「提督と山風2」
山風に最強のライバルが現れる!?
「提督と山風」の続編です。
キャラ紹介、
提督:階級は元帥。 海風と江風がお気に入りで最初は山風の事を嫌ってはいたが、
徐々に打ち解ける様になった。
山風:提督の鎮守府に着任することになった改白露型の女の子、口下手で不愛想。
構って欲しくないと言う割にやたら構うと喜ぶ、その姿はまさに猫である。
海風:山風のお姉さん、礼儀正しくて丁寧。
江風:海風・山風の妹、明るく元気な女の子。
「提督、書類持って来た。」
山風が執務室に入ってくる。
「ご苦労様、そこに置いておいてくれ。」
「うん、分かった。」
提督の指示で指定された机の上に書類を乗せる山風。
山風がこの鎮守府に着任してから、長い月日が経つ。
着任当時はお互い会話すらしない仲だったのが、あるきっかけが元で積極的に会話をするようになり、
今では会話は欠かさず行っている。
姉と妹である海風と江風もこの鎮守府に着任して山風は何不自由ない生活を送れていた。
提督は最初、山風の事を”緑”(山風の髪が緑色なため)と呼んでいたが、
次第に名前で呼ぶようになり、本人も提督のために頑張る姿が見られる。
・・・・・・
ある日の事、
「提督、山風呼んだ?」
呼ばれて山風が執務室に入る。
「ああ、ちょっと知り合いの提督からさぁ・・・」
そう言って、提督が両手に持っていたのは・・・猫?
「それ、猫だよね?」
山風が尋ねると、
「ああ、当分の間この鎮守府で預かって欲しいんだって。 それで、しばらくはこの執務室に置くからな?」
そう言って、地面に放すと猫は山風に近づく。
「・・・・・・」
山風がそっと手を差し伸べると、
「にゃー、にゃー。」
山風の手に寄り添うように寝始める、山風を気に入ったようだ。
「おー良かった、お前に懐いているようで。」
提督は安心する。
「うわぁ~、本物の猫だ。」
山風は寝ている猫を抱くと、顔ですりすりしてみる。
「ふさふさしてて、可愛い。」
山風も気に入ってくれた様子・・・しかし、
この日から山風と猫との熾烈な争いになる事を本人はまだ知る由もない。
・・・・・・
翌日から、
「おい、山風。 そこの書類を取ってくれ。」
普段は提督が自分で取るはずの書類だが、
「うん、分かった。」
代わりに山風が書類を取りに行く。
理由は簡単で、昨日から預かった猫が提督の膝の上で気持ちよさそうに寝ているからである。
「提督の膝の上で寝ている。」
猫は伸びをしてまた寝息を立てる。
「提督の膝の上、温かいもんね~。」
山風も提督の膝の上にしょっちゅう乗ることがあるので、猫の気持ちが分かる。
「そうか・・・ほら山風、見とれてないでさっさと仕事だ。」
「ぷぅ~・・・」
山風は不満に思いつつも、提督の指示に従う。
その翌日も、
提督の膝の上に寝ている猫。
「あら、提督。 猫を飼ったのですか?」
遠征から海風が戻って来て、
「いや、しばらく預かって欲しいと頼まれてな。」
提督が言い終えるころに海風は猫を抱き上げて、
「可愛い~、猫ちゃん名前はなんですか~?」
海風も猫が気に入った様子だ。
「・・・そう言えば名前を聞いていなかったな、後で聞いて見るかな。」
海風が猫を構っているのを見計らって仕事に専念する提督。
更に翌日、
「提督ぅ! 江風さんが出撃から帰還したよ!」
元気な江風が出撃から無事に帰還して、
「おっ! 何それ・・・猫、猫じゃんか~!」
見るなり猫を抱き上げる江風。
「おお~っ! 可愛いじゃん! 山風を抱っこしている感じだぜぇ!」
江風は猫を「山風と呼んでいい?」とまで聞いてくる始末。
「まぁ、江風が呼びたいなら・・・」
提督は賛成する物の、
