海から来た人Ⅲ 【記憶の扉】
加賀が隠し続けた島の真実。そして海人が忘れてしまった過去の事件。その鍵を握る艦娘が島にたどり着く。これは絶望を知って壊れた艦娘が心を取りもどす物語。
海から来た人Ⅱの続きです。
海から来た人を呼んでいないと意味不明なのでブラウザバックお願いします。
出来れば海から来た人を呼んでからここまで来ていただけると嬉しいです。
普通にここまで読んできた方はありがとうございます。
彼が行方不明となった。
それを聞いた艦娘達が悲しむよりも先に。
嘆くよりも先に。
行方不明ということは死亡確認がされていない。ということだとして、生存している可能性に賭けて捜索部隊を編成し始めたのは彼の指導のたまものだろう。
彼の傍には榛名がいた。
彼女が一緒にいて彼を守り切れない筈がない。
絶対に生きている。
誰一人として、それを疑う艦娘はいなかった。
しかし、新しくやってきた提督によってそれは妨げられた。
誰もが異を唱えた。
しかし、その男は彼を死んだと断定していた。
おかしい。
その動きは死んだと知っている。もしくは死んだことにしたいという意図が隠れていた。
彼の失踪。
榛名と叢雲の失踪。
あまりにも早い新しい提督の補充。
これらの情報は常日頃から最悪を想定しろと教えられてきた艦娘達からして、上層部を疑うのに十分過ぎる情報であった。
彼女らは本土を守る為に。大本宮の所属として戦う兵器だ。
少なくとも、表向きには。
実際は違う。
彼女らは彼だからこの命までも賭けて戦えるのである。
故に、彼の為ならば大本宮を敵に回すことなど一秒たりとも迷いはしない。
しかし彼が戻ってくる場所を失うことは避けたかった。
自由が奪われるのは時間の問題だ。
この鎮守府を掌握される前に動く必要がある。
そして彼女達の動きは迅速であった。
少数の優秀な艦娘を厳選し、秘密裏に彼が消えた海域付近を捜索する。
選ばれたのは彼女を含めたたった三隻の艦娘だ。
彼女らだけで彼と、一緒に消えた艦娘を捜索する。
ここで彼女は異を唱えた。
彼が消えた海域が本当の情報とは限らない。
確かにそうである。
上層部が怪しいのであれば、そこが送ってきた情報も疑うのは正しい。
故にたった一人。
己の勘と運だけで海域を探す遊撃捜索を願い出た。
そんな彼女が、偶然が。
運命か。
その島を見つけた。
「……え、この島、地図に、ないよね?」
何度も確かめるが地図にはない。
かなりの大きさだが、無人島であれば地図に記録されていない場合もある。
しかしその島は異常であった。
一見普通の島だ。
よく見ると普通ではない。
ここは要塞だ。
天然の要塞である。
あるいは、鎮守府でも潜んでいそうな。
生唾を飲み込む。
これは彼女の妄想かもしれない。
いてほしいと願う願望からの勘違いである可能性が高いだろう。
だが、確かに感じるのだ。
この島に、彼の鼓動を。
彼女、瑞鳳はその島に静かに上陸した。
頭が痛い。
世界が回る。
意識が遠のきそうなほどに痛み、同時に吐き気が襲ってくる。
思考が出来ない。
自分は何をしているのだろうか。
自分は何を求めているのだろうか。
分からない。
分からない。
ただ、この手の暖かさだけはやけに心地が良かった。
「大井っち」
彼女に名前を呼ばれる。
大切な彼女がいれば他には何もいらない。
そうだった筈なのに。
頭の中で声がする。
何度も何度も繰り返す。
まるで呪いのような言葉の連続が洗脳のようにこちらの思考力を溶かしていく。
「北上さん」
握った手だけは離さない。
絶対に。
どうすれば良いのか指示がほしい。
命令がなければ何も出来ないのである。
何も出来なければ、存在している意義がない。
そんなものは生きているとは呼ばない。
死んでいるのと変わらない。
「提督……、提督……」
浜風は虚ろな瞳でぶつぶつと同じ言葉を呟き続けている。
そう、そうだ。
提督を助けなければならない。
地下のどこかに幽閉された彼を。
死んだ筈が、実はまだ生きている彼を救い出さなければならない。
そうすればどうすればいいのかきっと教えてくれる。
この頭痛も、止まるに違いない。
策もなく。
目的地もなく。
ただ提督を求めて三人は森の中を歩いていた。
瑞鳳は暫く歩いてここが無人島ではないと確信していた。
はっきりとした証拠はないが、薄々ではあるものの人工的な手が加わった森であることが伺えるのだ。
例えばこの獣道。
獣道にしては草木の広がり方が不自然である。
人間が頻繁に通った跡である気がしてならない。
この島に人間がいると仮定して、それが必ずしも友好的とは限らない。むしろ敵対する場合の方が可能性としては濃厚な為、探索も慎重にならざるを得ない。
瑞鳳も鍛えられた艦娘の一人として腕に覚えはあるがむやみやたらに交戦するのは好ましくない。
何しろ彼女は軍の許可を取らず勝手に海域を捜査しているのだ。
国家反逆罪で捕らえられて軍法会議にかけられても不思議ではないのである。
鋭敏な彼女の感覚が気配をとらえた。
奇襲を警戒し、素早く木陰に身を隠すと息をひそめる。
同時に地面に耳を当て、足音から出来る限りの情報を収集した。
三名。
女性三人。
かなり疲弊しているのか、精神的に崩れているのか足音は健常なそれではないが、それでも鍛え抜かれた者独特の足音は隠せていない。
弱っているがかなりの実力者であると瑞鳳はあたりを付けた。
「……女でこの実力。艦娘と考えていいのかな」
呟く。
だとすればここは海域を守る為の中継基地か何かなのだろうか。
木々で覆われた空間に隠れるように鎮守府があるのかもしれない。
だとすれば遭遇するのは危険ではないだろうか。
瑞鳳は仲間の協力を得て秘密裏に横須賀鎮守府から出てきたとはいえ、もう捜索を始めてから結構な期間が経過している。
勝手な捜索がばれて反逆者として指名手配されている可能性も否めない。
しかし彼を探すうえで何か手掛かりを得られる可能性があることも否定出来なかった。
危険を承知で接触するかどうか。
リスクを背負う覚悟のない者に成果は訪れない。そしてリスクをカバーする努力と工夫を行わない者は長くない。彼が常に最悪を想定して動けという言葉の次に多用していた言葉だ。
横須賀鎮守府の艦娘は彼に育てられ、彼に鍛えられた精鋭だ。
彼の思想や思考にかなりの影響を受けている部分がある。
瑞鳳もその例に漏れない。
故に、覚悟を決めてからは早かった。
奪われて困る備蓄や装備品を手早く隠すと、静かに彼女ら三人の前に姿を現す。
両手を上げて戦意がないことの意思表示も忘れない。
「……えーっと、横須賀鎮守府所属。第一遊撃部隊旗艦の瑞鳳です。この島の最高責任者に拝謁願いたいのですが」
なるべく穏やかな口調でゆっくりと言った。
相手は酷く憔悴した二人の雷巡。そして虚ろな瞳をした駆逐艦であった。
向けられたのは明確な敵意。
否、殺意であった。
「なんで!?」
抗議の意味を含めて瑞鳳は悲鳴交じりに叫ぶ。
相手の対応は踏み込んで包丁を突き出すという攻撃的なものであった。
それを瑞鳳は体を捻るだけという最小限の動きで躱す。
「こちらに敵対の意思はありません! 攻撃をやめてください! って言って聞いてくれそうなまともな雰囲気じゃないですよねっ!」
嘆く。
嘆きながらも危なげなく包丁の連続攻撃を回避していく。
隙を見て刃物の腹を受け止め、手首を捻って包丁を地面に叩き落としてからそれを明後日の方向に蹴り飛ばした。
「もうっ!」
諦めずに拳で攻撃しようとしたその腕を受け流し、重心を崩して投げ飛ばす。
続いて背後から攻撃しようとしてきた相手に向かってだ。
結果投げられた艦娘を受け止めたその背後からの襲撃者はバランスを崩して尻もちをつく。
その二人が無力化出来たと確信するよりも早く、瑞鳳は残りの駆逐艦に向かって踏み込んでいた。
駆逐艦が反撃の意思を見せるよりも早く。
関節技を決め、豊満な胸を地面に押し付けるように抑えつけていた。
僅か一瞬の出来事である。
「お願いだから、こっちの話をきいてよぅ……」
そう言って瑞鳳はゆっくりと駆逐艦を解放した。
「どうして襲ってくるのよ。こっちだって反撃しない訳にはいかないんですからね!」
口でこそ怒っているが雰囲気は穏やかそのものである。
襲われたことを怒っていない。
というよりも、この程度の襲撃を脅威に感じていないと言った方が正しいだろう。
それだけで彼女の実力が桁違いであると想定出来る。
身のこなし。
技術。
どれをとっても、この島の最高戦力である加賀に引けを取らない。
それは提督を助ける上で魅力的な戦力ではないのだろうか。
瑞鳳を襲撃した艦娘の一人、北上は冷静にそう判断した。
「……ちょっと私たちの話を、聞いてくれる?」
「だから最初からそう言ってるでしょっ! いったいどうしたのよ、力になれそうなことなら手を貸すから」
「私たちの提督が一部の艦娘の裏切りで地下に幽閉されてるんだよ」
「……ごめんなさい。思っていたよりも数倍面倒な状況なようでちょっと同様しました」
そう言って瑞鳳はこれは手間がかかりそうだ。と大きな溜息を吐いてから覚悟を決める。
見て見ぬ振りは出来ないだろう。
そんな自分では彼に合わす顔がない。
