2021-12-12 07:10:04 更新

概要

注意事項

エロ本よ

ちょっとエロゲーの主人公っぽいのをやってみたかった

この物語は18禁です
この物語はフィクションです
実在の氏名、団体、あとなんやかんやとは一切合切関係がありません
また、すべてのエロい人達の為に理想と現実の区別は付けてくださいね
まぁ、現実なんてしょーもないものだけど一応ね




霧深い森の中


深と静まり返ったその奥に響くのは、竜の咆哮だった


木霊し、反響してまでも、聞き間違いようのない声量は、それだけで周囲の樹木を押し潰していく

完全無欠の暴力。およそ人の届かない渦中の只中に、飛び込んだのは小柄な女の子だった


鋼をも凌ぐ龍鱗に叩きつけられた小さな拳


子供の喧嘩のような身振のまま

場違いを纏った女の子の握り拳が、強かに龍鱗を打ち付けた


咆哮に苦悶の色が交じる


砕かれた龍鱗にめり込んだ女の子の拳

返り血に染まる体も気に留めず、龍鱗を引きちぎるように拳を引き抜くと

続けざまに、2発、3発と、次々と拳を打ち込んでいく


まるで子供が駄々をこねるよう


けれども、その一つ一つが龍鱗を砕いていた

振り落とされる鋭い爪の隙間をくぐり抜け、振り払われる大樹のような尻尾をも飛び越えて

荒れ狂う竜の暴力の中で、踊る様に暴れる女の子


やがて、業を煮やした竜の喉元が赤く膨れ上がる


不揃いに並んだ牙の隙間から、ちろりと赤黒い炎が舌を伸ばすと

大きく開いた口の中に、周囲の空気が一気に飲み込まれていく


「ミリアちゃんっ!」


後ろから飛んできた声に、首根っこを掴まれて飛び退る女の子

同時に、飛んできた強大な岩塊が、開いた竜の口に叩きつけられ

押しつぶされるかのように見えた


一瞬の拮抗あと、期待した光景が容易く竜の顎に砕かれ

弾き飛ばされた岩の礫が、周囲を破壊していく様は、さながら爆弾のようであった



少年の手には一つの剣


光り輝く朱光の剣を握り締め駆け出した

もはや爆弾と化した岩の礫をくぐり抜け、切り払い、飛び乗った挙げ句に足場に変えて

瞬く間に竜との距離を詰めていく


憤怒に開く竜の瞳に、確かな視線を叩き返し、少年は高く飛び上がった


眼下には巨大な竜の体

開いた口の奥は仄暗く、マグマの様に赤黒い炎が渦を巻く


後はもう落ちるだけ


朱光に輝く剣を振りかざし、迫りくる炎の渦に叩きつけた


一瞬の静寂


バカみたいな力のぶつかり合いに訪れた静寂は、まるで焼け付いた写真の様だった

時間さえも止まったように、誰もがその光景を目に焼き付けて

そして、誰もが少年の勝利を確信していた


朱光の輝きが炎を掻き消し、竜の体を飲み込んでいく


少年が、地に足をつけた向こう側

体の半分を焼失させた竜の巨体が大地へと還っていった





「はぁ、はぁ、ふぅ…」


息を吸って、息を吐く


大きく吸って、大きく吐き出す


残心…


格好をつけるならそんな所だろうか

実際の意味は分からないでも

逆だった気が落ち着いていく過程、なんとなくでもそんな言葉がよく似合う気がする


立ち上がり、倒れ伏した竜の体を見下ろす


こんなもの、街を襲えばそれ一つ、国を襲えばその半分は軽く持っていくだろう怪物が

これで何体目だ? しかも奥へ進めば進むほど、当然のようにその強さは増していく

分かっていた事とはいえ、この森の異様を見せつけられると気が滅入る


この奥に何が待っているもんか


確かに思うことは、きっとソイツは確かな怪物で

その怪物も、この森も、俺達がどうにかしないと、どうにもならなくなるだろうという確信


正義感か? 義務感か?


悪戯に手に入ったこの力で俺に何が出来るのか?


