2015-10-02 09:45:23 更新

概要

妄想垂れ流しのうみえり。
もしもμ'sとか関係なかったら、ただの園田海未とただの絢瀬絵里だったら。
今回もTwitterにてタグお借りしました。
#キスの格言ミューズ 瞼の上:憧憬


仕事ばかりでここまで来てしまった。大した趣味もなく、貯金とストレスだけが溜まっていく。それなりの地位にいるし、別に仕事に不満があるわけではないけれど、このままでいいのだろうかと思う日が無い訳もなく。

「いえ、特に指名は……あの、優しい人で、お願いします」

ちょっとした出張で手狭なビジネスホテルにかれこれ4日、強くも拘りも無い故に適当な安酒を流し込み、無理矢理眠る日が続いた。

「えぇ、ルートホテルの315…はい、間違いないです」

仕事を始めてからは1人暮らし、恋人なし。焦ったことは無いけれど、寂しいと思うことはあった。偶然、人肌恋しいのと酔いが回ったタイミングが重なってしまったのがいけなかった。

「……はい、よろしくお願いします」

睡眠薬代わりのアルコールも効かず、1人で居ることが怖いとすら感じた。 だれでもいい、隣にいてほしいと思った時、目に付いたのは一枚のチラシ。お泊まりコース、おまかせ。誰でも良かった、お金ならある。


30分も経たず、ドアがノックされる。心臓が早鐘を打つ。初めて女性と寝るのがまさかこんな形になってしまうなんて。恐る恐るドアを開けると、大きな手提げを持った金髪の女性が立っていた。

「お電話ありがとうございます、園田さんでお間違いありませんか?」

「は、はい、そうです……」

「…えり っていいます。よろしくね」


少々目つきが怖かったものの、注文通り優しい方だった。後ろに束ねた金髪は染めたものではなく、ロシアの血らしい。どこまで本当のことかわからなかったけれど、その瞳はビー玉でも嵌めてるのではとおもうほど美しく、鼻筋はシャープな線を描き、肌は陶器のように白く滑らかだった。

料金を支払い、自己紹介まじりの雑談の後、シャワーに連れて行かれた。私はもう済ませたと言いたかったが、お酒も飲んで汗ばんでいたし言われるがまま従った。そういえば性的な目的で呼んだのでは無いということを伝え忘れていたと、彼女が私の腕をバストを使って洗い始めた時に思い出した。


「はい、洗えたよ……拭こっか」

「あ、あの」

「ん?」

「シャンプーは、しないのですか……?」


彼女はぽかんとした顔で私を見て、くすくす笑った。


「いいわ、洗ってあげる」

「あ……すみません、よくわからなくて」

「いいのよ気にしないで…なんか、妹みたい」


狭いユニットバスには鏡が無く、どんな表情をしているのかわからなかったけれど、暖かい口調が心に染みていき、泣きそうになった。シャンプーを絡ませた指がするすると髪に潜り込む。


「え、えりさんは何年生まれなんですか?」

「私?……年生まれよ」

「あ、私の一つ上ですね…本当にお姉さんみたいです」


人に髪を洗ってもらうなど何十年ぶりだろう。心が確実に満たされていく。えりさんにはどうも妹さんがいるらしくて、髪の色は亜麻色なのだと、トリートメントを馴染ませながら話してくれた。


「あはは、園田さん絶対私より大人っぽいわよ」

「いえ。そんな……」

「あ、お湯流すわね?」


私の身体を柔らかな手つきで拭いてくれる姿をぼんやりと眺めていた。あぁそういえばいつもより飲んだっけ。髪を解いたえりさん、すごく色っぽくてかっこいいなぁなんて考えたら、脳が沸騰しそうになる。

ふらふらとベッドに戻り、下着をつけようとしたら裸のまま押し倒された。


「あの、えりさん……?」

「下着つけてもすぐ脱がしちゃうよ?」

「う……ぁ、の、違うんです私」

「…怖くなっちゃった?」


余裕の笑みを浮かべて、私のお腹に指を這わせる。いっそ全て任せて、なにもかも忘れるほど滅茶苦茶にしてもらおうか。


「あの、私」

初めてなんです。なにもかも。

「園田さん、キスしていい?」

魅力的だけど、してみたいけど。

「……っ!」

まだ、今じゃ、ない。

「力、抜いて?」

「やめてくださいっ!!」

「……ぁ、ごめん…なさい」

あぁ違うんです。お願いですから謝らないで。

「びっくりしちゃった?本当、ごめんなさい」

「いえ…すみません大きな声出して」


半ば泣きながら、全て話した。眠れなくて、誰かいて欲しくて、どうしていいかわからなくて呼んだんです。営業妨害だったらごめんなさい。

恋人なんていたことないんです。セックスどころかキスすらしたことないんです。怖くて声を荒げてしまったんです、えりさんのことを拒絶したんじゃないんです。


「…迷惑じゃないわよ」

「本当ですか」

「隣おいで。お姉さんが抱っこして寝てあげる」


色々な意味で柔らかく包んでもらい、眠った。自分でも驚くほどすんなりと寝付けた。

次の日の朝、えりさんは私を起こして帰っていった。部屋を出るとき、「また呼んでね」と言って瞼にキスしていった。あれもロシアの所以なのだろうか。どうしてキスしていったのだろう、無論仕事だからではあるけれど。



お金ならあるんです。鵜呑みにしていいですか。また呼んでいいですか。





#キスの格言ミューズ「瞼の上:憧憬」


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2015-10-04 16:26:24

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2015-10-04 16:26:22

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