「鎮守府にサラトガがやってきた。」
提督の前に突然、海外艦のサラトガが「あなたの鎮守府で働きたい!」と言い出し・・・
突然の事でした。
提督会議のため、私と司令が総司令部に出張した時の事・・・
最近深海棲艦が強さを増しているという情報、一部の提督が粉飾などの違法を行っていること。
今後の艦娘の各鎮守府へのローテーションをどうするか等・・・いつになく緊張が止まない会議でした。
粉飾に対してはほとんどの司令たちが終始無言でしたが、艦娘のローテーションの話が始まった瞬間、
我先にと強い艦娘を要望する声が飛び交いました。
私の司令は、「オレはいらない。 霧島や蒼龍たちがいるから必要ない。」と一蹴り、その場を後にしました。
ちょうど昼食の時間でしたので、食堂で昼食を取っていた時の事でした。
司令はいつものように鎮守府から持参した書類を眺め、私は昼食を頂いていた時の事。
「相席よろしいでしょうか?」
と、ある艦娘が聞いてきました。
司令が「どうぞ。」と言うと、彼女は喜んで椅子に座りました、その艦娘は・・・
海外艦の正規空母「サラトガ」さん・・・提督達の間では人気が高く、鎮守府に迎えようとする提督が多くいます。
今回のローテーションでもサラトガさんの話が出ていました。
そのサラトガさんが突然の一言を・・・
「サラをあなたの鎮守府で働かせてください!」・・・と。
いきなり言われて司令も驚き、当然ながら私も一瞬何を言っているのかと思いました。
「お願いします! 私を、サラを・・・提督の下で働かせてください。」
「・・・・・・」
司令はしばらく考え、
「・・・いいけど、すぐに辞めないようにね。」
と、許可を出しました。
許可を貰ったサラトガさんは大喜びで、「すぐに支度します!」と言うと去り、外に出ると荷物を持って待っていました。
余程、総司令部の居心地が悪かったんでしょうか・・・
・・・・・・
鎮守府に着くなり、サラトガさんは勝手に鎮守府内の散歩を始めました。
海外艦はサラトガさんを入れると3人目の艦娘(1人目はビスマルク、2人目はアイオワ)です。
「賑やかになりそうだな。」
と、司令は呟く。
その後、彼女を空母寮に案内し、蒼龍さんたちと一緒に住むことになりました。
翌日から、サラトガさんは第2編成の部隊に参加、初めての海外空母に皆は興味津々。
「サラ、出撃します!」
元気いっぱいで出撃するその光景に皆は驚く。
・・・・・・
「サラ、無事帰還しました!」
帰還後も元気に振る舞うサラトガさん・・・周りの皆も彼女の元気さに癒されています。
私の見た限りでは、元気が取り柄のお方なんですね~っと思いました。
でも、何でしょう・・・確かに明るく元気ですが、どこか無理に明るく振る舞っているようにも見えますが・・・
それについては司令も感じていたようで・・・
「あんな性格ならどの鎮守府でもやって行けるのでは? よりによってなぜここの鎮守府を選んだのか・・・」
と、司令も疑問に感じていた様子。
「まぁ本人が「この鎮守府で働きたい!」と要望したのだから、余計な詮索をする必要はないがな。」
そう言ってそれ以上の詮索をしませんでした。
・・・・・・
「それでは、明日の空母編成を大鳳さんとサラトガさんにお願いします!」
航空母艦の蒼龍が明日の空母編成を提案、2人は承諾する。
「わかりました、装甲空母の本当の力、見せてあげます。」
「了解です! 海外艦の凄さを敵にわからせてやります!」
「2人とも、元気があってよろしい! では、明日に向けて体を休ませてください!」
空母会議が終わり、大鳳とサラトガは同じ部屋で就寝した。
「灯りを消します、よろしいですか?」
大鳳が聞くと、
「はい、おやすみなさい!」
と返す・・・彼女はいつでも明るく礼儀正しい。
「では、消します・・・おやすみなさい。」
大鳳は灯りを消した。
・・・・・・
・・・
・
これはサラトガの夢の中・・・
「また逃げたのか、こいつは・・・」
・・・上手く逃げられると思ったのに・・・
「はい、会議中に隙を見て逃亡していたところを取り押さえました。」
「ふむ・・・」
「この者の処罰はどう致しましょう?」
「しばらく独房へ入れて置け! 水も飯も出すな!」
・・・・・・
「サラ・・・お前には失望したぞ。」
私の名を呼ぶ、あの提督・・・
「今度は逃げられぬよう、お前に私からの贈り物をしよう。」
贈り物? そんな物いらない!
