2017-08-06 00:44:02 更新

概要

仲の悪い加賀と瑞鶴が鎮守府にやってきて・・・


鎮守府に珍しく2人の艦娘がやってきました。


空母の加賀さんと瑞鶴さん・・・執務室で軽い自己紹介を始めました。


「航空母艦・加賀です。 嫌いなのは数字の”5”の付くものです。」


「空母の瑞鶴よ、よろしくね。 嫌いなのは数字の”1”と付くものよ!」


「ふむ・・・2人とも数字が嫌いなのか? 面白い2人だな・・・。」


「・・・・・・」


司令はどうやら気づいていない様子・・・要は、


加賀さん・・・1航戦、瑞鶴さん・・・5航戦って意味なんですけどね・・・



・・・・・・


2人が来てからというもの・・・何かと問題が起きます。


「ここは先輩である私が譲ってもらうものじゃない?」


「何言ってるのよ! そっちこそ、後輩である私に譲るのが基本でしょ!」


食堂でおかずが1つしかない状態での取り合いの喧嘩でした・・・


「私がいただきます! 5航戦は身を引きなさい。」


「加賀さんこそ! お古は小食にして私に譲りなさいよ!」


皆「・・・・・・」


皆は思った・・・何て幼稚な喧嘩なの・・・と。


・・・・・・


出撃で加賀さんが負傷して、入渠しようとして・・・


「あれぇ~先輩~、負傷しちゃったんですかぁ~? もう引退しちゃった方がいいんじゃないですか~?」


「私は急いでるの! そこをどいてもらえないかしら?」


「もう、これだから先輩気取りは~、ああ、ダッサぁ~い。 何が1航戦の誇りよ、ちっ!!」


「ふん! これだから5航戦は!!」


「・・・・・・」



こんなところで喧嘩しないでさっさと入渠したらどうですか? (霧島の本音)



・・・・・・


今度は瑞鶴さんが負傷して・・・


「負傷したの? 幸運艦の名が泣くわね。」


「大丈夫よ! 戦果は加賀さんより上! 5航戦の力、見たか!」


「・・・あまり調子に乗らない方がいいわよ?」


「ふん! 1航戦のお古さんは口だけは達者なのね!」


「・・・・・・」



いい加減にしてほしいわ、この2人!!



・・・・・・


遠征組が帰還、旗艦が資材を倉庫に保管しに行った最中・・・


「資材が減っている?」


「はい、特にボーキサイトが異常に減っているんです。」


「ボーキサイトが? ・・・まさか。」


ボーキサイトで私は気づいた。


呼び出したのは・・・もちろん加賀さんと瑞鶴さん、問い詰めたところ、


「申し訳ありません、勝手に資材を持ち出しました。」


加賀さんが謝罪した。


「艦載機が誰かさんに撃墜されたもので、どうしてもボーキが必要になり、提督と霧島さんの許可を得ず


 使ってしまいました。」


「それで、どのくらい消費したのかしら?」


「大した量ではありません、ほんの3000です。」


「・・・・・・」



大したことありますよ! 加賀さん! 何を考えているの!?



「そっちの5航戦の方が消費した量は多いですよ?」


「・・・・・・」


私は瑞鶴さんを見る。


「そんな! 大した量じゃないって! 少しだけ・・・ほんとに少しだけ!」


「・・・で、どのくらいですか?」


「・・・5000。」


「・・・・・・」



今日一日で2人で8000!!?  この量を集めるのに何か月掛かるか分かっているんですか!!?



「私は悪くないわよ! 1航戦が無駄に撃ち落とすから、消費が凄かっただけで・・・」


「あなたこそ・・・さっさと降参すればこんな消費することはなかったでしょうに。」


「何ですって!? 私に喧嘩売ってるの!? いいわよ! 次は負けないわよ!」


「・・・いいわよ・・・その気持ち、私が粉砕してあげるわ。」


「2人とも!! いい加減にしてください!!」


・・・・・・


霧島の説得で2人の喧嘩は収まったが、仲直りまでに至らなかった・・・


「司令、あの2人・・・何とかなりませんか?」


「・・・ふむ。」


提督がしばし沈黙・・・


「仕方がない・・・次また問題を起こしたら懲らしめるか。」


「・・・・・・」



懲らしめる? それだけで本当に2人の考えが変わるのでしょうか?



・・・・・・


ある日の出撃のこと、


加賀さんと瑞鶴さんが同じ編成に入った・・・もちろん2人は顔すら合わせません。


「・・・・・・」



司令・・・一体何を考えているのですか?



