「深海棲艦本拠地」
「提督の辞任」の続きで、敵の魚雷を受け、海に沈んだ提督・・・深海棲艦が提督を本拠地へと連れて行き・・・
のんびり更新していきます。
「司令・・・司令ィィィィッ!!!!」
ほんの一瞬の事だった・・・
鎮守府近海まで帰還したところで、尾行していた敵潜水艦からの魚雷が放たれ・・・秋月に命中・・・かと思ったが、
「・・・・・・」
提督が庇って代わりに直撃、秋月は大量の返り血を浴び、
「油断・・・したかな・・・」
その言葉を最後に、提督は海に沈んだ。
「司令! 司令ィィィィッ!!!!」
秋月は泣き叫びながら海中に向かって叫ぶが・・・提督の耳には届かなかった。
「コチラ潜水艦・・・艦娘ヲ捕獲、コレヨリ本拠地ヘト帰還スル!」
意識のない提督を抱えると敵潜水艦たちは海中へと潜って行った。
・・・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・」
秋月は鎮守府まで走っていき、
ドンッ!!
勢いよく扉を開けた。
その光景に皆も、秋月の態度に明らかな異常を感じた。
「司令が・・・司令がぁ!!」
秋月が泣き叫んで・・・
「秋月さん! どうしたんです? 司令がどうかしたんですか!?」
霧島が駆け付け、
「司令が・・・司令が・・・」
「秋月さん!?」
「・・・海に・・・沈みました!!」
・・・・・・
・・・
・
「秋月さん! 落ち着いて!」
泣き叫ぶ秋月を霧島が必死に落ち着かせる。
「私の・・・私のせいで!!」
秋月は一向に落ち着かない、
「私のせいで、司令は・・・司令はぁ!!」
「秋月さん!!」
霧島が叫んで、
「落ち着いて! いい? まずは落ち着いて・・・」
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
霧島の説得にようやく落ち着いた秋月、
「司令が・・・司令が・・・」
また泣き始めて、
「私のせいで・・・私の・・・私のせいで!!」
「・・・・・・」
霧島はそれでも冷静に、
「心配しないで・・・司令は大丈夫ですよ。」
「・・・霧島さん?」
「司令が・・・そんな簡単に死ぬとは思えません。」
「・・・・・・」
確証はない・・・でも、死んだとも言い切れない、霧島も秋月と同じように心境は複雑である・・・だが、
「待っていれば、その内帰って来ますよ、だから心配しないで、秋月さん。」
「・・・はい、わかりました。」
秋月は混乱しつつも、霧島の言う通りに提督の帰りを待つことにした。
・・・・・・
・・・
・
ここは深海棲艦本拠地、
提督は何かの実験場で拘束されていた。
「コイツハ・・・艦娘デハナイ! タダノ人間ダ!」
リ級が叫んだ、
敵潜水艦の視力が悪かったのか、提督を艦娘と思い込んでいたようだ。
「人間ニハコノ薬ハ効果ガナイ・・・仕方ガナイ・・・コノ人間ヲ廃棄シテシマエ!」
リ級の指示で、チ級たちが提督の拘束を解き、廃棄場へと運んだ。
・・・・・・
「ヨシ! コノ中ヘ放リ込メ!」
チ級たちが勢いよく放り投げようとした刹那・・・
「拘束を解いてくれてありがとう。」
「ナニ!?」
その瞬間、チ級たちは斬撃により、その場に倒れた。
「・・・ここは敵の本拠地か。」
周りを見て判断する提督、
「・・・・・・」
潜水艦に撃たれた傷を見て、
「傷は浅いな・・・これならまだ戦闘続行は可能だな。」
提督は本拠地の探索を始めた。
・・・・・・
「それにしても・・・」
探索をし続けるが、
「広いな・・・こんな本拠地に深海棲艦の数を予想すると・・・」
あくまで予想であるが、100、200のレベルではない・・・1000? いや、もっといるような規模の大きさだ。
「中枢を見つけて破壊しないといけないな。」
提督は探索を続行した。
・・・・・・
「霧島さん・・・今日の書類をお持ちしました。」
「ありがとう・・・そこに置いてくれるかしら。」
いつも元気な霧島が、今は力無い言葉で発言する。
秋月と同様に提督が帰ってこないことを気にしているようだ。
「霧島さん・・・大丈夫ですか?」
村雨が心配するが、
「大丈夫ですよ、なぜそんな事を聞くんですか?」
「・・・・・・」
それ以上のことが言えずに、村雨は出て行った。
「・・・司令。」
霧島は提督の写真立てを見ながら呟いていた。
・・・・・・
「・・・?」
提督が陰に隠れる、
「ここも実験場か・・・」
入り口には敵軽巡2人・・・中には・・・重巡3人・・・全部で5人。
「・・・・・・」
無音で入り口に近づき・・・2人を切り捨てる。
軽巡から弾薬を1つ抜くき、中に投げる・・・重巡の1人が気づき、入り口に近づき・・・ボキィッ! (首の骨を折る)
後の2人も何事かと駆け付け・・・一瞬のうちに切り捨てられた。
「さて・・・ここは何だ?」
周りを見ると、培養液だろうか? カプセルが無数に置いてあり、中には何も入っていない。
「・・・・・・」
提督は奥へと入っていき、
「!?」
目の前の培養液に人が!? もしかして艦娘!?
「・・・・・・」
側にあった機器を適当に操作する・・・、カプセル内の液体が排出され・・・カプセルが開いた。
「おい、しっかりしろ!」
提督は彼女を持ち上げ、顔を確認した。
「あれ、この子はもしかして・・・」
提督には見覚えのある顔だった。
・・・・・・
「霧島さん・・・今月の艦娘出撃記録です。」
村雨からこの世界の全鎮守府の情報が記録された資料を受け取る。
「・・・・・・」
その資料には、各艦娘の出撃回数、撃破記録等が詳細に書かれているが・・・
「・・・今月の轟沈艦娘は・・・1人。」
轟沈した艦娘、行方不明になった艦娘の記録も書かれていた。
「轟沈した艦娘は・・・正規空母の・・・赤城さん!?」
霧島は驚いた。
・・・・・・
「・・・う~ん。」
「気が付いたか?」
「!? あ、あなたは・・・」
「覚えていないか? ほら、加賀って言う空母の艦娘と一緒にオレの鎮守府に来たことがあるだろう?」
「・・・・・・」
記憶が曖昧なのか、彼女は思い出せないようだ。
「あの・・・ここはどこです?」
「恐らく、深海棲艦の基地だ。」
「!? そうなんですか!」
「多分な・・・本当にここに来たことを覚えていないのか?」
「・・・・・・」
彼女は思い出そうとするが・・・
「すいません・・・思い出せません。」
「そうか・・・その内思い出すだろう。」
「・・・・・・」
「オレはこの施設から脱出するつもりだが・・・お前はどうする? 一緒に来るか?」
「・・・はい、私も連れて行ってください!」
提督は彼女(赤城)を連れて実験場から出た。
・・・・・・
「敵の気配がない・・・これはチャンスだな!」
提督と赤城が急いで脱出する。
「・・・・・・」
敵の気配がない・・・いや、正確に言うと「敵が全くいない」が正しい。
「おかしい・・・これだけ大きな規模だ、敵がたくさんいてもおかしくない・・・それなのに、誰もいない?」
提督は警戒しつつ、先に進む。
「・・・!?」
背後に敵の気配がして、武器を前に出した。
「ああっ!! ま、待ってください!」
目の前には敵ではなく・・・赤城がいただけだった。