「おとなしくするんだ! おい、皆の者! こいつを押さえろ!」
いや! 離して! 離してって!!
・・・・・・
「サラ・・・今日からお前は私から逃げることはできない・・・これから一生お前は私の物だ。」
やめてっ! そんなの嫌だ! 離して! 離してよぉ!!
・・・・・・
・・・
・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
早朝、サラは一番に早く目覚めた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
うなされていたのか、額から汗が流れ呼吸も荒い。
「・・・・・・」
隣で眠っていた大鳳も目が覚め、
「大丈夫ですか? 昨晩ずっとうなされていましたけど?」
「・・・大丈夫です! 心配かけてごめんなさい!」
「・・・・・・」
「えっと・・・今日は出撃でしたね! すぐに準備します!」
そう言ってサラトガは部屋から出て行った。
大鳳がそれを見つめていた。
「正規空母サラ! 出撃します!」
昨日と変わらない、サラトガの元気な言葉・・・周りの皆もその言葉に元気づけられ、今日も頑張ろうと感じる。
「・・・・・・」
出撃前に大鳳から昨晩の経緯を聞かされ、提督は少し考えていた。
「う~ん・・・うなされていたねぇ~。」
過去に何か嫌な事があったのか・・・と思う提督。
「余計な詮索はしないと決めたからな・・・仕方がない。 蒼龍に頼んでみるか。」
そう言って蒼龍を呼び出し、どんな些細な事でも気づいたら報告するようにと頼んだ。
・・・・・・
「サラ、無事帰還しました!」
帰還後も昨日と変わらず元気なサラ・・・そんな彼女にどんな悩みがあるのだろうか・・・
夜の事である、
霧島がその日の秘書艦を終え部屋に戻り、提督が残りの書類を整理していた時の事である。
ドアをノックする音が聞こえて誰かが入ってきた・・・それは、
「・・・サラか・・・こんな時間にどうした?」
サラトガが執務室に入ってきた。
「提督、今夜は空いてます?」
「? どうして?」
この前の大鳳の話かな? 何か相談事があるのかと思っていたら、何てことはない。
「皆から提督の評判を聞きました。 とても頼りになり、尊敬できると。」
「それはどうも。」
「それならこのサラ・・・今夜は提督と一緒に夜を過ごしたく・・・」
そう言って少しスカートをめくりあげ、素足を見せ誘ってくる。
「気持ちは嬉しいが、今日は忙しくてな・・・またにしてくれ。」
きっぱり断った。
「そうですか・・・それでは、またの機会に・・・」
サラは執務室から出て行く。
「驚きました・・・私の誘いを断る提督がこの世にいるなんて・・・ますます気に入りました♪」
何故か満足げに部屋に戻るサラトガだった。
・・・・・・
「どうだ、何か気になることはあったか?」
再び蒼龍を呼び出してサラの事を聞く。
「何の問題はないです、とても礼儀正しくて周りにも打ち解けて、戦闘でも頼りになって非の打ちどころがありません!」
「そうか・・・」
「あの、提督。 よろしいでしょうか?」
大鳳が横から話す。
「大したことではないのですが・・・」
「いや、何でも構わない・・・言ってくれ。」
「・・・サラトガさんから何か時計のような音が聞こえるんです。」
「? 時計?」
「はい・・・チクタク音ではないですが・・・何でしょう・・・一定のリズムで音が鳴っているのに気づきました。」
「いつから?」
「一昨日からです、部屋に時計があるので気づかなかったのですが・・・一昨日から時計が故障していまして、
寝る時にサラトガさんからその音がするのに気づきました。」
「そうか。」
本人がうなされていたことと何か関係があるかもしれない・・・今の話も視野に入れておこう、と思った提督。
・・・・・・
それ以降もサラについての情報を集めるが、大した報告は得られず1週間が経った。
昼食前の事である。