司令の意図が分からないまま、出撃。 鎮守府を後にしました。


・・・・・・


旗艦は私ですが、私の命令も聞かず相変わらずの口喧嘩・・・


「何で私が加賀さんと一緒なのよ! もう、最悪!」


「それはこっちの台詞よ! 5航戦と同行なんて・・・ここの提督は何て低能なのかしら。」


「・・・・・・」



口喧嘩どころか、司令の事を低能ですって!? この2人、沈めてやろうかしら?



「提督さんの考えは分からないけど、私が一番に活躍して見せるんだから! お古は指でもくわえて見てなさいよ!」


そう言って霧島の命令もなしに勝手に出力を上げた。


「・・・これだから5航戦は・・・でも、ここは譲れません!」


加賀も勝手に編成から離れた。


「ちょっ! 2人とも! 今すぐ戻って下さい!」


霧島の命令も虚しく、2人が戻ってくることはなかった。


・・・・・・

・・・



結局、出撃は中断し2人の捜索が始まった。


加賀は近くの島で中破で発見、命に別状はなかった。


瑞鶴は・・・勝手に鎮守府に帰還・・・霧島から叱責を受けたのは言うまでもない。



「私が一番活躍したよね? 霧島さん!」


「何言ってるの? 少し上手くいったからって盛り上がって。」


「そっちは何よ! 中破したんですって? うわぁ~ダッセぇ~!」


「・・・幸運艦だからって調子に乗らない事ね!」


「・・・・・・」



本当にこの2人、何とかなりませんか?



