「提督とビスマルク」
霧島がいる鎮守府に海外艦のビスマルクが着任。
しかし、挨拶早々提督が着任を拒否する。
ここね・・・
案内書の通り進んだら目的の鎮守府が見えた。
今日から私はここに着任するのね・・・
聞くところによると、ここの提督はかなり変わっているらしいわね。
まぁ別にいいわ、私が指導してあげればいいんだから。
さてと・・・あまり外にいるとお肌が荒れちゃうわ・・・
さっさと入りましょ・・・
・・・・・・
執務室に入って、軽い挨拶をした後 自己アピールをした。
私がいれば敵なんて一捻りよ! さぁ、私を褒めてもいいのよ?
その後の提督の発言に耳を疑った。
「お前はいらない、ここには霧島がいるから十分。」
即退去を命じられたが、上の申し出を見せると一時的に「保護」という形で鎮守府にいることを許可された。
それにしたって・・・何? いきなり退去命令って・・・
私はドイツが誇る戦艦ビスマルクよ!
どの戦艦よりも強く、優雅で華麗なこの私をあの提督は「いらない」ですって!!
屈辱だわ・・・ほんとに最悪・・・
それに霧島って誰? 提督は霧島って艦娘をそんなに信頼してるわけ?
じゃあ彼女と一戦交えようじゃない・・・
提督のお気に入りの霧島を負かして私が強いってこと、証明して見せるわ!!
・・・と思ったのも束の間・・・
鎮守府内の掃除を命じられた。
着任早々何よあの提督! この金髪美人の私に掃除ですって!
どれだけ人使い荒いのよ! もう最悪!
「掃除が終わらなければ食事なしね」
・・・・・・
その後は黙って掃除を続けた・・・
はぁ・・・
本当だったらすぐに主力部隊に入って皆に強さを見せつけてあげようと思っていたのに・・・
その私が今は掃除で疲れて木陰で休憩してるなんて・・・
「お疲れ様です、良ければどうぞ」
・・・誰かしら? 私に飲み物をくれたわ・・・なかなか気が利くじゃない。
「初対面ですね、今日着任ですか?」
話しやすい感じの艦娘だったから、私が来た経緯を教えた・・・
・・・・・・
いきなり着任拒否された挙句、掃除を強要されたことも全部言った。
「司令らしいですね、でもあれでもすごく頼りになるんですよ。」
あーそう、頼りになるねぇ・・・
私は今日の態度で頼るなんてまっぴらごめんだわ!
「まぁそう不機嫌になさらずに・・・」
・・・・・・
さっきの艦娘、なかなか落ち着いていて話しやすかったわ。
・・・さてと、休んだことだしもうひと踏ん張りね!
・・・・・・
終わった・・・ああ~疲れた。
気づいたらもう夕方じゃない・・・体中汗だらけよもう! シャワー浴びたい気分ね。
執務室に行き、掃除が終わった旨を伝え、浴室を教えてもらう。
・・・・・・
シャワーを浴び夕食をいただいた・・・なかなか味は悪くないわね。
部屋に案内され、そのまま私はベッドに飛び込む。
・・・・・・
改めて考える。
今日着任拒否されたことを・・・
・・・・・・
わからない・・・私の何がいけないって言うのよ・・・
考えているうちに眠くなり、そのまま眠りに就いた。
翌日、編成には入れてもらえず相変わらず掃除をさせられる始末・・・
だ・か・ら! 私の何がいけないのよ!! と聞いたら、
「自分で考えろ」
どれだけドSなのよ、この提督は!
結局昨日と変わらず掃除をして一日が終わる・・・
翌日も・・・
明後日も・・・
その次の日も・・・
そろそろ嫌になってきたわね・・・
そんなに出撃させる気が無いなら私が勝手に行ってやるわよ!!
