「蒼龍の償い」
「提督と蒼龍」の話で、蒼龍が提督達に復讐した後、今度は蒼龍が提督達に暴行を受ける、という話。
一応暴力系統なので、閲覧注意と表記します。
「提督と蒼龍」を見てくれた方から要望がありましたので、書いてみました。
予想と違うかもしれませんが、「こんな考え方もあるんだ」感じな気持ちで読んでください。
室内に響く鈍い音、
ドガッ!! バキッ!! パァン!!
場所は鎮守府の地下、普段人が足を踏み入れない場所に複数の人間が集まっていた。
ドゴッ!! バキッ!! ザシュッ!!
その鈍い音は、誰かが道具で殴られている音・・・その暴行されている人間は・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
航空母艦の蒼龍だった。
大勢の提督が代わり代わりに蒼龍をリンチしていたのであった。
本来提督が艦娘を乱暴することは、この世界では立派な犯罪だが・・・この場合はある意味正当な暴力と言える。
なぜなら・・・
・・・・・・
(ここから過去)
蒼龍は昔、戦闘で負傷し出撃できなくなったことで追い出され、同じ境遇の艦娘たちが住まう施設へと入れられる。
皆が提督の事を「憎い」と思っている中、蒼龍は皆と共謀して「提督に復讐」を実行したのだ。
しかも、出張で来ていた給仕の鳳翔さんも巻き込み、施設内は危険地帯として提督達を震え上がらせてしまった。
皆の気持ちはわからなくもないが、だからと言って復讐する理由にはならない。それを最後に出張で来た提督に説得され、
今では改心し、いつも通りの生活に戻ったが・・・
毒を盛られ、誹謗中傷を受け、体に傷を受けた一部の提督達が蒼龍に復讐(仕返し)をしたいと申し出たのだ・・・
「・・・・・・」
蒼龍は提督に助けを求めた。
「何とか・・・何とかなりませんか?」
「・・・・・・」
「もう反省しています・・・もうあんなことは二度としません! ですから・・・提督! 助けて下さい!」
「・・・・・・」
必死に頭を下げる蒼龍に提督は、
「・・・無理だな。」
きっぱりと言った。
「そ、そんな!」
「可哀そうだが、これがお前のやった「復讐の代償」だ。」
「・・・・・・」
「当然提督達からの報復が来ることは予想はしていたが・・・こんなに早く来るとは・・・」
「・・・・・・」
「さて・・・どんな目に遭うかな~。」
「・・・・・・」
「恐らく・・・一瞬で殺さずにじわじわ痛めつける風なやり方をするかもね。」
「・・・・・・」
蒼龍は体を震わせていた。
「残念だが・・・今回はお前が原因だ。 もし、提督達から暴力を受けたとしても自業自得として片づけられるだろう。」
「・・・うう。」
「でも・・・今のお前はオレの艦娘なんだがなぁ・・・」
提督は考える。
「・・・ならば。」
「?」
提督は蒼龍に案を出した。
・・・・・・
(ここから現実)
「はぁ・・・はぁ・・・」
蒼龍は腕を縛られ吊るされ、無防備な状態の中・・・提督達に激しい暴行を受けていた。
「毒を盛った食事を食べたことで・・・見ろ! 半身不随になってしまった・・・どうしてくれる!?」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「お前はすぐに殺さない・・・この苦しみを死ぬほど味合わせてから殺してやる!!」
半身不随の提督は片手で鉄の棒を持つと蒼龍を殴った。
バキイィッ!!
「ぎゃあっ!!」
頭から大量の出血をして気絶しかかる・・・
「まだまだこんなものじゃないぞ・・・もっとだ・・・もっと苦しみを受けろ!!」
「おい! 〇〇鎮守府の提督よ! 今度はオレにやらせてくれよ!」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「お前の誹謗中傷で鬱になった〇〇鎮守府の提督だ、顔覚えているだろう?」
「・・・・・・」
「鬱になったせいでな・・・提督の任を解かれて今は無職・・・お前のせいで・・・お前のせいでなぁ!!」
提督は持っていた松明を蒼龍の顔に当てる。
じゅうううっ!!!!
