「エリザベスとウォースパイトの立場が入れ替わる!?」
自身の我儘でウォースパイトを怒らせてしまい、以降お守りも護衛も一切しなくなる。
危機を感じたエリザベスは何とか許して貰おうと、ウォースパイトに話しかけるが・・・
注:このssには一部、暴力表現が含まれます。
「全く、陛下のお世話は大変よね。」
朝から晩まで側にお仕えし、食事や遊びの相手に、はたまた寝るまでの世話・・・彼女はため息をつく。
「でも、姉さまだから仕方ないわね。」
そう言って、陛下の元に向かう女性。
彼女は「ウォースパイト」、クイーンエリザベスの妹だが姉の事は「陛下」と呼び、常に姉の側でお仕えしている。
「遅いわよ、ウォースパイト! 何をしていたの!」
姉のエリザベスから叱責を受ける。
「申し訳ありません、少し時間が掛かってしまいました。」
咄嗟に謝るウォースパイト・・・時間で言うとほんの1,2分しか経過していないのだが、
「この女王陛下を待たせるなんて、いつからそんな偉くなったのかしら?」
早朝からガミガミ叱るエリザベス、妹であろうと容赦しない、
「申し訳ありません、以後気を付けます!」
すぐにエリザベスの側で今日の役割を担当し始める。
「お腹空いたわ、ウォースパイト! 早く、私に食べ物を持って来て!」
「陛下、ベルファストが持って来てくれます。 それまで少しお待ちを・・・」
「ウォースパイト! 私は「お腹が空いた」と言っているのよ? 女王陛下の言う事が聞けないの?」
「・・・申し訳ありません、今すぐに!」
すぐに食堂へ向かうウォースパイト。
・・・・・・
「申し訳ありません、もう少し時間が掛かります。」
どうやらエディンバラが陛下用の食事を落としてしまったらしい・・・もう一度調理から始めている。
「いいえ、構わないわ。 出来たら呼んで、椅子に座って待っているから。」
ウォースパイトは食堂の椅子に座って、待ち続ける。
5分後、
「遅くなってごめんなさい! こちらが陛下のお食事です!」
ベルファストから朝食を受け取り、
「ありがとう。」
朝食を受け取り、食堂から出て行く。
「・・・大変ですね、陛下のお守りと言うのは・・・」
ウォースパイトの姿を見守るベルファスト。
「遅いじゃない! 何をしているの? いつもより30分も経過してるじゃない!」
戻るとエリザベスの機嫌がかなり悪い、
「申し訳ありません、こちらが今日の朝食です。」
すぐに謝り、エリザベスに朝食を差し出す。
「ふん、まぁいいわ・・・では、いただくわ。」
エリザベスの食事が静かに始まる。
「・・・・・・」
側でウォースパイトが常に控えている。
・・・・・・
朝からこんな調子で、昼・夜になればウォースパイトに掛かる負担は相当なものだと見当はつく事だろう。
それでも、彼女は文句1つ言わない、姉として尊敬しているのか、女王陛下の従者として誇りを持っているからか・・・
しかし、この姉妹の関係が突如崩れる事態に、
それは、食後にウォースパイトがエリザベスのために、デザートを用意していた時の事。
「やっと調達出来たわ、これは陛下の分、と。」
事前に調達した特別なデザート、ウォースパイトのお気に入りであり、エリザベスもそれなりに好きである。
「半年に1度しか手に入らない代物、ベルに頼んでおいて良かったわ。」
皿に盛りつけ、箱に残ったのは少し崩れたデザートの欠片。
「これは私の分・・・いいの、陛下が喜んでくれれば、私も本当は食べたいけど、ほんの少しで十分。」
箱を閉じて、棚にしまいエリザベスの元に向かうウォースパイト。
・・・・・・
