「日雇い艦娘」
駆逐艦の白露が鎮守府に着任したが・・・
「今日からこの鎮守府に着任ね~。」
門の前で1人の女の子が立っている。
「まずは執務室だよね? よし、頑張ろう!」
そう言って、女の子は鎮守府内に入っていく。
・・・・・・
「白露型1番艦の白露です、よろしくお願いします!」
執務室に入り、提督と秘書艦に元気よく挨拶をする白露。
「君の話は前の鎮守府から聞いている、早速だがすぐに取り掛かってもらいたい!」
「はいっ! 白露に任せて~!」
提督の指示で、秘書艦は白露と一緒に執務室から出て行く。
白露と秘書艦が廊下を歩いている中、
「今回は前の鎮守府とは違って、やる事が多いのですが・・・人手を用意した方がいいですか?」
秘書艦の気遣いに、
「いいです、まずは白露が1人でやってみるから。」
白露が自分の胸をドンと叩く。
「ここです。」
秘書艦がある室内に案内すると、
「ふむふむ、確かに・・・まぁ焦らず地道にやっていきますか~♪」
そう言って、白露は紙に何やらメモを書いて行き、
「この紙に書いた物を用意してくれますか?」
白露は紙を渡すと、
「分かりました、なるべく早く用意しますので、お待ちください!」
紙を渡された秘書艦は部屋から出て行く。
「さぁて、やりますかぁ・・・白露の本気を見せてあげる。」
そう言って、白露は自分を意気込み作業を行う。
・・・・・・
1時間が経過した頃、
「お待たせしました白露ちゃん、書いてある物を持ってきました。」
秘書艦が紙に書いた物を持って戻って来る。
「ありがとう、そこに置いてください!」
白露は何かの作業をしているようで、手が離せない様子。
「何と、もうここまで進めているとは・・・前の鎮守府での噂は本当だったようですね!」
目の前の光景を見て秘書艦は驚きを隠せない。
「あっ、早速だけどすいません。 袋からあれを取って、白露に下さい。」
「はい、少々お待ちください・・・どうぞ。」
白露の指示で秘書艦が物を渡す。
「後はこれで押さえて・・・よし、大分落ち着いたかな。」
白露は額の汗を拭う。
・・・・・・
「お疲れ様です、白露ちゃん。」
秘書艦は白露にジュースを差し出す。
「ありがとう・・・ごくごくごく、ぷはぁ~♪」
貰ったジュースを勢いよく飲み干す白露。
「それにしても凄いです、あれだけの作業を1人で行うとは!」
秘書艦は白露の働きぶりに驚きを隠せない。
「えへへ~♪ いつも通りだよ~♪」
そう言いつつも、白露は顔を赤らめる。
「後、提督から「執務室に来るように」と言われてるんですが?」
「はい、片付けが終わったらすぐに執務室に行きます。」
そう言って、白露は部屋の整理を始める。
その後、執務室に赴き提督にも感謝の言葉を掛けられた白露。
「白露さん、お疲れ様です!」
食堂で食事をしている白露に声を掛ける艦娘たち。
「皆もお疲れ様! 今日の出撃はどうだった? きつかった?」
白露の元々明るく元気な性格が功を成しているのか、どの艦娘に対しても打ち解けられる白露。
「でも、皆無事に帰還できて良かったね~♪ うん、それが一番だよ。」
白露と艦娘が話せば、自然に周りの艦娘たちも集まっていく。
「前の鎮守府でも大活躍だと聞いたんですが?」
前に白露がいた鎮守府に姉妹艦がいたようで、白露の活躍を聞いた朝潮。
「いやいや、本当に当たり前の事をやっただけだよ。」
そう言いつつも、褒められて顔を赤くする白露。
「もし、可能ならこれまでの白露さんの活躍の経緯を聞かせて欲しいのですが!」
艦娘からの要望に、
「いいよ~、でも今日は夜だし明日でもいいかな~?」
時計を見ると、夕方20時であり、駆逐艦の就寝時間が迫っていた。
「あっ、はい! いつでも構いませんよ!」
「うん、じゃあまた明日! 皆、おやすみなさい。」
白露は皆に挨拶をして用意された部屋に戻って行く。
・・・・・・
翌朝になり、
「お世話になりました~。」
鎮守府外で、荷物を持って立ちすくむ白露の姿が・・・
「君には本当に感謝する、本当ならこの鎮守府に留まって欲しいのだが・・・」
提督はそれ以上の事情を離せない。
