「ある艦娘たちの日々」
また出張を依頼された提督・・・今回の場所は一筋縄ではいかない?
上からまた依頼が来た、しかも今回の場所は一筋縄ではいかない・・・と。
質問しても詳しい情報を教えてくれず、「行ってみればわかる・・・貴君はどのように対処するか。」だけであった。
・・・・・・
目的の場所は・・・海から遠く離れ、山奥の中に位置して、周りには何の施設もなくまさに「孤立した施設」であった。
「・・・・・・」
扉を開けると、空母の艦娘が出てきて「お待ちしておりました。」と言葉遣いは丁寧である。
「提督のお部屋はここになります。」
部屋に案内され、提督はしばしの休息を取る。
この施設では、出撃や遠征等は一切ない。 資金は上から月に一定の額を支給されて彼女たちは暮らしていた。
前に行った事のある「障害艦娘施設」とは違って、艦娘たちに特別問題があるわけではなく、普通に命令すれば
素直に従ってくれる艦娘たちである、一体何が問題なのか・・・
「・・・・・・」
とりあえず、施設内を歩いてみることにした。
・・・・・・
廊下を歩いていると、
「あ、司令官さん・・・お疲れ様です。」
重巡の鳥海が挨拶をしてきた・・・至って普通の光景だ。
食堂に寄ってみると・・・
「あら、初対面ですね・・・今日ここに来られましたか?」
戦艦の比叡が話しかけてきた。
「ああ、短期間だが少し厄介になる・・・よろしく。」
軽い挨拶を済ませて、食堂から出る。
各艦種の艦娘寮に行ってみると・・・
「あら、提督・・・どうしましたか?」
先ほど案内をしてくれた空母の翔鶴が心配になって聞いてくる。
「問題ない、少し散歩しているだけ。」
と言って、その場から去る。
「・・・・・・」
部屋を覗くと、
「はい、響の負け~!」
駆逐艦の暁と響が遊んでいた。
「! 司令官! 開ける時はノックぐらいしてよね!」
「・・・悪かった。 以後気を付ける。」
怒られてしまい、提督は扉を閉める。
入浴場を見ると・・・誰かが掃除をしているようだ。
「・・・・・・」
そこには、五月雨と涼風がいて掃除なのか遊んでいるのかがわからない光景であった。
「滑って転がらないようにな!」
2人が気づいて敬礼をしていた。
・・・・・・
翌朝、朝礼室で皆に挨拶をする。
はっきり言うと・・・この施設にいる艦娘たちは全員普通である。
特別精神に異常があるわけでもない、どこか体が欠損しているわけでもない・・・
会話は普通で受け答えもきちんとしている、誰が判断してもほとんどが「問題ない。」と言うだろう・・・
そう・・・ほとんど問題ないのだが・・・ただ1つ問題があった。
上が詳しく言わなかった理由がよくわかる。
比叡に鳥海に暁、響・・・皆自分の鎮守府にいる艦娘・・・つまり、ここにいる艦娘たちは「2人目以降の艦娘」である。
この世界では、建造を行うことを禁止されている(2人目以降は原則解体するため、禁止になった)が一部の提督が
秘密裏に建造していることを最近になって知り、その提督が裁判にかけられたところである。
建造された艦娘は解体されるのが原則であるが、あくまで「建造された直後」か「大破等で意識が無い等」の時である。
建造されてしばらく時間が経った場合は艦娘側が自我を持ち、拒否してしまうのだ。
結果、この場所に解体しきれなかった艦娘たちを保有する施設が建造されたのであった。
もちろん、ここにいる艦娘たちも自分たちがどんな境遇なのかを分かっているようだが、誰も口に出さない。
ここに出張しに来た提督の目的は全員同じで、「解体」の説得で来ていたからのようだ。
結局説得は出来ず、今度はオレの所に回ってきたということになるのだが・・・
要は・・・この子達を「解体」させたいのか、上層部の人間どもは・・・
「・・・・・・」
別に「解体」しなくてもいいのでは? と思った提督。
「解体しなくても、彼女たちにもできることはあるはず。」
そう思いつつ提督は部屋で考え続けていた。
・・・・・・
翌日、提督は何かを思いついたようで部屋から出て行く。
廊下で翔鶴と会う。
「おはようございます・・・昨日はゆっくり眠れましたか?」
普段と変わらずの会話・・・提督は、
