2020-01-02 13:20:35 更新

概要

再び提督に逆らう艦娘が蔓延し、過ちを正すために鎮守府に向かう提督だが、
彼に付き添う艦娘たちの方がよっぽど危険のようで・・・


前書き

キャラ紹介、

提督:以前は店の大将であったが、再び提督として就任する。
   艦娘がまた反乱?を起こした事で、過ちを正すために鎮守府に向かう。

海風:提督に仕える駆逐艦の女の子且つ彼の奥さん。
   提督の事を慕っていて、彼の悪口を言われると優しい性格が反転する。

夕立(白露):夕立の体に白露の人格が入っている艦娘。体は夕立だが中身は白露のため、
       夕立と同じ扱いをされると、すぐに怒り出す。

サラトガ:海外空母の艦娘、普段は女神のように優しい艦娘であるが、酒が入ると性格が
     180度ターンして、別人格へと変わる。


再び別鎮守府の提督からSOS要請が発信される、


鎮守府内で騒ぎがあり、一部の艦娘たちが反抗して士気にまで影響して手に負えないと言う。


この事態を受け、鬼提督経由でまたも(元)提督に依頼を要請、「面倒くさい」と思いつつ、結局受ける事にした提督。


もしもの事態を考え、付き添いとして3人の艦娘(海風・白露・サラトガ)を連れて行く事にした提督。


どう言う基準でこの3人を選んだのか定かではないが、今は目的の鎮守府に4人が向かっている最中である。




「また要請を受けたのですか? 提督の本当に人がいいです。」


海外空母のサラトガがぼそっと不満を呟く。


「いいじゃないですかサラトガさん、そこが提督のいい所なのですから♪」


サラトガをなだめる海風。


「・・・」


3人の後ろに無言でついて行く夕立・・・ではなく、白露。


「そろそろ目的地に着くはず・・・おっ、あそこだ。」


提督が指を差すと、目的の鎮守府が見えた。


・・・


「長旅お疲れ様です、部屋は用意してありますが・・・本当に1部屋でよろしいのですか?」


鎮守府の秘書艦であろう艦娘が4人を迎える。


「うん、長居をする気は無いので取り敢えず1部屋あれば構わないよ。」


そう言って、提督は鎮守府事情を詳しく聞く。


「一部の艦娘たちが騒動を起こしてしまって・・・”先輩後輩の考え違いから喧嘩に発展し今も不仲が続いてしまっている事”


