「瓶の蓋が開かないです!!」
朝潮が何かの瓶を持って来て・・・
「蓋が開きません! どうすればよろしいでしょうか!?」
駆逐艦の朝潮からの突然の質問、
「え~っと・・・どうすればいいって言われても。」
朝潮の言葉に時雨は困惑する。
「と言うか、朝潮。それって中身は何? 見せてくれない?」
白露の願いに朝潮は躊躇う事無く、瓶を渡す。
「・・・あれ、これって最近テレビでやってた”ご飯のお供第1位”に輝いた佃煮じゃん!」
白露は中身を凝視して、
「これ・・・結構高いって聞いたけど、いくらしたの?」
「はいっ! 確か、1つで1000円でした!」
「1000円!? これ1個で! 高過ぎだよ!」
白露は慎重に朝潮に瓶を返す。
「どうしても食べて見たくて、少ない資金から上手く工夫し、売り切れが続いてもじっと機会を待ち・・・
そして昨日! 近くのお店で、限定100食出る情報を知って朝の3時から並んでようやく買えました!!」
「・・・そ、そうなんだ。 良かったねぇ~。」
白露は朝潮の行動に感服する。
「じゃあ、その佃煮・・・とても美味しいっぽい~? 夕立、ご飯に乗っけて食べて見たいっぽい~♪」
夕立が間に入って来て、
「確かに僕も興味があるかな・・・ねぇ朝潮、瓶の蓋が開けられないんだよね?
じゃあ僕たちが蓋を開けられたら、その佃煮を少し分けて貰えないかな?」
時雨の提案に、
「はいっ! 構いません、ではお願いします!!」
朝潮は快く承諾する。
「じゃあ・・・まずはあたし、お姉ちゃんが開けて見るね!」
そう言って、片手で瓶を、片手で蓋を掴むと、
「行くよ!・・・ぬおおおおおお~~~~~!!!!」
思いっきり力を入れるも、蓋はびくともしない。
「はぁはぁ、何この蓋? 全然回らないんだけど!」
それでも、白露は何度も開けようと試みるも、
「手、手が痛い! あたしには無理!」
白露は降参する。
「何だよ白露、たかが瓶の蓋でしょ? こんな物も開けられないなんて・・・」
時雨は呆れて、瓶と蓋に手を掛けると、
「ふんぐ! んんんん~~~っ!!!!」
渾身の力で蓋を回そうとするも、びくともしなかった。
「な、何だいこの蓋? 全く動かないけど!!」
時雨でも回せられない、
「じゃあ今度は夕立がやるっぽい~!」
時雨から受け取って、駆逐艦の中で火力が最強の夕立が挑む。
「すー、はぁ~。 開くっぽい~!!!!」
時雨同様に、渾身の力で回して見るも、
「あ、あ、開かないっぽい~! 何で? それに手が痛いっぽい~。」
夕立ですら開けることが出来なかった。
「いっその事、瓶を割っちゃおうか?」
白露の言葉に皆「それは邪道だよ!」と言われ、怒られる羽目に・・・
・・・・・・
「どうしましょう・・・開けなければ食べられませんし。」
朝潮は途方に暮れている中で、
「あら、朝潮ちゃん。 どうしたの?」
目の前には空母の赤城と加賀がいて、
「赤城さん! 加賀さん! いい所に・・・2人にお願いがあります!!」
朝潮の期待が一気に高まる。
「? あらあら、私たちにお願いなんて・・・一体どうしたんです?」
赤城の質問に、
「この瓶の蓋を開けてください!」
朝潮が瓶を渡すと、
「あら・・・確かこれって!?」
瓶を見た瞬間、赤城の目付きが変わる。
「これはっ!! ご飯のお供第1位に輝いた佃煮ですよ、赤城さん!!」
加賀も乗っかって来た。
「はいっ! 限定で売っている店を見つけて朝の3時から待って、やっと1つ買うことが出来ました!」
朝潮の言葉に、
「あ、あらぁ・・・それは頑張ったわねぇ、朝潮ちゃん・・・じゅるり。」
赤城は朝潮の話などあまり聞いておらず、むしろ佃煮を凝視している。
「朝潮さん、蓋が開けられないのよね? もし、私たちが開けられたらどうしますか?」
加賀の質問に、
「はいっ! その時は赤城さんと加賀さんに中身を半分程分けても構いません!!」
朝潮の言葉に、
「そう、なら交渉成立ね! ごくり・・・」
赤城は涎を垂らし掛け、
「じゃあ・・・1航戦赤城! この蓋を見事開けて見せます!!」
そう言って、駆逐艦の時と同様に片手に瓶、片手に蓋を掴んで、
「ふんっ!! うぉ-------っ!!!!」
勢いよく蓋を回そうと試みるも、
「あ、開かない! そんな! 1、1航戦の誇りが・・・瓶の蓋すら開けられないなんて!!」
蓋を開けられらず、驚きを隠せない赤城に、
「では私が代わりに開けます! 1航戦加賀、行きます!!」
今度は加賀が渾身の力を入れて蓋を回してみるも、
