「腕相撲」
お小遣いをねだる白露に提督がある”お題”を出して・・・
のんびり更新していきます。
「ねぇ、提督~・・・お小遣い頂戴!」
村雨に会いに来た白露がいきなり小遣いを要求してきた。
「却下、無いなら来月の給料まで待て。」
「無いから頼んでるんだけど!」
「そんなこと知るか、使い切ったお前が悪いだけだろ!」
「むむむ・・・」
提督の言う通りだが、納得のいかない白露は、
「じゃあさ、あたしに何か”お題”を出してよ・・・それを達成したら少しでいいからちょ~だい! 少しでいいから・・・ね?」
「・・・・・・」
提督は「やれやれ」と思いつつ、
「仕方がない・・・ならば。」
提督はお題を出した。
「オレと腕相撲して・・・見事勝てたら、何でも好きな願いを叶えてやろう!」
その言葉に、
「何でも・・・本当に何でも叶えてくれるの!? やったね! 勝負しようじゃないの!!」
既に勝ったかのような意気込みで勝負に挑む白露。
「じゃあ・・・審判はこの村雨が承りますね。」
提督の腕と白露の腕が掴みあい・・・
「ふふふ・・・人間が艦娘の腕力に勝てるわけないじゃんね・・・この勝負いただきだね!」
と、余裕の白露。
「では・・・いざ、開始!」
先手を打ったのは白露で、
「んぎぃぃぃぃっ!!!!」
渾身の力を入れて提督の腕を倒そうとする白露、
「これでどう!」
更に力を入れて踏ん張るが・・・
「・・・どうした? そんな力じゃ小遣いなんて出ないぞ?」
「ふぇっ?」
白露は驚く・・・渾身の力を入れたつもりなのに提督の腕は全く動いていなかった。
「・・・もう限界か? つまらん。」
そう言って、提督が力を入れて・・・白露の腕が地面に着き・・・
「はい、白露の負け!」
村雨が判定を出した。
「ちょっとぉ~! 待ってよぉ~! もう1回! もう1回だけ勝負させて!」
白露はリベンジを計るが・・・
「残念、1日1回までね。 挑戦したいなら明日また来るんだな。」
「むむむ・・・絶対に勝って見せるんだから! 今に見てなさいよぉ!」
白露は悔しながら料亭から出て行った。
・・・・・・
翌日、
「提督! もう一度勝負だよ!」
懲りずに白露がやって来た。
「勝負の前に、何か1つでいいからご注文をお願いします~。」
受付の村雨がお品書きを持ってくる。
「・・・じゃあこの村雨特製チョコパフェを。」
「はいは~い♪」
村雨は調理に取り掛かる。
「提督! 注文もしたし、1日経ったよ! さぁ勝負だからね!」
「いいとも・・・まぁ結果は分かり切っているがな・・・」
提督が笑いながら答える。
両者の腕を掴み、
「では、いざ開始!」
「これでどぉ!」
白露は渾身の力で押し込むが・・・
「どうした、その程度じゃ小遣いは無いぞぉ?」
「まだまだ・・・んおおおお~!!!!」
半ば必死になって力を込める・・・顔が真っ赤である。
「・・・それが限界か? つまらん。」
提督はため息をついて、白露の腕を地面につけた。
「はい、また白露の負け~。」
また負けた白露。
「悔しい~!! 次は絶対に勝って見せるからね!!」
余程悔しいのか、顔をぷぅ~っと膨らませながら料亭から出て行った。
・・・・・・
鎮守府に戻っても白露の機嫌は悪いようで、
「もう~! 何で勝てないのよ! たかが人間相手にもうっ!!」
最早小遣い目当てと言うわけではなく、単に負けたことが屈辱のようだ。
「さっきから何をそんなに不機嫌なんだよ、白露の姉貴?」
江風がその場に居合わせて、
「提督と腕相撲して負けたんだよ~・・・もう悔しい~!」
「提督と腕相撲? 何でまた提督となんか?」
「提督が「勝ったら何でも願いを叶えてやる」って言ってたんだよ!」
白露の言葉に、
「・・・勝てたら・・・何でも願いを叶えてくれる・・・マジで!?」
その言葉に江風が飛びついた。
・・・・・・
「HEY! 提督ぅ!」
料亭に金剛がやって来た。
「いらっしゃいませ~。」
村雨が席に案内して、
「ご注文はお決まりですか?」
「そうね、じゃあこのロイヤルミルクティーをお願いします!」
