「夕立が突如秀才に!?」
テストで最低点をキープし続ける夕立が突然・・・
鎮守府では月に数回筆記試験が行われる。
出撃とは関係は無いように思われるが、実は点数の高さで編成や任務に影響する仕組みになっている。
「よし、僕は95点。 夕立は何点取った?」
時雨が1問だけ間違えた答案を夕立に見せ、点数を聞く時雨。
「夕立は・・・45点っぽい~♪」
夕立の点数は時雨の半分以下・・・にも関わらず堂々と答える夕立。
「・・・夕立、もっと頑張ろうよ?」
時雨は呆れてため息をつく。
テストの内容は主に、”装備” ”編成” ”回避”についてであり、
テストで高い点数を取れば、この項目に対して”理解しており、安心して仲間を任せられる”ため、旗艦や重要任務に配属される。
逆に点数が低ければ、”理解出来ていない、仲間を預けるにふさわしくない”ため、雑用係や簡易な遠征任務に配属される。
夕立の場合、更なる改装で火力が駆逐艦の中で最高を誇るも、肝心のテストが低いため、
時雨と一緒に出撃が出来なくなり、毎日遠征や雑用係を命じられる状態だ。
「夕立はこのままずっと遠征だけしたいの? もう出撃はしたくないの?」
「出撃したいっぽい~! 頑張って、提督さんに褒めて貰いたいっぽい~!」
夕立は出撃したい気持ちはある様子。
「じゃあテスト頑張ろうよ? じゃないと、いつまで経っても、編成に入れないよ?」
「ぽい~・・・」
時雨と夕立が話している中、
「何々、2人してどうしたの~?」
時雨たちの姉である白露が輪に入る。
「夕立の点数が低いから、一緒に出撃出来ずに嘆いているだけだよ。」
時雨の言葉に、
「ふ~ん、それで夕立は何点だったわけ?」
「45点っぽい~。」
「45点!? あたしよりも高いじゃん!!」
「・・・えっ?」
2人は白露を凝視する。
「あたしなんか20点だよ~! 今回のテストは難しかったよねぇ~? うんうん、気持ちは分かるよ!」
白露の言い分に、
「うん、難しかったっぽい~! 白露は夕立の気持ちを分かってくれて嬉しいっぽい~♪」
波長が合ったのか、白露と会話を楽しむ夕立。
「夕立! ・・・もうっ、勝手にしてよ!」
点数の低い人間の会話に呆れたのか、時雨はその場から去る。
・・・・・・
「あらあら、それは面白い事~。」
時雨の話を聞いて、村雨は苦笑いをする。
夕立と騒動(もしくは喧嘩)すると、村雨の店に来るようになった時雨。
「夕立は出撃すれば絶対に艦隊の戦力となるのに・・・テストに関してはやる気が無くて、いつも雑用か遠征ばっかりでさ。」
時雨は不満を漏らす。
「挙句に白露まで夕立より点数を低く取って、白露型の長女がああじゃ周りからどんな目で見られてるか・・・
恥ずかしくて情けないよ!!」
「まぁまぁ、あれでも白露と夕立は鎮守府では人気者なんだし。」
テストは悪いが、鎮守府の中では上位に入る人気ぶりの白露と夕立(逆に時雨は下位)。
「人気者とかそう言うわけじゃなくて! もっと努力してって事! 毎晩付きっ切りで勉強に付き合っているのに、
あんな点数しか取れないってさぁ・・・」
テスト前日になると、時雨が夕立に付きっ切りで勉強を教えているようだ。
「そんなに夕立と出撃したいんだぁ? いつも編成に姉妹艦が居なくて寂しいのね?」
いつもは物静かな時雨が珍しく荒れており、村雨は時雨の魂胆に気付く。
「!? 違う、そんなんじゃないよ!!」
否定するが、図星だったのか顔を赤くする。
「はいはい、じゃあ昼からの出撃頑張ってね~♪」
「・・・うん、頑張るよ。」
そう言って、時雨は立ち上がり、店から出て行く。
・・・・・・
ある日の事、
この日は、昼過ぎからテストがあり、朝からテストに関しての授業が行われている所である。
いつもは出撃に関する内容なのだが、この日は出撃系とは別に”計算”に関する内容も含まれていた。
「計算問題・・・ああ、白露と夕立にとって最も苦手な内容じゃん。」
時雨はため息をつく。
「確か前の計算問題の時は何て答えてたっけ・・・夕立は。」
時雨は先週の授業を思い出す。
・・・・・・
・・・
・
「問題・・・駄菓子屋さんで150円のチョコレートと100円のキャラメルと
80円のラムネを買いました・・・さて合計はいくらですか? 夕立ちゃん、答えて。」
名指しされるが、夕立は自信を持って、
「ぽい~♪ 150円足す100円足す80円だから・・・大体300円前後っぽい~♪」
夕立の回答に周囲は笑い出す。
「・・・(何、その適当な回答!! 答えは330円だよ夕立!)」
時雨は見ていられず、顔を逸らす。
「夕立、もっと分かりやすく言いなよ!!」
夕立の回答に白露が口を出して、
「では白露ちゃん、答えを言って見て。」
「ふふ~ん、こんな問題簡単すぎじゃん!!」
そう言って、自信を持って一言。
「レジの店員さんが計算してくれるからあたしは計算しなくていい!! これが正解でしょ!!」
