植え込みがいいかんじのクッションになりました。ありがとうございます」

ちる「ケガとか、してません?」

玄那「平気です。これくらい慣れてます。ぽるたん、暇?今からゲーセン行くんだけど」

ポルトナ「外は出たくありません」

玄那「ぽるたん見た目は完全に人形だもんなぁ」

霞「ちわー、クロちゃん拾っていきますね。さあさあ狩りへ行きましょう」

玄那「さすがかすむん、噂をすれば駆けつける」

霞「風邪でもないのによくくしゃみするんです。有名人も辛いものですね」

玄那「ただの風邪じゃ」

霞「そういや冷えますねぇ」

ちる「し、閉めていい、ですか」

霞「いいですよ。ただしクロちゃんはいただいた。返してほしくばわたしを倒すといい。弱点は足の裏です」

玄那「弱っ」

霞「と思うでしょ?でもこの部分は狙われにくいんで案外強いんですよ」

玄那「いや狙われたら終わりでは?」

霞「捕まっちゃあおしまいですよ」

ちる「閉めますね」

霞「あっ、ちょっ、まっ」

ピシャッ

玄那「背後に気配が」

霞「はい」

?「だーれだ?」

霞「きーちゃん」

綺天「なななんでわかったのさ」

霞「声でわかります。わたしを誰だと思ってるんですか」

綺天「ね、ねぇね」

玄那「かすむんの妹?」

綺天「そういうねーちゃんはねぇねの友人?」

霞「質問を質問で返してどうすんですか。どっちも正解ですけど」

綺天「おーねぇねの友人、会いたかったです。ずっと前からファンでした。サインください!」

玄那「大したもんじゃないんだけど」

ササッ

綺天「なるほど読めない」

玄那「上井玄那という者だ。お姉さんには世話になってる」

綺天「三宅綺天です。ねぇねが世話になってます。クロねえと呼ばせてください」

玄那「いいよ。そういやかすむんの妹って長い間いなかったらしいけど」

霞「急に帰ってきたんです。我が家がよりにぎやかになりました」

綺天「ねぇねにきてんが揃えば三宅家は将来安泰だ」

玄那「いいね、今度泊まりにいこうかな。最近遊びに行ってないし」

霞「うちはいつでも大歓迎ですよ。先生みたいに忍んでこなくてもいいですから」

玄那「とても真似できないから正面突破を試みるよ」

綺天「クロねえなら安心だ。先生みたいに下心がない」

玄那「あんなにかすむんを溺愛してるのは先生ぐらいだ。わたしは友人としてかすむんを慕っているだけさ」

綺天「いいな、クロねえかっこいい。きてんもクロねえみたいなイケメンになりたい。こんなかんじかな」

霞「片目隠れてればいいってもんじゃないですけど」

綺天「先生なんて両目隠れてるじゃないか。ねぇねはこんなにもでこが出てるというのに。あっそうか自分にないものに惹かれるってやつだ」

霞「ハゲちゃないですよ。これがわたしの髪型ですから。でも前髪長い人はいいですね。あんまり視線を気にしなくていいんで。クロちゃんや先生に見つめられてもあんま緊張しないですし」

玄那「あーだからドライなんだ。それに強く出れるってやつね」

綺天「クロねえはあれだ。独眼竜」

霞「別に腫れてるとかではなくオッドアイでかっこいいからあえて隠してるんですよ。それもカラコン」

玄那「こういう髪型だって。かすむんとおんなじだよ」

綺天「見たいとかじゃなくて片目隠してるのもクロねえのかっこよさの秘訣だと思う。前髪うっとしい人は見るけど片目隠しなんてなかなか不便だと思うけどクロねえは長年その髪型だからきっと慣れてるんだろう。さすがとしか言えない」

