2018-01-09 17:23:02 更新

概要

地の文混じりでやっていきます
提督が頻繁に前線に出てくる最前線鎮守府のお話
気長にやります。本気のとこと適当なとこがちょくちょくあります
毎回のごとく、鎮守府のモチーフは作者のブラウザデータになります

4月6日。文章内で修正箇所があったため、少し訂正しました


前書き

コメント返し
1、金属製の餅様
お褒めの言葉、ありがとうございます
なるべく簡潔に伝わりやすいように、自分なりに考えてやっているつもりなので
本当に嬉しいです
なるべく更新するよう心がけますので、気長にお待ちいただければ幸いです


提督「戦いが私を呼んでいるからです」


神通「変なことを言う前に下がってください!」


提督「大丈夫、あんな砲弾にやられたりはしません」キリッ


神通「何かあったらどうするんですか!」


暁「あ、あの・・・・・・」


提督「どうかしましたか、暁ちゃん」


暁「敵、来てるけど・・・・・・」


提督「あっ!」


神通「提督がここにいるせいです!」


提督「私のせいではありません! とにかく、夜襲は失敗です! 全艦、最大船速でここから離脱してください!」


暁「分かったわ!」


神通「もうっ! 了解です」


提督「うまくいくと思ったのですが・・・・・・」


神通「提督がいなければ間違いなく成功でしたよ・・・・・・」











提督「最前線というのはなかなか忙しいですね・・・・・・」


大淀「まあ戦場の一番前ですから」


提督「神通さんにも怒られてしまいました・・・・・・」


大淀「提督が前線に出たら誰だって怒ります」


提督「そういうものですか?」


大淀「そういうものです」


提督「ちょっと何を言ってるのか分からないですね」


大淀「分 か っ て く だ さ い」


提督「あ、はい」


龍驤「なんや、また前線に行ったんかいなキミ」


提督「私が前線に行かないでどうするんですか」


大淀「もうっ! 龍驤さんからも何か言ってください!」


龍驤「まあ、ええんやない? たまには」


大淀「それにしても頻度が多すぎます!」


提督「最前線ですから」


龍驤「最前線やもんな」


大淀「お2人とも・・・・・・!」


吹雪「あの・・・・・・遠征艦隊、ただいま帰還しました」


提督「おかえりなさい」


龍驤「お疲れさん」


大淀「あ、お疲れ様です」


吹雪「ありがとうございます。資材はすでに工廠に運び込んでますから」


提督「そうですか。では今日はもう休んでください」


吹雪「はい、了解です」


提督「では私は資材の確認をしに行ってきますので、これで」


大淀「了解しました」


龍驤「ウチも付いていくわ」


提督「じゃあ行きましょうか」


提督と龍驤はゆっくりと執務室から立ち去る。


吹雪「あれ? いいんですか?」


大淀「何がです?」


吹雪「完全にお説教が始まるものだと思ってたんですけど」


大淀「あ」


2人を呼び戻そうと慌てて執務室のドアを開けた時には、すでに姿はない。


大淀「やられました・・・・・・!」


吹雪「あ、あははは・・・・・・」


ここは最前線にあるブイン鎮守府。


日々進行してくる深海棲艦と一進一退の戦いを繰り広げている。


そんな激戦区での艦娘と提督、そして戦いの毎日を紡ぐ物語である。











龍驤「なあ司令官、資源が残り少ないんとちゃうん?」


提督「気のせいですよ」


明石「気のせいじゃないですよ!」


提督「なぜでしょうね」


明石「出撃する分、損傷が多いからですよ」


龍驤「最近、敵さんも本気でここ攻めてくるからかいなぁ」


提督「そうですね。確かに依然と比べると動きが活発です」


明石「前線基地がここにあることが嫌なんでしょうねぇ」


提督「それだけだといいのですが・・・・・・」ボソッ


龍驤「・・・・・・」


明石「? 何か言いました?」


提督「なんでもありません。それにしても資源がなくなってきていることは問題ですね」


龍驤「せやなぁ・・・・・・。遠征艦隊を増やすのはどうや?」


提督「そうしたいのは山々なんですが、あまりそちらに戦力を割り振るとここの防衛が厳しくなります」


明石「ただでさえ敵からの猛攻をなんとか防いでいる現状で、それは悪手ですねぇ」


提督「ただこのままだと備蓄が尽きることも明白。さて・・・・・・どうしますかね」


龍驤「難しい問題やなぁ・・・・・・」


提督「・・・・・・このことは大淀さんと話してみます」


明石「それがいいかもしれませんね」


龍驤「まあ、今日は無理やな」


明石「何か都合が悪いことでも?」


提督「ええ、まあ・・・・・・そうですねぇ」


龍驤「うーん・・・・・・ちょっち厳しいなぁ」


明石「?」


提督「とにかく、もう一度吹雪さんには遠征に行ってもらわないといけませんね」


龍驤「なら吹雪探そっか」


提督「そうですね」


明石「行ってらっしゃいませー」


激戦区とあって支援物資などが輸送されることは非常に困難であり、前線基地を維持するための資源は自分たちで確保しなければならない。


だがここ数週間、敵がこの前線基地へと連日のように襲撃を仕掛けてくるようになる。


そのため、緊急の支援艦隊および物資が到着する予定になっているのだが・・・・・・。


提督(到着予定日をすでに4日は経っています。これは何らかの妨害があったか、それとも・・・・・・)


