「皆の一番は」
相変わらず一番を目指す白露に他の艦娘も一番を考えるように・・・
「今日もいっちば~ん目指すよぉ~!!」
相変わらず一番を目指す元気な白露型の長女の白露・・・
「元気ですね~・・・白露さんは・・・」
霧島が羨ましそうに見る。
「一番か~・・・」
ふと、霧島は思った。
「私の一番は・・・一体何でしょう?」
そう思った途端、急に気になり始め・・・
「う~ん・・・私の一番・・・私の一番って・・・何だろう?」
しばらく考えるが・・・答えが出なかった。
・・・・・・
白露の元気ぶりは鎮守府の全域で見られる光景で・・・彼女だけに留まらず、「そう言えば」 「そう言えば私は?」・・・と、
皆が自分の一番を考えるようになった。
「・・・・・・」
提督が執務室で仕事をしていた時の事、
「提督~。」
白露が入って来て・・・
「私の一番ってなぁに~?」
「・・・・・・」
提督はため息をつく・・・何故なら白露は毎朝必ず同じ質問をしてくるからだ。
「・・・それはな。」
提督はそれでも、
「白露の一番は・・・周りを元気にする力が一番あることかな。」
毎日、同じ答えを言ってあげる。
「そうよねぇ~! あたしって一番元気だよね~! やったね! ありがと、提督ぅ~!」
白露は満足して執務室から出て行った。
「・・・相変わらず元気だなぁ、白露は・・・」
と、呟く提督。
「・・・・・・」
その光景を霧島が見ていて、
「流石司令! もしかしたら、私に一番を知っているかもしれませんね!」
そう思った霧島だった。
・・・・・・
その日から、
「ねぇ提督! 私、ビスマルクの一番は何かしら?」
「司令! 秋月の一番って何かありますか?」
「アドミラール! この私、アイオワに皆に負けない自慢が出来る事ってないかしら?」
等、鎮守府に所属する皆が駆け付けるようになった。
「・・・自分で考えたら?」
と、最初は言ったものの・・・
「一番私たちを見ているのは提督でしょ!? ねぇ、ビスマルクの一番は何? はっきり言いなさいよ!」
「司令! 霧島の誰にも負けない所は何でしょうか?」
「提督、村雨のい・ち・ば・ん・・・は何かしら?」
と、どんどん質問が増えていき、提督を悩ますこととなった。
「わかった・・・後ほど伝えるから・・・頼むから仕事して!」
提督の命令で何とかその場は収まったものの・・・解決したわけではなかった。
・・・・・・
「・・・今日1日の書類を持ってきました。」
「ありがとう・・・その机に置いてくれ。」
「わかりました・・・あのぅ、提督。」
サラトガが提督に近づき・・・
「サラの一番は何ですかねぇ~?」
「・・・・・・」
またか・・・と思った提督。
「そうだなぁ~・・・サラには皆に比べて一番・・・」
「はい!」
「・・・なんてね、教えない!」
「ちょっとぉ~! 提督ずるいです! 教えてくださいよ~!」
「・・・今度ねw」
「・・・ぷぅ~。」
とても不満そうに頬を膨らますサラトガ、
「次は絶対教えてくださいよ、提督!」
サラトガは執務室から出て行った。
・・・・・・
「一番ねぇ~・・・」
提督はため息をつく。
「別に一番を目指すのはいいことだけど・・・そんな必死にならなくてもいいんじゃないかなぁ~。」
と、愚痴をこぼした。
「最近ではほぼ全員が「一番は何ですか?」と聞いてくるんだよなぁ~・・・さて、どうしたものか。」
提督は悩みつつも、執務室に向かうのだった。
・・・・・・
「提督、お疲れ様です!」
執務室には蒼龍と大鳳がいて・・・
「提督、私が皆より特筆する所ってあるかな~?」
「大鳳にも何か・・・誰よりも勝る部分があれば教えて欲しいのですが・・・」
「・・・・・・」
今度は蒼龍と大鳳・・・さて、どう答えたものか・・・
「提督! 黙っていないで教えてくださいよ! じゃないと私、教えてくれるまで、執務室から出ませんよ!」
「提督、大鳳のいい所、教えてください!」
「・・・・・・」
と言うか、わざわざオレが伝えなくても・・・まぁ仕方がない、言おうか。
「蒼龍は・・・鎮守府の中で一番戦果が多いから、一番強い所かな。」
「あらやっぱり! 提督ぅ~! ちゃんと見てるじゃん、やったねぇ~!」
蒼龍は満足して出て行った。
「大鳳は・・・一番のしっかり者かな・・・朝のストレッチ、出撃準備は欠かさないからな。」
「まぁ・・・そうですね。 提督は確かにちゃんと見ていますね! 大鳳、これからも頑張ります!」
大鳳も嬉しいのか執務室から出て行った。
「はぁ~・・・」
提督は再びため息をついて、
「答えたら答えたで・・・これはこれで厄介なんだよなぁ~。」