「これから食堂で朝食を食べるけど、翔鶴も一緒にどうだ?」
普通に言葉を返した。
「提督と? 提督がよろしいのでしたら、翔鶴は喜んでお受けいたしますわ。」
そう言って2人は食堂に向かって行った。
食堂に着くと、先客がいて提督は「おはよう!」と言う。
気づいた艦娘たちが敬礼して「おはようございます!」と言ってから座る。
提督と翔鶴が朝食を食べ始めて・・・
「それで、提督。 この施設にやってきた理由ですが・・・」
「別に・・・特に理由はない。 上の依頼で来ただけ、詳細は聞いていない。」
軽く返して、
「そ、そうなんですか?」
と驚く翔鶴。
「・・・何か言いたそうだな、素直に言ってくれるとありがたいけど?」
「・・・・・・」
翔鶴は無言のままだ。
「まぁ、別に無理に言う事はない、言いたい時になったら言ってくれればいい。」
と、提督も詳細を聞かなかった。
・・・・・・
それ以降も、提督は同じ態度で接した。
提督がここに来た理由を艦娘たちはわかっているが、当の提督は何も言わず施設で普通の生活をしていた。
全く何も言わないため、一部の艦娘が自分たちから言おうとしたが、提督はそれを見据えているのか「どうした?」と
答えるが、皆そこで何も言えずに終わってしまう、そんな生活がずっと続いた。
・・・・・・
「今日の昼食は・・・牛丼、なかなかおいしそうだ。」
提督は相変わらずの態度で、艦娘達も次第に不安になって行く。
「・・・・・・」
翔鶴が提督をずっと見つめていた。
・・・・・・
提督の思惑がわからず、艦娘たちも距離を置いていたが、ある日の事、
「提督、お話があります。」
翔鶴に呼ばれた。
「ここではなんですから、2人で話せる場所へ行きましょう。」
そう言われ、翔鶴と一緒に部屋に向かった。
・・・・・・
「お茶を沸かします、少しお待ちください。」
場所は翔鶴の部屋・・・部屋の物は綺麗に整理されていて、いかにも翔鶴らしいと感じる光景だ。
「綺麗な部屋だな。」
「そうですか?」
翔鶴は首を傾げ、
「オレも用があって、各艦娘の扉を開けるから部屋内を見ることがあるんだが・・・暁たちは4人で共同生活しているからか、
その辺に荷物が積まれていたり、地面に置いたりしていてとても綺麗とは言えない、末っ子が片づけをしているのも何度か
見ているかな。」
「・・・・・・」
「比叡はお察しの通り、金剛の写真が壁中に貼られていたり・・・鳥海は摩耶と一緒に暮らしているから、2人の机の整理の差が
歴然としていてわかりやすいよ。」
「・・・・・・」
「別に評価とかそんなんじゃなくてな・・・やっぱり普段から整理している子は頭の回転が速いんだなと思うよ。」
「・・・・・・」
提督は気づかずに言ったのか・・・それともわざと言ったのか・・・と両者の気持ちを持つ翔鶴。
「でも、それ以上に1人1人個性があって面白いかな~。」
「・・・そうですか。」
提督の前に入れたばかりの緑茶が出された。
「ありがとう。」
提督がお茶をすすり・・・
「それで・・・お話なんですが・・・」
「ああ・・・何だっけ?」
「・・・私たちを解体するよう説得しに来たんですか?」
「・・・・・・」
「わかっています、知らないふりをしていても何度も提督たちがこの施設に来ていますので、私たちには通用しません。」
「・・・・・・」
「私たちは受け入れるつもりはありません、今まで通り生活をしたいだけです。」
「・・・・・・」
「私たちが一体何をしたって言うのでしょう? 提督たちが好きで建造した結果、私たちがこの世界に生を受けただけで
何の悪行もしていません、それなのに私たちを責めるのですか?」
「確かに・・・理不尽だな。」
「この施設の援助を取りやめる、と脅しても別に私たちで働くこともできるんですよ・・・それなのに解体なんてあんまりではないですか?」
「確かに・・・酷過ぎるな。」
「・・・・・・」
自分の意見に対してうんうんと言葉を返して来るので、
「提督はどうお考えなのでしょう?」
「? オレ?」
「先ほどから提督は何も言いません・・・それどころかこの施設に来た時からほとんど何も言いませんでしたよね?