霞「さ、着きましたよ」

綺天「二人はここで遊んでるんだ?」

霞「はい、人が集まるんで対戦ゲーが熱いですよ」

玄那「もちろん、一人用もある。こんなんとか。フリプだ、やってみ」

霞「フリプだと積極的ですね」

玄那「こちとら貧乏学生、財源に限りがある」

綺天「これはどうやって遊ぶんだ?」

玄那「説明が書いてあろう? どれ、お姉さんが見せてやろう。このボタンで通常攻撃で、こっちのボタン押したら回数制限的はあるが強力なボムが撃てる」

綺天「敵がいっぱいいるんだ。こいつらを全員やっつけると?」

玄那「敵の攻撃に当たらないようこうやってちょこちょこ移動しながらやっつけてくんだ。ほい中ボス」

綺天「え、あ、勝てるかな?」

玄那「余裕余裕。こいつの攻撃はゆっくりだから避けやすい。

基本横移動だけど避けれない、攻撃が当たらない場合は多少突っ込んでもいい。危なくなったらボムだ。ボム持ったまま死ぬのはもったいないからな」

綺天「あ、終わっちゃった」

玄那「コンティニューすりゃまたそこからやり直せるぞ。現状最初からと中ボス手前が選択できる」

綺天「中ボス手前っと」

玄那「やってりゃ慣れるよ。覚えゲーだから」

綺天「おー勝った。当たったと思ったけど大丈夫だった、なんとか行けた」

玄那「しばらく雑魚を蹴散らしながらいけばボスだ。あ、今の所は稼ぎどころだな。ボスの前で残機増やせるけど多分大丈夫だろう」

綺天「ボス来た。めっちゃ弾飛んでくる」

玄那「被弾しなきゃ大丈夫だ。一回防御はできるがボムが無駄になっちゃうからなぁ。被弾しそうならボムだ」

綺天「うはーボムつえー。勝った疲れたねぇね交代」

霞「黙って見てたのに、わたしはクロちゃんみたいに上手くないですよ」

玄那「謙遜なさるな。一度クリアまで行ってるじゃんか」

霞「昔の話じゃないですか。しばらくやってないんで大分鈍ってると思いますけど。多分今覚えたきーちゃんのほうが上手いのでは?」

綺天「ねぇね、今のは横移動だけじゃ避けれないぞ。前に出て先に強いやつ倒さなきゃ」

霞「難しいですね」

玄那「さてと音ゲー練習してくるか。そっちはきーちゃんがいれば大丈夫だろう。かすむんはやってる内に思い出してくることだし」

霞「待ってください全然覚えてないんですけど。きーちゃん代われます?」

綺天「ちょっと面白いのないかぶらついてくる。ねぇねは頑張りたまえ」

霞「ふぇぇ、こんなのクリア不可能ですよぉ」


306-8

綺天「クロねえクロねえ」

玄那「あれ、お姉さんはどした?」

綺天「ねぇねにあのゲーム預けてきた」

玄那「かすむんをなめちゃいかんよ。ああ見えてクリアするまで帰らないから。例え苦手なシューティングであってもだ」

綺天「ねぇね明日学校休むのか」

玄那「ちげぇねぇ。先生には内緒だぞ?」

綺天「先生はねぇねを探しにいきそうだ」

玄那「先生だったらあり得る話だなぁ」

綺天「また忙しそうなのやってる」

玄那「手がいくつあっても足んないよ。何か知ってる曲はあるかね?」

綺天「これとか?」

玄那「よりによって☆10かえ。これはかすむんの影響かな」

綺天「そうそう、ねえねがよく口ずさんでる。このサビがいい」

玄那「確かに結構人気曲ではあるな。ふむふむ良い耳をしている」

綺天「ここってなんか面白そうなゲームあるん?」

玄那「かすむんが格ゲーを好めばわたしはシューティングを好む。一言ゲームといえど、ジャンルもいろいろあるし試してみるといいんじゃないか?ここみたいなアーケードじゃなくても家ゲーをやりゃあ金がかからんよ」