「何だ、お前か・・・びっくりさせるなよ。」
「す、すいません。」
「・・・と言うか、さっきまで前にいたよな? いつ後ろに回った?」
「提督の考えている時間が長かった時ですよ!」
「・・・・・・」
そうか・・・そんなに長かったか・・・
「悪かった・・・以後気を付ける。」
「いいえ、私も取り乱してすいませんでした。」
2人は再び脱出地点を目指した。
「・・・・・・」
提督には違和感があった。
「・・・・・・」
確かに・・・今のは、敵の気配だったんだがな・・・
・・・・・・
「加賀さんいますか?」
霧島が加賀のいる鎮守府に出張に行った。
「? 誰?」
加賀が振り向くと、霧島がいて・・・
「お悔やみ申し上げます、加賀さん。」
本来、最高司令官が告げるはずなのだが、提督が不在のため、秘書艦の霧島が代わりに伝えに来た。
「お悔やみ? 一体何の事でしょう?」
「赤城さんの事です。」
「・・・赤城さんは沈んでいません、まだどこかで無事に生きています。」
「加賀さん・・・お気持ちはわかりますが・・・」
「何度も言います、赤城さんは無事です・・・沈んでなどいません。」
「・・・・・・」
説得が難しいと判断した霧島は、
「また来ます・・・失礼しました。」
と、加賀の部屋から出て行った。
・・・・・・
「そうですか・・・目の前で沈んだ・・・のですか。」
赤城たちと一緒に行動していた駆逐艦から事情を聞いた。
「それ以降、加賀さんは心を閉ざしてしまって・・・誰が言っても、「赤城さんは生きています」としか言わないのです。」
「そう・・・辛いですね。」
霧島も提督が未だ返って来ない事と心境が重なって胸が苦しくなる。
「・・・・・・」
霧島は自身を落ち着かせた後、鎮守府から出て行った。
・・・・・・
「提督、少し・・・休ませてください。」
急に赤城が体調不良を訴える。
「わかった、幸いにも敵はいない・・・少し休憩しよう。」
近くの部屋に入って休息を取った。
・・・・・・
「すごい熱だ・・・横になった方がいい。」
赤城を地面に寝かせ、部屋にあった備蓄品(水、タオル)を使って看病した。
「すいません提督・・・少し休めば大丈夫です。」
「わかった・・・外で見張っているから何かあったら部屋の扉を叩いてくれ。」
そう言って提督は部屋から出た。
「・・・・・・」
赤城は思い出す。
「・・・私は・・・確か・・・」
徐々に記憶が戻って来て、
「加賀さんと一緒に・・・出撃中に・・・敵の砲弾が・・・」
そして思い出した。
「そうだ! ・・・私は直撃を受けて海に・・・」
それは・・・自分が「轟沈」したと確信した瞬間だった。
「・・・・・・」
しばらく赤城は無言のままだった。
・・・・・・
「赤城、大丈夫か?」
提督が心配になって扉を開ける。
「・・・・・・」
「? どうした?」
「・・・いえ、何でもありません。」
「・・・立てるか?」
提督が手を差し伸べ、
「・・・はい・・・すいません。」
赤城は何とか立ち上がり、脱出地点を目指す・・・が、
「待ってください! 先ほど私がいた実験場に連れて行ってください!」
思わぬ言葉に、
「なぜ・・・何か気になることがあったのか?」
「・・・・・・」
赤城は無言のままだ、だが・・・赤城にとって確かめたいことがあったようで、
「・・・わかった、では戻るぞ!」
そう言って2人は実験場へと引き返した。
・・・・・・
・・・
・
実験場について、
「相変わらず、カプセルが多く佇んでいるな。」
無数のカプセルが立ち並んでいる光景をただ見つめる提督。
「・・・・・・」
赤城は何かを探している。
「・・・! あった。」
何かを見つけたようで、赤城はそれをポケットの中に入れた。
「これを・・・地上に持って行けば!」
赤城は何かを決意したようだ。
・・・・・・
「提督、お待たせしました。」
「・・・探している物は見つけたのか?」
「・・・はい、見つかりました。」
「・・・そうか。 では行くぞ!」
2人は再び脱出地点を目指すのだった。
・・・・・・
先ほどまで無人だったはずの施設が、今度は多勢な敵軍団が巡回していた。
「・・・つまり、さっきまでは海上へ出撃の最中だったのか・・・」
撤退、もしくは勝利のどちらか・・・
「報告! カプセル二保存シテオイタ艦娘ガ脱走シタ! 繰リ返ス! 艦娘ガ・・・」
「・・・気づかれたようだな。」
敵の動きが慌ただしくなり、
「仕方がない、迎え撃つか・・・」
そう言って、提督が武器を出したが・・・
「待ってください。」
赤城が止めた。
「ここに向け道があります。」
「何だって? どうして知っている?」
「先ほど実験場にあった見取り図を見ました。」
「・・・・・・」
そんな見取り図なんてあったっけ?
「提督、こちらです!」
赤城は壁のパネルを開けると中に入って行き、提督もそれについて行った。
・・・・・・
「こっちです、提督!」
向け道である天井裏は迷路のようである・・・しかし、赤城はまるで出口を知っているかのように提督を案内した。
通気口を覗くと、敵が無数に存在している・・・もし、戦闘をしていれば無事では済まなかっただろう。
「・・・・・・」
提督は赤城について行き、
・・・・・・
「この下です、提督!」
赤城が下りた後、提督もそれに合わせて降りた。
「・・・ここは?」
周りを見渡すと、側に脱出ポットらしきものが・・・
提督が隣の機器を操作・・・正常に作動し、すぐに脱出可能のようだ。
「よし、これでこの基地から脱出できる! 赤城、よくやった!」
提督が赤城の方を向くが・・・
「・・・・・・」
赤城は片手で目を押さえながら、何故か寂しい表情で提督を見つめた。
「・・・何をしているんだ赤城? 早くポッドに乗るんだ!」
提督は促すが、
「ごめんなさい提督・・・私は・・・行けません。」
「なぜ? どうして?」
「・・・全て思い出しました。」
赤城は全てを打ち明けた。
「私は敵の砲撃を受けて、「轟沈」した艦娘でした。」
「・・・・・・」
「その後、深海棲艦にこの基地に運ばれ・・・「薬」を投与されました。」
「・・・薬?」
「深海棲艦化する薬だと思います・・・その証拠に・・・」
赤城が押さえていた目を見せる。
「・・・そんな。」
その目は・・・深海棲艦(空母ヲ級)と同じ「青い稲妻が走った目」だった。
「私はもうすぐ深海棲艦となって提督を襲うでしょう。」
「・・・・・・」
「あのカプセルは薬を投与された艦娘の感染速度を増幅する装置だったのです。」
「・・・・・・」
「提督が私を助けてくれたことで、若干感染が遅れましたが・・・それでも、もう私は・・・」
「・・・・・・」
「これを・・・お願いします!」
「・・・これは?」
提督が受け取った物・・・それは、何かの実験サンプル?
「私に投与された「薬」と私の「深海棲艦化前の血液」です。」
「・・・・・・」
「それを・・・分析して・・・解明して・・・下さい。」
「!? おい、赤城!」
「そうすれば・・・もし、深海棲艦化しても・・・助けられる・・・はズ・・・」
赤城がみるみるヲ級化していき・・・
「・・・コレ・・ヲ。」
最後に渡された物は・・・赤城の弓?