彼ならば考えるまでもなく彼女たちの力になることだろう。
「分かりました。提督を救出するのを手伝います。だからもう少し詳しくこの島について情報を教えてくれませんか?」
「さて、状況を整理しよう」
海人はそう言う。
「大井、北上、浜風の目的は地下牢に幽閉されている男を救出することにある。この三人を助ける為にはどうすればいいと思う?」
「えっと、海人は何をもってしてその三人が困っていると判断しているのですか?」
電が根本的とも言える単純な疑問を投げかける。
「困っているというよりは幸せではないが正しいな。理由は簡単だ、あいつらが笑えていない」
「その主張で言うと、あの三人が前の提督を助け出したら笑えるんじゃないの?」
雷の疑問に海人は加賀を見て答えた。
「それは違うんだろ? 加賀」
「ええ、あの人を解放したら間違いなくこの島の艦娘は不幸になります」
加賀の言葉は断言であった。
「なら、まずはあの三人の妄信を打ち砕く必要があるね」
静かな口調で響が言う。
それに頷き、海人は顎に手を当てて考え込む素振りを見せた。
「しかしどうするかが問題だ。時雨や夕立は限定的な状態でのみ機械的に目的を果たすという状態だが、大井と北上はそうではないらしい」
「……なら、大井と北上は後回しにして、浜風だけ孤立させて説得をしてみては?」
山城の提案に海人は強く頷いた。
「採用だな。問題はどう孤立させるか、そして誰が説得するかだが……」
「私達に任せて欲しいわ」
強い意思で暁がそう主張した。
「私達って第六駆逐艦隊って意味か?」
「そうよ。浜風は戦力的にはそう脅威じゃないし、楽園で一緒にいた時間が長いのも私達だし、適任だと思うの。任せて欲しい!」
海人は暫く思案するも、それは数秒の事であった。
「よし、任せた」
「任せて」
「なのです!」
「頼られたわ!」
「完遂してみせるよ」
それぞれの意気込みを宣言し、四人は気合を入れた。
「だったら大井さんと北上さんをその場から離れさせるのは僕らが担当するよ」
「お前ら二人でか?」
「それが無難だと思うよ。あの二人が相手なら僕と夕立なら戦力的に十分だし、それに説得するには僕と夕立ではメンタルに不安があるからね。説得するなら近い精神状態から立ち直った鈴谷とメンタルが強い川内に任せたいと思う」
「……確かに夕立と時雨はちょっと何かあったら自分を抑えられないかもしれないっぽい。だから海人のすぐ傍にいないと怖い……かも」
「となると俺もそれに参加して、時雨、夕立、俺の三人でとなるな」
「戦力的には過剰ね。私は不必要じゃないの?」
山城が戦力外ではないかという不安な瞳で見ている。
もちろんそんなことはない。
「山城と加賀は最大戦力だ。想定外の要因で大井や北上が逃げた場合の為に少し離れた場所で待機していてほしい」
「良かったわ。仕事がちゃんと残っていて」
「貴方と時雨と夕立で対応出来ない事態と言うのも想像が出来ないけれど確かに承りました」
残るは。
「……川内、鈴谷、頼めるか?」
「もちろん私は海人がやれと言うなら全力を尽くすけど、鈴谷さんは?」
「…………」
鈴谷は下を向いて答えない。
注意深く観察すれば彼女が震えていることが分かる。
恐ろしいだろう。
たった今さっきまで自分は現実から逃げていたのだ。
優しい世界に閉じこもっていたのである。
そんな自分が今も現実を直視せず、妄信する人を説得出来るのか。
逆に引きずり込まれはしないだろうか。
そんな恐怖が足を竦ませる。
それでも。
だからこそ。
彼女の言葉だから届くかもしれないのだ。
大井と北上には。
「やるよ。やるってば、……ここで根性見せないと、熊野に合わせる顔がないっしょっ!」
その瞳には意思が宿っていた。
それまでの鈴谷にはなかったものだ。
それを確かめたからこそ、海人は安心して託せた。
「任せたぞ」
「わ、……私は?」
「天津風、お前は島風についてやってくれ。護衛なしで一人で放置できる状態でもないしな」
「わ、分かったわ」
こうして役割は決まり、作戦も煮詰めて。
大井、北上、浜風の救出作戦は始まった。
未だ誰も、その三人に加わった脅威の存在を知らない。
「簡単にまとめると、この島の艦娘が反旗を翻してここの提督を地下に幽閉。それを知って提督を助けようと動いたのがこの三人だけ、そして裏切った艦娘は多数いるというかなりの逆境な訳ね」
「そう、……だから貴女の強力が必要なのよ。私達だけじゃとても彼を救うなんて出来ない」
瑞鳳の言葉に大井は暗く重い呟きで返した。
「でも提督を助けてもそれだけの戦力差どうするつもりなの?」
「逃げるわ。逃げて大本宮に助けを求めるの」
「……そう、なるよね」
瑞鳳は困った。
今大本宮と関わる訳にはいかない。
手伝えるのは、提督を救出するまでだ。
「えっと、協力はするけど条件があるの」
「条件? 悪いけど、こっちには君に出せるものは何もないんだよねぇ」
北上が苦笑いしながらそう言った。
「いや、一つだけ教えてほしいことがあるだけだよ」
瑞鳳はそう前置きをして。
「人を探しているの。最近、この島に流れ着いた男の人を知らない?」
「…………」
「それは……」
大井と北上は返答に詰まった。
彼女の探している男は海人である可能性が高い。
雰囲気から察するに海人は彼女にとって重要な、とても大切な人物であるように思えた。
となると、海人と出会った場合彼女が敵に回る可能性が非常に高い。
この驚異的な戦力を手放すのはかなり辛い。
どう答えるべきか。
海人の存在を黙秘するべきか。
否、それでは解決しないだろう。
出会う事は避けられない。
だとすれば海人が艦娘に騙されていると告げるべきか。そうすれば出会った瞬間に敵に回るという可能性は多少抑えられる気がするが確実ではない。
海人と彼女を会わせないのが一番の理想だが。
そこまで考えたところで、今まで沈黙していた浜風が口を開く。
「海人、……のことですか?」
「へ……? 海人?」
「最近、海人と名乗る男が島に現れました。確か電さんが浜辺で倒れていたところを助けたのだとか」
瑞鳳が探してる男の名前は海人ではない。
しかし、浜辺で倒れていた男性という情報だけで胸が高鳴った。
彼かもしれない。
もしかしたら生きてこの島に流れ着いたのかもしれないのだ。
別人の可能性も捨てきれない。
それでも期待から高鳴る鼓動を抑えられなかった。
出会うべきだろう。
「彼は相手の艦娘側なのよ。騙されているの」
「騙されている?」
「彼は助けられた恩を利用されているの。詳しく状況も分からずにいる」
彼ならばそんな筈はない。
あり得なかった。
別人だろうか。
少なくとも、瑞鳳の知る彼はこと艦娘に限って言えば味方を間違える男ではない。
むしろあの男を騙して利用する方法がこの世にあるのならば是非とも教えて頂きたいくらいだ。
「貴方が探している人は、海人かもしれません」
浜風は虚ろな瞳でそう言うと、再び沈黙した。
「えーっと、それともう一つ。私が協力出来るのは提督を救出するまでです。それ以降のことは手伝えません」
「十分よ」
「それでもありがたいよー」
大井と北上が感謝の意を告げる。
「……狙われてる」
突然、瑞鳳が呟いた。
大井も北上も浜風も意味が分からない。
「北側に三人。こっちの場所を捕捉された。その後方に二人。五人ともかなりの強敵……、いや、前衛の三人の内一人と、後衛二人の内一人は尋常じゃない強さを感じる」
瑞鳳はさらに今度は反対側を振り向く。
「後ろを取られた。南南西から四人……。ここまで悟られずに一方的にこっちの位置を森の中で? いったいどういう索敵能力してるのよ!」
それは大井達の台詞であった。
艤装や妖精さんの補助もなしに艦娘単体で行える索敵の範囲を超え過ぎている。
「どうしてそんな正確に相手の位置を……っ」
「私の鎮守府はちょっと特別で、気配を読み取れない艦娘は永遠に見習いから卒業出来ないの」
「気配?」
「五感全てを活用した索敵技術。特に空母や軽空母は索敵範囲が広くないと使い物にならないから」
使い物にならないのは横須賀鎮守府基準であって、それは異常な基準なのだが。瑞鳳にそれを訂正する余裕はなかった。
囲まれている。
戦力差は絶望的だ。
先に仕掛けられれば積むだろう。
瑞鳳の実力があっても全ては対応出来ない。
選択しなければならなかった。
気配の近付く速度から考えて南南西の四人が先陣だろう。やや遅れて北側が来る。その後方は詰め要因だろうか。
時間がない。決断しなければならない。
「私は南南西の四人を襲撃します。無力化出来なくても向こうの出鼻を挫く程度は出来るでしょう。その後素早く撤退し、北側後方の二人組に仕掛けます。貴女達は北側の三人組に対応してください。強敵です。倒すことは考えず、最悪時間を稼いでくれればそれで問題ありません。私が合流します」
素早くそう言い切ると、瑞鳳は飛び出した。
「「動いた」」
森を駆けながら、二つの声が重なった。
前方を進む海人と、後方でそれを追う加賀の言葉である。
時雨も夕立も山城も誰もはっきりとは感じられない気配を、この二人だけは確かに掴んでいた。
四人いる。
そのうちの一人が動いた。
大井。
北上。
浜風。
ここまでは確認している。