「!? うああああ!!!!」
「痛いだろうぉ!! そうだもっと叫べ! もっと苦しんで、最後に死ねやぁ!!」
「あああああああ!!!!」
地下からの悲痛な叫びが響く・・・
蒼龍が悲鳴を上げる度に、提督達は狂ったように喜び、また暴行を加える。
その繰り返しが延々と続く・・・
「ほらほら・・・硫酸入り団子・・・食えやぁ!!!!」
「足の指を一本一本リズムよく折ってやるかぁ?」
「指の爪を全てペンチで剥ぐかぁ?」
・・・・・・
「・・・・・・」
散々暴行を受け続け・・・蒼龍は虫の息であった。
「・・・大丈夫か?」
提督が駆け付けて縛っていた縄を解く。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「良かった、まだ・・・いや、辛うじて生きているな。」
「ひゅ~・・・ひゅ~・・・」
「蒼龍・・・」
「はぁ・・・て・・てい・と・・く・・・これで・・・ほん・と・・うに?」
「ああ・・・今日一日良く耐えた! よく頑張った!」
「これで・・わ・た・・しは・・つぐ・・・な・えまし・・た・・?」
「うん、後はオレに任せておけ!」
「・・・は・・い・・」
蒼龍は気を失った。
提督は蒼龍を担ぐとすぐにドッグに連れて行った。
・・・・・・
実は暴行を受ける前の晩・・・
提督は蒼龍にある条件を出していた。
「一日だけ?」
「そうだ、明日だけだ。」
「・・・・・・」
提督の提案、それは明日の一日だけ提督達の暴行に耐えろと言う指示だった。
恐らく提督達は自分たちの気が済むまで何度でも暴行を加えるだろうと予想がついた。
しかし、提督はその暴行期間をたった一日のみにするということだ。
「本当に・・・明日一日だけ我慢すればいいのですか?」
「ああ・・・だが、相当な苦痛を伴うだろう。 骨を折られたり、棒で殴られたりなんかは可愛い方だぞ?」
「・・・・・・」
「無理なら強制はしない。 ただ・・・これから一生、提督達の感情の捌け口にされるな。」
「・・・・・・」
「・・・どうする?」
「・・・わかりました。」
「・・・・・・」
「もとはと言えば私が原因なんですから・・・明日一日・・・死ぬ覚悟で提督たちに罰を受けてきます!!」
「・・・わかった。 今日はゆっくり休め・・・以上だ。」
「はい。」
蒼龍が去ろうとして・・・
「蒼龍!」
「? 何ですか提督?」
「絶対に死ぬなよ、蒼龍!」
「提督・・・」
「忘れるな・・・お前はオレの艦娘だってことを。」
「・・・はい、心配してくれてありがとうございます!」
蒼龍はその場から去る。
・・・・・・
蒼龍がドッグ入りしたことは提督達の耳にすぐに入った。
「すぐに死なれては困るからな~。」
「本当だ、これから毎日オレたちの苦しみを味合わせてやらんとな・・・」
「今度はどうする? 食事にテトロドキシンでも入れるか?」
提督達が話し合っていると・・・
「随分楽しそうで何よりだ。」
蒼龍の提督が前に出た。
「それはもう! 明日もたくさん痛ぶってやらないとなぁ~。」
「・・・残念だが、今日で終わってもらう。」
その言葉に提督達が猛反論する。
「ふざけるなぁ! オレたちは全く気が済んでいないぞ!」
「そうだ! あの女があんな馬鹿をしなければオレたちがこんな目に遭わなくて済んだのだ!!」
「結局あんたは艦娘の味方かよ!!」
提督達がやたら叫び・・・
「そうか・・・ならば仕方ないな。」
そう言って、提督は皆に言った。
「復讐は復讐を呼ぶ・・・人を呪わば穴二つ・・・と言う言葉を知っているか?」
提督はゆっくりと説明していった。
・・・・・・
「大丈夫か、 蒼龍?」
全身骨折に無数の打撲・・・火傷も負っていたが、蒼龍は生きていた。
「はい・・・何とか生きています。」
「そうか・・・良かった。」
「他の提督達はどうしました?」
「もう帰ったよ。」
「? 帰った?」
「説得させた・・・お前はもう心配しなくていい。」
「・・・そうですか・・・提督。」
「ん?」
「ごめんなさい・・・そして・・・ありがとうございます。」
「気にするな・・・後はゆっくり治して・・・また海に戻れ。」
「・・・はい。」
蒼龍は首を縦に振った。
・・・・・・
半年経って・・・
蒼龍は退院・・・歩けるまでに回復した。
「おめでとう蒼龍! 後はきついだろうが・・・リハビリをして体を戻してくれ。」
「はい提督・・・蒼龍、頑張ります!」
提督と会話を終え、蒼龍は歩いて行った。
「・・・・・・」
蒼龍が立ち止まった場所・・・それは、自分が暴行を受けていた場所・・・
「・・・・・・」
蒼龍は目をつむり・・・
「私はもう、自由・・・」
それだけを言い聞かし、その場から去ろうとした・・・その時、
ゴトッ!
