「提督とバレンタインデー」2
鎮守府に着任した艦娘も増え、さらに他鎮守府の艦娘達からもチョコを貰った提督。
しかし、来月は仕事で立て込んでいて・・・
困った・・・
皆から2月14日以降から今にかけてチョコを貰った。
チョコを見ると、くれた艦娘の個性がわかる。
金剛だと紅茶味チョコ、秋月だとおにぎり型チョコ。 村雨だと、性格を反映してか甘く苦いチョコ・・・
最近では着任した艦娘が増え、それに比例してチョコの数が増えた。
海外艦の艦娘たちも皆の真似をして、酒チョコだったり、本命なのかハート形チョコ、軍人気質の反映か銃型チョコなど、
机から落ちてしまう程の量のチョコを貰った。
何の縁か知らないが、この鎮守府以外の他の鎮守府からも何故かチョコをたくさん貰い、オレは頭を悩ませている。
と言うのも、3月に入ってから出撃任務やら書類整理等多忙な日が連続して続き、普段は3月10日前後に「お返し」を
作っているはずなのだが・・・今日は13日。
作る予定の時間も多忙な仕事に追われ、結論を言うと・・・「お返しが出来ない」。
・・・どうしたものか・・・
一部の艦娘、霧島や秋月は「お返しは気にしないでください」とは言っているが、
貰ったものはお返しをするのが鉄則・・・やはり何か考えなければいけない・・・
う~ん・・・どうしよう・・・う~ん・・・どうしたものか・・・
提督は13日の深夜から朝までずっと悩み続けていた。
・・・・・・
14日の朝になり、
「ダメだ・・・思い当たる当てがない。」
散々悩んだ結果・・・苦渋の決断をする。
「皆は失望するかもしれないけれど・・・返さないよりはマシかな。」
そう言って提督は執務室から出て行った。
・・・・・・
「サラトガ、今日は何の日か知ってる・」
「今日? う~ん・・・何の日かしら?」
「3月14日は・・・提督から「お返し」が貰える日よ!」
「お返し? ああ、チョコのお返しね、すっかり忘れていたわ。」
「もう皆起きている頃だし・・・一番に貰いに行こうかしら。」
「こらこら・・・提督は今月はずっと多忙で執務室から出ていなかったでしょう? お返しなんて考える余裕なんて
なかったんじゃない?」
「OH~! そう言えばそうね! じゃあお返しはないってこと? 何かがっかりね~。」
「それ以上にあげたから返せなんて言ったら嫌われるわよ? 私たちは進んで渡したのよ?
提督から「ちょうだい」なんて一言も言ってないのよ。」
サラトガは以外にも冷静で納得のいく説明をする。
「う~ん、そうね・・・ならお返しは考えないで、挨拶しに行ってくるわ!」
何も考えていないのか単純なのかアイオワは部屋から出て行った。
「そっか・・・今日はホワイトデーだったわね。」
・・・・・・
「司令! おはようございます!」
霧島が執務室に入って来て、
「あら? 司令? どこに行かれました?」
辺りを見回すが、提督の姿が無い。
「・・・もしかして厨房かしら。」
心当たりがあるのか、霧島は厨房へ向かった。
「厨房にもいない・・・」
もしかしたら、何か調理しているのかもと思って、来てみたものの・・・提督の姿は見当たらず、
「・・・そのうち戻ってくるでしょう。」
霧島は気にもせず執務室に戻っていった。
・・・・・・
「おはようございます、提督!」
今度は村雨が入って来て、
「司令は今留守にしていますよ。」
代わりに霧島が答えた。
「そうなんですか・・・ちょっとがっかり。」
村雨はしょんぼりしていて、
「提督からのお返しを期待していたんだけどなぁ~。」
村雨の言葉に、
「村雨さん、忘れたんですか? 司令は今月から今日まで全く外出すらできなかったことを・・・」
「・・・そうでしたね。 私ったら・・・何で忘れているんだろう。」
村雨は舌を出した。
「つまり、今月のお返しは無いってことですよね?」
「はい・・・それは皆も知っているはずですよ?」
「ですよね~・・・でも、提督の事だから何か用意してるんじゃないかなぁ~って期待してたんだけどなぁ~。」
「・・・・・・」
村雨さんの気持ちはわかる・・・司令は私たちの予想と全く違う行動をしますからね・・・ですが、今回は・・・
「それで村雨さん・・・用件はそれだけですか?」
「はい・・・お邪魔してすいません。」
そう言って村雨は執務室から出て行った。
提督の考えとは裏腹に、霧島たちは意外としっかりしていた。
普通なら、ビスマルクや駆逐艦なら「何で無いの(よ)!」と反論してくるはずだが、提督の今月の多忙さから
今回は素直にないと、諦めざるを得ない・・・と、各自思っているようだ。
そう考えると霧島やサラトガは立派な大人である。
・・・・・・
もちろん、霧島みたいに素直に納得する艦娘がいるわけでもなく、特にビスマルクとガングートはとにかくうるさかった。
「ギブ・アンド・テイクでしょ! 提督からは何も無いってわけ!? それでも男なの提督は!」
「与えられたら返すのが鉄則だろう? それを無いだと? 今回は提督の負けのようだな!」
「・・・・・・」
うるさいわねこの2人・・・司令の言う通り、ただのガキね。 外に放り出そうかしら・・・
