「提督と白露型6」
いっちばーんを目指す白露だが、中々実らず別鎮守府の提督から誹謗中傷を受け、
落ち込んで部屋に籠ってしまう、それを知った姉妹たちが提督に復讐しようとするが・・・
最近白露に元気がない。
いつもなら「いっちばーん!」と掛け声をして一番らしく行動する元気な女の子なのだが、
最近ではずっと部屋に閉じこもったままだ。
時雨たちが食事をするときには一応顔を出すが、表情はやつれていて目には光が無い廃人のような状態だ。
当然ながら、姉妹たちも白露の態度に、
「白露に何があったの!?」
「まるで、死んだような目をしているけど!」
「本人は「大丈夫だから」と言っているけど、あれは明らかに異常です。」
と、皆の心配する声が挙がる。
・・・・・・
「あの、時雨さん・・・それに皆、ちょっといいですか?」
海風が急遽皆を呼んだ。
「あの・・・これは、他の鎮守府の方から聞いた話なのですが・・・」
「? 聞いた話?」
時雨は首を傾げる、
「白露さん、他の鎮守府の提督にとても酷い事を言われたようなんです。」
「? 酷い事って?」
皆が気になる中、
「その時の状況を見た人が詳しく教えてくれました。」
そう言って、海風は聞かされた内容を詳しく説明する。
・・・・・・
・・・
・
数日前、
提督と秘書艦だった白露が提督会議に行った時の事、
「・・・以上がこれから始まる作戦の詳細である、それでは解散!」
本営から、今後の作戦内容を伝えられ無事に会議は終了し、白露が余った時間に本部を見回っていた時の事。
「すご~い! やっぱ本部ってあたしがいる鎮守府と違って規模が全然違う!」
白露がいる鎮守府の数倍はあるだろう、本部の規模に白露は興奮する、
「あたしももっと頑張って戦果を挙げて、いっちばーんを目指すよ!」
白露は改めて意気込みをするが、
「あっ! お、お疲れ様です!」
別の鎮守府の提督らに出会い、白露は敬礼をする。
「いつでも元気だね~君は。」
「えへへ~、元気が取り柄なんで~♪」
「オレの鎮守府にも君みたいな元気な子が欲しいよ、オレの所は何か暗い感じがするし。」
「そお? じゃああたし、行ってもいいよぉ~♪」
白露は他の提督にも評判が良く、また白露の元気な姿に癒される者もいる。
しかし、そんな良い雰囲気の中に、
「君ってさぁ、口癖で「一番、一番」ってよく言ってるけど、実際君の一番って何があるの?」
難癖をつける提督が現れて、
「えっ? ・・・そ、それは。」
白露は急に大人しくなる。
「おい、何て酷いことを言うんだ!」
その場にいた提督が注意するが、
「あ~すいません・・・でも、実際そうでしょ。 白露型1番艦の長女さん、君の一番は何があるの?」
「・・・・・・」
「戦果は普通、練度は100超えてるけど戦艦・空母には余裕負け、各性能は他の駆逐艦たちに追い越され、
挙句に姉妹艦にまで抜かれて・・・君の一番って無いんじゃない?」
「・・・・・・」
「服装はそれなりに多いか。でも、他の艦娘たちと比べるとやっぱり一番には行かないよね?」
「・・・・・・」
白露は徐々に表情が悲しくなって来て、
「いや、そんなに落ち込まなくても・・・ただ、君があまりにも「いっちばーん、いっちばーん」って強調するからだよ。
・・・実際は何一つ「いっちばーん」なんて取れてもいないくせにね。」
「・・・・・・」
「鎮守府ではMVP取ってる? 取ってないでしょ? MVPっていっちばーん戦闘に貢献した者が
取れる成果みたいなもんだよね? 取れてる、ねぇ取れてますか?」
「ううっ・・・ぐすっ。」
「えっ? この程度で泣いちゃうの? 弱虫だね・・・あっ、ちょっと言われたくらいで泣くからある意味、
「一番弱虫且つ一番気取りで役立たずなお姉ちゃん」だね、良かったね! 一番取れてるじゃん!」
提督は笑いながらその場から去るが、当の白露は・・・
「ぐすっ・・・ううっ、うわああああーん。」
堪えていたであろう、涙が止めどなく溢れ遂には号泣して泣き崩れる。
提督も号泣している彼女に駆け付け「何だ、どうした!?」と事情を聞き彼女を慰めるが、
既に白露の精神は病んでいたようだ・・・