龍驤「なあ」


提督「なんですか?」


龍驤「支援部隊に何かあったんとちゃうか?」


提督「そうですね・・・・・・。その可能性は高いでしょう」


龍驤「・・・・・・どうするつもりや」


提督「捜索を行います」


龍驤「余裕は?」


提督「正直に言うとありません。いくら最前線のために集められた精鋭艦が揃っているとはいえ、少数精鋭。ここを空ける余裕は・・・・・・ない」


龍驤「そうやなぁ・・・・・・。それでもやるんやろ?」


提督「ええ。このままだといずれにしろ、前線は崩壊するでしょう。それを防ぐためには何としても資源を手に入れるしかありません」


龍驤「一か八かやなぁ・・・・・・。支援が全滅してる可能性もあるんやろ?」


提督「それでも今は賭けるしかありません」


龍驤「捜索は誰が行くんや?」


提督「私自ら行きましょう」


龍驤「いやそれダメだって言われてたやん」


提督「私は提督です」


龍驤「せやな」


提督「ゆえに前線に行くことができる」


龍驤「その理屈はおかしいなぁ」


提督「任せてください。必ず帰ります」


龍驤「死亡フラグやで、それ」


提督「私が死ぬわけないでしょう?」


龍驤「死ぬ可能性は遙かに高いやろ」


提督「・・・・・・そんなことはないですよ」


龍驤「ウチの目を見て同じこと言えや」


提督「とにかく、現状動けるのは私だけです」


龍驤「それは違うなぁ」


提督「?」


龍驤「ちょうどウチは今、暇なんよ。それこそ死にそうなほどになぁ」


提督「・・・・・・」


龍驤「あんまり暇やと腕が鈍ってしまいそうで嫌やなぁ」


提督「ですが龍驤さんは」


龍驤「ここで守りにいてくれないと困る、っちゅうわけかいな?」


提督「・・・・・・ここで一番力があるのは間違いなく貴女です。その貴女がここを空けてしまうのはさすがに」


龍驤「ウチがいなくてもここは大丈夫や。それこそ五航戦の2人がおる」


提督「けど」


龍驤「なんやなんや、そんなにウチのことが心配なんかいな? それともウチじゃ足手まといになると?」


提督「そんなことは・・・・・・!」


龍驤「じゃあ決まりやな! ウチとキミでの少数精鋭で支援の子らを探し出して、救出してここへ戻る。それでええな?」


提督「・・・・・・分かりました」


龍驤「んじゃ、ウチは準備してくるから司令官は話をちゃんとつけてくるんやで?」


提督「大淀さん、怒るでしょうか?」


龍驤「いや、さっき怒られたばっかやん」


提督「それもそうでした。・・・・・・大丈夫です、任せてください」


龍驤「心配してへんよ。なんだかんだできっちりしてくるって分かっとるからね」


提督「そうですか。それでは後ほど」


龍驤「ほーい」


提督「まったく・・・・・・敵いませんね」


居場所も生存しているかも分からない支援艦隊の救出作戦。


これほど無謀な作戦だというのに軽いノリで一緒に着いてくるという彼女。


提督(自分が沈む可能性の方が高いというのに。貴女は本当に強い・・・・・・)


