2020-03-14 17:44:09 更新

概要

オリジナルss 本来の目的のため、次なる場所を目指す。


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今俺たちはバルロッサの西側にある平原に移動していた。その理由は


ルベルト『僕と一緒に依頼を受けようか』


そんなことを言われ、何故だかルベルトと同行していた。意図は理解している。


俺が実力者として見ているがその目で間近に見てみたい、その上で銅階級から一気に上げる…言わば建前がほしいんだろう。


あのギルド長が直々に判断を下した。それならば不正をして階級を上げたなんてデマは少なくともなくなり不満も最小限に抑えられる。といったところか。


まぁこのギルド長を見る限り単純に面白そうだからって線も否定できないけど…


ルベルト「いやーははは、そんなに見つめられると照れちゃうなー」


グレン「……」


ルベルト「そんな睨まないでよ。ちゃんと達成すれば報酬金も出すからさ、ね?」


グレン「別に睨んでない、呆れてるだけだ」


ルベルト「辛辣だなー君は。さて依頼内容を再確認しようか」


今回受けた依頼…いや、試験と言うべきだろうか。内容は下級危獣種に分類される一角ウサギの角の入手だ。一角ウサギは頭部に鋭い角が生えており通常のウサギよりもひと回り大きいのが特徴だ。


その角は特殊な成分が含まれており薬に使われることも多々あるんだと…よく知らないけど。


ようは一角ウサギの角を入手さえすればいいので無意味に殺す必要ないだろう。角をへし折られるウサギの身を考えるとそれはそれで残酷なのだが。


ルベルト「ほらいたよ、あれが一角ウサギだ」


数時間の平原探索の末、一角ウサギが姿を現した。幸いこちらにはまだ気付いていないみたいだ。


グレン「よし…!」


自身に身体強化をかけ一気に一角ウサギに詰め寄り、腰にある剣を抜いた。


「!!?」


すぐに一角ウサギはこちらに気づく。一角ウサギは耳が良く警戒心も強いので逃げられることもあるみたいだが…


グレン「はぁっ!」


「!?」


一角ウサギが逃げるよりも早く、その角を剣で切り落とした。


「〜〜〜!!!」


角を切られて身の危険を感じたのか、反撃してくることなく一目散に逃げ出していった。


グレン「これでよし」


ルベルト「はぁ〜、すごいねー」


今の動きをみてそんな感想をルベルトが零す。


ルベルト「今のは身体強化かい?でも魔装具は着けてないみたいだけど…」


グレン「まぁ、普通に魔法だしな」


ルベルト「身体強化の魔法…君はもしかして付加術士<エンチャンター>なのかい?」


グレン「うーんそうだな…近接もできる付加術士、かな」


ルベルト「それはすごい。付加術は補助がメインの魔法…後衛が基本なんだけど君は、なんていうか…変わってるね」


グレン「よく言われるよ」


一時は物理魔法使なんて言われてた。せめて魔法剣士とかにしてほしかったな。


グレン「で?この角でいいんだよな?」


切り落とした角を拾い上げルベルトに見せる。


ルベルト「そうだね、これで試験は終わりだよ」


グレン「こんなんでいいのか?」


ルベルト「平気平気!今ので君が強いことは十分分かったしね。下級危獣種とはいえ駆け出し程度の冒険者じゃまず一角ウサギにさえ勝てない。もしくは簡単に逃げられてしまうし」


仮にも危獣種って名があるしな、普通ならあの角に苦戦してもおかしくないんだろう。


ルベルト「うん合格!銅階級から鋼階級に上げちゃうね!僕って優しい!」


会った時から思ったんだがルベルトは自己誇張が激しいな。まぁこれで本当に強いんだから何も言えないんだけど。


とはいえこれで下級危獣種は狩れるようになったから金稼ぎはだいぶ楽になるかもしれない。


ナル「良かったのマスター!」


グレン「おう」


ルベルト「…ところで思ったんだけど、その子はなんだい?」


ルベルトが突拍子もなく聞いてきた。

この子…ナルのことだろうか?


グレン「あー、相棒みたいなもんだよ」


ナル「愛棒なのだ!」


なんか今ナルの相棒の言葉の綴りが違かったような気がしたんだが気のせいだろうか。


ルベルト「相棒…とてもその子が戦えるようには見えないけどねー」


グレン「それは…」


たしかにそうか。ナル自体に戦闘能力はないし、戦いの場に出ると言うのなら戦えない者を側に置く必要がない。端的に言えば邪魔になるからな。


冒険者として、そこは疑問だろうな。


どう説明したものか…実は剣になります!なんて言うわけにもいかないし…そもそもナルが神剣ってことはあまり知られたくはない。


ルベルト「…まぁいいけどね。僕には関係ないし」


グレン「え?」


ルベルト「なにか理由があるんだろう?ならいいさ、僕に君たちの事情に口を挟む権利はないからね、それに…」


グレン「ん?」


ルベルト「いや、なんでもないさ」


物わかりがいいのか端に本当に興味がないのか、ルベルトはこれ以上は追求してこなかった。


ルベルト「さて帰ろうか!ギルドに戻ったら鋼階級のドッグタグにしてあげるよ!」


グレン「よろしく頼む」


さっきなにか言いかけてた気がするけど…

まぁあまり深く考えなくてもいいか。


若干の疑問を残しつつも一行は昇級試験を無事終え、ギルドへ戻っていった。


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バルロッサのギルドに戻り、無事鋼階級に昇級した俺は翌朝ギルド保有の資料館で、本来の目的である穢れのない泉の場所の情報を探っていた。が…


