2018-02-08 23:59:02 更新

千棘 「小咲ちゃんどこだろ………あ!いたいた。小咲ちゃん、おはよー!」


小咲 「あ、千棘ちゃん。おはよー。」



6月上旬 千棘は日本に帰って来てから楽とばかり一緒にいたので、久々に休日を小咲と過ごす事にした。


千棘 「じゃあ今日は、予定通りケーキバイキングに行く?」


小咲 「うん、そうしよーよ。まずは一条君の所の組員さんがやってる、ウチの向かいのケーキ屋から………」



凡矢理商店街


千棘 「色々美味しかったわねー。」


小咲 「うん。私もパティシエを目指してるから、プロの人のは本当に参考になるんだ。」


千棘 「そっかぁ、でも小咲ちゃんなら美味しいお菓子すぐに作れそーだけどな」


小咲 「ありがとう、千棘ちゃん。」


千棘 「私にも試作品とか食べさせてね………って、アレ?」


千棘はコンビニの前の人影に目をやった


千棘 「アレって………」


そこには平たいタバコの箱を買って店から出てきた、黒髪の少年がいた


千棘 「おーい、蒼也くん!」


蒼也 「え?あ!お嬢!」


そこにいたのは鶫と同じビーハイブのヒットマンで星神の、双神 蒼也だった


蒼也 「お久しぶりです。お嬢。」


千棘 「ホントに久しぶりだねー。2ヶ月前にあの青いウミヘビから助けられたっきりだったね!」


蒼也 「あの後、俺は楽の訓練だけを受け持って、お嬢の護衛の方は誠士朗に任せていましたからね。」


小咲 「千棘ちゃん、この人って千棘ちゃんが戻って来た日につぐみちゃんと一緒にいた人だよね?」


千棘 「うん。つぐみと一緒に楽の星神の訓練を担当してくれてる、ビーハイブの双神 蒼也くんだよ。」


蒼也 「あ!お嬢、一般の人に星神の話をしては………」


千棘 「いいのよ蒼也くん、小咲ちゃんはもう見えてるから。」


蒼也 「え?」


千棘は琵琶湖での一部始終を蒼也に話した。


蒼也 「なるほど………しかし驚きましたね。確かに星神の素養はギャングの世界だけとは限りませんが、この様な温和そうなお嬢の友人が………」


シュボッ スハーー


蒼也はタバコを吸いながら答えた。

細長いタバコで、黒と紫の箱にメビウスと書いてある


千棘 「うん、私もびっくりしちゃったー。

そういえば蒼也くん、今日は何でこんな所に?」


蒼也 「今日は楽とお嬢とのデートがないから訓練をする事になり、行く前に買出しを済ませていたのですよ。」


千棘 「そっかぁ、楽をよろしくね。

蒼也くん!」


蒼也 「はい………………しかし、お嬢。」


千棘 「?」


蒼也 「楽がいない時に、一度お嬢だけに聞いてみたかった事があるんですが、いいですか?」


千棘 「なに?」


蒼也 「お嬢は楽のどこが好きになられたんですか?」


千棘・小咲 ブゥーーー


千棘 「ど…どことおっしゃると?」


蒼也 「はい。この2ヶ月、楽に星神の基礎を教えて来ましたが、どににもあいつは「ハンカタギ」の様に見えるんですよ。」


千棘 「ハンカタギ?」


蒼也 「ええ、ヤクザやギャングの血筋に生まれたのに、一般人として温和に生きる事を望む人々の事です。

我々の世界ではそういう業界用語で呼ばれています。」


千棘 「そんな業界用語があるんだ………」


蒼也 「あいつは俺や誠士朗の星神や戦闘の厳しい訓練にも耐えてよく頑張っています。

しかし、俺には大分無理をしているように見えます。」


千棘 「あいつ、そんなに頑張ってるの?」


蒼也 「はい。でもあいつは元々は公務員になって真っ当に生きるのが目標だと言っていました。

しかし、お嬢と出会って「新しい世界に2人で行きたい」から俺も強くなりたいと。」


千棘 「あいつ、そんな事を………」


蒼也 「でも俺からしたら、それが大分無理しているように見えます。」


千棘 「え?」


蒼也 「楽は今、お嬢の為に大分努力をしています。

でも、俺がクロード様や誠士朗から聞いた話では、あいつは子供の頃約束した女の子がお嬢を含めて何人かいて、その中からお嬢を選んだそうじゃないですか。」


千棘 「そ…そんな事まで?」


蒼也 「俺にはそこが分かりません。

他の人を選んでいたら日常で生きる道のままだった筈………

しかも、ずっと好きだった初恋の女の子の告白まで断ってお嬢を選んだそうじゃないですか。

好きな女の為に努力するのは素晴らしい事だとは思いますが………

その子を選んでいたら、裏の世界に来なくても済んだでしょうに………」


千棘 (あいつ、そんなに私の事………)


千棘 「…………………………………」


小咲 「で、でも……一条君はそれを踏まえた上で千棘ちゃんを選んだんだと思う。」


千棘 「え?」


蒼也 「!」


小咲 「きっと一条君は、千棘ちゃんとニセモノの恋人になった時から、周りが色々変わって、千棘ちゃんがどんどん大事になって、その上で私より千棘ちゃんを選んだんだと思うよ。

だから、一条君はいまに後悔なんてしてないと思います。」


蒼也 「……………あんた、小野寺 小咲だね?

楽の初恋の女の子で、お嬢と高校で親友になった。」


小咲 「えっ?あ…はい。」


蒼也 「あんたは今のままでいいのか?

ずっと両思いだった楽を取られて、俺たちの危ない裏の世界に来させられて、それでいてお嬢と今まで通りでいられるのか?」


千棘 「ちょ…蒼也くん!」


小咲 「………………………」


小咲は暫く考え込んでしまった


小咲 「………今は、別に納得してるんだよ。」


蒼也 「え?」


千棘 「!」


小咲 「確かに私は一条君がずっと好きだったし、今でも大好きだけど、千棘ちゃんに2回も譲って貰わなくて良かったと思ってるんだ。

同じ人を好きになる以上、誰も傷つかないで済むなんて無理だろうけど、一緒に気づついた結果が今だから、私は良いんだ。」


千棘 「………こ…小咲ちゃん!」


蒼也 「………そっか、お嬢もあんたもそこまで納得してるなら、もう俺が口を出す話じゃないね。

分かった。仕事だから楽を立派な星神に鍛えるよ。

ただし俺の訓練もマフィアの世界も優しくないから、徹底的にやるよ。」


小咲 「あ…はい。一条君をよろしくお願いします!」


千棘 「頼むわよ、あのもやしを立派にしてあげてね!」


蒼也 「はい、お嬢。」



今日まで殆ど会話をしなかった3人がお互いの心の内を話す内、背後には荒ぶる影が迫っていた。


第34話 完


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください