提督「弥生が」卯月「ハイエースで」夕立「ダンケダンケされたっぽい!」
ほら、ハイエースあるじゃん?
で、ふと見ると、もうダンケダンケしたくなっちゃうんだよね。
全く、駆逐艦は最高だぜ!(犯人の供述)
久しぶりに書きます。
前書いてた「ちてち!」とは関係ありません。
っていうかツンデレとかジト目とかっていいよね。分かる人いるかな?
ちなみに今回は台本書きしません。ご了承ください。
「…」
「う、えーっと…」
「何?」
二人の間に気まずい空気が流れる。
二人がいるのは、鎮守府に近い商店街だ。月末になり、EO海域も全て突破したので、こうして余暇を過ごしている。
「折角お買い物しに来たんだからぁ…もっと楽しんだ方がいいぴょん、弥生」
赤髪の少女が言った。
弥生と言われた彼女は赤髪の少女を見て言う。
「結構楽しんでるつもり…だけど?卯月」
卯月と呼ばれた少女は頬を膨らませる。
「だーかーらーぁ、何で皆うーちゃんって呼んでくれないぴょん!?」
卯月が憤慨するが、弥生は無視し、買い物を続ける。
「あっ、これ…いいかも」
「ぷっぷくぷぅ」
卯月がまた頬を膨らませた。
「…ナレーターも何でうーちゃんって呼ばないぴょん」
卯月は…って俺?いやいや、仕事上そう呼べないから。
「はー?…う、こんなことしてる内に、トイレに行きたくなったぴょん」
彼女は弥生にこのことを伝えようとして立ち止まる。
「弥生ーっ。トイレに行ってくるぴょーん」
返答は無い。
「あれ?…まぁいいぴょん」
卯月が辺りを見渡し、そしてトイレへと向かって行った。
「…あれ」
弥生が声を上げた。周りに知り合いはいない。
「ちょっと離れすぎたかな」
彼女は帰り道に向かおうとして、ふと何かに気が付く。
「あれは…」
彼女が気づいたものは、テレビでのロケ車や輸送用の車として使われていそうな中型車。そう、ハイエースだった。
しかしハイエースなど何処にあってもおかしいものではない。弥生がそう思っていると、車から若い男性が降りてきた。
その男性はふとこちらに目線を遣った後、車内の誰かと話す素振りを見せ、車に乗り込んだ。
「?」
一見すると何の意味も無かったように見えた行動が、弥生には何かあるように思えて仕方がない。
「とりあえず、帰ろうかな…」
彼女は帰路に就こうとする。
だが、そういう訳にはいかなかった。
「あの車…!」
そう、例のハイエースがすぐ目の前にやって来たのだ。
ハイエースは窓を開けた。
「よぉ、そこのお嬢ちゃん!家まで送ってこうか?」
「!」
間違いない。これは誘拐だ。この若者達は、私を誘拐するつもりなんだ。
そう確信した弥生は即答する。
「いえ、…結構です」
しかしその直後、彼女は後悔した。
——周りにこの若者以外誰も人が居ない。ならば走って逃げるべきだったと。
ハイエースのドアが開く。そして若者達が降りてくる。
弥生は駆け出した。いくらなんでも、人間と駆逐艦の速力はかけ離れている。ならば、今からでも逃げれば遅くない。
「あっ…」
しかし、弥生は石畳の隙間につまずき、転んでしまった。とっさに受け身を取ることには成功したが、既に若者達に追いつかれてしまった。
「ハァ、ハァ、オメェ速すぎるんだよ…。でも、やっと捕まえたぜ、ヘヘッ」
足が竦んで動かない。声を出そうにしても、思ったように出ない。
弥生は、海での死闘より、圧倒的に恐怖を感じていた。
「よっ…と」
弥生が担ぎ挙げられる。何故だか、うまく力が入らない。
抵抗も虚しく、絶望していると、視界の片隅に赤い何かが見えた。
それは目を見開いて硬直する卯月であった。
「卯月ぃ…」
助けを求める声を出してしまう。
そして車に運び込まれる時、彼女は右手を前に突き出した。
ドアが閉じられた。
「あ…ぁ」
見てしまった。弥生が誘拐される姿を。
あの時何も出来なかった絶望感に、卯月は思わず涙を流す。
いや、それでよかったのかも知れない。あそこで飛び出していたら、自分も連れていかれたのかもしれないのだから。
「そ、そうだ…電話…」
卯月は公衆電話へ駆ける。
素早い手つきで電話を掛ける相手は、提督。
「司令官!卯月!」
述語が欠損した文で話を始める。
『ど、どうした?そんなに動揺して』
「弥生が誘拐された…ぴょん!」
今思い出した口癖を付け足す。
『な…、冗談じゃ無いよな』
提督も動揺しているようだ。
「そんな訳ない…ぴょん!や、弥生がぁ!」
『分かった分かった!今どこだ!?』
「えっと、〇〇の前ぴょん!」
『分かった、憲兵を向かわせる!』