「はい、かしこまりました。」
「さぁ、提督ぅ~! この金剛と腕相撲で勝負で~す!」
金剛はやる気満々で提督を挑発した。
「はぁ? 何で金剛が腕相撲を?」
「白露ちゃんが言ってたので~ス! 提督に見事勝てば「何でも好きな願いを叶えてくれる」って!」
「・・・・・・」
「白露の奴・・・周りに言いふらしているのか?」と思った提督。
「さぁさぁ・・・この金剛がぁ、提督を負かして・・・私が欲しかった紅茶セットを買ってもらうで~す!」
「・・・・・・」
「白露は口が軽いなぁ。」と思いつつ、勝負に出た。
「提督の腕・・・確かに強そうですけど・・・戦艦の腕力を甘く見ないでネ!」
「では・・・いざ、勝負!」
村雨の号令と共に、
「貰ったぁ!!」
先手を打ったのは金剛、
「一気に決めるで~ス!」
と、勢いよく腕に力を入れて押し込む、
「ふふ・・・どうですこの力・・・流石の提督も戦艦の力には勝てないで・・・What!?」
勝利を確信した金剛が見たものは、
「ああ、白露より力はあるな・・・でも、」
提督は力を入れて、
「金剛もどちらかと言えば、そんなに強くないね。」
と、地面について、
「はい、金剛さんの負け~!」
提督の勝利である。
「OH! NO! そんな・・・戦艦の私が人に負けるなんて・・・」
「・・・オレはその辺にいる普通の人間では無いのだがな・・・」
「もぉ~!私の紅茶セットがぁ~・・・提督ぅ! 次は絶対に勝って見せるからネ!」
そう言って、金剛は料亭から出て行った。
「金剛まで来るなんて・・・まさか明日から他の戦艦やら空母やらが挑戦に来るってことは無いよね?」
提督は嫌な予感がしたが、それが見事的中する事態となる。
・・・・・・
翌日になり、
「提督! この私と勝負しなさい! (ビスマルク)」
「提督! 1航戦の力、見せてあげます!(赤城)」
「防空巡洋艦摩耶! 勝負しろ!」
鎮守府にいる艦娘たちが提督に挑戦を求めた。
「はぁ~・・・」
ため息をつく提督、
「提督と勝負をしたいお方はこの順番で並んでください~♪」
勝手に接客を始める村雨、
「提督と勝負を始める前に、最低一品からのご注文をお願いしま~す♪」
村雨の行動により、次々と注文が入っていく。
「では・・・提督、頑張って下さいね♪」
商売的に結果オーライだが、負担がのしかかり「やれやれ」と感じる提督。
「わかった・・・じゃあ最初の挑戦者は一体誰かな?」
提督は順に勝負をしていった。
・・・・・・
「1航戦赤城! 私は1年分の間宮券が欲しいです!!」
明らかに無理な要求のはずだが、
「いいだろう・・・勝てればな。」
提督が要求を飲んだことで、赤城のやる気は最高潮に達する、
「では、行きますね・・・それでは、始め!」
村雨の合図とともに勝負が始まる、
「ぬおおおお~!!!!」
渾身の力で必死に押し込みをかける、
「1年分の間宮券! 1年分の間宮券が・・・欲しい~!!!!」
ひたすら連呼して腕に一層の力を込める赤城だったが・・・
「あのさぁ、もう少し静かにできんのか?」
提督が呆れながら呟き、
「これが1航戦の力? 昨日の金剛の方が遥かに強かったわ!」
と、容赦なく押し込み、
「はい! 赤城さんの負け~!」
あっけなく負ける赤城だった。
「ああ・・・1年分の間宮券・・・1年分の間宮券・・・1年分の・・・」
「ほら、次は誰だ?」
赤城を無視して次なる挑戦者に挑む。
「この摩耶様が相手だ! あたしは家具コイン10万分欲しい!!」
明らかに無謀な要求だが、
「いいだろう・・・勝てればな。」
提督は敢えて「無理」と言わない、余程勝つ自信があるのか・・・
「よし! 絶対アタシが勝ってやるからな!」
「では、行きますね~それでは、始め!」
村雨がまた合図を掛けた。
「ああっ、提督!! あそこに深海棲艦が!?」
摩耶が外を指差して教える。
「・・・それで?」
全く動揺せずに押し込んで、
「はい、摩耶さんの負け~!」
一瞬で負けた摩耶。
「ちっくしょう! この作戦なら勝てると思ったのによぉ~!!」
