「ビスマルク抹殺指令」
久々に再会する提督とビスマルク、しかし彼にはある目的が・・・
キャラ紹介、
提督:元提督だったが、再び提督として再着任する。しかし、雑用は相変わらず行っており、
実力があるため、鬼提督からよく面倒な任務を頼まれる。
鬼提督:最近大将に昇格した提督。提督の事を相変わらず「無能」と言い張り、面倒な任務を
押し付けるも、彼の実力は誰よりも認めている。
ビスマルク:ドイツが誇る戦艦艦娘、しかし鎮守府ではなく豪華客船に乗っており・・・
「また貴方と会うとはねぇ・・・」
バーのカウンターで座る1人の女性と1人の男性。
「貴方と会うのはいつ以来かしら?」
女性の質問に、
「う~ん、確か・・・1年8カ月だったと思う。」
「あら? よく覚えているわね。 そうね、あの時もこういう風に出会っていたわね・・・」
互いに「乾杯!」と言い合い、
「覚えてる? 貴方と私が初めて会った時の事を・・・」
そう言って、彼女は昔を思い出す。
・・・
・・
・
私はビスマルク、ドイツが誇る戦艦で火力と戦果なら誰にも負けない!
・・・と、ここまでは鎮守府での生活の話。 今は、休暇を貰ってクルーズで1人旅をしているわ。
何で1人かって? ・・・誘う相手もいなければ誘われることも無かったからよ。
それに1人の方が相手に気を遣わなくてもいいし、どちらかと言うと1人での旅行の方が楽だわ。
今は船内のバーで1人座って、飲んでいる所。
「・・・」
ビスマルクが見回すと、中央で複数の男女がダンスを踊っていたり、歌を歌っていたりとカップルの光景を目の当たりにする。
「いいわね・・・私には誘う相手も、誘ってくれる男もいない。」
羨ましいのか、彼女は中央をしばし見物した所で、
「ふん、何を羨ましがっているのよ私は・・・」
すぐに前を向くと、マスターに注文をする。
「うん、いつもはビールしか飲まないけど・・・カクテルって言うの? 中々いいじゃない~。」
カクテルの色やグラスの形を眺めて楽しみ、少しずつ口に注いで満喫していくビスマルク。
「マスター、オレにもカクテルをくれないか?」
ビスマルクの横に1人の男性が座る。
「・・・何、この男? 普通、女性が隣に座っていれば「隣いいかな?」とか言うでしょ。」
何も言わず座る男を見て、ビスマルクは少し苛立つ。
「お待たせ致しました。」
マスターからお勧めのカクテルを受け取り、ビスマルク同様色やグラスを眺めては楽しみ、少しずつ口に注いでいく。
「うむ、これは中々。」
男もカクテルを気に入り、
「お嬢さんは何をしに? 見たところお相手がいないように見えるけど?」
男はビスマルクに話しかけて来た。
「見れば分かるでしょ? 私が誰かと一緒にいるように見える?」
「それはそうだな、失礼した。」
「私は1人でこの船に乗って休暇を楽しんでいるの、誰かがいればそれだけ気を遣わなければ行けないし、
1人なら好きな物だって食べたり飲んだりできる。」
「そうか・・・うん、確かにそうだな。」
「そう言う貴方はどうなの? 見たところ1人にしか見えないけど?」
「うん、実は君と同じ1人でこの船に乗ったんだ。」
「・・・」
ビスマルクと同じ境遇の男、しかし、彼女にとってはあまり好みでは無かったのか、
「悪いけど、私は1人で楽しみたいの。 そっとしてくれない?」
「そうか、それは悪かったね・・・では、口を閉じて飲むことにしよう。」
そう言って、以降2人は会話をする事なくただカクテルを飲み続ける。
・・・
1時間後、緊急事態が発生する。
「・・・何やら騒がしいわね。」
船内を従業員や船長らしき人間たちが、乗客たちに何やら説明をしていて、それを聞いた乗客たちが
怒り出し、騒ぎになっていた。