それは考えないでもないけれど


とりあえずと、宝剣を鞘に収めて両手を空ける

在り来りな悩みを考えるよりも、まずは元気の良い子の相手が先だった


途端、たたっと聞こえてくる足音


「おにいちゃ~ん♪」と声を弾ませて、女の子が駆け寄ってくる

猫のような耳を揺らし、その後ろでは犬のように尻尾をぱたつかせながら

喜色満面の笑顔は褒められることを疑わず、飛び込んだ先で俺が受け止めてくれると信じ切っていた


「うぐぅっ」


構えていても流石にキツイ

俺の胸の下あたりに顔が埋まる程の身長差があってでも

さっきまで竜と殴り合っていた張本人だ、その気が無いとはいえ、有り余った力加減は素直に強い


「ミリアね? 頑張ったんだよ? 偉いでしょ? ね?ね?」

「あ、ああ、そうだな。ミリアは偉い、偉いしかわいい」

「えへへへ♪」


それでも少年には意地があった

女の子に抱きつかれて音を上げるなんてしたくないし

純粋に俺のためにと頑張ってくれた女の子を、甘やかすくらいはしてやりたい


頭を撫でて、頬を擦り、顎の下くすぐって


ミリアに求められるまま甘やかし

くりくりとした瞳が微睡んでくると、ようやく満足したのか きゅぅと力抜いて体を預けてくる


「お疲れさまでした、ご主人さま」


小さな笑みと、小さな目礼


音もなく俺の隣にたったのは、薄緑の髪をしたメイド服の少女だった


ミリアとのスキンシップの合間を縫って掛けられた声は

急かすでもなく、すっかり大人しくなったミリアを引き取っていく


「トーちゃんも褒めてくれるの?」

「ええ、もちろん。よく頑張りました、ミリア」

「えへへ♪」


力なく倒れる猫の耳、だらりと弛緩した尻尾をそよ風のように揺らしながら

トーカに抱きついたミリアは、俺の時とはまた別のリラックスの仕方を覚えていた


「トーカもありがとう。おかげで助かったよ」

「いえ」


俺の言葉に、トーカが小さく頭を下げる


まるでミリアとは正反対の反応ではあったが

遠慮と謙遜を建前にして、傾いたままの頭に手を乗せると、トーカの口から小さく声が漏れた


色づいた頬


それを誤魔化すように吐息を払い、顔をあげたトーカの表情は悔しさに揺れていた


「ですが、とっさの事とはいえ…」


岩の礫が起こした惨状が広がっている

竜のブレスを防ぐためとはいえ、反射的に得意な属性の魔法に頼ったのは悪手ではあったんだろう


「まあ、下手な魔法で弾かれるよりは良かったんじゃないか?」

「結果論ですよ、それは…」


真面目なトーカには珍しく、少し拗ねた声音が可愛らしい

そんな彼女を慰めようと、もう一度頭に伸ばした手は、そそくさと避けられてしまった


「やれやれ…」


肩をすくめ、首を振る


なんとなくでも板についてしまった行為だが、気持ちを切り替える分には丁度いい


「アイリ、君はぶ、じ…アイリっ!?」


振り返ったそこには、銀髪の少女が伏していた

座っているだけでも苦しそうに、岩に体を預けたまま、小さな肩を上下させていた


「いえ、平気ですよシノブ様。怪我をした訳では、ただ少し…」


駆け寄った俺を制する手は弱々しい

その白い手を取り 細い体を抱き起こすと、触れた肌の冷たさ以上に

荒い吐息を繰り返しながらも、額からは玉の汗を流していた


「この森の、霧のせいでしょうね…皆様に結界をお張りしたまでは良かったのですが」


それも、長くは続かないようだった


この森に、この霧に、体力や魔力が持っていかれている

それを防ぐための結界だったが、今度はそれが削られていく


何かの腹の中を進んでいく不快感


じわりじわりと、消化されるような不安を覚えていても進むしかなかったが


それも限界か


アイリにこれ以上の無理をさせられるわけもなく

かといって、連戦に続いて この霧に力を取られ続けたていたら、勝てるものも勝てなくなってしまう

「まだ平気です」と、アイリは言うが、帰り道も考えると「まだ」といえるうちに引き返すべきだった


「一旦戻ろう。それから、この霧をどうにかする方法を」

「シノブ様っ! 私は…まだ」

「やっぱり、言うと思った。頑張り屋なのは君の良い所だけど」


見透かされていたのが気まずいのか「はい」と、アイリがただ小さく頷いた


「素直なのも君の良いところだ」

「もうっ、そういうのは良いですから」


照れ隠しをする彼女に微笑んで、心配そうに覗き込んでいた二人に振り返ると


「帰ろう」


その言葉に誰もが頷いて、アイリの手を取り立ち上がった時だった



ぐらり…


視界が揺れる


体が重い、息が苦しい


唐突に密度を増す霧が重い

アイリの張ってくれた結界を通り越し、その上からでも力を吸い取られていく

まるで、水中に放り込まれたような感覚を前に

朦朧とした意識は、倒れていく体を見ていることしか出来なかった


「や、やめて…こないで、来ないでぇぇぇぇっ!!」

「ミリアちゃんっ!?」


向こうで、ミリアとトーカの悲鳴が聞こえてくる


助けなければ、助けなければ


自身を埋め尽くす感情に急かされて、なんとか体に力を取り戻していく

溺れているような苦しさの中、必死に藻掻いて足掻いて、剣を支えになんとか立ち上がることに成功する


女だ


そこには、見知らぬ女性が佇んでいた

大人びた子供にも、幼さの残る大人のようにも見える その女性は、酷く美しかった


墨をかけ流したかのような長い髪と、血で染まった様に赤い着物

覗く手足はしなやかに、弧を描いた薄い唇が、蠱惑的に微笑みかけてくる


視線が重なる


赤黒い瞳の奥の、更に向こうへ吸い込まれていく感覚

彼女の中へ、何処までも奥へ、落ちていく、落ちていく


見惚れていた、目が離せない

今起きている何もかもが別世界の事のように他人事で


「シノブ様っ!? シノブ様っ!」

「っ!?」


アイリの呼びかけに背中を叩かれた俺は、既のところで目を覚ましていた

あと少し、もう少しでも あの瞳に飲まれていたらと、覚えのない恐怖に身を震わせる


「ミリアちゃんと トーカがっ!!」

「分かってる、二人を助けようっ!」

「はいっ!」


アイリの声に勇気づけられて、俺は力を取り戻す

正直、体は重いし、意識にも未だモヤが掛かっているような気さえするが

彼女と二人でなら、やれる、勝てると、今までもそうだった


このくらいの窮地


朱光に輝く宝剣の光が頼もしい

この熱いまでの輝きが、俺達に勝利をもたらしてくれると信じていた





眩いばっかりの光が鬱陶しい


目を焼くようなといえば格好も付くが、正直にただただ眩しいだけだった

宝剣を構えた少年が、雄叫びを上げて斬りかかってくる

私の霧の中でよく動けたものだと関心こそすれ、それ以上の興味は後ろの少女に移っていた


銀髪の、雪のように白い肌を持つ少女


作り物めいたその造形に、僅かに見えるあどけなさは

美しいばっかりだった少女の面影に、温かさと親しみを与えてくれている


放つ魔力は神のものか、それも間の子程度のものではあったが


清廉潔白みたいな顔をして、ばっちり人を孕ませるんだから

神というのは名乗ったもの勝ちなんだろう

こうして、名乗り遅れた私達は悪魔扱いなんだから

声がデカイ奴が得をするというのは、どこの世界もそう変わらないものか


単純な嘲笑、退屈なため息と諦観


しかしそれもまあ、目の前に飛び込んできたオモチャがあればこそ 紛れるというもの


「ぐ、がっ、な…」


この瞬間だけが堪らない


私に勝てると思っていた表情が、一瞬で凍りつくこの瞬間が

感情が、生命が、他人の温もりの全てを略奪するこの一瞬


「くふっ、ふふふふふふ。…ははっ、あはははははははっ♪」


楽しい、楽しい、楽しいったらない


少年が私の足元に崩れ落ちる

土下座するようにも、足をなめるようにも蹲り、うめき声を上げている


「シノブ様っ!?」


声を上げ、怒りと憎しみと、悲嘆に揺れながらも

まだ諦めない胆力こそ称賛にも値するが、今その価値を定められるのは私だけというのは彼女の不幸


切っ先が、少女の動きを止めていた


鈍くて、昏くて、赤黒い


頼もしかったはずの宝剣は、まるで少女を呪うかのように、その体を照らし出す


「っ!? そ、その剣は、貴女がもっていいものでは…」

「あら? 報酬は勝者の特権でしょう? このくらい良いじゃない?」

「私達はまだ負けてませんっ!!」

「ではどうぞ?」

「へ?」

「反撃を許すと言っているの。なんなりとしてみなさいな」


そらした切っ先に少女が驚いたのも束の間

その視線は直ぐにも苦々しいものに変わっていた


「卑怯者…」


落ちた少女の視線の先には少年の姿

まだ生きてはいるものの、まだ生かしてはいるだけで

少女にとってはきっと、矛先を変えられたに過ぎないのだろう


「こんな死にかけの少年ひとり、捨て置けないで何をしに来たの?」

「貴女にっ、貴女なんかにシノブ様の何が分かるっていうのっ!」

「知らないし興味もない。思い出話もいいけれど、時間が無いのは貴女たちの方でなくて?」

「くっ、それは…」


こうして話している間にも、少女の纏う神気は目減りしていっていた

私の森を進むために、気遣いか、優しさか、パーティ全員分の消費をまるで生贄人形のよう背負い込んで

額に玉の汗を浮かべながら、少女が唇を噛みしめる

見ているこっちが痛くなるほど歯を立て、手の平に巻き込まれたスカートが千切れてしまいそう


健気で、いじらしくって、哀れで可愛い少女の姿

涙で声を濡らしながら、嗚咽と慟哭を飲み込む少女に一つ、促してみれば


「たす、けて、もう許して。 おねがい、します」


頬から涙が零れ落ちていく

こぼれた涙が雫になって、私の霧の中に溶けていく


その瞬間、私は笑っていた、お腹を抱えるほどに笑えていた

暗い暗い欲望だ、醜いと罵られて然るべき感情を飲み込んで尚、私は愉悦に興じている


正しく悪魔なんだろう


そうと言うならそれでいい、そう望むのならそうであろう


「殺しに来たくせに、都合のいい事を言う」

「私のことは…好きにしてくれていいから…だから」


何度も何度も、それこそ泣きながら

悔し涙を堪えてまでも、敵に頭を下げる少女の姿は素直に美しいと思う


散々笑った、笑いすぎてお腹も膨れてきた頃合いだ

ならお返しに、少女の頼りない願いの一つも叶えてあげるのも優しさか


まるでガラス細工かのように、涙で濡れる少女の頬に私は手をのばす


触れた瞬間に、ビクッと震えた体が落ち着くまで

その柔らかい頬を撫で続け、顎に添えた指で顔を持ち上げると

少女の前に、一つ、私は指を立ててみせた


「選んで?」


ただ一つの問いを返して、私は少女の瞳を見つめ返した

命に貴賎はないと、いかにも人間たちが好みそうな言葉を盾にして


「貴女一人と、誰かの命。当然でしょう?」

「あ、あぁぁ。ぃゃ…わたし、そんなの」


少女が膝から崩れ落ちる

「ごめんなさい、ごめんなさい」と、幾度となくうわ言の様に繰り返しながら

彼女が紡いだのは、ただ一人の名前だった





「さて…」


首を回して振り返る


無力に崩れた少年と少女は後にして、先程崩して置いた残りの二人へと女は興味を移していた


新緑の髪と淡い肌

神秘的といえばそうだが、神々しさとはまた別の

森や花や湖や、そういった自然的な美しさを形にしたような少女が

世俗に塗れたメイド服を着込んでいるのは、なんともアンバランスではあったけど

それはそれ、まるで鉢植えに咲いた花のような美しさはある


そして、もう一人の女の子


私が視線を向けた途端に「ひっ…」と、小さな悲鳴が上がるほどに怯えきっていた

少女と言うにもまだ足りない、怯える姿は子猫のよう

赤毛に覆われた猫の耳は垂れ下がり、丸まった尻尾を抱えながらも

「ふー、ふーっ」と、頼りもない威嚇の声を上げ続けている


どれにしようか? どれからにしようか?