摩耶は悔しいのか壁を叩く、
「・・・せめてもう少しまともな嘘を言えよ!」
提督に捨て台詞を吐かれ、がっかりしながら料亭から出る摩耶、
「はい、次は・・・もう終わりか?」
「いいえ、この私ビスマルクが勝負よ!」
初めての海外戦艦ビスマルクが挑戦して来た。
「私はね、高級バッグが欲しいわ!」
「うわぁ~・・・強欲な女だ。」
「うるさいわね! それで、叶えてくれるわけ?」
「いいだろう・・・勝てたらな。」
「ふん! そう来なくちゃ!」
両者腕を掴み、皆が見守る中で、
「では行きますね~・・・それでは、始め!」
村雨の合図に、
「この勝負貰ったぁ~!」
勢いよく力を込めるビスマルクに提督が、
「あっ、あそこにルイ・ヴィ〇ンの高級バッグがあるぞ?」
「!? えっ、どこどこ!?」
ビスマルクは目をそらして、
「はい~! ビスマルクさんの負け~!」
摩耶と同様一瞬で負けたビスマルク。
「提督! あんまりじゃない!」
ビスマルクは噛みつき、
「引っ掛かるお前が悪い! お前も摩耶同様の知性だな!」
「・・・明日また来るから! 覚えていなさいよ!」
ムスッとしながら帰って行くビスマルク。
「さぁ、次の挑戦者はいるか? 勝てたら何でも願いを叶えてやるぞ、勝てたらな?」
その後、何人かの艦娘たちが挑んだが、
結局、誰も勝てずに今日の挑戦は終わった。
・・・・・・
「全く・・・」
提督はため息をつき、
「白露の奴・・・負けた腹いせに皆に言っているのか? どこまで負けず嫌いだ。」
「まぁ提督、白露はあれで強情な所があるんですよ。」
不満げな提督を村雨がなだめる。
「でしたら、手加減して負けてあげてもいいんじゃないですか?」
「そうしたいんだけど、負けたらそれはそれで大変なんだよね。」
挑戦する艦娘たちの要求が無理難題なため、容易に負けられないと答える提督に、
「確かに・・・紅茶セットや高級バッグはともかく・・・1年分の間宮券や家具コイン10万はねぇ~。」
「・・・どうせまた何人かが挑戦に来るんだろう? 何かしらの策を立ててな。」
腕相撲は真剣勝負だが、提督なりに多少のズルは許している模様。
「明日に向けて、仕込みの準備をしよう・・・村雨はもう寝たら?」
「は~い、ではお先失礼します~。」
村雨は部屋に戻り、提督は仕込みのため厨房に入って行った。
・・・・・・
翌日、
「あらあら・・・凄い数ですね~。」
開店前だと言うのに凄い艦娘たちの数である、
「この中で提督と勝負したい方はいますか~?」
村雨が尋ねると、
「ここいる全員よ!」
と返された。
「あらら~♪」
「これは面白くなりそう。」と勝手に意気込む村雨。
・・・・・・
「今日は提督に勝てそうな方法を思いついたんだから!」
白露は自信満々で胸を張る。
「ほほぅ、それは楽しみだ。」
白露の腕を掴み、
「では、行きますね・・・それでは、始め!」
勝負開始、
その瞬間、白露の腕に白露型全員(海風除く)の腕が覆いかぶさって、
「白露型姉妹全員の合わせた力! これでどぉよ!!」
全員分の力が提督の腕に掛かる。
「今度こそ提督を負かしてやるんだから! 流石の提督もこれには・・・」
余裕の表情で提督を見るが・・・
「あの~・・・全く力が加わっていないんだが?」
そう言って、白露の腕を地面につけた。
「はい、白露の負け~!」
「え~っ!? 何で!? どゆこと!?」
訳が分からず困惑する白露。
「白露を重点として、皆が横から腕を握ったところで白露の向きに力が言っていないってことだよ!」
「むむむ・・・悔しい~!!」
また悔しがる白露。
「白露の姉貴・・・もう諦めようぜ。」
「そうだよ・・・わざわざ強大な敵に挑む必要はないんじゃない?」
「付き合わされた結果がこれじゃあ、アタイも行き損だよ。」
白露も諦めて、帰って行く中、
「提督さん、夕立も腕相撲したいっぽい~♪」
夕立が腕を構えた。
「ほほぅ・・・それで、何を叶えて欲しいんだ?」
「夕立はねぇ~・・・褒めて欲しいっぽい~♪」
「・・・・・・」