「痛っ!!」
突然サラが胸の痛みを訴え、地面にうずくまる。
「サラさん! 大丈夫ですか!?」
蒼龍が触れて安否を確認するが・・・
「・・・だ、大丈夫。 もう大丈夫です! ごめんなさい。」
とても苦しかったのか、額には大量の汗が・・・それでも、サラは周りに心配を掛けたくないのか、いつものように明るく接した。
昼食後に提督に呼ばれ、「体調が良くないのか?」と聞かれるも・・・
「大丈夫です・・・少し、痛みがあっただけです。 もう治りましたので気にしないでください。」
と、それ以上の会話はしなかった。
提督も、「本人が言っているのだから」と気にしなかったが、その数日後に・・・事件が起きる。
・・・・・・
数日後、
霧島が執務室に向かう途中のことである。
「痛っ!!」
廊下の角の出会い頭に霧島とサラがぶつかり2人は倒れる。
「大丈夫ですか! サラさん!」
霧島は慌ててサラトガに手をやる。
「す、すいません・・・よそ見していました。」
いつもと変わらぬ笑顔、彼女は霧島の手に掴まり、
「・・・?」
霧島がサラに妙な違和感を覚えた。
「? どうしました?」
「い、いえ・・・何でもありません。 後、次からは前を見てくださいね。」
「・・・はい、すいません。」
お互い礼をしてその場から去る。
「・・・今のは・・・」
霧島は何かを感じ取ったようで、すぐさま執務室に駆け寄った。
・・・・・・
「司令!」
執務室に入るなり、いきなり呼ばれて提督は驚く。
「ど、どうした霧島?」
霧島を少し落ち着かせて、話を聞いた。
「・・・・・・」
内容は先ほどサラとぶつかった事・・・ではなく、サラの手を掴んだ時の事・・・
「・・・何か振動している感じがした?」
「はい・・・血管の脈と言うより、機械的な何かでした。」
「・・・・・・」
そこまで聞いて急に提督が、
「サラを呼んで来い! そして今鎮守府にいる艦娘を一時的に避難するように伝えろ!」
「どうしたんですか、司令!」
「説明している時間はない、今すぐに皆を避難させろ! 命令だ!」
「・・・わかりました!」
そう言って霧島は執務室から出て行った。
・・・・・・
「鎮守府にいる艦娘全員を外に待機させました。」
「よし、ご苦労! ・・・さてと。」
目の前にいた艦娘、それは当然サラ・・・
「提督、どうしたんですか?」
状況が呑み込めずサラは首を傾げる。
「霧島、お前も早く避難しろ。 後はオレに任せろ。」
「・・・司令を置いて逃げることはできません! 私もここに残ります!」
「・・・好きにしろ。」
そう言って提督はサラに近づいた。
「・・・・・・」
サラは立ちすくんでいる。
「もう隠さなくていい・・・わかっている。」
「? 何がですか?」
「サラ、お前は体内に爆弾を埋め込まれているだろう?」
「・・・・・・」
「なっ!?」
提督の言葉に霧島は驚く。
「何のためだ? オレを殺すために潜り込んだのか?」
「・・・違います。」
「上の差し金か? それともお前の昔の上司か?」
「・・・・・・」
「おかしいと思ったんだ・・・なぜお前がこの鎮守府で働くことを選んだのか・・・お前ならここ以外でも
着任できる鎮守府は多くあるはず・・・それなのにわざわざここを選んだのを。」
「・・・・・・」
「オレが嫌いな提督はたくさんいる・・・オレを殺すなら構わん。 だが、オレの艦娘達には危害を加えないでくれ。」
「違う・・・違います!」
「・・・・・・」
「私は・・・そんなことは一切思っていません!」
急に泣き出すサラ・・・
「・・・・・・」
サラの目を見て・・・
「・・・何か事情があるようだな・・・わかった・・・お前を信じる。」
そう言って提督はサラを鎮守府奥へと連れて行った。
・・・・・・
「ここに寝て・・・ゆっくり深呼吸して。」
言われたとおりに深呼吸してベッドに体を置くサラ。
「今から体内の爆弾を取り除く。」
そう言って準備した手術器具を手に取り、サラに麻酔をかける。