綺天「そうか、うちには古いのも新しいのはある。今度ねぇねに教えてもらおう。クロねえも来てね」

玄那「二人の協力プレイならはまるやつははまる。四人ゲーはまあ、かすむん家にはモニタいっぱいあるし大丈夫だろう」

綺天「なんなら今からでもうち来る?」

玄那「ゲーセンの日は一日中ゲーセンいるな。かすむんだってそんつもりだろうよ」

綺天「じゃあきてんもうちょい見たら帰る」

玄那「ま、好きにしたらいいさ」


306-9

綺天「浮いてる」

高砂「うむ、確かに浮いてる。歩くとちゅかれるからだ」

綺天「いい考えだと思うけど、あんたただ者じゃないな。一体何者なんだ?」

高砂「たかしゃごだ。ヒトはみな魔女とゆー。しょーゆーかっこーなんだから仕方ないけど」

綺天「でも本物の魔女でしょう? きてんにゃあわかる」

高砂「仮ににしぇものだったらどーなんだ?」

綺天「そんときはねぇねが興奮するコスプレイヤーかなーって思う。魔女に扮装するのはハロウィンでもすることだし」

高砂「ハロウィンか。ふむ、いいはっしょーをしている。お友達になってあげよー」

綺天「本当か、それは嬉しい!さっそく文通を始めよう。三日坊主だけど」

高砂「 この町はしょっちゅー来てるからいつでも会えりゅ。空からきゅーこーかこーげきもかのーだ。俯瞰ふーけいはきれーなものだ。しゅべてがちっぽけに見える」

綺天「今飛べたりする? きてん空飛んでみたい」

高砂「んにゃ、今ちょーどほーきが切れてる。しーれしゃきのもぼろいしいっしょ買おーかと」

綺天「商店街にいい店があるよ。連れてってしんぜよう」

高砂「たしゅかる」


306-10

綺天「はい、着きました」

高砂「ましゅたーのとこの近くか」

綺天「ちょっと路地入っちゃうんだなこれが。でも生活用品が一通り揃ういい店よ」

高砂「ん、ほーき発見」

綺天「どう、飛びやすそう?」

高砂「しゃしゅが市販のものは違う。これいくら?」

店主「五百円」

高砂「買った」

綺天「このお箸いくら?」

店主「百二十円」

綺天「買った」

ルイ「いい仕事してますね。これいくら?」

店主「時価にして五十万」

ルイ「やっぱ高いかぁ。あ」

高砂「む」

ルイ「こんにちは、魔女さん」

高砂「紹介しよう、こっちは職人るーちゃん」

綺天「三宅綺天と申すものだ。よろしくたのむ」

ルイ「サムライさんかな。こちらこそよろしく。ここじゃなんだ、ショまできてもらおう」

綺天「え、警察?」


306-11

マスター「いらっしゃーい」

ルイ「マスター例のもの高くて買えなかったよ。あとこちらサムライさん」

マスター「侍?どう見ても普通のお客さん」

綺天「こういうものだ」

マスター「きてんさんね、じゃあてんちゃん?」

綺天「いいや、きーちゃん」

マスター「おっけー、きーちゃんな」

高砂「なるほど、きーちゃん」

マスター「こっちはシャギーとでも呼んだってくれ」

綺天「なるほど、しゃぎー」

高砂「あんまり呼ばれ慣れてにゃい」

ルイ「じゃあわたしも今日からシャギーって呼ぶね」

高砂「しゅきにしゅればいー」

綺天「えぇっとじゃあ、マスターいつもの」

マスター「いつものもなんもないけど飲みもんなら多く取り揃えとります」

ルイ「今日はマスターのおごりだからじゃんじゃん頼んじゃいな、ゆー」

マスター「連れてきたんるーちゃんやないの? うちゃあなんも聞いとらん」

ルイ「じゃあわたしのおごりでいいや。あんま高いのはやめてね」

マスター「急に弱気んなるし」

綺天「じゃあるーちゃんのおすすめで」

ルイ「それならこれか。あっわたしここでお菓子作ってんだ。今日は十二段に挑戦します」

綺天「シャギー、十二段ってなに?」

高砂「ケーキタワー。きーちゃんは甘いのしゅき?」

綺天「うん、いくらでも食える」

マスター「あーあ、言っちゃった」

高砂「帰っていい?」

マスター「まだ代金を頂いておりませんが?」

ルイ「これは焼くのに時間がかかるなぁ」

高砂「職人はケーキタワーしかちゅくれないの?」

ルイ「んにゃ、普通のホールケーキも作れるよ」

高砂「じゃーこれは?」

ルイ「シャギーに対する気持ち」

高砂「しょんなのいらない」

ルイ「シャギーって頭使うことやってるし。だから糖分もしっかり摂らないと」

高砂「明らかに一人のりょーじゃない」

ルイ「一人で食べれなくてもいいんだよ。何人で挑戦してもらったって構わない。わたしはその高みを行くだけだから」

マスター「こうしてるーちゃんのケーキタワーはどんどん高くなっていくのであった」

綺天「ギネスでも目指してるのかな?」

マスター「現段階でもかなり高いからなぁ。物理的にも値段的にも」

綺天「それを一人で食べたお客さんはこれまでいるの?」

ルイ「まだ研究中だからシャギー専用メニューだよ」

高砂「毎回よーいしゅるとなると大変では?」

ルイ「いやね、シャギーが来ると気合いが入るんだ。この為に生きてるんだなって」

綺天「きてん知ってるぞ。脈アリってやつだ」

ジリリリ

ルイ「マスター、お電話お電話」