「いえ、構わないです。 1日だけだったけど、あたしはこの鎮守府にいて楽しかったです。」
白露は笑顔で返す。
「本当にすまない・・・では、これが昨日の手当てと謝礼金だ、それでは健闘を祈る!」
提督は白露に敬礼をする。
「それでは、提督! 皆の安全と武運を祈るね!」
白露も敬礼をして鎮守府から去る。
「白露さん・・・」
鎮守府の窓から白露の後姿を見つめる朝潮たちの姿が・・・
・・・・・・
・・・
・
「今度はこの鎮守府に着任かぁ~。」
鎮守府外で白露が立ちすくんでいる。
「まずは執務室。 よし、頑張ろう!」
そう言って、白露は鎮守府内に入っていく。
「今日から着任しました、白露型の長女の白露です!」
執務室に入り、自己紹介を始める。
「よろしく、着任早々悪いが・・・」
提督が口を開いたところで、
「知ってます、すぐに準備します!」
白露は秘書艦に案内されて、その場所に向かう。
「今回は何人ですか?」
白露の問いに、
「3人です。」
「3人かぁ~・・・ちょっときついかもね。」
白露は苦笑いだ。
「急を要しますが、白露さんが倒れてしまっては元も子もないです。 まだ猶予がありますので、
白露さんのペースで構わないです。」
秘書艦からの気遣いに、
「分かりました、お言葉に甘えてあたしのペースでやるね~♪」
白露は笑って返した。
「さて、どれどれ・・・ふむふむ。」
白露は3人を見て、
「じゃあまずはこの子から。 準備をお願いします。」
「分かりました・・・くれぐれも無理はなさらないように。」
白露からの指示で秘書艦は人を読んで準備を始める。
1時間後、
「あの子はどう? 順調?」
白露の問いに、
「今は落ち着いています、白露さんには本当に助かります!」
秘書艦は感謝でいっぱいだ。
「じゃあ今度は2人目をやろう!」
白露の意見に、
「なっ!? 行けません! 先ほど終わったばかりなのに! ”最低でも1日は休め”と提督から指示が出ていますよ!」
秘書艦は説明するも、
「大丈夫大丈夫! あたしはまだ元気だから・・・今の内にお願い、ね?」
白露の願いに、
「・・・分かりました。」
白露の言葉に、秘書艦は再び準備を整える。
更に1時間後、
「ふぅ、これで2人目もよし、と。」
疲れたのか、終わった時点で白露の表情は暗い。
「大丈夫ですか!? だから言ったのです、無理はしないで下さいと!」
秘書艦からの叱責に、
「ごめんなさい~・・・えへへ~♪」
謝りつつも、舌を出してごまかす白露。
「今日は3人目は無理だね~、明日でいいかな?」
「構いません・・・それに本来なら”1週間に1人”のはずです、本当に明日でいいんですか?」
秘書艦の問いに、
「うん、いいよ♪」
白露はまた明るい笑顔で返す。
「下手をすれば死んでしまいます・・・それでもいいのですか、白露さん?」
秘書艦の言葉に、
「うん、あたしの活躍で誰かが助かるなら、それで本望だから!」
「・・・・・・」
白露の持つ信念に、秘書艦は何も言えず部屋から去る。
そして、翌日。
白露は本当に3人目に対して作業を展開、無事に終了させたが、
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
白露が今にも倒れそうな動きで、廊下を歩いて行く。
「大丈夫ですか白露さん!」
廊下で会った秘書艦が白露を抱き抱える。
「あっ、ありがとう~♪」
明らかに体調が悪いのに、それでも笑って返す白露。
「部屋に連れて行きます、私の肩に掴まって下さい。」
秘書艦の言われたとおりに肩に腕を乗せると、部屋に連れて行ってもらう白露。
・・・・・・
「ありがとう~、いやぁ~本当に倒れるかと思ったね。」
部屋の椅子に座って休憩する白露。
「白露さんには皆感謝の言葉でいっぱいです、ですが白露さんの体も危険な状態です。
提督に報告しておきますので、最低でも1週間はこの鎮守府でお休みください!」
そう言って、秘書艦は白露の部屋から出て行く。
「1週間・・・あたしも本当はそれ位休みたいんだけどね~。」
