「わらしべ長者(秋月型)」
”わらしべ長者”を秋月型に変換したほっこり物語。
ある時、とても貧しい姉妹(秋月・照月・初月)がおりました。
いくら頑張っても報われず、困り果てた姉(秋月)は妹(照月・初月)のために僅かな交換物を持って旅に出ることに・・・
照月「本当に行くの、秋月姉?」
秋月「はい、私たちの財産と言えるものは最早これしかありません!」
そう言って、秋月が持っていた物は・・・”柿の種”(果物の種)1粒。
初月「でも、今どき種と交換してくれる人なんているの? 土に植えて実になるのに何年も掛かる代物を?」
「違う物の方がいいんじゃあ?」と口に出す初月。
秋月「初月! では、これ以外に交換できる物はありますか? 唯一残っていたおにぎりは、昨日初月が食べてしまったでしょう!」
初月「・・・・・・」
初月は何も答えられない。
秋月「・・・で、では! 秋月は、これから交換の旅に行って参ります!」
照月「気を付けてね秋月姉! 秋月姉が返って来るのをずっと待っているからね!!」
妹の照月に見送られ、秋月は物々交換の旅に出る。
秋月「確かに初月の言う通りです、こんな種・・・誰が交換してくれると言うのでしょう?」
今更ながら、物々交換用に昨日食べて綺麗に洗っただけの柿の種なんて誰が交換するのやら、
秋月「・・・でも仕方がありません! せめて、おにぎり1つだけでも交換出来れば・・・照月と初月に
夕食として提供できます!」
どうやら、今日の食事を用意する事すら叶わない程、生活が苦しい状況のようだ。
秋月「・・・こんな所で悩んではいられません! 早くしないとすぐに夜に!」
そう言って、秋月は歩を進める。
白露「あ~困ったぁ!!」
畑の前で白露が叫んでいる。
秋月「白露さん、おはようございます!」
白露「ああ、秋月さん! おはよう!」
白露と秋月は顔見知りである。
秋月「と言うか、どうして畑の前で叫んでいるのですか?」
白露「ああ・・・ちょっとね・・・う~ん、農家のあたしが言うのもなんだけどね。」
秋月「・・・・・・」
白露「畑に植える予定だった種を、事もあろうにあたしの犬の夕立が食べちゃったんだよ!」
夕立「ぽいぽい~♪」
白露の側に、犬役の夕立が舌を出しながら近寄る。
秋月「(汗)そ、それは災難ですね。」
白露「そう言う秋月さんは何をしているの? 外出なんて珍しいね?」
秋月「あっ、はい・・・実は。」
秋月は白露に思いのたけを話す。
白露「えっ、生活が困惑しているから、昨日食べた柿の種を持って街に物々交換をしに行くって・・・」
秋月「はい・・・」
笑われると思った秋月だったが、
白露「じゃあさ、その柿の種! あたしに譲って!」
秋月「!? ええっ!?」
白露「さっきも言った通り、夕立が種を全部食べちゃって・・・柿の種かぁ、あたしに譲って欲しいかなぁ♪」
そう言って、白露が代わりに出したのは・・・お~いお茶(500ml)。
白露「これと交換しよっ♪ 別に悪い話じゃないでしょう~?」
秋月「は、はいっ! 助かります! ありがとうございます!」
秋月は喜んで交換に応じた。
秋月「驚きました・・・まさか柿の種がお茶(500ml)と交換できたなんて・・・」
秋月は喜ぶも、
秋月「でも、これは飲み物です・・・出来れば妹たちには食べ物を提供したいのですが・・・」
そう思っていると、
秋月「!! あそこに誰か倒れています!!」
秋月はすぐに駆け寄ると、
秋月「し、時雨さん! どうしたのですか? 大丈夫ですか!」
倒れていたのは時雨、秋月は起こして安否を確認する。
時雨「み、水が・・飲みたい。」
時雨が喉を押さえて苦しそうに訴える。
時雨「食べ物がのどに詰まっちゃって・・・く、苦しい・・・お願・・い、飲み物・を。」
秋月「はいっ! ではこのお~いお茶(500ml)を飲んでください!!」
秋月は躊躇う事無く時雨に渡すと、
時雨「ごくっ! んぐんぐんぐ~~ごくごくごく!!!! あ~、た、助かったぁ!!」