霧島が不満に思っていると、
「ただいま~。」
提督が帰ってきた。
「おかえりなさい、司令! ・・・ってどうしたんですか、その荷物は!?」
提督の両手にはサンタクロースが担ぐプレゼント袋のように大きな買い物袋を背負っていた。
「悪いが、今日は執務仕事を休む。 明日やるから進めるところでいいから進めておいてくれ。」
そう言って、提督はその場から去った。
・・・・・・
食堂が立ち入り禁止になっていて、今日の食事は珍しく外食となった。
「提督が食堂に籠っているようなんですけど・・・」
「恐らく・・・お返しでも調理しているんじゃないですか?」
「あ~なるほど~。」
「気にしないでくださいと言ったつもりなんですが・・・司令はどこまで言っても律儀ですね。」
「お返しかぁ~・・・何だろう?」
期待しているのか村雨は心を躍らせる。
「あくまで私の予想ですよ・・・本当は新作メニューを考えているだけかもしれませんし・・・」
「新作メニュー・・・まぁ、それでもいいかな♪」
「・・・・・・」
要は司令が作ったものなら何でもいいのね、村雨さんは・・・
・・・・・・
翌朝、食堂の壁には張り紙がしてありました。
3月14日に渡すはずだった「お返し」を今月は多忙のため、各1人ずつに渡すことが出来ず申し訳なく思う。
今月は全員同じものを返すという事で、張り紙下に表記してあるスイーツを皆に振る舞おうと決めた。
期間は15日~18日の間とする。
「・・・・・・」
なるほど、各一人に渡すことが出来ないから皆、全員同じ内容にしようと考えたのですね。
流石司令! 私たちが想像する以上のお方です。
「気にしないでください」と言った本人が何故かお返しを待ち望んでいた。
・・・・・・
「何? 提督がお返し? ふん、当たり前のことでしょ!」
「ふむ・・・流石の提督も私に何も返さないと危険だと判断したんだろ、ははは・・・」
「・・・・・・」
相変わらずの2人・・・霧島は完全に無視をしていた。
2人は張り紙を見るなり、食堂へ向かって行った。
・・・・・・
・・・
・
「うむむ・・・提督をやめてパティシエに転職すればいいのではないか!?」
「なかなかね・・・提督も3個までって・・・でも、お腹いっぱいね。」
さっきまで威勢の張っていた2人が急におとなしくなって出て行った。
その後、他の艦娘たちも食堂へ入っていき、ある艦娘は満足そうな笑みを、ある艦娘は「まだ食べたい!」と言い、
ある艦娘は・・・放心状態だった。
「・・・・・・」
流石に気になる霧島・・・
ただ霧島は多忙のため、結局行った日は最終日の18日であった。
・・・・・・
最終日の18日、
霧島は村雨や秋月たちを連れて食堂へ向かった。
この鎮守府以外の艦娘達にも一応チラシを渡したところ、期間中に食堂に寄っていたことが分かった。
全員満足そうな笑みを浮かべ、「来年も機会があれば食べたいです。」と、とても好評のようだった。
「何が出るんですかね・・・秋月も同席していいのでしょうか?」
場所は食堂なのだが、高級感を出すために提督が電気を暗くしたり、黒いカーテンを掛けたりでロマンチックな雰囲気にしていた。
それを見た秋月が不安になったのだ。
「大丈夫ですよ秋月さん、ここは食堂ですよw」
「さてさて・・・何が出るのかなぁ~♪」
村雨もわくわくしていた。
食堂に入る前に事前にスイーツを選ぶ決まりだったので、霧島たちは何が出るかは知っているはずなのだが・・・
※ちなみに秋月は、「ほとんど見たことがありません」と言いつつ、ためらいながら「ティラミス」を選んだ。
「はい、秋月はティラミス、霧島はクレープ・・・そして村雨はチョコケーキね。」
霧島たちの目の前にスイーツが置かれ、
「では、いただきましょうか。」
そう言って最初は秋月が、
「・・・はむ。」
スプーンですくって口に含んだ。
「どうですか秋月さん? 初めてのお味は?」
「・・・とっても濃厚で・・・おいしいです!!」
秋月は感激し、
「では、私も~・・・はむ・・・お、おいしい~♪」
村雨もニッコリ笑顔で、
「あらあら・・・では、パクッ・・・おや、中はチョコソースで・・・おいしいですね~♪」
霧島も満足げだった。
こうして、提督の機転でホワイトデーのお返しは何とか上手くいったのであった。
・・・・・・
それからと言うもの・・・
ホワイトデーが終わったにも関わらず、何故か要望が来るようになった。
いつもは1人1人に貰ったチョコを模してお返しをしていたが、
今回は多忙で作れず、止む無く全員に決まったスイーツを出して機嫌を取ってもらおうと思った結果、
「こっちの方がいい!」と言う意見が過半数を占め、意外と好評だった。
「それなら年に1回じゃなく月に1回とか!」と
勝手に艦娘たちに決められてしまい、当の提督は苦笑するのであった。
当然のことながら、その要望は提督に速攻却下されたとか・・・
因みに理由として・・・材料費が掛かる・今回はたまたまで普段は作る時間がないんだってw
「提督とバレンタインデー」2 終
このSS面白くなっていく。はっきりわかんだね