「うん、これは中々美味しいわね。」
今日は珍しくエリザベスの機嫌がいい、調達したデザートの影響だろうか。
「いつも頑張っておられる陛下のために、私がツテで用意した1級品でございます。」
ウォースパイトは簡潔に説明するも、
「ふん、当然じゃない。 私は女王陛下よ! 食べられるのは当然の事でしょ!」
相変わらずの口調だが、
「はい、その通りでございます。」
ウォースパイトは絶対に抗議しない。
「ふぁ~あ・・・私はそろそろ眠いわ、ウォースパイト! 寝室まで連れて行って!」
「はっ! こちらです。」
皿を受け取り、エリザベスを寝室まで案内する。
・・・・・・
翌日、
「な、無い!!」
早朝からウォースパイトの叫び声が室内に響く。
「ここに置いておいたはず・・・それなのに何で!?」
彼女はくまなく探すも、
「無い・・・そんな。」
肩をガクッと下げて落ち込むウォースパイト。
昨日調達したデザート、棚に置いたはずの箱が無くなっていたのだ。
「ううっ、半年に一度しか手に入らないのに・・・」
ウォースパイトはがっかりしつつも、時間になりエリザベスの元に向かう。
「遅いわよ、ウォースパイト! 何をしていたの!」
エリザベスからの恒例の説教。
「・・・・・・」
ウォースパイトの表情は暗いままだ、
「? どうしたのウォースパイト、凄く落ち込んでいる様に見えるけど?」
いつもと違って、明らかに元気のないウォースパイトを見て声を掛けるエリザベス。
「いえ、何でもありません。 では、今から陛下の側でいつも通りの・・・」
そう言って、エリザベスの隣に移動した瞬間、
「!? こ、これって!」
ウォースパイトが目にした物、それは・・・昨日棚に置いたはずの箱の残骸だった。
「? ああ、この箱? 深夜にお手洗いに入ったら棚にこれがあって開けたら少し残ってて・・・
私が食べたんだけど?」
「・・・・・・」
ウォースパイトはエリザベスを凝視する。
「少し形が崩れて見た目は悪かったけど・・・中々美味しかったわ。」
「・・・・・・」
「・・・何よその目は? 何? もしかしてウォースパイトが食べる用だったの?
仕方がないじゃない、私はお腹が空いてたの!」
「・・・(睨)」
「・・・そ、そんなに食べたかったなら、肌身離さず持っていれば良かったでしょ?」
「・・・(睨)」
「(怖)そ、そんなに睨まなくたって・・・私は女王陛下よ! 女王が食べたいと言ったら食べるの、分かった?」
「・・・(睨)」
「・・・(怯)ウォ、ウォースパイト? 何でそんなに怒った顔してるの? こ、怖いんだけど(怯)」
「・・・もう。」
「? え?」
「もう、こんな事やってられないわよ!!!!」
ウォースパイトが怒り出し、その場から走り去る。
「ちょっ!? ウォースパイト!!」
エリザベスが呼び止めようとするが・・・彼女の耳に届くことは無かった。
・・・・・・
ウォースパイトが突如いなくなったため、代わりの従者を呼ぶも・・・
「申し訳ありません、私たちはこれから室内の掃除と食事の用意がありますので・・・」(ベルファスト)
「ごめんなさい、私たちはこれから出撃ですので。」(フッド)
「申し訳ありません・・・これからユニコーンと演習なのです。」(イラストリアス)
誰1人、エリザベスの従者になる人間はいなかった。
「何よ、揃いもそろって・・・いいわよ、私1人で出来るわよ!!」
そうは言って見たものの、
「今日の打ち合わせ、ウォースパイト! 出る準備・・・そうね、今いないんだった。」
仕方がなく、自分で立ち上がり準備をすることに、