そう言って、ポケットから何かのメモ帳を取り出し開く、
「・・・無理だね、1,2日以内にこの鎮守府から出ないと行けないよ。」
そう言って、開いたメモ帳を閉じる。
予想通り、執務室に呼ばれる白露。
「君には感謝の言葉しかない! 本来ならもっとここで休んで貰って欲しいのだが・・・」
提督はそれ以降の台詞を言えない。
「分かってます、また要請ですよね?」
白露には既にお見通しだった。
「知っていたか・・・明日か明後日までにと話が来ている。」
提督の言葉に、
「分かりました、じゃあ今日は部屋でのんびりさせて貰うね~♪」
白露は敬礼をして執務室から出て行く。
翌朝、
「お世話になりました~。」
簡易な荷物を持って鎮守府外に立つ白露と秘書艦、
「こちらが今回の手当てと謝礼金です、本当にありがとうございました!」
秘書艦は白露に敬礼をする。
「短い間だったけど、楽しかったです! この鎮守府の安全と武運を祈ります!」
白露も敬礼をして鎮守府から去る。
・・・・・・
「・・・ここだね。」
目的の鎮守府に着き、
「急を要するとか言っていたし、すぐに状況を確認しないとね!」
そう言って、鎮守府内に入って行く白露。
「来てくれたか! 待っていたよ!」
白露が執務室に入った瞬間に、安堵の息を漏らす提督。
「・・・急ぎのようだね、すぐに案内してください。」
白露の言葉に、秘書艦がすぐさま案内を始める。
「お体は大丈夫ですか? 前の鎮守府の提督の話によると、まだ1,2日間しか休んでいないと聞いていますが?」
「大丈夫! あたしはこれでも丈夫だからね~♪」
白露はいつもと同じ様に笑顔で返す。
「・・・無理はなさらないでください、白露さんに死んで欲しいわけではありませんので。」
秘書艦からの気遣いに、
「大丈夫だって! それに、あたしが死んでも、誰かが助かるならそれで本望だし!」
白露は死ぬことを恐れていないようだ、
「・・・・・・」
白露の言葉に秘書艦は何も答えられない。
「ここです。」
室内に入ると、そこには艦娘が1人ベッドで寝かされていて、
「重症だね・・・それに傷が深いから、血も止まっていないし。」
危険な状態なのは、すぐに分かり傷が深いためにベッドの下は血溜まりが出来ていて、
「今すぐに”輸血”が必要だね・・・じゃあすぐに準備をお願いします!」
「分かりました!」
そう言って、白露たちは準備に取り掛かる。
白露が鎮守府で行っている事・・・それは主に艦娘の”治療と輸血”。
出撃で被弾した艦娘の大半は、入渠で治るのだが、
損傷が激しいと、入渠が出来ず治療と言う形になる。
その場合、鎮守府に医療班と言う専門分野の人間が治療に当たるが、
投入されたばかりで、全部の鎮守府には配属出来なかった。
どこで専門知識を得たのか不明だが、白露は”医療班と同等の専門知識と治療法を身に着けており、
更に艦娘への輸血まで出来る貴重な艦娘”だった。
本来艦娘の血液は種類があり、”同じ型の血液を輸血しないと最悪死に至る”が、
この白露は特異体質で、”全部の型の艦娘に輸血出来る艦娘”であった。
そのため、白露は短期間の間に複数の鎮守府から要望が来るのだ。
「準備が出来ました、白露さん。」
「あたしも、いつでもいいよ!」
白露は自分の腕に針を刺す、
「では、行きます!」
そう言って、相手の腕に針を刺した瞬間に、白露の腕から流れた血液が相手の腕に流れ込んでいく。
・・・・・・
1時間後、
「報告、白露さんの輸血のおかげで駆逐艦の子は徐々に体調を取り戻しつつあります!」
「そうか! 良かった!」
報告を聞いた提督は一安心する。
「あの子に感謝しなくてはな! それで、白露はどうした? 部屋で休んでいるのか?」
提督の問いに、
「・・・・・・」
秘書艦は無言のままだ。
「どうした、そんなに悲しい顔をして?」
提督の質問に、
「それが、白露さんは今、意識が無いんです!」
秘書艦から告げられた衝撃の一言。
「白露さん、しっかりしてください!」
艦娘たちが何度も白露の名を叫ぶも、彼女は目を覚まさない。
「あっ、提督! 白露さんが目を覚まさないんです!」