「コレヲ・・・加賀さん・・・に・・・そうすれば・・・加賀さんモ・モウ私ヲ・・・諦めテ・・くれる・はず。」
「赤城! しっかりしろ、赤城!」
「さよう・・ナラ、テイトク・・・ウ・・ウ・ガアアアアッ!!!!」
その瞬間、目の前に空母ヲ級に変貌した赤城が・・・
「ヲ・・・ヲヲ・ヲ。」
咄嗟に隠れた提督。
「・・・コチラ空母ヲ級・・・スグニ帰還スル。」
ヲ級化した赤城はその場から去った。
「・・・・・・」
渡されたサンプルと弓を強く握りしめ、救えなかった自分を責める提督であった。
・・・・・・
その後、脱出ポットを起動し、提督は基地から脱出した。
・・・・・・
・・・
・
ここは海上、
「・・・・・・」
脱出ポットから出てすぐに無線を取る。
「こちら提督、霧島はいるか?」
すぐに応答があった。
「司令!? 無事ですか!? 良かったぁ~!」
無線の先の霧島の声がいつもより元気だった。
「今から鎮守府に戻る、それまで待機していてくれ。」
連絡を終えて、提督は鎮守府へと戻った。
・・・・・・
「秋月さん! それに皆! 朗報です!」
霧島の興奮した声に皆、注目して・・・
「司令が、司令が・・・無事でした!!」
それを聞いて、皆が喜び、安心した・・・特に秋月は号泣するほどで・・・
「本当に、本当ですか!? ・・・良かった・・・良かったですぅ~!!」
それを告げる直前まで元気のなかった秋月に、再び希望が戻った。
「今から戻るとの事です、皆・・・司令を迎えましょう!」
霧島の言葉に皆が賛同した。
・・・・・・
「・・・・・・」
赤城から受け取った物、薬と赤城の血液・・・それに・・・赤城が愛用していた弓。
「・・・・・・」
鎮守府にすぐに戻る予定だったが、急遽進路を変更してある場所に向かった。
・・・・・・
着いた場所は・・・別の鎮守府・・・もちろん目的は・・・「加賀に会う」事だった。
「加賀はいるか?」
鎮守府の提督に事情を説明して、中に入り加賀の部屋に向かった。
「加賀・・・入るぞ。」
部屋に入ると、赤城の写真立てを眺める加賀の姿が・・・
「・・・今度は最高司令官ですか・・・一体何の用ですか?」
「・・・・・・」
「何度も言いますが・・・赤城さんは沈んでいません・・・どこかで必ず、生きています。」
どうやら自分より先に報告しに来た艦娘がいたと気づいたようだ・・・もちろん霧島だと言う予想もついていた。
「加賀・・・お前に渡したい物がある。」
「・・・何ですか?」
加賀は提督に振り向き、
「・・・これを。」
持っていた赤城の弓を渡す。
「!? これは!? 赤城さんが使用していた弓! ・・・どうして、提督がこれを・・・」
「加賀・・・残念だが・・・」
「・・・・・・」
「赤城は・・・オレの目の前で・・・深海棲艦化した。」
「嘘・・・嘘でしょ?」
「・・・・・・」
「嘘・・・そうよ嘘よ。 そんなはずはない! これは嘘よ! 嘘って言ってください! 提督!」
「・・・・・・」
「嘘って・・・嘘だって・・・言ってください・・・提督ぅ・・・ううう・・・」
弓を強く握りしめながら泣き崩れる加賀。
「ごめんな・・・加賀。」
提督はそれ以降、声を掛けられず部屋から出た。
・・・・・・
・・・
・
「遅いですね~・・・司令は・・・」
すぐに戻ると言っていた提督の帰りが遅いため、外で待っていた皆が焦り始める。
「霧島さん・・・本当に提督からの連絡だったんですか?」
「もちろんです! 私が聞き間違えるはずがありません!」
「・・・・・・」
皆がまた不安に感じ始めたその時、
「!? 見てください! 司令です! 司令が戻ってきました!」
1人の艦娘が気づくと、それに続いて皆が提督に駆け寄った。
「提督! よくぞご無事で!」
「司令! 良かったぁ! 本当に、良かったですぅ(泣)」
「また勝手にいなくなって・・・今回は本気で心配したんですよ(怒泣)」
「・・・悪かった、心配をかけたな。」
目の前に秋月が現れて、
「司令! 本当に無事に戻って来て・・・嬉しいです!」
嬉し泣きしながら敬礼をし、
「さぁ、皆さん! 司令も帰って来たことですし、明日からまた普段通りのお仕事ですよ!」
霧島の言葉で皆が一斉に「お~!」っと叫んだ。
・・・・・・
「そうですか・・・赤城さんが・・・」
状況を知った霧島が急に静かになる。
「加賀の所に行って、弓を渡してきた・・・」
「加賀さんの様子はどうでした?」
「・・・・・・」
提督の悲しげな表情を見て、
「・・・そうですよね・・・聞く必要もありませんでした・・・申し訳ありません。」
霧島は執務室から出て行った。
・・・・・・
翌日から、執務室の立札に「実験中」の札が掛けられた。
特別用のない艦娘が入ることを禁じられ、室内では提督が常に1人で何かの実験を行っていた。
「・・・・・・」
何度も試すが、結果は同じ。
深海棲艦化の薬は緑色なのだが、顕微鏡で見ると、ドス黒い細胞が無数に漂っていて気味が悪かった。
赤城(艦娘)の血液は人間と同じ構造で、赤血球や核となる細胞が形成されている。
この2つを混ぜると・・・艦娘の細胞をドス黒い細胞(以降、浸食細胞と呼称)が無数に取り囲み、
一気に浸食・・・結果同じ浸食細胞が新たに形成される。
順序を変えても結果は同じで浸食細胞の浸食速度が異常に速く、艦娘の細胞は成すすべもなく取り込まれてしまった。
「・・・・・・」
今度はその2つに促進剤や中和剤などを投与してみるが、結果は変わらず・・・いや、艦娘の細胞の浸食速度がほんの少し
遅れた程度の結果となった。
「・・・司令?」
霧島が話しかけて、
「何か私・・・いえ、私たちにできることはないですか?」
「・・・・・・」
あるとしたらただ1つ・・・
「皆の血液を採血して欲しい。」
考えれば当然の事だが、赤城の血液だけでは到底足りない。
逆に浸食細胞は艦娘の細胞を取り込み、仲間を増やすことで増幅・・・赤城の血液の半分は既に浸食細胞になっていた。
「・・・わかりました。」
霧島は出て行き・・・しばらくした後、
「お待たせしました・・・皆には「健康診断」と言って採血させました。」
「ああ、ありがとう。」
これで、もうしばらく実験を継続できそうだ。
「・・・・・・」
赤城と約束をした・・・必ず、浸食細胞の謎を解明してワクチンを作ることを・・・
・・・・・・
・・・
・
それから、何度も繰り返しの実験・・・艦種は関係なく、浸食細胞は速度を落とすことなく全ての艦娘の血を浸食させた。
「・・・ダメか。」
また失敗した・・・それでも、提督は諦めない。
「・・・またか・・・」
タイミングが重要なのか・・・今度は入れるタイミングを見計らう。
「・・・・・・」
何をやっても効果がない・・・色々試してみたが・・・期待していた効果は得られなかった。
・・・・・・
ある日の事、
「司令、今回の遠征で手に入れた資源と資材に高速修復材です。」
霧島が今日1日の遠征結果を報告していた時の事である。
「修復材をかなり手に入れられました! これで、負傷者が出ても安心・・・きゃあっ!!」
霧島がつまずいて転び、修復材の1つが実験中だったサンプルに掛かってしまったのだ。
「ああ! 申し訳ありません司令!!」
「いや、構わない・・・怪我はないか?」
「はい・・・何とか大丈夫です。」
霧島は立ち上がり、
「それでは、仕事に戻ります! 何かあれば言ってください!」
霧島は出て行った。
「・・・・・・」
提督はまた実験を始めようとした時だった。
「? おや・・・」
目の前にあるサンプルが、いつもと違って(いつもは黒)緑色に変わっていることに気付き、
「・・・・・・」
顕微鏡で確認すると・・・
「・・・これだ! この反応を待っていた!」
提督の表情が明るくなり、
「よし! これを更に改良を加えれば・・・それこそ赤城が望んだ結果を出せるかもしれない!」
そう言って提督は再び実験に没頭し始めた。
・・・・・・
「なるほど・・・艦娘の細胞に高速修復材を注入すると、周りが包まれて浸食を防ぐのか・・・」
実験は更に新しい発見を生んだ。
「浸食されかけた艦娘の細胞に修復材を入れると・・・おお! 浸食細胞が離れた・・・なるほど、浸食細胞はこの修復材の
成分を嫌うのか・・・」
だが、浸食を防ぐだけで、消滅させることが出来なかった。
「・・・ならば、高速修復材の成分を調べて濃度を上げれば・・・」
すぐに成分を大淀に連絡して聞く。
・・・・・・
大淀は「急にどうしたんですか?」と質問を投げかけたものの、すぐに答えを書類で送ってくれた。
「・・・なるほど、この成分か・・・」
・・・・・・
「さて、再開するか・・・」
引き続き、実験に没頭する。
・・・・・・
・・・
・
「上手く行った・・・浸食細胞を完全に除去する薬はできた・・・後は・・・」
もう1つの課題、それは治癒機能。
「浸食細胞を除去しても、あくまで「浸食細胞が無くなった状態」・・・その後、艦娘の細胞が新たに形成されなければ意味がない。」
実験は最終段階に入った。
・・・・・・
「浸食後、薬を入れ・・・浸食細胞が完全に消滅・・・新たな艦娘の細胞が新たに形成! よし、出来たぞ!」
遂に完成した・・・
深海棲艦化した艦娘を救う「試作型ワクチン」が完成したのであった。
・・・・・・
「加賀はいるか?」
提督は再び加賀を訪ねた、
「・・・何ですか? あなたも本当にしつこい方ですね。」
「悪いな・・・加賀に報告があって来たんだ。」
「結構です、 あなたの報告は聞きたくありません。」
「「赤城を助けられるかもしれない」でもか?」
「えっ?」
加賀は提督を見る。
「どうやって?」
「深海棲艦化した艦娘を元に戻す治療薬を作った・・・これを直接注入すれば助かるはず・・・」
「助かるはず?」
「まだ試した例がない・・・あくまで実験結果で成功しただけだ。」
「・・・・・・」
加賀は考えて、
「つまり・・・その逆もあり得るのですか?」
「・・・ああ、そうだな。」