 この鎮守府の責任者である提督がとても気弱で、”口の悪い艦娘たちにへっぴり腰になっている問題”に後は、


 鎮守府内で”決められたルールを全然守らなくて、好き勝手にやっている艦娘たち”がいます。」


「ふむ、それは秘書艦や皆の指示でもどうにもならないの?」


「はい、私を含めた提督側の艦娘と一緒に議論はしていますが、一時的な物でして・・・治まったかと思えば、


 しばらくするとまた騒ぎを起こして振り出しに戻るといった具合です。」


「そうなんだ、それは大変だね~。」


秘書艦からの現状報告を聞いた後、


「分かった、ここに来たからには最善を尽くしてみるよ。」


「あ、ありがとうございます。」


秘書艦は礼をする。


「それで? 提督は今どこに?」


秘書艦が出て来て説明してくれたのはいい、肝心の提督の姿が無く尋ねてみるも、


「・・・大変申し上げにくい事なのですが。艦娘たちからの嫌がらせに体調を崩してしまって今は部屋で療養中です。」


「そうか、では提督殿と会うのは回復してからにしよう。」


そう言って、秘書艦と別れる提督たち。



用意された部屋に向かう途中の事、


「またですか加賀さぁ~ん?」


1航戦の加賀に罵声を発する1人の空母艦娘。


「駆逐艦相手に小破って、マジでダッサいんですけど~(笑)」


罵声を言っている相手は、5航戦の瑞鶴。


「うるさいわね! 貴方も調子に乗っていると私と同じ目に遭うわよ!」


加賀の反論に、


「私は大丈夫ですよ~、私には幸運の女神が付いているんですから~♪ 


 加賀さんのように貧乏神が憑いているわけでは無いので~(笑)」


瑞鶴の度重なる罵声に加賀は呆れて物が言えずその場から去る。


「うわぁ~、瑞鶴って加賀の後輩だろ? あんな態度なんて凄いなぁ~。」



提督は驚いたと言うか、呆れたと言うか・・・



廊下で天龍と木曾に会う。


「何だお前らは?」


初対面であるはずなのに、口が悪い・・・提督は少しムッとしつつも、


「今日から短期間だけこの鎮守府に出張に来た、よろしく。」


提督は無難に挨拶をし、


「そして彼女たちがオレの補佐を行う・・・」


そこまで言いかけた所で、


「紹介なんていらねぇよ! どうせすぐに尻尾を巻いて消えるんだろうからな!」


天龍たちは挨拶すらせずにその場から去る。



部屋の前に着いた、提督が扉を開けて1人ずつ入室していくが、


「そこの人危ない! どいてどいて!」


廊下の奥から猛スピードで走ってくる数人の駆逐艦娘。


白露は回避するも、1人がサラトガに衝突してしまう。


「いたたた・・・こら、行けませんよ! 壁にも張ってあります、”廊下を走るのは禁止”と。」


サラトガは壁に貼ってある張り紙を指して、駆逐艦娘に注意をするも、


「やーだねっ! あたしは自分の好きな様にして好きな風に生活して行きたいんだもん!!」


サラトガの忠告を無視して駆逐艦娘たちは廊下を走り去っていく。


「全く! 何てお行儀の悪い子たちでしょう!」


普段怒らないサラトガも若干苛立つ始末。


・・・


部屋に入ってしばしの休息をとる4人。


「あの、提督。 汗を流したいので、入浴して来てもよろしいでしょうか?」


「うん、行っておいで。」


「ありがとうございます、それでは私の着替えとタオルを持ってと・・・」


海風は荷物から着替えとタオルを出して行く。


「あたしも入ろう・・・海風、白露のも出してくれない?」


「はい、どうぞ。」


準備が整うと、2人で入浴場に向かう。



海風と白露が入浴場に向かう時である、途中食堂を通り過ぎるのだが、


「赤城さん、少しは食事の量を減らした方がいいのではないですか?」



食堂で山盛りのご飯を頬張る赤城に意見しているのは・・・瑞鶴の姉である翔鶴。


「そんなにいっぱい食べても装甲空母姫すら撃沈させられないなんて・・・無駄飯もいい所ではないですか?」


翔鶴の毒舌に赤城は顔を下に向き、持つ手はぶるぶると震わせている。


「あっ、安心してください。 私が変わりに撃沈させておきましたから♪ 結構容易く倒せましたよ~(笑)」


耳元で静かに囁くと、何食わぬ顔で食堂から去る翔鶴。



「どけどけ~! 対空番長の摩耶様がお通りだぁ~!!」


重巡の摩耶と後ろについて行く天龍と木曾、人間世界で言うなら族の部類であろう。


先程まで、廊下を走っていた駆逐艦娘たちも走るのを止め、全員が廊下の隅で跪く。


「駆逐艦のお前らぁ! この鎮守府で最強の対空性能を持つ艦娘の名を言って見ろぉ!」


摩耶が叫ぶと、


「ま、摩耶さんです・・・」


駆逐艦娘たちは体を震わせながら、「摩耶」の名前を言う。


「そうだろ、そうだとも! 摩耶様は偉いんだぞ! もっとこの摩耶様を讃えろー!!」


我が物顔で廊下を歩いて行く摩耶と摩耶の後ろにパシリみたくついて行く天龍と木曾。


「んっ? 何だお前らは?」


入浴場に向かう海風と白露を見て立ち止まる摩耶。


「きょ、今日から短期間だけこの鎮守府に来ました、海風と・・・」


そこまで言い掛けて、


「知ってる、海風と夕立だろ? そっか・・・今日来たばかりじゃ知らないだろうから無理ねぇな!」


摩耶は2人に言い寄り、


「今度からあたしが廊下を歩いたら、てめぇらみたいな駆逐艦娘共は廊下の隅で跪け、分かったな?」


やたら脅し文句を言って、摩耶は去って行く。


「摩耶さんに目を付けられたらお前らなんて終わりだぜぇ!」


後ろの天龍・木曾が2人に眼を飛ばして摩耶の後ろについて行く。


・・・


「海風と白露、入浴場から戻って来ました。」


海風が元気よく部屋に戻って来る。


「ああ、取り敢えず2人とも無事でよかった。」


何事も無くて安心する提督。


「す~・・・ぐおぉ~・・・」


サラトガは既に眠っている・・・側には数缶のビールが空になっていた。


全員が部屋に戻り、会議をしようと思うもサラトガは既に爆睡しており、夜も遅かったため、


「そうだな、もう寝る時間だね・・・今日は寝よう。 朝起きて会議をして、それからこの鎮守府の問題を解決して・・・」


言い終える前に白露は既に床に着いていた。


「分かりました提督、それでは明かりを消しますね・・・おやすみなさい♪」


海風の消灯と共に今日1日が終わる。


・・・


翌朝、


「それではこの鎮守府の問題をどう改善していくか・・・何か意見は無いか?」


提督が3人に問うと、


「そうですね~、やはり艦娘たちの態度がとても悪いです。 態度を改めることが出来れば一番の解決の糸口になると思います!」


海風らしく、的確に意見を言う。


「成程・・・サラトガはどう思う?」


「そうですね~・・・う~ん、いたたた。 すいません、昨日の事をよく覚えていなくて・・・」



就寝時間までビールを飲み、勝手に爆睡した上に朝は2日酔い・・・当然改善案が浮かぶわけがない。


「サラトガは置いておいて・・・白露は、何か案はある?」


白露に聞くと、


「・・・別に。 適当に立ち回って少しずつ解決すればいいんじゃない?」


鏡を見ながら髪を整える白露、皆に顔を合わせる事もなく意見を言っている。


「・・・お腹が空いた。 ちょっと酒保に行ってくるね。」


会議が終わっていないのに、勝手に部屋から出る白露。


「ちょっと白露さん!」


海風が呼び止めようとするが、


「いいよ、あの子なりに動いてくれるから大丈夫。」


提督は白露を信用している様子だ。


「はぁ、それならいいのですが。」


若干の不満を持つ海風。


「サラは・・・いたたた。 まだ頭が痛いです・・・ちょっと食堂へ行ってお水を頂いて来ます。」


今度はサラトガまで勝手に部屋から出て行く始末。


「サラトガさん! ああ、もうっ!」


海風の不満は募るばかりだ。



・・・と言うか、どうして提督はこんな意思疎通の無い3人を連れて来たのだろうか?