翌日、提督の嫌な予感が的中することになる・・・
・・・・・・
翌日、蒼龍と大鳳の一番を挙げたことにより、すぐ鎮守府内に広まり・・・今まで保留扱いだった艦娘たちが
一斉に執務室に駆け付けたのだった。
「提督、ビスマルクのいい所はいつになったら教えてくれるのかしら?」
「司令! 霧島の自慢できるところをそろそろ教えてください!」
「提督! サラの一番は何ですか?」
「・・・・・・」
提督は悩んでいると・・・
「ちょっと待った! そんなに詰め寄ると提督も困るでしょ?」
アイオワが皆に声を掛けた。
「ここは1つアドミラールからお題を出してもらって、それが達成出来たらその艦娘を皆で一番として称える、
と言うのはどうかしら?」
「・・・・・・」
確か前にもこんなことがあったな、と思った提督。 ←※「提督と白露型」参照
「・・・いいわよ! どうせ勝つのはこのビスマルクでしょうけど。」
「ビスマルクさん・・・まだやってもいないのに勝ち誇って・・・いい度胸ですね。」
「いいですよ・・・海外空母のサラの実力を見せてあげます。」
「・・・はぁ~。」
提督は「やれやれ」と思いつつ、皆にお題を出した。
「最近近海で見つかった宝石がある、名前はアクアローズ。 大変希少で量は微々たるもの・・・それを見事見つけた者には
少し奮発してMVPメダルと金一封を進呈しよう。」
「あら、司令・・・いつになく報酬が豪華ですね。」
「ふふ、その報酬は私の物ね!」
ビスマルクが出て行くとそれに続いて皆が出て行った。
「はぁ~・・・」
提督は再びため息をつき、
「あいつら・・・駆逐艦以下か~・・・」
皆の低能ぶりに呆れる提督。
※因みに、このお題は「提督と白露型」で白露たちに出したお題と全く一緒。
「・・・あの~・・・提督。」
気づかなかったが、サラだけが執務室に残っていた。
「あれ? サラは行かないのか?」
「・・・・・・」
「皆に先を越されるぞ? 早い者勝ちだから、もたもたしてると霧島やビスマルクたちに持って行かれるぞ?」
「・・・・・・」
「? どうした?」
「いえ、そのアクアローズって宝石は・・・」
そう言って提督の耳元で呟く。
「ほぅ、なるほど。」
サラだけはまともでよかった、と思った提督であった。
・・・・・・
「中々見つからないわね・・・本当にそんな宝石なんてあるのかしら?」
「力なら自信があるわ! どんどん掘っちゃう!」
ビスマルクとアイオワが砂を掘りまくる。
「やれやれ・・・お2人は本当に元気ですね・・・」
2人を見守りながら、霧島はベンチで緑茶を飲んでいた。
「本当は・・・そのアクアローズは・・・何ですけどね・・・」
霧島はどうやら答えを知っているようで、敢えて何も言わず2人の行動を見守った。
それをよそに、
「まだなの!? ちょっとアイオワ! もと掘って!!」
「疲れたわ・・・少し休ませて。」
結局2人は夕方まで掘り続けていた。
・・・・・・
結局見つからず、ビスマルクたちはがっかりしながら鎮守府へ帰還・・・そこで告げられた提督の言葉に大激怒した。
霧島とサラトガは答えを知っていたようでそれが更に怒りに拍車がかかった。
「私たちを騙したの!? ふざけないでよ!」
ビスマルクの怒りは収まらず、アイオワは疲れて椅子に座り寝てしまう。
当の提督は、
「一番にこだわり過ぎて判断力を欠いたお前らが悪い。」とこれまた白露たちに言った言葉を返した。
ビスマルクはしばらく拳を震わしていたが、負けは事実で素直に認めた。
「それで、私の一番は何かしら?」
「・・・そうだな。」
少し考えて一言、
「お前は鎮守府の中で一番・・・頭が悪い、でどうだ?」
「な、な、な、何ですって!?」
「えっ? 悪いこと言ったか? それしか思いつかなくて・・・」
「・・・提督のバカぁ!!!!」
そう言って泣きながら出て行った。
「全く・・・冗談が通じない奴だな。」
そう言って提督が一言、
「本当は・・・戦艦の中で一番可愛い所かな・・・うん、本人には言えないけどね。」
提督は口ごもる。
「じゃあ司令・・・霧島の一番は何ですか?」
恐る恐る聞いて、
「霧島は当然、戦艦で一番美しい艦娘だよ。」
「あら、嫌ですよ~司令ったら♡」
霧島は上機嫌だ。
「提督~サラの一番は~?」
「お前は言うまでもなく空母で一番綺麗だ。」
「うふふ~♪ 提督ったらお世辞が上手いですね~♪ でも、何か嬉しいです。」
サラもキラキラして何とかこの場は治まった。
・・・・・・
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