「・・・無謀な賭けですね、そんな話に私が乗ると思っているのですか?」
「何もしなくても赤城は助からない、それならやってみても・・・いいだろう?」
「・・・・・・」
「それとも、逆の結末になるのが嫌で、怖くて「何もしたくない」のか?」
「・・・・・・」
「赤城は今、「空母ヲ級」となって動いている・・・そのままにしていても、いずれ誰かに倒されるだろう・・・それでも、
加賀は・・・助かる可能性があるかもしれない赤城を・・・諦めるのか?」
「・・・・・・」
「わかった・・・オレは試してみる。 それで、赤城が治らなかったら・・・その時はオレの手で倒す・・・それでいいな?」
「・・・・・・」
「邪魔をしたな・・・失礼する。」
提督は出て行った。
「・・・・・・」
加賀は赤城の弓を強く握りしめた。
「・・・赤城さん。」
もし、助かるのなら・・・そんな嬉しいことはない・・・でも、助からないのなら・・・
「・・・・・・」
でも、提督の言う通り、今は「敵」として海を彷徨っている・・・そのまま放っておけば周りに被害が及びいずれ・・・
誰かに倒される・・・
「・・・・・・」
それなら・・・それならば・・・私の手で・・・赤城さんを・・・楽にしてあげたい・・・
「・・・・・・」
加賀は決心して部屋から出て行った。
・・・・・・
提督は海域情報を見て・・・
「赤城はまだ・・・生存しているな。 海域は・・・ここから少し離れた場所に、戦艦と重巡と編成を組んでいるな。」
実は、提督は赤城が変貌した際に、小型発信機を投げ付けていた。 そのおかげで赤城の位置が正確にわかっていたのだ。
「よし・・・チャンスは一度きり! やってみよう!」
出撃直前に気配がして、振り向くと・・・そこに加賀がいて、
「私も連れて行ってください。」
既に艤装の装着は完了していて、
「もし、赤城さんが手遅れだった場合は・・・私が赤城さんを止めます・・・構わないでしょうか?」
「・・・ああ、わかった。 では行こう!」
提督と加賀は赤城がいる海域に出撃した。
・・・・・・
目的の海域について・・・
「提督、敵編成を確認・・・戦艦、重巡、軽空母と残りは空母です。」
「わかった・・・その中の空母が恐らく・・・赤城だ。」
「・・・・・・」
「まずは赤城以外の敵を殲滅する・・・準備はいいか?」
「はい、では提督・・・行きましょう!」
2人は突撃を開始した。
・・・・・・
加賀は難なく対峙した重巡と軽空母を容易く撃墜させる。
「流石は最強空母艦と呼ばれる程の実力だな。」
提督は戦艦を一撃で次々に沈めて行く。
「あなたも・・・「死神」と言う異名は伊達じゃないってことですね。」
2人の手によってヲ級以外の敵は全滅した。
「ヲヲ? ・・・ヲ・ヲ。」
「・・・赤城さん。」
加賀はヲ級に近づき、
「赤城さん! 私よ、加賀よ! 目を覚まして!」
加賀は必死で訴えるが・・・
「・・・ヲヲヲ! 邪魔ダ!」
持っていた武器を振り回し、
「・・・・・・」
間一髪の所で提督が受け止め、
「赤城・・・今助けるからな。」
そう言って加賀を見る、
「・・・お願いします。」
加賀はもしもの時を考えて弓を構える。
「苦しいかもしれないが・・・我慢してくれ、赤城!」
提督はヲ級の腕に、
ドスッ!! (注入音)
「ヲ? ・・・ヲヲ?」
ヲ級は何をされたか分からず、注入された箇所を見る。
すぐに効果が表れ、ヲ級は苦しみ始める。
「ヲヲ!? グ・・・グワアアアア!!!!」
「・・・・・・」
まずは最初の段階・・・深海棲艦の細胞を瞬時に破壊していき・・・
「アアアア!! ヲヲヲ・・・!」
死滅した細胞を一瞬で治癒・・・そこに赤城の本来の細胞を新たに結成!
注入された場所から徐々に白い肌から肌色に変わっていき・・・
「!? 赤城さん!」
治療薬の効果に加賀も驚き、
「ヲアアアア! グウウウワァァァァ!!!」
「・・・・・・」
そして最後の難関! それは脳細胞の再結成!
体は「痛み」として作用するが、「脳」に至っては、全身の機能を支配する司令塔・・・痛みどころか後遺症となって残るかもしれない。
「ウガアアアア!!!!」
もし、後遺症が残って体が麻痺したり、障害が起きてしまった場合は、提督が責任を持って赤城を引き取るつもりでいた。
「ウウ・・・ヲヲ・・ああああっ。」
深海棲艦の細胞が消滅したことにより、本来の姿の赤城に戻っていき、提督は叫んだ。
「赤城! しっかりしろ! お前はそんなことで死ぬほど弱くはないはずだ!」
「ああ・・・ああああ。」
「お前の帰りを待っている人がいる、待ち人を残して勝手に死ぬつもりか、赤城!」
「・・・・・・」
「赤城! よく見ろ! お前を待ち続けていた加賀だ! お前は加賀を残して沈むのか!」
「・・・ああ・・・か・・か・・・がさ・・ん?」
「!? 赤城さん!」
加賀は倒れそうになった赤城を抱える、
「しっかりして・・・赤城さん!」
「・・・か・・・かが・・さん? 加賀さん?」
「赤城さん!? 意識を取り戻したのね!」
「・・・加賀さん・・・どうしてここに?」
「赤城さん!!」
加賀は戻った赤城を強く抱きしめ・・・
「良かった・・・本当に・・・良かった。」
加賀は泣いて喜ぶのだった。
・・・・・・
加賀のいる鎮守府に帰還・・・赤城は薬の副作用の影響か、意識を失っていた。
「・・・・・・」
提督は赤城に触れて、
「後は・・・赤城の心次第かな。」
「・・・・・・」
「もし、赤城の容体が悪くなったら、オレを呼んでくれ。」
「・・・わかりました。」
「それじゃあ、オレは帰るよ・・・またな。」
「・・・提督。」
「ん?」
「・・・・・・」
口で言うのが恥ずかしかったのか、無言で会釈をする加賀。
「・・・ふふ、気にするな。 オレは当然のことをしただけさ。」
提督は鎮守府へと帰還した。
・・・・・・
・・・
・
それからしばらくして・・・
「司令宛てに手紙が届いています。」
「おお、ありがとう。」
提督が裏をめくると・・・
「・・・・・・」
急に無言になり、中の文書を確認する。
「・・・・・・」
提督の表情が険しく・・・
「? どうされました?」
霧島が心配になって尋ねると、
「裁判所からの手紙だ。」
差出人は裁判所からで、2日後に提督が裁判に掛けられる旨を綴った内容であった。
「えっ? なぜ司令が裁判に・・・」
「・・・・・・」
2人はその場で文書を見続けていた。
・・・・・・
2日後、提督は裁判所に出向き、
・・・・・・
・・・
・
「司令、お疲れ様です!」
霧島が入り口で出迎えて・・・
「それで、何か言われましたか?」
「・・・・・・」
提督から思わぬ言葉が・・・
「司令官の権利をはく奪、懲戒免職だそうだ。」
それを聞いた霧島は耳を疑った。
提督が裁判にかけられた理由はもちろん赤城の事で、
本来、深海棲艦化した艦娘は助けることは出来ないとされていたが、
提督がそれを覆す結果を出してしまった事で、「深海棲艦化は治せる!」 「これで、感染を恐れる必要がなくなる!」と
艦娘たちの間では、喜ばしいことだが一方で、
「あの提督は何なの?」
「正直言って怖い・・・その内、兵器とかも作るんじゃない?」
「あの提督は・・・危険だ!」
と、提督を危険視する人間も現れ結果、危険と判断した別の鎮守府の誰かが、匿名で訴えてしまったのだ。
提督は裁判にかけられ、最高司令官の肩書きをはく奪され、辞任を余儀なくされる結果となった。
「まぁ仕方がない・・・オレも深く踏み込み過ぎたかな。」
艦娘を助けたい一心で行動した事がかえって裏目に出てしまった提督。
「ですが! 司令は何も悪いことはしていません! むしろ司令は英雄です!」
提督に掛けられた判決に不満を持つ霧島。
「司令はいいのですか? 一方的に言われ続けて?」
「・・・・・・」
霧島の問いに提督は・・・
「死んだ人間を生き返らせる、それと同じ様なことをしたんだ・・・周りが怖がるのも無理はない。」
「司令・・・」
「「バカと天才は紙一重」と言うが・・・「英雄と悪」も・・・案外同じ紙一重なのかもね・・・」
「・・・・・・」
霧島は何も言えずその場で立ちすくんでいた。
・・・・・・
提督の後任が決まり、鎮守府から出ることになった。
「これからどうするのですか?」
霧島が心配になって尋ねると、
「そうだな・・・しばらくのんびり過ごしてから、料理店でも開いて見るかな。」
「・・・・・・」
「司令は本当に何でもやるんですね。」と思った霧島・・・
「まぁ・・・オレがいなくなっても上手くやるんだぞ霧島・・・それに、皆もな!」
門の前で皆に迎えられ、
「じゃあな・・・また機会があれば会おう・・・それじゃあ、さようなら。」
提督はそのまま振り向くことなく鎮守府から去った。
後日、新しい提督が着任して霧島たちはその提督に従うのであった。
・・・・・・
・・・
・
提督が去り、後任の新提督が着任してからしばらくが経ち・・・
霧島たちはいつもと変わらない生活を送っていた。
いつもと変わらない出撃と遠征、いつもと変わらない食事、いつもと変わらない休日・・・
「・・・・・・」
霧島たちは「何か物足りない」と感じていた。
それは前の提督の存在感からだろうか? それとも、他の提督と類がなく、予測不能な行動をして皆を驚かせる
事だろうか・・・今は特に普通の「鎮守府生活」のはずだが、その「普通」が霧島たちにとって不満であった。
「今の司令は正論しか言わないし、関係も上司と部下の関係・・・でも、これが本来の生活のはずなのに・・・」
前の提督といた時はほとんど上下関係はなく、気軽に話しかけられて毎日の会話が当たり前だった。
「必要な事以外は話しかけるな。」 ・・・まぁ、そうなんですけど。
何て言うのでしょう・・・毎日の生活が「普通」過ぎてつまらない。
昔のように事ある毎に、問題やら事件が起きた方がよっぽど楽しかった・・・と今更ながらに気付く霧島。
「・・・・・・」
・・・そうだ、司令に会いに行こう!
