「提督と秋月」2
半年に一回の”グルメ試食会”に秋月が再び参加するが、
やはりおにぎりしか出さない(彼女のこだわり)。
そこで提督が一緒になって出店することに・・・
サブストーリーです。
今回は2人の海外艦の真ん中で出店することに・・・
ローマ:イタリア艦、出す食材はピザやパスタ。
秋月:出す食材は前回と同じおにぎり。
ビスマルク:ドイツ艦、出す食材はウインナーやポテト
強敵?揃いで 果たして売れるのか?
「出来たてのおにぎりですよ! いかがですかぁ~!」
今年も開催された”グルメ試食会”、各鎮守府で人気な食事を出し合い人気を競うイベント。
「炊き立てのごはんに具材が入って、お勧めです! いかがですかぁ~?」
元気な艦娘がいた・・・それは秋月。
「今握りました、梅干しと鮭のおにぎり。とてもおいしいですよ~。」
元気な響きとは裏腹におにぎりは全く売れない。
「こちら、ピザ焼き立て! パスタもすぐできますわ!」
隣でイタリア艦のローマが手際よく調理し、提督達の目の前に出す。
「こっちも、焼けたわ! ビッグフランクにフライドポテト! 外はあつあつ、中はジューシーよ!」
さらに隣のビスマルクがどんどん調理していく。
「・・・・・・」
当然提督達はこの2人の店に集中し、秋月の店には誰一人来なかった。
「・・・・・・」
ちなみに今回の店の並び順は
ローマ・秋月・ビスマルク と前回とは違いかなり目立つ位置に出店した。
提督曰く、「この場所なら売れやすいだろ」とのこと。
確かに売れるだろうが、逆に売れなければ目立つのもまた事実。
「・・・・・・」
秋月は落ち込む。
それを見たローマが、
「まぁ仕方ないわよ、今提督達は洋食が主流なんだから、今時おにぎりなんて売れないと思うわ。」
慰めているのか、貶しているのか・・・
さらにビスマルクが、
「あなたの鎮守府の主食が貧相なだけ。もっと豪華にすればいいじゃない。」
最早、周りからすれば秋月の店は惨めだと思っているのかもしれない・・そんな時、
「あ、司令。 お疲れ様です。」
目の前に提督が現れた。
「何だ・・・全く売れてないな。」
秋月はまた落ち込む。
「すいません・・・おいしさを精一杯アピールしているんですが・・・。」
「そうか・・・まぁ相手がピザとウインナーではな~」
提督は少し考える。
「よし、少し代わろうか。」
そう言って、提督は秋月の代わりに店に立った。
「あ、そんな! 申し訳ないです!」
「秋月は他の店でも見てこい、ここはオレがやっておくから。」
「・・・・・・」
あまり気が進まず、秋月はその場から去った。
「あら、今度は提督がやるの?」
ローマが睨む。
「まぁ、結果は同じでしょうけど。」
さらにビスマルクが挑発する。
「ああ、とりあえずよろしく。」
提督は2人に挨拶した。
「・・・・・・」
秋月は他の売店を見ていたが、
「・・・・・・」
どうにも落ち着かない・・・理由はもちろん提督・・・
「司令は大丈夫でしょうか?」
秋月が周りから恥と思われても全然構いませんが司令まで巻き込まれるなんて・・・耐えられません!
「あら、秋月さん」
霧島に会う。
「あ、霧島さん。」
「どうしたの、そんな暗い顔をして?」
「・・・・・・」
秋月は胸の内を語った。
「司令なら大丈夫よ、そんなことを気にする人間ではないので。」
「そうでしょうか?」
「秋月さんは司令を信用できませんか? 私は信じてますから大丈夫だと思います。」
「・・・・・・」
もちろん信じてます! でも、やっぱり不安です。
「・・・・・・」
「じゃあ後で様子でも見に行きましょう。」
「・・・・・・」
「せっかくイベントに来たんですから、そんな落ち込んでないで楽しみましょ? ね?」
「・・・・・・」
霧島さんに言われると、何だか安心になりました。
「はい、秋月! 楽しんでいきます!」
2人は各店のメニューを見て回った。
・・・・・・
「そろそろ見に行ってもいい頃かしらね。」
霧島が時間を見る。
2人は出店している店に向かう。
「・・・・・・」
司令、大丈夫かな・・・おにぎり売れなくて皆から笑われていませんかね・・・
「・・・・・・」
秋月はまだ不安のようだ。
しかし、その不安は杞憂であった。
「あ、おかえり。」
そこには、おにぎりを全て売り終えて休憩していた司令の姿が・・・
「・・・・・・」
秋月は当然ながら驚く。
「どうやって売ったんです!?」
秋月は驚きを隠せない。
「全く・・・たくさん売れ残ってしまったわ。」
ローマが不満そうに呟く。
「何でおにぎりごときに負けるのよ!」
ビスマルクも不満そうだ。
「・・・・・・」
秋月はその後、詳細を聞いた。
・・・・・・
(秋月が去った後)
「さぁさぁ、注目~」
