意外な弱点
海から来た人の設定を使った番外編です。
【海から来た人】を読んでいないと意味が分からないかもしれません。
オリジナルの提督が登場します。
PCが不調で本編が書けないのでスマホで暇潰しに書きました。
なのでちょっと読みにくいかもしれません。
「海人って弱点あるの?」
その川内の一言は食卓を多いに賑わせた。
「ないっぽい?」
「無敵超人な感じあるよね」
「でも流石に苦手なことのひとつやふたつはあると思うのです」
駆逐艦達が言う。
流石の海人も万能ではないと誰もが思ってはいるが、しかし具体的に彼がなにかに苦労する場面を目撃した人物はいない。
「器用なことは確かよね。でもあの歳になると苦手なことは上手く避けていることも考えられるでしょう?」
「というか海人歳いくつなの?」
「記憶喪失だから分からないと思いますけど……」
「見た目的には二十代後半から三十代前半ってところじゃないかしら?」
「いやいや、年齢よりもやっぱり気になるのは弱点だよ。気にならない?」
昼食で集まった艦娘は本人がいない場で好き勝手論争する。
その論争は想像の域を出ない。
「体を動かす系は万能そうですよね?」
「格闘技からスポーツまでなんでもこなせそうな感じあるのです」
艦娘と模擬戦でまともに戦う男である。当然体を動かすことが苦手とは思えなかった。
「頭脳労働は?」
「海人めちゃくちゃ鋭いよ」
「頭の回転が早いですね」
「海人はっやーっい!!」
「学問がどうとかは分からないけど、頭が悪いようには思えないわね」
いままで黙って聞いていた加賀もそこに加わる。
「これ、調べた方が早くない?」
そういった経緯があり、調査隊が結成された。
気配を殺して海人にもっとも近付ける川内。恐らく一番海人が気を許しているだろう電。作戦立案担当の響。囮担当の暁である。
彼女らは会議室を貸し切って集まっていた。もちろん海人には極秘で。
「意義あり!!」
「さて、では作戦会議だよ」
暁の言葉を無視して響が言う。
「ねぇ聞いてよっ!? 囮担当ってなに!?」
「身体能力を疑う必要はないから、その他の部分だよね?」
川内もまるで聞こえていないかのように話を進める。
「ちなみに掃除下手とか料理出来ないとかはないのです。海人の部屋はいつも綺麗ですし、料理も最低限はこなせるのです。……と言っても、ここでは食材が食材なので凝った料理はそもそも不可能ですが」
電ですら暁の抗議を無視する為、ついに暁の心が折れた。
「……いいわよ、どうせ囮くらいしか役に立てないわよ。つーん」
「そんなことないよ、暁を頼りにしてるよ?」
流石に川内がフォローする。
「ちょっと無視する流れの空気だから思わずのっちゃったのです……」
電もそれに続く。
「そ、そうよね! 本心から囮だなんて思うわけないわよね!」
暁はとても単純な娘なのでそれで機嫌を良くするが。
「そうだよ、自分を卑下するのは感心しない。暁は他に代用がきかないくらい囮として優秀だからね」
響が追撃する。
「鬼だね」
「鬼畜なのです」
「うわーん! 響のばかーっ!!」
こうして暁は作戦会議から離脱した。
「これで進行の妨げになる要因はなくなったね。作戦会議をしよう。暁はあとでテキトーにおだてれば協力してくれるさ」
「……もしかして響って暁嫌いなの?」
川内がかなり微妙な表情で訪ねる。それに対し電は苦笑しながら答えた。
「歪んだ愛情表現なのです。響ちゃんは好きな人ほどいじめたくなる悪癖があるのですよ」
「ハラショー、暁のことは大好きだよ?」
「その好意が伝わることはなさそうだね……」
閑話休題。
「ホラーが苦手とかは?」
「加賀さんに命を狙われる状況より怖いことってあります?」
「あー、そういえば海人わりと平然としてたね。メンタル面も鉄壁ということかー」
川内の思い付きは電に否定される。
「字が汚いとかどうだい?」
響の考えも。
「海人の手書きの日誌みたことありますが、加賀さんと同レベルなのですよ」
電に即座に否定された。
ちなみに加賀は習字の段位持ちで彼女の字は当然美しい。
「うへー、加賀さんもハイスペックだけど海人も負けてないね」
「電が思い付くのは虫が嫌いとかでしょうか」
「なるほど。あり得なくはないけど、虫が苦手な人が山とか森を一人で闊歩しないだろう?」
「というか私が海人見張ってる限り虫なんて気にしてないかな。それどころか有毒の蜘蛛とかは近付かないように心掛けてるあたり、逆に詳しいかもしれない」
話せば話すだけ完全無欠に思えてくる。
「異性の好意に鈍感ってところは?」
「それは間違いないのですが……」