「・・・靴ってどこ? ウォースパイ・・・もうっ!」
自分の靴がどこにあるのかさえも分からないらしい。
「ううっ、寒い! コートが必要ね。」
扉を開けると寒風が吹き、エリザベスは体を震わせる。
「コート! ・・・どこに掛けてあるのよ? ちょっとウォースパイ・・・」
何かあると必ず「ウォースパイト」の名を呼ぼうとするエリザベス。
「もうっ、ウォースパイトがいないと何も出来ないじゃない! どこに行ったのよ!!」
エリザベスはウォースパイトを探し始める。
・・・・・・
「ウォースパイト! ここにいるんでしょ? ドアを開けて!!」
彼女の部屋の扉をひたすら叩くエリザベス、
「悪かったわよ! 勝手に食べたりして! でも、食べた物は戻らないでしょ? ねぇ聞いてるの?」
叫ぶも、応答が一切ない。
「ウォースパイト! ドアを開けなさい、ウォースパイト!」
いくら叩いても反応がない。
「ウォースパイト! ・・・ううっ。」
呼んでも、応答がない・・・そして自分1人では何も出来ないのだが、
「もうっ! 勝手にしなさい!!」
最後は逆切れして立ち去る始末のエリザベス。
・・・・・・
「お食事をお持ち致しました。」
ベルファストがエリザベスに夕食を差し出す。
「・・・いただきます。」
いつもは味に関して意見するが、今日は何故か何も言わない。
「? どうかしたのですか?」
ベルファストの質問に、
「・・・ウォースパイトがいないの。」
ぼそっと呟くエリザベスに、
「ウォースパイト? 彼女なら先ほど食堂で夕食を食べておられましたが?」
「!? 本当!?」
まだ食べ終わっていないのに、エリザベスは立ち上がり、急いで食堂に向かう。
「!? 陛下! ・・・行ってしまいました。」
突然の行動に驚くベルファスト。
・・・・・・
「ウォースパイト!!」
食堂に着くなり、彼女の名を呼ぶ。
「・・・・・・」
食堂の隅で静かに食事を摂っているウォースパイトの姿を見つけ、
「ウォースパイト! 貴方がいないおかげで、私がどれだけ苦労したか分かっているの!!」
見つけるなり怒り出すエリザベス。
「・・・・・・」
「聞いてるの? ウォースパイト!」
「・・・・・・」
「貴方がいなかったせいで、打ち合わせには遅れるし、寒くて風邪は引くし、靴やコートの置き場所だって
分からなくって必死に探したし・・・一体何を考えているのよ!!」
「・・・・・・」
「姉である私に・・・女王陛下にこんな重労働させて! 許されると思ってるの!!」
「・・・・・・」
「聞いてるの? こっちを向きなさい、ウォースパイト!!」
エリザベスの止まない怒涛に、
「・・・ふっ。」
思わず笑うウォースパイト。
「な、何よ? 何がそんなにおかしいわけ?」
エリザベスの言葉に、
「つまり・・・私がいないと何もできない、無知で役立たずな愚姉って事でしょ?」
「なっ!? ウォースパイト・・・今すぐ前言撤回しなさい!!」
エリザベスの怒りが頂点に達するも、
「私を処罰するの? どうぞ。 こんな姉に一生仕える位なら死んだほうがマシよ!」
「なっ!?」
最早姉妹の関係が崩れる直前まで行っている。
「うぐっ・・・ひっく・・・も、もう知らない!! ウォースパイトのバカぁ!!」
エリザベスは泣き叫んで食堂から去る。
・・・・・・
それからと言うもの、
エリザベスの側にウォースパイトは一切現れなくなった。
「ふん、別に他の従者に頼むからいいわよ!!」と言ったものの、上記の通り全員多忙であり、