「んぐぐぐぐ~~っ!!!! ・・・ぜ、全然回らない、そんなバカな!!」
加賀でも蓋を開ける事は叶わなかった。
「ああ、1航戦の誇りが瓶の蓋に負けるなんて・・・そして今晩の佃煮がぁ・・・」
急に2人は腰を下ろして、屍に近い表情をしたままブツブツ連呼し始めた。
「すいません、赤城さんに加賀さん! 他を当たってみます、では失礼します!!」
朝潮はそそくさとその場から去る。
・・・・・・
「どうしましょう、このままでは永遠に中身が食べられません。」
朝潮は廊下を歩いて行き、
「あっ、そうです! あの人なら!」
思いついたようで、朝潮は廊下を走って行く。
「ビスマルクさん、開けてください!」
ビスマルクがいる部屋を何度も叩く朝潮。
「あら、貴方は駆逐艦の・・・」
部屋からビスマルクが出て来て、
「はいっ、朝潮です!!」
朝潮は元気よく答える。
「ええ、知ってるわ。 それで、私に何か用かしら?」
と、朝潮の前に立つビスマルクだが、
「そうね、廊下で立たせるのも何だから、部屋に入っていいわよ。」
ビスマルクとしては珍しく、朝潮を部屋へと入れる。
「飲み物はオレンジジュースでいいかしら?」
「はいっ、ありがとうございます。」
朝潮はビスマルクからジュースを受け取る。
「また朝潮ちゃん・・・ビスマルク、また変な知識を植え付けてないでしょうね?」
部屋にはこれから飲み会であろうか、アイオワとサラトガが同席していて、
「違います、戦艦であるビスマルクさんに是非とも頼みたいことがありまして!」
「? 私に頼み事?」
ビスマルクは首を傾げて、
「この瓶の蓋を開けて欲しいのです!」
朝潮は持っていた佃煮の瓶をビスマルクに渡す。
「・・・何かしら? 何かの佃煮っぽいわね。」
ビスマルクは瓶の中身を見つめる。
「はいっ! ご飯のお供第1位に輝いた高価な佃煮なんです!」
「・・・そうなの? 私にはよく分からないけど。」
ビスマルクは佃煮に興味はないようだが、
「でも、「開けて欲しい」と言われたら断らないわけには行かないわね!」
「ビスマルクさん! 感謝します・・・では、お願いします!!」
朝潮の期待は赤城たちの時と比べて更に増す。
「それじゃあ、行くわよ!」
恒例の片手に瓶を持ち、片手で蓋を押さえると、
「ふん! んんんん~~~~!!!!」
戦艦らしく空母の赤城たちと違って、かなり強い力で回そうとしているのが分かるが、
「はぁ、はぁ、はぁ・・・何これ? 全然回らないんだけど!」
ビスマルクですら、瓶の蓋を開けることが出来なかった。
「ちょっとビスマルク、冗談でしょ? こんな小さな蓋を開けられないなんて。」
サラトガが呆れて、ビスマルクから瓶を受け取るも、
「んぅーーーーーーっ!!!! くぅーーーーーっ!!!! 何ですか、これ! 全くびくともしません!!」
サラトガもお手上げ状態、
「じゃあこのmeがopenしてあげるわ!」
もう1人の戦艦の艦娘である、アイオワが挑戦する。
「Let‘s go! んぎぎぎぎっ!!!!」
渾身の力で開けようとするも、アイオワの腕力ですら蓋が開かなかった。
「Oh! 何て頑丈な蓋ね~・・・本当にこの蓋、open出来るのかしら?」
仲間の駆逐艦から空母、更には戦艦の艦娘に試してもらっても開けられない瓶の蓋、
「ビスマルクさんとアイオワさんでも無理ですか・・・」
蓋が開かない事に朝潮はがっかりする。
「sorry! 力になってあげたいけど、私たちでは難しいわね。」
「構いません、手伝って頂きありがとうございました。」
朝潮はしょんぼりして、ビスマルクの部屋から出て行く。
・・・・・・
「どうしましょう、このままでは宝の持ち腐れ・・・いえ、大損ですね。」
朝潮が考えていると、
「空母や戦艦が無理なんですから、司令官では到底開けられませんよね?」
そう思うも、
「でも、もしかしたら・・・もしかしたら司令官なら開けられるかもしれません! 行きましょう、村雨さんの店に!!」
そう言って、朝潮は鎮守府から出て行く。
「いらっしゃいませ~♪ あら、朝潮さん。」
店の女将である村雨が席に案内する。
「あれ、白露さんに時雨さんたちも・・・食べに来たのですか?」
店内には白露・時雨・夕立がおり、
「違う違う! 妹の様子を見に来ただけだよ!」
長女の白露が説明する。
「成程! 確かに村雨さんは白露さんの妹ですものね!」
朝潮は納得する。
「そう言う朝潮はこの店に何しに来たんだい?」
時雨の質問に、
「あっ、そうだ。 司令官にこの瓶の蓋を開けて貰いに来ました!」