「では・・・始め!」
「行くっぽい~!」
先手は夕立、しかし提督の腕は全く動かない。
「よしよし~。」
もう片方の手で夕立の頭を撫でてあげた。
「・・・ぽい~♪ ぽい~♪」
夕立は上機嫌だ。
「はい、夕立の負けw」
油断した夕立だが、
「わ~い、褒めてもらえたっぽい~♪」
何故か満足げで帰って行った夕立。
「・・・あのくらいなら素直に負けてもいいんだけどなぁ~。」
と思った提督。
「・・・さてと、次の挑戦者は誰かなぁ~?」
提督は次の挑戦者と対峙した。
・・・・・・
「提督、今日も1日お疲れ様です~♪」
店を閉じて村雨が傍にやって来て、
「明日もたくさん来ると思いますから、どんどん負かしてくださいねぇ~♪」
何故か村雨は上機嫌である。
「私たちのメニューの注文数が増えているんですから、ここは提督に負けずに粘ってもらわないと!」
どうやら、挑戦者が増えたことで艦娘メニューの売り上げが上がったようだ。
「さて・・・提督♪ 今日の村雨の売り上げ決算をお願いします♪」
村雨はわくわくしながら、今日の売り上げの決算報告を待ち望んでいた。
・・・・・・
その後も、提督に挑戦する艦娘が次々にやって来て勝負するが、誰一人勝てる艦娘はいなかった。
「お前たちの不屈の精神には関心するが、もう少し戦略を考えたらどうだ?」
と、提督が挑発する始末で、
「大体力だけでどうにかしようとするから、負けるんだよ・・・もっと頭を柔らくして挑んだらどうだ?」
と、ついでに補足もした。
・・・・・・
「提督、今日はこのサラが挑戦してもよろしいでしょうか?」
料亭で働く艦娘の1人、サラトガが挑む。
「いいよ、先に言っておくが手加減はしないぞ?」
「構いません、私も本気で行かせていただきます!」
「ほぅ、それは楽しみだ。」
両者腕を組み、
「それでは行きます・・・始め!」
勝負開始!
「行きます!」
先手はサラ、片手で飛行甲板を担ぐほど腕力が強い彼女、勢いで一気に押し込む。
「んん~~!!」
後数cmで提督の腕が下に着くところまで押し込めたが、
「どうした? もう少しでサラの勝ちだぞ?」
全く余裕の提督、サラの力量を試していただけだった。
「んん・・・くぅ~!!」
サラは必死で力を加えるが、
「残念・・・もう少しだったな。」
提督の反撃により、サラトガは惜しくも負けてしまう。
「残念~! サラトガさんの負け~!」
「・・・完敗です、流石は提督・・・お見事でした。」
勝負には負けたが、何かに満足して笑顔なサラトガだった。
・・・・・・
「もぅ~っ! 提督強すぎるよぉ~!!」
未だに勝てずに不満げな白露が皆の前で愚痴り始める。
「仕方がないよ、相手が提督だもん。」
時雨が答えて、
「そうですよ、それに提督は普段から重い物を持ち運んでいるんですから腕力は高いに決まっていますよ!」
五月雨が説明して、
「でもぉ~・・・勝てば「何でも叶えてくれる」って・・・それなのに・・・」
白露は何かを叶えて欲しいのか、かなり悔しげに語る。
「それなら、村雨さんに相談してみてはどうですか?」
「? 村雨に? 何で?」
「なぜ村雨に?」と意味が分からなかった白露に、
「村雨さんがこの前、「提督に勝てたから村雨のお願い叶えて貰えちゃった~♪」って言ってましたけど・・・」
「!? それ本当!?」
五月雨の言葉に反応して、
「何でもっと早く言ってくれなかったのぉ~! これはすぐに村雨の所に行ってみないと!!」
白露は立ち上がり、部屋から出て行った。
・・・・・・
「村雨~!」
白露は料亭へと入り、
「あら、白露・・・どうしたの? また提督と勝負しに来た?」
いつもと同じ、村雨はお品書きを白露に渡して、
「違う違う、今日は村雨に聞きたいことがあるんだよ!」
「? 私に聞きたいこと?」
村雨は首を傾げて、
「提督と腕相撲で勝ったんだって?」
「あら・・・もう噂が広まってるのね~♪」
村雨は「てへっ♪」っと舌を出す。
「教えて! どうすれば提督に勝てるのかお姉ちゃんに教えて!!」