「どうか落ち着いてください! 今対応に向けて全力を尽くしておりますので!!」
責任者である船長が乗客たちを説得し、
「今すぐに救命ボートを出せ!! 船内に爆弾が置いてあるって・・・それじゃあこの船が沈没するって事じゃないか!!」
現状を聞かされた乗客たちが1人はパニックを起こし、1人は狂って船長に掴みかかったり、残りは叫んだり泣いたりと
楽しい筈のパーティが一瞬にして崩壊していた。
船長たちと乗客たちの話によれば、船内に爆弾が設置されていると言う。
船長宛てに爆発予告が届いていたらしいく、爆弾を置いた人間は今も不明、
当然ながら爆弾が置いてあるだろう部屋も不明なため、各乗組員たちが必死に爆弾を
探しているのだ。
「もういい! 自分たちの命は自分たちで守る!! 皆救命ボートへ急げ!!」
乗客の1人が叫ぶと、それに賛成して全員が救命ボートの元まで向かう。
「オレが先だ!!」
「ちょっと待って! 私も乗せてよ!!」
互いに救命ボートに乗る事で言い争いが起き、そのせいで一部の人間が船内から突き落とされる事態に。
人間とは所詮我が身可愛さである・・・危機的状況に直面すると、まず最初に自分の身の安全しか考えない。
周りは犠牲になっていいが、自分は嫌だ。 そんな人間が集まる今の状態こそ、一番最悪な状況であろう。
「海が荒れています! ボートを使ってもこの荒れでは転覆するかもしれません!!」
船長が必死に呼び止めるも、パニックになった乗客たちの耳には入らず、救命ボートは全て無くなってしまう。
救命ボートに乗れずけがを負った人間、船外に突き落とされた人間たちは、乗組員たちの救助で
辛うじて生還したが、まだ”安全”と言うわけでは無い。船内に設置された爆弾は未だに見つかっていないのだ。
・・・
「お客様、どうして逃げないのですか!?」
マスターが脱出の準備をしている間でも、ビスマルクと男性はカクテルを飲み続けている。
「船内に爆弾、そして荒れた海・・・どちらも危険度は変わらないからな。」
男が冷静に答える。
「それにこの海域・・・近くに深海棲艦が停泊しているという情報もある。
救命ボートなどすぐに狙い撃ちにされるだろうね。」
「そうね、どちらを選んでも絶望的・・・でも、船内ならまだ安全よね、爆弾が見つかって見事解除出来ればの話だけど。」
そう言って、残りのカクテルを味わう2人。
「貴方、今深海棲艦って言ったわね? という事は、職場は鎮守府関連か何かかしら?」
ビスマルクの質問に、
「関連どころか・・・オレはこれでも一応鎮守府の提督だよ。」
男は躊躇いも無く答える。
「・・・」
隣にいる人間が”提督”と打ち明けられ、ビスマルクは何故か震える。
・・・
船内が静まり返り、更に2時間が経過した時、
「船長! 爆弾が見つかりました!!」
乗組員の1人の報告で、船長たちがすぐに駆け付ける。
部屋の中心にタイマー式爆弾が設置してあり、側には頭を銃で撃ちぬき自殺している人間の姿が。
「どうだ、解除出来そうか?」
多少の知識はあるであろう、乗組員に見て貰うも、
「駄目です・・・この爆弾は持ち上げた瞬間爆発する仕掛けになっています、従って船外に投げ捨てるのは不可能。
この手の爆弾は幾つかのワイヤーを切断すればタイマーが止まる仕組みです。 しかし、ワイヤーが多過ぎて
時間的に不可能です!!」
ワイヤーは無数に張り巡らせてあり、タイマーに這うワイヤーだけを切断するためにまずは解体が必要だ。
爆弾の残り時間は約1時間、最初から解体と、切断を含めると・・・時間的に無理のようだ。
「船長! 無理です、船から出ましょう! まだ予備にボートが1つあります。 それに乗って下さい!!」
乗組員は船長にボートに乗るよう指示する。
「因みに、この爆弾が爆発したら・・・被害はどの程度だ?」