「そんなのヤダ! あたしの名前じゃん!」
江風と山風のしばらくの言い争い・・・結局猫の事を山風と呼ぶことを諦めた江風。
「ちぇっ、何だよ山風のやつ。」
江風は舌打ちをして執務室から去って行く。
「まぁ、江風の気持ちも分かるな。」
普段の山風を見ていると分かるが、時々提督の膝の上に乗り、何かを期待している(頭を撫でて欲しい)その姿は
まさに猫そのものである。
「オレとしては山風って名前でもいいんだがな~。」
敢えて言葉に出さず、心の中に留めて置く提督。
・・・・・・
それから数日が経ち、
猫はまだ鎮守府に預けられたままで、
最初は”可愛い”と愛嬌を持って接していた山風だが、徐々に、
「提督の膝の上、そもそもあたしの場所なんだけど・・・」
「いつまでいるの? そろそろ提督の膝から降りて欲しいんだけど!」
「提督も「猫なんだから我慢しろ」って、あたしだっていい子いい子して欲しいのに・・・」
と、徐々に不満が溜まっていく。
ある日の事、
山風はその日どうしても提督の膝の上に乗りたい気分だった、
「・・・・・・」
山風は提督の膝の上を見る。
「・・・また寝てる。」
猫がずっと膝の上に乗っていて・・・山風は頬を膨らます。
「今日はあたし頑張ったから・・・提督に「よしよし」してもらいたい!」
そう思って、山風は提督に近づき、
「ん、どうした山風?」
提督が尋ね、
「・・・・・・」
山風は寝ている猫を無理やり起こそうとした。
「! シャーッ!」
猫からの反撃で山風の手に引っ掻き傷が付く。
「!? い、痛い!」
山風は痛そうに手を押さえる。
「いい加減にしてよ! そこはあたしの場所だから!」
遂に山風は猫に対して怒り出した。
「今すぐ降りて! 降りてってば!」
山風はまた猫に掴みかかろうとするも、
「止めろ! 今は寝ているだろう? それに猫は静かな方が落ち着くんだよ!」
提督に止められ、山風は不満げだ。
「ぶぅ~、あたしの特等席なのに・・・」
山風は「ぶぅ~」っと頬を膨らませて提督に訴えるも、
「猫がいなくなるまで我慢しろ、空いたら好きなだけ座らせてやる。」
「・・・・・・」
提督の言葉に、渋々従う山風。
「・・・(と言うか、いつオレの膝があいつの特等席になったんだ?)」
提督は敢えて心の中に留める。
・・・・・・
「痛い。」
部屋に戻ると、引っ掛かれた箇所を包帯で巻く山風。
「あら山風、もう部屋に戻っていたの?」
部屋に海風と江風が戻って来た。
「ん、山風その傷どうしたんだ?」
江風に見られて、
「猫に引っ掻かれたの!」
山風は痛そうに手を押さえる。
「眠っている猫を起こそうとして返り討ちに遭ったのか? それはお笑いだね!」
江風が目の前で笑いこける。
「そんなに笑わなくたって! だって提督の膝はあたしの特等席なのに・・・」
あくまで自分の席だと言い張る山風に、
「あらあら、提督の膝の取り合いですか~。」
海風もクスクスっと笑う。
「海風姉まで笑ってる! 猫に場所取られるし、怪我はするし・・・もう最悪!!」
猫に反撃を受けた挙句に、海風たちに笑われて山風は不満でいっぱいである。
「もうっ! あたしはもう寝る!」
山風は不機嫌になり、先に就寝をする。
「それにしても、山風と猫の勝負・・・結構お似合いだね(笑)」
江風は懲りずに笑い続ける。
・・・・・・
翌日、
いつもより早く起きた山風は執務室に向かう。
「提督、おはよう。」
山風が執務室に入ると、
「おっ、今日は早いな山風。」
提督は既に書類整理を始めていた、
「・・・・・・」
提督の膝に猫が乗っていない、肝心の猫は近くの毛布にくるまれてまだ眠ったままである。
「・・・(今の内に!)」
山風は提督の膝の上に乗る。