暴行を受けていた場所から物音がして蒼龍が恐る恐る扉に近づく。
「・・・・・・」
蒼龍が扉をゆっくり開けると・・・
「!?」
目の前に設置してある牢屋の中に・・・得体のしれない物体が・・・
「・・・・・・」
恐る恐る確認すると・・・
「!? うえっ!!」
蒼龍は思わず吐き気を覚えた。
「助けてくれぇ~・・・助けてくれぇ~・・・」
見た目は肉の塊なのだが、声がして蒼龍にははっきりとわかった・・・自分に暴行を加えた提督だった。
「助けてくれぇ~・・・お願いだぁ~・・・助けてくれぇ~」
悲痛に叫ぶその光景に、蒼龍は吐き気を堪えながらその場から出るしかなった。
・・・・・・
後に提督から聞いた話では・・・
あの時・・・
「復讐は復讐を呼ぶ・・・人を呪わば穴二つ・・・と言う言葉を知っているか?」
提督達の前で説明する。
「復讐された人間は仕返しに復讐をする・・・人に危害を加えた者は後に自分も害を受ける・・・と言う意味だ。」
「知ってる、それが今の状態だ。 なにがおかしい?」
「蒼龍はオレの鎮守府の艦娘なんだ・・・その意味が分かるか?」
「・・・・・・」
一部の提督達が寒気を覚えた。
「復讐は復讐を呼ぶ・・・つまり、今度はお前たちがオレに復讐される、と言う意味だが?」
「ひっ!」
「今日一日で終わるなら、オレの復讐はなかったことにする・・・どうだ?」
ほとんどの提督が無言で首を縦に振った・・・一人を除いて・・・
「オレは気が済まねぇ! ならあんたが復讐した後はオレが仕返しにやっていいってことだよな?」
「ああ・・・そういうことだ。」
「ならやってみな! あんたの暴行を見事耐え抜き、その後はオレがあんたを痛めつけてやる!」
「・・・ふっ。」
提督は笑いながら・・・
「出来るもんなら・・・」
・・・・・・
「まぁ、オレの復讐を実行したわけだが?」
「何をしたんです? どう見ても人としての原型を失っています。」
「大したことはしてないよ? 両手足の切断、両目えぐって皮膚を剝がし、死なない程度に内臓を摘出・・・
死ぬか死なない境界線のタイミングで鎮痛剤を投与しただけだが?」
「・・・・・・」
「絶対仕返しをしてやる!と意気込んでいたが、ただ助けを求めてるだけだ・・・口だけ達者とはまさにこのことだな。」
「・・・・・・」
「心配するな・・・死んではいない。 辛うじて生きている・・・だ。」
「・・・・・・」
それを聞いて蒼龍は、提督の真の恐ろしさを知ったのは言うまでもない。
「蒼龍の償い」 終
失った者だけが持つ圧倒的な力。
奪われた。壊された者だけが赦される。
圧倒的説得力。
ハンデを負いながらも這い上がり。
奪い返す強さは持てんか。
人間とは黒いものを肯定し黒き感情の成就の為に己を殺せる者よ。