船長の質問に、
「間違いなくこの船は沈みます、どこへ逃げてもこの爆弾の脅威からは逃れられません!」
乗組員によるとこの爆弾が爆発した場合、船の先端まで被害が出る程高威力の爆弾だと言う。
「くっ・・・止むを得ん、乗組員たちは残った乗客たちと一緒にボートに向かえ! 私も準備が出来次第そちらに向かう!」
船長の指示で負傷した乗客たちを背負って予備のボートに向かう乗組員たち。
「何をしている? 貴方たちも早く救命ボートに向かうんだ!」
船長の目の前にビスマルクと提督が残っている・・・しかし、提督は逃げもせず、
「その爆弾を見せてくれるかな?」
そう言って、提督が前に出る。
「なっ、何をする気だ?」
船長は提督が一瞬何を言ったか分からない。
「聞いてなかった? 爆弾を解除するから見せろ! と言っているのよ!」
横にいたビスマルクが声を荒げる。
・・・
船長を救命ボートに向かわせ、部屋には提督とビスマルクの2人だけが残る。
「う~ん、これは中々複雑に張り巡らされたワイヤーの数々だなぁ。」
提督がワイヤーの1つ1つを順に見て行く。
「それで? 爆弾は解除できるの?」
ビスマルクの質問に、
「分からない・・・でも乗客と船長たちは無事に避難した事だ、
もし失敗してもオレ1人の犠牲で済むし、何の心配も無いだろう。」
そう言って、提督はペンチを持ってワイヤーの切断を始める。
「・・・ビスマルク、君は何をしている? 早く救命ボートへ向かわないと。」
最後1つであろう救命ボートには、残りの生存者が既に海に出る準備をしている、
早く向かわなければ船内に取り残される形になる。
しかし、ビスマルクから出た言葉は、
「別に、成功すればそれでいいの・・・もし、失敗した時、冥土の旅は1人だけだと寂しいでしょ?」
「・・・」
「・・・」
しばしの沈黙、
「絶対に解除させて、お願いよ!」
「ああ、分かった。」
ビスマルクが見守る中、提督は1度深呼吸をしてワイヤーの切断に踏み切った。
・・・
・・
・
「あれから1年8カ月・・・時間が過ぎるのも早いわね。」
ビスマルクはカクテルを飲み干し、
「あの時は本当に助かるかどうか不安だったわ・・・でも、提督は見事爆弾を解除したわね。」
「ああ、何度も爆弾解除をしていたからな。 それにあの程度はそんなに悩まなかった・・・ワイヤーが多く見えたが、
単に1つのワイヤーが幾重にも絡まって多く見えただけだけさ。」
起爆時間が約1時間だったのに対して、提督は僅か10分程で爆弾を解除してしまった。
「予想外のアクシデントが起きたけど・・・その後は無事に1人旅行が満喫出来たことだし、結果オーライよ。」
「そうか、それは良かった。」
「そして提督、貴方は何も言わず船から姿を消して・・・」
爆弾解除後、船長の運航で無事最寄りの港に着き、晴れて生還したものの、既に提督の姿はなかった。
「せめてもう少し一緒に居たかったわ。」
「・・・」
「でも、またこうして提督と再会出来るなんて・・・これは偶然かしら? それとも運命だったのかしら?」
ビスマルクの言葉に、
「いや、偶然ではないさ。」
「えっ? どう言う意味かしら?」
ビスマルクは提督を見る。
「・・・」
提督の表情は何と言うか・・・真顔であり、真剣な面持ちでビスマルクを見つめていた。
「・・・」
ビスマルクはそれを見て、「ふぅ~」っとため息をつき、諦めたかのような表情で、
「そう・・・ここでは駄目ね、場所を変えましょう。」
ビスマルクは立ち上がり、提督と一緒にある場所へと向かう。
・・・
着いた場所は、ビスマルクが生活している借り家。
「今着替えるわ・・・少し待っていてくれるかしら?」
そう言って、部屋の扉を閉めて着替えを始める。