あと一人は誰だ。
分からない。
静かでありながら恐ろしい気配だった。
本能が警鐘を鳴らしている。
強敵であると。
その一番厄介な気配が南南西に向かって移動した。
「狙いは電達か」
間違いないだろう。
しかしもう作戦は始まっている。不測の事態とはいえ対応し、進めるしかない。
「時雨、夕立。急ぐぞ」
「うん」
「っぽい」
その後方で加賀も海人と同じ結論に至っていた。
謎の気配が一つ多い。
そしてそれは警戒に値する相手であった。
夕立、時雨、川内のレベルではない。電や山城さえも超えるだろう。
あれを相手に取れるのは海人や加賀だけだ。
現実的に考えて、相手すべきは自分だ。
「山城さん、ここは任せます」
「えええ!?」
「私は第六達の援護に向かいます。作戦にはないですが、私の気配で海人は察するでしょう。これも後詰、不測の事態に対する対応の内です。それでは任せましたよ」
そう言って加賀は方向を切り替えて駆けだした。
残された山城は嘆く。
「私、貴女ほど索敵が得意じゃないんですけどーっ!? ……ふ、不幸だわ」
その加賀の動きを海人は確かに感じ取っていた。
「加賀が対応してくれるか。流石だ。ありがたい」
これで海人は集中できる。
しかし選択が迫られていた。
第六の面々は時間通りにはならないだろう。
こちらが早く着く。
そうすると夕立、時雨、山城、自分で戦力を分ける必要があった。
時雨、夕立は離しても得にはならないだろう。
問題はメンタル面だ。
説得には向かない以上、浜風は海人が誘導するしかない。鈴谷、川内の待つ場所に追い立てるのならば、時雨、夕立、山城の三人で十分だろう。
海人は素早く思考を奔らせると時雨と夕立に指示を出す。
「時雨と夕立はこのまま後方の山城と合流して大井、北上を鈴谷、川内のいる場所まで追い詰めろ。俺は先行して浜風を連れて第六の位置まで直行する」
どうやって。
可能か等という無駄なやり取りは行われなかった。
海人がそう言うならば。
二人は無条件に信じるだけである。
「了解!」
「っぽい!」
二人は減速して後方に下がる。
海人はさらに速度を上げた。
大井、北上の対応出来ない不意打ちの初撃で。浜風を連れ去るのだ。
最初に気付いたのは電であった。
それに続いて響も気付くがもう遅い。
その襲撃者は静かに、それでいて素早く正確にその目的を遂行していたのだ。
驚愕であった。
信じられない。
響はともかく、電の警戒網を潜り抜けてここまで接近したという事実が。
それだけで尋常ではない実力者であると察せられた。
謎の襲撃者による一撃で暁の意識が落ちる。
その人物はまずは一人と呟いた。
聞き覚えのない声である。
大井でも、北上でも、浜風でもない。
それはあり得ないことであった。
この島にいないであろう人物。
それが響に迫る。
迎撃する。
数度の駆け引きと攻防。その僅か数手で響は勝てないと察した。
そして同時にその姿に動揺する。
祥鳳型2番艦、軽空母の瑞鳳。この島には襲撃前にすらいなかった艦娘だ。
その動揺が明確な隙となる。
それを見逃してくれるような甘い相手ではなかった。
腹部に重い一撃。どうにかして急所を外したものの、響の体はくの字に折れ曲がり吹き飛ばされる。
とんでもない威力だ。
あの小柄からは想像出来ない。
「響っ!」
雷の悲鳴のような声が響く。
初撃は誰にも悟られることなく暁を沈めた。
続いてそれに気付いた響に蹴りを食らわせた。かなりまともに入ったので暫く動けないだろう。
残り二人。
暁型の雷と電だ。
雷はともかく、電は相当手強い。
雰囲気で瑞鳳はそう察した。
戦って負けるつもりもなかったが、無傷で倒せる相手でもなさそうだ。
もともと目的は襲撃者に対して不意打ちでその出鼻を挫くだけだ。深追いする意味も理由もない。
意識を失った暁。負傷した響。この二人で成果は十分だ。
彼女らはもう作戦通りに動くことは難しいだろう。
そう判断すると瑞鳳は素早く撤退を決めた。
屈む。
頭上から風を切る音が鳴る。
後頭部を狙った鋭い蹴りが空を切ったのだ。
続く回し蹴りを受け流す。
反撃しようにも、着地するよりも早く重心移動のみで放たれる踵落としに対応を迫られる。
屈んでからの受け流しで体勢が悪い。受けるほかない。
瑞鳳は両手で踵落としを防ぐ。
体重が乗り切っていない為、思った程の威力はない。
が、撤退する機会は奪われてしまった。
空中回し蹴り二連からの踵落とし。尋常ではない技量である。
瑞鳳は攻撃の主、電の実力を脳内で上方修正した。
ここで時間を食う訳にはいかない。
大井、北上、浜風の方に助けに向かわなければならないのだ。
しかし目の前のこの小さな体の少女は驚くことに、横須賀鎮守府でも上位の強さを誇る瑞鳳に迫る実力を有していた。
「逃がさないのです」
「電っ!」
「雷ちゃんは暁ちゃんと響ちゃんをお願いするのです。襲撃が単独とは限らないので!」
叫びながら電は攻撃の手を緩めない。
違和感があった。
凄い実力者だ。
とんでもない強さである。
しかし、倒すという意思が見受けられない。
手数が多く、対応を迫ってくるが危険を極限まで削っている。ノーリスクローリターンな攻撃の連続だ。
そこから導き出される答えは。
時間稼ぎしかない。
何かを待っている。
迂闊だった。
目の前の対応に集中していた為、索敵範囲が著しく低下していたのである。
改めて索敵範囲を広げれば接近する脅威に気付いた。
目の前の電を超える実力者がこちらに凄い勢いで向かってきているのである。
流石に合流されると勝ち目はない。
電は時間を稼ぐだけで良い。
不利だ。
ここまで計算して単独で攻撃してきたのだろうか。
強いと同時に頭の回転も速いらしい。
横須賀鎮守府に移籍しても活躍することだろう。
彼の力を使うしかない。
瑞鳳は僅かに後ろに飛ぶ。
遠くなる間合い。
ほんの数舜の静かな攻防の合間。
そこで驚くべきことに彼女は全身の力を抜いた。
次の瞬間。
瑞鳳の姿は電の目の前にあった。
「これは――っ!?」
鋭い肘が電の腹筋を突く。
腹部への重い一撃。自然とくの字に折れ曲がる体。下がる頭。そこには打ちやすいだろう顎。意識を奪われる。
そこまで素早く思考した電は呼吸さえままならない痛みの中、自らの顎に自分の拳を持っていく。
予想通り、そこに瑞鳳の鋭い膝蹴りが突き刺さった。
揺れる脳。
回る世界。
それでも防御が間にあったおかげでどうにか意識は奪われずに済む。
大きくのけ反り、平衡感覚を失った電は地面に崩れ落ちる。
「……驚いた。意識を奪ったつもりだったんだけど」
驚いたのは電の方である。
あの脱力からの踏み込み。
静かで。
意識の隙間に滑り込むような素早く。
美しい間合いの詰め方は海人のそれに他ならない。
「さよなら」
そう言い残して彼女は立ち去る。
あの様子だと接近する加賀の気配に気付いていたらしい。
とんでもない化物である。
電が気付けない隠密行動。暁の意識を確実に奪う器用さ。響を一瞬で無力化する近接戦闘能力。電を相手にしながら加賀の気配を感じ取る索敵能力。そして海人と同じ踏み込み。
この島に存在しない艦娘。
彼女はいったい何者なのだろうか。
そして何故電らを襲撃したのだろう。
疑問は尽きない。
「電、大丈夫?」
「雷ちゃん、電は平気なのです。……暁ちゃんと響ちゃんはどうですか?」
「暁は意識を失ってるだけ、でも暫く目を覚まさなそう。響の方は骨まではいってないけど、かなり重い一撃だったみたい。暫く激しい動きは難しそうよ……」
「最短の時間で最高の成果を生み出した訳ですか。……こちらの襲撃を妨害したいのならばこれ以上ない成功ということなのです」
「あの娘いったい何者なのよ?」
「分からないのです。……でもこの島で彼女に対抗出来そうなのはもう加賀さんしかいないのですよ」
互いが互いを把握していた。
位置も。
実力も。
故に、逃げられないと察した瑞鳳は堂々と姿を現し、ゆっくりとした足並みで彼女に近付いていく。
「……貴女、何者なの?」
「横須賀鎮守府所属。第一遊撃部隊旗艦の瑞鳳です。貴女は?」
「加賀よ。ただの、加賀。所属なんてないわ」
冷酷な瞳で加賀は瑞鳳を射貫いた。
「申し訳ないけれど、この島では外部の存在は死ぬことになっているの」
「欠片も申し訳ないって気持ちが伝わってこないけど?」
「欠片も申し訳ないと思っていないもの」
本物の殺気である。
目の前のこの女は全力でこちらの命を奪いに来ているのだ。
手を抜けるようなレベルの相手ではない。
そんな甘えは許されないだろう。
一瞬でも気を抜けば殺される。
こちらも殺す気でやらなければ。
瑞鳳は覚悟を決める。
「遺言くらいは聞きましょうか?」
「結構です。……彼に会うまで、戦艦級の深海棲艦に囲まれても死ぬ気はないから」
彼を想うと力が溢れてくる。
生きる力を。
生き残る術を。
大切な気持ちを。
彼からもらったのだ。
まだ何も返せていない。
もっと幸せな毎日を過ごしたい。
彼がいるだけでいいのだ。
それだけでいい。
だからこそ、彼がいないことだけは許せない。
同時。
二人の姿が消える。
地を蹴る音だけ残して。
互いに実力は感じていた。
どちらも相手が強敵であると、一筋縄ではいかない実力者だと覚悟して尚。