「おい山風、朝からいきなり乗って来てなんだ!?」
提督が山風を見ると、
「・・・・・・」
「ぷぅ~」っと頬を膨らませ、何かを求めている視線が、
「・・・(ずっと猫に膝を取られて嫉妬していたのか?)」
敢えて声に出さず、
「そうか、頭を撫でて欲しいんだな? ほれほれ~。」
山風の頭を撫でてあげると、
「♪~」
嬉しいのか、そのまま膝の上でくつろぎ始める。
「・・・(お前は猫か!)」
敢えて言葉に出さない提督だった。
・・・・・・
それでも、ずっと乗っていることは出来ずいつものように書類整理や秘書艦の仕事で多忙な山風。
猫はもちろん、常に提督の膝の上に載っているため、山風の不満は一向に治まらない。
「・・・(ぶぅ~、あたしも猫だったらなぁ。)」
そう思った瞬間に、
「! そうだ、猫になればいいんだ!」
山風は閃き、
「明日はお休みだから、買い物に出かけよう。」
明日の予定を決めてその日は仕事に集中した。
翌日、
山風はある店に訪れていた。
「これと・・・後はえーと・・・うん、これも必要、かな。」
店内で何やら物色中の山風。
「・・・うん、これでよし、と。」
必要な物が揃った様で、会計を済ませると山風は鎮守府に戻る。
・・・・・・
更に翌日になり、
「これなら提督もあたしを見てくれる、はず。」
山風は自信がない物の、
「でも、ずっとあたしの場所を取られたくないし・・・」
考えた末に、
「よし、執務室に入る!」
山風は決意して執務室に入る。
「・・・え~っと。」
山風を見た提督が一瞬困惑する。
「何だその姿は?」
提督が見た光景、それは・・・
山風の頭には猫耳バンドを付けており、服は猫メイド服を着用、お尻の部分には猫の尻尾をモチーフにした
キーホルダーを装着したまさに猫コスプレな山風の姿だった。
「・・・・・・」
山風は気づく、猫の姿がいないのだ。
「提督、猫はどこに?」
山風の質問に、
「ああ、猫なら昨日飼い主がやって来て無事に渡したけど?」
提督の言葉に、
「・・・(恥)」
途端に顔を赤くする山風。
「一昨日から何をぶつぶつ独り言を言っているかと思ったら、そんな恰好を考えていたのか?」
「・・・(恥)」
「それで休日の昨日に猫コスプレグッズを買いに行ったわけか。」
「・・・(大恥)」
「だが、残念だったな! 猫は昨日の内に飼い主に渡したから、山風がわざわざ猫に変装する必要は無かったんだよ!」
「・・・(あまりの恥ずかしさに涙目)」
「まぁ、その、何だ・・・山風のその恰好・・・悪くは無いな、むしろ可愛いよ。」
提督が恥ずかしながら答える。
「! ううっ・・・」
山風は半ばヤケクソの状態で提督に詰め寄り、
「ど、どうした山風?」
提督が尋ねると、
「にゃー、にゃー。」
山風は猫の格好のままで提督の膝に座り始めた。
「おい、何だ山風! 大胆が過ぎるぞ!!」
提督の事などお構いなしに、
「にゃー、にゃー。」
頭を撫でて欲しいのか、頭を出す山風。
「・・・(甘えてるのね、しょうがないなぁ。)」
提督は素直に山風の頭を撫でてあげる。
「にゃー♪ にゃー♪」
山風はうっとりした表情で膝でくつろぎ始める。
「やれやれ・・・これでは仕事が進まないじゃないか。 まぁ、たまにはこんなスキンシップも悪くないな。」
そう思って、山風の頭を撫で続ける。
・・・・・・
結局、昼まで山風は猫の格好のままで、提督の膝にくつろいでいて、
出撃と遠征から帰還した海風と江風が2人の光景を見て、
「何だ、一体どうなってるの?」
「あらあら、山風も隅に置けませんね~♪」
と、驚きつつも呆れ、同時に「羨ましい」と心の中で思った2人であった。
「提督と山風2」 終
かわいい(かわいい)