「・・・」
提督は無言のままだ。
・・・数分後、
「お待たせ。 どう? ”鎮守府にいた時と同じ服装”にしたわ。」
ビスマルクの言う通り、鎮守府に着任している時と同じ服装で提督の前に出る。
「・・・」
提督は相変わらず無言のままだが、手には銃を所持している。
「そう・・・じゃあ私が何者かも全て把握している訳ね。」
ビスマルクは抵抗することも逃げるつもりも無く、静かに椅子に座り込む。
「戦艦ビスマルク・・・君は、大型建造で生まれたにも関わらず、どこの鎮守府にも着任されなかったいわゆる重複艦娘。
重複した艦娘は規律上、解体か処刑することになっている。」
「ええ、知っているわ。」
「でも、君は執行直前になって逃亡した。 ちょうど君があの船に乗る2日前の日だ。」
「・・・」
「1人旅とは良く言ったものだ・・・実際はいつ追っ手に見つかるか分からないリスクを背負いながら、その後も
よく1年8カ月も隠れて生活していたね。」
「・・・」
「不運にもオレと出会ってしまったのが運の尽きだね、君には本当に悪いが・・・」
そう言って、提督はビスマルクに銃を突きつける。
「いいわ、撃ちなさい! 私はもう逃げるつもりも隠れるつもりもない。 撃つならさっさと済ませて!」
ビスマルクは覚悟を決める。
「・・・撃つ前に1つだけ聞かせて。 どうして私があの船に乗ることを知っていたの?」
ビスマルクが船に乗ることは誰も知らない、そもそもあのクルーズに乗れたのもちょうど数人のキャンセルがあり、
運よく乗船出来たのだ、逃亡したその日からビスマルクを追っていたとしても、船に乗った情報など知る由も無い筈。
それなのにどうして船に乗った情報を得たのだろうか?
「ビスマルク、君が逃亡した翌日にZ1とプリンツに会いに行っただろう?」
「・・・」
「重病で鎮守府に着任出来ないプリンツと仕事の終わりに看病をしに行くZ1。 あの2人が鮮明に覚えていたんだよ、
”ビスマルク(姉さま)が明日豪華な船に乗る”と、本人の口から聞かされたって。」
「・・・」
「翌日に豪華客船が出航予定を調べたら、この1隻しか無かった。 つまり君がこの船に乗るだろうとオレは確信した。」
「・・・」
「プリンツとZ1は驚いていたよ、だってその翌日にビスマルクがまた尋ねて来たんだから。2人の言葉に、
「えっ、豪華客船? 2人とも何を言ってるの?」と首を傾げていたそうだ。」
「・・・」
「因みにそのビスマルクは、オレの鎮守府に着任している艦娘なんだよ。」
「ふふ・・・そうだったの。」
ビスマルクは「ふふっ」と笑い、
「運が良かったと思ったけど・・・結局運命には抗えなかった訳ね。」
「・・・」
「貴方の顔を見た時、一瞬嫌な予感はしたけど・・・それが現実になってしまったわね。」
「・・・」
「でも・・・悪くはなかったわ、貴方と一緒に過ごした時間・・・逃げ場のない絶望的な状況下で、
私にとって最後に体験したあの生還劇。これから先あんな刺激的な出来事なんてもう起こるはずない物よね。」
「・・・」
「さぁ、撃って。 私を殺してそれを上官に報告して・・・全てを終わらせて。」
ビスマルクは目を閉じ、撃たれるのを待つ。
「いや、オレは撃つ気は無い。 ビスマルク、君が自分で撃つんだ。」
そう言って、何と提督はビスマルクに銃を渡す。
「何のつもり? 私に銃を渡すなんて!? これじゃあ”貴方を撃っても構わない”ってことになるじゃない!」
銃を持ったビスマルクは提督に向けて照準を合わせる。
「ああ、オレは構わない。 オレを撃つなり自害するなり全てはビスマルクの自由だ。」
提督は撃たれる覚悟をしている。
「・・・」
「オレも最後に聞かせてくれ、君は・・・ビスマルクは本当に処刑されることを望んでいるのか?
