2017-05-31 12:14:29 更新

概要

「提督と海風」で起きた江風側の視点から見た回想です。


ブラック鎮守府から抜け出し、海風の姉貴と一緒に新しい鎮守府で生活することになった。


姉貴は提督の事を信頼しているようで、笑顔で会話をしている光景をよく見る。


姉貴の笑顔をよく見るようになったなぁ・・・





あの時・・・


ブラック鎮守府から一人抜け出したあたしは、他鎮守府に中途着任したけど、待遇がひどかった。


暴力はなかったけど、中途着任という理由で何かしら文句を言われた。


駆逐艦だから逆らわない、拾ってもらったのだから文句は言えないだろうと思っていたのか、


遠征・出撃で失敗する度にあたしだけ責められた。




ああ・・・ここもあそこと何ら変わらないじゃないか・・・




あたしはまた鎮守府から出た、そしてまた違う鎮守府に行ったけど・・・


鎮守府に2度着任していて無断で退去していることが原因で、「着任拒否」になった。


それからはずっと外で寝泊まりしていた。


その生活が数日続いた後に、海風の姉貴がこの鎮守府に着任した話を聞いたんだ・・・


あたしはなぜ姉貴が着任することになったのかわからなかったけど、ただ姉貴を助けたかった。


もう前の鎮守府みたいに暴力を受ける光景を見たくなかった、そう思ったら・・・


あたしは鎮守府に無断で入り、姉貴を無理やり連れだしていた。


その結果、姉貴は負傷・・・あたしは混乱してしまった。


敵が攻撃する直前に・・・秘書艦の霧島さんが助けに来てくれた。


救援が来てくれて・・・助かった・・・もう大丈夫なんだと心から思った。


でも、提督はあたしたちを助けようとしなかった。


その時、理由はわからなかった。 中途着任の艦娘の待遇の問題なのか、単に助ける気が無いだけなのか。


特別頭が回るわけでもないし、その時は混乱していたから考える余裕はなかった。


あたしが感じたのは、「また見捨てられた」の気持ちがとても強く、無線で聞こえる提督に訴えた。




結局あんたらもあいつらと同じだよ!!




その後の提督の言葉にあたしは言葉を失った・・・


あたしは暴力を受けるのが嫌で脱走を考えた、とにかく早く出たかった・・・そのことで頭がいっぱいで・・・


提督の言う通り、姉貴の意見なんか聞かず早くここから出ることしか考えていなくて・・・


あたしが暴力を受けていた時は姉貴が体を張って守ってくれた・・・でも、代わりに姉貴が暴力を受けて


いた時はあたしは守れなかった・・・怖かった・・・またあたしに暴力が来ると思って怖かったんだよ。


結局、自分だけが逃げることしか考えていなかったんだ・・・


提督が言っていた・・・あたしの自己満足だって。


文句は言えなかった・・・だってその通りだから・・・


そして行く当てもなく海上を武器も持たず進んだら、敵の攻撃に遭い姉貴が負傷・・・全てあたしのせい。


提督が説明した後、霧島さんが去ろうとしたときは「自業自得の結果」と思った。


でも、今のあたしの力では姉貴は助けられない、だからあたしは自分がどうなってもいいから助けてほしいと必死に訴えた。


重労働でも何でもやるからとにかく姉貴を助けてほしい! ただそれだけ・・・


提督の指示通りに応急処置をして姉貴は無事に鎮守府で治療を受けられた・・・ほんとによかった。


後は姉貴を助けるために自ら言った事をやらなければならない。これから終わりのない労働をさせられるのか


姉貴にかかった治療費を一生かけて払い続けるのか・・・でも、


姉貴があたしを庇った、「全て私のせいなんです」って・・・


違うよ姉貴、全部あたしが悪いんだよ・・・って言おうとしたけど、姉貴に止められた。


姉貴は最後まであたしを守ろうとした、あたしは何で姉貴を裏切ることをしてしまったんだろう・・・


そう思ったら、自分が情けなくなった・・・


提督は「治療費がかかったから2人で働いて返せ」 とか言ってあたしと姉貴を着任することを許可した。


後になって知ったけど、あたしと姉貴を一緒に住まわせるための口実だったとわかった・・・


治療費の詳細は言わなかったし、中途着任なのに愛情がこもった接し方だったし・・・


霧島さんからは、ある艦娘を守るために1億円使った話も聞いた。


どれだけお人好しなんだよ!? と思ったけど、あたしが言ったら提督に怒られるよなぁ・・・


姉貴が「もう一度信じて、また一緒に暮らそう」と言ってくれて、あたしは姉貴に「ごめん」と言って


この鎮守府で暮らすことになった。




あれからしばらく経って、あのブラック鎮守府はどうなったのか・・・


噂では、上にも見放され、資金が枯渇して鎮守府は閉鎖、提督は退任。


見て見ぬふりをしていた戦艦・空母の艦娘さんたちは駆逐艦たちの匿名の訴えで、


「着任拒否」にされて路頭に迷っているとか・・・


・・・後で知ったけど、姉貴はあの鎮守府から売りに出されてたことを聞いた、途端に自分の愚かさに気付く。


その姉貴を引き取ってくれたのが今の提督だった。


本当なら感謝するはずなのに、あたしは何でぶつかってしまったんだろう・・・


考えれば考えるほど自身の未熟さに気付かされる。


・・・・・・


まぁ、考えても仕方ないか。


過去の過ちを考えるより、今どう進むか考えるべきだろう。



間違いは正せばいい! 失敗したら次は成功を目指せばいい!



提督から教わった言葉・・・この響きが妙に気に入っている。


「江風、そろそろ出撃よ。」


姉貴に言われ、あたしは艤装を装着する。


さてと・・・ほんじゃ行きますか。


あたしは手を上げて・・・






さあ! 張り切っていくよ! 姉貴と皆! 出撃だ!!







あたしは今日も姉貴たちと一緒に海を駆け巡っている。








「提督と江風」 終


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