マスター「はいはい」

高砂「電話取ってるとこみたことにゃい」

ルイ「電話掛かってくることなんか滅多ないよ」

綺天「予約とかない?」

ルイ「知る人ぞ知る場所だから常連さんが来てるだけ。そんな団体で来るお客さんも少ないし席も足りるよ」

高砂「しょれはかなしー」

綺天「でもこの感じ、きてん嫌いじゃない」

ルイ「この雰囲気が落ち着くってお客さんがよくいらっしゃるの。だから新規さんにもどんどん来てほしいとわたしは思ってる」

綺天「新規です。どうぞよろしく」

ルイ「きーちゃんみたいのは嬉しいよ。年とかあんまし気にしないけど、やっぱり同じ年頃aの人だと話しやすいし」

綺天「いくつに見える?」

ルイ「磨夢と同じくらい」

綺天「まむ、先生か。先生はねぇねにぞっこん」

高砂「しょのねぇねがわからにゃい」

綺天「ねぇねはそんなに背高くないけど胸がでかい。そこに先生は惹かれてるんだと思う」

高砂「しょのよーなものは誠に解しがたい」

ルイ「もしそうならマスターに期待だね」

ガチャ

マスター「え、うちがどしたって?」

ルイ「なんでもないよ。それより誰だったの?」

マスター「骨董品屋さん。るーちゃん行ったとこやと思うけど、なんかまけてくれるらしいから。るーちゃん、また頼まれてくれんかな。釣りはとっといてもろて構へんから」

ルイ「いいけど、マスターはほんと外に出たがらないよね」

マスター「外なんか出たら帰ってこれんて。後日中出たら溶ける」

高砂「たかしゃごでもしょんなのならにゃいのに。いや待てよ」

マスター「どしたん?」

高砂「ましゅたー噛まれるの慣れてる?」

マスター「いや慣れとらんよ。普通噛まれることなんてないし。噛んでどうよ、うちが吸血鬼とか?んなわけ」

高砂「存分にありうる。これはたかしゃごの単なるこーきしんだし無理にとは言わにゃい。どっちだろうとこのごじしぇーなんてこたーないし」

ルイ「そうそう、見てるのは私たちだけだし。例え吸血鬼でも誰かに狙われたりしないよ」

マスター「そういうるーちゃんが一番怖い」

高砂「しょれはどーい」

ルイ「えっ」

綺天「ところでるーちゃん、焼けましたかな?」

ルイ「はい、焼けましたとも。どーん」

綺天「はぁこれがるーちゃん特製のケーキタワー。頂いちゃっていいの?」

ルイ「食べられるとこだけでいいよ。何段いく?」

綺天「とりあえず三段くらい」

ルイ「はいはい」

マスター「見てみいシャギー。あれが本物よ」

高砂「確かに」

ルイ「どうぞきーちゃん、たんと召し上がれ」

綺天「見てるだけでよだれが。じゅるっ、いただきます」

高砂「してマスター」

マスター「あん? るーちゃんがいる以上は無理や」

高砂「しょれは残念だ」

ルイ「マスター、ここはわたしに任せて部屋行っていいよ」

マスター「え、それどういう」

ルイ「部屋は奥だよ、シャギー」

高砂「うーい」

マスター「………」

高砂「お邪魔しまーしゅ。おやマスター覇気がない」

マスター「なんでるーちゃん乗り気やったん? うちなんか悪いことした?」

高砂「職人がきょーみを抱いてる。しょれだけのことだ」

マスター「同じ立場に置かれたら絶対拒絶反応起こすやろうな」

高砂「しょーじき職人はまずしょーだ。ましゅたーのほーがいー」

マスター「そういう問題やない。誰も噛んでほしいなんて思っとらんから」

高砂「でもこれを行わないと職人は納得しないだろー」

マスター「いやうちが認めてないわけ」

高砂「もんどうむよー、堪忍せー」

マスター「んぎゃああああああ」


306-12

磨夢「あれ、マスターは?」

ルイ「ここ数日寝込んでるの。風邪でもひいたんだよきっと」

磨夢「ルイがいるならそれでいいけど」

ルイ「わたし一人じゃお酒とかよくわかんないや」

磨夢「わたし飲まないから大丈夫」

ルイ「んーでも磨夢みたいなお客さんは少数派で」

磨夢「そのときはマスターに訊けばいい」

ルイ「そうするしかないよね。あ、いらっしゃいませー」

敏樹「マスターいないね」

ルイ「古傷が痛むんだって」

敏樹「へー、それは延原先生が喜びそうだ。じゃあオレンジジュースと適当なお菓子を頼むよ」

ルイ「はーい」

磨夢「ピアノ直行と」

ルイ「敏樹ってミュージシャン?」

磨夢「音楽教師」

ルイ「そうだった、熱心なことで。あ、いらっしゃいませー」

楽郎「いつもので頼むよ」

ルイ「かしこまりました」

磨夢「こんばんは、鋼田先生」

楽郎「こんばんは。延原先生ここによく来られますか?」

磨夢「はい、常連にございます」

楽郎「それは結構なことで。この店には専属のピアニストもいて良い雰囲気ですね」

磨夢「そのピアニストが湖先生です」

楽郎「なるほど、この旋律は確かに湖先生のものですな」

ルイ「彼の旋律は心に響きますね」

楽郎「さすがうちの音楽教師だ。誰もが酔いしれる」

マスター「おはようござ」

ルイ「ちょっと席外しますね」

磨夢「ん」

ルイ「マスター、目が覚めた?」