鎮守府に帰還後、白露は部屋に閉じこもり彼女から笑顔が消えた・・・
時雨たちが白露の異変に気付いたのは、ちょうどその時だ。
・・・・・・
・・・
・
「何だよそれ。」
聞き終えた後の時雨は怒り心頭だ。
「白露の姉貴にそんな事言うなんて、男の風上にも置けないぜそいつ!」
江風も拳をギリギリと震わす、
「白露を傷つけた提督さん、許せない!」
夕立の目がいつもより赤みを帯びているように見える。
「あ、あの・・・」
海風が豹変した時雨たちを見て困惑する中、
「その提督を懲らしめてやろうぜ!」
江風の言い分に、
「そうだね・・・いくら上官だからって言っていい事と悪いことがある! それを分からせないと!」
「提督さんの喉笛を噛み切ってやるっぽい~!!」
時雨と夕立も同調する。
「行けません、そんな事したからって何の解決にもなりませんよ!」
海風が止めに入るが、
「じゃあ海風の姉貴、このままその提督を野放しにしてもいいって言うのかい?」
「・・・・・・」
江風の言葉に海風は沈黙する、
「どうせ、反省すらしてないんだろう、その提督は? 海風、その提督はどうなったの?」
時雨の質問に、
「・・・その後、本営に知られて口頭注意だけ受けたそうです。」
「でしょ、結局上に相談したってその程度の対応、だったら僕たちがそんな事したらどうなるのかを
教えてやるべきだよ。」
「そうそう、時雨の姉貴の言う通りだよ!」
「ぽいぽい~!」
最早、海風の説得は絶望的である。
「ど、どうしよう・・・このままだと皆、本当に仕返し・・・いえ、復讐をしそうです。」
海風は考えた末に、
「村雨さんに相談しよう!」
そう言って、部屋から出て行く海風。
・・・・・・
「いらっしゃいませ・・・あら海風、どうしたの? そんなに息を荒くして?」
急いで店に走って来たのか、海風の呼吸は荒い。
「む、村雨さん! お願いです、助けて下さい!」
海風は必死に懇願する。
「えっ? 一体どうしたの?」
村雨は状況を分かっていない。
海風を落ち着かせて、事情を聞く。
「成程・・・確かにそれは酷いわね。」
白露が提督から誹謗中傷されたことに苛立つ村雨、実際白露型で白露と交流が長いのは村雨だからだ。
「でも、だからって復讐は間違ってる。 そんな事したって何の解決にもならないわ。」
村雨は冷静であり、復讐は何の利点も無い事も知っている。
「お願いします、時雨さんたちを説得してください。」
海風の願いに、
「分かった、なら今すぐに時雨たちに会いに行くわ。」
村雨は店を臨時休業して、海風と一緒に時雨たちがいる部屋へと向かう。
・・・・・・
「時雨、夕立に江風、入るわよ。」
村雨が入って来て、
「村雨? どうしたのさ、店は大丈夫なのかい?」
突然の訪問に驚く時雨たち。
「店は臨時休業にした・・・時雨、提督に復讐するって本当なの?」
村雨の言葉に、
「・・・復讐とは酷い言い方だね、でも仕返しだから意味は一緒かな。」
時雨たちは本当に復讐を考えていたようだ。
「事情は海風から聞いた、確かに酷いし私だって殴ってやりたいくらいに苛立っているわ。」
そう言いつつ、
「でも、だからって復讐は間違ってる! そんな事したって何の解決にもならないし白露だって
喜ばない、それは分かるでしょ?」
村雨の言う事は最もだが、
「じゃあ何? 散々誹謗中傷した提督は野放しでいいの? しかも、本営に口頭注意されただけで・・・
その程度で終わって反省もしない提督を村雨は許せるの!?」
「そ、それは・・・」
「ほら見ろ、村雨も海風も結局綺麗ごとを言ってるだけじゃん! 本当は同じ気持ちなのに行動に移す勇気が無いから
そんな事しか言えないんだよ!!」
「・・・・・・」
「別に、僕たちが決めたことだから村雨と海風は関わる必要はないよ。 だから僕たちに一切干渉しないで!」
そう言って、時雨たちが部屋から出ようとして、
「時雨、その後の事は考えているの? 処罰は目に見えてるのよ、下手をしたら解体だって有り得るのよ!」
村雨の訴えに、
「そんな事、覚悟の上だよ。」
そう言って、時雨たちは部屋から出て行った。