「異性の扱いが苦手な訳じゃないからね。無自覚に好意を集めるくらいには」
会議は進展しない。
「手先が不器用という可能性は?」
「可能性は否定できないのです」
「うん、これは確かめてみていいかもね」
方針が決定し、響が具体的な作戦を立案する。
「暁になにか手頃な物を作ってもらおう。裁縫がいいかな、十中八九暁は上手くいかないだろうから、そこで海人に出くわしてもらおう。彼の性格上見て見ぬふりはしないからね」
「もうちょっと姉を信じてあげなよ!」
川内が半笑いで指摘した。
しかし電の口から残念な事実が判明する。
「この島の機能が使えなかった頃から、私たちは衣類を自分で縫っていましたが暁ちゃんは雷ちゃんに全部やってもらっているので十中八九出来ないと思うのですよ……」
「雷が過保護すぎるんだよ。暁も姉の威厳とかレディがどうとか気にする癖にそういうところは甘えるからね」
暁。残念すぎる長女である。
「とにかく作戦実行だよ」
「……痛っ」
暁は電と響の懇願(表向きには)を受け、自分の分は自分でやろう。といういままで雷に任せていた衣類の裁縫に挑戦していた。
二人から物凄く丁寧に教えてもらったので手順に不安はない。
余談だが、暁の不馴れな様子に体を震わせながら自分がやりたい衝動を抑えている雷の姿があった。
彼女の世話焼きは中毒かもしれない。
手順に不安はないのだが、その手先は順調とは言い難かった。
見事に響の想定通りである。
そこに海人が通りかかった。これは川内による誘導だ。
「暁、裁縫か?」
「う……、か、海人……」
「見たかい? 涙目に上目使い。震える声。あれに耐えられる鬼はこの鎮守府にはいないだろうね」
「電の目の前に鬼の心当たりがあるのですが……」
「奇遇だね電。私もそう思うよ」
電と川内の視線が響に集まる。
涼しい顔で響きは続ける。
「さて、海人が手伝うようだよ。注目だ」
「なるほど……、妖精さんもいるし設備も充実してきたから切羽詰まった問題でもないが、出来るに越したことはない。だが初めから全部出来るようにってのは難しいよな。よし、俺が手伝おう」
「ほ、……ほんと!? いいのっ?」
「めちゃくちゃ可愛い笑顔だね。私が男ならそのままお持ち帰りコースだよ」
「響ちゃんが男の世界線にいる暁ちゃんに同情するのですよ」
「今日はよく意見が合うね、電」
「二人ともちょっと酷くないかい?」
「暁ちゃんをお持ち帰りしてどうするのです?」
「それはもちろん限界まで追い詰めてから救いの手を差し出して心酔させるに決まって待って、冗談だよ。そこまでドン引きされるとは思わなかった」
「手本通りに上手くやろうとするから失敗する訳で、丁寧にゆっくり慌てずやればそのうち出来るようになる」
「凄い、海人の手捌き雷みたい!」
暁の明るい声に三人の視線は海人の手捌きに集まった。
「淀みないね」
「い、電より上手なのです」
「ここまで万能だと若干キモいわね……」
海人はとても器用だった。
不器用である。という弱点は存在しないらしい。
「本当に海人は凄いわ! なんでも出来るのね!?」
「いや、俺だって苦手なことくらいあるぞ?」
「うおっ、暁ファインプレー!!」
「これがあるから暁ちゃんは侮れないのです」
「本人は海人の弱点のことなんて微塵も覚えてないだろうからね、そりゃ海人からしたら警戒しようもない」
「本当? 苦手なことなんてなさそうなのに」
「例えば酒だな。俺お酒飲めないんだよ、アルコールにめちゃくちゃ弱い」
「……い、意外だわ。物凄くお酒強そうな雰囲気なのに」
「記憶にある限りだと、酒を飲むと酔ったときの記憶を失って性格が豹変するらしい。艦娘にもう二度と飲まないでくれと強く懇願されたのを覚えている」
「でもこの島にお酒なんかないから心配ないわね!」
「そうだな。酒に関しては本当に失敗した経験しかないと思う」
「本当に意外な弱点なのです……」
「見てみたいね」
「わかる」
「いやいやいや、流石に悪ノリが過ぎるのですよ!?」
「しかし本当にお酒がないからね」
「果物でなんとか作れないかな?」
「話聞いてるのです!?」
後日、響主導で海人飲酒作戦が実行されたとかされないとか。
海人の弱点は実は他にもあります。
読みたいって人がいれば海人飲酒作戦編も書こうかなと思ってます。
もちろん続きは書いてくれるよなぁ?(期待)
見たい(迫真)
ゆっくり続き書いてます。
もう少しお待ちを。
気になってしまった…海人の弱点かぁ…
4>無敵超人でないので弱点もありますよってお話です。
この響可愛い。
6>響は多少Sの方が可愛いと思うんですよ。