グレン「見つからない…」


このギルドにある東大陸の見取り地図を貸してもらっていたのだが、泉らしき場所がいくら探しても見つからなかった。


大陸自体は200年前とはあまり変わってはいないが人口と共に町が増えたためか自分の知っている記憶と違うところが多々ある。


以前泉があった場所も埋め立てられ町になっていたり、町と町を繋げるために道を作る際に泉が無くなっていたり…そんなんばっかりだ。


神力を手に入れるだけなら聖水…もしくは聖堂でもいいんだが…聖水は普通の水に神力が集まる場所に長く留めることでやっと神力の篭った聖水が出来上がるので本数に限りがある。


ナルの神力操作が上手くいっていない現状無駄遣いだけはしたくない。

次に聖堂だが…ご存知の通りあの毒男に壊されてあの男のせいで穢れた地になってしまったため神力の補給は無理になった。


というかそもそもこの世界に来てから神力の存在が気薄な気がする。200年前ならもっと身近に神力を感じてたはずなのだが今は空っきしだ。


ナルの神核が上手く機能しないのもそれが原因なのかもしれない。


それに俺自身の神力も心なしかこの世界に来た時とあまり変わらない気がする。今は使う機会はないがもしものことを考えると…少し不安だ。


ルベルト「なにやら苦戦しているようだね」


グレン「ルベルト…まだいたのか」


昨日ぶりにルベルトが顔を出してきた。俺の言ったことが不服だったのか少しムスッとした表情になる。


ルベルト「酷いな君はー。久しぶりに帰ってきたんだから僕だって休むさ!」


グレン「そうか」


ルベルト「興味なさげだね!?」


グレン「興味ないからな」


ルベルト「僕ギルド長だよ…?金階級だよ…?もっと僕に興味持ってよ…」


グレン「うーん…」


ルベルト「少しは聞いてよ僕の話!?」


俺より年上なはずなのに構ってがりな人だな…


ルベルト「もう…で、なにを探しているんだい?」


グレン「あー、どっかに泉とかないかなーって」


ルベルト「泉…」


グレン「そうそう…ってどうかしたか?」


ルベルト「え?いやいや、なんでもないよ。泉だね、そうだねー…」


ん…?一瞬表情が変わった気がしたけど…なにか知っているのか?


ルベルト「うーん、僕にもわからないなー」


そんなことはなさそうだった。


グレン「そうか…じゃあここ。ここら辺ってどうなってる?」


俺が指さしたのは東大陸の南東、山を越えた先の密林だった。

200年経って色々開拓されてはいるがここだけは自分の見覚えのある地形そのものだったので気になっていたのだ。


ルベルト「そこは危険区域だね」


グレン「危険区域?」


ルベルト「そう。強力な危獣種がいるってことでね、長年開拓が進まない地域なんだよ。だから一定階級のない冒険者はここを通れなくなっている」


この辺りは割りかし強い危獣種がいた記憶がある…でも確かここの密林って…


ルベルト「ふむ、開拓が進んでいないからもしかしたら泉もあるかもしれないね。ここに行くつもりかい?」


グレン「そうだな…」


ここら辺はあまり行った記憶がないので泉がある確証はないが…現状ではここ以外に手掛かりはないか。

別大陸に行く、という手段もあるが…ご存知の通りそこまでの金はない。


グレン「うん、決めた。ここに行ってみるよ」


ルベルト「そうかい、でもね」


グレン「なんだよ?」


行くと決めた矢先に話の腰を折られた。ルベルトは意地悪く話を進める。


ルベルト「ここの区域は銀階級以上じゃないといけないんだよ」


グレン「はぁ?」


なにやらめんどくさい決まりが出てきたな…そんなことこっちは知ったこっちゃないんだけど。


ルベルト「でもね、君は特別に僕が許可するよ!」


グレン「え?」


彼は今日一のドヤ顔でそう言った。


ルベルト「君の実力は僕が1番知っているからね!ほんと特別だよ!あー僕ってすごく優しいね、これは僕に惚れちゃったかな!まぁそれも仕方ないよね」


グレン「うっざ…あーいや、助かるよ」


ルベルト「いや今の聞こえてたからね!?いくら僕だって傷つくんだからね!?」


ルベルトの心情など心底どうでもいいがこういう時に権力のある味方は助かる。


そうと決まれば早速この地に赴いてみるとするか。


地図を元あった棚にしまい、旅出の準備をする。


ルベルト「もう行くのかい?」


グレン「思い立ったらすぐ行動したい性分だからな、色々ありがとなルベルト」


ルベルト「いやいや、僕こそ面白いものが見れてよかったよ」


グレン「…?そうか」


面白いものってなんだよ。そんな面白いことあったか?