「・・・1週間分の結果が出ました。」


「早く教えて!」


「加賀さんは31撃墜・・・瑞鶴さんは・・・33撃墜です。」


「やったぁ~!! 見たか! これが5航戦の力よ!!」


「たかが2くらいで何を盛り上がっているのかしら・・・」


「何を!? この期に及んでまだ言う気!!」


2人がまた喧嘩を始める手前で霧島が止めた。


「確かに・・・瑞鶴さんが加賀さんより若干多いです。」


「でしょ! 負けておいて今更言い訳すんな!」


「ですが・・・お2人は・・・最下位とその2番目です。」


「えっ?」


「何? もう一度言ってもらえる?」


一瞬、2人は意味が分からず霧島に聞き直す。


「1位は、ダントツ150撃墜の蒼龍さん。」


2人「・・・・・・」


「2位は・・・145撃墜の大鳳さん。」


2人「・・・・・・」


「3位は私・・・霧島の110。」


2人「・・・・・・」


霧島は徐々に順位を発表・・・2人は無言のままだ。


「最下位から2番目は瑞鶴さん・・・そして最下位は、加賀さん・・・以上です。」


2人「・・・・・・」


「2人とも・・・恥ですよ、は・じ。」


2人「・・・・・・」


「1航戦の誇りも・・・2航戦に負けてしまうんですね・・・5航戦の力も・・・大鳳さんより劣るんですね。」


2人「・・・・・・」


「司令がお呼びです。 至急執務室に向かってください。」


そう言って霧島はその場から去った。



・・・・・・


「さて・・・」


2人がやってきたことで、提督は口を開く。


「長話は何だから、短く済ませよう。」


「・・・・・・」


「2人の内、1人を”解体”する。」


「なっ!?」


「勝手に資材を使う・・・旗艦命令を無視して行動する・・・戦果は最下位・・・本当は2人とも解体したいところだが、


 オレの慈悲だ・・・1人だけにしてやろう。」


「・・・・・・」


「それに・・・片方がいなくなれば、少しは真面目に動くだろう・・・さぁ・・・どちらが解体志願する?」


「・・・・・・」


しばらくの沈黙・・・先に口を開いたのは瑞鶴だった。


「加賀さんを残して! 解体するのは私にして!」


「・・・・・・」


「散々悪口言ってたけど、本当は加賀さんの事を尊敬していたんです! そんな先輩が解体されるなんて


 私には耐えられないわ!」


「・・・・・・」


沈黙していた加賀も口を開き、


「・・・そうですね・・・私を解体してください。」


「ちょっ! 加賀さん!」


「構いません。 私を解体して彼女がこれから活躍していけばいいわ。」


「・・・ふ~ん。」


「・・・・・・」


「瑞鶴は嘘が下手だな・・・目が泳いでいるぞ?」


「・・・・・・」


演技がバレてしまい、瑞鶴は顔をそらした。


「しかし、加賀・・・お前は本心で言っているようだな。」


「えっ?」


瑞鶴は加賀を見る。


「何で? どうして?」


瑞鶴は驚きを隠せない・・・加賀がゆっくりと口を開く。


「あなたがもっと本気で取り組もうとしないから、叱るだけ・・・」


「・・・・・・」


「5航戦ってバカにはしたけど・・・私なりにあなたの実力は認めているのよ・・・」


「・・・・・・」


「私が解体されれば、あなたは気が楽でしょう? さぁ提督、私で構いません。 早く済ませてください。」


「・・・ふむ。」


提督は加賀の態度に、


「不器用な優しさ・・・か。」


提督はそう感じた。


「なら・・・もう一度だけチャンスを与える。」


「? チャンス?」


・・・・・・


艤装を装着した加賀と瑞鶴が出撃する。



提督の出したチャンスとは・・・


出撃して帰還するまでに、2人合わせて100体以上撃墜しろとのこと。


簡単そうなチャンスだが、100体未満で中破・大破しても帰還は認めない、過酷な条件だった。


「要は沈んでも構わないって言ってるわけ? 提督さん酷過ぎるよぉ!」


「仕方がないわ・・・本当は解体されるはずだった・・・少し寿命が延びただけ・・・」


2人は敵が潜む海域に突入した。


・・・・・・


加賀が弓を構え、応戦・・・駆逐艦・軽巡を一撃で仕留める!


それに負けじと瑞鶴が別方向から応戦、加賀に負けず劣らずだ。


徐々に敵部隊のレベルも高くなり、空母と戦艦部隊が現れる。


2人は気合を入れ直して交戦開始・・・油断すれば一撃で致命傷を負ってしまうのだから・・・


・・・・・・


何体倒したか・・・50? いや、65・・・


2人の艦載機も残り少なくなったところで、一気に劣勢になる。


一瞬の気の油断・・・戦艦の一撃が加賀に直撃・・・大破した。


「加賀さん!」


瑞鶴が反撃・・・戦艦を撃墜した。


「大丈夫ですか!?」


瑞鶴の言葉に、


「ふふ・・・私はここまでのようね。」


加賀は静かに腰を下ろす。


「さすがは幸運艦ね・・・まだ小破まで行ってないなんて。」


「・・・・・・」


「私の負けよ。 あなたはさっさと鎮守府へ帰還しなさい。」


「そんな・・・」


「提督が言ってたでしょ? 100体未満でも、どちらかが沈めば帰還を許可すると・・・私はあと一撃で沈む・・・


 それが分かっているんだから・・・あなたは早く帰還しなさい。」


「・・・ずるいよ。」


「・・・・・・」


「こんな時だけ、先輩面しないでよ! それならどうしていつも先輩として接してくれないのよ!」


「・・・ごめんなさい。」


「・・・・・・」


「あなたには、常に強くたくましく成長してほしかった・・・だから厳しくしていたの・・・」


「・・・・・・」


「でも、あなたならもう大丈夫ね・・・さぁ、早く行きなさい。」


加賀は下を向く、しかし瑞鶴は・・・


「ふざけないで! こんなところに置いていけるわけないでしょ!」


加賀を担いだ。


「何のつもり? このまま帰還しても、提督に追い返されるだけよ。」


「だったら一緒に謝ろう! 提督さんに謝って、もう一度出撃させてもらおう?」


「・・・・・・」


「こんなのは公平じゃない! もう一度最初から勝負・・・いいでしょ?」


「・・・・・・」


その時の瑞鶴の表情は穏やかだった。


「・・・生意気。」


加賀も思わず笑みをこぼした。



・・・・・・


鎮守府に戻った2人を待っていたのは・・・霧島だった。


「お疲れ様です・・・司令は出張中なので伝言を伝えます。」


2人「・・・・・・」


「入渠後、2人には別の鎮守府で着任してもらいます・・・これが行き先の地図です。」


霧島は2人に地図を渡す。


「後・・・喧嘩は控えなさい・・・だそうです。」


「・・・・・・」


2人は入渠後、指定された鎮守府へと移動した。



・・・・・・


あれから2人はどうなったのかはわかりません。


鎮守府の方から聞いた話では、2人の仲は相変わらず良くないようです。


しかし、複数の目撃者によると・・・加賀さんは先輩らしく振る舞い、瑞鶴さんは後輩らしく一歩下がる感じで、


お互いの信頼関係は築いているように感じる・・・という内容でした。








「加賀と瑞鶴」 終









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