「まぁまぁ、2人にも自分なりのペースってものがある。 まずは任せて見てそれから、問題があれば補足するからさ。」


提督は焦る様子も怒る気も無い、のんびりで温厚だ。


「・・・分かりました。 作戦会議は終わりにしましょう、それでは海風も問題解決に力を入れて行きます!」


一番のしっかり者の海風が意気込んで、最後に部屋から出て行く。




「すいません、このおにぎり2つとこのおかずを下さい。」


酒保で朝食を買っている白露、そこへ、


「おい木曾、見ろよ・・・あそこにいるのは、夕立じゃねぇか?」


「本当だ・・・おにぎりとおかずを買って、1人で朝食を買っているのか?」


現れたのは、天龍と木曾の2人。


「ほぉ~、1人で買うなんて・・・「ぽいぽい」と言って、誰かから恵んでもらうあの夕立がねぇ~(笑)」


「ほんとほんと(笑)、何か渡せば「嬉しいっぽい~♪」って犬みたくはしゃぐあの夕立がだよ!」


2人は白露が買い物をしている姿を影でにやにやしながら眺めている。


「見ろよ、夕立がプリンを4個購入してるぞ。」


「4個・・・昨日来た提督と他2人の計4人分か・・・結構仲間想いの子犬さんだ事~(笑)」


陰でゲラゲラ笑っていると白露が去ろうとする・・・それを見た2人は調子に乗って、


「ちょっとカマ掛けてやろうぜぇ! そしたら「プリン上げるっぽい~♪」って大人しく差し出すかもしれねぇぜ!」


「ふん、あまり駆逐艦娘を虐めるのは好きじゃないが・・・プリンが貰えるならやって見る価値はあるな。」


事もあろうにこの2人、白露のプリンを奪おうとしている模様。



・・・それがそもそもの間違いだと言うのに。


「よぉ、夕立! こんな朝から朝食とデザートのプリンをお買い物かぁ?」


天龍が昨日と同じ様に白露に詰め寄る。


「・・・」


白露は無言のままだ。


「プリン4個、それは皆の分? それとも1人で食べるつもり~? ぽいぽい(笑)」


「・・・」


夕立は無言のままだ。


「1人で4つ食べるなら腹壊すぞ? お姉ちゃんが1個ずつ食べてあげるからほら、オレと木曾に1つずつ融通してくれねぇか?」


天龍の要求に、


「・・・」


やはり夕立は無言を貫いている。



「ほら見ろよ天龍、夕立が何も言わない・・・お前の脅しにぶるぶる震えてるんだよ。」


「へっ、ちょろいもんだぜ、駆逐艦娘を脅すなんて! それで戦利品が貰えるんだから、こんないい事は無いだろ!」


お互いが耳元で囁き、夕立は怯えてると勘違いしたのか更に言い寄る。


「だ~か~ら! ぽいぽいちゃん♪ プリンをお姉ちゃんたちに分・け・て♪」


「ほら、いつものように言って見てよ、「上げるっぽい~♪」てさ、はははは。」


2人は白露の前で笑いこける・・・しかし、白露の口から出た言葉は、


「何? あんたたち、あたしを馬鹿にしてる?」


「? ほぇっ?」


思いもよらぬ言葉が帰って来て天龍が一瞬耳を疑う、


「だから、あたしを馬鹿にしてんの? それとも何? あたしにぶちのめされたい?」


白露の口から喧嘩を売るような言動が出て、 


「な、何をこの! 駆逐艦の分際でオレたちに何て言い方・・・!?」


言い終える前に白露に片手で顔を掴まれる。


「ねぇ、あたしを馬鹿にしてんの? ねぇ、どうなの?」


駆逐艦とは思えない程強力な腕力。 掴まれた天龍の頬骨がボキボキと鳴り始める。


「そんなに弱い人間を馬鹿にして何が楽しいの? ねぇ、何が楽しいわけ?」


白露は容赦なく天龍の顔を握り潰そうとする。


「あが、あがががが!!」


「おい、止めろ! 止めろって言ってるだろ!」


木曾が止めに入るも、


「!? はぐぉ!?」


一瞬の出来事・・・木曾の口内に魚雷をぶち込む。


「死にたいの? ねぇどうなの? このあたしに喧嘩を吹っといて無事で済むと思ってるわけ?」


白露は物の見事に2人の軽巡を片手で制圧してしまう。


・・・


「ちょっと! 廊下で走っては駄目ですよ!」


海風が廊下を疾走する艦娘を引き留める。


「うるさぁーい! あたしが走りたいと言ってるんだから走ってもいいじゃん!!」


相変わらず駆逐艦娘の意見は変わらない。


「ですから、あの張り紙を見てください・・・”廊下を走るのは禁止”と。読めますよね?」


「読めるー! でも、あたしは走りたいから嫌だー!」


また走り出す駆逐艦娘。


「はぁ~。」


海風も彼女の行動に、半ば諦めかけている状態だったが、


「お姉ちゃんは堅いねぇ~、もしかして提督に走っちゃ駄目って言われてるの?」


走るのを止めた艦娘が海風に言い寄る。


「提督の言う事なんて聞かなくてもいいじゃん! どうせ提督なんて椅子に座って皆に指示をして”ぽけ~”ってしてるだけでしょ?」


「・・・」


その一言に海風は少し苛立つ。


「ここの提督はすっごい小心者でさぁ、摩耶さんが脅しただけでへっぴり腰になっちゃって、根性無いんだよぉ!」


駆逐艦娘は話を続ける。


「お姉ちゃんの提督はどうなの? どうせ、同じ様に命令だけ言って椅子に座って、鼻ほじくって皆の帰りを待つだけの


 能無し提督なんでしょ? ねぇそうでしょ?」


駆逐艦娘が笑いながら、海風の提督を馬鹿にする・・・その瞬間、



ばっちーーーーん!!



海風の平手打ちが飛んだ。


「!? えっ、い、痛いっ?」


平手打ちをされた艦娘が目を見開く。


「今、私の提督を馬鹿にしましたよね?」


海風は笑い顔で詰め寄る。


「えっ? う、うん?」


「馬鹿にしましたよね? 今、間違いなく私の提督を馬鹿にしましたね?」


表情は笑顔だが、体から殺気立つオーラが湧き立つ様にも見え、


「ひっ! え、え~っと・・・」


言葉を返す間もなく、



ばっちーーーーん!!



2発目の平手打ちが飛ぶ。


「・・・ぐすっ、うぇぇぇぇぇん!!!!」


平手打ちを受けた艦娘はその場で号泣する。


「泣くのをやめて下さい、それとも・・・もう1発殴られたいですか?」


既に殴る準備が出来ている海風、それを見た艦娘は、


「ひっ! うううう・・・」


泣き止むと同時に急に体を震わす。


「もう一度聞きますよ? 今、私の提督を馬鹿にしましたよね? どうなのですか?


 ・・・殴られたくなかったら正直に言いましょうね? 今、私の提督を・・・」


海風の天使のような表情が冷酷な悪魔のような表情になり、怯える艦娘に容赦なく突き立てる。


・・・


「あー、いたたた・・・」


食堂に入り、グラスに勢いよく水を注ぐと一気に飲み干すサラトガ。


「ごくごくごく! ふぅ~・・・大分頭痛が治まりましたぁ。」


飲み終え、部屋に戻ろうとすると、


「それでさぁ~、加賀さんがまたドジ踏んだんだよ! もう、本当にダサくて~(笑)」


5航戦の翔鶴と瑞鶴が食堂に入ってくる。


「・・・ちょっとそこの貴方! 勝手に食器とか使わないでよ!」


水を飲むために使用したグラスを使われただけで、怒り出す瑞鶴。


「あっ! も、申し訳ありません!」


サラトガはすぐに謝罪するも、


「全く、どこの海外空母だか知らないけど、許可なしに食堂に入って来るなっての!」


「・・・」


一瞬、その言葉に苛立つサラトガ。


「瑞鶴、あまり人を馬鹿にしては行けませんよ。」


翔鶴が注意しているように見えるが、何故かにやにやしている。


「翔鶴姉・・・まっ、翔鶴姉が言うなら仕方がないか。」


瑞鶴が素直に引き下がる、これで終わったかに見えたが、


「すいませんね、妹の瑞鶴が出過ぎた事を。」


「いいえ、こちらこそ・・・勝手に使用してしまい申し訳ありませんでした。」


妹の瑞鶴と違い、姉の翔鶴は話が分かる・・・と安心したサラトガだったが、


「ですが、瑞鶴の言う通り貴方はこの場にいるのにふさわしくありませんよ。」


「? どう言う意味ですか?」


サラトガは首を傾げる。


「赤城さんと言い加賀さんも含めて、散々私たちの先輩気取りしている方々は私たちより遥かに戦果が取れていません。」


「・・・」


「私たちよりたくさん食事を摂っているのに、あのザマ・・・無駄飯食いにも程がありますよね?」


「・・・」


「貴方もそれなりに歴戦の空母とお見受けします・・・ですが、あまり調子に乗らない方が身のためですよ?」


翔鶴は薄ら笑いを浮かべ、


「胸部装甲が大層大きめで・・・栄養が胸部に行き過ぎて肝心のおつむは栄養が足りていないんじゃないですか? うふふ・・・」


明らかに馬鹿にした発言と言える言動に、



バキィィィィィッ!!!!