そう言って、白露たちが開けられなかった瓶を出す。
「えっ、まだ開けてなかったの!?」
白露たちは驚く。
「はいっ、あの後空母と戦艦の方にお願いしたのですが、誰も開けることが出来なくて・・・」
「そ、そうなんだ。」
朝潮と白露たちで会話する中、
「瓶の蓋? わざわざ蓋を開けてもらうためにこの店まで来たの?」
村雨が間に入る。
「はいっ! ただ司令官でも開けられるかどうか分かりませんが・・・」
少し不安になる朝潮に、
「じゃあ貸してみて、私が開けて見る。」
「村雨さんが? はぁ、別に構いませんが。」
そう言って、朝潮は瓶を渡す。
「ふ~ん、確かに中身は最近テレビに出てた佃煮ね。」
少し中身を見回した後、
「じゃあ、村雨が~開けてあ・げ・る♪」
自信があるのか、持ち方もこれまでの艦娘たちとは違う掴み方で、
「んんっ!! くぅ~~~~~っ!!!!」
渾身の力で回すとするも、
「あ、開かない! 何よ、この瓶の蓋は!!」
やはり村雨でも瓶の蓋を開けられなかった。
「村雨さんでも駄目ですか・・・」
朝潮の期待が一気に下がる中、
「何か楽しそうだね~。」
提督が裏口から出て来て、
「あっ、司令官! お疲れ様です!!」
朝潮は敬礼をする。
「おや、朝潮じゃないか・・・ここに来ているって事はまた何かのお願いかな?」
「はいっ、流石司令官! 読みが早いです!!」
そう言って、瓶を差し出し、
「この瓶の蓋を開けて欲しいのです!!」
「瓶の蓋を? そのためにわざわざ店まで? ふ~ん。」
提督は朝潮から瓶を受け取る。
「白露さんや赤城さん、ビスマルクさんにも頼んで見たのですが・・・誰も開けることが出来なくて。」
朝潮が説明する中、
「・・・・・・」
提督が瓶の周りを見回す、
「ああ、中身は佃煮ですよ? ほら、最近テレビで話題になったご飯のお供第1位の佃煮です!」
朝潮が説明を終えるころに、
キュッ!
何かの外れる音がした。
「ほら、開いたよ。」
提督は開いた瓶と蓋を朝潮に返す。
「す、凄い! 流石司令官です!!」
開いた事で、朝潮と周りにいた白露たちは大興奮。
「遂に、遂に開いたの? 見せて見せて!!」
「すんすん・・・確かに普段の佃煮と違って、香ばしい香りがするね!!」
「くんくん、夕立お腹空いたっぽい~♪」
佃煮の臭いを嗅いで、皆はお腹が空いてきた様子。
「はいは~い♪ じゃあ、今日は特別にご飯を無料で提供してあ・げ・る♪」
女将のサービスで、朝潮たちに温かいご飯が出される。
「で、では! この温かいご飯の上に・・・佃煮を乗せて、と。」
朝潮が全員のご飯の上に佃煮を乗せて行く、
「それでは・・・い、頂きます!!」
朝潮の声と共に皆が一斉に食べだす。
「もぐもぐ・・・こ、これはっ! 香ばしい香りに秘伝のタレ、凄く美味しいです!!」
朝潮の口から歓喜の声が漏れる。
「早朝3時に並んだ甲斐がありました!!」
朝潮含む白露たちはご飯のお代わりを要求、蓋が開いてから僅か10数分で佃煮の瓶は空になった。
・・・・・・
「ご馳走様でした! では、失礼します!」
朝潮は満足して鎮守府に戻って行く。
「朝潮の願いが叶って良かったぁ!」
「そうだね、おかげで僕たちも食べられたわけだし・・・」
白露たちが話をしていると、
「でも、どうして提督さんはあんな簡単に開けられたっぽい~?」
夕立の疑問に、
「確かに・・・提督は全然力を入れて無かったよね?」
「あたしも思った、何でだろうね?」
白露たちが考えていると、
「何でって・・・瓶の周りをよく見れば分かるけど?」
提督に言われて、空になった瓶の周囲を見る白露たち。
「・・・・・・」
そこに書いてあったのは、注意書きで、
”本製品は特別な機構の瓶に入れております、開ける際は蓋を「反対方向」からお開け下さい”・・・と。
「えっとつまり・・・反対方向って事は?」
白露たちが考えていると、
「通常は”左に回す”から、この瓶は”右に回す”って事だよ。」
「・・・・・・」
「白露たち、左方向に回しただろ?」
皆「・・・うん。」
「そうか・・・なら次からちゃんと注意書きを確認する事、分かった?」
皆「うん、確認する(っぽい~)。」
こうして、開かない瓶の蓋は開けられた。
「瓶の蓋が開かないです!!」 終
ご飯ですよ!…。
懐かしいなぁ、何年経ってもCMは
覚えてます♪
ご馳走さまでした
お腹が空きました……
1航戦ェ…。
艦これアンソロの一つに有ったびんのふたって話思い出しちゃった。
白露姉妹が開かない蓋を開けるのに四苦八苦する話。