「・・・くっ。」
村雨の説得も空しく、時雨たちは出て行ってしまった。
「どうしましょう、村雨さん。」
海風の言葉に、
「・・・提督に相談してみる。」
そう言って、店に戻る村雨と海風。
・・・・・・
「おかえり・・・どうした村雨? そんなに落ち込んで?」
店に戻ると、提督が夕飯の支度をしていて、
「店は臨時休業にしたの? 何か問題でも起きた?」
提督の質問に、
「提督に相談したいことがあります。」
「・・・相談?」
村雨は白露が他の提督から誹謗中傷を受け、病んで寝込んでいる事・・・それを知った時雨たちが復讐を考えている事。
海風と一緒に説得をしたものの、時雨たちは処罰される覚悟で復讐を行うという事を全て話した。
「そうか・・・時雨たちの気持ちは分かるけど。」
提督は考え、
「復讐は良くないな、実際復讐して良かった事なんて一度も無い、むしろ悪化するだけだよ。」
「そう思って私は説得しましたが、駄目でした。」
村雨が落ち込む中、
「分かった・・・あの子に頼んで見るよ。」
「? あの子、ですか?」
海風は首を傾げ、提督は店の電話を取って誰かと連絡を取る。
「もしもし・・・久しぶり。 ちょっといいかな?」
提督は数分間誰かと連絡を取り、
「明日、時雨たちをこの店に連れて来てくれ。」
そう言って、提督はまた夕飯の支度を始めた。
・・・・・・
翌日、
「何だよ村雨、僕たちを呼んで?」
呼ばれた時雨たちは期限が悪い。
「提督が呼んで欲しいと言ったから呼んだの。」
「提督が? 僕たちを説得するのかい? 無駄だよ、そんな事。」
呼ばれた理由が説得と言う事に気付く時雨たち。
「時雨、気持ちは分かる。 でも、復讐したって何の解決にも・・・」
「村雨は黙ってて! 姉妹なのに否定だけして、僕たちの気持ちなんてわからないくせに。」
「・・・・・・」
村雨は何も答えられない、
「おっ、もう来たのか。 早いな。」
提督が裏から出て来て、
「提督・・・僕たちを説得しようとしたって無駄だよ。」
時雨の言い分に、
「そうか、生憎説得するのはオレではないけどね。」
「えっ?」
「そろそろ来るはずなんだけど・・・」
提督が時計を見ていると、店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ・・・あら蒼龍さん。 珍しいですね?」
来店したのは航空母艦の蒼龍、
「こんにちは、村雨ちゃん。」
「こんにちは~♪ どうしたんです、蒼龍さん?」
村雨が尋ねると、
「提督に呼ばれて来たんだけど。」
提督が昨日話していた相手、それは蒼龍のようだ。
「悪いね、時雨たちを説得できるのは蒼龍しかいないと思ってね。」
「? 時雨ちゃんたちの説得、ですか?」
蒼龍は首を傾げる。
・・・・・・
店の奥の部屋を設けて、蒼龍と時雨たち、村雨と海風も部屋の中に入る。
「どうして蒼龍さんを呼んだのさ?」
時雨は愚痴をこぼす。
「提督が「時雨ちゃんに聞けば分かる」と言っていたので・・・何かあったの?」
蒼龍の言葉に、
「・・・・・・」
「まぁ、どうせ言っても説得は無理だよ」と思いながら蒼龍に事情を話す。
「成程ね~。」
蒼龍は納得し、自分が呼ばれた理由が分かったようだ。
「蒼龍さんはどう思う? もし、姉妹・・・飛龍さんがそんな事言われたら我慢できます?」
時雨の質問に、
「そうね、我慢できないかな。 むしろ殴り倒す。」
「でしょ、じゃあ僕たちがやろうとしている事は間違ってないよね?」
「蒼龍は自分たちと同じ気持ちだ」と思ったのか、時雨は自分たちがしていることが正当だと訴えるが、
「でも、復讐は駄目! いい事無いから!」
村雨と同じ答えが返って来て、
「何だよ、結局村雨と一緒の意見か・・・そんなの綺麗ごと、提督を野放しにして何も解決出来ないじゃん!」
時雨の言葉に、
「どうしても復讐したい?」
蒼龍は改めて聞く、
「当然! 白露をあんなにして平然と生活している提督に一度罪と言うのを分からせてやりたい!」
「・・・・・・」
時雨は本気のようだ、そう感じた蒼龍は、
「そう・・・どうしようかと思ったけど、見せた方がいいかな。」