あらかじめ、提督から貰った出店予定の料理店の地図・・・「今度の非番(休日)に行ってみよう」、と思った霧島だった。
・・・・・・
「確かこの辺りのはずなんですが・・・」
地図に載ってあった場所を探す霧島、
「あっ・・・ここね!」
見つけたようで、店の入り口に立つ。
「え~っと・・・なになに。」
入り口はまだ閉まっており、何か張られていて・・・
働きたい方急募! 時間帯や給料詳細は店長まで!
「何だ・・・まだ開店していなかったのですか・・・」
霧島はがっかりして、
「仕方がありません・・・帰るとしますか。」
霧島が元来た道を戻ろうとしたが・・・
「霧島か・・・久しぶりだな。」
元提督がその場にいて・・・
「!? 司令!」
霧島は嬉しくて駆け寄り、
「おいおい・・・オレはもうお前の提督じゃないんだがな・・・」
元提督は苦笑いをした。
・・・・・・
霧島が来たことで元提督は店を開けた。
「お客は来ないんですか?」
「店を開いて1週間経って、初めて来た客がお前だ。」
提督が笑いながら答える。
「・・・つまり、経営が上手く行っていないという事ですか?」
「いや、客が来なくても生活的にはやっていける、はっきり言ってただの時間潰しだ・・・提督の時は目も回る忙しさだったからな。」
「・・・・・・」
「さて、ご注文はいかが致しますかな、お嬢さん?」
「お嬢さんって・・・そうですね・・・」
霧島はメニューを見て、
「あの~・・・ここにある物はすべて調理可能なのですか?」
「もちろん、でなければメニューに載せないだろう?」
「・・・松茸ごはんとビーフステーキを同時に頼んでもいいのですか?」
「ああ、全然問題ない!」
「・・・・・・」
メニュー欄には数100種類の料理とデザートが書かれていて霧島は困惑する。
「では・・・せっかく来たので、今が旬の栗のご飯をお願いします。」
「ほいっ、数分お待ちを・・・」
そう言って元提督が手際よく、調理を始めた。
栗を向く作業から始め、ご飯は元々洗っていたようで、調理した栗とご飯を入れて、炊飯器に入れてスイッチオン!
「超高速」がついたボタンを押した瞬間、たった30秒で栗ご飯が完成した。
「はい、お待ちどう!」
「・・・いただきます。」
霧島が箸でご飯を掴み口に入れる。
「・・・おいしいです、司令!」
「そうかそうか・・・何度も言うがオレは提督じゃないっての!」
「こんなにおいしいのに誰も来ないんですか?」
「ああ、宣伝してないからな・・・誰か働きに来てくれると少しは助かるんだがな。」
「・・・・・・」
霧島は何かを考えていた。
「ん、どうした霧島?」
「!? いえ、少し考え事を・・・」
「・・・・・・」
「・・・ご馳走様でした、え~っと・・・いくらですか?」
「100円でいいよ。」
「!? 100円でいいんですか!?」
「うん、100円でいい。」
「・・・・・・」
霧島は財布から100円を渡すと、
「またのご来店をお待ちしております。」
霧島は鎮守府へと戻った。
・・・・・・
・・・
・
翌日、提督の料亭に村雨たちがやってきた。
「お、村雨と海風・・・久しぶり。」
「お久しぶりです、提督。」
「はいは~い♪ 提督、私がいなくても元気にやってた?」
「・・・で、ここへは何をしに?」
元提督が尋ねると、
「霧島さんから人手が足りないと聞いたので、この海風・・・手伝いに参りました。」
「私、村雨も・・・提督のためにお手伝いに上がりました。」
「・・・それは助かるが・・・鎮守府は放っておいていいのか?」
「私たち・・・ここ最近ずっと、待機状態にされていまして・・・」
「提督が去った後、新しい提督が元々就いていた秘書艦と編成組を主力として行っていますので、私たちはどちらかと言うと
お荷物扱いされています。」
「・・・・・・」
「それに・・・駆逐艦の1人や2人いなくなっても提督は気づきもしないでしょうから、それだったらここで働くのもアリかなって。」
「そうか・・・」
元提督は改まって、
「はっきり言うが、ここでの仕事は忙しいぞ? 朝の仕込みや準備があるからな。 それでも構わないのなら雇うが?」
「はい、海風・・・そのくらいの覚悟は持っています!」
「少し失敗した位でお尻を鞭で叩かないでくださいね♪」
「・・・2人の気持ちは分かった、では明日から頼もう。」
「はい、提督。」
「よぉ~っし! 村雨の料理の腕前見せてあげる!」
こうして料亭に駆逐艦の2人がやってきた。
・・・・・・
翌日の朝から、料亭を開いて見た。
村雨と海風がここに来る前に艦娘の皆に話をしていたようで、朝から白露型の皆が並んで待っていた。
「はいは~い♪ 今から店が開きますよ~♪」
「ようこそお越しくださいました、案内役はこの海風が承ります!」
「・・・・・・」
「やっぱり村雨たちがいると客寄せの効果があるな。」と思う提督。
一昨日と違って白露たち以外にも川内や五十鈴たちも並んでいた。
・・・・・・
「私はこのスタミナ丼ね、今日は夜戦だからいっぱい食べとかないと!」
「あたしはサツマイモご飯が食べたい!」
「海風の姉貴、江風はこのチャーハンってやつを頼むわ!」
注文が一気に殺到。
「ほいほい、任せろ任せろ。」
元提督が手際よく調理を開始、村雨たちはできるのを待っている。
「はい、まずはサツマイモご飯!」
「はい、サツマイモご飯もう1つお待ちどお!」
「ほれ、スタミナ丼が出来たぞ~!」
1つの注文を完了するのに要する時間はたったの数分・・・一体どうやればこんな早く出来上がるのだろうか・・・
息つく間もなく、今度は飯を炒め始めて卵を入れる・・・
「ほい、チャーハン出来上がり!」
「はい、江風・・・チャーハンお待ちどお!」
あっという間に注文が終わり、
「うん、おいしい~。」
「くぅ~! ニンニクの辛さが効いてるねぇ~!」
「初めてチャーハンて言うのを食うけど・・・香ばしくてうめぇなぁ!」
・・・・・・
「ご馳走様~・・・え~っと・・・いくらだっけ?」
元提督はお決まりの、
「100円でいいぞ。」
当然皆は驚く・・・あれだけ食べても1品たったの100円だからだ。
「美味くて100円・・・明日も来よう!」
翌日、今度は戦艦・空母が来店して大賑わい。
従業員も更に霧島とサラが加わり、追加で海外向け料理も出すことになった。
この料亭の噂は瞬く間に艦娘たちの耳に届き、大盛況となった。
「そうだ・・・この料亭の名前を考えていなかったな。」
ふと気づいた提督だが、既に決まっていたようで・・・
「この料亭は艦娘たちの集いの場になっているから・・・料亭{艦娘}でいいかな。」
元提督は入り口に看板を立て掛けた。
・・・・・・
こうして元提督の新たな料亭生活が始まったのだが、
「断る、そもそもオレは提督を辞めた身、お前らに加担する理由がない。」
毎日のように鎮守府からの電話が来るようになった。
深海棲艦の襲撃と一部の艦娘たちが感染してしまったとの事だ。
散々治療薬を作ったことで危険視してきた提督や一部の艦娘たちが、今度は「助けて欲しい」と、救いの手を求めてくる・・・
はっきり言って迷惑な話である。
「お前らが望んだ結果だ、今になって泣き言を言うな!」
そう言って、元提督は電話を切るのだった。
・・・・・・
・・・
・
料亭を始めて数か月、
鎮守府で働いていた時と同じくらい位に目も回らない忙しさであるが、元提督の表情は和んでいた。
新提督が着任した影響で待機状態を余儀なくされた村雨たちもこの料亭の宿舎に完全に住み込むようになって
本格的にこの料亭の従業員となった。
案外、元提督と村雨たちとの絆は鎮守府だけに留まらずどこへ行っても絆は深いと感じられる。
その証拠に店を開いた時は元提督の1人だけだったのが村雨・海風と徐々に増えて行き、最終的には
最高司令官昇進以前に着任していた艦娘のほとんどがこの料亭で日替わりで働いている。
当の今の最高司令官も艦娘が約20人鎮守府からいなくなったのにも関わらず、それに全く気づいていない。
艦娘への配慮が足りていないのか・・・
相変わらず電話は掛かってくる・・・大規模な深海棲艦の進軍情報や一部の艦娘の深海棲艦化、出張依頼・・・
提督を辞めたと言うのにこの始末・・・仕方がないので電話線を抜いてほったらかしにした。
因みに村雨たちは「料亭で働いている」だけであって、「解体」したわけではない、
普通に「艦娘」として出撃・遠征は出来る。
元提督も「提督業を辞めた」だけであって戦闘は可能である。
・・・・・・
・・・
・
「何だあれは!? 新手の深海棲艦か!?」
ある鎮守府で戦闘が始まり・・・
「砲撃が効かない・・・敵は無傷! 長門部隊は損傷甚大! 撤退する!!」
ビッグ7として名高い戦艦長門ですら苦戦する深海棲艦が現れたのか? それとも別の何か?