一時の逡巡はそう長くもかからずに、女は赤毛の女の子へと足を向けていた


「まってっ、まってください…」


少女の声に言われるままに、女は足を止めて振り返っていた

いつの間に目を覚ましたのか、翡翠の瞳が燃えるような怒りを孕んで睨みつけてくる


「なぁに? 命乞い?」

「だと、言ったら?」

「聞くだけは聞いてあげる」


クスクスと、からかうように笑う女の姿に、少女の視線が一層と険しくなるが

瞳を閉じ、その感情を振り払うように息を吐き出すと


「一人で一つ、貴女はそう言いましたね?」

「ああ、そういう」


さっきの子がそうした様に、自分も身代わりになりたいと、私の気まぐれに乗っかりたいと

それを受け入れるメリットは? まあ、あんまりない

どっちにしても全員を食い散らかすのは簡単だし、余計な手間を増やす理由は何処にもないのだけど


「ミリアは、その子は見逃して欲しい」

「悪魔に魂を売り渡すと?」

「…はい」


詰まるような空白の後、少女は小さく頷いた


視線が外れ、女の足がついと遠のいていくと、追いすがるようにミリアの小さな手が伸びてくる

今にも崩れそうなほどに指先を震わせながら

それでもその先にはもっと良くない事があると、本能的に感づいているようですらあった


「大丈夫ですよ、ミリア。トーカは強いんですから、ね?」


儚くも美しいトーカの笑顔

これまでも、きっとそうやって、ミリアを励ましたり慰めていたりしていたのだろう

これからも、きっとそういう日々が続いていっただろうに


ふふ、お可愛そうに、ご愁傷さま


「見捨てられた割に、随分と健気ね?」

「違います、ご主人さまが無事ならそれでいい。アイリも私も、ミリアちゃんだってそれは同じです」

「そんなもの? アレにその価値があるだなんて」


血を流し、倒れ伏した少年を目をやる

死んでもないし、致命傷でもないが、これ以上彼に何が出来るとも思えない


「貴女にはわからないでしょう」

「それはそう」


睨みつけてくるトーカに微笑みかけながら、その頬に手を伸ばす

視線を介し、心に触れて、その記憶の底を覗き込む


「さあ、名前を教えて? 自己紹介は大事でしょう?」

「…トーカ、と申します」


視線を外す、目を伏せる。忌々しげに唇を震わせて

それも諦観に落ち着くと、トーカは小さく自分の名前を口にした


「うそね。本当はジェーンっていうんでしょう? 花売りの、ジェーンちゃん」

「なんでっ、貴女が…。その名前で私を呼ばないでくださいっ!」

「良いけれど、良いの? ご主人さまにもらった大切な名前、汚してしまうわよ?」

「それでも、わたしは。もう、ジェーンではありません」

「ふーん、それじゃあ遠慮なく…」


トーカの瞳を覗き込む

翡翠の影に映る私の姿。そして、その奥にまた見えるトーカの姿

まるで合わせ鏡のように連なって、私はトーカの中へと、更に奥へと入り込んでいく


「なっ、くっ…はいって、こないで」


視線をそらそうとも出来ず、瞳を伏せようとも敵わない

まるで金縛りにあったかのように、トーカは私の瞳を見つめたまま、震える声だけが抵抗を続けていた


深く、奥に、もっと向こうへ


トーカの記憶も知識も経験も、彼女につながる全てを盗み見ながら

私の指先はそっとトーカの魂に触れていた


「ひっ」


無意識の悲鳴、反射的な抵抗にトーカの体が竦み上がる

魂に触れられる恐怖、本能的な忌避感、そして死へとつながる欲望は彼女の感覚を鋭敏にしていった


「恐ろしいでしょう? 魂に触れられるって、恐ろしいほどに気持ちがいいでしょう?」


淡い肌に朱が差して、碧い瞳に涙が浮かぶ

知らないはずのない感情、知りたくもなかった感覚は、たしかにトーカの中に根ざしている

そしてそれは、嫌悪するものであると同時に、幸福だった記憶とも繋がっていた


「ご主人様のモノはどうだった? 気持ち悪いだけの筈のセックスで、よがりまくったのでしょう?」

「くぅぅっ、あなたが彼の、ことを…。みないで、私の中を汚さないで…」

「ふふふふっ。この程度で、何を。ほら、口を開けて?」

「な、やっ!? んんぅぅっ」


憎まれ口をたたき続けるトーカの唇を塞いでいく

瑞々しい彼女の唇が、私の唇に押しつぶされて、吸われて

啄むだけの優しいキスを繰り返しながら、その唇が開いた隙きを見計らって、そっと舌を差し込んでいった


その唾液が甘く感じるのは興奮によるものか

それとも、トーカとのつながりが思ったよりも甘く感じているせいか


伸ばした舌先に感じるトーカの唾液は、花の蜜のような心地だった

それを独り占めしたがるように、彼女の舌が私のもの追い出そうと躍起になるが

そんな程度の児戯は愛らしいばっかりで、直ぐに私の舌が彼女の舌を絡め取っていった


流し込む、流し込む


ピッタリと重なった唇に、動きを封じられたトーカの舌

無防備に開かれた口の中に、私は私の唾液を注ぎ込んでいく


1つ…2つ…


時間が立つほどに、トーカの口の中に溜まっていく唾液

混ざり合い、絡み合い、抵抗する舌の動きに、クチュクチュといやらしい水音が混ざりだす


「あっ、くっ、けほっ、ぁはっ、はぁはぁっ…うぅぅっ、んく」


ゴクリとトーカの小さな喉がなっていた

唾液が溢れ、喉を塞がれ、息苦しさに耐えかねた彼女は咳き込んで

飛び散った唾液が口の端から零れ、飲み込んだそれは彼女の喉を通って腹の中へと落ちていった


ぺっ…


口の中に残った唾液を吐き捨てて、トーカは口元を拭っている

その肌に羞恥の色は隠せないまでも、その表情は嫌悪に歪んで私を睨みつけていた


「ふふっ。おかしいわね? やっぱり彼とは違うもの?」

「あたりまえでしょう。誰が、貴女のなんか…」

「んふふふふっ。じゃあ、ゲームをしましょうか? 私が飽きるか、トーカが諦めるかの簡単なゲームよ?」


予想通りの怪訝な表情

しかし、眉根を寄せながらも、トーカは興味を消せないでいた


「私が、勝ったら?」


それは単純な希望

このまま終わるくらいなら、いくら不利でも勝ち目が欲しい


「もちろん、ミリアちゃんを連れてこの森を出ると良いわ。私は追いかけない、約束をしましょう?」


無言は躊躇いか


そんなはずは無いと分かっていても、他に逆転の目もなく


「なら、アイリ様と、ご主人様も…」

「強欲ね」

「どうせ、貴女の気まぐれなんでしょう? だったら…」


「少しは譲れ」それとも「怖いの」とまで挑発されたら、流石に頷かないではいられなかった


「それじゃあトーカちゃん。ゲームをしましょうか?」


貴女は私が飽きるまで付き合って、正気を保ってられたら優勝する、そんなゲームを





「それじゃあトーカ? 服を脱ぎましょうか?」

「はい…」


躊躇いがちに頷いて、トーカは自らメイド服に手をかけていく

一つ、一つと、馴れた背中のボタンを外していき、開いた胸元から肩を通すと

スルリと、しなやかな肢体の上を重苦しいメイド服が滑り落ちていった


若木の様に揺れるトーカの裸体


細いながらも女の丸みを帯びていて

柔らかく膨らんだ胸は蕾のように、くびれた腰は果実の様に


ブラジャーのホックを外し、ショーツの紐に指を掛け

言われるがまま、私の前にトーカは裸を曝け出す


「これで、良いですか…」

「ご主人様は?」

「そ、それは…」


盗み見たトーカの記憶

あの日、抱かれた夜に、彼の前で誓った言葉


ーシノブ様、貴方が私の最後の…そして最愛のご主人様ですー


もう誰にも呼ぶまいと、その名で誓ったはずなのに


「言うだけよ? それとも、もう諦めるの?」

「うっくっ、ごめん、なさい…。私は、トーカは…悪い子に戻ります」


今まで一番悔しそうな顔


裸の少女が涙に濡れて唇をかみしめている

ワナワナと震える唇がゆっくりと開き、そこからは言いたくもない言葉を紡いでいった


「これで、良いですか…。ご主人、さま」

「ふふっ…。ほら出来た、上手上手」


誓いを破られたことが余程堪えたのか

あやす私に対した反応も見せずに、トーカは顔をうつむかせる


いくらゲームとはいえ、思ったよりも簡単だったのは、彼女の生い立ちによるものか

馴れた諦観が彼女の心に蓋をして、だんだんと反応が鈍くなってくる

いったい、あの裸体がいくらで取引されていたのか

いまだ生娘にさえ見えるほど純朴な裸体は、涙に濡れて尚美しい


すぅっ…


トーカの肌の上を指先でなぞっていく

上から下に、首筋から胸元に、滑らかで、しなやかに

弾いた乳首が花弁の様に搖れ、小さな悲鳴は落ち葉のように散っていく


そして、まるで鍵を回すかのように、おへその窪みに落ち込んだ指先を回転させた


「うっ、くっ…あ、はぁ、はぁはぁ」


途端に震え上がるトーカの体、それと同時に熱い吐息が零れ落ちる


「随分と古い淫紋ね」


奴隷の頃に浸けられたものか、その下腹部を、子宮を飾るように、汚すように

トーカのなだらかな腹の上に、生々しい文様が浮かび上がっていた


「なんで、それ…」

「封印するならちゃんとするべきね、こんな程度じゃ。それとも?」


わざとらしくトーカの耳元に唇を近づけて、その耳たぶに口をつける

囁いた言葉は意地悪く「彼はそんなに下手だった?」


「そんなこっ、ああっ!?」


その反論に被せるように、女の指先は浮かび上がった淫紋をなぞっていく

千切れた部分をつなぎ直し、書き直し、それが本来の働きを取り戻す


「いや、やだぁ、やめて。せっかく、消えかかって、たのに…んんっ」


子宮を腹の上からなぞられる

その感触だけで、トーカの吐息は上がり、悲鳴の合間に嬌声が混ざっていった

知らず知らずに身を捩り、すり合わせた太ももの間には滲んだ愛液が広がっていく


「しっかり名前まで書かれちゃって」

「だめっ!。それにはっ、触らないでっ…!」


削れて、千切れかかっていた淫紋の上に書かれていたのは、真新しい誰かの名前

シノブとは、おそらくはそこで倒れている彼、トーカの愛するご主人さまの名前だろう


「く、くぅっぅ」


淫紋が鈍い光を放つ

認められない誰かからの刺激が、当てつけのようにトーカへ苦痛を反していた


「それじゃあ、遊びましょうか。トーカちゃん」


後ろから彼女の抱きすくめると、両手いっぱいにその体を撫で回す

愛撫と言うには乱暴に、形の良い胸を潰して、お尻の肉をつかみ取る

綺麗なトーカの肌に、指先で赤い染みを作る

痛いくらいのはずの刺激にも、トーカの唇からは悩ましい声が漏れ出していた


「なぁに? 乱暴にされて気持ちがいいの?」

「ちがっ、これは…」

「淫紋のせい?」

「そうです、だから…わたしはっ、あっ、んんぅぅっ」


それでも淫紋は淫紋だった


淡く鈍いその輝きは、トーカを戒めるように苦痛を与えながらも

快感を焚き付け、じわじわと男の体を思い起こさせていく


「な…なんで、これ…あっ」


言い訳を摘み取るように、乳首の先を指先で摘む

ビクッと震える体に泡立つ肌の色。寄せては返し、さざ波の様な嬌声にトーカの体が揺らいでいる


「こんな事、いくら続けたって私は…くっ」

「まさか。これからでしょう? 女を犯すのは。知ってるくせに?」


一瞬だけ、瞬きの隙間に、その先を思い出したのかトーカの顔が青ざめていた


それは、自分の太ももに当たる肉棒の熱さによるものか