「司令・・・今まで手術の経験があったのですか?」
「・・・まぁ、少しね。」
「・・・・・・」
「さてと・・・これから目標を開口して・・・」
提督はオペを始めた。
・・・・・・
・・・
・
「ふぅ・・・これでよし・・・と。」
サラさんの体に埋め込まれていた爆弾を見事摘出しました・・・確かに大鳳さんの言った通り、一定のリズムで音が鳴っています。
「爆弾が起動しなかったのが救いだ・・・恐らく、遠隔操作タイプの起爆式爆弾だな。」
「遠隔操作?」
「持っているのは恐らく、総司令部の提督の誰かだな。」
そう言って司令は摘出した爆弾を袋に包み・・・
「しばらくしたら目が覚めるだろう、それから事情を聞けばいい。」
司令は部屋から出て行きました。
・・・・・・
「・・・う~ん。」
「目が覚めましたか?」
「・・・・・・」
サラが振り向くと、霧島がいた。
「爆弾は摘出しました・・・もうあなたは怯える必要はありませんよ。」
「・・・そうですか。」
「・・・話してくれませんか? なぜサラさんに爆弾が埋め込まれていたのか・・・なぜこの鎮守府を選んだのか・・・」
「・・・全てお話します。」
そう言ってサラはゆっくりと口を開いた。
「鎮守府に着任した瞬間から私は・・・艦娘としてではなく、玩具として扱われていました。」
「・・・・・・」
「何度も逃亡を試みましたが、結局捕まり最後は牢屋に入れられ食事もほとんど与えられずにいました。」
「・・・・・・」
「ある時、提督が「お前が二度と逃げられないように贈り物を渡そう」と言って私に爆弾を埋め込みました。」
「・・・・・・」
「それからは提督の機嫌を取ることが毎日の日課でした。 乱暴されても何をされても耐える日々・・・」
「・・・・・・」
「私の唯一の救いは年に数回行われる鎮守府内のローテーション、何度も違う鎮守府に着任して
新しい生活に胸を躍らせていましたが・・・結局提督は皆同じ、艦娘としての評価ではなく私の体目当てで・・・。」
「・・・・・・」
「そんな時、この鎮守府の情報を耳にしました。」
「? この鎮守府の情報ですか?」
「この鎮守府はワケありの艦娘たちが集まる最果て鎮守府と言う噂は聞いていました。」
「・・・最果てとは、変な言いがかりですね。」
「でも、貰った資料を見て驚きました。 この鎮守府には空母と戦艦が数えるほどしかいないのに、
戦果はとても優秀だったことが・・・」
「・・・・・・」
「それで私は決心しました・・・この鎮守府で頑張って行きたい・・・と。」
「・・・・・・」
「鎮守府で働いている以上はあの提督も爆弾を起動することはできないので、私はこの鎮守府を選んだんです。」
「なるほど・・・そう言う事だったんですね。」
「でも・・・もう私はこれからの生活に怯える必要はないんですよね?」
「・・・・・・」
「もし、ここの提督が私を居させてくれるなら、このサラ・・・沈むその時まで、艦娘として頑張って行きたいです。」
そう言ってサラは涙を浮かべた。
・・・・・・
「そうか・・・サラがそんなことを。」
サラさんが、私に打ち明けたことを司令にそのまま報告しました。
「居させてほしいか・・・別に本人が除隊願いを出さない限りはここにいて構わないけどね。」
「・・・・・・」
「けど、サラも同じ境遇か・・・別に、好き好んでこの鎮守府を選ばなくていいのに。」
「・・・・・・」
「確かに・・・ここに来る艦娘はワケありが多いかな。」
司令は苦笑していました。
「でも、そのワケありのおかげで皆強くなれたのも事実だしね。」
「・・・・・・」
確かに・・・それは言えるかもしれません。
・・・・・・
翌日、提督はサラを連れてある場所へ行きました、そこは”総司令部”。
「本当に行くのですか?」
「ああ、お前も一緒にな。」
「あの提督は素直に承諾してくれるでしょうか?」
「オレの予想は9割方成功する見込みだが。」
「・・・・・・」