提督と秘書艦が入って来て白露の状態を確認する。
「・・・・・・」
提督と秘書艦の表情は重苦しい。
「無理をするなと、あれほど念を押したんだが・・・」
提督は眠りに就いている白露を見て、
「起きろ白露! 君はまだここで死ぬべきではないんだ!」
そう言って、提督は白露を何度も呼び続ける。
不思議な事に、意識が無い状態にも関わらず、白露の表情は笑顔のままである。
・・・・・・
・・・
・
これは約1年前、白露がまだ鎮守府で秘書艦をやっていた時の話。
「提督ぅ~、今日の書類持って来たよ~。」
白露が大量の書類を持って執務室にやって来る。
「ご苦労様、机に置いてくれ。」
提督の指示で机に書類を整理する。
「提督ぅ、またそれ読んでるの~?」
白露が呆れて口を開く。
提督が読んでいたのは、医療に関する本。
白露も提督に勧められて本を開いた物の、たったの1ページ目ですぐに閉じる始末で、
「そんな文字ばっかの本なんかよく読む気になるね。」
白露の言葉に、
「ははは~、白露は漫画の方が好きだもんな(笑)」
提督はまた読み出す。
「て言うか、何で読んでるの? 提督を辞めて医療関係に務めたいの?」
白露の質問に、
「いや、むしろ提督を辞めるつもりはないよ。」
「じゃあどうしてそんな本を読んでいるの?」
「これはあくまで、治療の基礎が記されているだけ。 人工呼吸や心臓マッサージ等の主に蘇生法がね。」
「でも、それって医療班が鎮守府にいるんだからわざわざ提督が覚える必要はないんじゃあ?」
白露の言っている事は最もだが、
「確かにな、でも全部の鎮守府に医療班がいるわけじゃない・・・もし、オレが出張で他の鎮守府に
行った時に誰かが倒れているような事があれば応急措置位は出来る、それで覚えたいと思ってな。」
提督の言葉に、
「ふ~ん、成程ね~。」
白露は軽く返す、
「まぁ、”備えあれば憂いなし”ってことわざがあるだろ? あくまで予備知識だけどね。」
そう言って、提督は本を読み続ける。
”そんな事・・・医療班に任せておけばいいじゃん!”
白露は心の中で思っていた。
あの時が来るまでは・・・
・・・・・・
イベント海域出現や、新海域の攻略任務もあり執務室でも多忙な日々が続き、
「提督! 少し休んで! 全く休みを取ってないでしょ!」
白露は提督に訴える。
「オレは大丈夫、まだまだいけるさ。」
提督は笑って返すが、表情を見る限り今にも倒れそうな状態で、
「このままだと本当に倒れちゃうよ、皆と書類整理やっておくから後は休んでよ!」
白露の願いに、
「ああ、じゃあこれが終わったら後は、お言葉に甘えて頼もうかな・・・」
そう言って、提督は仕事を再開する。
「あたしも手伝うよ!」
白露も手伝い、2人で書類をまとめて行く。
「ああ~、やっと終わったぁ!」
結局、仕事が終わったのは深夜で、
「ありがとう白露、おかげで今夜はぐっすり休めそうだ。」
提督は大きく伸びをする。
「じゃあ提督、ゆっくり休んでね。 あたしは執務室内を少し整理しておくから。」
「分かった、白露も無理をしないように・・・」
提督は立ち上がり、医療の本を持って執務室から出て行く。
・・・・・・
「よし、執務室内の掃除は終わり! あたしも部屋に戻って寝よ、ふぁ~あ!」
白露は大きな欠伸をして、執務室から出る。
「て、提督! どうしたの!?」
そこには、廊下で倒れている提督の姿が、
「提督、しっかりしてよ!!」
揺すって見るが、反応がない。
「・・・い、医療班! 早く電話して助けて貰わないと!」
すぐに執務室に戻って連絡を入れて見るが、
「・・・出ない。 それに他の鎮守府に出張中って・・・」
医療班は今、呼び出しを受けて鎮守府を空けているらしい。
「とにかく! 今すぐに来て、提督が倒れているの! 出来るだけ早くね!!」
白露は叫ぶと受話器を切る。
「提督! もう少しだよ、もう少しで助けに来るからね!!」
医療班に連絡して数分が経っている、
「あたしに何か、何かできる事は・・・」
考えていると、
「! 提督が持っていた医療の本!」
そう思い、辺りを見回すと、