一体何を考えているのでしょうか?」
「だから、何も考えていない・・・翔鶴の言う通り、上は理不尽で都合の悪いことは無視する酷いやつらだな、と思っている。」
「それはつまり・・・私たちに対して同情していると言う意味なのでしょうか?」
「いや、同情じゃない、オレにとってはどうでもいいだけ。解体する理由は特にないし、害があるわけでもない。
上が援助を取りやめても、翔鶴たちは自分たちで働こうとする意欲も感じられる・・・だからそれでいいんじゃない?
と、思っているだけなんだけど。」
「・・・・・・」
「変わった提督。」と思う翔鶴。
「まぁ、何も考えていないわけではないけど。」
「・・・・・・」
「1つ聞きたいのだがいいかな?」
「・・・どうぞ。」
「ここにいる艦娘たちは、出撃や遠征をしたい人間はいるのかな?」
「・・・・・・」
「したい、したくないでオレの結論は変わるのだけど・・・どうなんだろう?」
「・・・・・・」
話題が変わり、困惑する翔鶴・・・でも、結論は分かり切っていて、
「もちろん・・・この施設にいる皆は・・・出撃や遠征をしたいはずです! 私たちはそのために存在しているのですから。」
「・・・そうだよね・・・ならどうしようかなぁ・・・」
また考え始める提督。
「とにかく、私たちは説得に応じる気はありませんので・・・それがわかれば早々にお帰りなった方がいいのでは?」
「ああ、オレはもう少しこの施設に留まっているよ・・・考えがまとまったら素直に出て行くから。」
「・・・・・・」
「変な提督。」と思った翔鶴だった。
・・・・・・
彼女との会話後も、これと言って目立った行動をせずにお互い干渉しない生活が続いた。
・・・・・・
・・・
・
1週間が経ったころ、
「オレは帰るよ。」
と、提督が帰る支度を始める。
「お疲れ様でした、提督。」
見送ってくれたのは翔鶴だけで、他の皆は施設内に留まったままだ。
「もう来ることはないかな・・・もしかしたらもう1回来るかもしれない。」
「そうですか・・・何度も言いますが、私たちは・・・」
「知ってる・・・そんな暗い話をするために来るわけじゃない。」
「・・・・・・」
「・・・それでは、世話になった・・・ありがとう。」
提督は礼をして、施設を後にした。
・・・・・・
その後、提督は報告書を上に提出、再度出張に向かう旨とある疑問を尋ねた。
「・・・・・・」
答えを聞いて、
「・・・辛いな。」
提督はそう呟いた。
・・・・・・
「・・・・・・」
翔鶴は施設の周りの草を抜いていた。
「・・・あら。」
翔鶴の目に映ったのは・・・
「提督? 本当に来たんですね・・・」
二度と来ないと思った提督が再び現れて・・・
「何度も言いますが、私たちは断固として・・・」
「その話をしに来たわけじゃない・・・お前に話があってきた。」
「? 私に、ですか?」
翔鶴は首を傾げた。
・・・・・・
「あ、翔鶴さん・・・明日の食糧の発注の件ですが・・・」
鳥海が現れて、
「鳥海さんすいません、今から提督とお話がありますので・・・」
「・・・わかりました、では後で部屋に向かいます。」
そう言って鳥海は去ろうとしたが、
「鳥海、お前にも話をしたい、一緒に来てくれ。」
「・・・・・・」
何の話しかしら・・・よくわからないけど・・・
「はい・・・わかりました。」
鳥海も2人について行った。
・・・・・・
翔鶴の部屋について、
「いや~・・・いつ見ても綺麗だな、翔鶴の部屋は・・・」
「・・・・・・」
「鳥海の部屋も物が整理されているし、2人には関心させられる・・・オレの鎮守府の艦娘たちにも見習わせたいよ。」
「私の部屋・・・って見たのですか!?」
「見てないよ・・・オレの鎮守府にいる鳥海の部屋を見て言っただけ。」
「・・・・・・」
提督は普通に会話するが、鳥海にとって自分が2人目だと言う事実を言われて、心に残った。
「提督、鳥海さん・・・どうぞ。」