サラトガの飛行甲板が翔鶴に激突する。


「!? 翔鶴姉!!?」


喰らった翔鶴は数メートルまで吹っ飛ばされ、壁にぶつかった後意識を失う。


「ふぅ、久しぶりに切れましたね(怒)」


それでもまだ怒りが治まらないのか、サラトガは瑞鶴に詰め寄る。


「なっ、何? 何をするつもり!?」


瑞鶴は一瞬身の危険を感じるも、


「・・・」


サラトガは何を思ったか、食堂からグラスを2つ取り出し、瑞鶴の前に出す。


「今から2人で飲みましょう。サラに付き合って下さい!」


昨日あれだけ飲んで、朝2日酔いになったと言うのに、また飲もうとするサラトガ。


「ちょっ・・・翔鶴姉を殴り倒した上に呑もうって・・・どんだけ、頭がおかしい・・・」


言い終える前にサラトガの片手には飛行甲板が構えてあり、


「お酒に付き合って貰えませんか? 嫌とは言わせませんよ・・・どうしますか? 殴られたいですか?」


「・・・」



あんなもので殴られたらひとたまりもない・・・そう思った瑞鶴は、


「わ、分かったわ・・・飲む、飲むから!!」


そう言って、グラスを取って待つ瑞鶴。


「言い心がけですわ♪ それでは、今日の出会いに乾ぱ~い♪」


サラトガは上機嫌になって酒を注ぎ、飲み干して行く。




「うぷっ・・・も、もう駄目。」


何時間飲まされただろうか、瑞鶴にも限界が近づいている。


「駄目ですよ・・・私はまだぜ~んぜん飲み足りないです!」


サラトガは飲み干すと、何瓶目かの栓を開ける。


「もうっ! もう無理! 降参! 降参します!! だからもう注がないで!!」


瑞鶴は白旗を上げるも、


「何ですか? サラのお酌を断ると言うのですか(睨)」


サラトガの、何かと恐ろしい形相が瑞鶴に向けられる。


「ひっ! そ、注いでください・・・お、お願いします!! おええ・・・!」


瑞鶴は吐き気を押さえて注がれた酒を苦しみながら飲んでいく。



・・・結局瑞鶴が解放されたのは夕方であった。




「え~っと、今日の報告をするね。」


提督が今日起きた出来事を3人に話して行く。


「まず翔鶴と瑞鶴・・・翔鶴は頭蓋骨陥没で入渠中、瑞鶴は急性アルコール中毒になり、姉と同じ入渠中だそうだ。」


サラトガを見るが、彼女は既にベッドで爆睡している。


「次に天龍と木曾の2人・・・天龍は顎が外れ、木曾は複数の歯が折れてさっきオレに苦情が来た所だ。」


今度は白露を見る、


「知らない・・・あたしは酒保でごはんとプリンを買っていただけだよ。」


白露は知らない顔をする。


「そして、昨日廊下を疾走していた駆逐艦から・・・「青い髪のお姉ちゃんにめちゃくちゃ叱られて怖かった」と


 泣きながら部屋にやって来たけど・・・」


最後に海風を見る提督。


「分かりません、私は丁寧且つ穏便に解決したまでですよ!」


海風は満面の笑顔で振る舞う。


「ふむ・・・今日の報告は以上だ。サラは既に寝てる事だし、用が無ければオレたちも寝よう。」


提督の案に海風と白露は素直に従う。


・・・


翌日、


皆の朝食の調達のため、酒保に向かう白露と海風。


「ちょっと待て、おまえらぁ!!!!」


後ろから怒号が飛び交う、重巡の摩耶である。


「あたしの子分を大層可愛がってくれたんだってな~?」


摩耶は笑っているが、実際はかなり苛立っている様子だ。


「・・・覚えが無いです、私は別の場所で作業していましたので(海風)」


「あたしも昨日は酒保で朝食買っていただけだし・・・と言うか、子分って誰?(白露)」


白露の問いに、


「オレたちだよ、夕立!!」


摩耶の後ろから天龍と木曾がひょこっと出てくる。


「・・・な~んだ、あんたたち・・・この人の子分だったんだ。」


白露はただ「ふ~ん」と思うだけだ。



摩耶が2人の前に立ちはだかり、周囲は何事かと、駆逐艦娘たちが集まって来る。


同時に、側で天龍と木曾が、「あの2人は終わったなぁ」と鼻を高くしている。


「前にも言ったけどなぁ、あたしが廊下を歩いたらお前ら駆逐艦共は隅っこで跪けって言っただろうが!!」


やたら脅し文句で言う摩耶、更に言葉を続けて、


「あたしが誰か知ってるのか? この鎮守府で一番対空性能が高い、高雄型重巡の摩耶様だぁ!!


 あたしの子分を虐めた罪は重い! 今すぐこの場で土下座しろ! 今回はそれで見逃してやる!!」


摩耶の怒声に、


「行きましょう、提督とサラトガさんが待っておられます。」


何と海風と白露は摩耶をスルーする。


「なっ、ちょっと待ててめぇらっ! あたしの話聞いてんのか!!」


懲りない摩耶の怒声に、


「すいません、馬鹿の相手をする程、私たちは暇ではありませんので。」


海風の言葉に摩耶がブチ切れ、


「馬鹿? あたしが馬鹿って? ふざけんなぁ!!」


摩耶が2人に殴りかかる、


「ふん、これだから自惚れは嫌いなんだよ。」


摩耶のパンチを簡単に躱し、背後に回ると白露は蹴りを入れる。


「おぶっ!? ゆ、夕立! やりやがったなぁ!!」


背中を蹴られて怒り心頭の摩耶だったが、


「隙だらけですよ摩耶さん。」


海風の声がして振り向くも、既に遅く海風は摩耶の胸蔵を掴んでいて、


「せ~の! 背・負・い・投げぇ!!」


白露の蹴りからの派生で、海風の背負い投げが豪快に決まる。



バターーン!!