これからそれに犯される自分を想像したせいなのか


トーカにとっては少し太いくらいの肉棒を、女は自分の股間に作り上げる

女の体に男の肉棒。欲望を満たすためだけの機関を膨らませて、その先端をトーカの割れ目に押し付けた


「んぐっ、あっ、だめ、はいってこないで…いや、いやぁぁぁっ」

「ちがうでしょう? ご主人様の肉棒なんだから、もっと喜ばないと?」

「そんなの、ここは…ここだけは…」

「うふふふっ。辛いでしょう? 淫紋が反応して、オマンコ閉じようとしてるのに」

「ぅあっ、あなたはっ、こんなことでて…くぅぁっ、この…んあっ!?」


小さなトーカの割れ目の入り口

刻まれた彼の名前がそれを守る反面。鈍く輝く淫紋が少女の身体を焦らす


拒絶するような抵抗を少しずつ押し破りながら、触れた肉棒の先から愛液で濡れていき

処女膜のゆるい抵抗を上回る拒絶はしかし、誰かの女を奪うという嗜虐の心に火を付ける


「抵抗するのは良いけれど?」


瞳に快楽を宿しながらも、唇を結び抵抗を続けるトーカ

その耳元で女はポツリと呟いて、外した視線の矛先を怯えるミリアへと移してみせた


「ひ、ひきょうものっ。私が耐えればいいってっ!」

「そうね。トーカが正気を保っていればとは言ったわ。それならあの子を壊したほうが早いかなってさ?」

「情けない。淫紋付きの女一人、落とせないんですか…貴女は…」

「…」


悔し紛れのトーカの言葉に、女はついと表情を消していた


プライドが傷ついた、とは言うまい

傷つくほどの自我もなし。選ぶ立場の自分が、オモチャを変えた所で何もなし

だが、指先を掠めた程度のトーカの抵抗は、僅かなりにも女の嗜虐心を煽っていた


「ひっ…くっぁぁぁっ…」


トーカの口から苦悶の声が漏れる


肉棒に割れ目を押し開かれる痛みもそうであったし

淫紋に上書きしていた彼の名前が、苛むようにトーカの腹で疼き出す


「良いの? 彼の前でオマンコ取られちゃってるけど?」

「かまいま、せんっ。ぁぁ…ミリアのためなら、彼だって…」

「あ、そう」


予想していた答えに、女は何を思うでもなく

ただ、膨らませた肉棒をトーカの割れ目の奥へと押し込んでいた


「ひっ、あぁ、あ、あぁぁぁっ」


同時に、トーカの口から漏れた苦悶は涙で濡れていた

押し込まれた肉棒から逃げるように体を仰け反らせ、お腹に打ち据えられた様に腰をひく

ピシッと無機質な音が聞こえるような衝撃が、トーカの身体を震わせて

その淫紋の上、真新しく書かれた彼の名前に亀裂が走っていた


「さぁって、後どれほどで消えるのかしら。彼とトーカちゃんとのつながりは?」

「こんなっ、名前くらい消されただけで…私は、んんっ」


女を睨みつけていたトーカの喉が甘く響く

慌てて唇をかみしめても、その隙間から羞恥を忘れたように次から次へと甘い嬌声が溢れ出す


1回…2回…


女の肉棒が、トーカの割れ目を突き上げる

その先端が奥を付く度に身を揺らし

軋むような音と共に、トーカの腹から彼の名前が剥がれ落ちていく


「あっ、んぁ…やめ、だめっ…きえて、きえちゃ…んやぁぁっ」


消えていく、消えていく、彼とのつながりが消えていく


それはただ、元に戻るだけのはず

名前が無かった人生のほうが圧倒的に長いはずなのに

一度結んだ絆が解けていく、ただそれだけの事がこんなにも心細い


「ふぁぁぁっ。うそっ、やだっ、わた、し…ひぃっっんっ」


それが何より気持ちがいい


肉棒に突かれる度に、割れ目の奥から快感が広がっていく

甘い甘い快楽の毒が、その刺激を強くする

名前が剥がれ快感が増す、彼との絆が解けるほどに心地よさに沈んでいく自分が恥ずかしい


守られていた、そう信じていた


何をされたって、この名前が守ってくれるって甘えていた


でも、それは…


消えていく、消えていく…


「だめぇぇぇっ! 消さないでぇっ! 消えちゃっ、だめぇぇ!!」


泣いていた、叫んでいた。それが余りにも恐ろしく、トーカは子供のように泣きじゃくる

けれど、その声に気を良くした女は、作り上げた肉棒で増々とトーカの割れ目を責め立てる


ミシミシと軋むように削れていく彼の名前

ヒビの入った名前の隙間から、それに抑えられていた快楽が溢れてくる


名前が削れ、快楽が増す

名前が削れることが気持ちいい

犯されることが気持ちがいい

肉棒を受け入れ、声を上げ、快楽のままに身を揺らす


トーカの腹の上で、淫紋が鈍い輝きを増していく


「だめぇぇ、ゆるしてっ、おねがっ、ひゃぁぁっ」

「結局。貴女はそうなのよ、トーカちゃん。誰に貞操を誓った所で、もう快楽なしじゃ生きられない」

「ちがっ!? 私は、そんなんじゃ…ああっ」


沈み込んだ肉棒に押し出され、トーカの割れ目から愛液が溢れ出す

声も、瞳も、表情も、快楽に彩られ、知らず知らずに肉棒を求めて腰を揺らしていた


「じゃあ、名前…書き直してあげましょう?」

「へ…?」


トーカの崩れる身体を支え、女はその腹に指を這わす

柳のような細指で、崩れかかった男の名前をなぞると、淫紋の鈍い輝きが和らいでいく


「あ、はぁぁ…あぁぁ…シノブ、さま…」


一瞬の安堵、恍惚がため息となってトーカの口から溢れる

が、それも次の瞬間。女が肉棒を突き上げた途端に、上書きした彼の名前ごと崩れ去り


「あぁぁぁぁぁぁっ!!」


悲鳴が森に響く


その声に、その光景に、誰もが目を背けるしかなかった


愛したものとの絆が壊される、それと同時に与えられたのは破滅的な快楽だった

名前で抑えられ、名前を崩され、押し込まれていた濃密な快楽がトーカの子宮に襲いかかる

正体を保つなんて考えもせず、声を上げ、身体を逸らせ

ひたすらに襲い来る快楽から逃げるように身を震わせた


いっそ、落ちてしまえば楽だった

いっそ、壊れてしまえば楽だったのに


女の指が、再びトーカの腹をなぞっていく

崩れた名前を丁寧に、剥がれた繋がりをより強く結びつける


「あ、あぁぁ、はぁはぁ。ああ、な、なんで…」


押し込まれた快楽に、一瞬の正気を取り戻して、トーカは力の入らない視線で女を見上げていた


「だって、トーカちゃんが嫌がるから」

「あ、あ、だめ…」


女は意地悪く微笑んでいた

嫌な予感ではない、確かな確信がトーカの不安を煽る

この女は、何回でも何度でも、私が諦めるまで繰り返すつもりなんだ


その予感は予想通りに、分かっていても逃れられないまま

最初よりも、より強い快感に変わってトーカの心を打ちたえる


太い肉棒が、押し開いたトーカの割れ目の奥へと叩きつけられ

悲鳴と嬌声が入り交じった声が響き渡る


「いいの? トーカちゃんのオマンコ。私の肉棒でいっぱいになっているけれど」

「だめっ、だめに決まって。あぁぁっ…」

「ぷふっ。あははははっ、寝てるとはいえ彼の前で…よく鳴けたものね?」

「う、うぅぅぅぅ。そんな、私、くそっ、くそっ、あなたが、こんなことをっ!!」


泣いて怒ってまた泣いて、悔し涙がその顔が

綺麗な顔が歪んでいていく、綺麗な体を汚していく


「嫌ならやめても良いのよ? ミリアちゃんに変わってもらう?」

「そんなことっ…ああっ。私は、まだ…」

「そう。だったら、自分から腰を落として見せなさいな、少しは私を愉しませて?」

「うぅ、うゎぁぁぁっ、んぐっっ」


泣き叫ぶその一歩手前

唇を噛み締めたトーカが、自分から肉棒に向かって腰を落とす

先端に触れる最奥の感触、肉棒を包み込んでくる膣肉が拒絶の声とは裏腹に蠢き出す


パキッ…


罅の入るような感触は、彼女の腹に刻まれた名前が崩れた音だった


「あっ、やだ。しのぶ、さま…」

「ふふふっ。良いじゃない、そんな名前。後でいくらでも書き直してあげるわ」

「ちがっ、やだっ、そんなの。わたしはっ、かれの」

「今は私の奴隷でしょう? トーカ?」


奴隷、その言葉に強く反応した淫紋は、トーカの口から言葉を奪う


「ひうっ、あ、はぃぃ…。ごしゅじんさま」


トーカの腰を捕まえて、奥まで入った肉棒を入口辺りまで引き抜いていく

壊れたとはいえ彼の名前を前に、多少の抵抗こそ感じるけれど

2度、3度と突き上げる度に、そんな抵抗はじわじわと崩れ去っていった


鈍い光を増す淫紋の輝き


トーカの腹を照らす光は、否応なく少女の官能を高めていく

いやっ、いやっ、と首を振りながら、それでも訪れる快感に身悶える


まるで地獄のような快楽の波


望まない絶頂の予感は、少女の口から悲鳴を吐き出させていた



「い、やっ、い、いくっ、やだ、こんなので、わた、あ、あ、あ、あ、やぁァァァァっ!!」


ビクッと大きく体を震わせて、肉棒に向かって腰が落ちていく

膣肉をざわつかせ、目いっぱいに肉棒にしがみつき、その奥から精液を絞り出そう痙攣する

真っ白になる頭の中、抑えようのない快感が声になって止まらない


「た、たすけ、しの、ぶ様、あ、あ、あ私、私は」


終わったはずの地獄が追いかけてくる

あの日助けられたはずなのに、あの夜 愛されたはずなのに


忘れていた、忘れて良いはずの


「ご主人様、でしょう? 他の男の名前を呼ぶなんて」

「あ、がっ、んくっ。ごめ、ごめんなさいごめんなさいっ、ごしゅじんさま、ゆるして」


女の声がする、ご主人さまの声がする


ご主人様、ご主人様


快感が止まらない、気持ちよさに一杯になって頭が考えることをやめていく

人形のみたいに、奴隷みたいに、言われるまま、されるがままだった


弱い私が、私の足首を掴んでいた


我慢しなきゃいけないのに

我慢して頑張って、皆を、ご主人さまを


「え、あ、ごしゅじん、さ、ま? ちが、わたしの、ごしゅじんさま、は?」


不意に取り戻した正気が、トーカの腹を自覚させる

鈍く光る淫紋、浮かび上がった彼の名前削られていく感覚


奪われる、落とされる


絶頂に華が咲く


頭の中が真っ白になって、何も考えられない


「おほっ、あうっ、いぃぃ、やっあぁぁ、やめやめ、こわれ、わたし、だめぇぇぇっ」


散らばった彼の名前を集めるように手を伸ばし、逃げ出そうと身を捩る

けれど、伸ばした手を掴んだのは女の細腕で、抱き寄せられた腰に突き刺さったのは男の肉棒だった


最奥を突き上げられて、快感が悲鳴に、嬌声に変わっていく


これは淫紋のせい、これは淫紋のせいだから


そう思って、どれだけ歯を食いしばっても

無理矢理に高められた快感は、トーカの意識を絶頂の高みから蹴り落とす

理性を掴み掛けた指先を踏みつけられて


下へ、下へ


もう戻れないほどの向こうへと、体が落ちていくの自覚する

それでも、心までは、心だけは、必死に抱きかかえていた愛情も


「ご、ごしゅじんさまっ、あっぁん、ひゃっ、ごしゅじんさまぁぁ」

「もっと言って、気持ちがいいって、もっとしてって?」

「はひ、はいっ。気持ちいいです、ごしゅじんさまぁぁぁ」


だって命令だもの、言わなきゃもっとひどいことされて、だから

愛情が、快感にすげ変わっていく。こんなに気持ちよくしてくれる相手はきっといい人で


「ちが、ちがうの、しのぶ、んはぁぁっ。ごめ、ちが、ごしゅじんさまぁ」

「ええ、そうよ。私があなたのご主人様なんだから」

「ちがっ、あなたは、わたしの…なんかじゃ、ひゃぁぁっ!!」


認識がずれていく、境界が崩れていく

誰が、誰が、私は、誰の?