9割方と言うのはほぼ成功するという意味ではあるが、サラにとってそれでも、「確実ではない」という不安がよぎる。
「では、後の1割は何ですか?」
質問すると、思いもよらぬ返答が、
「お前が提督に堂々と打ち明ける勇気だ。」
「・・・・・・」
それだけ言うと提督は総司令部の扉を開けた。
・・・・・・
「ああ、よく来たね。 そこに座ってくれ。」
サラの元上司である提督が目の前にいた。
2人はそのまま指定された椅子に座る・・・サラは手を震わせていた。
「それで、何か用かな?」
「実は・・・今、自分の鎮守府で着任しているサラが提督殿に伝えたいことがあると・・・」
「ふむ・・・では、サラ。 用件を言ってみなさい。」
提督は優しそうな口調で聞く。
「・・・・・・」
見た目は優しそうでとてもサラが思っていた人相と違うが、それはあくまで表の顔。 実際の裏の顔はサラだけが
知っており、何をされるかわからない状況下で素直に自分の意見を伝えることは本人にとって何より辛かった。
「・・・あの。」
「どうした? 私はこれでも忙しいのだよ。 早く用件を言ってもらえるかな?」
「・・・・・・」
「どうやら緊張しているようで・・・どうするサラ、またの機会にするか?」
提督に言われ、意を決したように、
「いえ、大丈夫です・・・提督・・・お伝えしたいことがあります!」
「ふむ。」
サラは一度深呼吸をして言った。
「私はこの提督のいる鎮守府に身を置きたいのです。 ですから、ローテーション組から外していただけませんか?」
「ほほぅ、それは難題な要求だな。」
「お願いします!」
「・・・それは無理だな。」
「!? どうしてですか!?」
「周りの提督に対しての君の評価は高くてな・・・ずっと同じ鎮守府に身を置くことは他の提督達の反感を
受けることになるからだよ。」
「・・・・・・」
「それ以上に、身を置けない理由は私が直接教えたはずなのだが?」
そう言ってにっこり笑う提督。
「・・・・・・」
その笑顔に震えるサラ。
「残念だが、その要求は却下する。 次のローテーションまでまだ少し期間がある・・・それまで楽しく過ごすことだな。」
「・・・・・・」
想像はしていたが、要求は通らず絶望するサラ・・・そこに、
「オレは賛成なのだが、サラをオレに預けることはダメかな、提督殿?」
「・・・何?」
「お前は耳が遠いのか? オレの鎮守府で身を置きたいと言っているんだ、それはダメなのか?」
「貴様、誰に向かって口を聞いている!」
「ああ? 目の前のお前だよ! お前以外誰がいる?」
「ききき、貴様!!」
「だからさぁ、いいのかって聞いてるんだよ? いいのか悪いのかはっきり言えよ!」
あまりに挑発的な態度を取る提督に隣にいたサラは絶句、当の提督は怒り心頭だ。
「今、サラの上司はこのオレだ、サラの居場所は上司であるオレが決めること。 目の前にぽつんと立っている
おっさんがつべこべ言うんじゃない。」
「お、お、お、おっさんだとぉ!!」
「よし、話は終わった。 帰るかサラ。」
そう言って退室しようとする提督、しかし、何か思い出したようで。
「ああ、忘れるところだった。 大したものではないが「贈り物」だ、最初に渡すべきだったがころっと忘れていた。
無礼をお許しを・・・」
「・・・・・・」
それ以上に総司令部の提督に「おっさん」と言った提督がよっぽど無礼です! と思ったサラ。
「さっさと出ていけ! この無能提督!」
遂に切れて2人を追い出す提督。
・・・・・・
「あの礼儀知らずの無能提督が・・・」
余程イラついたのか、手に何やら装置の物を持っていた。
「よかろう、そんなに私の下から離れたいと言うなら、叶えてやろう!」
無能提督とサラが鎮守府外に出たところで、
「2人で仲良くあの世へ行きな!」
と、爆弾の起爆スイッチを押した。
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