龍驤と別れ、先ほど逃げてきた執務室へと足を向ける。


提督「大淀さんはいますか?」


大淀「提督、もう戻ってきたんですね」


提督「重要な話がありますから」


大淀「・・・・・・」


提督「私はこれから支援艦隊の救出作戦を行います」


大淀「無謀です。所在も生存しているかも分からない艦隊の救出へと向かうなんて、無茶が過ぎます」


提督「それは分かっています。ですが、いずれにせよ支援がなくてはこの最前線基地は崩壊します」


大淀「それは・・・・・・」


提督「大淀さんも分かっているでしょう?」


大淀「・・・・・・」


提督「なので私と龍驤さんの2人で支援艦隊の捜索・救出を行います」


大淀「また提督自ら行くのですか!?」


提督「ここの防衛を最優先に考えると、私が行くのが最適でしょう?」


大淀「ダメです! 提督が戦死した場合、いったい誰がここの指揮を執るというのですか!?」


提督「大淀さんです」


大淀「そう簡単に決めないでください! ・・・・・・私では荷が重すぎます!」


提督「大丈夫ですよ。大淀さんなら」


大淀「でも・・・・・・!」


提督「それに私は必ずここに戻ってきますから、そんな心配は必要ありません」


大淀「・・・・・・どこからそんな自信が来るんでしょうか」


提督「私が提督だからですよ」


大淀「・・・・・・意味が分かりません」


提督「許可、してもらえますね?」


大淀「私が許可を出さなくても勝手に行きますよね?」


提督「・・・・・・そんなことはないですよ?」


大淀「目を見て言ってください。・・・・・・はぁ、仕方ありませんね」


提督「いいんですね!?」


大淀「ダメと言っても行くんですから、もう良いと言った方が気が楽です」


提督「ありがとうございます」


大淀「・・・・・・必ず戻ってきてください」


提督「大丈夫です。任せてください」


大淀「・・・・・・」


提督「・・・・・・では出撃準備に掛かります」


大淀「ご武運を」











提督「いつ以来ですかね、龍驤さんと出撃するのは」


龍驤「そうやなぁ・・・・・・3か月ぶりくらい?」


提督「3か月前というと・・・・・・大規模な反攻作戦以来ですか」


龍驤「せやなぁ」


大規模な反攻作戦。


とある鎮守府が敵泊地に奇襲を仕掛ける予定だったが、逆に待ち伏せを受け主力艦隊が壊滅。


だが敵にも甚大な被害を与え、休む間も与えず他鎮守府の合同艦隊による攻勢を仕掛け敵泊地を撃滅。


深海棲艦側が作戦と言えるようなものを使ってきたことにより、こちらの危機感が一気に跳ね上がるキッカケとなったものだ。


提督「あの時はちょっとした地獄でしたね」


龍驤「まさかウチがあんだけの数を相手にしなくちゃいけないとは思わなかったわ」


提督「でも龍驤さんなら大丈夫だと信じていましたよ」


龍驤「その信頼は嬉しいけど・・・・・・キミも暴れまわってたなぁ」


提督「提督はそれが仕事ですから」


龍驤「提督以前に駆逐艦での働きじゃないって」


提督「敵に肉薄して魚雷を叩き込む。駆逐艦の仕事ですよ」


龍驤「まあ・・・・・・そういうことにしておくわ」


提督「?」


龍驤「そんなことよりも、そろそろ索敵機を出すで? ええやろ?」


提督「そうですね。お願いします」


龍驤「はいはい、ウチに任せとき。さぁ仕切るで! 索敵機のみんな、よろしく!」


彼女の巻物から艦載機が4機空へと飛び立つ。


4機はある程度高度を上げていき、雲に届くか届かないかくらいの辺りまで上昇すると別々の方角へと飛び去って行く。


提督「あとは索敵機の報告待ち、ですかね」


龍驤「それまで敵さんに見つからなければええけどなぁ」


提督「それは無理でしょう。支援艦隊が仮に生存していれば、敵も捜索している可能性がありますから」


龍驤「っちゅうことは、敵さんに見つかったら支援艦隊は生きてるってことやな」


提督「そうですね」


龍驤「ならむしろ敵さんに見つかった方がいいんかいな?」


提督「いえ、隠密に動きましょう。こちらは2人しかいないのですから」


龍驤「そうやった、そうやった」


提督「とりあえず、このまま北に進路を取りましょう」


龍驤「何か根拠でもあるんかいな?」


提督「このまま進むと小島が多いんですよ。地形的にも複雑です」


龍驤「つまり、身を隠すのには最適なんやな」


提督「ええ。奇襲を受ける可能性も否定できませんが」


龍驤「それに関しては大丈夫そうやけどなぁ」


提督「はい、大丈夫です」


龍驤「では、ちょっちスピード上げようか」


提督「・・・・・・早速敵ですか?」


龍驤「まだ距離は離れてるけどな。このままの速度やと接敵されるかもしれんで」


提督「それはいけませんね・・・・・・。では増速して行きましょう」


龍驤「わかったで」


そうして2人は静かに速度を上げ、重く沈んだ暗い空の下、真っ黒な海を駆ける。


その頃、時を同じくして何者かがある場所を目指して海へと飛び出す。


闇の中、その長い髪を風にさらしながら、全てを賭けて走る。


ただ一つの希望を求めて。


提督「龍驤さん」


龍驤「ダメや。日も沈んできてるみたいやし、天気も最悪。こりゃほとんど何も見えんわ」


提督「そうですか・・・・・・。危険ですが低空での索敵をお願いできますか?」


龍驤「任しとき。それにウチの艦載機は無敵やで? 少々のことなら大丈夫や」


提督「そうでしたね」


龍驤「君はしっかり周辺警戒を頼むで」


提督「ええ。任せてください」


龍驤「っとと、さっそく何か見つけたみたいやで」


提督「敵ですか?」


龍驤「ちょい待ち・・・・・・ふむふむ」


提督「・・・・・・」


龍驤「こっから6キロ先の海上を艦娘が航行中みたいやで」


提督「恐らく支援艦隊でしょうね」


龍驤「せやろなぁ。ただ1隻だけみたいや」


提督「・・・・・・他は全滅したか、あるいは」


龍驤「どこかに隠れてるかやな」


提督「とにかく、その艦娘と合流しましょうか」


龍驤「そうやな。ただちと面倒なことになりそうやで」


提督「?」


龍驤「その付近に敵艦が集結してる」


提督「・・・・・・気付かれていますね」


龍驤「ここからは戦闘解禁っちゅうことやな」


提督「ええ。もう隠れる必要はありません。彼女を回収して撤退が最優先です」


龍驤「なら、全力でいかせてもらうで」


提督「接近する艦は何とかしましょう」


龍驤「第一次攻撃隊、発艦開始や! 目標は味方艦娘に近づく敵艦、一撃必中でよろしゅうな」


提督「増速します。先回りしましょう」


龍驤「了解!」


艦載機が次々と空へ飛び立つ。


味方艦を守るため、その身に必殺の武器を携え大空へ消えていく。











??「敵に気付かれてるけど・・・・・・まだ仕掛けてくるわけではなさそうね」


??「大丈夫、まだ魚雷も主砲もある。それに私がここで沈むわけにはいかない・・・・・・!」


??「助けを待ってる仲間がいるんだから、絶対にここを切り抜ける!」


たった1人で海を駆ける彼女はそう呟くと大きく息を吸い、これから起こるであろう戦いに備え主砲へ弾薬を装填する。


??「さあ、行くわよ・・・・・・! 特型駆逐艦の底力、見せてあげる」











龍驤「敵艦隊確認や。戦艦ル級に随伴艦が軽巡ホ級、それと駆逐イ級が数隻やな」


提督「この付近には今のところ敵艦は見えません。追加の艦載機を放つなら今ですね」


龍驤「分かったで。じゃあ第一次攻撃隊、仕掛けるで!」


彼女が大きく手を振り下ろすと、飛び立っていた艦載機が次々と急降下を始める。


大きく唸りを上げ、高度をぐんぐんと下げていく艦載機に敵艦はまだ気付いていない。


そして、敵がハッキリと視認できる高度まで下がったところで抱えていた爆弾を全て投下する。


そこでようやく戦艦ル級は頭上の艦載機に気付き、対空砲火を撃とうとする。


だが、もはや時すでに遅し。


精確に放たれた爆弾が敵艦へと次々に降り注ぎ、爆発と火炎を撒き散らす。


悲鳴を上げることすら許さない猛攻で、複数いた艦が暗い海の底へと消えていく。


龍驤「よっしゃ。敵艦全部撃沈や」


提督「さすがですね」


龍驤「第一次攻撃隊は撤収。続いて第二次攻撃隊、発艦始めや!」


提督「この攻撃で敵も空母がこの付近にいることに気付いたはずです」


龍驤「敵にも空母がいないことを祈るだけやな」


提督「今のところは存在しないでしょうね。空母がいれば、今頃味方に空襲が行われているでしょうし」


龍驤「そうやなぁ。とりあえず艦戦隊も直掩として上げるで」


提督「私たちの方よりもあの艦娘の方に直掩を付けるべきですね」


龍驤「了解。艦戦隊のみんな、味方の直掩は任せたで!」


攻撃機が次々と発艦を済ませ、間髪入れずに艦戦が甲板から飛び出して空へと上昇していく。


提督「さて、このまま順調に合流できればいいのですが・・・・・・」


龍驤「難しいかもしれんなぁ」


提督「・・・・・・敵ですか?」


龍驤「このまま前に進み続けると、敵の主力っぽいのと鉢合わせするで」


提督「敵艦隊の規模は?」


龍驤「戦艦と重巡、それに駆逐艦が2隻ずつ。打撃艦隊やな」


提督「あまり戦いたくない艦隊ですね・・・・・・」


龍驤「なんだかんだでこっちの戦力は空母と駆逐艦やもんな」


提督「苦戦するでしょうし、その間に増援が来るのは間違いないです」


龍驤「あまり長引くとアカンなぁ・・・・・・」


提督「さて・・・・・・どうしましょうか」


龍驤「艦攻隊で奇襲しても全部沈めるのはちとキツイなぁ」


提督「・・・・・・戦艦だけでも沈められないでしょうか?」


龍驤「戦艦のみ集中して沈める、か。あとはキミがやるんやな?」


提督「ええ」


龍驤「それでも時間のロスはあるやろうな」


提督「そうですね・・・・・・では二手に分かれますか」


龍驤「それしかないかぁ」


提督「大丈夫です。すぐに合流しますよ」


龍驤「分かってるって。じゃあウチは艦攻隊を発艦次第、迂回ルートを行くで?」


提督「いえ、このまま突っ切ってください」


龍驤「なかなか大胆なことを言うなぁ」


提督「迂回しても他の艦隊と遭遇しないとは限りませんし、これが一番良い選択です」


龍驤「ウチは仮にも空母なんやけどなぁ」


提督「当たらなければ大丈夫ですよ」


龍驤「うへぇ・・・・・・。ブラックやなぁ」


提督「いいから行きますよ」


龍驤「へーい」


提督「機関全速一杯! 敵艦隊との交戦を開始します」


龍驤「艦攻隊の皆! お仕事や。この先にいる戦艦2隻を沈めてきてや!」


艦攻隊が次々と発艦し、ほぼ同時に提督が加速を開始する。


航空機が空へ消えていく頃には全速力で海を駆ける2人の姿があった。


提督(魚雷装填完了、残弾は6発・・・・・・。まあ、なんとかなるでしょう)