時雨は苦しみから解放され、笑顔になる。
時雨「あ、ありがとう! おかげで助かったよ。」
秋月「い、いえ。時雨さんが無事でよかったです・・・はいっ♪」
秋月は満面の笑みで答える・・・最も、交換用のお茶(500ml)は無くなってしまったが。
時雨「助けてくれたお礼に・・・こんな物しか用意できないけど、良ければ持って行って。」
そう言って、時雨が出したのは・・・ショートケーキ(苺乗せ)。
時雨「帰ってから食べる予定だったけど、今はとても食べる気にはならないかな・・・だから持って行って。」
秋月「!? 本当によろしいのですか!? あ、ありがとうございます!!」
お茶からケーキへと変わり、秋月は喜んでケーキを受け取った。
秋月「ケーキ・・・まさかケーキをこんな間近で見られるなんて!」
秋月は何度もケーキを見直す。
秋月「! おっと行けない行けない! このケーキは交換用か妹たちへの食べ物・・・何度も見ていたら、
私が誘惑に負けてしまいそうです!」
そっと、蓋を閉じる秋月、
秋月「あっ、村雨さん! こんにちは!」
村雨「あら、秋月さん! こんにちは~♪」
秋月と村雨は昔から顔馴染みな2人である。
秋月「どうしたのですか? ケーキ屋さんで悩んでいて?」
村雨「えっ? ああ、ちょっとね~。」
村雨が思いのたけを漏らす、
秋月「えっ、ショートケーキが売り切れ?」
村雨「はい・・・春雨にお土産で大好きなショートケーキを買って行こうと思ったら、完売してて・・・
他のケーキ屋は結構遠いし・・・困ったわね。」
村雨が悩んでいると、
秋月「でしたら、このケーキを持って行ってください!」
時雨から貰ったショートケーキを躊躇いも無く渡す秋月。
村雨「えっ!? いいんですか秋月さん!?」
秋月「はいっ! 村雨さんには日頃からお世話になっていますし、どうか妹さんのためにこのケーキ、
持って行ってあげてください!」
秋月の厚意に、
村雨「あ、ありがとう♪ 良かったぁ~、これで春雨の笑顔が見れるわ~♪」
村雨も笑顔になる。
村雨「そうね・・・ただで貰うのは申し訳ないので・・・ごめんなさい、今はこれしか無くて・・・
これ(ポケットティッシュ)と、ショートケーキ代(400円)をどうぞ。」
そう言って、秋月にポケットティッシュと100円玉が4枚手渡された。
秋月「あ、ありがとうございます! とても嬉しいです!!」
「このお金でおにぎりが買える!」、そう思った秋月はその場から去る。
秋月「400円あれば今日の夕食代にはなりますね~♪」
秋月は来た道を戻り、帰りにコンビニでおにぎりを買おうかと考えていた。
秋月「シーチキン、昆布に・・・鮭なんかはどうでしょう? うふふ♪」
秋月が公園に差し掛かったところで、
提督「おあっ!!? ティッシュが・・・ティッシュが無い!!」
公園のトイレで響く、男性の声。
秋月「ど、どうしたんですか!!?」
声を聞いた秋月が咄嗟に扉の前に立つ。
提督「おっ! その声は秋月? オレだよ、提督だ!」
秋月「提督!? お、お疲れ様です! それで・・・どうしましたか?」
提督「いや、腹が痛くてこの公園の便所に寄ったんだが・・・事もあろうにティッシュが無いんだ!」
提督は困り果てる。
秋月「ティッシュ・・・!! 司令! これで良ければ使ってください!!」
村雨から貰ったポケットティッシュを提督に渡した。
提督「おおっ! ティッシュだ・・・ティッシュが舞い降りたぁ!!」
・・・しばしの待機。
提督「いやぁ~助かったよ! 流石秋月! 周りへの気配りは称賛に値するよ!」
秋月「いえいえ、偶然通りかかっただけですよ。」
褒められて秋月は顔を赤くする。
提督「秋月はある意味、恩人だ。 今度鎮守府で間宮を奢ってやろう! それでは、休憩時間が終わるからまたな。」
提督は鎮守府へと戻って行った。
秋月「えへへ~♪ 司令に褒めて貰えた~♪」
秋月は喜んでいる。