また頭が真っ白になる


もう何度目かの絶頂は、トーカの心を狂わせるには十二分に過ぎていた

淫紋による強制的な快楽と、被虐の官能

支配されて犯されて、女の喜びを見せつけられて

もはやゲームのことなんて、頭にもつかなくなっていた


ドクッと、トーカの腹の中で肉棒が震え上がる


射精の予感を前にして、トーカの腹は燃え上がり、更なる快楽を送り込んでくる


「そろそろいーい? ご主人さまの精液くださいって、一杯射精してくださいって、言ってみて?」


言ったら終わる


分かっているのに、女の囁きは甘い誘惑のようにも聞こえていた

ご主人さま以外の肉棒を受け入れて、あまつさえ精液までなんて


「え、あ…ごしゅじん、さま?」


でも、ご主人さまはこの人で

思考がまとまらない、お腹がグラグラする

いきたい、いきたい、絶頂したい、もう楽になってしまいたい


でも


鈍い痛みがお腹の奥を刺激する

それは、淫紋に刻まれた彼の名前、その最後の抵抗が私の理性を取り戻させる


「いや、いやぁぁ。ださ、ないで、私から、しのぶ、さまを…けさ、ないでぇぇ」

「あら、諦めるの? 許してください、私だけでも助けてくださいって、言ってみる?」


そこで、理性が戻ったのは、もはや不運でしかなかった


いえない、言えるわけがない


シノブ様を、皆を見捨てて、自分だけ許しを請うなんて


「ご、ごしゅじんさま、だして、だしてぇぇ、精液いっぱい、トーカの中…おね、がいします」


終わる、終わった


何かがトーカの中で崩れていくと同時に、僅に引っかかっていた彼の名前が崩れていく


「あ、かはっ、んんぅぅっ、あっ、あっ、あぁぁっ、や、いく、いく、ひっ、くぅぅぅぅあぁぁぁっ!!」


獣の様な悲鳴

快感を吐き出すように泣き崩れて、トーカは絶頂に落ちていく


イきながら、膣を掻き回されて


落ちていく腰に、突き上げられた肉棒が突き刺さると、先端が子宮口へと導かれる

弾ける、弾ける、広がった熱が、トーカの奥へと注がれていく

ビクンビクンと脈をうち、ドクンドクンと吐き出された精液がトーカの腹の白濁に汚していった


「あ、ぁぁぁぁ、い、やぁぁぁ、きえ、きえない、でぇぇ」


薄っすらと、壊れた淫紋が消えていく、刻まれた彼の名前が消えていく

彼の専用だったオマンコは、ついには犯されて尽くして、その腹に悪魔の精を抱え込んでしまった



泣いて、叫んで、暴れて、気が抜けたトーカの体を女は抱き寄せる


「どうしたの、トーカちゃん? そんなに悲しい顔して」

「あ、あぁ、だって、ごしゅじん…さま」

「ええ、良い子ね。怖いことなんて何もないわ。ほら、素直に気持ちよくなりなさい?」

「ん、はっ…あ、あぁっぁ、んぅぅぅ」


甘えた声を舐め取るように唇を塞ぐと、女はもう一度トーカの中で肉棒を膨らませる

さっきよりも深く強く。そうして、その快感を忘れられなくなるくらいに彼女を快楽で溶かしていった




「やぁっ、あんっ、んんぅ、はぁはぁ、ごしゅじんさまぁ…ああっ!!」


声が聞こえる


少女の、親しい少女の、愛おしい少女の声

意識だけがぼんやりと目覚めだしても、固まった体は鉛の様に動かなかった


助けなければ


自らを傷つけるくらい強く願い、ぼんやりとしていた頭を叩き起こす

意識を、感覚を、ボケる頭から無理やり繋げ

辛うじて動き出した指先から、何とか拳を握りしめる


「う、くっ…」


体は、動く


手のひらを握っては開き、体の感覚を取り戻す

薄らいでいた視界が焦点を合わせ、少し先に自分の剣が転がっているのが見えた


「あっ、い、くぅぅぅぅっ」


悲鳴にも聞こえたそれは、少女の嬌声だった

いつかの日、二人の夜にも聞こえたその声に、少年は堪らず顔を上げていた


晒された淡い肌、少女の嬌声に合わせて揺れる乳房

涙と涎に濡れた頬に、落ち葉のように張り付く薄緑色の髪

ぼんやりと、下腹部に鈍く光る淫紋の灯りが、その太ももを伝う愛液を怪しく照らし出す


「シノブ様っ! 見てはっ、見ないであげて…」


アイリの声がする


それと同時に塞がれた視界は、しかしその全部を隠しきれず

彼女の指の隙間から見えた少女の姿に、シノブの頭は真っ白になっていた


それが誰かが分からない


理解するのを頭が拒んでいる


守ると誓った少女、愛していると伝えた少女


それはまるで、沸騰する直前のお湯のよう


「トーカ? トーカ、トーカ…」


一つ、一つ、名前を呼ぶ度、現実に理解が追いつき

グラグラと煮えたぎった怒りは、爆発するように体を突き動かす


「うぉぉぉぉぉぉっ!!」


雄叫び、絶叫、固まった体をそれで叩き起こし

視界を塞ぐアイリをも振り払う勢いで剣に手を伸ばす


「だめっ、シノブ様っ。今は、今は耐えてください、じゃないと…あの子が」

「離せっ! 離してくれアイリっ!! トーカを助けないとっ」


縋るアイリを気遣う余裕もなく弾き飛ばすと

飛び掛かる様に剣を掴み、立ち上がろうとしたその時だった


「あら、トーカちゃん? 彼の目が覚めたみたいよ?」

「え、あ、しのぶ、さま。あ、あ、ごめ、ごめんなさい、わたし、は」


妖艶に笑う女が、トーカを後ろから抱きすくめている

柳のような細い手が、彼女の体を這い回ると、トーカの細い喉がなり、呆けた様な声が漏れてくる


すぅっと、滑り落ちていく女の手


悪戯に乳房を揉み、広がった手の平が、滑らかにトーカのお腹を撫でていく

その指先は下腹部へと落ちて、淫紋をなぞり、描いて、割れ目へと吸い込まれていった


そこにあったのは男根だった


女の姿には似つかわしくない異形が、トーカの小さな穴を押し広げていた


淫紋の灯りに浮かび上がった二人の交わり

グチュリと、音が聞こえてくるほどに淫靡な光景


男根がトーカの中に入っていくと、それを拒絶するでもなく甘い声が聞こえてくる

押し込まれて、引き抜かれて、掻き出された愛液とはまた違う、白く汚れた跡が少女の太ももを伝っていく


「ちが、違うんですシノブ様。わたしは、もう…だから、皆を連れて、はやく」


立ち上がった彼の姿を前に、一瞬でも取り戻した理性がトーカの口を滑らせる


「あら、良いじゃない? せっかくなんだし、貴方のイクところを見てもらいましょうよ?」

「そんなっ、やめっ、ご主人様っ! あ、あぁぁ、そんな、そんなの、ぁぁっ」


だが、すぐに激しくなる女の動きに、トーカの理性は情けなく快楽の波に飲まれていく

男根に貫かれたトーカの穴が掻き回されると、彼女の口から悩ましいくらいの嬌声が上がる


重なったのはあの日の夜。シノブがトーカを抱いた夜、同じ様に彼女を犯した日

あの女と俺は、どれだけの違いがあったのだろう


自分の男根でトーカの穴を貫いて

淫紋のもたらす快楽に怯える彼女の上から、自分の名前を刻んだ日

哀願するトーカに甘えて、ひたすらに男根で彼女の中を掻き回し

絶頂へと導いた瞬間、男根に抱きついてくる彼女の膣肉と、その最奥で射精できた快感


「んはっやっ、あ、あ、あぁっ、だめっみないで、シノブ様っ、またぁ私、い…くぅぅぅっっ!!」


トーカの声が聞こえてくる

あの日もこんな風に声を上げて、高まる快感を二人で共有して


ドロリ…


貫かれたトーカの穴の隙間から溢れた精液が流れてくる


カラン…


乾いた金属質な音は、同時にシノブの手から剣を奪い地面へと放り出す


「あら、あの子、トーカちゃんが犯されてるのを見て、おちんちん大きくしてるじゃない」

「ああ、だめ、みないで、みないで…シノブ様」

「とんだ変態ね。自分の女が犯されて喜んでやんの、ふふふっ」


嘲るような女の声に、シノブはようやく自分の状態に気がついていた


股ぐらが熱い、ズボンの上からでも見て取れるほど膨らんでいる

怒りで煮えたぎっていたと思っていた感覚も、今や別のモノにすげ代わり

男根に乱れるトーカの裸体から、まるで目が離せないでいた


ともすれば、このまま彼女の元まで駆け寄って

自分のものを押し込んでしまいたくなるほどの興奮がシノブの全身を支配していた


「アイリちゃん? 見てないで手伝って上げたら?」

「へ? 手伝うって…だって」

「自分の男が、他の女で興奮しているとかイヤでしょう?」


嘲笑を崩さない女の姿に、アイリの視線が揺れている

女の言うことも分からない感情ではなかったが、それを人前でするという羞恥心は消せるものではない


誰からも見て分かるほど膨らんだシノブの男根


それを見た事がないわけではない

それに触れた事がないわけではない

その感覚を忘れた日なんて無い


乱れたトーカの姿を見たせいか、熱り立った彼の男根を認めたせいか

じっとりと、濡れたような情欲が、自分の中に湧き上がってくるのをアイリは隠せなくなっていた


命令されたんなら仕方ない

だってこうしないと彼を助けられないから


言い訳なんて何でも良かった


トーカの痴態を前にして戸惑う彼の元に、アイリはそっと近寄っていった


「待て、アイリっ、なにを…」

「ごめんなさい、シノブ様。でも今は…少しだけ我慢をして」


それは誰に向けた謝罪だったのか


馴れない手付きでシノブのズボンを降ろしたアイリが

手間取りながらも、その奥から彼の男根を導き出す


僅かな空白


一瞬でも出来た躊躇いは、アイリに羞恥を思い出させていた

ビクン、ビクン、鼓動に合わせて脈動するシノブの男根

太く、熱く、固くして、それはアイリの手の中に収まって尚、飛び出した亀頭から先走りの液を流していた


アイリの細く、白い指が、男根の先端から先走りの液を掬い上げる

それを広げて、伸ばして、滑らかな指先の感触に、包まれた彼女の手の平の温かさに

喜びに跳ねた男根からは、さらに先走りが溢れて、だんだんといやらしい水音が聞こえても来ていた


「くっ、あっ、アイリ…やめ、るんだ」


苦しそうなシノブの声

静止の声にも関わらず、吐息には熱が混じる

頭の上から降りかかる熱と、手の平で包む男根から立ち上る男の匂いに、アイリの情欲は更に高まっていく


「お辛いですよね。アイリが、直ぐに楽にして差し上げますから」


輝く銀髪を耳にかけ直し、アイリの開いた口からゆっくりと舌が伸びる

舌先に集まる唾液が糸を引き、先走りで濡れた男根へと落ちていく

先端から根本へと、男根が舌の上を滑っていき、その淡い唇の向こうへと亀頭が飲み込まれていった


飲み込んだ男根の大きさに、息苦しさを覚えながらも

唇で男根を包み込んだまま、ゆっくりとアイリが頭を動かしていく


まるで女のアソコでそうするように


男のものを咥えた唇が前後に動いていく

根本まで飲み込んで、苦しそうにえづいては、先端まで吐き出すと「はぁ」と吐息を漏らした

ポタポタと男根の根本に溢れる唾液。まるで飴でもしゃぶるように伸びた舌先がそれを舐め回していく


拙く、決して上手くはないけれど

健気で、懸命で、いじらしいその姿は、否応にもシノブの興奮を煽っていった


グチュグチュと、水音が混じっていく


自分の男根を愛撫するアイリの音と、女の男根に貫かれているトーカの音


「やめるんだ、アイリ…っ」


伸ばした手がアイリの頭に触れ、しかし、思いとは裏腹に、その手は彼女の頭を男根へと押し付ける

根本まで沈んだ男根。先端が彼女の喉奥へと突き刺さると、咳き込む声が聞こえてくる

けれどアイリは、男根を決して離そうとはせず

シノブに押し付けられるまま、口を開き、喉奥までも先端を受け入れて、その奉仕をやめなかった


温かい口内に包まれた男根


ザラザラとした舌全体に舐められながら、その先端は喉の柔らかい所を何度も小突く

根本に、先端に、竿の部分に、男根全体から別々に快感を流し込まれて、否応もなく高まってくる射精感


やめさせたいのに、やめられない


それどころか、自分からアイリの頭を押さえつけて快感を貪っていく

拒絶の言葉なんて忘れていた。それどころか、乱れるトーカの姿に視線が奪われる


女の男根を突き挿れられる度に声を上げ、見ないでと泣き叫ぶトーカの姿

典型的な嗜虐心と喪失感。泣きながらも快感に乱れる彼女から目が離せない

自分の時には見せなかった壊れた笑顔

泣いて叫んで嫌がりながら、気持ちがいいと声を上げて身を捩る


突き上げられた男根に自分から腰を落としていき

揉みしだかれた乳房の刺激に絶頂を迎えて痙攣を繰り返す

足元に広がる愛液と精液の濁った水たまり

力の抜けきったトーカは、その体をすっかりと女に預けて快感に溺れていく


犯したい、滅茶苦茶にしたい


思うなという方が無理がある


取り戻したい一心だといえば聞こえもいいが、責め立てたい思いも強い

だが、それ以上に、今すぐにでも煮えたぎった快感を吐き出してしまいたかった


ドクンと、アイリの口の中でシノブの男根が大きく跳ねた


射精を前に、先走りが量を増し、更に膨らんだシノブの男根がアイリの口内を苛んでいく

苦しい、目の前がチカチカする。けれど咥えた男根をそのままに、アイリは口淫をやめはしなかった


狂ってしまったのは何時からだったのか

間違ってしまったのは何処からだったのか


これもシノブ様のためと思いながらも、自分の中で膨らんでいく情欲が抑えられない

切なさに身を捩る。少しでも熱を逃がそうと、太ももをすり合わせ、それが余計にもどかしい

膨らんでいく彼の男根。先走りの奥から感じる精液の匂いに頭が一杯になる


それが欲しい、出して欲しい


始めて抱かれた時の快感を思い出しながら、アイリの手はゆっくりと自分の割れ目へと伸びていく

下着の上からそっと、彼が触れてくれた時のように、彼のものを咥えながら

やがて、撫でるだけでは飽き足らず。足りない刺激を求めて指の数が増えていく


少し乱暴だった彼の指


恐る恐るな自分の指使いでは、まるで似つかなかったけど

自分自身に媚びた指先が、アイリの割れ目を責め立て始めていた


胸いっぱいになるほどの彼の匂いに、高まった情欲が愛液に変わって下着を濡らした

誰にも見られている状況で、彼の男根を咥えながら、自分の女を慰める

変態的な状況に、それでも高まる快感が、アイリの頭から理性の灯を吹き消していった


「んっ、んぅぅ、ぁはっ、んうぅっ」


苦しさに、零れそうになる男根を咥え直す

触れているだけだった彼の手が、いつのまにか無理矢理に男根を咥えさせてくる

自分からも腰を動かし始め、太くて固い男根が喉奥と口の中を引っ掻き始めた


痛い、苦しい、けど


けどなんなんだ?


自分から彼のものを咥えて、自分自身を慰めて

そこに快感を感じてしまっている。気持ちいいって思ってる自分がいる

トーカに取られたくないって、場違いな嫉妬だってある


「くっ、アイリっ!」


ビクンッと、アイリの口の中で、シノブの男根が大きく跳ねる


精液に押されたかのように量を増す先走りと、激しくなる男根の動きに息が詰まりそうだった

頭を強引に抑えられ、気遣うでもなく喉奥を突き上げてくる男根

それなのに、もっと、もっとと口を開いて

彼の男根を受け入れながら、自分を慰める指先さえも激しくなっていく


向こうでトーカの嬌声が、ぼんやりと聞こえてくる


抑えられた頭では、彼の顔を覗き見ることすら叶わずに

アイリはただ、トーカの痴態に負けないようにと、シノブの男根を求め続けた


「くそっ、くそぉぉぉっ!」


シノブの悪態が繰り返され、一突きの毎に大きくなる精液の気配

今か今かと、突きこまれる男根に、嗚咽を繰り返すアイリの口内に


ぱっと熱が広がった


一瞬にして口内に広がる白い熱

その勢いは喉奥にまで注がれて、直接腹の中へと溢れていく

広がった精液の匂いにむせ返り、咳き込んだアイリの口から白濁が飛び散ると

逆流した精液が、鼻の奥でツンっとした刺激に変わっていった


それと同時に、アイリも大きく身を震わせて

自分を慰めていた指先を太ももで挟み込む


あふれるシノブの精液を飲み込みながら

割れ目から押し広がる快感に突き上げられて、何度もこぼした嗚咽は精液と一緒に喉奥へと消えていった


「かはっ、けほっ、んっ、はぁはぁ…」


やがて、大量に吐精したシノブの男根はアイリの口の中に空間を作り

脱力したその手から、ようやくアイリの頭は開放される


途端に崩れ落ちたアイリが、手をつく暇もなく地面に倒れ込む


何度も咳き込み、えづいて、その度に喉奥から湧き上がる精液の匂いにむせ返る

放心したアイリの口元から精液と一緒に涎が溢れていく

ビクッと、最後に大きく震えた彼女の体には、快楽の残滓がへばり付いていた




この場でまともに動いているものは一人くらいなものだった

すぅと、大きく息を吸い、はぁと女は息を吐き出した


愛液と精液と、汗と涙と、何もかもが一緒くたになったロクでもない匂いが女の胸を満たす

概ね満足、だいたい満足、出すものは出したし、見たいものは見た

愛液に塗れた男根を消し、乱れた衣服を直すと、忘れ物を探すように女は辺りを見回した


「そういえば…」


そこに転がっていた子猫の事を思い出す


見た目に幼いその容姿、年の頃を思えばまだとも思うけど

つんっと、鼻をついたのは女の匂い。それも愛液という訳でもなく

覚えはじめの情欲に、体が女を認めだしたのだろう


「ミスったわね」


最愛のご主人様の前で少女を犯すのも楽しかったけど

何も知らない女の子を、快感でグチャグチャにするのもきっと楽しかったはずだ


「はぁ…はぁ…にいちゃ、ねえちゃん…」


熱い息を吐きながら、うわ言を繰り返す女の子

何処か痛むのか、小さな手でお腹を抑えて身を揺らす様は扇情的ではあったけど


「ま、良いか…」


もっと言うなら飽きたと、あるいは満足したと言っていい


「さて、トーカちゃんは?」

「あ、へ…ごしゅじん、さま…トーカは…ああ」


となると、さんざん犯し尽くした少女の頬を突付いてみる

うつろな返事は、女のことを見ているのかどうかさえも怪しいものだった


「あらまあ、残念でした…と」


思うよりも頑張っていたけれど、こうなってしまうと本当に面白くもない

かと言って、残った男に様はないし。それならと、アイリの方へと足を伸ばす


「く、あなたは…まだ」

「いいえ。そろそろ飽きてしまったし、アイリちゃんの魂でも貰っていこうかと?」

「好きに、すればいいじゃないですか。その代わり、シノブ様は…」

「ああ、そうね、そうだったわねぇ」


悔しげに揺れるアイリの顔は、しかしいくら眺めても面白みもない

諦観に終わってしまっている。自暴自棄で体を投げ渡されても何も面白くもない

いっそ、命乞いに媚びでも売られたほうが遊びがいはあるというのに


「ふふ、良いわ。私が飽きるまで貴女には正気が残っていたみたいだし」

「へ?」


そんな女の気まぐれに、険しかったアイリの表情に希望が灯る

その裏で、ほくそ笑む女の顔に気づきもせずに



女の気配が薄れた後、アイリは皆の治療を始めていた

重苦しい霧の重圧も、女が消えたことでいくらかマシになり

失ったはずの神気もまた、幸か不幸か、シノブの精液を取り込んだことで多少の余裕は出来ていた


傷ついたシノブの体を癒やし

壊れたトーカの正気を取り戻させて、怯えるミリアの体を抱きしめる


「ごめんね、ごめんね…」


小さな背中を何度も撫でて、過ぎ去った恐怖を忘れるようにお互いの温もりを求めて抱き合った


帰ろう


誰からでもなく頷いて


帰ってまた


いや、もう無理か

こんな事、また続けられるかと言ったら分からない

今回はたまたま見逃されたけれど、次はどうなるか、あんなのを前に自分たちは戦えるのか


体の傷よりも、心に負った傷のほうがもっと重傷で


「アイリっ!」

「ミリアちゃんっ!」


シノブとトーカ、二人の悲鳴が響く

その声が抱き合っていたアイリたちの耳に届くよりも早く、伸びた影は二人の姿を覆っていた


「きゃっ!?」


何もわからないまま、大きな手に掴まれたアイリが、ミリアと引き剥がされていく

その体躯はアイリの倍はあろうかと言うほどに大きく、アイリの足が地面から浮き上がる


「いやっ、離してっ!?」

「お姉ちゃんっ!?」


引き剥がされていく姉の姿に手をのばすが、ミリアの小さな手は空を切っていた

直ぐに身を起こし、アイリを捕まえる何かに向き直ったミリアだったが


ウヲォォォォォっ!