提督が手をパンパンと叩く。
周りの提督達はなんだなんだと視線を向ける。
「今出来たてのおにぎりを売っている。そして味は折り紙付き! 値段も一律100円! お買い得!」
だから何? な態度で視線を逸らす。
「確かにおにぎりと比べてピザやウインナーは遥かに魅力的だ、しかし、一度考えてみてほしい。」
また提督達が視線を戻す。
「提督達がまだ新人提督だった時代、主食は何だった?」
一人が答える・・・麦飯や握ったおにぎり。
「そう、昔はそれが一般の食材! つまりおにぎりは昔から主流だったわけだ。」
そうだと一部は納得する。
「新人提督は様々な苦労があったはず・・・執務に追われ、任務もこなし、帰りはいつも深夜・・・大変だっただろう?」
うん、そうだと回答。
「その時、目の前にある食事は何より幸せなひと時だったに違いない!」
うん、うん。
「提督達の中には嫁さんがいるかもしれない、その時に弁当として入れてくれたおにぎりは
ほかのどんな食材よりもおいしいと感じたに違いない。」
確かに・・・
「そして頑張って昇進して今に至り、生活基準が上がって今では昔までなかった洋食が普及した。」
うん、うん。
「洋食が当たり前に食べられるこの時代、おにぎりなんて古臭いと思う人間は多いはず。しかし、
提督達はおにぎりがあったからこそ今まで頑張っていけたはず。」
あー確かに。
「そんな提督達の昔の恩人であるおにぎりを無視するのはいかがなものか。」
むむ・・・とためらう。
「試しに一つ食べてみてほしい! 金はいらん! 昔を思い出して味わってほしい。」
・・・・・・
その中に新人提督がいたようでおにぎりを手に取る。
食べて・・・おいしいと言う。
「おいしいだろ? これはさっきオレの所属する秋月が提督達のために握ったもの・・・そんな秋月に提督たちは
申し訳ないと感じないのか?」
さらに続けて、
「しかも、おにぎりはどんな環境下でも持つ。ピザやパスタはその場でできたものを食べるからおいしいんだ。
時間が経ったらパサパサしたりで不味くなるだろう?」
確かに、と納得。
「ポテトだって揚げたてだからおいしいもの、時間が経てば柔らくなって感触も悪くなる、そうだろ?」
むむむ・・・
「それに対しておにぎりはどうだ? 冷たくなっても、時間が経っても食べられるだろう?」
うん、確かに・・・
「だからおにぎりは今の時代でも愛される食材なんだ。さぁ、改めて炊き立てだ~。
今回はサービスで2個から半額にするぞ、さぁ買っていった~!」
その言葉と共に一部の提督が注文するようになった。
「お前ら、よく考えてみろ! 隣のピザとポテト! 一体どのくらいの量でいくらだ?」
提督は答える、1切れ300円、1包み350円。
「それだけで腹いっぱいになるか? このおにぎりは2個から半額だから、6個で350円! しかも
この大きさ! 昔の時代、腹いっぱいになればそれだけで幸せだっただろう!」
また客が増える。ローマとビスマルクが困惑する。
「何で少ない量で値段が張るかわかるか? 材料費と人件費がかかるからだ! でも、おにぎりは
ただ具材を入れて握るだけ! 誰でも作れる簡単料理だ!」
提督が言い終えるころにはたくさんの人だかりが・・・
「さぁ、持って行ってくれ! もし、お望みなら秋月が各鎮守府におにぎりを配る宅配サービスもするぞ。
さぁ、どんどん持って行った~~!!」
掛け声が終わるころにはおにぎりは完売した。
・・・・・・
(ここから秋月が戻ってきた後)
「・・・・・・」
「と、言うことで・・・」
提督は秋月に、
「今日の売り上げね。」
「・・・・・・」
秋月は売り上げ袋を受け取る。
「後、これ・・・」
提督は何かのメモを渡す。
「・・・・・・」
「秋月のおにぎりをぜひ食べたいと言った各鎮守府の提督達の住所録、注文があったら宅配してくれ。」
「・・・・・・」
「さぁ、帰るか。 霧島。」
そう言って提督は霧島と早々に切り上げた。
「・・・・・・」
「あのさ。」
秋月が振り向くと、
「お金はいらないからさ、少し持って行ってくれない?」
ビスマルクが冷めたポテトを差し出す。
「あ・・・私のもできれば・・・」
ローマが冷えたピザを出す。
「・・・・・・」
「後、もしよければ・・・」
「?」
「私にもおにぎり宅配してくれないかしら?」
「さっきはバカにして悪かったわ・・・だから私にも・・・お願い!」
2人は申し訳なさそうに言う。
「・・・・・・」
秋月は笑って、
「はい! お任せください! 秋月、頼みとあればいつでも、おにぎりを握らせていただきます!」
秋月に笑顔が戻った。
「提督と秋月」2 終
秋月のために提督が少し、暴走したお話です(笑)
心がぁ、浄化されていくぅ。。。
(´д`)つおにぎり