「司令官は!?」
『悪いが、今どうしても手が話せない仕事があるんだっ…!』
「分かったぴょん…」
『後は憲兵に頼ってくれ!』
電話が切れる。
「そ、そうだ、車のナンバーは…」
卯月は記憶を引っ張り出す。
「あっ!」
メモを取り出し、思い出したナンバーを書き始める。
「向かった方向は…」
向かった方面も書き込む。
「よし」
書き込み終えた。そしてそこに、憲兵達がやって来た。
…白露型駆逐艦も混じっているようだが。
「大丈夫ですか!?」
憲兵が声を掛ける。
「大丈夫っぽい!?」
白露型駆逐艦の夕立が声を上げた。
「うーちゃんは大丈夫ぴょん!でも弥生が!」
「話は伺っています!何か手がかりはありますか?」
その言葉に対し、卯月は紙を渡して答える。
「とりあえず色々メモしておいたぴょん。これが何かの手掛かりになれば…」
メモを受け取った憲兵達は、それを見て驚愕する。
「これは…」
「ん?…このナンバー…!」
どうやら彼らには何か心当たりがあるらしい。
「何かあるっぽい?」
「ええ…。このナンバーは盗難車。さらに言えば、この車は今までさまざまな艦をさらってきた、いわば『手練れ』です」
「我々もいままで追跡を続けてきましたが、奴らはすぐに姿をくらます。分かっているのは車種とナンバーのみ」
「そんな…」
やはり口癖を忘れ、卯月は落胆する。
「なら夕立に任せるっぽい!」
そこに夕立が名乗り出る。
「夕立の、この水上電探があれば大丈夫!」
「あれ?対空電探じゃないぴょん?」
「時雨に借りたっぽい」
夕立が誇らしそうに胸を張る。
「しかし、街中では遮蔽物が多すぎるのでは?」
「あ…」
えへへ、と、夕立は笑う。
「なら吾輩に任せろ!」
「!」
その場の全員が振り向く。そこにいたのは、
「吾輩がいればもう安心じゃ。このような時のために、カタパルトを整備したのじゃからな」
利根であった。
「まさか…、瑞雲で?」
その問いに、利根は頷く。
「そうじゃ。見つけ次第、爆撃もできるぞ」
「いやそれはダメぴょん!」
卯月が鋭く突っ込む。
「ま、まぁ冗談は置いておいて、索敵は任せろ」
「感謝します!」
憲兵が敬礼をする。
「よし、まだまだ、筑摩のやつには負けんぞ!」
「へへっ、また良いもん手に入れたなぁ…」
「奴らの所へ行けば、追跡も逃れられるし、しかもこいつらは好きにしていいって言うしな」
男達の声が聞こえる。
「~~~っ!~~っ!」
弥生が必死にもがくが、それは無駄な抵抗に過ぎなかった。
彼女は口にガムテープを張られ、手は後ろに縛られ、さらには足も縛られている。
――これ以上の抵抗は、何の意味も成さないようだった。
「さ、着いたぜ」
そう言って、車は止まる。
「…」
「よっこらせっと」
弥生は男に担がれ、外に出される。
そしてまず分かったのは、ここは砂浜であること。
「!」
そして、海には空母ヲ級がいたことであった。
「うす。今日も持ってきました」
男の報告にヲ級は頷いた。
『ヨロシイ。デハイツモドオリニ』
「「うーっす」」
男達は返事をし、歩き出す。
「しっかし、いい商売だぜ。金も貰えるし、なにより………だからな」
「ははは!そうだよな!だからやめらんねぇぜ!」
かなり下品な会話だ。弥生は思う。
だがそれと同時に、あることにも気づく。
――瑞雲だ。空に、瑞雲が飛んでいる。おそらく…利根のものだろうか。
自分の位置を知らせるために叫びたいが、それで瑞雲のことを察知されては元も子も無い。
瑞雲が自分を見つけるのを、彼女はただひたすら祈り、待つしかないのだった。
「…っ」
息が詰まる。緊迫する。この深海棲艦らに、あの水上爆撃機が見つからないか。そして自分の身を案じてしまう。
「にしても、これはいつ見ても不気味だよな」
「ああ。なんか…怖いよな、これ」
二人目の語弊力の無さに多少呆れるが、今はそんな場合ではない。
そう、目の前にある『これ』とは、補給ワ級のことである。
補給艦。つまりこれに乗せられて、自分はどこかへ連れ去られてしまうのだろうか。
しかしそんなわけにはいかない。帰らなければならない。皆の元へ。
だがその希望空しく、弥生はワ級に乗せられてしまうのであった。
「…!見つかったぞ!」
「本当ぴょん!?」「本当っぽい!?」
見事に二人の声が重なる。
どうやら利根は弥生を発見したようだ。憲兵はすでに無線機を構えている。
「場所は…砂浜?…何、深海棲艦がいるじゃと?」
「!!」
この場にいる全員の顔が変わる。これに深海棲艦が関わっているのなら、これは重大なことだ。