その声は狼の雄叫びか


霧の影から飛びかかってきたその巨躯に、ミリアの小さな体はあっさりと地面に押し倒されてしまっていた


「今助けるっ!」


剣を構え、シノブが駆け出そうとしたその瞬間


「シノブ様っ!?」

「なっ!?」


背中に突き刺すような衝撃と鈍い痛み

慌てて剣で振り払い、その何かを切り裂いたまでは良かったが、シノブの意識はそこで薄れていく

閉じていく意識の中、揺すられる自分の体と、聞こえてくる少女たちの悲鳴に手をのばすが


その手が何かを掴むこともなく、彼の意識は落ちていった





「やめてっ! 離してっ! このっ、こんのぉぉっ!!」


渾身の力を込めたつもりだった


飛びかかってきた巨狼の頭に、腹に、幾度と拳を叩きつけるミリア

けれど、龍鱗さえも貫いていたはずの拳を、巨狼は厭うばかりで

反撃に伸びた爪や、牙が、次々とミリアの体を傷つけていく


「なんでっ、なんでぇぇぇっ!?」


こんな狼の魔物なんかに、いつもならイチコロなのに

お兄ちゃんと、お姉ちゃんたちと一緒なら、絶対負けるわけ無いって思ってたのに


「いたっ、やだ、もうっ、離してってばぁぁっ!」


伸ばした拳が巨狼の牙に捕らわれる

走る痛み、次の瞬間には砕かれてしまう想像を前に、慌てて次の拳を叩きつけた

鼻っ面に、下顎に、小さな苦悶が巨狼の口から漏れた隙きに腕を引き抜くが


「あぁぁっ!!」


煩わしいと、言葉の代わりにするように

巨狼の爪はミリアの細腕を捉えて、彼女の何倍もあろう体重と共に地面へ押さえ込む

鈍い痛みに、ミリアの口からは堪らず悲鳴が漏れていた


噛み砕かれる直前の、その上から更にかかる巨狼の体重に、小柄なミリアの体は徐々に軋み始める

残った手と、自由になる足を暴れさせて、巨狼の下から逃げようとするミリアだったが


一撃


巨狼の太い腕が、ミリアの横腹を叩きつけた


体から空気が抜けていく、悲鳴さえも上げられない

頭の中が真っ白になって、目の前がチカチカして、握り拳が解けていった


「や、やめっ、いたっ、だめ、やだ、やだやだやだっ」


続けざまに2発、3発、踏みつけるように、押し潰すように

その豪腕と、巨躯でもって、狼はミリアの体を痛めつけていく


ミリアが抵抗を諦めるのに、そうも時間はかからなかった


助けてくれるはずの兄や姉たちも、今や同じような目にあっていて

自分の力は、こんな狼一匹すら押し返せないほどに弱りきっている


怖い、怖い、怖い…


あの女の人に見られた時とはまた別の恐怖

心を吸い取られるような、精神的なものなんかじゃなくて

もっと物理的な、殺される、食べられると言った直接的な恐怖心


次の瞬間には、狼の爪が、自分の腹を裂いているかもしれない

次の瞬間には、狼の牙が、自分の首を砕いているかもしれない


生きたまま、四肢を削られ、腸を引きずり出されて


考えれば考えるほどに、ミリアの体は竦んでいく

だからこそ、いま逃げ出さなければいけないのに

想像してしまった恐怖は、ミリアから勇気を奪い尽くしていた


「ごめんなさい、ごめんなさい。もう、いたいの、やだぁ…」


泣きながら出たのは謝罪の言葉

子供が親にするような哀願を前に、巨狼はようやくミリアを痛めつける手を止めていた


まだ幼い頬に流れる涙。その雫を、巨狼の舌がそっと舐め取っていく


まるで味を確かめるようだった。降りかかる吐息は生暖かく

ざらりとした舌の感触が、生臭い唾液と共に、ミリアの頬に押し付けられる


視線をそらし、顔を背ける


それは巨狼の舌から唇を守るためだったり、並んだ牙から目を背けるためだったり

ただ、こうしておとなしくしている分には、これ以上痛めつけられることも無いと分かると


ぎゅっと、瞳を閉じて、ミリアはただ時間が過ぎるのを待っていた


頑張ればお兄ちゃんたちが助けてくれる

もしかしたら、狼も何処かに行ってくれるかもしれない


淡い期待でしか無いが、それでも縋らずにいられない甘い誘惑


肌を舐め回す不快な感触に耐え

次の瞬間にも牙がたてられるんじゃないかという恐怖に身を震わせる

ドキドキする心臓の音に、体がきゅぅっと窄まると、ミリアはお腹の奥に鈍い痛みを思い出していた


それは、自分の代わりにトーカが酷い目にあっていた時のこと

それは、お姉ちゃんがお兄ちゃんの おちんちんを加えていた時のこと


泣きながら、けれど気持ちよさそうな声を出していたトーカちゃん

自分からお兄ちゃんの おちんちんを咥えていたお姉ちゃん

お姉ちゃんに おちんちんを咥えられて喜んでいたお兄ちゃん


みんなお嫁さんにされちゃってるんだ…


拙い性知識はそれを思うのが精一杯で、その興味に視線が吸い込まれる

体中が熱くなり、心臓がドキドキとしてくる

お腹がきゅぅっと窄まり、だんだんと、おまたの辺りが湿ってくる


はぁ…はぁ…はぁ…


怖くて、苦しくて、それでもミリアの頭は一つ所に囚われていた

薄っすらと開いた視線の先、そこにあったのは 固く勃起した巨狼の肉棒


ごくり…


ミリアの小さな喉がなり、幼いながらこれから自分の身に起こることに思いが至る


同じことをされるんだ

お兄ちゃんや、お姉ちゃんたちみたいに、あの太いのを ミリアのお股の穴に入れられて


お嫁さんにされてしまう


「やだぁ、おちんちん、やだぁ…」


あんなに泣き叫んでいたトーカちゃんみたいに

お姉ちゃんのことを無理矢理に使っていた お兄ちゃんみたいに


逃げようと身を捩り、けれど、牙が触れた肌に痛みが走って萎縮する


やがて、体を舐め回していた巨狼が頭を上げ、前足でミリアの両肩を抑え込むと

先走りの溢れる肉棒を、ゆっくりと彼女の割れ目へと近づけていった


「あっ、だめっだめっ、こないでっ、いやだったらぁぁっ!」


体を起こそうとしても、巨狼の両足に潰されたミリアの体は、首を上げるのが精々で

すでに、彼女の足の間に落ちてきた巨狼の体を、蹴り返すことすら難しい


ボロボロになった衣服はミリアの秘部を守ることも出来ずに

辛うじて残っていた薄い下着は、まるで処女膜のようにあっさりと


ビリっと、音が聞こえる


布が破け、肉棒の先端がミリアの割れ目に触れた途端

そのまま何の抵抗も無いように、巨狼の肉棒はミリアの割れ目の奥へと滑り込んでいった


「あっ、がぁぁぁぁっ!! あ、くぅぅ、いたっ、いたいよぉぉっ」


覚えたての情欲はミリアの中を十分に濡らす事もなく

そもそも大きすぎる巨狼の肉棒は、それだけでも彼女に苦痛を与えるのには十分すぎた


体を貫く異物感


股間から真っ二つにされたような衝撃に、ミリアは身を震わせた

声を上げて、なんとか痛みから逃げようと体を暴れさせるが

それで巨狼の体を押し返せるはずもなく

ずぶずぶと沈み込んでくる肉棒の刺激に、呻くことしか出来なかった


「はな、してっ! はなれてっ、あぁぁっ、いたっ、うごいちゃ、やぁぁぁっ!!」


両肩を抑えられ、不自由なままの両腕を暴れさせるが

直後に来る割れ目への衝撃に声を上げたミリアは、堪らず狼の腕を掴んで痛みに耐える


まるで地面に沈めるように、何度も、何度も、ミリアの穴を責め立てる巨狼の肉棒


幼いミリアの膣の中で、大きな肉棒が幾度と跳ね上がり

その度に、射精とも思えるような先走りの液が、愛液の代わりに満ちていく

押し込まれ、掻き出され、透明な液体に混ざっていた赤色も徐々に薄くなり

けれども、一向になくならない苦痛は悲鳴に変わって、ミリアの口から漏れていった


「あっ、がっ、やめっ、こんな、なんでぇぇっ、たすけてたすけてよぉぉっ」


泣いても叫んでも何もない


痛みに押し黙ってみれば、自分以外の悲鳴が聞こえてくるばっかりで

誰も彼も、ミリアを助ける余裕なんて何処にもありはしなかった


「あぁぁぁぁぁっ!! まって、もっと、ゆっくりぃ、してよぉぉ」


更に深く沈んだ肉棒の衝撃にミリアが声を上げる

痛みを逃がそうと、巨狼の両腕にしがみつき、明後日の方向に腰を跳ねさせた


「おねがい、おねがいだからぁ」


誰も助けてくれないんなら、もう目の前の狼に哀願するより他にない


あの時だって、お兄ちゃんに負けちゃった時だって

弱いミリアは強い人の言うことを聞くしかなくって、強い人のお嫁さんになるんだって


「あっ、あぁぁぁっ、んくぅぅっ、いや、いたっ、もっと、もっとやさしく」


でも、狼さんはミリアに全然優しくなんてくれなくて

思うままにミリアの事を滅茶苦茶にしてきて

それは、負けたミリアが悪くって、弱いミリアのせいだから


弱い自分が折れていくのが分かる


叫びすぎて息が苦しい、痛すぎて頭がおかしくなりそう


強いオオカミさんに好きにされちゃって


「ああ、なんで、なんでぇぇぇ」


それが一瞬でも、嬉しいって思ってしまって


体が急に熱くなってくる、全身がゾワゾワして、お腹の奥がきゅぅっとむず痒い

お股を貫く衝撃が、急に柔らかく感じて、もっと、もっとって

奥に、奥まで、届けて欲しい、違うのに、こんなの全然、私はお兄ちゃんに


お兄ちゃんのお嫁さんに…


ミリアの割れ目の奥を肉棒が突き上げると、それと分かるほどに下腹部が浮き上がった

膣を越えて、子宮にも届き、ビクンと跳ねた肉棒の先からはダラダラと先走りが流れ出る


「あっ、くっ、やぁ、だ、はぁはぁはぁ…んぅぅぅぅ、ひゃっん」


苦痛から逃れるためか、段々と痛みが麻痺していく、思考がどんどんと鈍っていく

代わりに湧き上がった甘い痺れが、ミリアの喉を鳴らさせて

始めてあげた自分の嬌声に、ミリアの心はますますと追い詰められていった


同じだ、同じにされちゃってる


お姉ちゃん達と同じに、ミリアも女の子だから

イヤって言ってるのに、痛いって泣いてるのに、おまたでおちんちんされて

おかしくされちゃって、中で、中にいっぱい、そしたらミリア…


「およめさんに、されちゃうよぉぉ、おにいちゃぁぁんっ!」


それが限界だった


大好きなお兄ちゃんの名前を呼んで、けれど返事なんかなくって

ずぶずぶと甘い痺れに体が沈んでいく、ぶつぶつと理性が途切れていくのが分かる


激しくなっていく肉棒の動きに、ミリアは自ら腰を寄せていく

足を開き、受け入れて、巨狼の腕にしがみつき、甘い声を上げる自分の姿は幸せそうで


「あっ、あぁっ、だめ、なのに。オオカミさんのおちんちんっ、ミリア、およめさんにしちゃぁ」


小さなミリアの割れ目の中で、更に肉棒が大きさを増す

射精の瞬間を前に、巨狼の肉棒の動きは激しさを増すと

肉を打ち付ける音の合間にも、愛液と先走りで濡れた水音が混ざりだす


ぐるぅぅぅぅぅっ


満足そうな鈍い声


それと同時に子宮へと届いた肉棒が、ミリアの中に大量の精液を吐き出していた


「あ…」


その瞬間ミリアの口から小さく声が漏れた

何もかも終わったという確信と、同時に強いオスに征服される喜びを受け入れる


「あっ、でて、おちんちん、いっぱい、ミリアのなか、だして、でて。あ、あ、あっ…くぁぁぁぁっ!!」


膨らんで見えるミリアの下腹部の中で、巨狼の肉棒が何度も跳ね上がる

子宮の中を真っ白に汚していく精液と、頭の中を真っ白に染め上げる快感


初めての中だし、初めての絶頂


訳も分からず声を上げ、あまりの快感を前にミリアは溺れていった


「あ…はぁ、あは…はは…されちゃった、みりあは…あ」


泣きながら、けれどミリアの口から乾いた笑いが溢れだす

受け入れた精液が子宮を焦がし、受け入れがたい事実を焼き付けていく


お嫁さんにされちゃった


お腹を満たす精液の熱さに浮かされながら、どうしようもない喪失感を口にする

けれど、代わりに心を満たしたのは確かな幸福感で

強いオスのモノにされる。それは、メスの根本的な欲求でもあった





「ミリアちゃんっ!」


アイリの伸ばした手が空を切る

同時に飛び込んできた巨狼の影が、ミリアの体を覆い隠してしまう


助けなければ


焦りの色に視界を染められたせいか

ミリアを助ける前に、まず自分が助からなければいけない事に気づくのが遅れていた


「いたっ!」


呻いた以上の痛みに身を捩る

痛みに見下ろしたアイリの体には、指が食い込んでいた

片手一つで、自分の腰を捕まえるのに足りる大きな手

揚々と浮き上がる体に、背中越しに迫ってくる大きな影


振り向かない、振り向けない


振り返ってしまったら、その影の大きさに飲まれてしまうことをアイリ自身が良くわかっている

考えちゃいけない。考える時間そのものが致命的だと、体中の神気を束ね、力へと変えていく

倒せなくても、この手を振り払うだけでいい

それからミリアちゃんを助けて、二人で狼と一緒に倒してしまえば大丈夫


アイリの体から光が溢れる


背中から苦悶の声が上がり、アイリを掴んでいた手の平が焦げ付き始めた

力の緩んだその一瞬。全力で手を振り払うと、地面へと投げ出される

すぐに体を起こし、地面を蹴って