・・・・・・
誰もいないのを見計らって・・・艤装装着よし! 後は進水すれば・・・
直前で誰かに止められた、相手は・・・この前私に飲み物をくれた艦娘だった。
「命令違反です、処罰の対象になりますよ。」
もっともな意見・・・提督からの許可も受けていない・・・けど、
こんな掃除だけの生活していたら息が詰まってしまうわ! 私は艦娘! 戦うために存在するのよ!
そう叫んで私は海上を進んでいった、彼女はそのまま私を見続けていた。
こうなったら・・・
こうなったら、敵を倒しまくって私の存在価値を見せつけてやるんだから!
そうすれば提督も私の事を手放せなくなるでしょ!
・・・・・・
何体倒したかしら・・・10体? いえ、まだまだ・・・
・・・・・・
ああ! 損傷、中破・・・まだまだ、これからよ!
・・・・・・
大破、主砲が歪む・・・敵はかろうじて撃沈・・・
・・・・・・
どこまで進んだのかしら? 鎮守府の影すら見えない・・・
そして・・・
私の周りに敵が囲む。
私が倒したのは15体? いや18体・・・そんなことはもうどうでもいいか。
最後の時が迫っているのに、撃破数なんて数えても仕方がないわね・・・
結局私は何がしたかったのかしら・・・
提督に着任拒否をされて頭に血が上ってやけになって起こした結果がこれ・・・
敵を多数撃破して、戦果を取って提督に評価してもらおうと欲を出したためにやった結果がこれ・・・
結局沈むんじゃ私のやったことはすべて無駄・・・
・・・・・・
改めて、考えた。
なぜ私は着任拒否されたのか・・・
・・・・・・
提督は私を拒否したかったのではなく、「態度を改めろ」と言いたかったのかも・・・
着任前、私は自分の力に絶対的自信を持っていた、だからいつも自信過剰で
周りを見下した態度を取っていた、誰も文句を言わないから私もつい調子に乗って・・・
提督はわかっていたのかもしれないわね・・・私が普段から態度が大きくて、周りのことなんか
気にもせず、自分の思ったことだけ主張する私の本心を・・・
掃除している時に私に飲み物をくれた艦娘が多分・・・霧島ね。
疲れている相手に飲み物を出すなんてこと・・・私は一度もしたことが無い、それだけ自己中心的だったという証拠。
提督が言った 「霧島がいるから十分」は、
「霧島のような思いやりのある艦娘がいるから私のような自信過剰な艦娘はいらない」と言おうとしたのかも・・・
・・・今さらわかったところで絶望的状況は変わらないけど・・・
でも、もし生きて帰ることができたらまずは提督に謝ろう・・・そして自身の態度を改めよう。
・・・生きていたらだけどね。
そう思った瞬間、目の前に霧島が現れた。
「大丈夫ですか?」
・・・って何であなたがここにいるのよ!?
嬉しかったけど、素直に言葉に出せず貶してしまう。
霧島はそれを見越していたのか私に言う。
「あなたは大切な仲間なんです、見捨てることができますか?」
・・・・・・
仲間・・・私を仲間と言ってくれるの?
霧島が応戦し、敵は殲滅・・・強い!
あれだけいた敵を霧島一人で、しかも損傷もなく・・・強い! 提督が信頼する理由が分かるわ。
「さぁ、鎮守府へ帰りましょう。」
私は霧島に抱えられながら、鎮守府へと帰った。
処分はなかった、むしろ無事だったことを喜んでいた。
私は自身の態度を改める旨を伝えた、すると提督は・・・
「ならば着任を許可する、これからもよろしく。」
提督は着任を受け入れてくれた。
・・・・・・
現在主力部隊に加わり、戦っている。
最初は慣れなかったけど、皆優しい艦娘ばかりだったからすぐに打ち解けた。
艦娘たちがこんなに笑顔なのはあの提督のおかげなのだろう。
ここの提督は変わっている・・・か
そうね・・・確かに・・・変わっているわね。
「提督とビスマルク」 終
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