「いってぇ!! こ、このやろう!」


地面に倒される摩耶、更に白露は間もおかずに、


「ちょっ!? や、止め!!?」


関節技を掛ける白露・・・摩耶の腕があらぬ方向に曲がって行く。


「いてぇ! いてぇって!! おい、止めろ! 止めろってんだろぉ!!」


「・・・」


白露はお構いなしに腕を捻る。


「ちょっ! マジでいてぇんだよ!! お前、こんな事してただで済むと思ってるのか!!」


「・・・」


白露はお構いなしに腕を捻る。


「痛い! 痛いって!! ほんとに痛いんだって!! 止めろよ!! マジで腕が折れる、折れるから!!」


「・・・」


お構いなしに腕を捻る。


「ほんとに止めて! 折れるから!! ご、ごめんて! ほんとにごめん!! なぁ勘弁してくれって!!」


「・・・」


恒例のお構いなし。


「痛いぃぃぃぃ!! ご、ごめんなさい!! もう、悪口とか横暴な態度とか取らない・・・取りませんから、


 ねっ? お願い許して・・・本当に許して下さい、お願いします!!」


「・・・」


恒例の・・・と思ったが、白露は腕を離す。


「あああっ・・・くぅぅぅ~。」



捻られた腕を苦しそうに押さえる摩耶をよそに、2人は何食わぬ顔で酒保に向かって行く。


この光景に駆逐艦娘たちはただ呆然、側に居た天龍と木曾は、


「摩耶さんでも歯が立たないなんて・・・」


と、2人に恐怖を覚える天龍たち。


・・・


当然ながら、提督の元に海風たちの件で苦情が来るのだが、


「お前の艦娘たちは何なんだ!? 特にあの夕立! あたしはもう少しで腕を折られる所だったんだぞ!!」


先程まで白露に命乞いをしていた態度は一変し、再び怒声で提督に詰め寄るが、


「そうかそうか、白露の話し相手になってくれたのか? とても嬉しいよ!」


摩耶の意見など全く聞かず、提督は「良かった良かった」と言う。


「あれでも白露はとても寂しがり屋だからな、君たちが話し相手になってくれてあの子もさぞかし嬉しいと


 思っているだろう、うん。 あの子をここに連れて来て良かったよ。」


と、勝手に自画自賛する提督。


「こ、このやろう! あたしの話をちゃんと聞けよ!!」


摩耶が怒っていると、今度は瑞鶴が部屋に入ってくる。


「提督さん! あの海外空母は一体何なの!? 翔鶴姉は殴られるし、私は飲みに付き合わされるし散々なんだけど!!」


どうやら瑞鶴は入渠を終え、体調は良くなったらしい・・・だが、姉の翔鶴はまだ入渠中なのだろうか。


「そうかそうか、君はサラトガの飲み相手になってくれたのか? とても嬉しいよ!」


摩耶同様、瑞鶴の意見などお構いなしに自画自賛する提督。


「サラはいつも1人で飲んでいるからね、彼女以上の酒豪はオレの鎮守府にも数える程しかいなくてね、


 そうか、君があの子の飲み仲間になってくれたなんて、本当にありがたいよ。」


「なっ、私はそんな事したいと言った覚えはないし! あっちが勝手にお酌して来ただけよ!!」


瑞鶴は反論するも、摩耶と同じ完全に他人事のように振る舞う提督だった。


・・・


「あ~もうっ! 何よ、あの提督さん!!」


瑞鶴は怒り心頭である。


「全く・・・子分は痛めつけられるし、あたしも腕を折られ掛かるしほんと最悪だよ!!」


摩耶も改心するどころか、全く反省すらしていない模様。


「このままじゃ、私の気が治まらない・・・翔鶴姉もまだ入渠中だってのに!」


「あたしも・・・天龍と木曾とそしてあたしの分の仕返しをしてやりてぇよ!」


2人が廊下で言い合っていると、


「・・・あっ、閃いた!」


「瑞鶴さんもか? あいつらを跪けさせるにはこの方法がいいよなぁ!!」


2人は何かを閃いたらしく、すぐ準備に取り掛かる。


・・・


しばらくして・・・また提督がいる部屋にやって来る摩耶たち。


しかし、何故か6人でやって来る・・・そして、最初に出た言葉が、



「あたしたちと演習で勝負しろ!!」


摩耶と瑞鶴以外に、他の戦艦や空母1人ずつに、軽巡1・駆逐1の計6人いる。


「この編成がこの鎮守府で一番の主力部隊だ! さぁ、あたしたちと演習で勝負しな!!」


摩耶たちの最後の手段として、主力部隊で海風たちと演習、仕返しに懲らしめようとしている様子。



しかし、相手は6人だが、提督が連れて来た艦娘は海風・白露・サラトガの計3人、


明らかに倍の人数が違う状況で、演習をしろと言っているのか?