2人の前に緑茶が出されて、
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
提督が緑茶をすすり始めたところで・・・
「それで、提督・・・用件は何でしょう?」
「・・・・・・」
「焦らしても意味がありません、わかっています。」
「・・・・・・」
「何度も言いますが、私たちは・・・」
「だから、その話をしに来たわけじゃない。 さっき言ったはずだが?」
「・・・では、一体何の用があってここに?」
「オレの口から言ってもいいのか? それとも、翔鶴が直接言った方がいいんじゃないか?」
「・・・言っている意味が分かりません。」
「隠したって無駄だよ、翔鶴がオレがここに来た目的を悟っている様に、オレも翔鶴の隠し事を知ってここに来たんだ。」
「? 翔鶴さんの隠し事?」
鳥海は翔鶴さんを見る。
「・・・・・・」
翔鶴は無言のままだ。
「言わないならオレが言うけど・・・いいのか?」
「・・・・・・」
「・・・そうか、ならオレが言おう。」
そう言って提督は口を開く。
「翔鶴、お前は「1人目の翔鶴」だろ? どうしてこの施設にいるんだ?」
「・・・・・・」
「えっ!? そうだったんですか?」
鳥海は驚きを隠せない。
「この施設は「2人目以降の艦娘」が住む場所だろ? どうして1人目であるお前がここに住んでいるんだ?」
「・・・・・・」
「理由があるからだろ? まぁそれもわかっているからここに来たわけだが。」
「!?」
「もう一度言うけど・・・オレの口から言ってもいいのか? それとも、翔鶴・・・自分の口から直接・・・」
「・・・やめてください。」
翔鶴が口を開く。
「お願いです・・・それだけは言わないでください。」
「・・・・・・」
「私が出て行けば済むこと・・・今すぐに支度をします。 お願いです、それ以上の事はもう・・・」
「何を隠しているんですか?」
鳥海が口を開いて、
「どういう事です? どうして翔鶴さんは「1人目」なんですか? どうして今まで黙っていたんですか!」
「鳥海さん・・・」
「同じ境遇で同じ辛さを知っていたからこそ、分かり合えたのに・・・翔鶴さんはただ私たちに同情していただけなんですか?
自分は「1人目」だから安心していたんですか? 私たちの事を結局見捨てるつもりだったんですか!?」
「・・・・・・」
「答えて下さい! 翔鶴さん! それにまだ隠し事があるって・・・一体何ですか!?」
「・・・・・・」
「答えて下さい! 翔鶴さん・・・答えて!」
「・・・あの~。」
2人の間に提督が入り込み、
「話を続けてもいいだろうか?」
「・・・はい、どうぞ。」
鳥海が落ち着いたところで・・・
「翔鶴は言わないようだから・・・オレの口から言おうか。」
「・・・・・・」
「隠していても結局わかる事だ・・・素直に打ち明けた方が身のためだ。」
「・・・・・・」
「実はな・・・」
「・・・・・・」
翔鶴は覚悟を決めた・・・が、
「この施設は放棄されるようなんだ。」
「えっ!?」
鳥海は驚く。
「上が「もうこの施設の援助を取りやめる」と言ってきた・・・もうこの施設は放棄されたも同然なんだ。」
「そんな・・・」
「上は「放棄した」が、オレとしてはここにいる艦娘たちを引き取りたいと思っているのだが?」
「えっ?」
「オレの鎮守府には置けないが、ある近海付近に新しい鎮守府があってな・・・お前たちはその鎮守府で生活して
もらうことになる・・・それでいいだろうか?」
「・・・・・・」
「その鎮守府に着任する提督は信頼できる・・・そいつにお前たちを預けて出撃や遠征をやって戦果を取ってもらいたい・・・ダメかな?」
「・・・・・・」
「翔鶴が隠していたことはそれなんだ・・・放棄される事実をオレに打ち明けてきてな・・・」
「・・・・・・」
「そこで、そのことを内密にして今日まで黙っていたんだ、騙すつもりはなかったけど、「皆に普通の生活をさせたい」という