「これより、この鎮守府は放棄! 繰り返す! この鎮守府は放棄!」
たった一夜にして1つの鎮守府が謎の敵部隊によって制圧された・・・
・・・・・・
この情報はすぐに各鎮守府の耳に届き、各提督は厳重態勢を整えた。
敵の情報が全く掴めておらず、各鎮守府は対策を出せずにいるが・・・
・・・・・・
また1つの鎮守府が壊滅・・・そしてまた1つ。
戦闘をしていた艦娘からの情報はほとんどなく、わずかに「見えない」 「弾かれる」の、言葉のみであった。
・・・・・・
料亭を毎日開けているが、艦娘の数が次第に少なくなって行くのがわかった。
「皆出撃やら遠征やらで忙しいんだろうな。」
元提督はのんきに答えるが、
「・・・・・・」
理由は分かり切っていて、新手の・・・いや、正体不明の敵部隊が出現して各鎮守府が壊滅しているとの事。
鎮守府に所属している艦娘達もわざわざ料亭に来る余裕がない。
「・・・常連もいるから心配と言えば心配だが・・・」
元提督も鎮守府に戻る気はないが、やはり艦娘たちの事が気がかりの様子・・・でも、
「まぁ考えても無駄か・・・オレはクビにされた身だし、心配するのは余計なお世話だな。」
そう言って、また厨房で調理に励むのだった。
・・・・・・
少し経って珍しい客がやってきた・・・大淀である。
「・・・・・・」
元提督は彼女をジッと睨む。
「どうしたんですか司令?」
霧島が厨房から出てきて・・・
「あら、大淀さん。」
「お久しぶりです、霧島さん・・・そして、提督。」
「・・・よくもまぁ、オレの前に顔が出せたな・・・」
「・・・・・・」
「? 大淀さんと何かあったのですか?」
「・・・・・・」
大淀は無言のままだ。
「治療薬の件で匿名で訴えた艦娘が大淀なんだよ。」
「!? そうなんですか!?」
「・・・・・・」
「お前・・・オレが去った後、最高司令官の秘書艦に任命されたんだってな・・・あの訴えは出世狙いだったわけか?」
「・・・恨んでいただいて構いません、それだけの事をしましたし・・・」
「なぜ・・・なぜそんなことをしたんですか!?」
霧島は驚きつつも大淀に尋ねる。
「チャンスだと思ったんです・・・このままずっと任務娘として終わるよりも、最高司令官直属の秘書艦に就ける絶好の機会だと。」
「・・・・・・」
「おかげで私は秘書艦に就け、しばらくは艦娘のトップとして過ごせました・・・でも・・・」
「新手の敵部隊に艦娘の感染と思わぬ事態になったわけか?」
「・・・私を恨んでも構いません・・・でも、今は私個人を責めている問題ではないのはご承知のはず・・・」
「知るか、オレは辞めた身だ。今更、「戻ってきて欲しい」の言葉なんか聞きたくないね。」
「提督! 今はそんなこと言っている場合ではありません! こうしている内に艦娘たちの感染や敵部隊の襲撃が続き・・・
総司令部や残りの鎮守府も危ない状況になりつつあります。」
「・・・・・・」
「時間がありません、私を責めるのは後にして今はやるべきことをやってもらいたいのです!」
「・・・大淀さん。」
霧島が横から入り、
「そう言う大淀さんはこんなところで何をしているんですか?」
「えっ? 何をしているとは?」
「大淀さんは一応軽巡ですよね? でしたら早く出撃して敵を倒してくれませんか?」
「・・・・・・」
「先ほどから聞いている限りでは、「私は戦いたくない、提督と他艦娘は早く現地へ行って。」としか聞こえません。」
「・・・・・・」
「この期に及んで、艦娘としての責務を放棄して、辞めた人間に押し付けに来たのですか?」
「・・・・・・」
「お帰り下さい、私たちはこれでも忙しいので・・・早々にお引き取り願います。」
「霧島さん・・・あなたはそれでも艦娘ですか?」
「はい、艦娘です。 でも、責任放棄している艦娘にとやかく言われる筋合いはありません。」
「・・・・・・」
「それとも、司令をクビにした張本人を私たちが見過ごすとでも思っているのですか?」
「?」
大淀が周りを見ると、霧島以外の艦娘たちが全員自分を睨んでいるのが分かった。
「・・・・・・」
「もう一度言います、お引き取り下さい・・・でなければ・・・」
「・・・わかりました・・・失礼します。」
大淀は早足に去って行った。
「全く・・・同じ艦娘として情けないです。」
霧島がため息をついて、
「霧島・・・お前、意外と・・・」
「? 何です、司令?」
「怖いところあるんだな(笑)」
「今更ですか!!」
元提督は相変わらずのんきであった。
・・・・・・
「とは言っても・・・」
元提督は悩んで・・・
「客足がほぼ減ったな・・・」
しばらく考え、
「・・・仕方がない・・・おい、霧島! 皆を集めて会議を開くぞ!」
突然の緊急会議・・・霧島の号令で皆が瞬時に集まった。
・・・・・・
「結局大淀さんの言う事に従うんですか?」
霧島は呆れながら答える。
「いや、そんな気は更々ない。」
「では、どうして心を入れ替えたのですか?」
「・・・料亭の客が減っているからだ。」
「・・・・・・」
「本当にそれだけですか?」と思いつつ、
「わかりました・・・司令のご命令に従いましょう。」
霧島の答えに皆も賛成した。
「ただ、幾つかの鎮守府が壊滅状態にあると言う事だから、燃料・弾薬類が十分に確保できないかもしれないんだ。」
「では、出撃や砲撃が困難ですね・・・」
「そこで、提案なんだが・・・」
元提督が皆に言った。
「皆にある特殊訓練をしたいのだが、受けてくれるか?」
「? 特殊訓練ですか?」
「皆が習得できるかわからないが・・・新たなスキルや潜在能力の開花も期待できるかもしれない。」
「・・・・・・」
それを聞いても皆わからなかったが・・・提督が考えた特訓ならばと、
「お願いします、司令!」
霧島の意見に皆も同意するのだった。
「・・・何度も言うが・・・オレは提督じゃないっての!」
・・・・・・・
それから元提督の考えた特殊訓練が始まった。
今までにない訓練なため、霧島たちは最初は戸惑ったものの、徐々に慣れて行き、一部の艦娘に新たな戦略が可能となった。
・・・・・・
結局、新たなスキルを習得? できたのは、現時点で霧島・村雨・サラトガの3人だった。
他の艦娘は燃料・弾薬が十分に補充されることを願いつつ、鎮守府へと戻っていった。
・・・・・・
「司令! 旗艦、蒼龍と比叡! 指示通りの配置に着きました!」
「よし、霧島と村雨にサラトガ! お前たちはオレの後についてきてくれ!」
元提督含む霧島たちは敵がいると思われる海域へと進軍した。
・・・・・・
「何もいませんね・・・」
霧島たちが電探や索敵を行うが・・・全く反応しない。
「気を付けろ、いないからと言って気を抜くことが一番の油断だ。」
元提督が皆に注意を促した・・・その時だった。