「要は勝てばいいんだよ! 人数なんて関係あるか!! 海へ出てあたしたちと闘いな!!」


摩耶に言い分には説得力はない、ただの弱い者いじめにしか見えないが、


「いいですよ、ねぇ白露さん?」


部屋で休んでいた海風が白露の方を見る。


「・・・うん、て言うか6人であたしたちに勝てるの?」


白露が摩耶たちに挑発をする。


「はぁっ? 勝てるのかって? 6対3だぜ? 勝てるに決まっているだろうが!!」


先程まで、「数は関係ない!」と言っていた摩耶だが、やはり数で押し切ろうと考えていた様子。


「えっ? サラも含まれているのですか?」


「テレビを見たいのですが・・・」と訴えるサラトガに、


「テレビを見ている場合!? 私は今すぐにでも翔鶴姉の仇を取ってやりたいのよ!!」


瑞鶴の言い分に、


「はぁ~、分かりました。 そこまで言うのでしたら・・・サラもお相手しましょう。」


そう言って、ベッドから降りると軽いストレッチをした後、海風たちと一緒に工廠場へと向かう。


・・・


10分後、


摩耶たちは所定位置に着き、合図を待つ。


「喧嘩では負けたけど、この借りは演習で晴らしてやらぁ!!」


摩耶が主砲に弾を装填する。


「「ごめんなさい。許してっぽい~」と言って土下座しても、絶対に許さねぇから・・・あたしの気の済むまで、


 体に無数の弾をぶち込んでやるよ!!」


側に居た瑞鶴も、


「翔鶴姉の仇は絶対に取る! 負けて、「お許しください!」と言っても絶対許すか! その時は、跪かせて足で


 あいつの頭の上から踏んでやる! 今に見てなさいよ!!」


摩耶たちは海風たちに仕返しをする事しか考えていない。



海風たちも所定位置に着き、合図を待つ。


「提督、何か作戦とかはありますか?」


海風が無線で提督と連絡を取る。


「そうだね、白露はいつものAプランで、海風とサラトガは共同のプランBで大丈夫だろう。」


提督の指示に、


「そうですね、それではその作戦で参ります! 白露さん、サラトガさん、よろしいでしょうか?」


海風の言葉に、


「うん、問題なし。」


「サラはオッケーです♪ では、タイミングの方は海風さんにお任せしますね♪」


3人はいつでも戦う準備が出来ている・・・そして、



「では始めます・・・演習開始!!」


秘書艦からの合図で両者の演習が始まった。



旗艦摩耶を率いる6人は単縦陣で進軍して来る。


対する旗艦海風含む3人はフリー、最も3人しかいないのだから陣形は関係ないはずであるが。


「摩耶さんたちが見えてきました! 白露さん、お願いします!!」


海風の指示に、


「うん、分かってる。」


そう言って、白露は2人から徐々に離れて行く。


「サラトガさん、私が面舵いっぱいにしたらお願いします!」


「はいっ、分かりました♪」


そう言うと、海風は摩耶たちに向かって1人単身でスピードを上げていく。



「何だあいつら? 1人1人が別行動を取ってるぞ?」


摩耶側から見れば海風は単身突撃でサラトガはその場で待機、そして白露は徐々に2人から距離を置いている様に見えていて、


「海風は玉砕覚悟か・・・そして夕立は、囮って事だな? そんなしょぼい作戦があたしたちに通用するかよ!!」


摩耶の推察通り、白露はある程度離れた所で摩耶たちに向けて突撃して来る。


「思った通り、瑞鶴さんたち! 出番だぜぇ!!」


摩耶の合図で瑞鶴と他戦艦空母の攻撃が白露に集中砲火する。


「・・・」


白露は戦艦の砲撃を間一髪の所で回避するも、


「甘い! 回避するのは予測していたぜ!」


瑞鶴たちの放った艦載機が白露の頭上に展開、上空から集中攻撃を受ける。


「・・・」


白露は負傷、損害は小破である。


「ふん、ざまぁみろ! あたしたちの作戦の方が遥かに上だって事だな!」


まだ勝負がついていないのに、既に勝った気でいる摩耶。


「そして、今度は海風・・・お前だよ!!」


摩耶たちの砲身は海風に向けられる。


「玉砕覚悟か? たった1人駆逐艦が突撃した所で、あたしたちに損害が与えられるかよ!!」


摩耶たちが砲撃準備に掛かり、装填した瑞鶴たちも海風に標準を合わせる。


「今だぁ、全門斉射!」


摩耶たちが撃とうとした、その瞬間、


「ここです、えいっ!!」


海風は何を思ったのか直前になって腰をかがめる・・・そして、


「はぁっ!!? 何で艦載機がこんな距離にいるんだ!!?」


摩耶たちが見た物、それは今まで確認すらしていなかった、サラトガの艦載機たち。


「か、回避!!」


すぐに摩耶たちは回避行動に出る。


「・・・くっ。」


損傷は軽微で済んだ物の、視界が煙幕で遮られ海風を見失う。


「海風はどこに行った!? 各自捜索!!」


摩耶の指示で6人が詮索をするも、


「ぐぇっ!」 「ぎゃっ!!」


後ろから叫び声が聞こえる。


「何だ・・・げっ! ゆ、夕立!!?」


目の前にいたのは、軽巡と駆逐艦を体術で沈黙させた夕立。


「こ、このやろう! いつの間に!!」


すぐに標準を合わせようとするも、


「・・・遅いよ。」


砲身から逸れ、体術で摩耶の腕を折る。


「ぐわぁぁぁぁっ!! う、腕がぁーー!!」


利き腕を折られたため、反撃が出来ない。


「くっ、瑞鶴さんたち何をしているんだ! 早く反撃を!!」


摩耶は瑞鶴たちに声を掛けるも、


「なっ!?」


摩耶が目にした光景、それは戦艦艦娘は艦載機にやられており、1人の空母が海風によって大破にさせられた光景、


「空母って接近戦だと脆いんですよね~。」


海風は得意げに呟く。


「このっ! 調子の乗るのもいい加減に!!」


瑞鶴は海風に弓を放とうとする。


「・・・私ばかりに気を取られていいんですか?」


「? えっ?」


意味ありげな海風の発言に、一瞬戸惑う瑞鶴・・・しかし、既に時遅し。


「!? 上空から無数の艦載機!!?」


既に上空にはサラトガが放った艦載機が攻撃を開始していた。


「うわっ! くっ! うあああっ!!!!」


瑞鶴は大破し、旗艦の摩耶は中破になる。


「摩耶さんを除く皆さんは戦闘不能、これ以上戦っても意味が無いですよね。」


海風の言った通り、最早摩耶たちには戦闘意欲は無い。


「え、演習に勝利したのは・・・海風さんたち!!」


予想外の結果に驚きを隠せない秘書艦。



演習と言う切り札で海風たちを蹂躙しようとした摩耶たち、しかし、願いも空しく僅か3人の前に敢え無く敗北してしまう。


その結果、散々我が物顔だった摩耶と瑞鶴は急に自信を無くし、損傷した体を修復しようと入渠するも、


「いつまで入ってんの!! 早く出て来てよ!!」


扉の向こうで何度も扉に蹴りを入れる白露。


「あんたたちのせいで、被弾したんだからね!! 入渠しようと思ったら先に入っているなんてどう言うつもりよ!!」


白露の怒りは収まらない。


「それに何、この入渠時間? 8時間に15時間って・・・ちょっと被弾した位でこんなに掛かるの?


 時間の無駄でしょ、さっさと高速修復材使って上がりなさいよ!!」


白露は言葉を続けて、


「散々鎮守府内で我が物顔に振る舞って! そのくせ口だけ達者で入渠時間も長すぎって。


 あんたたちの方がよっぽど鎮守府にとっていらない人間だよ!!」


扉の奥から聞こえる、白露の度重なる怒声に、


「ううっ、分かったからもうここから出て行ってよ~。」


「あいつに二度と関わりたくねぇ、もう嫌だぁ。」


入渠場で摩耶と瑞鶴の弱々しい声が空しく響く。



摩耶と瑞鶴を軸として鎮守府内の治安が悪くなっていたため、


その2人が大人しくなったことで、必然的に鎮守府の治安が戻りつつある。


・・・


それからと言う物、


「いやぁ~、赤城さんに加賀さん♪ いい飲みっぷりですね~♪」


食堂で赤城と加賀と一緒に飲み会をするサラトガ。


「いえいえ。 それに、いいですね・・・異国の艦娘との交流も。」


加賀はサラから注がれた酒を飲み干す。


「そうですよ~♪ サラは2人を気に入りました、さぁどんどん飲んで下さい~さぁ~♪」


サラトガは2人を気に入ったようで、グラスにどんどん注いでいく。


「・・・それに比べて、あの2人は。」


加賀が後ろを向く。


「・・・」



後ろを向くと、そこには隅で座っている頭に包帯を巻いた翔鶴と終始無言の瑞鶴の姿が・・・


「わざわざ異国の艦娘の方がお酌をしてくれていると言うのに、それを断るなど失礼にも程があります。」


「本当です、散々私たちに”無駄飯食い”と言っていましたが、今回の演習で大敗北したのですよね?