ナル「む…?もう行くのかの」


グレン「ああ、その前に飯食べてくか」


ナル「わーいご飯なのだー!」


ソファーで退屈そうにしてたナルが一変、ご飯の話をしただけで舞い上がってしまった。もはやいつも通りである。


荷物をまとめて、最後にルベルトに挨拶をする。


グレン「じゃ、世話になったよ。また会おうな」


ナル「じゃーのー」


ルベルト「うん、くれぐれも気をつけてね」


ギルドの資料館を後にし、次の目的地である南東の密林を目指し歩を進めた。


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グレンとナルが出て行ったあと、彼…ルベルトはしばらく立ち尽くしていた。


ルベルト「本当に面白い子だったなー」


彼はそう呟く。


ルベルト「次に会えるのが楽しみだよ、レン」


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冒険者ギルドを出た後最初来たときに訪れた食事処でご飯を食べて、目的地へ行くための馬車を手配をするために騎士団の支部を訪ねていた。


グレン「ここか?」


ギルド施設に比べてしまうと非常に小規模に見えるがそれでも数百人は余裕で入れるであろう建物があった。ここがバルロッサの騎士団施設らしい。


ここにきた理由は言った通り、また馬車を借りるためだ。


カイゼルから自由に使ってくれて構わないと言われているのだが、一応ここに話を通しておいた方がいいと思ったのだ。


騎士「おや?レン様、どうされたのですか?」


グレン「あんたは…あの時送ってくれた人か」


バルロッサに来る途中で馬車を引いてくれた騎士だった。見回りの途中だろうか。


騎士「お疲れ様です、もしかしてリーネにお帰りで?」


グレン「いや、ちょっと行きたいところがあって…馬車を借りたいなって」


騎士「そういうことでしたか、自由に使ってくれて構いませんよ」


グレン「いやーそれが…俺馬車引いたことなくて」


騎士「なるほど…では私が送りますよ」


グレン「ごめん、助かるよ」


騎士「いえいえ、むしろ光栄です」


なんだか思うんだが会う騎士たちほとんどが割と慕ってくれてるのはなんなんだ?カイゼルがなんか言ったのかな…


騎士「どちらに行かれるのですか?」


グレン「あーここなんだけど…」


簡易地図を開き目的地を指差す。


騎士「ここは…」


グレン「危険区域だっけ?ここまでは無理そうか?」


騎士「いえそんなことは。ですがここは騎士団の管轄外ですので送れるとしたら…山の前までになりますね」


グレン「十分だよ、元々山は自分の足で登るつもりだったんだ」


ナル「えー疲れるのは嫌なのだ…」


グレン「限界だったらおんぶしてやるから」


ナル「限界まで歩かせるつもりなのだ!?」


グレン「当たり前だ、楽しようとすんな」


ナル「鬼畜!やっぱりマスターは鬼畜なのだ!」


失敬な、これでも譲歩してるんだが。


騎士「出発はどうしますか?」


グレン「今から行けるか?」


騎士「わかりました、少々お待ち下さい。すぐに準備してきます」


騎士は一礼して、支部の方へ戻っていった。俺とナルのふざけた会話にも動じないとは、真面目だなぁ。



ナル「うぅ…」


余程山登りが嫌なのか未だに唸っている。仕方がないな…


グレン「目的を果たせたら肉でもなんでも食べていいから、それまで我慢してくれ」


ナル「なぬ!?じゃあ我慢するのだ!」


やっぱりチョロいよこの神様。まぁご飯くらいで機嫌良くなるならわかりやすくていいけどさ。


さて、危険区域と言われる場所…俺の記憶が正しければここにはあの"種族"がいるはずだ。


とっくに滅んでいるのかまだ生存しているのかはわからないが、もしかしたら神力について知っているかもしれない。


騎士「お待たせしました、では参りましょう」


グレン「よし、行こうか」


ナル「うむ!」


一行は馬車に乗り込み、危険区域と呼ばれる南東の密林を目指し始めた。


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南東の密林…そこにはとある種族が住んでいた。


「またか…」


「これで何人目だ…」


なにやら深刻そうに話し込んでいるみたいだ。


「このままでは我らの存続が怪しい、早急に対応せねば」


「だがどうやって?」


「それは…」


具体的な案が出ずに一同は黙り込む。その沈黙を突き破るように、1人の少女が口にした。


「ここはロアに任せるといいです」


「おおロアよ、本当にいけるのか?」


ロア「大丈夫なのです。ロアに勝てるのはいないのです」


ロアと呼ばれる少女は自信満々にそう言った。


そして、身の丈以上はある大槌を振り上げ、高々に掲げる。


ロア「ロアに勝てるのは…勇者様だけなのです」


後書き

前に書いてたものをss風に直して書きました。ほぼ思いつきです、ご了承ください


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