「きゃっ!? あぐっ…ぅ」


背中にかかる重圧、ドスンとぶつかってくる硬い地面に体を押しつぶされた

藻掻いて、暴れて、伸ばした指先が地面を引っ掻き、そのままずるずると引き剥がされていく


「な、え…オーガ?」


見てしまった、今度は振り返らずにいられなかった

加減をしたつもりもない、そんな余裕もなかった

なのに、多少ひるんだとはいえ、それだけでしか無い相手の姿


ドラゴンなんかでもないのに、そのへんの魔物なら軽く消し飛ばせるくらいの光だったのに


見た目に巨大な体。自分の倍はあろうかというその体躯に、丸太のような太い腕

人の体をしてはいながらも、その頭には人ではないと示す角が生えている


強い、強くはあるけど


あの光に耐えられるほど強い種族でもなかったはず


「離してっ! 離しなさいっ!!」


アイリはもう一度 神気を輝かせ、しかしその輝きに影が差す

後ろからではなく、前から覆いかぶさるように大きな影


「へ…」


もう一体、霧の影から現れた鬼が、アイリの抵抗に蓋をした

自分でも間抜けな声を出していたように思う

鬼の大きな手に胸ぐらを掴まれ、襟首に指を掛けられたまま衣服を引き裂かれる


殴るでも、蹴るでも、噛み付くでもなく


抵抗を続ける少女を前にして、鬼たちが選んだのは陵辱の一手

それは、アイリの抵抗が既に無力なものに変わっているのを示していた

精々が肌を焼く程度。それもこの森の中、この霧の中ではそう何回も続けられない


こうしている間にも力は削がれ続け

辛うじて自身を守っていた教会の清衣も、無残に引き裂かれてしまったばかり

鬼に挟まれ、破れた衣服の残骸を引っ掛けているだけの少女の末路なんて


想像して、ぞっとする


羞恥を上回る予感に、顔が青ざめ

冷静な思考をかなぐり捨てでも、アイリの体は無意識に暴れだしていた


「いやっ、やめてっ、離してっ、こないでぇぇっ!!」


予想は予感に、予感は確信に


裸に剥かれたアイリの前に晒されたのは、鬼の大きな肉棒だった

太く、大きく、波打って。這い回った血管がゴツゴツと、歪な形に膨れ上がっている

人間のそれと似通っていても、まるで違う存在感にアイリは息を呑んだ


比較が出来ても、それはせいぜい彼のモノくらい


その程度の経験しかないアイリには、鬼の肉棒はもはや凶器にも等しかった


「ひっ…」


体が竦み、息を呑む

引きつった体に喉を潰され声が枯れる


ついさっきまでの自慰の名残

膣の中が愛液で潤っていたのは、アイリにとっては幸福と言えたのだろうか?


太い鬼の肉棒が、アイリの狭い膣の中に一気に押し込まれた

ピタリと閉じていた割れ目を強引に押し広げ、まだ硬さの残る膣壁を削るように奥へと進んでいく

愛液で滑り、それがなくても力でこじ開けられて

鬼の肉棒は、彼女の子宮の入り口まで一発で届いていた


「かっ、はっ、あ、あ、っ。ぃ、やぁぁぁぁぁぁっ!!」


最初の衝撃を通り抜け

体に自由が戻ってくると、次に感じたのは苦痛と絶望


彼の為だけにと捧げた貞操は、どうしようもなく鬼の肉棒に破られて

そんな自分は抵抗すらも出来なくて、泣いて叫ぶしか無い


お腹の奥に突き刺さる鬼の肉棒


その先端が自分の一番大切な所に届いているのが分かってしまう


「はなっ、離して、抜いて、そこは、シノブ様のっ、だからぁっ!!」


壁のように迫る鬼の胸板に、アイリは小さな拳を叩きつけるが

そこからは、情けない音がなるばかりで

アイリを貫いた鬼はまるで意にも返さずに肉棒を揺らし始める


ズリズリと、ゴリゴリと


鬼の肉棒に浮き上がった血管は突起の様に、広がった雁首は反しの様に

硬さの残る、未だ性に不慣れなアイリの膣の中を、容赦なく削っていく


痛くて、苦しくて


彼に触れられた事もない場所まで、彼では届かなかったその奥までも

狭い膣穴は、肉棒の全部を咥え込み、その形をまざまざとアイリに送り付けてくる

まるで、彼のものを上書きされていくような刺激に、ますますアイリは泣きじゃくっていた


「やだっ、やめてくだ、ぬいてぇぇ。そんなところ、わたしっ、くっぁっ!!」


痛くもある、苦しくもある

けれど、初めて触れられた所への刺激は、アイリの体に性感を呼び起こさせる


なまじ、さっきの自慰が中途半端に終ってしまったせいだろうか

絶頂には達せたし、彼の精液も飲み込めはしたけれど、心残りは未だアイリの中で燻っていた


肉棒が欲しい、精液が欲しい


そんな生々しい女の欲望

自分の中で抑えていた劣情を引きずり出されたみたいで、アイリは必死に首を振って抵抗を続ける


幸いだったのは、それがせめても苦痛が上回っていたことくらい


多少の甘い痺れがあった所で、それでも直ぐに痛みがそれを攫っていく

なるべく快感から目を背けて、甘んじて苦痛を受け入れながらも

アイリを犯す肉棒の動きは、激しさを増していった


押し込まれる肉棒と、打ち据える肉の音


それは、アイリが鬼の胸板を叩くよりも強く、雄々しく響き渡る

膣から、背筋を伝い、頭までも揺らす衝撃

声も枯れるほどに声を上げ、痛みと、苦しみと、ほんの少しの快楽がアイリの心を削っていく


熱い吐息が降りかかり、激しくなってい呼吸

アイリを求める力が強くなり、腰がぐっと引き寄せられた


「え、あ、だめっ! やめてっ、なかはっ、なかにはぁぁっ!!」


自分の中で肉棒が膨らんでいくのが分かってしまう

たださえ限界以上に広がった膣穴に、射精を前にした肉棒は更に太さを増して

ビクビクと震えだす肉棒は、彼が射精をする直前にもよく似ていた


鬼から離れようと、腰を逃がそうと、鬼の胸板に手を置いて

アイリは必死に腰を動かしたが、まるでびくともせず、それはただただ鬼を喜ばせただけだった


ドクンっ!


前触れも無い情動がアイリの胸を打つ


同時にお腹を染めていく感覚は、熱くて、深くて、色濃い焦燥をアイリの子宮に焼き付けた

悲鳴と絶叫と、まるで嬌声には遠い声

もう掠れていたはずの喉は、張りを取り戻して、無力な悲鳴を上げさせる


腰を捕まれ、体を抱かれ、肉棒の先端は子宮口を抉って余り

ビクンビクンと脈動しては、その鈴口から大量の精液を直接アイリの子宮に注ぎ込む


「あぁぁぁぁっ、あぁぁぁぁぁっ、やぁぁぁぁっ!!」


声もなく、ただの絶望がアイリの口から漏れていく

お腹に広がる精液の熱さ、子宮を埋め尽くすその量は、下腹部に重さを感じるほどだった


かぁっと、精液を受け止めたアイリの体は熱くなる

まるで理不尽に、少女の腹は女の役割を思い出してその熱を上げていった


妊娠


精液の脈動が収まると、戻ってきたアイリの理性が最悪の二文字を呼び起こす


「あぁぁ、だめ。ひにん、避妊しないと…あかちゃん、できちゃ…あ」


もはや反撃なんてアイリの頭の中から抜けていた

むき出しになった鬼の肉棒に神気を集めれば、まだ逃げ出せたかもしれないだなんて


冷静さを欠いたアイリの頭にそんな事が浮かぶわけもなく


力なく自分のお腹に手を当てる


ぽうっと輝く神気は彼女の胎を守り

入り込んだ鬼の精子を潰していくが、その輝きは酷く頼りない

風前の灯を絵に書いたような、それでも必死にアイリはお腹を守り続けるしかなかった


彼以外の子供を孕むなんて


それが鬼の、化け物の子供だなんて


神子として生まれて、正しく生きてきたはずの自分にこんな事許されるはずなんて


「え、あ、あぁぁぁっ!!」


それは突然だった


吐精も終え、ようやく静まった肉棒がアイリに多少の余裕を取り戻させた頃

後ろからアイリを捕まえていた鬼が、その昂ぶらせた肉棒を彼女のお尻の中に突っ込んでいた


初めての衝撃


快感なんてものには程遠い


そもそも性交ですらない行為に、アイリの頭を混乱の只中に落とされる


「なっ、そこ、ちがっ。なんで、まって、あっあぁっ、いやっ、うくぅぅっ!!」


お尻の穴を無理に広げられ、お腹の中を引きずり出されるような刺激

ただ女を貶めるためだけの行為ではあったが

それとは別に排泄時の開放感が断続的にもたらされるのも確かだった


気持ちいい、とは言えない


けれど、体がもどかしくて、むず痒さが広がっていく


堪らなかったのはその後だった

射精を終え、萎んでいたはずの肉棒が再び硬さを取り戻して、アイリの膣穴を責め立て始める


後ろからは尻穴を、前からは膣穴に肉棒を突き立てられて

鬼に挟まれたアイリの小さな体は

下から肉棒に突き上げられる度に ふわふわと宙に浮かんでいるみたいだった


「うわっ! くっ、やめっ、たすけっ、おねがぁぁ…やぁぁぁっ!!」


射精の前よりも更に激しく膣穴を責め立てられ

お尻の穴はゆっくりと、まるで見せつけるように肉棒で扱かれる


あまりの苦痛を前に、受け入れるのを諦めた身体に、甘い痺れだけが取り残される

肉棒の仮首に、血管の膨らみに、犯される膣内に生まれる僅かな快感

それがお尻の穴に広がる、もどかしさやむず痒さと繋がって、どんどんと強くなっていく


「ひゃっ、あっ、いま、なんで…」


堪らず飛び出た甘い声

どんどんと熱くなっていく自分の体


激しく、それでいてゆっくりと、2つの穴を犯されながら

じっとりと、広がっていく染みのように強くなっていく快感


「うそつきっ、うそつきうそつきうそつきっ!」


助けてくれるって、見逃してくれるって、もう終わりだって


あの女の人はそう言ったはずなのに


「あ…」


アイリの残った理性が「でも」と、女の言葉を思い起こさせた

「私は」と、言い訳じみた前置きを確かに言ってい事を


私達はどうやってここまで来た?


ここまで来るのにどれだけの魔物を倒してきた?


万全の状態で無理を感じていたのに、こんなボロボロのままの皆を連れてどうやって森から出るの?


「あ、あはっ、はは…」


遊ばれていただけだ


私達ははじめからあの女に遊ばれていたんだ

事実彼女はもう居なくなっていて、おこぼれに群がった魔物たちに私達は襲われている


「シノブ…さま」


鬼に犯されながら、霞む視界で彼のことを見下ろした

倒れている体、滲む赤色。近くで叫ぶトーカの悲鳴はやっぱり何かに群がられていて

「お兄ちゃんっ、お姉ちゃんっ!」助けを呼ぶミリアの声が、遠くなって聞こえてくる


「うぐっ! あぁぁっ、やめっ!」


膣穴を犯してくる鬼に腰を抱き寄せられ、それを奪うようにアイリの尻穴に肉棒が深く突き刺さった

尻穴を犯していた鬼の大きな手が、アイリの胸の膨らみを包み込むと、捏ねるみたいにもみ始める


揉まれて、揉みしだかれて

太い指先の、親指の間に乳首を挟まれて、それもまた千切れそうなくらいに転がされる


「あっ!いたっ、やだっ、ああああっ!」


性感を覚え始めた体に、被虐的な痺れが走る

怯んだ体に肉棒が深く突き刺さると

溢れた鬼の精液が、アイリの割れ目から溢れていく


「う、やだ、やめてぇぇぇ、わたし、こわれちゃっ…」


事実壊すつもりなんだろう


他によるべもなく、縋った鬼の体

たくましい男の体に挟まれて、少女の体は男を受け入れていく


正義も、希望も、勇気も、なにもない


生き残るためか、許しを請うように、ただ過ぎ去る嵐に耐えるように

少女は自分の女を捧げて、鬼たちの肉棒を受け入れる


「あ、はぁはぁっ。んぐっ、あっ、ひゃっ、ぁぁぁ…」


一突きごとに強くなる甘い痺れが、尻穴から広がるむず痒さに膨らんでいく

肉棒の先端から溢れる先走り

愛液の代わりとなったそれは、肉棒が揺れる度にグチャグチャといやらしい音を立て始めていた


もはや、アイリは快感を隠せなくなっていた


お尻を、膣を、太い肉棒に、ゴツゴツとした逞しい肉棒に犯されて、悦んでしまっている自分がいる

性感を焚き付けられ、感度の上がった体は何をされても快感に変わっていき

乱暴に揉みしだかれる乳房でさえ、抓るように潰される乳首からも、甘い痺れを受け取っていく


「あっ、はぁ、くるぅぅ…きちゃ、わたし、おちんちん、おにの…なのにぃ」


流れた涙は、悔し涙か、嬉し涙なのか

それも、直後にあがった嬌声と、震え上がった体が頬から雫を引き剥がす


近づいてくる絶頂の予感を前に、鬼にしがみついてしまう自分の体

犯され続け、流れ出た精液の代わりに、肉棒の先端が子宮口を責め立てる


「あ、だめ…あかちゃ…はっ、だけは…」


ぽぅっと頼りない輝きが、アイリの下腹部を包み込むが

鬼の一突きごとに吹き消され、それを掛け直そうとするアイリの手も弱々しさを増していく


気持ちいい、ハッキリと口に出してしまいたい


泣き叫んで、無茶苦茶にされて、思うままに快感を受け取って


けれどそれも、残った理性が邪魔をする

最後の一線だけを必死に守り続けて、それだけが希望の様に縋り続けて

それが続きもしないことを分かっているのに

頑張りましたって、抵抗はしたんですって、誰かに言い訳をしたくって


ドクンっ!