翔鶴の願いにオレが動いた・・・本当にそれだけなんだ。」
「・・・・・・」
「どうだろう・・・出撃や遠征をする意欲があるなら、この頼みを受け入れて欲しいのだが・・・」
「・・・そうだったんですね。」
「・・・・・・」
「私たちのために・・・ですか。 確かにそれを決める覚悟は「1人目」じゃないとできないかもしれませんね・・・」
「・・・・・・」
「わかりました・・・今の話を皆に伝えます・・・恐らく、皆賛成すると思いますが。」
「それはありがたい・・・でも、翔鶴が隠していた事実は伏せて欲しい、彼女に悪気はなかったんだ。」
「・・・わかりました。 司令官さんの命令ですから・・・その事実は伏せておきます・・・失礼します。」
そう言って鳥海はその場から去った。
・・・・・・
後に、鳥海の報告によって施設の艦娘たちは全員鎮守府に着任することを志願。
提督から着任依頼書と地図を受け取った後、鳥海たちはその鎮守府に向かった。
翔鶴は皆と一緒に行かなかった・・・いや、行けなかった・・・
「・・・・・・」
「上手くごまかせたな・・・内心気づかれるかと思っていたからな。」
提督が笑いながら言う。
「・・・・・・」
翔鶴は無言のままで、
「お前はどうする? 他の鎮守府に行きたいならオレが当てを探すけど?」
「・・・・・・」
「何か言いたそうだな・・・まぁ、言いたいことはわかるけど。」
「・・・・・・」
「もう終わったことだ、お前が思っていることはあの子たちの耳に届くことはない、それに・・・
お前が悪いわけじゃない。」
「・・・・・・」
「もしかして、あの施設に留まっていたのは自分の罪悪感故の行動か?」
「・・・・・・」
「まぁいい、オレは帰るよ。 翔鶴も早く他の鎮守府に着任して普段の生活に戻れ。」
そう言って提督は翔鶴と別れた。
・・・・・・
・・・
・
翔鶴は以前・・・ある提督の秘書艦を務めていた。
その提督は、自分が欲しい艦娘が手に入らない腹いせに、規律を破って建造に手を出した。
結局本人が欲しい艦娘は手に入らなかったようだが、建造で生まれた艦娘たちを地下に閉じ込めて監禁していた。
鎮守府の艦娘の匿名の訴えにより、提督は裁判にかけられ、有罪が確定し、今も収容所で刑期を受けている。
上層部は建造で生まれた艦娘たちを一時的に保有するため、山奥に施設を建造、 艦娘たちはしばしの生活を過ごす。
その施設の主任を自ら志願したのが翔鶴である。提督が行った悪行とそれを止められなかった自分のせめてもの
罪滅ぼしとして、皆を支える事にしたのである。
・・・・・・
その後の翔鶴の行方は不明である。
轟沈艦娘記録に翔鶴の名前が載っていないことから、まだ生きていると思われる。
提督が他の鎮守府の着任記録を見たが、どの鎮守府にも翔鶴の名前はなかった。
・・・・・・
月日が流れ・・・
無人となった施設は上の指示により、解体された。
その後の艦娘たちの消息については提督は言及されず、事なき終えた。
鳥海たちはある鎮守府で艦娘として戦果を挙げ、新米提督を支えている。
翔鶴はその後、どうなったのかと言うと・・・
・・・・・・
「提督、お疲れ様です。」
仕事中の提督に緑茶を出されて、
「ありがとう。」
提督はお茶をすすりながら、
「霧島、明日の出撃の編成だが・・・」
提督が霧島と話し合い始めて、
「それでは、失礼します。」
彼女は執務室から出て行く。
「・・・・・・」
そう、彼女は翔鶴・・・この鎮守府に着任していたのだ。
提督と別れた後、翔鶴はしばらく1人で放浪していた・・・彼女は鎮守府への再着任を拒んでいた。
過去の罪悪感からだろうか・・・再着任を拒んでいた翔鶴だが、提督が鎮守府に来るように要望。
「どうして私なんですか?」
と尋ねると、
「お茶の入れ方が上手いから。」
と、返した。
「それに、本当に自分のしたことに責任を感じているなら、これから自分が何をするべきかを