それでも予想を遥かに上回っていたのである。
加賀は海人との模擬戦に相当すると評価した。
瑞鳳は近接戦技術が自分と同等、あるいは不知火レベルであると評価した。
互いの手の内を探る攻防から徐々により積極的な攻めへと展開していく。
加賀が踏み込み、瑞鳳の左手を掴もうとするがそれを軽く捌き、逆に足払いで体勢を崩しにかかる。
それを見た加賀は超人的な反応速度で足を上げ躱すものの、続く瑞鳳の体当てを躱す手段がない。片足のみで立っている故に対応手がなかったのである。
そこから瑞鳳が畳みかけようと一歩踏み出すが、踏み出した足目掛けて加賀が蹴りを放つ。崩れた態勢で蹴りを放たれるとは想定していなかった為、地面を踏む前に踏み足を見事に狩られてしまう。
前方に投げ出した重心を支える手段はなく、瑞鳳は致命的な隙を晒すが、それはお互い様であった。
加賀も崩れた体勢から無理やり蹴りを放った為、追撃する余裕など欠片もなかったのである。
瑞鳳が前方に倒れながら両手を地面に置き、そのまま残った後ろ足で地面を蹴ると逆立ちして体を反転し、その勢いで回し蹴りを放つ。
逆立ち状態からのアクロバティックな蹴りを加賀は崩れた重心を利用して後ろに体を倒し、地面に手を突いてバク転しながら距離を離す。
瑞鳳の鋭い回し蹴りが空を裂き、互いに安全圏まで離れてから一呼吸置く。
「……凄まじい技量ですね。感嘆に値します」
「それはこっちの台詞だよ。貴女何者なの?」
軽口をたたきながら瑞鳳は内心で焦っていた。
ここで無駄な時間を使う訳にはいかない。
しかし自分が全力を出したところで目の前のこの強敵を倒せる保証はない。それどころか強引な攻めは敗北に繋がる確率が濃厚だ。
不用意な立ち回りが通用する甘い敵ではない。
僅かでも隙を晒せばその瞬間に終わる。そんな戦いなのだ。
「その戦力、危険と判断します。どこから何の目的で来たか知りませんが、貴女の命はここで摘み取りましょう」
「そう簡単にいくと思う?」
「確かに簡単ではないでしょうが……。見たところ――」
加賀が瑞鳳の視界から消える。
「私の方が上です」
声を置き去りに。
鋭い蹴りが瑞鳳の頬を掠める。
「――っ!」
続く拳を払い。
裏拳を受け止め、逆にその腕を取ろうとするが巧みな体捌きで受け流される。
瑞鳳の表情が曇った。
怒涛の連続技にこのままではいずれ押し切られると判断したからである。
しかし、突破口が見えない。
隙のない攻撃の連続。
下手に攻勢に移ればその隙を突かれそのまま沈められるに違いない。
受け流し、受け止め、躱すことで精一杯という状況だ。
瑞鳳は認めた。
こと近接戦闘。徒手空拳の技量において、この加賀という艦娘は自分を僅かだが上回っていると。
しかしそれが敗北を確定させるとは思わなかった。
彼女は横須賀鎮守府の艦娘なのだ。
彼が直接指導し、己の技術を叩き込んだのである。
故に、彼女にもまた、彼の技量が受け継がれていた。
勝てない。
このままでは勝てない。
そう確信した瑞鳳は電の時と同様、彼の力を借りることを決める。
加賀の拳を上半身を逸らして躱す。
当然その隙を逃さす追撃してくるだろうが、させない。瑞鳳はそのまま地面を蹴って空を蹴り上げるようにバク宙する。
狙うは加賀の顎一点。
この奇襲を加賀はギリギリのところで躱す。
離れる距離。
刹那の静寂。
瑞鳳は全身の力を抜き。
意識の隙間を突いて。
気付けば加賀の目の前にいた。
入る。
瑞鳳は確信した。
加賀は驚き。
動揺しながらも。
初見ではなかった。
何度も見た。
そして敗北の悔しさから何度も脳内で繰り返し対策を練った。
その執念が。
彼女の意識深くに根付いた敗北の記憶が。
条件反射でそれに対応するレベルまで達していた為。
結果。
瑞鳳の一撃は空を切る。
「え?」
信じられないという瑞鳳の声。
「それはもう見たわ」
勝利を確信した加賀の声。
膝蹴りが顎を打ち抜いた音が森に響いた。
暗転する視界。
痺れるような痛みが顎から感じられた。
自分が倒されたのだな、と理解するのにかなりの時間を必要とした。
冷たい道場の床を背に、彼女はゆっくりと瞼を開く。
すると眼前には見慣れた道場の天井を背景にばつが悪そうに苦笑いする彼がいた。
「……強く打ち込み過ぎたか?」
「ううん、平気」
差し出された手を取り、瑞鳳は立ち上がった。
つもりだったが、よろけてしまう。どうやらかなり脳を揺さぶられたらしい。
それを彼は優しく受け止めて支えてあげる。
若干頬を染める瑞鳳に彼は言う。
「俺が教えたそれを習得したのが嬉しくて使いたい気持ちは分かるが、頼ることは良くない。全身の力を抜いて体重と重力を利用して踏み込む関係上、どうしても無防備な前傾姿勢になる瞬間が存在する。これは相手に読まれていれば隙だらけだ。だからさっきのように顎を膝で打ち抜かれる」
「うん、身をもって学習したよ……」
恐らく軽く彼が手加減しただろう一撃であの威力だ。敵意あるものが本気で打ち抜けば意識を確実に持っていかれるだろう。
「初見の相手にはまず間違いなく対応不可能なところがこの技の利点だが、一度見せたならばこの技の脅威そのものが駆け引きの材料になる」
「フェイントに使えるってことだよね?」
「その通りだ。初動作だけで相手に対応を迫れるからな。本当に踏み込むのかどうか、それだけで相手からしたらやり難いことこの上ないだろう」
軽く距離を取ると。
彼は構えた。
瑞鳳も同じく構える。
近接格闘の指導の為にと彼が個人的に作った鎮守府の道場。
そこには今、瑞鳳と彼の二人しかない。
彼が全身の力を抜き、重力に従って体が崩れ落ちる。
次の瞬間には彼は目の前にいるだろう。
瑞鳳は素早く重心を後ろに引き、後退と反撃の備えをする。
が、そこに彼はいない。
「え?」
分かっていたのに対応出来なかった。
フェイントを見せると予想出来ていても、真に迫った迫力から反射的に対応をしてしまったのである。
「もっと面白いものを見せようか?」
そう呟くと、再び重心が落ちる。
踏み込みの初動作だ。
瑞鳳は気合で対応を我慢した。
しようとした。
が、目の前には彼がいた。
フェイントではない。
踏み込んできたのだ。
対応出来ない。
しかし、それでも瑞鳳は彼に鍛え上げられた艦娘の一人。脊髄反射のレベルで意識がついていかなくても体は勝手に反応する。
振りぬく拳。
しかしそこに彼の姿はない。
離れた場所にいる。
踏み込む前の位置だ。
あり得ない。
幻術でも使われた気分である。
「どう、……して?」
「まぁこれも技の一つだよ。フェイントを極めると相手にありもしない自分の姿を認識させられる。一瞬だけどな」
そう言った後、三度重心が落ちる。
踏み込みか。
フェイントか。
見分ける術を持たぬ以上、瑞鳳は対応するしかない。
突き出す拳。
目の前には彼がいた。
凝視する。
本物だ、フェイントではない。
二分の一に勝利したのだ。
直撃コース。このままでは彼の命にかかわる。
力を抜くか迷ったがそれも一瞬のこと。
瑞鳳は知っていた。
彼女ではどうあがいても彼には勝てないことを。
故に全力で振りぬく。
拳は空を切った。
あろうことか前傾姿勢で踏み込んだ彼は、そこからさらに己の上半身を加速させ、地面にぶつかる勢いで加速して拳を前に躱したのである。
しかしそんな体勢では攻撃に転じられないだろう。
そんな瑞鳳の考えを嘲笑うかのように。
彼はそのままもう一歩踏み出し、その足を彼女の足に絡ませ。
そこを中心に体を反転させ。
勢いそのままに裏拳を顔面に飛ばす。
瑞鳳の眼前に裏拳が止まった。
「これが踏み込みにカウンターを合わせられた場合の対処その1だ」
「……その1ってことは2があるってことだよね?」
「出来れば2は使いたくはないが、最終手段がないこともない。それはな――」
乾いた音が鳴り響くが、手応えが軽い。
嫌な予感が彼女の第六感に警鐘を鳴らす。
半歩下がった。
故に、瑞鳳の蹴りは加賀には届かずに空を切った。
が、あまりの驚きに追撃が遅れる。
完全に決まっていた筈だった。
意識を刈り取ったと確信していた。
しかし目の前の彼女は確かにはっきりとした意思を秘めた瞳でこちらを射貫いている。
明確な攻撃の意思。
無意識下での抵抗ではない。
意識を刈り取れなかった。
あり得ない。
確実な一撃であった筈だ。
動揺を押し殺し、加賀は素早く戦闘態勢を整える。
相手がどのようにして耐えたのかなど知る必要はない。一撃で倒れないならば、倒れるまで何度でも幾度でも倒し続けるだけの事である。
踏み込み、鋭い拳を振るう。
捌く瑞鳳の動きは精彩に欠けるとは言い難い。
先程の致命的であるはずの一撃が尾を引いていない証拠だ。
瑞鳳は加賀が思っているよりも余裕がある訳ではなかった。
彼女の脳内も何故初見で躱されたのか。そもそも、本当に初見だったのか。それはもう見た。とはいったいどういう意味なのか。そんな疑問が渦巻いている。
それらを彼女も今は必要ないと強靭な意志力で抑えつけているのだ。
彼より授かった第二の対策。
打ち込まれた瞬間に踏み足を全力で蹴り、仰け反ることで衝撃を完全に受け流すという技。
ほんの僅かでもタイミング、勢いを誤れば失敗する妙技である。