本当にそれでいいのか君は?」
提督の質問に、
「・・・いいわけ、無いじゃない!! 何で、どうして私が!! 何で私が処刑されなければならないのよ!!」
ビスマルクは溜まっていた不満を提督にぶちまける。
「建造だって、提督達が好きで行った事でしょ、それを「君に着任出来る鎮守府は無い、残念だけど解体か処刑ね」って
言われて、「はい、分かりました」なんて言えるの? 言えるわけないじゃない!!」
「・・・」
「何で提督達! 人間たちは勝手なの! 確かに艦娘は兵器であるけど、それ以上に女性。 女性の姿と気持ちを持つ、
それが艦娘なのよ! それを人間たちは道具のように扱い、いらなければ捨てる・・・あんまりだわ!!」
「・・・」
「この銃で自害しろ? それなら貴方を撃って逃亡する方が私はまだそれだけ生きられるって事でしょ?
それなら貴方を撃ち殺して逃げた方が・・・」
そう言って、銃口を提督に向ける。
「じゃあそれでいい。 ならさっさと撃て、今すぐに!」
提督は目を閉じる、
「・・・」
ビスマルクは震えた手で引き金を引こうとする。
しかし、直前で引き金から手を離してしまう。
「? どうした? オレを撃って逃げるんだろう?」
提督の言葉に、
「・・・いいえ、そんな事をすれば私は反乱として本営から判断される。 そうなったらプリンツやZ1たちが鎮守府から
追い出されて、必要のない罪を背負う事になるわ。」
「・・・」
「だから・・・この銃で自分を・・・撃つわ。」
そう言って、ビスマルクは頭に銃口を当て、
「さようなら提督。」
ビスマルクは目を閉じ、静かに引き金を引く。
カチッ、 カチッ、
しかし、いくら引いても音しか出ない・・・弾が込められていない?
「・・・どう言う事? 弾が入っていないの?」
ビスマルクが困惑する中、
「・・・戦艦ビスマルクは、今この場で死んだ・・・間違いなくこのオレが見届けた。」
提督が口を開き、あらかじめ用意していたケースをビスマルクに差し出す。
「すぐに荷物をまとめて国から出ろ、このケースの中には贅沢をしなければずっと生活出来る程の額は入れて置いた。
さぁ、早く準備をしてさっさとここから出ろ!」
「えっ? て、提督? 何を?」
突然の提督の言葉に混乱するビスマルク。
「聞こえなかったのか? 荷物をまとめて早くこの国から出るんだ!」
「・・・」
提督の言葉に僅かな抵抗があった物の、すぐにコクっと首を振り、荷造りを始める。
・・・
ビスマルクを港まで乗せて行き、
「いいか、ビスマルクと言う艦娘は死んだ・・・これからはこのパスポートに書いてある名前で新たな人生を過ごすんだ。」
ビスマルクが乗船した船は、後僅かで出航する時間になる。
「提督、私・・・私。」
その時、ビスマルクの瞳から涙が溢れる。
「ビスマルク・・・お前の戦艦として、艦娘としての誇りは本物だな。」
提督はビスマルクに敬礼する。
「提督・・・ありがとう! そして、さようなら!!」
そう言って、彼女も提督に向かって敬礼をする。
ビスマルクは船に乗り間もなく出航・・・それ以降、ビスマルクの姿を見た者はおらず、
提督は本営に「ビスマルクは処刑した」との報告書を提出する。
・・・
それからしばらくした後、提督は鬼提督に呼ばれる。
「本当に戦艦ビスマルクはお前の手で処刑したのだな?」
鬼提督の質問に、
「はいっ、間違いなく処刑しました。」
「そうか・・・だが、その後いくら捜索してもビスマルクの死体が見つからない。
貴様が言うには”銃殺して部屋にそのまま残した”と記録しているが、ビスマルクの借り家をいくら捜索しても
彼女の死体など見当たらなかった・・・これはどう言う事だ?」
「・・・」
「貴様・・・まさかビスマルクをかくまって、嘘の報告書を・・・」
そう言い掛けた所で、