「何だ? この音は?」
音のする場所を見ると、そこにはさっきの無能提督が差し出した贈り物だった。
「・・・・・・」
包んでいた布を開けると、
「なっ!?」
そこにあったのは、サラに埋め込んだ筈の爆弾・・・しかも、提督はスイッチを押したことでカウントダウンが始まった。
「な、な、な、そんな馬鹿な!」
爆発まで後5・・・4・・・3・・・
「嘘だろ! そんな! そんなはずは!!」
2・・・1・・・
「うわああああっ!!!!」
・・・0。
・・・・・・
・・・
・
「確かにオレは無能だよ。」
総司令部の一角の執務室が大爆発した光景を見て呟く。
「本来、爆弾は解除しなければいけないんだが・・・実はオレ、爆弾解除の資格持っていないんだよね。」
提督は自慢げに語る。
「さてと・・・帰るか。」
2人は鎮守府へと帰っていった。
数日後、総司令部の爆発は執務室隣のガス管の老化によるガス漏れからの引火爆発と発表され、執務室で作業していた
提督は即死だったと報じられた。
・・・・・・
その後、サラは改めてこの鎮守府に着任、何の縛りの無い平穏な生活を過ごす。
・・・・・・
今日は休日、
サラが同じ海外艦の艦娘たちとお茶会を開いていた。
「それでねぇ、提督にバッグをおねだりしたんだけど、断られちゃった。 本当にケチな提督よねぇ。」
ビスマルクが愚痴って、
「でも、提督は私たちの事を大事にしてくれているわよ・・・ただ夜のお楽しみは未だに断られ続けられているのよね。」
アイオワが不満を漏らし、
「そうなんですね・・・提督は夜の営みはお嫌いなのかしら?」
サラが聞くとビスマルクが、
「提督に聞いてみるといいわよ、面白い答えが返ってくるから。」
「・・・・・・」
ビスマルクの言葉が妙に気になった。
・・・・・・
夜になって、
「今日の書類整理は終わった・・・さて。」
提督は次の仕事に取り組もうと席を立った。
「? どうしたサラ、こんな時間に?」
執務室にサラが入ってきた。
「あの・・・今夜は空いていますか?」
「・・・悪いけど、今夜も忙しくてな・・・」
また夜伽の誘いか・・・そう思った提督は断ろうとしたが、
「どうして、誘いを断るのですか?」
「ん?」
「私は、提督と愛を交わしたい・・・のです。 それなのに・・・私のどこがいけないんですか?」
「・・・・・・」
返答に困り提督は頭をかいた。
「う~ん・・・それはだな。」
「はい・・・」
「率直に言うと・・・な。」
「・・・・・・」
「サラを含む皆を女性として見ていないからだ。」
「はい?」
「オレにとって皆は「女の子」として見ているからだ。」
「・・・・・・」
あまりに意外な答えに・・・
「そんな・・・私を見てください! 足も胸もスタイルも・・・大人です! それでもまだ私を子供と言いますか?」
「あ~・・・わかっていないようだから、教えてやろう。」
そう言って提督はサラに近づき・・・
「提督? 何でしょ・・・!?」
突然提督からのキスが・・・
「ん~・・・んん~~・・・んうぅ~・・・」
あまりの突然の行為にサラも抵抗できず、全て提督の行為に身を任せる。
「ん・・・んうぅ~・・・はぁ・・・はぁ・・・」
次第に力が抜け、その場に腰かけるサラ。
「何だ・・・もう堕ちたのか?」
「・・・・・・」
「そんなんじゃ次のステップは到底進めないな。」
提督はサラの頭を撫で、
「次はスタイルじゃなく内面を鍛えるんだな。」
そう言って提督は次の仕事のため、執務室から出て行った。
「提督のキス・・・凄かった・・・あれが、大人のキス・・・」
しばらくその場で腰を下ろしていたサラだった。
・・・・・・
皆はよく勘違いしているようで、
ここの提督が思う理想の艦娘とは、胸の大きさや美脚、火力・性能が高い等、外面で判断すると思っていたようだ。
ほとんどの提督がそう判断しているのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが・・・