マスター「まさか寝たきりなるなんて思わんかったよ。でもおかげですっきり爽快最近の疲れが一気に吹き飛んだから決して悪いこたぁない」

ルイ「一応訊くけど何あったか覚えてる?」

マスター「んにゃ、何も覚えとらん。夢のことなら覚えてんで。るーちゃんと一緒に恐竜乗って夕陽に向かって走り続けたわ」

ルイ「じゃあ全く覚えてないわけだ」

マスター「またぐっすり寝てみたいわ」

ルイ「それはよかった。じゃあお客さん来てるから着替えたら来てね」

マスター「あいよ」


306-13

高砂「ましゅたーはきゅーけちゅきじゃなかった」

ゆい「わたしに伝えてどうすんです? それ」

高砂「これがしゃんぷるだ」

ゆい「どうせなら肉が欲しかったです」

高砂「しゃちょーって血足りてなしゃしょー」

ゆい「でもわたしは丈夫なんですよ。貧血で倒れてことなんてそうありませんから」

高砂「ふーん」

ゆい「そういう高砂さんこそ足りてないのでは?」

高砂「たかしゃごはしゃちょーみたくがめちゅくはにゃい」

ゆい「へぇ」

ルイ「たのもー」

高砂「どーぞ、しぇまいけどあがったあがった」

ルイ「お邪魔しまーす」

ゆい「お茶どうぞ」

ルイ「すごい、マスターんとこより出るのが早い」

ゆい「作るお茶なんて限られてますし」

高砂「ほーじちゃもいーが、こーちゃもいーもんだ」

ゆい「お茶だけでも極めたいものですね」

高砂「りょーりはぜつぼーてき」

ルイ「マスターに師事したら料理なんてすぐに身に付くよ」

高砂「たかしゃごに師事したら薬学なんてしゅぐに身に付く」

ゆい「それがね、るーちゃん、夜は眠いもんなんですよ」

ルイ「あはは、昼間寝てりゃあ夜起きてるなんて容易なことだよ」

ゆい「夜起きようと努力しても眠くなっちゃうんです。もちろん昼間は起きてますけど」

高砂「たかしゃご知ってるぞ、しゃちょーは夜間神社にいない」

ルイ「うちには来てないよ」

高砂「とゆーことは……」

ゆい(ぎくっ)

高砂「しゃんぽだ。やしろんみたく海浜公園まで行っている」

ゆい「まあそんなところです」

ルイ「ゆい何か隠してそう」

ゆい「か、隠していませんよ」

高砂「しゃちょーのことだ。大したことはしてない」

ゆい「そうそう、趣味もないですから」

ルイ「きっと丑の刻参りしてんだ」

ゆい「呪う相手なんていませんよ。そもそも知り合いがいませんし」

高砂「知り合いなんていないくらいでいー。人と関わるくらいなら薬学けんきゅーにぼっとーしゅべきだ」

ルイ「わたしはそんな頭ないけど、お客さんに夢を届けてるよ」

ゆい「………」

ルイ「世界中の全ての人々が幸福にありますように」

高砂「けっ」

ルイ「そのために異端に業火に焼かれるべきです」

ゆい「それは違いますよ。魔王様は人魔共生社会を望んでいられるのです。わからず屋の人間にはあれこれ苦心されてるとのことですよ」

ルイ「魔王? 何かのお話?」

ゆい「人間が住む人間界があるように、魔族の暮らす魔界というものがあります。その頂点に君臨されるのが魔王様です。現魔王様は近年の世界征服戦争において、悪に染まらずして停戦に持ち込んだ功績によって、偉大なる魔界の王となられたのです。今日に至り人と魔族の共生及び文化の共有というものを望んでおられます。それは決して武力制圧によるものではないのです。人間が快く受け入れることが最善の策と考えておられます」

ルイ「じゃああれか。現状上手くいってない感じなんだね」

ゆい「ええ。人間と魔族はその形状言語文化思想あらゆる面から大変異なるもの。故に最初から理解しあえるわけないのです」

高砂「じっしゃいむずかしーものだ。第一顔を合わせることすらかなわないとなれば、どーにもしよーがにゃい」

ルイ「二人はどっち側なの?」

ゆい「我々は仲介役、両陣営が存在する限り、その一方に傾くことはありません」

高砂「なんだかんだいって、こっちも悪いことはにゃいし」

ルイ「なんかあんまりピンとこないなぁ」

高砂「例えばこのナイフとフォーク、これらは魔界の物品だ」

ゆい「いつのまにそんなところに」

ルイ「なるほど、このフォーク、先端の尖りが普通じゃないね」

高砂「しょーゆーこった。しゃちょーにぜひちゅかってほしー」

ゆい「有り難く頂戴します。最近これ使うようなのあんまし食べてないんですけど」

高砂「構わん、取っとけ」

ルイ「ほかになんかないの?」

高砂「職人はどんなのがほしー?」

ルイ「魔界の生き物って気になるな。ペットにしたい」

高砂「ふむ、ちょーどここで飼おーと思ってたところだ。こいちゅがしょの……」

鳥「ぎぐえげるぐわああああ!!!」

ルイ「結構」

高砂「うむ」

ゆい「………」

高砂「あれ、ちゅっこみは?」

ゆい「あんなの毎日聞かされちゃ何も聞こえなくなりますよ。返品してください」

高砂「ふーむ、しゃちょーも手厳しー」

ゆい「いやいや、これは真っ当な意見だと思いますが。ねぇ、るーちゃん」

ルイ「焼き鳥にしたいよね」

ゆい「あ、そうですか」

高砂「つまりあれか、しゃちょーはこの子がかわいくないとゆーのだな?