見つけるのも悪くないと思う。」
「・・・・・・」
「だからはい、これ。 着任許可書・・・もし、また艦娘としてやり直す気があるなら、オレの鎮守府にでも来い。」
そう言って提督はその場から去った。
・・・・・・
翔鶴は考えた末・・・決意したのか、
「もう一度やり直したい、私をこの鎮守府に働くことを許可してください。」
と、提督がいる鎮守府への着任をしたのだった。
・・・・・・
翔鶴がこの鎮守府に来てからしばらく経った。
戦果も取れ、鎮守府の皆とも仲良くしている。
ただ彼女には、過去の罪悪感を忘れる覚悟はまだできていないようだ。
ある日の事、
「提督、お呼びでしょうか?」
呼び出しを受け、執務室にやってきた翔鶴。
「お前に会いたいと、外で人が待っている・・・行ってきてくれ。」
「・・・わかりました。」
翔鶴は外へと向かう。
・・・・・・
外で待っていたのは・・・
「鳥海さん・・・」
あの時、施設にいた「2人目」の鳥海だった。
「翔鶴さん、お願いがあります。」
鳥海が口を開き、
「私のいる鎮守府に来て欲しいのです!」
予想外の言葉だった。
「・・・・・・」
「今、私の鎮守府には空母の方がいません・・・何度も募集を掛けましたが、誰も来てくれません・・・
翔鶴さんが良ければ、今すぐにでも鎮守府に来て欲しいのです!」
「・・・でも、私は・・・」
過去の事が頭によぎる。
「事情はここの司令官さんに聞きました。」
「えっ!?」
翔鶴は驚く。
「でも、私は恨んでいません・・・もし、私が翔鶴さんと同じ立場だったら、私も同じような事をしたはずです。」
「・・・・・・」
「司令官さんに逆らえず、その結果を全て自分のせいにして今まで過ごしてきたんですよね? 私はそんな翔鶴さんの気持ちを
全く知らなかったです・・・本当にごめんなさい。」
「・・・・・・」
「お願いします、翔鶴さん! もし、まだ私の事を信じてくれるなら・・・鎮守府に・・・いえ、私たちをもう一度、助けて下さい!」
「・・・・・・」
翔鶴は迷った・・・でも、これこそが自分が望んでいた過去の罪滅ぼしになるのではと・・・
「・・・提督に頼んできます・・・少し待っていてください。」
翔鶴は執務室に向かった。
・・・・・・
「提督! お話があるんですが・・・」
翔鶴が打ち明けようとしたところで、
「行け、お前が決めた事なら・・・」
「えっ?・・・提督、もしかして・・・」
「今日からお前は鳥海がいる鎮守府の艦娘だ・・・したがってこの鎮守府の艦娘ではない、さっさと出ていくことだ。」
「提督・・・」
「どうした? 鳥海が待っているんだろう? 早く行くんだ!」
「・・・ありがとうございます!」
提督に一礼して翔鶴は鎮守府を出た。
「・・・・・・」
提督は去って行く翔鶴を見て・・・
「さようなら、翔鶴・・・そして、やっとお前の居場所を見つけたな・・・」
提督は2人を見送った。
・・・・・・
それから、翔鶴は鳥海がいる鎮守府に着任・・・
過去の罪悪感を忘れられたのか、常に戦果は上位を維持し、皆を支えた・・・
その後、鳥海の代わりに翔鶴が秘書艦を担当・・・
提督と鳥海たちを見守りつつ、日々の執務に励んでいた。
「ある艦娘たちの日々」 終
続編は「ある艦娘たちの日々」2 にて。
※余談ですが、物語に出てくる「障害艦娘施設」は前に書いた「提督と蒼龍」改から来ています。
興味があれば読んでください。
敵で有るわけでもないしねえ。
仮面でも着けて赤い人の真似でもして
遊撃及び撹乱。そして補給線の維持など
後方支援部隊として活躍して貰おう。
補給線の維持は部隊の生命線。
其処をカバーしてくれるなら頼もしい。
まあ監禁提督の気持ちも理解できる。
何度も何度も結晶割っても出ないときはとことん出ないwしかしだからと言って
折角の戦力を活用せんのもねえ。
来てくれた子を大事に育ててからまた結晶をパリンすると意外と天から来るものだw