でも、ここの提督は他とは判断基準が類を見なかった。
提督はただ一言・・・「オレの背中を預けられる艦娘」と。
今まで外面で判断されていた艦娘にとってはこれ以上の難題はなかった。
・・・・・・
ローテーション組から通常着任できたサラの事は、他の海外艦たちの耳にも入り、
この鎮守府に強く要望する艦娘たちが多く寄せられました。
サラさんと同じ境遇の艦娘なのか、単に興味を持っただけなのかはわかりませんが・・・
ローテーションの日、今回は空母のグラーフ・アクィラさん、重巡のプリンツ・ザラさん、戦艦のリットリオ・ローマさんが
この鎮守府への着任を要望しました。
しかし、司令は相変わらず・・・
「オレはいらない。鎮守府には霧島と蒼龍がいるし、空母と戦艦合わせて8人はいる。 十分すぎる戦力だ。」
と言って、皆の要望を一蹴りしてしまいました。
私としてはもう少し、増やしてほしいのですが・・・
それでも、着任したいと言う要望が後を絶ちませんから凄いことです。
・・・・・・
最近サラさん含む皆が私にやたら質問してきます。
主な質問は「提督とどこまで親密なの?」や「一番提督といる時間が長いんだからやることやっているんでしょ?」・・・等。
ビスマルクさんなんて直球で「キスより先は?」と聞いてくる始末・・・
私はあまり破廉恥な事を言いたくはないのですが・・・
ただ皆の意見を聞く限り、「キスで止まっている」ってことですよね? まだまだ司令にお近づきになるのは当分先の事ですね。
私は一応「キスの次のステップ」には行ってますが・・・それがなかなか達成できません。
それさえ超えれば、晴れて「夜伽」ができるようですが・・・私の力ではまだ達成まで行かないようです。
・・・あら皆さん、聞いていたんですか?
え? キスの次は何かって? それは皆さんで確かめてください。
・・・・・・
「提督! また海外艦娘着任を拒否したんですって!」
朝からビスマルクさんが怒り心頭です。
「戦力が整っていいじゃない! 向こうもわざわざこの鎮守府に来たいって行ってるのにどうして断るのよ!」
「別に、いいじゃないか。 それとも、お前は多い方がいいのか?」
「当り前じゃない! その方が休みも増えてこっちとしてはその方が楽なのよ! 毎日、戦艦・空母はフルで出撃してるでしょ?
時には休息も欲しいのよね・・・あなたは女の気持ちが本当にわからないのね!」
「別に・・・お望みなら増やしてもいいが、本当にいいのか?」
「・・・何がよ?」
「艦娘が増えるってことは、戦力が上がる分にはいいが・・・それ以上に相手に対する気遣いや評価も必要だってことだ。」
「・・・・・・」
「そうなると、お前に対しての気遣いも減るし、評価も相手の方が良かったら旗艦が変わるかもしれないぞ?」
「なっ!?」
「それでもいいと言うなら、今着任希望の海外艦娘の戦艦2人を連れてきてもいいが?」
「ううっ・・・そうね・・・提督がそこまで言うなら・・・もう少し・・・このままでもいいわ。」
「・・・・・・」
さっきまでの威勢はどこに行ったのか、ビスマルクさんは急におとなしくなりました。
ビスマルクさんもああやって言いますが、結局は「もっと構って欲しい」を遠まわしに言っているだけなので、
司令はそれを見越しているんですよね・・・
結局、海外戦艦2人の着任希望も司令は却下したとか・・・
・・・・・・
「今日からこの鎮守府に新たな艦娘が着任した! 皆仲良くしてやってくれ!」
鎮守府の艦娘達からの要望とローテーション側の艦娘の懇願で特別に着任することを許可しました。
一応新艦娘着任と言う形になりますので、歓迎会を行うことになり、司令と私で買い出しに行きました。
歓迎会となると、今まで飲まなかった子達も間に入るようになり、今夜の歓迎会(飲み会)は大賑わいでした。
当然ながら、お酒を飲むと本音が出ますよね?