これでもけっとーしょちゅきだ。しょんじょしょこらのやちょーと一緒ょにしてもらっちゃー困りゅ」

ゆい「かわいいかわいくないの問題じゃありません。何ですかあの鳴き声。まず耳を慣らさないととても飼えません」

高砂「なーに、心配はいるまい。いつもあんな声で鳴くわけじゃない。けーかいしてただけ」

ルイ「ほんとだ、もう普通の鳥さんだ。かわいい」

ゆい「………」

高砂「職人にはけーかいしてないってわけかー」

ゆい「お腹空きましたね」

高砂「いちゅも血に飢えてる」

ゆい「いいえ、肉に飢えてると言ってください。血なんかじゃ満足できませんよ」

高砂「血を主食にしゅるのはいろいろ無理がありゅ」

ゆい「我々が肉や穀物で空腹を満たすように彼らは血で腹を満たすのです。というのは身のあるもので満たす必要がないということでしょう」

高砂「かしゅみをくーしぇんにんなよーなものか」

ゆい「満腹の度合いが低いのか、血が腹を満たしやすいのかわかりませんが」

高砂「しゅぐおなかいっぱいになるこたーにゃい。腹を満たしゅには一定のりょーがひつよーだ


ゆい「なるほど、そこは個人差というもので」

ルイ「逃げそうだよ、この鳥」

高砂「狩りがしたいよーだ。だからえしゃをやらなきゃいけにゃい。血とか肉がしゅきらしー。しゃちょーのまじゅい血でいーはず」

がぶっ

ゆい「高砂さんが欲しいだけでは?」

高砂「ちゅーしゃのほうがよかった?」

ゆい「どっちでも構いませんが」

鳥「ぐるいっちょ、ぐるいっちょ」

ルイ「かわいいね」

高砂「気に入った? 持ってってくれていーぞ。ひつよーなのはこの辺の書類」

ルイ「肉食?」

高砂「うん、たいしょーはヒトじゃなくてもいー。肉のあるものならなんでも食べりゅ」

ルイ「うぃー、ちょっと狩りしてくる」

ゆい「狩りなんてほかの人に任せるべきですよ。自ら手を汚す必要はないんです」

ルイ「どっかにいいお肉屋さんないかなぁ」

高砂「しゃちょーなら知ってる」

ゆい「代理人を紹介したほうが早いですね。いい肉が入ったらお知らせしますよ、へっへ」

ルイ「ねずみさんとか食べると思うんだよね」

高砂「そっちならたかしゃごのほうがくわしーぞ。しょざいになるから、例えばこのへんとか」

ルイ「おーとれびあん! これなら簡単に揃えられそうだ。めるしーぼーく」

ゆい「まあそうなりますよね」

高砂「しょーじきたかしゃごはどっちでも変わんないとは思う」

ルイ「うぃー、このこの好み次第だよね」

高砂「狩りのたいしょーによって好みがわかれるから。特にこれをくーってのはにゃい。食わしぇ続けりゃーそいつを求めるよーになる。まともにもの食わしぇてりゃーしゅー百年は生きしゅりゅ。しゅえながく可愛がってほしー」