それをこの土壇場で見事成功させたのは瑞鳳の度胸と日々の鍛錬を褒めるべきだろう。
故に、実際のところ瑞鳳に肉体的ダメージは殆どなかった。
脳も揺らされてはいない。
十全に戦える。
が、時間は奪われていく。
このままではいけない。
彼女が駆けつけると約束した北上や大井、浜風の状況はきっと悪くなる一方なのだ。
どうにかして目の前の彼女を攻略する必要がある。
簡単に見逃してくれる甘い相手でないことは明らかだ。
何より、目の前の彼女はどういう訳か瑞鳳に明確な殺意をもって挑んでいる。
手早く戦闘不能にするしかない。
「そう、簡単でもなさそうだけど……」
呟き、瑞鳳はどのような手で彼女を攻略するか彼の教えを反芻する。
肉眼で浜風の存在を確認した。
向こうはまだこちらに気付いてはいない。気配は完全に殺している。
風下だ。
まだ気付かれずに近付けるだろう。
加賀が援護に向かったとはいえ第六駆逐隊の様子が心配だ。
なるべく穏便に済ませる気でいたが。
時間が惜しい。
一瞬で浜風の意識を奪い、彼女を連れて第六駆逐隊のもとへ向かう。
可能だろうか。
不可能だ。
断定した。
あれだけ油断なく殺気立った艦娘相手に人間が可能な領分ではない。
普通の人間には不可能である。
そう結論付けた海人の脳内で、ナニカの声が響いた。
『本当に?』
誰の声だろうか。
やけに心地が良い。
『貴方は――』
聞きなれた、暖かい声は。
『普通の人間ですか?』
決定的な言葉を投げかける。
脳裏に走る細切れの、断片的な映像。
指輪。
黒い指輪。
彼女が。
自分も。
繋がって。
それは奴らの、研究の、成果。
数多の犠牲の上に成り立つ、唯一の成功例。
何故、成功したのか。
成功。
要因。
遺伝子。
己の、螺旋。
音が消える。
体が軋みを上げる。
赤く染まる視界。
耳障りな声が記憶の中から蘇る。
「素晴らしい、適合率90%を超えている。驚くべきことだ!」
「フェーズ3を安定状態で突破、快挙です!」
「そうか、足りなかったのは。欠けていた要因は君か!」
白衣を着た人間が。
何人も。
ベッドに横たわり。
数多の管を体から伸ばし。
何かをいくつも体に投与され。
左手の薬指には約束の指輪が。
黒い指輪が。
そう、隣には、彼女が。
同じく左手の薬指に黒い指輪を付けた。
榛名が。
脳が弾けそうな程に頭が痛む。
体が溶けそうな程に熱が溢れる。
自分が自分でない何か別のモノに変質する感覚が。
強烈な違和感が襲う。
抑え込むか。
否、数舜であれば制御できると判断した。
利用しない手はない。
己がどういう状態であるか、理屈では分からないが直感で理解した。
海人は地を踏み抜いた。
陥没し、裂け、弾ける。
弾丸のように海人の体が跳ぶ。
浜風の認識の外にある速度だ。
対応は困難を極める。
一撃で意識を刈り取る技量と腕力が、今の海人にはあった。
そして浜風が何かを察知するよりも早く、顎を擦るように拳で揺らす。
一瞬で幾度も脳を振らされた浜風の意識は意図も容易く暗闇に落ちた。
北上と大井が異常を察知し、こちらを見るその速度よりも早く。
地を蹴る音のみをその場に残して海人は浜風を連れ去る。
北上と大井が見たのは確かにその場にいた浜風の消えた姿と、残された陥没する地面だけであった。
跳ぶ。
人間ではあり得ない身体能力。
艦娘でもあり得ない身体能力。
あるいは、深海棲艦でようやくなしえるような驚異的なそれは。
浜風を抱えた海人の姿を遥か遠くへと運んでいた。
「……なるほどな、そういう事か。徐々に読めてきたぞ」
立ち止まり、必死に己を侵蝕する深海棲艦の力に抗う。
男は艦娘になることが出来ない。
艦娘は深海棲艦の力を制御することが出来ない。
指輪は深海棲艦の力を抑えることが出来る。
指輪は艦娘と絆を結んだ提督とを繋ぐ特別な兵装だ。
指輪は深海棲艦の力を僅かに引き出せても、それ以上の効果はない。
制御出来ないならば。
制御する場所を他に置いてしまえばいい。
外部接続だ。
だからこそ、繋がった制御部分もいずれは侵蝕を免れない。
海人は徐々に抑え込まれていく深海棲艦の力を確かに認識している。
抑え込むことに慣れている。
慣れ過ぎている。
手慣れた感触だ。
記憶が覚えていなくても、体が覚えている。
「なるほど、俺はもうとっくの昔に人間じゃなくなっていた訳か……」
浜風を抱きしめながら呟く。
記憶の断片が、徐々に戻っていくのを感じた。
同時に、自分という存在が薄れていくことも。
「それでも、俺がまだ深海棲艦の影響を受けているということは。制御するべき力が逆流してくるってことは、榛名がまだ生きているということだ」
己が誰かと言う答えと共に。
海人は自らが求めるべき希望にも近付いていく。
「見たっぽい?」
「う、うん。僅かだけど、あまりにも速過ぎて自信がないけれど。確かに見たよ!」
「ありえないっぽい、いくら海人が凄いからってあれはっ!」
「でも今はっ!!」
夕立の言葉のその先を遮るように、時雨は叫ぶ。
「目の前のことに集中だよっ!!」
「――っ!」
海人のとても人間とは思えない身のこなしについては確かに気になる。
しかし時雨の言う通り、それは今気にする必要のあることではない。
後でいくらでも聞けばいい。
それよりも今は目の前のことに集中しなければならない。
北上はマイペースで独特な空気を持っている。それは冷静沈着で常に己の軸がぶれないことにも繋がっている。
大井も常に冷静で状況を正しく分析する力を持っているが、一つだけ例外がある。
それは北上の身に危険が迫った時だ。
その時彼女の冷静さは脆く崩れ去る。
劇場に身を任せ、不安定な精神状況に陥るのだ。
故に、狙うべきは北上。
夕立は走る。
地を滑るように。
速く。
驚愕する北上と視線が交差する。
条件反射のように放たれた攻撃を軽く躱し、踏み込み、蹴りを懐に叩き込む。
背後から殺気。
これは大井のものだ。
想定通り激情した大井が報復しに来たのだ。
対応は必要ない。
何故ならば。
夕立には最高の相棒が控えているのだから。
大井の攻撃を時雨が打ち払う。
「邪魔を、しないでっ!」
彼女の咆哮と共に繰り出される強烈な一撃を時雨は涼しい顔で受け流す。
「大井っち! 夕立と時雨の相手は無理! 引くよ!」
「……っ」
北上の言葉に素早く従った大井は素早く時雨への攻撃をやめて大きく後ろに飛ぶ。
「山城さんっ!」
時雨が叫ぶ。
次の瞬間、爆音と共に大木が倒れて大井と北上の逃げ道を塞ぐ。
「流石戦艦級っぽい!」
あらかじめ逃げ道に隠れていた山城が時雨の合図で樹を蹴り倒したのだろう。
逃げ道を塞がれたこの状況。夕立と時雨を躱しながら逃げる道はもう一つしか残されていない。
大井と北上の判断は早く、迷うことなくその道を選択した。
その先には鈴谷と川内が待ち構えている。
知っている。
加賀はこの動きを知っていた。
緩やかな柳のように捌き。
僅かでも気を緩めればその瞬間に雪崩のように襲い掛かる。
意図の読めぬ駆け引き。
幾重にも張り巡らされた罠。
それらに注意を巡らせながら戦わなくてはならない。
必要な時には己の危険を顧みず攻撃し、そして基本的にはどこまでも安全に最悪を想定して動き続ける。
老獪な手管。
そう、それは海人の戦い方そのものであった。
互いに実力は拮抗している。
どちらかが上なのは間違いないだろうが、その差はきっとほんの僅かなものだろう。
向こうの想定を超える何かをこちらが行使するか。
あるいは何かしらの外的要因がなければ勝負はまだまだ長引くだろう。
相手は焦っている。
恐らく大井と北上の救助に向かいたいのだろう。
その分精神的優位はこちらにある。
目の前の異分子は消す。
この島には誰にも知られてはならない。
この島は地図に存在しない忘れ去られた島でなくてはならない。
それがこの島にいる艦娘を幸せにする最低限の条件だ。
故に、目の前の艦娘はここで死ななければならない。
例え彼女が海人の記憶を失う前を知る人物だとしても。
無傷では埒が明かない。
多少代償を伴ったとしても、強引に出る。
より深く踏み込む。
視線が交差する。
相手も望むところだという鋭い意思を研ぎ澄ませていた。
考えていたことは相手も同じ。
覚悟が同じならば、あとは技量が僅かでも上回った方が勝利する。
一瞬の駆け引き。
刹那の時間と幾重もの駆け引き。
技巧と思考を限界まで酷使し、極限まで互いの先を読みあう。
直線的な攻撃か。
受けてから反撃か。
躱すか。
受け流すか。
絡めとるか。
撃ち落とすか。
蹴りか。
拳か。
最後は己の答えを信じるのみ。
加賀の拳が瑞鳳の腹筋を貫いた。
確かな手応え。
これは衝撃が内臓にまで届いているだろう。
暫くはまともに動けない致命的な一撃。
対して瑞鳳は加賀の胸に掌が添えられているだけ。
たったそれだけ。
「かふっ」
内臓を叩かれ、肺から溢れ出た空気を吐き出すように瑞鳳は呻いた。
そして苦しそうな声で一言。
「寸勁」
瞬間。
加賀の中で何かが弾けた。
そこで彼女の意識は途絶える。
その頃海人は全身の痛みでのたうち回っていた。
手頃な木陰に浜風の体を寝かせたのち、声を抑えて痛みに歯を食いしばる。
「――――っ」