且つエリザベスのお守りはほとんどウォースパイトがしていたため、エリザベスの使う道具や着るもの全てに至り、
詳しい人間がおらず、彼女の代わりを務まる人間はいなかった。
しかし、あれだけ叫んでいたエリザベスが早々に白旗を上げる。
いつも彼女に頼りがちだったエリザベスは自分では本当に何も出来なく、だんだんと自身が無知で役立たずに
思えてきて怖くなったからだ。
「ウォースパイト、お願い! 戻って来て!!」
廊下で会ったウォースパイトを何とか呼び止め、必死に懇願する。
「・・・・・・」
彼女は無言のままだ。
「貴方がいないと何も出来なくて・・・夜も1人で不安だし、だからお願い、戻って来て!」
「・・・・・・」
「な、何でもするから! 何でもしてあげるから、だから許して!!」
「? 何でもしてくれるの?」
ウォースパイトは口を開き、
「何でもするから! 貴方が戻って来てくれるなら何でもするから!!」
エリザベスは必死に懇願する。
「本当に? 嘘をついてるんじゃないでしょうね?」
信じられないようで、改めて聞き直す、
「本当よ! 女王陛下よ! 陛下は嘘をつかないわ!」
「・・・じゃあ。」
そう言って、戻る条件としてエリザベスにある条件を出す。
・・・・・・
エリザベスが座る椅子に、ウォースパイトが代わりに座ると、まずは一言。
「今から私の事を”陛下”と呼んでください。」
姉であるエリザベスに自分を”陛下”と呼ぶように指示する。
「なっ!? ちょっとウォースパイト! 陛下は私・・・」
エリザベスは反論しようとするも、
「陛下と呼びなさい、分かったエリザベス?」
「なっ!!?」
ウォースパイトの条件、自身と陛下の立場を入れ替えて欲しいとの願いだった。
当然ながら、ウォースパイトはエリザベスを呼び捨てで呼ぶ、
「ウ、ウォースパイト! 貴方なんでそんな偉そうに・・・」
エリザベスは怒って睨みつけるも、
「・・・・・・」
彼女の真顔を見て何も言えない、
「ううっ・・・」
人に睨まれたことが無いのだろうか? 妹の真顔に恐れたのかエリザベスは遂に、
「わ、分かったわ・・・へ、陛下。」
エリザベスは急に大人しくなり、従う事に・・・
「では次、お腹が空いたので、私に食事を持って来てくれるかしら?」
ウォースパイトの願いに、
「お腹が空いたって・・・朝食はベルファストが持って来てくれるでしょ? それまで待てないの?」
「はぁっ? 「陛下が持って来て!」と言っているのよ? 私の指示が聞けないの!」
ウォースパイトはまた睨みつける。
「・・・わ、私に持って来させる気? 女王陛下に向かって何て口の聞き・・・」
最後まで言い終える前に、
「・・・(睨)」
彼女の真顔に恐れを成し、
「ううっ・・・い、今すぐに・・・お持ちします。」
渋々食堂に向かうエリザベス。
・・・・・・
「食事を持って・・・持ってきました。」
エリザベスが、彼女の前に食事を差し出すが、
「遅いわね、一体どこで油を売っていたのかしら?」
陛下からの叱責が室内に響く、
「遅いってそんな、まだ1,2分しか経っていないじゃ・・・」
「・・・(睨)」
「も、申し訳ありません・・・陛下。」
陛下に言い訳はしない、全て自分が悪いだけ。 いつもそう、自分もウォースパイトに文句を言っているのだから。
「では次、今日の打ち合わせは面倒くさいから行きたくないわ。 先方に「今日は休む」と連絡して置いて。」
何と今度は「面倒くさい」だけの理由で、今日出席予定の打ち合わせを休むと言う、
「!? ちょっと! 面倒くさいから休むって! いくら何でもそんな適当過ぎ・・・」