「大将殿、オレは今”ビスマルクは処刑した”と報告したのです、それを疑うのはいかがなものかと?」
「・・・」
「私の報告が気に入らないと言うのなら、どうぞ勝手に大将殿で解釈してください。
それでも気が晴れないのであれば、今すぐに私と大将殿で死合でもしますか?」
「・・・」
「まぁ、結論を言って私が勝つのが目に見えていますがね・・・」
提督の言葉に、
「いや、悪かった。 貴様の活躍は見事としか言いようがない・・・報酬はすぐに鎮守府に送ろう。
そしてビスマルクの死体の捜索はこれにて打ち切る、それでいいな?」
鬼提督の提案に、
「構いません、お気遣い感謝致します。」
そう言って、提督は会議室から出て行く。
「・・・ふぅ~、あの無能め。」
鬼提督は安堵の息を吐き、側にあった椅子に腰かける。
「確かに・・・規律とはいえ、簡単に処刑する行為は許されるべきではないが・・・」
そう思いつつ、「あの無能のおかげで始末書を書かなければならんわ!」と愚痴を漏らし、
今日を持って”ビスマルク捜索”の案は打ち切りとなった。
提督が鎮守府に戻って数日が経ち、
「提督、大将殿から封筒が届いています。」
秘書艦から封筒を受け取り、中身を確認する提督。
「ああ、ビスマルクの件での報酬(小切手)か、早く届いたな。」
「明日にでも銀行に行こう」と思い、そのまま執務を続ける。
・・・
翌日、
銀行で小切手を現金化した提督は休日中のビスマルクに出会う。
「あら提督、貴方も今日はお休みかしら?」
「いや、これから書類整理の仕事が残っている。 だがその前に銀行で金を降ろしたかったのでな。」
そう言って、提督は資金が入った袋をビスマルクに渡す。
「プリンツがいる寮に行くんだろ? 今日がプリンツへの支給日だから、ついでに持って行ってくれ・・・後、それから。」
資金袋の他にもう1つの小袋もビスマルクに渡す。
「これはボーナス、この金で皆で外食でもしなさい。」
昨日、鬼提督から送られた小切手の一部をビスマルクにボーナスとして渡した。
「アドミラル、ダンケ! そうね・・・プリンツの体調が良かったら、一緒に外食でも行くわ。」
ビスマルクは喜んで受け取る。
「そう言えば、プリンツとZ1がおかしな事を言って来たのよ。 「私が豪華客船に乗る」とか言って来て・・・」
「・・・」
「提督は心当たりはないかしら? 私が豪華客船って・・・そんなお金持っているわけないし。」
ビスマルクが考えていると、
「多分だけど、プリンツたちの思った夢じゃないかな?」
「? 夢?」
ビスマルクは首を傾げる。
「うん、いつか皆で旅行とか行きたいと言う夢があって、思わず口から”豪華客船”って言葉が出ちゃったんじゃないかな~。」
提督の言葉に、
「確かに、鎮守府に着任した以降からずっと行ってないわね。 皆と旅行になんて・・・」
「だろう? じゃあ今から少しずつ資金でも貯めてプリンツ達と旅行に行く計画でも立てたらどうだ?」
「そ、そうね。 うん・・・なるべく無駄に使わずに貯めるわ。」
提督の案にビスマルクは賛同して、
「じゃあオレは鎮守府に戻るから。 プリンツによろしく伝えて置いてくれ。」
「ええ、分かったわ。 それじゃあ!」
提督は鎮守府へと戻って行き、ビスマルクは受け取った資金袋とスーパーで買った食料品を持って、
プリンツ達がいる寮へと向かうのだった。
「ビスマルク抹殺指令」 終
イマイチ
短いけどよく考えられたSSだった └(՞ةڼ◔)」
鬼提督も災難だな。
階級に差があってもなくても
力で押しきられるとはね。
重複した艦娘に対する制度など
力ある者なら簡単に破棄出来そうだ。
新しく着任する前の提督に
カッコカリ着任させて
重複した艦娘との絆を築き上げてから
正式に着任する時に秘書艦娘として
鎮守府に着任させれば
資材等が節約出来るし一石二鳥。
ええやん
良き良き
この提督、何だかなぁ