艦娘の性能限界まで身体能力その他を引き上げる深海棲艦化。それを人間である彼の体で無理やり適応させたのである。
その代償として体が極限まで痛めつけられていたのだ。
筋繊維や内臓、血管から神経系までズタボロである。
「……っ、くそ、もう二度とやんないぞ」
しかし得たものは大きい。
何故このタイミングかは分からないが、絆を仲介してのこの逆流現象は恐らく榛名からの救難信号だ。
助けてほしいという悲痛なまでの願いだ。
それを受け入れたからこそ、海人は非常に多くの情報を得ることが出来た。
榛名が生きていること。
榛名と自分の絆を繋ぐ物がこの島にあること。
そして彼の記憶がかなり取り戻せたこと。
まだ一部真っ暗な靄に覆われたような部分はあるものの、非常に多くの過去を取り戻すことが出来た。
しかしそれにしても痛い。
痛みには強い方だとは思っていたが、堪えられぬほどに痛い。
激痛と言葉で表すには生ぬるい。
意識を失った方が楽になるだろうが、痛みで意識が冴えわたる。下手に堪えられる自らの精神力がこの時ばかりは憎い。
痛みに耐え、地面を這いずる音で気付かなかった。
誰かが近付いているのを。
海人はゆっくりとその人物を見上げる。
「……やはりいたか」
海人の言葉にその人物は予想外といった様子で首を傾げた。
「驚かないのですね?」
「可能性としては考えていた。今回の大井、北上、浜風の件は矛盾が多すぎる」
痛みに必死に堪えながら海人は不敵に笑う。
「地面でのたうち回りながら言っても迫力皆無ですね。……でも本当に驚きましたよ、矛盾とはなんでしょうか?」
「反旗を翻した三人が地下の提督の事を知る術がない。知っていたなら地下牢の位置を知らないこともおかしい、おまけに鍵の所在を知らないこともな」
「なるほど。いつから私の存在を疑っていたのですか?」
「地下に本当に設備があるなら管理する人物がいることは考えていた。加賀だけでは手が足りないだろう。あるいは加賀さえもお前の存在は知らないとも思っていた」
「と言うと?」
「でないと地下の提督が生かされている理由がない。加賀との交渉材料が何かは薄々察してはいた」
「……噂通り油断ならない人物ですねぇ」
その人物はクスクスと笑った。
今まで表舞台に一度も立たなかったこの島の人物。
「ご明察。私こそが地下迷宮の最奥。暗証番号と認証キーでのみ入れる研究設備を管理する人物です。そして大井さんと北上さんに地下の提督の事を伝えたのも私です」
「どうしてこの状況で動いた? 何が目的だ?」
「……目的は、そうですね。私の安全です」
そう囁き、彼女は海人の口に湿った布をあてがう。
一呼吸で海人の意識は途切れた。
目の前の化物が両足から崩れ落ち、完全に意識を落としたこと確認して瑞鳳もそのまま背後に倒れた。
仰向けに大きく深呼吸し、咳き込む。
どうやらかなりきついのをもらってしまったらしい。
「う、……運が良かった。もう一度やって勝てる気がしないよ……」
瑞鳳は最後の一瞬まで浸透脛を使える素振りなんて一度も見せなかった。
故に、ただ掌を急所に置くという行為に危機感を覚えなかったのだろう。
加賀の拳は確かに脅威だ。
彼女が普段通り全力で振りぬけばあるいは瑞鳳はもっと致命的な状態に陥っていたに違いない。
しかし読み合いの末、ぎりぎりまでどんな攻撃もどんな対応も可能な状態を保った結果の一撃ならば話は別だ。
その威力は当然数段劣る。
対して瑞鳳は穿てば決まる一撃必殺の極意だ。
彼に教わっていた瑞鳳自身使う機会が本当に訪れるとは思ってもみなかったが、あの手の技はまともに決まればどうあがいても意識を寸断される。
艦娘と言えど基本的には人間の延長線上だ。
身体の中で衝撃を破裂されればなす術もない。
「でも私も満身創痍なんだよね……」
そう、意識を奪われなかっただけでもう動ける気がしない。
痛み分け。
引き分けと呼ばれる結果だろう。
何せ瑞鳳には加賀にとどめを刺す体力もここから逃げる体力も残されてはいないのだ。
「もとからこっちは命まで奪う気なんてさらさらありませんけどねー」
「えっと、ならどうして攻撃したですか?」
こちらを覗き込む少女の姿があった。
電である。
「あー、……遺言だけ聞いてもらってもいいですか?」
電は意識を失った加賀を見てから、そしてどうやら満身創痍らしい瑞鳳を見て静かに言う。
「なるほど、大方そこの加賀さんに殺されかけたらしいですが電にそんな気はないのですよ」
「信じていいの?」
「そちらに任せるのです」
「……あなた凄い綺麗な瞳をしてる。うん、信じてもいいかな」
そう言うと瑞鳳は隠し持っていた鋭く先の尖った石を投げ捨てた。
「い、いつの間にそんな物を隠し持っていたのですか、恐ろしい人なのです」
「いやぁ、私のところの提督はどんな状況でも諦めることを許してくれない人なのよ。例え死ぬ間際でも生きることを諦めないで足掻き続けろって。だから死にそうなら殺してでも生きるし、死なないなら大抵のことはいっかなーって」
「…………似たようなことを言いそうな人を一人知っているのです」
電の脳裏には海人の姿が思い浮かぶ。
「そもそも、貴女はどこの誰でどうしてこんな真似を?」
「ええっと、実は……」
まともに動くことも出来ない瑞鳳は電の瞳の綺麗さを信じて全てを素直に話すことに決めた。
目を覚ました。
真っ暗だ。
何も見えない。
なるべく情報を集めてみる。
音はない。無音に近い。
床は冷たい感触がした。そこに今座っている。
両足は縛られていて動かない。
残念なことに両手も縛られていて動かなかった。
背中には棒のようなものがあり、それに背中を預けている体勢だ。そして両手はそれに縛り付けられているらしい。
結構頑丈な棒のようで無理やり動かそうにもピクリともしない。
縛っている紐も力技でどうにかなる代物ではないようだ。
「……なるほど、俺は捕まった訳か」
暗闇に徐々に目が慣れてくると自分のいる部屋が狭い五畳ほどの四角い部屋で、コンクリートに四方を囲まれ窓もない場所であることが分かる。
いや、一カ所だけ壁ではない部分がある。
鉄格子だ。
見覚えがある。
そう、ここは地下迷宮にあった牢獄だろう。
提督が囚われていた部屋の近くにあった空きの牢獄だ。
「………………」
海人は床で倒れている浜風を発見した。
意識を失ってはいるが両手両足は自由である。
縛られて身動きが取れないようには見えない。
「おいおいおい、これって俺かなりピンチじゃないか?」
声色は冗談半分だが、海人の背中には冷や汗がたらりと流れた。
「……いるんだろ?」
海人の問いに鉄格子の外から声がする。
「どうも、こんな強引な方法で連れ出してしまって申し訳ないです」
「本当に迷惑だ。早くここから出してくれ」
「出す前に幾つか聞きたいことがあるのですが」
「今じゃないとダメか? 浜風が起きると俺の命が危うい」
「ええ、だから聞きたいことがあるのですよ」
正直に答えなければ命はないという脅しだろう。
嫌なやり方をしてくれる。
「時間がない。好きなだけ聞け、俺には隠すようなこともない。こっちは急いでいるんだ」
「……では、貴方は何者ですか?」
「それはこっちの台詞だ。……と、言いたいところだが、答えないんだろうな。いいだろう。俺は海人だ。この島の提督でそれ以上でもそれ以下でもない」
「違いますね。それは重要なことではありません」
彼女は深いため息を吐きながら続ける。
「貴方の過去について聞いているのです」
「俺の過去を知ってどうする? お前に何の関係がある」
「ありますよ。大ありです。私が生きていく為に」
「どういう意味だ?」
「貴方はこの島がどういう場所か知っているのでしょう?」
「ああ、大概はな」
「ではこの島の管理を任されていた私が何を研究していたかもご存じで?」
「把握しているつもりだ」
「では私の命が危ういことも理解出来ますね?」
「……そういうことか」
島がこのまま解放に向かえば加賀に殺される。
島から逃げれば機密を守る為に軍に殺される。
彼女が生きる道は旧提督を解放し、島の権力を再び握るしかない。
それには海人はこの上なく邪魔なことだろう。
「何故俺を殺さない?」
「ええ、実は私かなり追い詰められていまして。地下の彼を解放してもあまり良い結果になるとは思えない以上、貴方の協力を得るしかないと判断しました」
「俺の協力を仰ぎたいのに俺にこんなことをしていいのか?」
「加賀さんに殺されかけて監禁までされて呑気にその本人を助けるとか言っている人ですからね、割と楽観視してますよ」
「……全部見てた訳か」
「見ていたというよりは聞いていたですね」
彼女は地下の研究施設で島の上の状況を把握しているようだ。
「俺はお前も助ける。心配はいらない。だから俺を解放してくれ」
「貴方の言葉を疑うつもりは微塵もないんですけど、ちょっと事態はそんなに単純じゃないんですよ」
「どういうことだ?」
「この島は滅びます」
「……は?」
「このままだとあと数日でこの島は滅びるのです」
あまりにも確定的な彼女の言葉に海人は息を呑む。
「おい、お前は何を知っている?」
「外から来た艦娘が、やってくれたんですよ。致命的な失敗を」