「憲兵よ、弥生は……にいる!急行せい!」
「了解、総員、急行せよ!場所は……!」
憲兵は無線機で即座に連絡。連絡後、仲間からの返答が返ってくる。
「は、早く行くっぽい!」
「ええ!さあ、乗ってください!」
その一言で、その場の全員が車に飛び乗る。ただし、利根を除いて。
「あ、あれ?利根さんはどこいったぴょん?」
利根はすでにその場に居なかった。
「もういっちゃったっぽい。本当に、ここの利根さんは不思議」
「ありゃ」
どちらにせよ、車は出発する。
行先は、例の砂浜。
弥生を救い出すことを目的として。
「…っ」
弥生は今にも涙がこぼれそうだった。このまま連れ去られてしまうのだろうか。どこか遠いところに。
しかし、それでも今涙を流さないのには理由があった。
言うまでもなく、あの瑞雲の存在のおかげだ。
あれがあるから、自分はまだ救われる。まだ帰れる。今や、瑞雲は弥生にとって一筋の光であった。
「さて、じゃ、ヤろうぜ」
「おう!…へへへ、この時を待ってたぜ」
だがその光も消えかかっていた。目の前には、欲望に顔を歪ませた男達が立っている。
…このままではまずい。恐らくこのままでは…。
その瞬間、
「うおぉあっ!?」
船が揺れた。いや、違う。
砲撃だ。ここが砲撃を食らったのだ。
「ちょ、な、なんだよ!?」
男達は状況を把握できていない。
当たり前だ。戦場を幾つも経験してきた弥生と弥生と、あくまでも一般人である男達とは訳が違う。
「っ!」
船体に穴が開く。この船がタンカーであれば爆雷でも投げ込まれていただろうか?弥生がいる以上そんなことは出来ないが。
「〜〜〜っ!!」
彼女は必死に叫ぶ。
真っ先に助けを求めたのは——
「っ!」
「どうした?卯月よ」
誰よりも先に現場に到着していた利根が卯月に尋ねる。
「聞こえたぴょん!弥生の…、弥生の声が!」
といって卯月は指を指す。
その先にあったのは、
「補給ワ級…か。間違いなかったようじゃな」
中破したワ級だった。
「よし、大発を回せ!救出するのじゃ!」
「了解!」
利根の指示に従い、憲兵が出動する。
そしてすぐに報告が来る。
『救出!…不審者確保!』
「よし、よくやったぞ。帰投せよ」
一仕事終えたような顔をする利根の隣で、卯月は俯いていた。
「む?どうした、卯月よ」
「…うぁっ、うぅ…」
泣いていた。
「ははは!泣くな。お主はよく頑張った。うむ、頑張ったのじゃ。弥生も救われた。だから、泣くな」
「うっ、あぐっ、利根さん…」
周りに、少女の泣き声が響く。
青い、蒼い空に。
「卯月…」
「弥生っ!よかったぴょん…」
二人は再会して抱き合う。
それを見ると、まるで映画のワンシーンのようだった。
「あの、変人達は?」
「おお。それならもう刑務所行きじゃ。長くは出てこれんじゃろうな」
「よかった…」「よかったぴょん」
その返答に思わず二人は安堵する。
「利根さん…。本当にありがとうございました…」
「何、礼はいらぬ。それよりも言うべきなのは…」
利根は少し間を置いて言う。
「卯月に、ではないか?」
「——っ」
弥生の息が詰まる。
「こう見えても、こやつは活躍したのじゃぞ?お主の居場所を当てたりな」
「えへへ…」
「ぽーい!夕立、結構頑張ったぽい!夕立は!?」
「お主はただ単に付いてきただけじゃろう」
「ぽい…」
微笑ましい会話を他所に、弥生は歩く。
「えっと…こういうこと言うのは、ちょっと恥ずかしいけど…」
卯月は唾を飲む。
「…ありがとう、卯月」
「ぴょーぉぉん!何でうーちゃんって呼んでくれないぴょん!?」
「恥ずかしいでしょ…?」
「ぷっぷくぷぅ」
その会話に、周りは笑い出す。
「さあ、帰るぞ?皆が待っておる」
「はい」「ぽい!」「ぴょん!」
利根を除く全員が車に乗り込む。最後に乗り込むのは、弥生だ。
「さ、いくぴょん」
弥生は頷き、こう答える。
これにて完結。NKT…。
台本書きに比べ、やっぱりこっちはかなり時間食いますね…。さらに読みにくかったかと。
やってみたかったんですよ!ていうか気分転換!許し亭許して。
とりあえずここまでわざわざ読んでくれた皆様、本当にありがとうございます。これからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!
ちなみに最後の文の後はご想像におまかせします。
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