そう言って、蒼龍は時雨たちの前に自身の指を見せた、
「!? 蒼龍さん、その指・・・どうしたの?」
時雨たちは言葉を失う、蒼龍の指が無いのだ。
「うん、出撃中に被弾して欠損しちゃった。」
「・・・・・・」
時雨たちは無言のままだ。
「それで、指に力が入らず弓を弾けなくなって、鎮守府から追い出されちゃったの。」
「・・・・・・」
「捨て艦ね、一応。 それから私は障害艦娘施設に行かされてね。」
障害艦娘施設:蒼龍のように欠損した者、障害がある者、精神を病んでいる艦娘たちが入る特別施設。
「私以外にも欠損した子や心を病んだ艦娘たちがたくさんいてね・・・」
「・・・・・・」
「皆、「提督が憎い」「殺してやりたい」と毎日のように言っているの。」
「・・・・・・」
「私も、指が欠損しただけで捨てられて、憎しみを持って最後には・・・皆と協力して復讐をしたの。
私たちを捨てた提督を懲らしめるためにね!」
「・・・ぐ、具体的には何をしたの?」
聞きたくなかったが、敢えて質問した時雨。
「色々よ、鉄骨を上から落として重傷を負わしたり。」
「・・・・・・」
「鳳翔さんが出張で来ていて、鳳翔さんに食事に毒を入れるように頼んだりね。」
「・・・・・・」
「皆と一緒に提督を孤立させて、誹謗中傷を永遠言ったりもしたかな。」
蒼龍は自身が行った行為を平然と話す。
「・・・・・・」
時雨たちは何も答えられない。
「最初は「懲らしめたい」と言う気持ちから自分の気持ちが押さえられずにいつの間にか「復讐が楽しい」と
思うようになっちゃったの。」
蒼龍は言葉を続ける、
「自分自身も制御が出来ず、心の中で必死で「誰か私を止めて!」と願っていたわ。」
「・・・・・・」
「その私を止めてくれたのが今の提督よ。」
「! そ、そうだったんだ。」
提督と蒼龍の関係を知った時雨。
「その後、提督に説得されリハビリも兼ねて艦娘として復帰、今は旗艦をやっている。」
「・・・・・・」
「正直言うと、復讐しても気持ちは晴れなかった。 自分がどんどん惨めに思えてきて次第に自分が壊れて行くのを感じた。」
「・・・・・・」
「その前に提督が助けてくれたけど、その後がはっきり言って・・・”地獄”だったかな。」
「? 地獄? ・・・地獄って?」
地獄と言う言葉に恐れる時雨に、
「復讐をした提督達からの・・・報復(仕返し)が来たの。」
自分を捨てた提督達に復讐をした蒼龍だが、それで半身不随になったり鬱になった提督達が共謀して
蒼龍を逆復讐する提督達が現れた。
「時雨ちゃんたちは、「簡単に処罰される」「楽に解体される」と思ってない?」
「・・・・・・」
「実際はそんなに甘くない・・・毎日のように、殴られ、火を押し付けられ、骨を折られ・・・私は1日で
済んだけど、生きた心地がしなかったわ。」
蒼龍の説明に時雨はぞっとする。
「たったの1日だったけど、全身骨折に半身大火傷に内臓損傷・・・完全に治るのに半年は掛かったかな。」
1日でそれだけの拷問を受けた経験を語る蒼龍、
「でも、私は文句を言えなかった・・・だって「元は私が原因だったから」」
蒼龍は話を続ける、
「原因が私なんだから被害を受けた側に仕返しをされても文句は言えない・・・まぁ、当然よね。」
蒼龍は話し終え、
「時雨ちゃん、それでも復讐をしたい?」
「・・・・・・」
「もちろんその後に報復が来ても文句は言えないよ、だって原因は時雨ちゃんたちなんだから。
「姉妹が傷つけられた」の言い分なんて簡単に無視されるからね。」
「・・・・・・」
「しかも、仮に白露ちゃんの症状が改善して、姉妹艦が再会した時皆が周りから報復を受けていたとしたら、
白露ちゃんはどう思う? その原因が「お姉ちゃんを傷つけた提督に復讐した結果」って言える?」
「・・・・・・」
「白露ちゃんは喜ぶと思う? むしろ悲しむわよね? 自分のせいで姉妹たちが周りから
仕返しされてるんだから、ショックでまた寝込んじゃうよね?」
「・・・・・・」
「私が言える事はここまでだけど・・・それでも復讐をしたい? 相手からの報復される覚悟で復讐を実行する?