龍驤「このままやと後20分で視認できる距離になるで」


提督「あの艦娘とはどのくらいで合流できますか?」


龍驤「そうやなぁ・・・・・・このままを維持して40分後」


提督「1時間もあれば余裕ですね」


龍驤「せやけど、このまま順調に行けばやで?」


提督「問題ありません」


龍驤「自信あるなぁ・・・・・・」


提督「龍驤さんもなんだかんだ言って不安そうには見えませんね」


龍驤「そりゃ、ウチはもう慣れっこやからなぁ」


提督「なら失敗することはないですね」


龍驤「あー」


提督「? 何か?」


龍驤「・・・・・・何でもない。そんなことより艦攻隊、仕掛けるで」


彼女は目を閉じ意識を艦載機に集中させると、ちょうど艦攻隊が魚雷を投下した瞬間だった。


激しい対空砲火を潜り抜けた精鋭の放った攻撃は航行していた戦艦2隻に集中し、大爆発を起こす。


誰がどう見ても2隻が同時に撃沈されたことは明らかだ。


その戦果を確認し、ゆっくりと目を開く。


龍驤「戦艦は2隻とも沈めたで」


提督「さすがですね」


龍驤「まあ、ウチの子たちに掛かれば余裕やな」


提督「さて残りは私が」


龍驤「ウチは少し速度を落とすで? 艦載機の子らも着艦させたいし、それに巻き込まれたくはないからなぁ」


提督「巻き込んだりはしませんよ・・・・・・?」


龍驤「なんでそこで疑問文になるねん・・・・・・」


提督「いえ・・・・・・ちょっと自信が」


龍驤「恐ろしいなぁ」


提督「冗談です」


龍驤「冗談に聞こえんかったんやけど・・・・・・」


提督「とにかく、私はこのまま先行します」


龍驤「分かったで。ウチは艦載機の子らを回収したらすぐに追いつくわ」


提督「それまでに敵は殲滅しておきますね」


龍驤「へいへい」


2人はそこで会話を止め、提督は速度を維持しつつ前進する。


提督「さて、やりましょうか・・・・・・」


腰にぶら下げた刀の抜き具合を親指で確かめつつ、大きく深呼吸をする。


提督「さあ、素敵な戦いを始めましょう。この美しい空の下で」











??「っ! 爆発!?」


??「みんなのいた方、ではないみたいね。・・・・・・よかった」


??「でもこんなところで爆発なんて、おかしいわね」


??「もしかしたら・・・・・・味方の艦隊がこの付近まで来てるの?」


??「・・・・・・行ってみる価値はありそうね」


彼女は音のした方角へと大きく進路を変える。


それが大きな選択になるとは知らずに。











提督「敵艦確認」


視認できる距離まで接近すると敵の重巡がこちらへ主砲を向け、斉射を開始する。


光がチカッと瞬き、凶悪な砲弾が迫りくる。


提督「精度が甘いですね。とりあえず撃ってきた、という感じでしょうね」


速度を落とすことなく右舷へ舵を少しだけ切り、難なく攻撃を回避する。


次の砲撃が来るまでに可能な限り距離を縮めようと全速で海を走る。


その間も敵の主砲が何度も火を噴き、提督を粉々にしようと降り注ぐ。


それを右へ左へと向きを変え、あるいは減速と増速を繰り返し躱していく。


提督「射程圏内、ですねっ!」


駆逐艦からの砲撃も始まり激しさを増す中、魚雷の狙いを定め一発だけ発射する。


水中に沈み込み、気泡を上げながら敵へと突き進み始める。


駆逐艦がそれに気付き、左舷へと回避行動をとろうとする。


提督(それを待っていたんですよッ!)