秋月「・・・はっ! 行けない行けない! 早くコンビニへ行っておにぎりを買わないと。」
秋月はコンビニへと急ぐ。
秋月「あら? あの子は・・・春雨さん?」
コンビニの前で村雨の妹である春雨が何故か泣きじゃくっている。
秋月「春雨さん、どうかしたのですか?」
春雨「・・・ぐすっ。」
春雨は秋月を見ても泣いたままだ。
秋月「・・・どうしたの? 何か困った事があったの?」
心配になって何度も聞くと、
春雨「・・・帰りの電車賃(400円)が無くなって。」
どうやら、春雨は村雨と会った後、帰り道に転んで電車賃を側溝に落としてしまったようで、帰れないらしい。
秋月「・・・・・・」
秋月は悩む。
”電車賃400円・・・今私が持っているおにぎり代400円と同じ金額”
秋月は悩む。
”でも、これは妹たちへのおにぎり代・・・春雨さんに渡したら、妹たちの夕食は無くなる・・・”
秋月は悩む。
”でも、このまま春雨さんが帰れなくて・・・変質者に連れ去られたりでもしたら大変だし・・・”
秋月は悩んだ末に、
秋月「このお金を・・・このお金を使って鎮守府に戻って下さい!」
何と秋月はおにぎり代の400円を春雨に渡した。
春雨「!? い、いいのですか!?」
秋月「はいっ♪ 次は落とさないようにね♪」
春雨「あ、ありがとうございます・・・はいっ。」
春雨は泣き止み、秋月に礼を言って400円を握ってその場から去る。
秋月「・・・はぁ~。」
秋月は少し後悔する。
秋月「妹たちへの夕食が・・・無くなってしまいました。」
最初は種からお茶・・・次にケーキ、それからお金(400円)と徐々に増えて行ったのに・・・
秋月「仕方がありません・・・照月と初月に謝って・・・はぁ~。」
秋月は重い足取りで家に帰る。
秋月「た、ただいま~。」
力無く小声で呟く秋月、
照月「あ、秋月姉、おかえり! 見てよこれ!!」
何故か照月が喜んでいて、
初月「姉さん、凄いよ! やっぱり秋月姉さんは偉大だよ!」
初月まではしゃいでいる。
秋月「・・・・・・」
秋月の目に映った光景・・・大量の柿に米俵1つと謝礼金にケーキ丸1個の光景。
秋月「こ、これは一体どう事ですか?」
秋月は状況が飲み込めていない。
照月「白露さんが”柿が実ったから半分の量の柿”を分けてくれたの!」
秋月「実ったって・・・今日の朝渡したばかりですよ!?」
照月「何か・・・”高速建造材”って言うのを使って一瞬で木が生えたとか言ってたよ?」
秋月「・・・・・・」
照月「後、種を交換しないといけない程困惑していると白露さんから聞いたらしく、時雨さんが米俵1つを譲ってくれたの!」
秋月「・・・・・・」
照月「その後村雨さんが”今日のお礼です♪”と言って、丸1個のケーキをお土産にくれて・・・」
秋月「・・・・・・」
初月「提督からも”今日の秋月のオレと春雨に対しての気配り”として謝礼金(10万円)を送って来て・・・
凄い、1万円札10枚なんて初めて見たよ!!」
秋月「・・・・・・」
照月「流石秋月姉! 種しか持って行っていないのにこれだけの物と交換出来るなんて!
それに秋月姉の人柄の良さ! 照月は尊敬しちゃうな~♪」
初月「姉さん早く食べよう! ケーキは日持ちしないし、ああ・・・甘い香りがぁするぅ(くんくん)。
それに米俵・・・米がこんなにたくさん! ふりかけや漬物は用意しているから早くご飯を炊こう、姉さん!」
秋月「・・・ふふっ。」
秋月は思わず笑う・・・心配して損をしたからか。
秋月「はいはい、では・・・皆さんのご厚意に感謝して、頂きましょう!」
そう言って、妹たちと楽しく夕食の準備をする秋月の姿があった。
「わらしべ長者(秋月型)」 終
白露「畑に植える予定だった種を、事もあろうにあたしの犬の夕立が食べちゃったんだよ!」
流石、作者様!
開始早々笑いました♪
夕立…本当に犬キャラだなw
夕立『出番こんだけ?あんまりじゃないかな。』(真顔、明らかに怒っている。)