白露の回答に周りは大爆笑する。
「・・・(姉さんのバカ! 何自信たっぷりに押し付け発言してるのさ!)」
時雨は恥ずかしくなり、顔を真っ赤にする。
「(汗)では・・・時雨ちゃん。 答えを言ってくれるかな?」
先生も呆れ、最後に決まって時雨を名指しする。
「・・・は、はい。 合計は、330円です。」
時雨の答えに皆が「おーっ、凄い。」と拍手をされる始末。
「時雨が正解したっぽい~!」
「さっすが、あたしの妹じゃん!!」
「・・・(大恥)」
以降、2人と目を合わさなかった時雨。
・・・・・・
・・・
・
「そう言えば、あんな事もあったっけ~。」
時雨は思い出すも、
「まぁ、期待はしない方がいいね・・・いつものように、適当に答えを言って白露も乗りで答えて・・・
はぁ、少しは僕の気持ちも考えて欲しいよ。」
時雨はため息をつきつつ、昼過ぎのテストの復習を始める。
昼の休憩が終わり、テストが始まる。
しかし、今回は筆記ではなく口頭で回答する形式だった。
「では問題、所持金1000円を持って行き、店で200円のパンと130円の牛乳を買いました。
残りの所持金はいくらでしょう? では、これの答えを・・・夕立ちゃん、答えて。」
「ぽい~♪」
呼ばれて夕立は立ち上がる。
「・・・(また夕立が呼ばれた、ああ今度はどんな適当な回答するんだろう。)」
心の中で呟きながら半分耳を塞ぐ時雨だったが、
「え~っと・・・1000円持ってて、200円と130円を支払うから・・・」
そして夕立は答える。
「670円っぽい~♪」
「! えっ!?」
時雨は耳を疑う。
「(汗)せ、正解。」
当然先生と周囲の艦娘たちも耳を疑う。 毎回適当な回答する夕立が今回は珍しく正解を言ったからだ。
「じゃ、じゃあ次の問題ね・・・」
今度は戦闘時に起きうるであろう、敵の攻撃の対処に関しての出題だった。
「それなら簡単っぽい~・・・左から右に動けばいいっぽい~♪」
「(驚) せ、正解!?」
夕立はまたも正解する。
「・・・」
”えっ、今何が起こってるの? 夕立が連続正解しているんだけど!?”
隣で座っている時雨は驚きを隠せない。
先生も未だに信じられなく、夕立に連続5問出題するも全て正解し、周囲を驚かせた。
・・・・・・
「夕立が全問正解しちゃった・・・いつの間に勉強していたんだろう?」
白露が悔しそうにしていて、
「よしっ! お姉ちゃんも負けていられないね! あたしも部屋に戻って勉強しよう!!」
そう言って、白露は部屋に戻って行く。
「・・・」
”夕立、勉強していたっけ? 昨日も一緒にいたけど勉強している姿なんて見なかったし・・・”
そう思いつつも、
「まぁ、夕立もそれなりに自覚していたって事だよね・・・それだけ分かれば十分だよ。」
時雨は安心して、
「そうだ、村雨の店に行こう・・・今日の事を村雨に話そう。」
時雨は村雨に会いに行く。
「あれ、夕立がいる?」
店内に夕立がいて村雨と楽しく会話をしている。
「・・・」
店内での会話が外にも聞こえたため、時雨は店内に入らず外で会話を聞いていた。
「今日はテストだったっぽい~!」
「あらあら、夕立はきちんと答えられたのかしら?」
「ちゃんと答えられたっぽい~♪」
「ふ~ん・・・どうせ適当に計算して答えたって感じでしょ?」
テストの事を時雨に聞かされていた村雨は、また適当に回答したのだろうと思ったが、
「村雨、今日は何の日か分かるっぽい~?」
「? 今日? 何かあったかしら?」
村雨が考えていると、
「今日は4月1日・・・つまりエイプリルフールっぽい~♪」
「・・・そ、そうね、それがテストと一体何の関係があるわけ?」
ますます訳が分からない村雨に、
「今日は嘘をついてもいい日っぽい~、だから今日のテストは全部嘘っぽく答えたっぽい~♪」
夕立はせっかくのエイプリルフールだからと、普段の回答とは別に嘘の発言をしていたらしい。
「(汗)そ、そうなのね。」
それを聞いて、村雨は呆れる。
「それがね~、皆驚いたような顔で夕立を見るの! いつもは笑い出すのに今日は皆驚いてて・・・何か面白かったっぽい~♪
エイプリルフール大成功っぽい~!!」
「・・・そ、それは良かったわね。」
”恐らく夕立の嘘(もしくは適当の更に適当な)回答に皆、呆れて驚いたんだろう”と村雨は思った。
「・・・」
外で2人の会話を聞いていた時雨は驚き、そして心の中で叫んだ・・・
”嘘、そんなバカな!!”
その以降、何度かテストを受けるも、夕立はほとんど答えられず、
当面は雑用係に従事することになったのは言うまでもない。
「夕立が突如秀才に!?」 終
因みに村雨と海風にもテストを受けて貰ったところ・・・2人とも満点でした(笑)
点数低くても笑いの点数が高いので
周りからは付き合いやすいのか
人当たりが良ければ人気出るから頭の良さとはまた別だしね