「え~・・・でもなぁ~・・・」
村雨が「どうしようかなぁ~」とばかりに考える。
「村雨! お姉ちゃんのお願いが聞けないの!?」
「・・・・・・」
「お姉ちゃん」と強調されて「はぁ~」っとため息をつき、
「はいはい・・・仕方がないわね・・・じゃあ、村雨が提督に勝つコツを伝授させてあげる♪」
そう言って、白露の前に手を出した村雨。
「? 何、その手は?」
「何って・・・まさかタダで教えてあげると思ってるの白露~?」
「お、お、お姉ちゃんからお金取るって言うの!?」
「と・う・ぜ・ん! 1000円になりま~す♪」
「むむむ・・・」
「1000円で勝てるなら安上がりだと思うんだけどなぁ~、勝てば1万円以上のおねだりをすればいいんだし♪」
「くぅ~・・・」
流石の白露も妹にせびられてご不満の様子、
「まぁ、嫌ならいいんだけどね~。」
姉の性分を知っているからか、にっこりしながら挑発する村雨。
「わ、分かったよ! 明日もう1回来て1000円渡すから・・・それでいいでしょ?」
「はいは~い♪」
村雨に1000円を渡す約束をして、店から出て行った白露だった。
・・・・・・
翌日、
「また来たよ村雨!」
「あら白露、いらっしゃい~♪」
「ほら1000円!! これでいいでしょ? じゃあ勝つコツを教えてよ!!」
白露は村雨に1000円を出し、
「・・・確かに、1000円頂きます♪ じゃあ教えてあ・げ・る♪」
そう言って、村雨は白露の耳にひそひそと語りかける。
「!? 本当に!? 本当にそれだけでいいの!!?」
白露が驚く。
「うん、提督は意外にそこが弱い所なの♪」
村雨が得意げに言う。
「分かった・・・じゃあ少し作戦を練って明日また来るから!!」
白露は料亭から去った。
「あらあら・・・明日が楽しみねぇ~♪」
村雨は何故か楽しくて仕方がなかった。
・・・・・・
さらに翌日、
「提督! もう1回あたしと勝負だよ!!」
白露が勝負を持ち掛けた・・・しかし、今度は白露型全員ではなく、江風しかいなかった。
「・・・江風と2人・・・そんな数で勝てると思っているのか?」
提督は「舐められたもんだ。」と思った。
「今日こそは・・・あたが勝って見せるから!!」
「ほぅ・・・どこからそんな自信が来るのかはわからないが・・・勝負してやる。」
両者の腕を掴み、
「それでは行きます。」
村雨が合図して、
「では・・・始め!!」
勝負開始!
「江風、今だよ!」
「ほいっ、白露の姉貴!!」
江風は両手を提督の前で、
パァン!!
何故か江風は提督の目の前で猫だましをした。
「!? 何だ?」
提督が一瞬怯み、
「貰ったぁ!!!!」
白露の渾身の力が提督の腕を押し倒し、
「白露の勝ち~!! おめでとうございます!!」
白露が勝利した。
「やったぁ・・・やったぁ~~!! 白露が勝ったぁ~!! やったねぇ~!!!!」
白露は大喜びである。
「あちゃ~・・・負けてしまったな。」
提督は素直に負けを認める。
「じゃあ、白露のお願いを何でも聞いてくれるんだよね?」
「ああ・・・それが条件だからな。」
「じゃあ・・・あたしのお願い事はねぇ・・・」
白露は考えて・・・
「・・・う~ん・・・実を言うと特別叶えて欲しいお願いは無いんだよね・・・」
腕相撲で負けた悔しさから何としても「勝ちたい」・・・それだけが目標だった白露にとって、今更「叶えたい事」が思いつかず・・・
「う~ん・・・じゃあ・・・お小遣い頂戴♪」
結局貰えなかったお小遣いしか思い浮かばず、両手を出して要求する白露。
「・・・いいだろう、それで・・・いくら欲しい?」
「10万円!!」
白露が遠慮なしに言った。
「・・・わかった。」
提督は部屋の奥に行き・・・少し経ってから、
「ほら、10万円・・・姉妹たちに取られないようにな。」
「やったねぇ~!! えへへ~・・・提督ありがとね♪」
白露は上機嫌で帰って行った。
「ちょっ、姉貴!! 江風の分は無いの!!?」
江風は聞くが、上機嫌の白露の耳には届かずタダ働きをさせられてしまった可哀そうな江風だった。