彼女は言う、絶望的な島の状況を。
「来たよ」
「わ、……分かってるし」
川内の言葉に鈴谷が答える。
こちらにまっすぐ向かってくる二つの影が見える。
大井と北上だ。
作戦通り見事ここまで誘き寄せたらしい。ここからはこちらの仕事である。
鈴谷と川内であの二人を説得するのだ。
「……ちょっち思ったんだけど」
鈴谷が言いにくそうに切り出す。
「なに?」
「勢いで引き受けちゃったけど、説得するにしても鈴谷と川内だとあまりあの二人と接点なくない?」
「……今更そんなこと言う?」
「いやだってあの状況で頼まれたらフツー断れなくない!?」
「どうする? 無理だって言うなら強引に二人を縛り付けるプランもあるけど」
「ううううぅっ、やるってば! 鈴谷だってあの二人が嫌いな訳じゃないし、仲間だもん! 出来れば傷つけたくないっ!」
「いい覚悟だ」
こちらを認識した大井と北上が足を止める。
二人とも肩で息をしているが戦闘意欲が消えている訳ではない。
あるいは殺意とも呼べる覇気をこちらに向けている。
「そこをどいてくれるかな……?」
静かな口調で北上が言う。
どかなければ殺してでも通るという意思が込められた一言だった。
「その前にちょっとだけ鈴谷たちとお話しないカナー?」
「どかないなら、容赦しませんよ?」
大井が今にも飛び掛かりそうな姿勢で呟く。
一触即発の雰囲気だ。
それを、川内の一言がぶち壊した。
「条件次第ではそっちに協力してもいいよ?」
「はあああぁぁぁあぁっ!?」
鈴谷の絶叫が森に響き渡る。
「ななな、なに言ってんの!?」
「何って、私はそもそも夜戦が出来ればそれでいいし、夜戦が出来るなら誰が提督でも構わないんだよねー」
「……条件って?」
北上の言葉に川内が答える。
「その前にそっちの目的を教えて欲しいかな。何をどうしたくて、どうすれば満足なの?」
「私たちの目的は本当の提督の解放です。それ以外ありません」
「私の目的は夜戦がしたいだけ、ほら敵じゃないでしょ?」
「ちょっと待って川内裏切る気なの!?」
「裏切るもなにも、もともと私は夜戦がしたいだけ、最初からそれだけ」
鈴谷の額に汗が溢れる。
まさかの急な三体一である。
戦力的には絶望的。鈴谷はもともと練度も高くはない。逆立ちしたって川内には勝てないのだ。
大井と北上を追い込んだ時雨と夕立がこちらに向かっている筈だ。あの二人は戦力的にもかなり強い方なので、それと合流できれば戦えなくもない。
しかし……。
「貴女はどうしますか? 鈴谷さん」
大井の問いに鈴谷の頭は真っ白になる。
鈴谷は海人側の筈だ。つまりここは断るべきだ。加賀が言うには前の提督は絶対に信用出来ないらしい。この意見には海人も賛成していたし、電も同意していた。信用出来る情報だ。
鈴谷には状況が良く分からない。
今まで現実逃避していて外の情報を満足に記憶してはいなかった。
見たこと、聞いたことを都合よく改変して全て自分の夢のなかで生きていた。
そこには熊野もいて、提督もいた。
暖かい世界だった。
でもそれは幻想だった。
本当は熊野はもういなくて。
提督は信用出来なくて。
でもそれは本当なのだろうか。
誰が本当を言って誰が嘘をついているのか鈴谷には分からない。
前の提督を解放すればまたあの暖かい日々が戻ってくるかもしれない。
このまま海人を信じて良くなると誰が保証してくれるのだろうか。
少なくとも目の前の北上と大井は前の提督を信じている。
鈴谷は、誰を信じるのか。
ふと、優しく抱きしめれれた感触を思い出した。
柔らかな声で彼は言う。
「ごめんな、暖かい場所から出してごめんな。でも、お前は生きているんだよ。だから、生きなきゃいけないんだよ。幸福に生きるために、生まれてきたんだから」
真っ白な頭で思い出したのは海人のぬくもりと言葉だった。
簡単なことだった、なんてことはない。鈴屋はもう既に、彼にやられていたのである。
熊野のいない世界で、穏やかだった日常のなくなった世界で。
それでも生きなければいけない。
幸福になるために産まれたらしいから。
では鈴谷の幸せとは何か。
仲間と一緒にまた笑って、何気ない日常を過ごす。
それと。
「あとは、もう一度、何度でも。あのぬくもりが、欲しいかな」
「どうしました?」
大井の言葉に鈴谷ははっきりと答える。
「鈴谷は協力出来ないよ!」
「では殺しますね」
大井が鈴谷に飛び掛かる。
「させないよっと」
大井の手首を掴んで止めたのは川内であった。
「どういうつもりですか?」
「どういうつもりも何も、私が海人を裏切る訳ないでしょ?」
大井が手首を捻って川内の手を振り払うが、川内の足払いが既に決まっていた。
大井はバランスを崩して地面に倒れる。
「大井っち!」
背後から飛び込んだ影が駆け寄る北上の手を掴み、足を払い、関節を決めて地面に抑えつける。
それは時雨であった。
気付けば大井も夕立が拘束していた。
「……時間稼ぎって訳ね」
大井が呻く。
「んー、まぁそんなとこ」
「違うっしょ!」
鈴谷が川内に詰め寄って怖い剣幕で睨みつける。
「せーん、だぁぁいぃぃぃぃっ??? 鈴谷を試したでしょ?」
「……なんのことかなぁ?」
「目を合わせるし!」
「いやだって、鈴谷のメンタルが回復したのは嬉しいけど、本当に完全にこっち側なのか気になるし?」
「やり方がえげつないてば、ちょっち酷くない?」
「二人とも喧嘩している場合じゃないよね」
「どうするっぽい?」
時雨と夕立の問いに川内は少し考えてから、しゃがんで大井と同じ視線の高さに合わせる。
「大井さん。ひとつ質問があるんだけど、貴女にとって一番大切なものってなに?」
「それを答える必要がありますか?」
「大切なことだよ」
「……北上さんです」
「じゃあ北上さんと提督はどっちが大切?」
「そ、れ、は…………れ、は、……うぅ……、て、てい、ていと……違う、違う違うチガウっ!」
大井は何かを振り払うかのように頭を振る。
激痛に苛まれるかのように。
「大井っち! 放せ、大井っち!」
「時雨。北上さんってもっと穏やかと言うか、マイペースというか、朗らかな人だったよね?」
「そう、記憶しているけど」
「この二人の洗脳、酷いよ。ちょっと説得とかそういうレベルじゃない」
悔し気に川内はそう言うと、悲しい顔で呟く。
「時雨、夕立。二人の意識を奪って」
次の瞬間、北上と大井の意識は一瞬で寸断された。
時雨と夕立の一撃によるものである。
「え、どうするのこれ……」
鈴谷が困惑しながら言う。
「連れ帰って縛ろう。現状どうにか出来るような状態じゃないと思うんだ、この二人」
「あとは浜風の方だね、上手くいっているといいけど」
「きっと海人がなんとかしてくれるっぽい」
能天気に言う夕立とは違い、川内の表情は暗い。
それに気が付いた鈴谷が問いかける。
「どうしたし、なにか心配事?」
「……嫌な予感がするのよね。気のせいならいいんだけど」
川内の予感は気のせいではないことをこのあと知る事となる。
大井と北上の誘導に成功したあと、念のため加賀に合流しようとした山城が見たのは思いもよらぬ光景であった。
「なんなのこれ……」
意識を失った暁を抱え、お腹を押さえながら足を引きずる響に肩を貸す雷に。
意識を失った加賀を抱えながら、見知らぬ誰かに肩を貸す電の姿であった。
「あのぉ……、はじめまして、たった今さっき仲間になった瑞鳳です。よろしくお願いします」
「ど、どういうこと?」
困惑する山城に電が説明する。
横須賀鎮守府から人を探してこの島にやってきた艦娘が瑞鳳であること。
その人物がもしかしたら海人かもしれないこと。
詳しい事情を知らされぬまま、偶然出会った北上と大井に手を貸していたこと。
第六駆逐艦に一方的に打撃を与え、加賀と一騎打ちして相打ちする程の猛者であること。
山城は唖然とした。
とくに加賀と相打ちしたらへんで。
加賀は意識を失い、瑞鳳は意識があるところを見ても相打ちというよりも勝利に近いだろう。
「……この島の外ではもしかして加賀レベルの強さが基準なの?」
「いえいえいえ、自分で言うのもなんですけど、私は軍全体で見てもかなり上の方と言うか、どちらかと言うと加賀さんの強さにびっくりというか……」
謙遜する可愛らしい様子からは加賀と同レベルの実力者であるようには見えない。
この小柄な体でどれだけの訓練を積めば至れるのだろうか。
「仲間になったってことはもう敵意はないのでしょう?」
「なのです。瑞鳳さんとは利害が完全に一致しました。あと、電は瑞鳳さんのことが個人的に好きなのです」
「あ、私も、電とは仲良くなれそうだと思ったの!」
「姦しいのは別に構わないですけど、道中で海人見ませんでした?」
「え、山城さんと一緒じゃなかったの?」
雷の問いに山城は首を横に振って答える。
「時雨と夕立の話だと、浜風を連れてこちらの方向に走り抜けたって話なのよ……」
「……嫌な予感がするのです」
「奇遇ね、私もよ」
「と、とにかく川内さん達と合流するのです」
「……その話、本当なのか?」
海人の問いに彼女は沈黙で答えた。
彼女の話はこうだ。
この島に外からやってきた艦娘は、その艤装に発信機を埋め込まれていた。
それに気付かずにこの島に上陸してしまったらしい。