「あ…」


膣穴で鬼の肉棒が弾けた

子宮口を突き破って顔を出した鈴口が、精液のこびりつく子宮内に再びそれを流し込む


「あ、あ、あ、あぁぁっぁぁぁっ!」


広がる精液の感覚に、熱くなっていく子宮

押し上げるように強くなっていく快感は、ギリギリで耐え続けていたアイリを絶頂の渦へと叩き込む

精液を吐き出され、満たされていく胎の中


それと同時に、尻穴を犯していた肉棒が、射精を求める動きへと切り替わる

腰を掴まれ更に奥へ。押し付けられた体に、肉棒がのめり込み、仮首が子宮口の向こうへと流れていく


「う、あぁぁぁっ! だめっ、やっやっ、おなか、せいえき…きちゃ、ひゃぁぁっ!!」


情けない声を上げながら、尻穴を犯されて

今にも何かが出そうな感覚に、アイリが目を白黒と瞬かせる


断続的な悲鳴と、それに混ざる甘い嬌声

続く絶頂の中で壊れたように、アイリは身を焦がして泣き叫ぶ


ドクンっ!


尻穴の奥で肉棒が弾け、大量の精液を吐き出した

同時に白く染まる頭の中と、それをかき回す肉棒の刺激に意識を引きずり戻される


天にも昇るようで、地獄に落とされるような心地


引き抜かれた仮首が、子宮口を抉り、アイリは更に絶頂を重ねていく

射精を続けながらも肉棒で犯され続け


尻穴に、膣穴に、交互に、同時に、その度に、アイリはより強い絶頂を感じていた


ふぅっと、アイリのお腹に灯っていた輝きが消える

その瞬間、彼女の中で何かが終わっていた





「ご主人さまから離れてっ!」


群がるハチを振り払い、トーカは倒れ込んだシノブを庇うように立ちはだかる

いや、それをハチというには大きすぎた

赤子かそれくらいのサイズのハチのような魔物が、不快な音を立てて二人の周囲を飛び回っていた


衣服もボロボロ、犯されたばかりの足腰もろくに立たない体で

ハチの前に立ったトーカは、馴れた口調で魔法を紡ぎ始める


このくらい、この程度


べつに珍しい相手でもない


虫型の魔物なんて何度も戦ってきた


風の魔法で飛行能力に干渉するなり、氷の魔法で凍らせるなり

数は多いが、そう強い相手でもない。すぐにコイツら追い払って、ご主人さまと二人を助けて


「これでっ!」


吹きすさぶ風が渦を巻く

突発的に発生した空圧に、薄っぺらいハチの羽は千切れて次々と地面へ落ちていく

地面を這いずるしかなくなったハチの群れに、音を立てて氷塊が突き刺さる

流れるような魔法の嵐に、すぐにも不快な音は鳴りを潜めていった


その無防備なトーカの背中に、チクリとした痛みを感じるまでは



「あ…あれ?」


気付けば意識が飛んでいた


開いた目には、薄汚れた黄金色の壁が広がっていて

自分が、さっきまで居た森ではないことだけは確かだった


頭がふわふわしていた


体を動かそうにも、まるで金縛りにあったみたいに指一本動かない

まるで夢心地のような感覚に、トーカの口からは知らず甘い吐息が溢れる


「え…あ…」


それでも、だんだんとハッキリしてきた意識にトーカの焦点が重なると

見渡した視界に映るハチの姿。両手を、両足を、お腹に群がられている

体起こそうと、ハチたちを追い払おうとして、動かした指先がピクッと跳ねて、しかしそれだけだった


動かない、まるで体が動かない


魔法に繋がる唇も、甘い吐息に塞がれるばかりで、集めた魔力は口の端から漏れていく


グチャグチャと、響く水音


その出処が、自分の割れ目だということに気づいても、トーカは叫び声一つ上げられなかった

お腹に乗ったハチの一匹が、その腹の先端から突き出た針を割れ目の奥へと突き込んでいる

何度も何度も前後に揺らし、その度に膨らむ針の向こうで何かが落ちていくのが分かってしまう


「あ…あぁ…」


産み付けられている、産み落とされている

ハチの、魔物の卵が、自分の腹の中に、一つ、一つと、増えていく


最悪の光景


今すぐにでも、暴れだしたいのに、まるで心は動かない

ただただ浮ついたまま、絶頂の後の多幸感を植え付けられたように、うわ言ばかりが口から漏れる


チクリ…チクリ…


割れ目とはまた別の、腕や足に群がったハチたちが、トーカの体に針を刺していく

ともすれば、少女の体など貫いてしまいそうな針先を、器用に、丁寧に

彼女の肌に一つ一つと、血の跡もにじませずに、先端を埋め込んでいった


「ひゃっ…あは、ふわぁ…あぁぁ、はぁぁ…あぁぁ…」


溶ける、溶ける、トーカの意識が泥沼のように溶けていく

ハチの針に刺される度、ハチの針がささる程

トーカの肌に快感が伝わり、それが全身回って彼女の体を熱くしていった


一つ…また一つ…


ハチたちに群がられながら、その針を刺されながら

割れ目の向こう側、トーカの子宮にハチの卵が植え付けられていく


叫び出したい光景、絶望に潰されたいのに

どうしてか、卵の重さを感じ取る度に、トーカの心は喜びに打ち震える


「あぁ、もっと…もっと、トーカにたまごぉ、わた、おかあさんに…あ…」


自分でも何を言ってるのかわからない


意識の向こう側で理性が何かを叫んでいるが

そんなことよりも産み落とされる卵が愛おしくてたまらない


ズルリ…


トーカの割れ目から、ハチの針が抜けていく

そのままハチが飛び上がると、今度は倒れていたシノブの元へと降り立って、大きな両顎を開いていた


「あ…あ…。ごしゅじん…さま…だ…め」


その光景に、トーカの瞳に僅かばかりの理性が戻るが、それで何が出来るわけもなく

群がっていたハチの一匹が、再びその針の先端をトーカの割れ目に突き立てると

直ぐに、甘い声が上がり、理性が向こうへ押し流されていった


「あぁぁぁっ、あっ、あっ、ふぁぁぁぁっ!!」


言葉に鳴らない声を上げ、ヨロヨロと首を振るトーカ

卵を産み付けていたハチとは違い、ただただ突き刺した針でトーカの膣は掻き回されていた

グチャグチャと愛液が泡立つほどに犯されながら、トーカは甘い声を上げ続ける


強く、深くに、突き刺さったハチの針が子宮に届くと、その先端からは熱い精液が吐き出された

愛情も、欲望もない、ただの生殖行為

卵の詰まった子宮に、更に精液を注がれて、トーカは絶頂に達してしまっていた


針の抜かれた割れ目から、溢れた愛液と一緒に、ハチの流し込んだ精液が零れ落ちてくる


これでおしまい、もう終わり


「はぁ…はぁ…ああぁぁ…」


朧気に浮かんだ誰かとの性交の記憶、そんなものが薄れるくらいの衝撃がトーカの心を満たしていく


「あ、あ、ごしゅじん…さま」


産み付けられて、犯されて、絶頂させられて、快感の余韻に理性が漂う

頬を伝う涙は快楽に染まり、ハチの突き刺す針がトーカに快感を植え付けていく


「ふわぁぁぁぁっ…」


溶けたような、甘えるような悲鳴


射精を終えたハチが何処かへ飛び立つと、今度は別のハチがトーカの割れ目に針を突き刺していた

同時に、絶頂に達した割れ目からは潮が吹き上がり、ベチャベチャとハチの腹を汚していく


けれど、そんなことは意に返さずに


ハチは割れ目に突き刺した針を乱暴にゆすり始め、機械的なまでにトーカの胎に精液を収めて行った


繰り返し、繰り返し、何度も、何度でも…


群がるハチが居なくなるまで、トーカは胎に精液を注がれ続け

壊れるほどの快感は彼女の理性を完全に消し去ってしまっていた


最後のハチが射精を終えると、再びハチがトーカの体に群がってくる

気付けばシノブの体は何処にもなくなっていて

快感に壊れた少女の体も、ハチの羽音と共に巣の奥へと消え去っていた





「かーえーでちゃんっ! あーそーぼっ!」


縁側に響く元気な声


無垢で、真っ白で、白々しい笑顔を浮かべたの女の子は

何の遠慮もなく靴を脱ぎ散らかすと、屋敷の中に上がってくる


「…ふわぁぁ。何だって言うのよ」


その声に誘われるでもなく、屋敷の奥から一人の女が現れる

墨をぶち撒けたように髪を乱し、まるで寝起きを隠すでもなく赤い着物を引っ掛けながら

その面倒を隠すでもなく、気だるい視線を女の子に向けていた


「なにじゃないっ、あそんでっ! あーそーんーでーっ!」

「はぁ…はいはい。それじゃあ。最後まで黙ってた方が勝つゲームをしましょうか…」


縁側の梁に背を預け、楓は飛び込んできた女の子を抱きとめる


「え、なにそれ? 楽しいの?」


見上げてくる不思議そうな顔に手を置きながら

その白い髪を柳のような指で梳きながら、楓は意地悪に微笑むと


「はい、マムルの負けー」

「え、あっ!? ずるいっ、ずるいったらっ!! ずるいんだからっ。今から、今からだよっ、ねっ?」


負けず嫌いか、縋るようにマムルが掴んだ楓の服は、見る見ると乱れていくが

しかし、続く沈黙にマムルは掴みかかる手を緩め、不思議そうに楓を見上げると


「あれ? 楓ちゃん?」

「はい、マムルの負けー」

「あぁぁぁっ! ばかっ、もうっ!! 楓ちゃんっ、いじわるっ!!」

「ふふっ」


ポカスカと叩いてくる小さな手を取って、楓は文句を流し続けるマムルの幼い唇塞いでいた


「んっ、ちゅっ…ぁ、かえ、んんぅ…」


口を塞ぎ、呼吸さえ奪うように唇を重ね、伸ばした舌でマムルの口内を舐っていく

次第に抵抗のなくなっていく小さな体を抱き寄せると、その純白のスカートの中に手を滑らせていった


「あっ…楓、ちゃん?」

「なぁに? 遊ぶんじゃなかったの?」

「そうじゃなくって、そうだけど。だって、さっきカヤが、森で…」

「ああ、まあ…良いんじゃないの?」

「でも、せっかく楓ちゃんが…んっ」

「ちゅっ、はぁ…。なぁに、あんなのが欲しかったの?」

「いらない。いらないけど…またあの子が勝手して」

「ふふっ。だから良いんじゃない」


不満そうなマムルの頭を撫でて、楓は薄く微笑んだ


今頃あの子は、きっとあの子は、壊れたオモチャを森の外に運んでいる頃だろうか?

無駄な努力。自分がまだ人間のつもりで、その哀れみは郷愁のようでも美しい

いつか壊れるだろう。いつ壊れるだろう、そんな期待を彼女はいつまでも裏切り続け

今日もまた、人間の振りを続けながら、まだ人間のつもりでいるんだから捨てがたい


「それで? マムルはいつまで他の女の話をするつもり?」

「ああっ、ちがうのっ。そうじゃなくってっ、マムルはただっ!」


私に嫌われまいと、必死になるマムルが可愛らしい

多少やかましいのが玉に瑕だが、寝起きの馳走には丁度いいだろうか


「ん…ちゅっ」


もう一度、マムルの唇を塞ぐと

楓は彼女の小さな体を抱えて、屋敷の奥へと消えていった



ーおしまいー



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