2017-07-30 13:33:47 更新

概要

鎮守府から出たアイオワに提督が戻るように促すが・・・


前書き

英語表記が面倒なので、日本語表記にします。


「これで何人目かしら?」


彼女はカップにコーヒーを注ぐと、


「はい、これはあなたのね。」


と、提督の前にコーヒーを出す。


「それで? 私に何の用なの?」


提督に対して質問する。


「鎮守府に戻る気はないか?」


提督は率直に言った。




・・・・・・


「私がアイオワよ! よろしくね!」


明るく元気で活発な戦艦のアイオワ、彼女は鎮守府に積極的に馴染もうと提督や艦娘たちと交流したり


出撃で戦果を挙げようとしていたが・・・


「君はこの鎮守府には必要ない。」


理由は教えてもらえず、彼女は追い出されることに・・・


その後も、別の鎮守府に配属されるも・・・


「アイオワ、君は強いが・・・出て行ってもらう。」


「アイオワ・・・その名はこの鎮守府では不吉な名前なんだよ。」


「資材消費が大和より大きい・・・この無駄飯食いが!」


どの鎮守府も彼女を受け入れなかった。


命令とはいえ、彼女の目にはどこか寂しさを覚えた。


「まぁ、仕方ないわね。」


彼女は艤装を投げ捨て、そのまま姿を消した。


その後、何とか仕事を見つけ・・・艦娘としてではなく、一人の「女性」として生活していた。


艤装を装着すれば、艦娘に戻るが彼女はその気は一切なく、自由に生きていた。


そんな時、戦況が悪化し各鎮守府が一人でも多くの艦娘を募集した。


特に戦艦アイオワの性能は右に出るものはいなく、ほとんどの提督がアイオワを訪れては戻るように説得する、が、


「私は戻る気はない。」


もう上司と部下の関係ではない、赤の他人だと言い張る。 


命令される筋合いがなければ、場合によっては手を出してもいい位の勢いだ。


当然、提督達もただ艤装を外しただけの彼女の攻撃を受ければ、無事では済まないことを知っており、


深く追求することが出来ず、引き下がるほかなかった。


そんな時だ、霧島がいる鎮守府の提督がアイオワが住んでいる家にやってきたのは・・・



・・・・・・


「・・・・・・」


提督の言葉に、


「私は戻る気はない。」


率直に言った。


「そもそも提督達が私を切り捨てたのだから、今さら戻れなんてどうなのかしら?」


「まぁ、そうだな。」


「資材消費が激しいからと言って追い出した割に、今度は消費が激しくてもいいから戻れ、とでも言うのかしら?」


「まぁ、そういうことになるな。」


「何か、都合のいい言い訳ね。」


「うむ、アイオワの言う通りだ。」


「・・・・・・」


彼女が愚痴を言う度に納得する提督が気にいらなかったのか・・・


「さっきからうんうんとしか言わないけど・・・私を馬鹿にしているの?」


アイオワは提督を睨む。


「いや、確かに言っている通りだから納得してるだけだ。」


相変わらず提督は率直に言う。


「それに、オレはアイオワとは今日で初対面なんだ。 過去に何があったのかは知らないけど、


 前の提督と同じ扱いをして欲しくはないな。」


「・・・・・・」


「他の提督達なんてオレには興味が無い。 ただオレがいる鎮守府で働かないか? と言っているだけだ。」


「・・・・・・」


「変な提督」と思ったアイオワ・・・そこで、


「なら・・・私のお願いを聞いてくれるなら、考えてあげてもいいわ。」


「ふむ・・・何だ?」


提督の言葉に、


「私はこれでも寂しがり屋なのよ、提督が私を他の艦娘よりも一番に私の事を見ていてほしいわ。」


「・・・・・・」


「食事も豪華で・・・出撃の際は最優遇なサービスも付けて欲しいわ。」


「・・・・・・」


「最後に夜の営みも、欠かさずして欲しいわね。」


「・・・・・・」


「どう? これでも、控えめに言っているつもりだけど?」


「・・・・・・」


「無理だ」と言うだろう、と思ったアイオワだったが、


「わかった・・・お前の望む環境にしてやろう。」


提督はきっぱりと言った。


「えっ!? ちょ、ちょっと待って!」


アイオワは驚きを隠せない。


「何だ? お前の望む条件を満たせばオレの鎮守府に来てくれるんだろう? そんな要求程度なら簡単に叶えてやる。」


「・・・・・・」


「この提督、本気で言っているの?」と思ったアイオワ。


「どうした? まだ何か望みがあるなら言ってみろ。」


提督の言葉に・・・


「ふふ・・・冗談よ。」


アイオワは笑いながら言葉を返した。


「冗談? 何だそれ。」


提督は呆れた顔で彼女を見つめる。


「あなたの事を少し見くびっていたわ。」


「・・・・・・」


「確かに、他の提督とは違うようね・・・でも、私は戻る気はないから。」


そう言って注いだコーヒーを飲む。


「そうか・・・なら、仕方ないか。」


提督はその場に座り込む。


「? 何のつもり?」


「お前が「うん」と言うまでここに座っている。」


提督の言葉に、


「なっ!? ふざけないで! 私は戻らないと言ってるの! どうしてそんなしつこくするのよ!」


「オレの事は気にしなくて結構。 普段通りの生活に戻ってくれればいい。」


「・・・・・・」


気にするなと言っても、正直無理な話・・・


「・・・勝手にすればいい、でも・・・今後あなたがいない普通の生活に戻るから。


 食事も飲み物も、出さないからね。」


「構わん・・・オレは食べなくても生きていける体だから。」


「・・・・・・」


言葉を返されて、不快に思ったアイオワは身支度をする。


「今から仕事だから、失礼するわ。 勝手に部屋の物に触らないでね。」