突然発生した爆風・・・蒼龍たちに被害が出る。
「こちら蒼龍、被弾! 損傷は小破・・・戦闘続行可能です!」
何もない所から突如発生した爆風・・・前に戦闘を行った艦娘が言った「見えない」何かが・・・
「比叡、聞こえるか? 例の砲弾を装填準備!」
「こちら比叡、今装填中・・・装填完了しました!」
「よし・・・上空に発射しろ!」
元提督の指示で比叡が上空に向けて発射! 砲弾は上空まで飛んでいき、しばらくして爆発・・・無数の色?が下に降り注いだ。
「・・・・・・」
霧島たちの目の前に見えた光景は・・・
「!? 敵部隊を確認! 色を被って正体がわかりました!」
「よし、各員戦闘を開始! 敵を殲滅しろ!」
正体と位置が分かれば、こっちのもの・・・蒼龍たちは艦載機を飛ばし、比叡達は砲撃を開始し敵を次々に倒していく。
「やはり敵側は何らかの方法で「不可視」を学んだようだな。」
不可視と言うのは言うなれば「透明化」、肉眼で確認することが出来ないが、相手が動くことにより大気の歪みが起き、一時的に
姿の確認が可能である。 もし、手っ取り早く場所を特定するなら、「ペイント弾」を使って上空から降り注げば、
色を浴びた本体が露わになるのである。
「こちら蒼龍、敵部隊の殲滅を確認。」
「こちら比叡、同じく殲滅完了致しました!」
「よし、各員帰還せよ!」
元提督の指示で各員は撤退を開始・・・
「それにしても・・・」
元提督は思った。
「敵の技術が上がってきている・・・早急な対応が必要だな。」
そう言って元提督も帰還するのであった。
・・・・・・
「司令、どうされました?」
悩む元提督に霧島が心配する。
「さっきの敵部隊の事を考えていた。」
先ほどの敵部隊、そして各鎮守府が壊滅された理由があの「不可視」の技術・・・
「各鎮守府の場所は離れている・・・それなのにあの技術を搭載した敵部隊が各鎮守府の襲撃の際に同時に機能するのはおかしい・・・
その装置を稼働している場所、もしくは本体がどこかにいるはずだな。」
元提督は推測する。
「可能性があるとしたら・・・やはりあの「基地」か・・・」
あの大規模な深海棲艦本拠地・・・あの基地内に稼働装置、もしくは本体が・・・
「もう一度、あの場所に行く必要があるな。」
元提督は作戦を立てるのだった。
・・・・・・
「今回は少数で出撃する・・・オレと一緒に出撃する艦娘は、霧島と村雨にサラトガだ。」
元提督は深海棲艦本拠地に乗り込むために特別な艦娘を指定していた。
「艤装は着けないで行く・・・霧島たちは準備が整い次第、外に来てくれ。」
そう言って、元提督は外で待機していた。
・・・・・・
「艤装を装着しないなんて・・・戦闘をしないってことですか?」
サラは疑問に思う。
「違いますよ、今回の場所は深海棲艦の基地・・・つまり海底にあるのです。
砲撃なんかして穴でも空いたらすぐに水没して、私たちは溺れてしまいますよ。」
「なるほど、そう言う事ですか!」
「敵も本拠地を破壊されたくないでしょうから、捕縛中心な攻撃をしてくると予想されます、ですが砲撃が来た場合は
物陰に隠れる等して機会を待ちましょう!」
「はい、わかりました!」
「もう1つ、仮に水没しても敵は「溺れない」ので私たちが一気に戦況不利になります! あくまで自分たちの「安全」を優先してください!」
「わかりました!」
「はいは~い♪」
「では、準備が整いましたので、行くとしますか・・・」
そう言って3人は外へと出た。
・・・・・・
「司令、私たちの準備は整いました!」
「わかった、潜水艦を用意しておいたからこれに乗って行くぞ!」
元提督の横には、大型の潜水艦が待機していた。
「あの・・・司令、この潜水艦は一体どこで?」
「それは企業秘密だ(笑)」
「・・・・・・」
「まさか「買った」なんて言いませんよね?」と心の中で思いつつ、潜水艦に入る霧島たち。
「・・・行くぞ、皆今一度気を引き締めろ!」
元提督達を乗せた潜水艦は本拠地に向けて海底へと潜っていった。
・・・・・・・
「大きい・・・あれが敵の・・・」
霧島たちが驚くのも無理はない、あんな大規模な基地・・・保有数だけでも数千は行きそうな規模である。
「作戦内容・・・基地に乗り込み、「不可視」の元となる元凶を捜索、発見したら破壊すること!
その他、気になる情報があれば回収、あくまで自身の「安全」を優先に行動せよ!」
3人「了解!」
「二手に分かれる・・・霧島とサラ・オレと村雨の2人1組で行動する!」
3人「了解!」
「よし・・・上手く侵入できたな・・・これより散開! 敵を殲滅しつつ、元凶を破壊せよ!」
こうして4人での基地の捜索が始まった。
・・・・・・
「広いですね・・・どれだけの深海棲艦がいるんでしょうか?」
辺りを見回しながら霧島は進んでいく。
「はぁ~・・・」
隣でサラはため息をつく。
「? どうしたんですか、サラトガさん?」
「どうして・・・提督は私ではなく、村雨ちゃんを選んだのかなぁって・・・」
「・・・・・・」
「よりによって霧島さんと一緒なんて・・・はぁ~。」
「悪かったですね! 私と一緒で!」
霧島は怒り出す。
「ほら、すぐに怒る。 提督だったら怒らないんだけどなぁ~。」
「私は司令ではありません、霧島です!」
「はぁ~い・・・わかりましたぁ~・・・サラは適当に頑張ります~。」
やる気のないサラトガ、その時・・・
「侵入者ヲ発見! 捕縛セヨ! 抵抗スルナラ殺シテシマエ!」
2人の喧嘩に敵が気づいてしまった。
「もう、霧島さん! あんなに大声で叫ぶから~。」
「誰のせいですか、だ・れ・の!」
「侵入者ヲ発見! 侵入者ヲ発見!」
「全く・・・本当に私たちは上手く行きませんね・・・」
「それはそうですよ、女同士なんですから(笑)」
「はいはい・・・とりあえず喧嘩は後回しにして・・・迎撃をします!」
「( ̄▽ ̄)ゞラジャ~!」
2人は戦闘を開始した。
・・・・・・
「どうやら気づかれてしまったようだ。」
サイレンが鳴り、静かだった基地が敵で溢れかえる。
「2人が上手いこと囮になってくれたのかな? こちらは警備が薄くなって助かるよ。」
「提督、あの部屋に行ってみましょう!」
そう言って、単身部屋に向かう途中で、
「侵入者ヲ見ツケタ! コレヨリ捕縛スル!」
複数の敵に見つかってしまった。
「どいて! あんたたちに構っている暇はないの!」
村雨は構えると、敵に向かって行き、
「掌底!!」 「横蹴り!!」 「かかと落とし!!」
パァン!! バキィッ!! ドガァッ!!
村雨の一方的な攻撃で敵は倒れた。
「ふむ・・・やはり村雨には素質があったな。」
村雨の動きを見て納得する提督。
・・・・・・
ドスッ!! ブスッ!! ザシュッ!!