毎日のように拷問を受ける生活を、したいですか?」
「・・・・・・」
先ほどまで、「仕返ししたい」と思っていた時雨は蒼龍の説明で喪失する、それでも、
「じゃあどうすればいいのさ? その提督を野放しにしててもいいの? それだと白露が
可哀そうじゃん! 白露は何も悪くないんだよ・・・それを・・・」
悔しがる時雨に、
「時雨ちゃんに夕立ちゃんと江風ちゃん、お姉さんの事好きですよね?」
蒼龍の言葉に、
「・・・言葉には出さないけど、明るく元気で皆を楽しませてくれる、いいお姉さんだよ。」
時雨の言葉に、
「でしたら、「仕返しをする」方ではなく「側に居てあげる」方が姉妹としていいのではないですか?」
「・・・うん、そうだね。」
時雨たちから復讐心が次第に消えていく、
「では、白露ちゃんに会いに行きましょうか。」
そう言って、蒼龍は時雨たちを連れて白露の部屋に向かう。
・・・・・・
「白露ちゃん、開けてください。」
蒼龍が扉を叩く、
「・・・そ、蒼龍さん? 何か用ですか?」
時雨たちが呼んでも扉を開けなかった白露、滅多に尋ねてこない蒼龍に白露は出て来た。
「白露! 大丈夫?」
蒼龍の側には時雨たちがいて、
「時雨に夕立、それに江風・・・」
白露は答えるが、相変わらず元気が無くやつれている。
「白露ちゃん、少しお話しできるかな?」
蒼龍の言葉に、
「・・・うん、いいけど。」
白露は蒼龍を部屋に入れる、
「後は私に任せて。」
時雨たちに言うと、蒼龍は扉を閉める。
・・・・・・
「こんな物しか用意できないけど・・・どうぞ。」
蒼龍に冷えた緑茶を出す。
「ありがとう! 白露ちゃんは本当にいい子ね♪」
「・・・・・・」
白露は無言のままだ、いつもなら「えへへ~♪」と喜ぶのだが・・・
「それで、話って何?」
白露の問いに、
「時雨ちゃんたちから聞いたの、白露ちゃんが提督に酷いことを言われたって。」
「そう・・・本当の事だから、気にしてないよ。」
白露は下を向く、
「白露ちゃんは何も悪くない、だから元気を出して。」
蒼龍が慰めるも、
「ありがとう・・・」
お礼を言ってまた下を向く。
「・・・白露ちゃん。」
蒼龍は何を持ったのか、白露を抱き寄せる。
「!? そ、蒼龍さん!?」
白露は驚く。
「白露ちゃんは悪くない、全然悪くない。むしろ頑張ってるじゃない? いつも頑張って時々
ドジしちゃって怒られても元気が取り柄な白露ちゃんでしょ? ほら元気出して!」
「・・・・・・」
「ほら笑って、そしていつも通りに元気になって皆を喜ばしてよ。 ずっと落ち込んでいるから
皆が心配してるの、だから元気出して!」
「べ、別に落ち込んでいるわけじゃ・・・」
「白露ちゃん、私の目を見て!」
「・・・・・・」
白露は蒼龍の目を見る。
「いい? 白露ちゃんは悪くない。 本当に・・・全然悪くないから!」
「・・・・・・」
「だから笑って、笑って皆を安心させて、ねぇ!」
「・・・本当に? 本当にあたし、悪くない?」
蒼龍の言葉が届いたのか、白露は心を開く。
「うん、白露ちゃんは全然悪くない! いつも頑張っているじゃない!」
「でも、あたし ”一番”って言っているのに、何も一番取れてないんだよ? 一番を目指してるのに・・・ううっ、何一つ、
一番って言える事が無いんだよ・・・ぐすっ。」
白露の瞳から涙がポロポロこぼれて来て、
「あたしは口だけ達者なんだよ・・・一番って言ってるだけの最低なお姉ちゃんなんだよ・・・うううっ。」
咳を切ったように話して号泣する白露、それに対して蒼龍は、
「そんな事ない! あるじゃない、白露ちゃんの一番と言える事が!」
蒼龍の言葉に白露は顔を上げる、
「鎮守府で一番元気で、他の誰よりも一番に皆を笑顔にするじゃない! 白露ちゃんにしか出来ない事だよ!」
「・・・・・・」
「だから、もう泣かない! 外で妹さんたちが元気なお姉さんを待っているから・・・ほら、笑って。
元気になって妹さんたちを安心させて、ねぇ!」
「・・・・・・」