・・・・・・
白露が皆に言い振らしたのか、今まで勝てなかった艦娘たちが再挑戦するようになり、
「はい! 加賀さんの勝ちです!!」
「はい! 伊勢さんの勝ち~!!」
「金剛さんの勝利! 良かったですねぇ~♪」
各艦娘たちが提督に勝利していった。
「また負けた・・・皆急に上達したなぁ~。」
負け続ける理由が分からない提督・・・それを見た村雨が、
「やっぱり、言わない方が良かったかしら・・・何か提督に申し訳ないです・・・」
白露に教えてしまった事を少し後悔する村雨。
・・・・・・
あの時、白露に伝えたのは・・・
「不意打ち?」
白露は首を傾げる。
「うん、提督は普段から真面目だから、「冗談」や「引っかけ」は一切通用しないんだけど・・・」
村雨が言葉を続けて、
「不意打ち・・・例えば「いきなり大声を上げる」とか「目の前で猫だまし!」とかやると、一瞬だけ怯むの。
その隙をつけば提督に勝てるわよ。」
「本当に!? 本当にそれだけでいいの!!?」
「うん・・・でも1つだけ注意が。」
村雨が白露に忠告した。
「提督は1度やられたことはすぐに覚えてしまうの・・・つまり、「二度目は通用しない」ってこと。」
「なるほど・・・次挑戦する時は「別の作戦」でやらないとダメなんだね?」
「そう言う事。」
「分かった・・・村雨ありがとね♪」
それを聞いて白露は、翌日の作戦を練るために鎮守府に戻って行ったのだった。
・・・・・・
白露から情報を聞いたと思われる艦娘たちが提督に次々と勝利する中、
「提督! この私と勝負しなさい!!」
ビスマルクが再挑戦をしてきた。
「今日は間違いなく私が勝つわ!」
「そうか、それは楽しみだな。」
お互いの手を握り合い、
「それでは、始め!」
試合開始!
「これでどう!!」
もう一方の片手で机を「バンッ!!」と叩く・・・不意打ちであるが、
「・・・だから?」
全く怯まず。提督は容赦なくビスマルクの手をつき、
「はい、ビスマルクさんの負け~!」
また負けてしまったビズマスク。
「ちょっとぉ~! 何で!? 」
ビスマルクは驚きを隠せない。
「同じ手が通用するかよ!」
白露に続き、各艦娘が自分なりに不意打ちを考えて勝利を手にしたと同時に、不意打ち自体に耐性が付いてしまった提督。
最早提督は「不意打ち」に一切怯むことがなくなった。
「もう~!! 私に限って何でいつもこうなのよ!?」
不機嫌で出て行くビスマルク。
「・・・良かった。」
側で見ていた村雨は安堵の表情を浮かべた。
・・・・・・
その後も、ビスマルクの挑戦が続くも、
「残念~! ビスマルクさんの負け!」
挑戦しては負けを繰り返すビスマルク、
不運にも、ビスマルクだけ勝機を逃してしまった模様。
「ううっ・・・もう諦めるわ、バッグもいい。」
肩を下げ、力なく料亭から出ようとするビスマルクに、
「待て、ビスマルク。」
提督が止める。
「? 何よ?」
振り向くと、手には大金(帯付き札束)を持っている提督。
「お前の不屈の挑戦心には関心した、これを機に腕相撲のサービスは終了しようと思う。 あまりいい方法ではないが、
お前の望み位、オレの慈悲として叶えてやるよ。」
と、ビスマルクに札束を渡した。
「いいの!? 私は勝ってないわよ? それに、くれるって言うなら返さないわよ!?」
「ああ、構わん。 好きな物を買え。 バッグでも財布でも何でも!」
「ああ、アドミラル! ダンケ!!」
ビスマルクは余程嬉しかったのかステップをしながら料亭から出た。
「提督、相変わらず人がいいですね。」
村雨は呆れつつ、クスクスっと笑う。
「彼女が最後だからな、ずっと負けていては可哀そうだと思ってな。」
提督は「ふぅ~」っと息を漏らして安心し、
「これで「腕相撲」は終了する! 明日からは今まで通りの通常営業とする!」
こうして、白露のわがままから始まった”腕相撲”サービスは幕を閉じた。
「腕相撲」 終
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