「・・・あった。 蘇生のやり方は・・・」
白露は本を開いて蘇生法を調べるが、
「どこ? どこに書いてあるの? 文字ばっかだし概要とか説明だけで・・・」
白露は提督に勧められてはいたが、この本を全く読んでいない・・・そのため、
どのページに蘇生法が記されているのか当然分かるはずもなく、
「どこ・・・どこに書いてるの!?」
必死に内容を探している内に、
「大丈夫ですか、提督!!」
昼勤の医療班が偶然居合わせて、
「しっかりしてください提督、しっかり!!」
すぐに心臓マッサージを施す医療班、
「提督・・・」
その場を見ている事しか出来ない、ただ提督が無事だと祈る白露。
「・・・・・・」
医療班が突如蘇生法を止める。
「? どうしたんですか、提督は助かったの?」
白露の質問に、
「残念ですが・・・もう手遅れです。」
「・・・・・・」
白露は何も答えられなかった。
・・・・・・
過労で意識不明の状態で廊下に倒れた提督。
その時、すぐに医療班が駆け付けて蘇生治療を行っていれば助かったかもしれないとの事。
蘇生と言っても、時間制限があり倒れてから数分の間の蘇生なら助かる確率は上がるが、
10分以上経った時点で蘇生を行っても助かる確率は・・・ほぼなくなる。
提督の死はすぐに本営に知らされ、原因は医療班の人手不足によるものと判断。
早急の対策を懸念することになったが・・・
「・・・・・・」
執務室でただ悲しみに暮れる白露。
「あたしのせい・・・提督が死んだのはあたしのせい。」
あの時、すぐに蘇生を行っていれば助かったかもしれないのに・・・
「文字が多かったから、それで読んでいなくて・・・内容が難しかったから読む気にもなれなくて。」
もし、その気持ちを捨てる決心があれば、提督は助けられたかもしれないのに、と思うと白露は余計に後悔する。
その後、葬儀が行われ、白露も参加する。
「気にする必要は無い、こんな事態は時々起きるものだ・・・こればかりは仕方がない。」
上官に慰まれる白露、
「・・・・・・」
それでも、白露の心境は複雑だ。
医療班がいれば大丈夫・・・
「でも、あの時みたいに出張で誰もいなかったら?」
「倒れて時間が経ってから駆け付けてきたら?」
「医療班が休日の時に誰かが倒れたら?」
そう思ったら、結局助けられない・・・医療班がいてもいなくても状況は変わらない、と白露は感じた。
「・・・・・・」
白露が手にしている物、それは提督が読んでいた医療本。
「・・・・・・」
提督は誰かが倒れていたら、”真っ先に助けたい”、と言っていた。
でも、その願いは無残にも引き裂かれた。
「だったらあたしが・・・」
白露はある決心をする。
「あたしが・・・提督の代わりに、誰かを助ける!」
自分のせいで提督を死なせてしまった事への後悔、そして提督が誰かを助けたい、と言う願いを叶えたかったのか、
「あたしが提督の願いを叶える!!」
そう言って、白露は本を強く握りしめた。
それから、白露は猛勉強の1つだ。
提督の死後、違う鎮守府に引き取られ出撃と遠征を行う一方で、時間があれば医療本を読むの日課。
休日には図書館へ赴き、医療関係の本を読み続ける。
その結果、医療班が持つ専門知識と同等の知識を持った。
更に白露は医療班には出来ないある役割を願い出る・・・それが艦娘に対しての”輸血”だった。
前にも説明した通り、
艦娘の血液には種類があり、同じ型の血液を輸血しないと最悪死に至る。
検査の結果、偶然にも白露の血液は”全艦娘に輸血可能な血液を持っていた”のだ。
こうして、白露は鎮守府では異例の”医療艦と輸血艦”としての役割を担った。
だが、輸血が出来ると言っても人間と同じで大量の失血で命を落とすことにもなる。
1人に対して輸血を終えたら最低でも、”1週間”は休養しなければならない。
しかし、輸血を求める艦娘は後を絶たず、結果白露は僅か1,2日の休養後に鎮守府を出ていたのだ。
下手をすれば白露も命を落とすかもしれないのに、それでも白露は笑顔で受け入れていた。
・・・・・・
・・・
・
”ねぇ提督・・・あたし頑張ったよね?”