白露は頷くと、笑顔を繕って見せた。
「そう、それでこそ「鎮守府で一番元気な白露ちゃん」だよ!」
蒼龍の説得で、白露は立ち直ったようだ。
「・・・白露。」
扉の外で白露を待つ中、
「あっ、蒼龍さん。 白露は?」
時雨の問いに、
「皆、ごめんね。 あたしはもう大丈夫だから。」
扉の奥から白露が出て来て、
「もう大丈夫だから、もう心配しなくていいからね!」
そう言って、笑顔で振る舞う。
「・・・そっか、安心した。」
時雨たちにも安堵の表情をした。
「白露の姉貴。」
「白露~、いい子っぽい~♪」
「もうっ! 夕立に褒められても嬉しくなんかないよ!」
いつもの白露に戻って皆が安心する・・・当然、時雨たちにはもう「復讐心」は完全に消え去っていた。
・・・・・・
それからしばらく経った後、
「聞きましたか、時雨さん?」
海風が”軍内新聞”を持って来て、
「白露さんを罵倒した提督が「階段から落ちて重体になった」らしいです。」
海風の知らせに、時雨たちは驚く、
「階段を降りている最中に地震が起きて、地割れとともに提督が真っ逆さまに落ちたらしいです。」
海風は言葉を続ける、
「運が悪いことに筋断裂を起こして、現在も病院で「痛い、痛い」と苦しんでいるそうです。」
海風の言葉に、
「そう・・・僕たちが復讐したわけじゃないけど、それなりの報いは受けたわけだね。」
「時雨さん。」
「別に気の毒とは思っているけどさ、だけどそれ以外の感情もあったっていいだろ、海風の姉貴?」
「江風まで・・・」
「提督さんに罰が当たったっぽい~。」
夕立も「因果応報っぽい~」っと答えた。
・・・・・・
「提督、知ってますか?」
新聞を読んでいた村雨が提督に尋ねる。
「白露を罵倒した提督が重体で入院してるそうですよ。」
「あ、そう。 ふ~ん。」
提督はそれを聞いて驚きもしなかった。
「提督、もしかしてまた何かしたのですか?」
村雨は意味ありげな発言をする。
「何もしてないよ、いつも通りに店で働いていつもと同じように村雨と過ごしているだけ・・・
それは村雨だってずっといたから分かるだろ?」
「・・・・・・」
提督の言う通り、普段の生活で2人が離れることはほとんどない、この提督が重体となった時も
提督と村雨はずっと店にいたのだ。
「まぁ、そうですけど。」
それでも村雨には不審な点があった。
前にも仲間の艦娘が提督からの暴力が発覚した直後、その提督は不慮の事故に見舞われている。
江風が戦闘中に大破し、出撃命令されたにも関わらずそれ以降一度も被弾しなかった事、
夕立が休日に交通事故に遭うも怪我一つなく無事だった事(ちなみに夕立は車に衝突していた)。
そして、今回の白露の件も・・・
「・・・・・・」
「何か提督には不思議な力があるのでは?」と思う村雨。
「お~い、村雨。 そろそろ閉店だぞ~、暖簾を取って店を閉めるぞ。」
「!? あっ、はい。」
提督の言葉に反応する村雨、
その後も村雨は考えて見たものの、結局分からずいつも通りの生活に戻る。
・・・・・・
早朝、白露が来店し、・・・そして、恒例の一言。
「いっちばーん先に店に入ったよ!!」
いつもと同じ台詞に、
「あらあら、いつもの白露で良かったわ♪」
それを聞いて村雨は安心するのだった。
「提督と白露型6」 終
何で白露っていつも妹達と比較されるんだろうな・・・。一番が好きとはいえ
妹含めて誰も下に見る様な態度も取ってないのに。
反応が面白い子を叩き続けて気づけばイジメに発展してるみたいな事
公式でもやってるんだから笑えない。
それほど佐世保の時雨と
ソロモンの悪夢の異名を持つ夕立の
知名度がでかいのだろう。
白露が長女で無ければ
こんな事にはならなかったかも?
割と本気で公式が妹達の引き立て役みたいに扱ってる部分は有ると思う。
同じポジションでも陽炎や吹雪はそういう扱い受けてないし。
松岡修造「一番になるっつったよな? ナンバー1になるっつったよな!?
まずは、形から入ってみろよ!
今日からお前は!!一番だ!!!」