明石に改造してもらっているタービンを起動させ、瞬間的に急加速し一気に駆逐艦へと肉薄。


提督「―ッ!」


音よりも早い抜刀術により、駆逐艦を一太刀で斬り伏せる。


真っ二つになった駆逐艦はその場で大爆発を起こし、提督の姿を煙の中に隠す。


重巡が容赦なく砲撃を加え、それによって煙はすぐに晴れるがそこに提督の姿はない。


提督「ふっ!」


一瞬で重巡の懐へと潜り込んだ提督の攻撃が胴体を真っ二つに切断し、辺りにドロドロとした液体を撒き散らす。


至近距離にいたもう1隻の重巡が怒りと恐怖が入り混じった視線を提督へ向ける。


―が、すぐに水柱が重巡のいた場所で上がり大爆発を起こして皆底へと消えていく。


提督「酸素魚雷の威力、さすがですね」


そう呟く頃には最後の1隻である駆逐艦へと目線を合わせている。


こちらに主砲を向け、発砲してくるが少し離れたところへ砲撃が刺さる。


提督「終わりです」


駆逐艦が次の砲撃を行うよりも早く、距離を縮める。


決着がつくのはすぐだった。


提督「・・・・・・龍驤さん、終わりましたよ」


龍驤『相変わらず早いなぁ』


提督「そちらはどうですか?」


龍驤『こっちももうすぐ着艦作業は終わりや』


提督「そうですか」


龍驤『まあ、そう慌てんでも合流はすぐできるで。それよりもちょっち良いお知らせや』


提督「良いお知らせ?」


龍驤『さっきの戦闘で合流しようとしてた娘がこっちに向かっとる』


提督「それは朗報ですね」


龍驤『せやな』


提督「そろそろ姿が見えますかね?」


龍驤『見えてもおかしくないなぁ・・・・・・』


提督「おや?」


龍驤『見えたんかいな?』


提督「それらしき艦影が」


龍驤『分かった。急いでそっちに行くわ』


提督「お待ちしてます」










??「あれは・・・・・・艦娘?」


先ほどまで戦闘があったことを証明するよう黒煙が立ち上る中、一人の艦娘がこちらへ向かってくるのが見える。


??「助けが来たのね・・・・・・!」


救助が来るとは夢にも思っていなかったので、仲間の姿を確認しただけで涙が溢れそうになる。


??「でも、まだ泣くわけにはいかない・・・・・・」


左手で目元を拭うと表情を引き締め、彼女と合流するために速度を上げる。


??「早く合流して、みんなを助けるんだから・・・・・・! 絶対に・・・・・・!」











その頃、鎮守府では不穏な情報がキャッチされていた。


神通「敵機動部隊がこちらに進行している、ですか?」


大淀「はい。哨戒線からの打電によると空母ヲ級を旗艦とした2つの機動部隊群が向かっていると」


翔鶴「敵艦隊の編成は分からないのでしょうか?」


大淀「残念ながら・・・・・・」


瑞鶴「ったく、哨戒線の人たちももうちょっと詳しく教えてくれたら対策も取りやすいのに」


翔鶴「瑞鶴、そんなことは言ってはダメよ。こちらに機動部隊が向かっていることが分かっただけでも対策を考える時間はできてるんだから」


瑞鶴「翔鶴姉・・・・・・うん、まあそうだけどさ」


翔鶴「大淀さん、敵の進行ルートは?」


大淀「それが・・・・・・」


彼女はペンを使い、この周辺海域を表した地図に線を書き込む。


翔鶴「このルートは・・・・・・!」


瑞鶴「・・・・・・最悪だね」


その線はまさに今、提督たちが救出に向かっている海域を通過しているのであった。











??「あんた・・・・・・助けに来てくれたのね」


提督「ええ、そうですね。私たちもギリギリの戦いを強いられているので、物資と援軍は必要ですよ曙さん」


曙「まだ戦場に出てきてるのね。呆れた」


提督「私自らが戦場に立って指揮を執った方が、状況把握もしやすいですし何かと都合がいいですから」


曙「変わらないわね」


提督「そうでしょうか? まあそれよりも他の艦娘や物資はどこにいるのですか?」


曙「・・・・・・今は少し離れた島に潜伏中よ」


提督「やはり輸送中に攻撃に遭ったのですね」


曙「そうね。完全に不意をつかれたわ」


提督「被害状況は?」


曙「物資を運んでたタンカーは全滅、私たち護衛艦隊の半分は大破、もしくは中破。私だけなんとか動けるくらいの損傷で済んだわ」


提督「・・・・・・よく今まで生き延びられていましたね」


曙「航空機の偵察が皆無だったし、あいつら水上以外は特に警戒してないから」


提督「それは幸運でしたね」


曙「まったくね」


龍驤「やっと追いついたで」


提督「龍驤さん、よくぞご無事で」


龍驤「まあ、ウチは接敵せんかったからなぁ」


曙「久しぶりね」


龍驤「誰やと思ったら曙やないか。元気にしとったかいな?」


曙「まあ、なんとかね」


龍驤「そっかそっか」


提督「とりあえず一度鎮守府に戻りましょう。これ以上ここに留まるのも危険です」


曙「・・・・・・助けに行くんじゃなかったの?」


提督「今の私たちの戦力では、救助に行っても護衛しながら鎮守府に戻ることは不可能です」


龍驤「せやなぁ。それにもう日は沈んで夜や。奇襲に遭わないわけがないし、危険なだけや」


曙「・・・・・・そうよね」


提督「すぐにでも助けに戻りたいあなたには申し訳ありませんが、一度態勢を整えて行くべきですね」


曙「分かったわ」


龍驤「ずいぶん素直になったんやなぁ。あの頃とは別人みたいや」


曙「・・・・・・バカ言わないで。冷静に考えてその判断が正しいと思っただけよ」


龍驤「ふぅん」


提督「では話は纏まりましたね。戻りましょう」


曙「待っててね・・・・・・みんな。すぐ戻るから」


龍驤「・・・・・・」


提督「・・・・・・」


曙「・・・・・・それで他の艦娘は?」


提督「私たち2人だけですよ?」


曙「は?」


龍驤「せやから、2人だけや」


曙「・・・・・・バカなの?」


提督「動けるのが私たちだけだったんです」


龍驤「ウチらも最前線で戦う身や。ここを守るだけでも一杯なんやで?」


曙「そう・・・・・・」


提督「とにかく日は沈みました。慎重に退却しましょう」


龍驤「ウチはもう何もできんし、戦闘になると戦えるのが2人しかおらんからな、圧倒的に不利やで」


曙「分かってるわよ」


提督「ここからは曙さんの電探が頼りです。索敵はお任せします」


曙「ったく、本当に仕方ないわね」


龍驤「まあ気楽に行こうで」


提督「気を引き締めてください」


龍驤「分かってるわ!」


曙「・・・・・・緊張感ないわね」


3人は静かに移動を開始する。


敵に気付かれぬように慎重に、だが素早く。


見えない何かに追われるように。











龍驤「それにしても敵さん、なんやエライ来んくなったなぁ」


提督「いいことですね」


龍驤「そりゃそうやけど・・・・・・」


曙「何? 嫌な予感でもするっていうの?」


龍驤「うーん、そうやなぁ。悪い予感はするなぁ」


曙「ただの杞憂でしょ」


提督「杞憂だったらいいんですが・・・・・・。とにかく警戒して損はありませんよ」


曙「まるで提督みたいね」


提督「提督ですから」


龍驤「これでも一応そうなんやで」


曙「そうだったわね」


提督「・・・・・・」


龍驤「そんなふてくされなくてもええやろ? だいたい、提督っちゅうのに戦場に立つのは間違っとるんやし」


曙「そうね。鎮守府で指揮を執るのが普通の提督よね」


提督「ですが・・・・・・」


龍驤「そりゃキミの強さはウチがよう知っとるし、頼りになるのも間違いない」


提督「照れますね」


曙「・・・・・・」


龍驤「ただやっぱりキミはここに戻るべきやなかったと思うで」


曙「戻る・・・・・・?」


提督「・・・・・・私は自分の意志で戻りました。だから大丈夫です」


龍驤「・・・・・・」


曙「何の話?」


提督「ちょっとした思い出話ですよ」


龍驤「せやな」


その時の彼女たちの表情からは何も読み取れなかった。


思い出話という割には何かが抜け落ちているような気がした。


曙「そう・・・・・・」


提督「さて、もう少しでこの海域を抜けられそうですね」


龍驤「なんとかなったなぁ」


曙「そうね」