彼女はこの島の設備によって不審な電波を見つけて、それに気付いたようだ。
ことは一刻を争う。
発信機の主が不信感を覚える前に、その艤装をつけて島を出なければ間違いなくこの島は襲撃されるだろう。
発信機を破壊した場合も、この島に何かがあると教えるようなものだ。
全てを守る為には艤装をつけて島を立ち去ってもらう他はない。
「ちょっと待て、それがどうして俺を捕まえることになる?」
「一番始めに言ったでしょう? 私の目的は私の身を守ることだって、この島を知られたくはない。この島の艦娘を敵に回したくもない。つまりは貴方を敵に回すのも嫌。となると地下の提督を解放するのも難しい。しかし外からやってきた艦娘と貴方を出会わせるのも私にとっては都合が悪い。ほぼ詰みです。……でも僅かに可能性がある」
海人は少しだけ思考する。
そしてすぐに結論は出た。
「俺の協力で外からやってきた艦娘を俺と接触せずに追い出して、この島の秘密を守り、この島の艦娘の問題を解決して、地下の提督を現状維持し、自分は地下の設備に姿を隠して静かに生き延びるのが唯一の手段だと考える訳か」
「流石御察しが早いですね」
「……俺はこの島の全ての艦娘を笑顔にしたいと思っている」
「病的な程の使命感ですね。ずっと不思議に思っていたんですけど、どうしてそこまで?」
海人は目をつぶって素直に答える。
「全てを思い出した訳ではないが、俺は一度守れなかったからだ。俺は提督で、守るべき艦娘達がいて、必ず守ると、幸せにすると約束した相手がいた。しかし俺は守れなかった。今度こそ、もう二度と俺の目の届く範囲で艦娘は泣かせない。笑わせる。一度失敗したからこそ、俺は死に物狂いでそれを貫き通したいんだと思う」
「なるほど、信じましょう。その言葉が軽くないことは、今までの貴方の行動で証明済みですしね」
「とにかく、俺はお前も笑わせたいんだよ」
その言葉にはこのままではお前を幸せには出来ないという強い意思が込められていた。
「ですが、別に私は幸せなんて望んでないんですよね」
「……ならどうしてそこまで生に執着する?」
「贖罪の為です」
「贖罪?」
「それしか選択肢がなかったとはいえ、逆らえば解体されるだけの弱い立場とは言え、私は非人道的な実験に手を染め続けました。それが例え軍の作戦とはいえ、提督の命令とはいえ、私は加担したんです。あの悪魔の実験に」
その声は涙声であった。
「ですから、どんな手を使ってでもアレは最後まで諦められません」
海人は意を決して言う。
「あれって、赤城のことだろう?」
「っ!?」
彼女は息を呑んだ。
「ど、どうしてそれを?」
「状況から推察しただけだ。深海棲艦化末期症状の赤城を地下で保管しているんだろ? 彼女をもとに戻すことが加賀の望みで、それをほのめかしたのが地下に幽閉された提督で、その誘惑に勝てなかったのが加賀の言う罪なんだろう?」
「……驚き過ぎて言葉になりませんね。そこまで分かっていたのですか」
「当たって欲しくはなかったがな」
世のなか当たってほしくないことほど当たるものだ。
「あの男が死ぬ間際に加賀に自分を殺せば赤城は助からないとでも言ったんだろう? 赤城は加賀の唯一とも言えるウィークポイントだった。そこを突かれて殺せなかったことを悔やみ、同時に未だに赤城を諦められない事実にずっと加賀は胸を痛めている」
「ええ、ですから赤城さんさえ回復すれば、そうすればきっと……」
「全てが丸く納まるってか、それは違うだろ」
「いいえ、違いません。これだけは譲れません」
「深海棲艦化は不可逆だ。抑えることは出来ても、治ることはない」
「それは現在の技術では不可能なだけで!」
「だが、深海棲艦の力を飼いならすことは可能だ」
「……はえ?」
可愛らしい間抜けな声が地下牢に響く。
「これは多分だが、この世界で唯一俺は赤城を救うことが出来る」
「どういう意味ですか?」
彼女の声が震える。
「漆黒の指輪、あれの被験者の成功体。世界で唯一深海棲艦化を完全に制御した個体、それが俺だからだ」
海人が、考えうる限り最高の結末を提示する。
「漆黒の指輪、あれとここの地下の設備、そして実験の資料。さらに俺がいれば、赤城は救える」
やっと瑞鳳(リアル嫁艦)出せて作者満足。長かった……。
遂に直属の精鋭の登場か。
此は波乱ですよ。
2>ええ、一見可愛い玉子焼き機ですがその戦闘力は鬼ですよ。荒れますねこれは。
残り二人も楽しみ、急かしはしませんがほんと更新の度にワクワクしてます
モノローグにいて失踪に名前の無い子…
だが活動報告が本編(迫真
4>ここから少しずつ島と横須賀鎮守がリンクしていく予定なので続きもワクワクさせるよう頑張りまする。
瑞鳳の事を海人は思い出せるのか、瑞鳳と海人の再会楽しみです!
6>この二人の再会は重要な局面なので僕としても楽しみであり、同時に書くのが慎重になりますw
そして彼はこう言われるだろう。
やはり小さい方が好みだったと。
いや瑞鳳君も良いものですがやはりね。
合法ロリですな
おのれ水着鯖め!
…更新まだ遠いのかなぁ……
9>コミケ、LJL、fgoイベと色々重なって更新出来ませんでしたが、今夜は何もないので頑張ります!( ・ω・)
待ってた!更新お疲れ様です!!
出来る女、加賀岬の貫禄が光りますね
この戦闘マシーンさんの卵焼き食べたい
11>おつありです!
島最強の加賀さんvs瑞鳳は勝敗が読めないですね。
あと戦闘マシーンじゃないですよ、横須賀鎮守府所属は大体あんな感じですよ(笑)
じみーにマイペースに更新していきます。
海人がチートだけど
・親が艦娘
・親が武術を経験していた
・体にナノマシンを埋め込まれてる
・上記の複数である
とか考えると納得できる
ただ『体にナノマシン』はMGSを思い出す
14>おー、こういう考察っぽいのは嬉しいですね。流石に設定を明かすことは出来ませんが、ここまで化物にする予定は当初ありませんでしたが、海人が人間離れしている理由はちゃんとありますよー。
ここまで続きがきになるSSは初めてです!
応援してます!
16>応援ありがとうございます!
更新遅くてごめんなさーい!!
活動報告ワロタ
とーごさんファイト
響「ピンポンパンポーン」
海人「急にどうした?」
響「作者からの言い訳のお時間だよ?」
海人「メタいな。聞こう」
響「作者の筆が最近遅い理由は実はfgoだけじゃないんだよ」
海人「と言うと?」
響「実は重要な伏線を入れ忘れて整合性取れなくなって困ってるんだよ」
海人「整合性?」
響「大井と北上はどうやって地下の提督が生きていることを知ったんだい? どのタイミングで?」
海人「……」
作者「ごめんなさい突然過去回想入るか遡って書き直します」
18>活動報告見てくれてる人いるんですね……Twitterみたいな使い方してて申し訳ねぇっす。応援ありがとうございます。短編も評価されるように頑張ります!
この川内さんに「もちろん、夜だよ♪」っていいつつ奥義発動して貰いたいだけの人生だった
21>瑞鳳に玉子焼きもらいたい人生だった。
更新しました。
この物語の終着点に向けて重要な伏線を今回は出しました。
そこまではまだ長い道のりですが、お付き合いくだされば幸いです。
実はちょいちょい最初の方から徐々に出していた伏線と地続きではあります。
ここから先はホンマか工藤!?な展開の連続ですが引き続きお楽しみくだされ。
つづきは!
楽しみすぎる
あと、最後の業何て読むの?ですか?
すんけい?
24>寸勁【すんけい】ですね。
中国系の武術の技です。これは創作物なので、僕の設定では触れた表面ではなく内部に衝撃を与える技として登場しています。感嘆に言うと内臓を直接殴るので鍛えてない部分を叩かれてめちゃくちゃ痛い。って感じです。(ちなみに本当の寸勁は全然別物です)
大幅に更新しました。
今回登場の謎の人物Xですが突然出した訳ではなくて、実は書き始め当初から設定上は島にずっといました。証拠に外伝短編の方で既に出演済み……。これが僕の脳内の島には当然いるのですが、読んでいる人はここまで彼女が島にいることを知らない訳でして。それで短編で一回やらかしてます。(短編で先に出してしまうというミスです)
そして海から来た人Ⅱで彼女の伏線を入れ忘れるという重大なミスをやらかしています。
という言い訳でした。
ええ、僕個人がいわゆるご都合主義。超展開。という流れが好きではないので、全て伏線を置いてからなるべくしてなるようにしているのですが。この謎の人物Xに関しては突然何の脈絡もなく出てきたと言われても仕方のない登場の仕方でちょっと個人的にダメージ受けてます(涙)
いったいこの管理人はどこのももいろクレーンゼットなんだ……
化け物しかいないぞ…(ガクガク)
29>暁とか雷とかは戦力的には普通だから(震え声)
ここまで丁寧に描かれてる作品は艦これssではあまり見たことありません…ただただ更新を待つ、としか言えません。そして、瑞鳳かわええ。
更新を楽しみにしてます
0000
瑞鳳改二めでたい!
更新お待ちしてます。
とても面白いです!
更新待ってます!
え、失踪してないよね?
嘘だと言ってよバーニィィィィ!!!!