「・・・(睨)」
「わ、分かりました・・・すぐに先方に連絡してきます。」
今まで、自分がウォースパイトにやって来た事をそのまま返され、エリザベスは何も文句を言えない。
夜になっても、ウォースパイトからの叱責は止まない。
入浴時でも、
「温度設定は40度にしなさいって言ってるでしょ! 何度言えば分かるのよ!!」
温度が設定よりも高かったため、ウォースパイトは文句を言う。
「も、申し訳ありません陛下!」
すぐに謝り、設定し直すも・・・全くいじった事が無く、また叱られることに。
寝室でも、
「シーツの掛け方が悪い、もう一度掛け直しなさい!」
「ううっ・・・か、かしこまりました。」
普段はウォースパイトが陛下のために、毎日シーツを取り換えてくれている。
ただ使用しているだけの彼女に自分でシーツを掛ける事自体が難題であるが、
「本当にこんな事も出来ないわけ? 本当に貴方って役立たずね! 従者を変えようかしら?」
従者を変えると言うのは、この場合は「解雇」を意味する。
「も、申し訳ありません。」
エリザベスはただ謝り、ただ従うだけだ。
まだ1日の作業なのに、くたくたになるエリザベス。
「特別に私の部屋を貸してあげるわ、明日も早いからすぐに起きなさい!」
そう言って、エリザベスの寝室で就寝するウォースパイト。
「ううっ、いつまでこんな事をさせられるのよ・・・」
不満なエリザベス、しかし、戻って来て貰うために受けた条件であるため、
ウォースパイトの指示に従わざるを得なかった。
・・・・・・
早朝5時、
「お目覚め下さい、エリザベス陛下。」
ベルファストが起こしにやって来た。
「う~ん・・・ベルファスト? もう朝?」
エリザベスは時計を見るも、
「まだ5時じゃない? 何でこんな早くに起こしに?」
「ウォースパイトから起こした後「掃除をさせて」と指示を受けております。」
「? 掃除って?」
”掃除”と聞いてエリザベスは首を傾げる。
「ううっ・・・手が冷たい。」
まだ日差しが昇っていない暗い室内でモップを持って掃除を始めるエリザベスだが、
「モップって・・・どうやって使うのよ?」
今まで掃除をした事が無いエリザベスにとって、モップは今日初めて手に取ったようで、
「陛下、モップはこうやって水に浸けた後、床を掃除するのです。」
側にいたベルファストが丁寧に説明する。
「水に浸けるのね・・・よいしょ、水に浸けて・・・」
水に浸け、重量が増したモップを持って不器用ながら床を掃除し始める。
「何で私がこんな事を・・・私は女王陛下なのよ。」
相変わらず、エリザベスはぼそっと不満を漏らすが、
「ウォースパイトはいつも早朝に陛下のために毎日床掃除をしているのですよ。」
エリザベスの言葉に、
「えっ? ウォースパイトが?」
思わず耳を傾けるエリザベス。
「はい、「陛下の靴が汚れると行けないから」と仰っていまして、早朝に陛下が通る場所を必ず掃除します。」
「・・・・・・」
知らなかった・・・そんな事、初めて聞いた。
「・・・・・・」
以降、静かにモップ掃除をし続けたエリザベス。
・・・・・・
「痛い、手が切れて・・・」
早朝の寒い中の掃除、寒さで手が裂けて痛そうな表情のエリザベス。
「動かないでください・・・絆創膏を貼ります。」
ベルファストが持っていた絆創膏を綺麗に貼る。
「あ、ありがとう。」
素直に礼を言うエリザベス、
「お礼は結構です。 陛下のお役に立つのが私たちの役目ですから。」
「・・・・・・」
自身を気遣うのはあくまで陛下だから・・・つまり陛下という肩書きが無ければ?