提督「もうすぐ鎮守府です。油断せずに行きましょう」


曙「っ!? 対空電探に反応!」


龍驤「・・・・・・嫌な予感が当たってしもうたなぁ」


提督「方角は?」


曙「私たちが来た方からよ」


提督「ということは敵の偵察機に間違いありませんね」


龍驤「この暗闇でも飛ばせるってことは、空母ヲ級フラグシップってことやな」


提督「敵機動部隊ですか。これは大変なことになりましたね」


曙「呑気なこと言ってる場合?」


提督「考え中です」


曙「・・・・・・真っすぐこっちに向かってきてるわ」


龍驤「見つかるのも時間の問題や」


提督「そうですね」


曙「このまま鎮守府に戻って迎撃する方が得策でしょ」


提督「それが一番いいのですが・・・・・・敵機動部隊が来るということは、敵は本格的に捜索を開始するということになります」


曙「捜索って・・・・・・まさか!」


龍驤「援軍の撃滅、やろうな」


提督「ええ。ですから、このまま戻ると援軍が全滅する可能性があります」


曙「・・・・・・」


龍驤「艦載機で援護しようにも、今は夜や。完全に敵さん有利やで」


提督「・・・・・・」


曙「私は戻るわよ。みんなを見捨てることなんてできない」


提督「見捨てるわけないですよ。ただ何の作戦もなしに戻るのは無意味です」


曙「・・・・・・分かってるわよ!」


龍驤「なんかええ作戦ねぇ・・・・・・」











大淀「基地航空隊、夜間飛行部隊の出撃準備をお願いします」


翔鶴「大淀さん、私たちはどうすればいいでしょうか?」


瑞鶴「当然、出撃よね!?」


大淀「翔鶴さん、瑞鶴さんは出撃準備を整えて待機してください」


瑞鶴「出撃は!?」


大淀「まだ許可できません」


瑞鶴「なんで!? 敵機動部隊を撃滅するなら私たちが出なきゃ!」


大淀「ダメです。今は出撃すべきではありません」


翔鶴「そうですね・・・・・・。今はまだ出るべきではないですね」


瑞鶴「翔鶴姉!」


翔鶴「瑞鶴、落ち着いて。気持ちはわかるけど、今は夜。私たちができることは何もないわ」


瑞鶴「でもっ・・・・・・!」


翔鶴「大丈夫、提督なら必ず無事に帰ってくるわ」


瑞鶴「・・・・・・そう、だよね。うん、きっとそう。大淀さん、ごめんなさい」


大淀「気にしないでください。・・・・・・瑞鶴さんの気持ちはよくわかりますから」


翔鶴「じゃあ私たちは出撃準備を整えて待機しますね」


大淀「お願いします。護衛には吹雪さんが付くよう手配しておきますね」


翔鶴「分かりました。さ、瑞鶴行くわよ」


瑞鶴「分かってるよ」


鎮守府では支援艦隊、およびに航空隊の出撃準備が急いで行われていた。


全ては仲間を提督を守るために。











提督「敵艦載機に発見されたか」


上空をゆっくりと旋回する敵機を見上げながら1人呟く。


現在、龍驤と曙の二手に別れ行動しているわけには理由がある。


敵機動部隊の注意を引いて、本命を攻撃させないようにする。それがまず第一。


提督「撃ち落としたいですが、こちらの居場所が知られていないと意味がないですからね」


今も攻撃隊に情報を送り続けているであろう敵をあえて見逃す。


普通に考えれば危険すぎる行為だ。


提督「・・・・・・私に力を貸してくださいね、朝潮」


触接され時間は経っている。


そろそろ第一次攻撃隊が見えてきてもおかしくはない。


提督(見えましたね。よくわかりませんが・・・・・・雷撃機中心のようですね)


低空を猛進する敵編隊が一直線に提督へと向かってきている。


提督「さて・・・・・・やりましょうか。対空戦闘は久しぶりですね」


10cm高角砲に弾薬を装填し、敵艦載機隊に向け構える。


ここからは我慢の時間。


限界まで耐えきるか、それとも限界を迎え暗い海の底へ消えるか。


その二択だけの簡単な戦いだ。


提督「龍驤さん、曙さん、頼みましたよ」


砲塔が連続して火を噴き、敵機の前で激しい火花を散らす。


何機か被弾したのか、ふらふらと海面に墜ちていき派手な水しぶきを上げて墜落する。


しかし、その間にも多くの攻撃機は提督を沈めようと速度を上げ突っ込んでくる。


提督「っ!」


少し離れた位置から先頭の機体が抱えていた魚雷を投下する。


その数およそ5発。


提督(増速すれば・・・・・・当たらないですね!)


速度を上げ、強引に回避を試みる提督。


ギリギリのところで魚雷は全て後方を通過していき、やがて見えなくなる。


提督「次は・・・・・・!?」


気を休めることなく辺りを見回すと、右舷後方から3機が突撃してきている。さらにその後方に4機が続く。


素早く高角砲の照準を合わせ、進路を変えさせようと撃ちまくる。


弾幕の迫力に恐れをなしたのか2機は魚雷を投棄し、機首を明後日の方角へと傾け退避していく。


しかし、残る5機は動揺した動きを見せることなく一直線に必殺の間合いまで距離を詰め続ける。


提督「くっ・・・・・・!」


全機黒煙を吐いているというのに全く墜ちる気配がない。


提督(さすがは深海棲艦機ですね。頑丈さは伊達ではない、ということですか)


敵の機体のタフさに内心歯がみしている間に5機が一斉に魚雷を投下。


5本の矢が一定の間隔を空け、時間差をも利用し迫ってくる。


提督「まだ・・・・・・!」


速度を微妙に落としつつ左に舵を切り、魚雷と並走する形でなんとか被雷することなく突破に成功する。


だが、安心している暇はない。


今度は正面から2機が海面スレスレでこちらに突っ込んできている。


他にも数機が侵入角度を探りつつ上空を旋回している気配がある。


提督「まったく・・・・・・少しは加減してほしいです、ね!」


提督の戦いはまだまだ始まったばかりだ。











『こちら第一航空部隊、離陸完了。指示を』


大淀「今回の目標は空母機動部隊です。現在、有力な機動部隊が2艦隊確認されています」


『我々はその2つの目標を攻撃せよ、と?』


大淀「その通りです」


『えらく難しい注文ですな』


大淀「それは百も承知です。ですが、その侵攻ルート上に友軍艦隊ならびに提督が作戦展開中、このままでは空襲を受ける可能性があります」


『なるほど。いつものやつですな』


大淀「ええ、いつものです」


『了解した。ではご期待に答えるとしよう』


大淀「お願いします」











??『ということだ。野郎ども、準備はいいな?』


??『夜間攻撃は苦手だと言っても無駄ですね』


??『提督のお守りも大変だ』


??『それはいつものことだろう。さて、派手にやるぞ』


??『おうよ!』











龍驤「さてさて、司令官が攻撃隊を引き付けてくれてるうちにウチらはキミの艦隊と合流しましょうかね」


曙「分かってるわよ」


龍驤「んでもって状態を見て、今後の方針決めやな」


曙「言われなくてもちゃんと把握してるって」


龍驤「早くしないとアカンからなぁ」


曙「その割にはのんびりしてるわね」


龍驤「そりゃ、あんなもんで司令官がやられるとは思ってないからねぇ」


曙「・・・・・・いくら優秀な人でも航空機の大群相手でしょ? 生きて帰れるわけが」


龍驤「大丈夫や。絶対に」


曙「どんな自信よ・・・・・・」


龍驤「自信なんかやない」


曙「?」


龍驤「そういう運命なんや」











提督「第一波は・・・・・・終わりましたね」


攻撃を終え引き上げていく航空機を睨みながら一息つく。


第一次攻撃隊は雷撃隊のみだったのか、大した被弾もなく敵を蹴散らすことができた。


撃墜数は恐らく10を超え、三分の一は海の藻屑にしたことだろう。


提督(第二次攻撃隊が到着するまでは時間がありそうですかね)


よもや敵空母も駆逐艦1隻にこれだけの被害を受けるとは夢にも思っていなかったはずである。


提督「次は・・・・・・激しい戦闘になるでしょうね」


艦爆と艦攻の同時攻撃の可能性が非常に高い。


どれだけの性能の戦艦でもかなりの損害を受けることになる。あるいは最悪の場合、撃沈されるか。


そんな攻撃を駆逐艦が生き残ることができるはずがない。


提督(さすがにこれだけ状況が悪い中、生還できるとは思えませんね)


