「提督と時雨」2
思い付きで書いてみました。 史実やメインとは無関係です。
もう、うんざりだ・・・
ある海域の出撃以降、提督が急に体を崩した・・・
一人では立ち上がれず、歩く時も僕が手を貸さないとできない・・・まるで介護だ。
秘書艦と出撃の上に介護までやることになって・・・もう、うんざりだ。
おかげで夕立たちとは休日一緒に遊びに行けないし、僕の時間もほとんどない。
最初は「大丈夫?」と声を掛けて介抱していたけど・・・こんな生活がずっと続くと考えたら息が詰まりそうだ。
・・・・・・
ある時、些細な事で喧嘩した。
僕は怒りで興奮していて、思わず・・・
提督とはもう、うんざりなんだよ!!!!
提督は何も言わず、ただそのまま僕を哀れんだ表情で見つめていた。
その場に居づらかった僕は執務室から飛び出した。
・・・・・・
あれ以降、提督とは会っていない・・・
代わりに誰かが秘書艦をやっているようだけど・・・
周りの視線がとても痛かった・・・どうして皆・・・そんな目で僕を見るの?
確かに、僕もあんなことをして後悔しているよ。
上司である提督にあんなひどいことを言って、勝手に秘書艦を降りて・・・
でもさ・・・皆だってわかるだろう?
毎日秘書艦のほかに介護をしなければいけないんだよ・・・毎日だよ?
毎日手を貸さないと歩けない・・・肩を貸さないと立ち上がれない・・・
一日中見ていないといけない・・・毎日毎日・・・
本当にうんざりするよ・・・嫌になってくるよ!
皆はやっていないからわからないかもしれないけど、体験したら嫌と言う程わかるよ・・・
ある日、提督の容態が悪くなった。
意識不明で口には管が通っていて・・・とても見ていられなかった。
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それでも、僕は「秘書艦を降りてよかった」と内心思っていた・・・だって毎日隣で見ていなければいけないんだから。
提督の隣に艦娘たちが時間を置いて交代で見ていた・・・僕は断ったけどね。
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一向に回復せず、医師からは「見込みが薄い」とまで言われた・・・
それを聞いても僕は何とも思わなかった、むしろ・・・
提督が死んでくれれば、楽になれるね・・・
僕は提督が死ぬことを望んでいた・・・僕は何でそう思うようになってしまったんだろう・・・
提督のことが嫌いなわけじゃない、むしろいつでも相談に乗ってくれて本当は好きだった。
秘書艦に任命された時も「僕でいいの?」の質問に「時雨じゃないと嫌だ」なんて言われて、
本当は秘書艦になったことが嬉しかったんだ・・・それなのに・・・
・・・・・・
悩んでいると、艦娘の一人がやって来て、
「提督には言うなと頼まれていたけど・・・」 と言って話し始めた。
・・・・・・
ある海域へ出撃でのこと・・・
僕は敵の砲撃を受けてしまい、そのまま意識不明で鎮守府に運ばれたらしい。
その時の話は後から聞かされていたから別に驚きはしなったけど・・・
ただ、その後の話は初めて耳にした・・・
僕の損傷は甚大で手の施しようがなかったようで・・・
中でも、幾つかの内臓が損傷を受けており、見込みが薄かったらしい・・・
・・・そんなこと、初めて聞いた・・・
そんな時、提督が・・・「オレの臓器を時雨にやってくれ!」
当然周りは反対し、止めたが・・・
「処置をしなければ、時雨は死んでしまう! なら、わずかの希望があるならオレはそれに賭ける!」
と言って、幾つかの内臓を僕に移植したと・・・
・・・そんな。
そのおかげで、僕は回復して今に至っていて・・・内臓を提供した提督は一生寝たきりの生活になった・・・と。
・・・そんな・・・そんな・・・嘘、だよね?
嘘って言ってよ、ねぇ・・・嘘だって・・・今の話は作り話だって・・・ねぇ、そう言ってよ!
「本当よ・・・提督は時雨が傷つくから黙っていてくれ、と言っていたけど」
・・・・・・
じゃあ・・・提督があんな体になったのは・・・僕のせいだったの?
それを知らずに僕はあんなひどいことを言って・・・提督を傷つけて・・・
・・・・・・
気づいたら、提督の隣で泣き叫んでいた。
提督! ごめん・・・ごめんよ! ごめんなさい!!
ひたすら謝っていた。
死なないで! お願い! 僕が一生支えるから・・・ずっと傍にいるから・・・お願い! 生きて!!
・・・・・・
僕の声が届いたのかな・・・提督の意識が戻り、目を開けた。
!? 提督!!
叫んだ僕に、
「お前の声が聞こえたよ・・・」
「・・・・・・」
「ところで・・・何で泣いてるんだ、時雨?」
・・・・・・
しばらく提督の胸で泣き続けていた。
・・・・・・
提督は復帰し、いつも通りに執務に追われる日々を送っている。
でも、一人で行動できないのは変わらない。
大丈夫、僕が傍にいるから・・・
提督のために、僕は傍でずっと・・・見守っているから・・・
提督から指輪をもらった・・・提督は最後まで、僕を想っていてくれた。
介護? 大変かな・・・でも、慣れたよ。
提督が言うんだ・・・「時雨、いつもごめんな。」って・・・
ううん・・・大丈夫だよって言うと・・・「いつも、ありがとう。」だって・・・
提督・・・ごめんね・・・
でも、安心して・・・これからは・・・
これからは僕がずっと・・・提督を支えていくから・・・
「提督と時雨」2 終
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