 しかも、戦艦と空母がいながら、駆逐艦に負けるなんて・・・彼女が本当の無駄飯食いですね!」


赤城と加賀の言い分に、


「・・・」


瑞鶴は手をわなわなと震わせるも、文句を言う事が出来ない。


「さぁさぁ、赤城さんに加賀さ~ん♪ お注ぎ致しますよ~♪ さぁどうぞ~♪」


その後も2人を差し置いて、3人で飲み会を楽しむサラトガ。


・・・


「おや? 今日は酒保に行かないのか?」


いつもなら朝と夕方、酒保に買い物に行く白露だが、


「うん、品物は頼んであるから。」


「? 頼んでいる?」


提督が不思議に思うと、


「し、失礼しまーす。」


誰かが入ってくる・・・それは天龍。


「夕立様・・・ご注文の品物を届けに参りました。」


天龍は白露の前で跪き、買った袋を差し出す。


「・・・」


白露は渡された袋の中身を見ると、


「・・・プリンが入っていないけど?」


白露が天龍に睨みつける。


「あ、あのぅ~・・・今日はプリンは売り切れでして・・・はい。」


天龍が弁明をするも、


「じゃあコンビニで買って来ればいいでしょ? どんだけ役立たずなのよ!!」


白露の怒声に、


「ひっ! は、はぁい! 今すぐに買ってきます!!」


天龍はそそくさと部屋から出て行く。


天龍は白露のパシリにされており、日毎に木曾と代わり代わりで買い物に行かせているらしい。


・・・


「えっ、もう帰られるのですか?」


執務室で秘書艦と話す提督。


「ええ・・・鎮守府の問題も解決に向かっているので、後は提督殿と秘書艦殿がこの鎮守府を建て直して貰えばいいかと。」


そう言って、提督は数日の内にこの鎮守府から出る旨を伝える。


「・・・」


執務室前廊下で、盗み聞きをしている艦娘たちがいる・・・それは摩耶たち。


「聞いたか? 提督と夕立たちはもうすぐ鎮守府を去るって。」


「うん、しっかりと聞いた。 オレたちも遂に地獄から解放されるのかぁ。」


全く懲りていないのか、提督達が出て行く事を嬉しく思う摩耶たち。


「それにしても・・・あいつら本当にイラつくよなぁ。」


摩耶は未だに白露や海風の事を許せないようで、


「だからと言って、あいつらに挑んでも返り討ちに遭うだけだしよぉ。」


それを含めて、導き出した結論は、


「なぁ、皆。提督をあたし達でボコってやろうぜぇ。」


何と、摩耶は提督をリンチしようと提案する。



当然ながら、


「そんな事したら、提督に何をされるか・・・」と意見が出るも、


「ふん! 提督なんて艦娘に守られていなければただの雑魚だろ。 海風たちが離れて提督1人になった時に、


 広場に誘導してボコればいいだけの話だよ!」


摩耶はどうしても、今までの鬱憤を晴らしたい模様。


「瑞鶴さんもどうよ? あいつらの代わりに提督をボッコボコにしてやろうよ!」


摩耶の意見に、


「わ、私はいい! 今回の事で懲りたから・・・失礼するわ。」


そう言って、瑞鶴はその場から去り、他の艦娘たちも「遠慮する」と言って、摩耶から離れていく。


「ちぇっ、何だよ瑞鶴さんに皆もよぉ。 急にへっぴり腰になってさぁ。」


摩耶は「ちぇっ」っと舌打ちをしつつも、


「まぁ別にいいけど、あたしは気が治まらねぇ! こうなったら、あの提督の胸ぐらを掴んで


 思いっきり殴り倒して、今までの鬱憤を晴らしてやらぁ!!」


そう言って、摩耶は意気込む。


結局摩耶の案に乗った艦娘は1人もいなく、摩耶のみが行動に映すことに。



・・・それがそもそもの大間違いだと言うのに。



「入るぜ!」


摩耶は勢いよく扉を開ける。


「? 何か御用でしょうか?」


海風が対応するも、


「お前に用は無い、提督! あんたに用があるんだ!」


摩耶は提督を名指しする、


「申し訳ありませんが、提督はこの鎮守府から出る準備とその他必要な書類作成で忙しいので、


 海風が代わりにお聞きしますが・・・」


海風は丁寧に対応するも、


「だから! お前に用はねぇって言ってるだろ! あたしが話したいのは、目の前にいる提督だよ!!」


摩耶の言い分に、


「そうか、では聞こう。 オレに何の用かな?」


「おおっ、話が早いじゃんか! ここでは話すのもなんだからよぉ、少しあたしに付き合ってくれよ。」


「ふむ、いいだろう。」


そう言って、提督は立ち上がり、海風に残りの書類記載を頼んで摩耶の後について行く。


・・・


人気のいない場所に連れて行かれて、


「いやぁ~、今回の事で提督にはほんと世話になったよ。」


摩耶が不気味に笑いながら、提督に話しかける。


「ふむ、それは良かった。」


提督は無難に言葉を返すも、


「ああ? 褒めてなんかねぇし!」


摩耶の表情が急にこわばり、


「あのなぁ、あたしは夕立や海風に散々コケにされてめちゃくちゃ苛立ってんだよ!!」


「・・・」


「普段は夕立たちが部屋にいるから、機会が無かったけどこうも簡単に引っ掛かってくれるなんてなぁ。」


「・・・」


「この場所は部屋から結構離れた所に位置してなぁ、仮に叫んでも海風たちの耳には到底届かない場所なんだなここは。」


「そうか・・・つまり君が叫んでも、誰の耳にも届かないって事だね?」


「ああ? あたしが叫ぶ? 何の冗談言ってるの? 今から叫ぶのは・・・」


摩耶が拳を前に出し、


「お前だよ提督!!」


いきなり殴りかかる摩耶、


「・・・」


提督は避ける事もせず、ただ片手を前に出す。


「おらぁっ!!」


摩耶の渾身の一撃が提督の顔めがけて振りかざされる、


「・・・」


しかし、提督は摩耶の拳を片手で受け流す。


「ああっ?」


一瞬何が起きたか分からない摩耶だが、


「・・・」



パァン!



受け流した手の甲で摩耶の頬に平手打ちする。


「!? て、てめぇ何しやがる!!」


殴りかかったつもりが逆に殴られ、摩耶の怒りが爆発する。


「もう許さねぇ!! 海風も提督もあたしをコケにしやがってぇーー!!!!」


摩耶は提督に無数のパンチを浴びせる、



ぱしっ、 ぱしっ、 ぱしっ


ぱしっ、 ぱしっ、 ぱしっ



しかし、全てのパンチを簡単に受け流してしまう提督。


「こ・・・このやろう!!」


摩耶はまた拳を前に出すも、


「・・・」



パァン!



先に提督の平手打ちが飛ぶ。


「おあっ!? いてぇ・・・」


摩耶の鼻から血が出る。


「・・・ひっ!!?」


しかし、今度は提督の反撃が容赦なく襲い掛かる。



パァン! パァン! パァン!


「い、いてぇ! いてぇって!! おい、止めろよ!!」



パァン! パァン! パァン!


「お、お前! あたしは女だぞ! 女を殴ってそれでもお前は男かぁ!!・・・!?」



パァン! パァン! パァン!


「うぶっ!? ひっ!? ぐはぁっ・・・も、もう止めて! 降参するから、なぁ頼むよ・・・!!?」



パァン! パァン! パァン!


「も、もうっ!! 許して! 許して下さい!! もう、提督にも海風たちにも一切危害は加えないからぁ!!