この状況をどう突破するか考えている最中、遠くから航空機のエンジン音が聞こえてくる。


提督「もう来ましたか・・・・・・」


思った以上に行動が速い深海棲艦に苦虫を噛み潰したかのような表情になる。


作戦も何も準備はできていない状態だが、敵が来てしまった以上戦闘準備に入るしかない。


高角砲の射角を音の聞こえる方に合わせつつ、目を凝らして敵機の早期発見に努めようとする。


が、そこでこのエンジン音が聞き慣れた機体のものだと気付く。


前線基地にいるからこそ分かる、支援という名の心強い味方機が唸らせる音だということを。


提督「また・・・・・・助けられてしまいましたね」


一式陸攻。三式戦 飛燕。そして、一式戦 隼。


基地航空隊の戦闘機、および攻撃隊の到着だ。











陸攻隊隊長機『海域に到着っと・・・・・・!』


飛燕隊隊長機『こんな真っ暗な中、よくも無事に辿り着けましたよまったく・・・・・・』


隼隊隊長機『そりゃ精鋭の俺らが迷うわけないだろ』


飛燕隊隊長機『慢心っていうんですよ、そういうの』


陸攻隊隊長機『おまえら、もう戦闘海域だぞ。少しは緊張感を持ってだな』


隼隊隊長機『お、あれは提督さんだな。相変わらずお美しいことで』


陸攻隊隊長機『無視するんじゃない!』


飛燕隊隊長機『辺りに敵機と思わしき残骸が見えますねぇ。もうすでに一戦交えてますね』


隼隊隊長機『無傷でよくもまあ立ってられるもんだ』


飛燕隊隊長機『本当ですよ』


陸攻隊隊長機『ああ、もう仕方ないな。おい、聞け貴様ら! すでに第一波を退けてるとなると第ニ波が来るのも時間の問題だ』


隼隊隊長機『ああ、空母から攻撃隊は発艦済みだろうな』


陸攻隊隊長機『そこでだ、ここから隊を攻撃隊と提督の直掩隊の2つに分ける』


隼隊隊長機『ほうほう』


飛燕隊隊長機『問題ないです』


陸攻隊隊長機『我が陸攻隊と隼隊で敵機動部隊を攻撃、飛燕隊は提督の直掩だ。いいな?』


隼隊隊長機『分かった』


飛燕隊隊長機『了解です』


陸攻隊隊長機『よし、行くぞ! 夜に攻撃できるのは敵だけじゃないってことを教えてやるぞ! 続け!』


隼隊隊長機(いや、そもそも攻撃できないことはないが普通やらないだろ)


飛燕隊隊長機(迎撃も夜にやることではないんですけどねぇ)