ルイ「さすが魔界の生き物、長生きだなぁ」

ゆい「高砂さん、最近魔界行ってます?」

高砂「んー、しゃいきんは行ってない。けんきゅーでいしょがしーから」

ゆい「そのわりにうちによく来てますよね?」

高砂「でも毎日来るわけじゃない。来ない日はちゃんと引きこもってるから」

ゆい「確かに。ちゃんと食べてます?」

高砂「食べるひつよーがない」

ゆい「あー集中してるとお腹減りませんからね」

ルイ「今度差し入れ持ってくから家教えて」

高砂「隣町のこのへん。けっこー不便な場所だ」

ルイ「こりゃ森の中だ。行くのに骨が折れそう。

でもちゃんと行くからね。覚えてて」

高砂「うん」

ゆい「高砂さん、これを」

高砂「はは、こんなのじゃ職人は殺せまい」

ルイ「どうしたの二人でヒソヒソと」

高砂「やられる前にやるってのもむずかしーなって」

ルイ「そんなの寝てるとこ狙えばいいんじゃないの? シャギーがどこから狙ってこようとわたしには唯一無二の武器があるから」

高砂「やっぱバレた?」

ルイ「立場上火花を散らさなきゃなんないんだよ」

高砂「酷なものだ」

ゆい「仲良くしても問題なのでは?」

ルイ「え、冗談だけど」

高砂「しょもしょもしゃちょーが」

ゆい「万が一がありますから」

ルイ「そんなにわたし信用できないかなぁ」

高砂「しゃちょーのことなら何から何まで知ってるけど職人のこと全然知んにゃい」

ルイ「そういやそうだね。でもあれだよ、知りすぎるのよくないと思うの。ねぇ、ゆい」

ゆい「そうですね、知りすぎるのはいいこととは思えませんね。人間関係でいうなら、知りすぎることで嫌いになってしまうこともあるでしょう。というのは第一印象ではいい人だと思っていてもその人と長く付き合うほど、つまりその人を知れば知るほどその人の本性が露見するものですから。お互いをそこまで知らずに、少し距離を保つのが正しい人間付き合いというものでしょう。余程仲がいいとかでなければ相手の隅から隅まで知ろうとは思いますまい」