 もうしませんからぁ!!!!」


散々鬱憤を晴らしたい衝動に駆られた摩耶が、提督の前で土下座する始末。


「・・・」


提督は何も言わず、その場から去る。


「はぁ・・・はぁ・・・」


摩耶は「助かったぁ」と安心すると同時に、


「夕立たちは怪物、そして提督は、大怪物かよぉ・・・」


・・・


「今戻ったよ。」


白露が部屋に戻って来る。


「あっ、白露さん。 おかえりなさい。」


海風が迎える。


「あれ? 提督はどこに行ったの?」


「提督でしたら、摩耶さんに呼ばれて部屋から出て行きましたよ。」


「ふ~ん、あたしたちに勝てないから今度は提督を標的にしたって事だね。」


白露は納得するも、


「でも、バカだねぇ~。あたしたちより提督の方がもっと怖いのにさぁ~。」


「そうですね、摩耶さん・・・骨折だけで済むといいのですが。」


「ふん、あんな役立たずはいっその事、捨てた方が早いって!」


2人で会話をしていると、


「ただいま~。」


提督が戻って来る。


「あっ、提督。おかえりなさい!」


海風が丁寧に出迎える。


「あの、お怪我はありませんでしたか?」


海風は一応気になって尋ねるも、


「オレ? 別に怪我なんかしてないけど?」


「そうですか、なら良かったです。」


海風は安心して笑顔で返す。


「オレは問題なかったけど・・・そう言えば摩耶が外でべーべー泣いてたな。」


そう言って、席に着き再び書類記入を始めた提督。


・・・


「短い間だったけど、世話になったね。」


鎮守府外の門で、別れの挨拶をする提督。


「いえ、こちらこそ鎮守府の治安を戻して頂き、本当に感謝しています!」


秘書艦である艦娘が深く礼をする。



あれ以来、翔鶴と瑞鶴は赤城と加賀に難癖を言わなくなり、


対空番長を気取っていた摩耶は急に大人しくなり、その他軽巡と駆逐艦娘も規律を守って生活していると言う。


「それは良かった・・・また何かあれば連絡して欲しい。 その時はあの3人よりも優秀な子を派遣させるから。」



提督の話では、あの3人(海風・白露・サラトガ)より更に上の猛者が鎮守府にいるらしい。


「(汗)・・・いえ、これから秘書艦である私と提督で、頑張っていきます! 本当に、本当にありがとうございました!」


再び秘書艦が深く礼をする。


「そうか、ではこの鎮守府のこれからの発展と武運を祈るよ。」


提督も礼をして鎮守府から去った。



その後、部屋に籠りっぱなしだった小心者提督は、秘書艦たちの説得で再び執務に励む。


激変した艦娘たちを見て驚きつつ、周りからの意見や愚痴にも怯みつつも秘書艦と一緒に職務をこなして行き、


数か月後には甲難度のイベント海域を達成したと、直通で提督の耳に伝えられたと言う。









「艦娘たちを懲らしめる」 終










このSSへの評価

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J-ROCK 0105さんから
2022-06-02 08:21:33

SS好きの名無しさんから
2020-01-10 13:38:35

SS好きの名無しさんから
2020-01-02 20:22:09

天邪鬼さんから
2019-12-23 18:41:01

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2019-12-21 01:30:47

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このSSへのコメント

16件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2019-12-20 23:11:46 ID: S:fXiJhH

この鎮守府での問題が解決しても
他の鎮守府で同じ事が起こるだろう。
艦娘も内面は人間と変わらないから。
良きも悪くも、何度でも繰り返す

2: SS好きの名無しさん 2019-12-26 21:54:40 ID: S:-ISPf_

暴力は暴力で返す

3: SS好きの名無しさん 2019-12-27 03:31:26 ID: S:2HatAH

正にその通りだが
それは提督達の艦娘にも言える事だな

4: SS好きの名無しさん 2019-12-30 20:12:39 ID: S:t7lANs

荒れてる上に鎮守府の一番が弱い者虐め大好き内弁慶。
大事な提督は平気で貶める。
前話の説定受け継いでるなら3人共容赦なくても仕方は無いか

5: SS好きの名無しさん 2019-12-31 22:14:54 ID: S:eNlukt

なんか…力こそ正義って感じ。
この世界は世紀末、〇斗の拳みたい

6: SS好きの名無しさん 2019-12-31 23:56:04 ID: S:mv3r4l

夕立(白露)自体、妹の武勲や改装で比較されてイジメられるなんて
ロクでも無い奴らが多い世界観だしある意味皮肉だよなとは。
大本営に見せてあげたい気分

7: SS好きの名無しさん 2020-01-01 00:31:23 ID: S:CZIBbS

既に大本営は
この提督の力に臆しているから♪
しっかし、提督もさっさと大本営を
潰してしまえば良いのにねぇ?
それだけの事くらい出来るでしょうに

8: SS好きの名無しさん 2020-01-01 12:31:14 ID: S:ZMXBWj

大本営のTOP(元帥)になっても部下(艦娘)の裏切りで
その座から引きずり降ろされる可能性もあるからなー(前に元帥になった時に大淀に裏切られて、その座から引きずり降ろされて料理人兼何でも屋になってたからね)
まぁ今の立ち位置が提督的に一番動きやすいんだと思うわ

9: SS好きの名無しさん 2020-01-01 19:53:18 ID: S:YX3RDZ

現代の面子なら先ず裏切りは無い…と
思うのだが。
この提督の艦娘達も頑強な絆に見えて
何処かに綻びがあるのだろうか?

10: キリンちゃん 2020-01-02 13:00:07 ID: S:Ik5U9J

8さん、

そこまで読んで頂き感謝です♪

11: SS好きの名無しさん 2020-01-02 19:11:21 ID: S:d1Pc8W

>>9さん
比較的提督シリーズに登場しているメンツは大丈夫だとは思いますが(下手したら暴走しそうなのが居そうだけど・・・)
登場していない艦娘が・・・って事があるかも(白露型以外の駆逐艦娘の登場率がなぁ・・・夕雲型は出たかな?など)

12: キリンちゃん 2020-01-02 20:42:26 ID: S:glfPzF

11さん、

ほとんどが白露型で、申し訳ないです。
昔(1年位前)書いたssのコメントに、

「白露型のssが少ないからもっと増やして欲しい」との要望があり、

他の方々のssの登場人物を見たら確かに少なく感じて、
なるべく白露たちが出るようにss書くようになりました。
結構書いているため、要望があれば他の駆逐艦も
書きますよ~♪

13: SS好きの名無しさん 2020-01-02 21:50:16 ID: S:TBi--f

要望(リクエスト)はキャラ紹介のところに言ったらいいのかな?
違う提督での夕雲型シリーズは見てみたいかも
後は・・・白露と夕立(白露)の話が見たいな

今後提督さんと同じ出の提督が登場しそう
それと提督さんの前世は違う世界での新型兵器でしたっけ?

14: SS好きの名無しさん 2020-01-02 23:18:18 ID: S:6uy6Gp

不甲斐なかった提督の鎮守府の由良さんその後、とか
余り言及されないけど地味に白露と親交有ってもおかしくない筈の
浜風とか(無茶ぶり) 

15: キリンちゃん 2020-01-04 19:11:17 ID: S:ofoqQH

13さん、

了解です♪ 夕雲型のss書きます、提督ではありませんがちょうど、
艦種は戦艦なのに、容姿が駆逐艦っぽい子がいるので、
戦艦を目指している子のssが思いつきました♪(その他も含めて)

後、提督の過去(前世)はその後も色々考えた末、
人間と艦娘の間に生まれた子供と言う設定にしております。

16: キリンちゃん 2020-01-04 19:18:11 ID: S:SfFCC8

14さん、

了解です♪ 「提督と由良」の続編を書きます♪
後、浜風のssかぁ・・・浜風(浦風)と磯風なら思いつきました。
磯風に料理を教える浜風たちと言う風な。


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