霧島は持っていた細剣で敵の急所を的確に刺す、
「これで終わり? 私は全然、準備体操代わりにもならないんだけど・・・」
そう言って最後に刺した敵から剣を抜いた。
「薙ぎ払います!!」
サラトガが片手で大剣を軽々と振り回し、敵を粉砕していく。
「あらあら・・・サラトガさんも中々・・・私も負けていられませんね!」
次々と押し寄せて来る敵たちを霧島たちは順に撃破していった。
・・・・・・
元提督が行った特殊訓練・・・それは、「弾薬を使わない戦闘(肉弾戦)」である。
各鎮守府が壊滅的被害に見舞われたために燃料と弾薬を十分に補給できるかわからない状況の中、
元提督が提案した訓練だった。
当然のことながら、本来砲撃主体の艦娘たちに肉弾戦などできる者はいなく、提督の訓練は苦難の連続だった。
しかし、同時にそれに目覚めた艦娘も少なからずおり、その中であの3人が習得できたのだ。
村雨は普段から身のこなしが優れているため、武道系の技を取得。
霧島は戦闘では常に敵の急所を的確に狙える技術があるため、細剣を使った一撃必殺の剣術を学び、
元々飛行甲板を片手で抱えるサラトガはその腕力の強さから、大剣を自由自在に操れるようになった。
・・・・・・
「あらかた片付けたわね・・・」
霧島とサラトガの前には無数の敵の山が・・・
「さて、早く用を済ませて帰りますよ!」
「了解です~♪」
2人は捜索を続けた。
・・・・・・
「・・・・・・」
目の前の部屋に違和感を感じて立ち止まる提督。
「? どうしました?」
「・・・この部屋に何かある。」
そう言って扉を勢いよく開ける。
「・・・・・・」
そこにあったのは・・・
「あった・・・これだ!」
2人の目の前に巨大な装置が佇んでいた、一定の周期で動き電磁波のようなシールドで本体を守っていた。
「・・・・・・」
提督は近くの操作パネルを動かす、
「・・・・・・」
「霧島さん、サラトガさん・・・目的の物を見つけました。 すぐに合流してください、場所は・・・」
村雨が2人に無線で知らせる。
「・・・よし。」
提督が操作パネルから離れて、
「シールドを解除した・・・後は無防備のこの装置の周りに爆弾を仕掛けて・・・後はこの基地も一緒に破壊しよう!」
「わかりました、提督。」
2人は作業に取り掛かる。
・・・・・・
「司令、お待たせしました!」
「サラ、今戻りましたぁ~♪」
「2人とも無事でよかった・・・いきなりで悪いが、地図を渡す・・・この赤丸の場所にこの装置を設置してきて欲しい。」
「・・・わかりました・・・これは何でしょうか?」
「爆弾だ・・・ここにある不可視発生装置と一緒にこの施設も破壊する!」
「・・・了解! すぐに取り掛かります、サラさん行くわよ!」
霧島とサラは部屋から出て行った。
「提督、周囲に爆弾を設置完了しました!」
「よくやった! 後は霧島たちを待つだけか・・・ん?」
部屋にあったカメラを見ると、この部屋に敵が向かって来ていた・・・しかも、艤装を装着している。
「最後の抵抗ってやつかな・・・村雨、行くぞ!」
「はいは~い♪」
2人は迎え撃った。
・・・・・・
「ここに設置して・・・後は・・・これで最後ですね。」
「霧島さん、設置完了しましたよ。」
「ご苦労様です・・・では司令の元に戻りましょうか。」
霧島が無線を取った瞬間、耳に響いたのは砲撃音だった。
「司令!? どうしました!? 大丈夫ですか!?」
「ああ、今のところな・・・敵の最後の抵抗だろうか、艤装を装着して襲撃してきた。」
「今向かいます! それまで辛抱してください!」
無線を切り、2人は急いで提督の場所へ向かう。
・・・・・・
「敵ヲ排除! 敵ヲ排除! ドンナ手段ヲ取ッテイイ、侵入者ヲ殺セ!」
敵の砲撃が容赦なく降り注ぎ、部屋の扉は破壊された。
「侵入者ヲ排除! 侵入者ヲ排除セヨ!!」
部屋の中にたくさんの敵が入って来て、
「ドコヘ行ッタ? 探セ! 見ツケ次第殺セ!」
散開して警戒する敵たち・・・
「ふぅ~・・・」
提督と村雨は天井裏に潜んでいた。
「前に来たことがあるからな・・・この秘密の抜け道があることをすっかり忘れていたよ。」
「・・・霧島さんたちに連絡を取りますね・・・場所はどうしますか?」
「出口だ・・・もうここには用はない、早々に脱出しよう。」
提督の指示で、村雨は無線で霧島たちに指示・・・前に赤城と天井裏を移動したことがあったので、出口に着くことは容易であった。
・・・・・・
「皆揃ったか?」
3人「はい!」
「よし、これよりこの施設から脱出する! 皆、潜水艦に乗り込め!」
全員が乗ったところで急発進、海上へと上がっていった。
「・・・・・・」
提督は起動スイッチを握りしめ、
「これで終わりだ・・・さようなら、深海棲艦・・・」
スイッチを起動した。
ドオオオオォォォォンンンン!!!!
目の前に広がる大爆発・・・まるで火山が噴火したかのような光景である。
「終わった・・・これでしばらくは敵の脅威にさらされることはないですね。」
霧島たちはほっと一息する。
「さぁ、帰ろう・・・オレたちがいた場所へ・・・」
提督達は本来の場所へと戻っていった。
・・・・・・
・・・
・
あれからしばらくが経過、
敵の不可視は提督達の活躍によって無力化、戦況が有利となり以降鎮守府の壊滅を防ぐことが出来た。
提督はまた料亭{艦娘}を再開、毎日の調理に精を出していた。
日に日に減っていた艦娘達も徐々に戻って来て、再び賑やかとなり、毎日が忙しい。
最近では霧島たちが各自で特別メニューを出すようになり、艦娘達からの人気も高い。
「はいは~い♪ 村雨特製のチョコレートパフェ、お・ま・た・せ♪」
村雨特製のパフェ、甘さ控えめ時折苦みが効いて一部の艦娘に人気の一品。
「サラ特製の煮込みシチューお待たせいたしました♪」
サラが半日手間暇かけて、煮込んだ愛情いっぱいの煮込みシチュー、一日限定10食で、すぐに売り切れるほど。
「霧島の特別メニュー、健康を考えた野菜カレー、お待ちどお様!」
カレーに合う野菜を中心に混入し、食感、栄養、味が見事にマッチした霧島特製の野菜カレー・・・野菜嫌いな艦娘でも
残さず全部食べてしまうとか・・・
そして、やっぱり極めつけは、
「はい、お待たせ。 今日の日替わりメニューは松茸ご飯とひつまぶし、そして肉巻きだ。」
元提督が作ったメニューが今月も一番の人気を勝ち取った。
・・・・・・
あれから鎮守府からの電話は一切来なくなった。
提督を陥れた大淀は今どうしているのだろうか・・・
噂では、出撃命令を無視した事で秘書艦から外された上に、任務娘の権利もはく奪されたとか・・・
彼女が望んだ待遇を自分の手で壊すことになったなんて本人も思いもよらなかっただろう。
提督は彼女を恨んではいなかったが、今回の結果に「自業自得だ」と本音を吐く姿も見られた。
大淀・・・どこかの鎮守府でひっそりと暮らしていることを願う・・・
・・・・・・
・・・
・
「よし、今日も朝から忙しいぞ! 皆、気を引き締めてかかれ!」
皆「はいっ!」
朝から材料切りから、ご飯の炊き出し・・・その他入り口の掃除等を各自でこなしていく・・・
・・・・・・
午前7時、開店と同時に駆逐艦・軽巡の遠征組が朝食を食べにやってくる。
「いらっしゃいませ、お席はこちらになります!」
手際よく海風がお客を案内する。
「はいは~い♪ 今日のおすすめはこの村雨のスタミナチャーハンですよ♪」
村雨が新メニューを紹介しつつ、注文を受ける。
・・・・・・
昼・・・遠征組が終わると今度は出撃組がやってくる。
「重巡3名、戦艦1名、空母2名の方をご案内します。」
「空母4名と海外艦の2名様ご来店です!」
・・・・・・
夕方になると空いてくるので、しばしの休憩・・・
・・・・・・
夜になると今度は飲み組が集まってくる。
「提督! ビール3本追加願います!」
「司令、こちらは熱燗と焼酎をさらに追加願います!」
「ひゃっはー! どんどん飲むよ~!! もっともっと持ってきな~・・・うぃ~!!」
「ちょっと!? 私のところには頼んだ料理はまだなの? 早くしてよね!」
「アドミラール! こっちにもおつまみの追加注文よろしくね!」
・・・・・・
「24時・・・今日の仕事は終了しました、皆さんお疲れ様です!」
今日も無事仕事を終え、休むことなく翌日の支度をし始める提督と艦娘の姿があった。
「深海棲艦本拠地」 終
赤城が……( ;∀;)ブワッ
とても面白いです!作者は文才があるってはっきりわかんだね
コメントありがとうございます。
続きも頑張って書いて行きます♪
誤字を発見しました、×修復済⇒○「修復剤」
ありがとうございます、直します~(感謝)
司令万能すぎる…うらやましい
やっぱり面白いですね。亀更新でもいいので体を壊さないよう頑張って下さい。
ありがとうございます♪ これからもどんどん物語を書いて行きます。
時間があれば読んでください。 後、何か要望があれば、コメントしてくれれば
嬉しいです♪