「わかった・・・いってらっしゃい。」


不安に感じながらアイオワは出て行った。



・・・・・・


翌日も、同じように仕事に出かけ・・・


帰って来ても、その場から一切姿勢を崩さない提督の姿が・・・




その翌日も・・・




その次の日も・・・


全く姿勢が崩れない提督を見て次第に不安になっていくアイオワ。


実際に本人が言った通り、食事も摂っていない、部屋の物は全く荒らされていない、冷蔵庫の中もそのまま・・・


まるで、ただの置物のように佇んでいる提督・・・


彼女も次第に話しかけるようになった。


「これ食べる?」・・・「いや、結構。」


「布団敷いたの、ここで寝ていいから。」・・・「お気遣いは結構。」


「今日は休日なの。 一緒にどこか行く?」・・・「金が掛かるだろう、一人で行ってきなさい。」


「私が悪かったわ。一口でもいいからせめて食べて。」・・・「だから結構。お前が食べればいい。」


・・・・・・


「お願い提督・・・もういいから。」


アイオワも心が折れて、


「何でもいいから食べて。 ここで死んだら私が辛いの。」


「何度も言うが、オレは食べなくても生きられるんだが。」


「・・・・・・」


信じられない・・・そんな人間はこの世にいないはず・・・とアイオワは思っていた。


「なら、早く鎮守府に戻って。 あなたがずっとここにいると気になって仕方がないの。」


「オレをただの置物と思ってくれればいい。 それ以外の感情は持たなくて結構。」


「・・・・・・」


次第に彼女の表情が悲しくなり、


「お願い! 出て行って! あなたの気持ちはわかった。でも、私は戻りたくないの!」


「・・・どうして?」


提督が聞くと、


「あなたにはわからないわ・・・私の今の気持ちなんて・・・」


「・・・・・・」


「消費が激しい・・・私の名前は不吉・・・代わりがいるから必要ない・・・何度も聞かされて・・・」


「・・・・・・」


「仕方がない・・・仕方がないと言い聞かせて・・・頑張ってきたのに・・・(泣)」


「・・・・・・」


「なのに、提督達は・・・私を・・・捨てた!」


「・・・・・・」


「その気持ちが・・・あなたにはわかるの!」


一向に姿勢を崩さない提督・・・まるでアイオワの言葉を一身に受け止めているようでもある。


「あなたになんて・・・あなたになんてわかってたまるか!!」


そう言って提督を殴りかかる。


「・・・・・・」


提督の姿勢は崩れない。


「あなたになんか! あなたになんか!!」


叫ぶごとに渾身の一発をぶつけるアイオワ・・・


「・・・・・・」


それでも提督の姿勢は一切崩れなかった。



・・・・・・


「はぁ・・・はぁ・・・」


散々泣き叫び、提督にぶつかったアイオワが息切れをする。


「・・・満足か?」


姿勢が全く崩れない提督が言葉を返す。


「はぁ・・・はぁ・・・」


「辛かったな・・・」


姿勢を崩し近づくと、提督は彼女の頭を撫でる。


「・・・・・・」


「辛かったな・・・ごめんな。」


そう言いつつ、彼女の頭を撫で続ける、


「オレがあいつらの代わりに言おう・・・お前を捨てて本当に悪かった。」


「・・・・・・」


「お前が艤装を捨てて姿を消したときは、必死に探したよ・・・やっとの事で見つけた時は既にお前は


 艦娘ではなく女性としての生活を送っていた。」


「・・・・・・」


「何度も戻るように説得したが、お前はもう嫌気が差していた。それは、お前が悪いのではなく、


 オレが追い詰めてしまったのが原因だ。」


「・・・・・・」


「悪かった・・・本当に・・・悪かった。」


「・・・・・・」


「もし、償えるのであれば、お前の苦しみをオレが受け止めてやる。」


「・・・・・・」


「お前は苦しむ必要はない。 お前は前だけを見ればいい。」


「・・・・・・」


彼女は落ち着き・・・


「・・・オレの目的は済んだ。 では、オレは帰るよ。」


そう言って提督は身支度をした。


「提督・・・もしかして?」


アイオワははっと気づく。


「お前の心に残っていた深い苦しみをどうしても晴らしてやりたかった。」


「・・・・・・」


提督の言葉で、やっと思惑が分かった。


「こうでもしないとお前の本音が引き出せないだろう? 少し芝居がかったことをしてしまったが、


 申し訳ない。 後はお前が好きなように生活していけ。」


「・・・・・・」


「上には伝えておく・・・戦艦アイオワは消息不明になった、と。」


「・・・・・・」


「自分の運命は自分で決めろ。 じゃあ・・・さようなら。」


提督は彼女に家から去った・・・



・・・・・・


その後、アイオワはあの住まいから去った。


上層部も提督の報告書により、それ以上のアイオワの詮索を諦め、元通りの生活に戻った。


一部の提督が行方を捜しているらしいが、見つかるはずがない。



なぜなら・・・


「提督! 明日私と一緒に外出しない?」


「ちょっと! アイオワさん! それ、大胆すぎです!!」 


「いいじゃない! 提督との絆を深めましょう!」


「わかった、わかった・・・ならば明日は皆で海にでも行こう。」


「いいわね! じゃあ、今日は臨時休業にして皆で水着買いに行きましょう!」


「はぁ~アイオワさん・・・勝手に予定を決めないでください。」


「ははは・・・」





アイオワは提督の鎮守府に着任していた。






アイオワの表情は何の曇りもない明るく元気な晴れた表情だった。








「提督とアイオワ」 終







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