龍驤「まだかいなぁ」


曙「もう少しよ。ちょっと静かにしてて」


龍驤「もう少しってそんな時間あるわけやないんやでキミ」


曙「分かってるわよ。でも敵の艦載機がこの辺りに来るってことは敵機動部隊が近いってことでしょ」


龍驤「そうやろうなぁ」


曙「今の私たちじゃ絶対勝てないんだから、慎重になるのも仕方ないでしょ」


龍驤「勝てないこともないやろうけど」


曙「どんな自信よ・・・・・・」


龍驤「そりゃ自信がなきゃこんな場所まで2人で来たりせんやろ」


曙「・・・・・・そうね」


龍驤「だいたい支援の準備くらいはできたんやで? 本当は」


曙「じゃあなんで支援も待たずに来たわけ? 死にたいの?」


龍驤「まさか! 好き好んで死にに来るわけないやろ」


曙「・・・・・・」


龍驤「ジト目で見るのやめてくれる? ウチこれでも結構繊細なんよ」


曙「嘘ばっかりね」


龍驤「ホンマやて。悲しくて泣きそうやわぁ」


曙「はぁ・・・・・・。で、結局支援も待たずにここまで来て一体何の意味があるのよ? 全滅してて無駄骨ってこともあったかもしれないのに」


龍驤「司令官がキミらを助けたかったからや」


曙「は?」


龍驤「だから、司令官がキミらを一刻も早く助けたかったからや」


曙「それだけの理由で死ぬのも覚悟して来たわけ? 呆れた」


龍驤「もちろん、他にもいろいろあるで? 資材がギリギリだったとか、援護が来なければやられる瀬戸際ってこととか」


曙「それでも支援が使えるなら待ってでも支援と一緒に来るべきじゃない?」


龍驤「それもそうなんやけどな、けど司令官はそれすら待たずにここまで来た。キミらを助けるために、危険を冒してでも。な、理由なんてどうでもいいやろ」


曙「・・・・・・感謝はしてるわ」


龍驤「素直やないなぁ」


曙「うっさい!」


龍驤「おお、怖」


曙「ったく、着いたわ。ここの島に今みんな隠れてる」


点々と存在する中の小さな島だというのに木々は青々と生い茂り、空からも海からも島の中を窺い知ることは出来なさそうだった。


龍驤「おお、こんないい隠れ場所があったんかいな! そりゃ生きてられるわなぁ」


曙「ただ動ける子を僅かよ。物資もほとんどないわ」


島の影へとゆっくりと進み、艤装を外して島への上陸を果たす。


龍驤「安否確認ができれば十分やで。そこから動ける子は移動してもらって、後日再編成して救援艦隊をこっちに送ればええだけや」


曙「そうね。時間もそう掛からないでしょうし」


??「・・・・・・曙、戻ってきたのね」


暗闇の向こうから凛とした声が返ってくる。


曙「はい。ブイン基地の方から捜索艦隊が出ていたみたいで、その艦隊と合流しました。もうすぐ救助が来ますよ加賀さん」


加賀の名前が出ると影の向こう側からゆっくりと人影が現れる。ところどころ包帯を巻く加賀の姿は酷く痛ましかったが、声にはそのことを微塵も感じさせない強さがあった。


加賀「そう・・・・・・。なら良かったわ」


龍驤「加賀、元気しとるかいな? って言っても無傷なわけないやろうけどな」


加賀「龍驤? ・・・・・・あなたが捜索艦隊の旗艦というわけね」


龍驤「ウチと司令官の2人だけやけどな」


加賀「あの人ね、姿がないようだけど」


龍驤「敵機動部隊に発見されてもうてな。今囮になって別行動中や」


加賀「この辺りまで敵が・・・・・・あまり時間はないようね」


曙「なので動ける子はブイン基地まで航行していく予定です」


加賀「それがいいかもしれないわね。待ちなさい、すぐに用意させるわ」


龍驤「ちなみに全員で何人いて、動ける子はどのくらいいそうなんや?」


加賀「全員で10名で動ける子は私も含めて恐らく3人くらいかしら」


龍驤「ってことは7人も置いていくことになるんかいな」


曙「・・・・・・そうね」


加賀「全員沈まなかったことが奇跡に等しいもの。仕方ないわ」


龍驤「あの加賀がそこまでやられてるんや。つまりはそういうことやな」


加賀「油断はしていなかったのだけど、敵の精鋭艦隊ね。旗艦はレ級だったわ」


龍驤「レ級・・・・・・」


一瞬だけ龍驤の表情が苦々しいものに変わったが、すぐにいつものニコニコ顔に戻る。


曙「なんとかそれを退けたけど、そのすぐあとに敵潜水艦からの襲撃を受けてね」


加賀「駆逐の子たちが奮戦して撃滅したけど、こちらの被害も甚大だったわ」


龍驤「それで今はここに潜伏中、ってことやな」


加賀「ええ」


曙「無線もやられてどうしようもなかったのよ」


龍驤「けど、キミらは今まで無事やった。もう安心や、すぐに救助を送ってもらうようにするからな」


加賀「だそうよ、神通」


神通「・・・・・・ええ、助かります」


暗闇の向こうへ加賀が声を掛けると弱々しい声が返ってきた。


恐らくかなりの重傷なのだろう。姿を見せることはなさそうだった。


龍驤「しかし、あの時生き残った連中がこうもやられてるなんて・・・・・・相当ヤバいみたいやなぁ」


加賀「恐らく敵はかなり高度な戦術を練って来ているわ。・・・・・・近々本格的な進行がありそうね」


龍驤「深海棲艦が戦術をねぇ・・・・・・」


現在、深海棲艦との戦いでどうにか拮抗を保てているのは、敵がまともな戦術を立てて攻勢に来たことがないからである。


連携を取って迎撃、もしくは攻撃すれば個々の力が強くても撃退できる。


だが、その前提が今崩れ去ろうとしている。


重い事実に3人は口を開くことができなかった。











陸攻隊隊長機『敵艦隊を確認した。空母ヲ級2隻、戦艦ル級1隻、軽巡ホ級1隻、駆逐ロ級2隻の輪形陣だ』


隼隊隊長機『確認した。敵はまだこちらに気付いてないな』


陸攻隊隊長機『ああ。だが艦載機が発艦中。きっと第三次攻撃隊だな』


隼隊隊長機『今のところ敵直掩機の姿は見えない』


陸攻隊隊長機『ならば余裕だな。行くぞ、野郎ども! 陸攻隊の力見せてやれ!』


隼隊隊長機『俺らは周辺の警戒、発艦した艦載機の迎撃をする。帰って一杯やろうぜ』


陸攻隊隊長機『もちろんだ。さあ、やるぞ!』











飛燕隊隊長機『敵の第二波が来ましたね』


飛燕隊2番機『艦戦の姿は見えない』


飛燕隊隊長機『こちらに直掩機がいると思ってないからでしょう』


飛燕隊3番機『墜とし放題じゃないか』


飛燕隊隊長機『そういうことですね。さて、敵機を我らの提督に一機も近づけないようにしなくては。各機攻撃を開始してください』











提督「第二次攻撃隊到着、ですね」


曙から借りた電探が多数の敵機を捕捉する。


それを察知したのか飛燕の編隊が一斉に敵機のいる方角へと飛び去って行く。


提督「今回はそこまで激しい空襲にならなさそうですね」


飛燕隊の練度はかなり高い。


基地への空襲時においてもかなりの敵爆撃機を撃墜し、被害を最小限に抑えてくれている。


艦載機相手とは言え、後れをとることはないだろう。











空母からの攻撃隊。


それは直掩機のいない艦にとっては死神であり、決して無傷で戦い終えることのできない相手である。


攻撃隊にとってもたった1隻の駆逐艦など獲物でしかない。


上空から次々と襲い掛かり、爆弾を降らせ、必殺の魚雷で船体に大穴を空ける。


敵艦の撃沈を確認して悠々と帰還するだけの任務。


そのはずだった。


その時、何者かが叫び声のような鳴き声のような奇妙な音を発した。


それに疑問を挟む間もなく、突如として先頭の機体が爆発四散する。


異常に気付いた時にはもう遅い。


次々と別の機体が翼を撃ち抜かれ、もしくは燃料から火を噴き海へと消えていく。


初撃を抜けた他の機体は何とか態勢を整えようと編隊を組み直そうとする。


しかし、そんな抵抗を嘲笑うかのように再び攻撃がやってくる。


最初と同数か、それ以上に死神だったはずの機体が墜ちていく。


攻撃隊は艦に対して絶大な攻撃力を誇る。


ただしそれは直掩機がいなかった場合だ。


ではその艦に直掩機がいたとする。


そして攻撃隊には直掩機から守る艦戦隊がいなかった場合、どうなるか。


答えは目の前にあった。











龍驤「ほんなら出発するで」


加賀「ええ、そうね。行きましょう」


曙「・・・・・・すぐ戻るから」


神通「気を付けて」


龍驤、加賀、曙、秋月、那智の5隻が隠れ潜んでいた島からゆっくりと離脱を始める。


秋月「加賀さん・・・・・・」


加賀「大丈夫です。心配しなくとも彼女たちならきっと無事でいます」


秋月「そう、ですよね・・・・・・」


那智「もうすぐ夜が明けそうだ。素早く移動せねば」


龍驤「夜が明ければウチも直掩機に哨戒機、それに攻撃隊も出せるし、大助かりやけどなぁ」


曙「バカ言わないで。敵もできることだし、どう考えても見つかったらヤバいのは私たちなんだから」


加賀「そうね。発見されたら大変ね」


龍驤「加賀、全然そう思っとらんやろ・・・・・・」











艦載機からの無線を受け、第三次攻撃隊の準備を進める空母ヲ級。


その瞳には僅かながら焦りの色が見える。


それもそのはずだろう。


元々は瀕死の補給艦隊にトドメを刺すだけの簡単な任務のはずだった。


その途中で別動隊を発見し、最初の攻撃隊で撃沈しゆっくりと残りの敵を沈めていく。


それが第一次攻撃隊は半数の被害を出し、敵艦はまったくの無傷。


ならばと第二次攻撃隊を差し向ければいつの間にか来ていた直掩機に返り討ちにされ、ほぼ壊滅。


これでは任務どころの話ではない。


駆逐艦1隻すら撃沈できないのは旗艦として、空母としても許されることではない。


随伴艦は何も言わないが、内心何を思っているかは明白である。


ヲ級「・・・・・・」


残る艦載機は少ないが、それでも奴を仕留めるには十分の数がある。


護衛の艦戦もすでに発艦準備は整い、あとは出撃させるだけ。


だが、好機はすでに逸していた。


第二次攻撃隊がやられた時点で撤退すべきだったのだ。


直掩機がいるということは、同時に攻撃隊も到着しているということなのだから。


ツ級「!」


随伴にいたツ級がその機影に気付く。


高度はかなり低く、海面スレスレをこちらへ一直線に突き進んでくる。


すぐさまツ級とホ級が対空砲火を撃ち始めるが、進路妨害すらままならない。


ヲ級「・・・・・・」


2隻のヲ級は回避運動を開始するが、それよりも早く敵攻撃機から魚雷が投下され何本もの槍となって集中的にヲ級へと向かってくる。


投下を終えた機影が真上を悠々と通過していくのが見えた時、ヲ級は任務を失敗したのだと悟った。


大きな水柱が次々と上がり、ヲ級は2隻とも海へと沈んでいく。


対空砲火を撃っていた随伴艦にも魚雷は命中し爆発。


空母機動部隊は瞬時に海上から姿を消したのであった。


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2017-09-12 16:21:18

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2017-02-18 21:21:23

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2017-02-04 13:59:38

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このSSへのコメント

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1: 金属製の餅 2017-02-18 21:21:57 ID: oGsNemTz

描写が細かくて読みやすいです!続きが気になります!

2: SS好きの名無しさん 2017-07-04 14:33:30 ID: 4DUknOBK

ねんまつ


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