「提督ったら~ああ見えて結構甘えん坊なんですよ~・・・この前も私に甘えてきて~・・・てへへ~♪」
村雨さん・・・普段と飲み会でのギャップが違い過ぎ!
「うぃ~っ・・・だからぁ! 私、大鳳は!」
遠くでやたらと叫ぶ大鳳さんも目立ちます。
「よぉ~っし! このアイオワ! いい気分になってきたから! 脱ぐわ!!」
と言って、普段から露出の激しいアイオワさんが脱ぎ始めました・・・ちなみに誰も止めません。
司令は相変わらず静かです、むしろ「賑やかでいい」と喜んでいるようです。
「提督、一杯どうぞ♪」
サラさんがお酒を手に近づいてきました。
「ああ、ありがとう。」
注いでもらって一気に飲み干す司令、サラさんはそれを見て・・・
「ふふ・・・見事な飲みっぷり! ささ・・・もう一杯!」
どうやら酔っている様子・・・サラさんは普段と比べると・・・お調子者になっています。
「提督~・・・うふふ・・・私のスタイル・・・どうですか~・・・ステキでしょ? うふふ・・・」
「・・・・・・」
サラさん・・・完全に出来上がってしまったようです。
「うむ・・・賑やかでよろしい! さと、オレはと・・・」
司令が席を外した・・・ああ、もう深夜になりますね・・・
「霧島、後は頼む。」
そう言って司令は席を外しました。
結局、深夜まで飲み会が続き、ほとんどの艦娘が二日酔いになったのは言うまでもありません(当然私も)。
・・・・・・
「ただいま。」
提督が深夜副業から帰還し、執務室に入る。
「・・・・・・」
朝だというのに誰もいない・・・早朝出撃? もしくは遠征?
「・・・・・・」
提督は食堂に立ち寄る。
「はぁ~・・・」
提督が見た光景・・・昨日の飲み会で酔いつぶれて爆睡している艦娘たちの光景が・・・
「おい、起きろ! 仕事だぞ!」
各艦娘に言う提督。
「おい、村雨! 何スカートめくったまま眠ってるんだ? はしたないぞ!」
「う・・・う~ん。」
「おい、アイオワ! いつまで裸のままでいるんだ? さっさと服を着ろ!」
「う~ん・・・頭が・・・」
「サラ! お前もお尻丸出しで寝ているんじゃない! せっかくの魅力が台無しだぞ!」
「うううっ・・・あ、頭が・・・」
「そして・・・霧島! お前が爆睡してどうするんだよ!」
「あ・・・司令・・・いたたた。」
「お前ら・・・早く支度しないと減給だ!!」
提督の号令と共に各艦娘は急いで支度するのであった。
・・・・・・
「よし、今日はこの海域の制圧、そしていつもの遠征! 皆、出撃せよ!」
「了解しました!」
今日も一日のんびりのようで忙しい鎮守府の生活が始まるのであった。
「鎮守府にサラトガがやってきた。」 終
皆も何だかんだと悪いことを
してるんだねえw
そういう所だけ一致団結出来るところが
素敵だw
爆弾を加工して送り返して上げよう。
勿論偽装工作も忘れずに行い。
自業自得の最後をプレゼント
外道に相応しいグッドな最後。
しかし彼の背中は任せるに足るものは。
三笠くらいしか見つからないなあ。