ルイ「でもわたしはシャギーと仲良くなりたいんだ」

高砂「しょのじゅーじかをしゅてたらいー」

ルイ「やっぱりこれがあったらだめかなぁ」

高砂「しんこーをしゅてよ。しょしたら考えてやる」

ゆい「神に仕える身としてその言葉はあまりにも残酷でしょう」

高砂「めんどくしゃいなー。自然しゅーはいが一番だとゆーのに。」

ゆい「それはみな崇拝対象が違っていいというものでしょう」

ルイ「だねー。わたしはもうちょっと寛容になれるように善処するよ」

高砂「いー心構えだ」

ゆい「あ、そういやなんですがるーちゃん。マスターは吸血鬼じゃないとのことです」

ルイ「そりゃそうだよ。マスターはただの夜行性だもん」

高砂「あんな極度の直射にっこー嫌いならと期待はしてたのに」

ゆい「仮に吸血鬼だとしてどうしたんですか」

高砂「どーぞくとして迎え入れるだけ。実験はしゃちょーがいればじゅーぶんだし」

ゆい「そうですね」

ルイ「どゆこと?」

高砂「しゃちょーはましゅいふよーの被験体だ」

ルイ「うわぁ……」

ゆい「わたしじゃなきゃ死んでることを平気でやるんですから、実験なら異なる対象においても実現可能であるべきです」

高砂「いや、その考えは甘い。実験だからこそよりふつーできないことをやる。何もしゃちょーにしたことしょっくりしょのままやるわけじゃないからな」

ゆい「はい」

ルイ「ゆい、眠い?」

ゆい「はい、若干」

ルイ「お風呂行く?」

ゆい「なんでそうなるんです?」

ルイ「露天風呂で寝るのが気持ちいいんだよ」

ゆい「高砂さんは?」

高砂「入んなくていい」

ルイ「食べなくていい、入んなくていい、眠らなくていい、それじゃあ身体にとって不健康だよ」

高砂「ひつよーないし」

ルイ「だめだよ、引っ張ってでも連れてく」

高砂「ぐえー」

ゆい「何もリードつけなくても。猛獣使いですか?」

ルイ「実家で犬飼ってたんだけどリードだけ送られてきたんだ」

ゆい「必要だと思われたんでしょう。こういうふうに」

高砂「か、噛んでやりゅ」

ルイ「猛犬注意!の貼り紙が欲しいところだ」

ゆい「外してやっちゃあどうですか?」

ルイ「万人受けはしないか」

カチャ

高砂「たかしゃごは犬じゃないからな」

ルイ「それは残念」

ゆい「犬飼えばいいのでは?」

ルイ「うちじゃ飼えないみたい」

ゆい「高砂さんとこで飼えばいいです。誰も来ないので迷惑も何もないですよ」

高砂「犬は間に合ってりゅ」

ルイ「かわいいの?」

高砂「うっかり森を焼くぐらいかわいー」

ゆい「ペットは飼い主に似るもんですね」

高砂「だから我が家は冬もしゃむくない」

ゆい「でも年がら年中火を吹いてるわけでもないでしょう?」

高砂「機嫌がいいときだな。んにゃ、機嫌悪くても吐く。毎回森を焼かれても困るからちゃんとしつけはしている。知らないやちゅが来たら火を吹けと」

ルイ「えーそれは困るなぁ」

高砂「よしわかった。においを覚えしゃしぇておこー。んーと、じゃあ靴下脱いで」

ルイ「それ探しにくるやつじゃないの?」

高砂「しょこまで賢くはない。においしゃえ気に入ればきっと飛びちゅく。職人犬しゅきしょーだし」

ルイ「飛びつくことはないと思うけど近寄ってはきそう」

ゆい「ふとももが美味しそうです」

ルイ「ちょっと寒いなぁ。あ、そうだ。お風呂行くんだった」

高砂「覚えてたか」

ゆい「そんな嫌そうな顔しないで支度してください。この家も閉めますよ」

高砂「取られるものもなかろーに」

ゆい「そうですね」


306-14

井筒「うーい」

高砂「うーい、番台来てやったぞ」

井筒「泊まってってもいいぞ」

高砂「んにゃ、風呂入りにきただけだから」

井筒「じゃあ食っていきゃあいい」

高砂「よかろー、風呂上がったら、ごちしょーになる」

ゆい「そのまま泊まっていきそうですけど」

高砂「いーや、今日はちとやることがある。しょーは問屋が卸しぇにゃい」

ルイ「でもシャギー隣町だし、帰るのめんどくさくない?」

高砂「何もいどーにゃ困ってない。暇なときに来て暇ににゃったら帰りゅ。しゃちょーが暇にならない」

ゆい「わたしとしゃべってること自体が暇なのでは?」

高砂「ははは、しょーかもな」

井筒「んで、三名様で間違いないかのぅ?」

高砂「後に誰が来るとゆーんだ?顔が広いのなんて職人くらいだ」

井筒「はは、ちがーない」

ゆい「るーちゃんに話術教わっても使う機会がなさそうです」

ルイ「悲観的だなぁ」


306-15

高砂「ぬるい」

ゆい「でしょうね」

ルイ「普通の人間にはいい温度なんだけどね、むしろ熱いくらい」

ゆい「熱いものも慣れるのが怖いですね」

ルイ「そうだよ、うだっちゃう」

高砂「あちゅいの苦手?」

ルイ「熱いのも冷たいのも無理だよ」

高砂「わがままだなぁ。かたっぽぐらいはたいしぇーをちゅけるべきだ」

ゆい「高砂さんみたいに生身で地獄の業火を耐える人なんて普通いないんで」

高砂「しょの話したっけ? まーいーや、一度地獄にいきゃーあちゅいほーはどーとでもなる。問題は寒さだ」

ルイ「寒いのなんて着込めば平気だよ」

高砂「ほー、しょれはどのよーなふくしょーで?」

ルイ「今日も結構着込んでたけど見てなかった?」

高砂「しゃちょーしか見てなかった」

ゆい「たまにはるーちゃんも見てあげてください」

高砂「しょんなにたかしゃごに見られたいのか」

ルイ「改まって見るとギョロ目だ」

高砂「どーこーを限界まで開かなきゃ物事をしぇーかくに捉えられないってしゃちょーが」

ゆい「そこまでは言ってません。意味は大体合っています。あくまで物理的な開眼ではなく、物事を正確に見るってことです。そのまま見て問題ないことが大半ですが、時には疑うことも大事ですね。そこで騙されるようじゃ正確な眼を持てません」

高砂「なるほど、たかしゃごの目に誤りはにゃい」

ルイ「うぃー、シャギーの目は素晴らしい」

ゆい「ちょっと頭が」

高砂「おかしー? 元からだ」

ゆい「はは、お互い様です」

ルイ「二人の関係って羨ましいよ」

ゆい「そうですか? るーちゃんとマスターのほうが羨ましいですけど」

ルイ「はは、わたしとマスターじゃ普通すぎるよ」

ゆい「普通すぎる、ですか。るーちゃんはマスターのことどれだけ知ってます?」

ルイ「あまり深いことは知らないけど話してて気になることは特にないつもり」

ゆい「わたしたちもそれぐらいですね。何か話すのに障害となる壁がなく、いつまでも話していられる、あるいは話さずとも側にいるだけで安心していられる、このような関係が仲睦まじいというのです」

高砂「しゃちょーが何か打ち明けてもたかしゃごはいっしょーにふしゅ」

ゆい「そこ笑うのが高砂さんですね」

高砂「笑うと長生きするから」

ゆい「あんまり説得力ないですけど」

ルイ「シャギーみたいにいつも笑ってたいなぁ」

高砂「あれだ、笑っていると負のかんじょーを抱かにゃいんだよな、しゃちょー。だからたかしゃごは日頃から笑うよーにしてる。ぐへへ」

ゆい「あえてつっこみませんがそうですね、いつも笑ってるのが一番ですよ」

ルイ「ふふふ、そうだね」

高砂「しゃてと、しゃうな行ってくる」

ゆい「はーい」

ルイ「ゆい、そろそろ上がる?」

ゆい「高砂さんのサウナは長いからそれが賢明ですね」

ルイ「シャギーもシャギーなりに努力してるんだなぁ」






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