「・・・・・・」
徐々に自身の傲慢さに気付いて行く。
女王陛下はロイヤルで高貴な存在だ、部下(下僕)が常に仕えていて命令すれば何でもやってくれる。
それが当たり前・・・彼女はいつもそうやって生きて来たのだ。
「・・・・・・」
でも、部下たちの気遣いやその努力・・・いや、日々の日課さえも、全てベルファストやウォースパイトたちの
おかげで自分が何の問題も無く平穏に暮らして行けるのだと、今更ながらに気付く。
「・・・あっ。」
エリザベスが何かに気付く。
「ベルファスト、数日前の事なんだけど・・・」
エリザベスはベルファストに何かを尋ねる。
・・・・・・
翌日になり、
「陛下、お待たせ致しました。」
廊下でベルファストと会い、
「陛下の頼んだ品物を艦隊のコネで手に入れることが出来ました。」
そう言って、エリザベスにある品物を渡す。
「あ、ありがとう。 こんなに早く届くなんて。」
頼んでから僅か1日、まさかそんなに早く来るとは思いもよらなかったようで、
「「女王陛下がすぐに欲しい」と先方に伝えた所、すぐに行動に移してくれたので・・・」
「・・・・・・」
女王陛下の肩書きで早く届いた物、それはつまり・・・
「じゃあ、普通に頼んだらどれ位掛かるの?」
エリザベスの質問に、
「早くて数か月、いえ、半年は掛かりますね。」
「!? 半年!?」
エリザベスは驚く。
「・・・・・・」
それと同時に、何かに気付くエリザベス。
・・・・・・
夕食後、
「陛下。」
エリザベスはウォースパイトの元に近づく。
「何? 食事も済んだし後は就寝するだけでしょ? 他に何か用でも?」
ウォースパイトに言い分に、
「こ、これを・・・どうぞ。」
そう言って、エリザベスが恐る恐る何かを差し出す、
「・・・何かしら?」
箱を受け取り、開けて見ると、
「・・・えっ、これって!?」
何度も見直すが間違いではない、紛れもなく数日前にウォースパイトが頼んだ陛下へのデザートである。
「知らなかったわ、それを頼むのに半年も掛かるなんて。」
「・・・・・・」
「ウォースパイトは私に食べさせてくれるために、半年前から頼んでいたのよね?」
「・・・・・・」
「それも知らないで、私は遠慮なく食べて、そして・・・貴方の分も勝手に食べちゃって・・・
本当にごめん・・・ううん、ごめんなさい。」
「・・・・・・」
「「陛下」の肩書きで早く届いたけど、ウォースパイトは私に忠実だからコネを使わなかったんでしょ?」
「・・・・・・」
「そんな妹の気持ちも知らず、いつも当たり前のように、我が物顔で振る舞って、
本当に私は自分勝手な姉よね? そんな私が、女王と名乗る資格なんて無いわね・・・」
自身の汚点を言い挙げた後、俯くエリザベス。
「・・・・・・」
ウォースパイトはエリザベスの言葉を聞き、
「・・・ふっ。」
何故か笑みをこぼし、エリザベスの前に立ち答える、
「一緒に食べませんか、陛下。」
「えっ、ウォースパイト?」
エリザベスは顔を上げる、
「今を持って私と陛下の立場を戻します、どうぞ椅子に座って下さい陛下。」
「・・・・・・」
彼女は何をしたかったのか? 恐らく立場を一時的に変えた事で女王の側に仕える者たちの
苦労と努力を知って貰いたかったのであろう。
「わ、私も食べていいの、ウォースパイト?」
妹に食べさせるためだったデザートを渡され、困惑するエリザベス。
「はい、先に食べてください。」
普段と同じように跪き、見守るウォースパイト。
「・・・・・・」
エリザベスは手に取ったフォークで半分に割り、
「これはウォースパイトの分よ、さぁ食べて。」
明らかに残りより多い分を出されて、
「!? こんなに食べてもいいのですか!?」
ウォースパイトは驚き、
「これは陛下である私からの命令よ、さぁ食べなさい。」
「は、はい。」
そう言って、受け取った後、
2人「頂きます。」
一緒に食べ始める、
「・・・美味しいわね。」
エリザベスはぼそっと口に出す。
「はい、甘くて、少し苦くて・・・美味しいです。」
ウォースパイトの表情は朗らかだ。
・・・・・・
翌日から、いつもの生活に戻る2人。
エリザベスの態度も相変わらずで、ウォースパイトはいつもと同じ忙しい日々を送っている。
ただエリザベスにも心の変化は見られたようで、
普段の振る舞いとは別に、「掃除お疲れ様」「ありがとう、起こしてくれて」等、言うようになり、
ベルファストや他の皆が「陛下に何かあったのですか?」と疑問を感じる場面が、
しばらくの間続いたようである。
「エリザベスとウォースパイトの立場が入れ替わる!?」 終
自分が当たり前に感じている事は実は当たり前では無い事が多い
そんな気持ちになりました
面白かったです。d(^-^)