”たくさんの艦娘を助けたんだから、あたしはよく頑張った方でしょ?”
”ちゃんと提督の代わりに困っている人を助けたよ?”
”だからもういいでしょ? あたしもそっちに行くから、待っててね~”
生と死の境目で、僅かに残る意識の中で白露は、届くはずのない提督に声を掛けるが、
”まだ白露には、やるべき事があるだろう?”
白露の頭に響く誰かの声、
”いつまで寝てるんだ? ほら、さっさと起きるんだ!”
その瞬間、白露は光に包まれ、意識が消える。
・・・・・・
「う、う~ん・・・」
白露は目を覚ました。
「提督! 白露さんの意識が戻りました!!」
「本当か!? 医療班! すぐに点滴と治療を!」
提督の指示で白露に治療を施していく。
「・・・・・・」
白露は辺りを見回す。
「気が付いた、白露さん! ずっと意識が無かったんですよ!」
「・・・・・・」
「でも、もう大丈夫です、今点滴を投与しています、後は安静にして、との事です。」
「・・・・・・」
”さっき、あたしの頭に響いた男の人の声・・・あれはもしかして、提督の声かな?”
聞き覚えのある声、確かにあれは提督の声そのものだった。
”そっか、提督はあたしを助けてくれたんだね。”
そう思いつつ、白露は静かに治療を受ける。
・・・・・・
白露が安静にしてから1週間が経過し、
「お世話になりましたぁ~。」
鎮守府外に荷物を持って立つ白露、そして提督と秘書艦。
「絶対に無理をしないでくださいね、約束してください!」
秘書艦の言葉に、
「分かりました、えへへ~♪」
またも舌を出してごまかす白露。
「これが鎮守府で活躍した手当と謝礼金だ・・・本当に行くのか? もう少し休んでいけば・・・」
提督が言い掛けた所で、
「大丈夫、あたしはこれでも丈夫なんで!」
そう言って、白露は胸をドンっと叩き、
「では提督と秘書艦さん! この鎮守府の安全と武運を祈ります!」
そう言って、白露は鎮守府から去る。
・・・・・・
「さてと、次の鎮守府は・・・と。」
白露はメモ帳を開いて、確認をする。
「うんうん、次の鎮守府は輸血は無しだね・・・治療だけだから少しは楽かな。」
それでも、いつ艦娘が輸血を要請するかは分からない、敵の猛攻が激しく駆逐艦が戦艦の砲撃で
重症化する話はよくあることだ。
「頑張らないとね! だってあたしは、提督と約束したんだから!」
死んだ提督に代わって艦娘を助ける、白露の気持ちは揺るがない。
「あっ、あの鎮守府かな・・・よし、張り切って行きますか~!」
白露は意気込んで、鎮守府へと歩を進める。
「白露型の1番艦、白露です! よろしくお願いします!」
執務室に入って元気よく挨拶をする。
「君の話は聞いている、早速だがすぐに治療に取り掛かってもらいたい!」
提督の願いに、
「分かりました、では部屋の案内をお願いします!」
白露は秘書艦の後について行く。
「ここです。」
秘書艦の差した部屋の扉を開けると、
「むむ・・・これはまた、大怪我をしているね。」
白露はすぐに準備を始める。
「人手を呼んだ方がいいでしょうか? 流石に白露さん1人では苦戦を強いられそうですが?」
秘書艦の気遣いに、
「大丈夫! まずはあたし1人で頑張って見ます!」
いつもと同じ元気よく返して、白露は作業に移る。
「じゃあ、医療艦白露! 今日も始めちゃいますか~!!」
白露は改めて気合を入れ直し、今日も艦娘たちのために治療を始めるのだった。
「日雇い艦娘」 終
白露のシリアスやメインもうちょい有っても良いのにね
白露ssもっと書きましょう~♪(ネタは豊富)
寝落ちが最大の敵w
ネタが豊富なのか(困惑)
割と本気で感服しやした