時雨「ここって……もしかして、ハイエースっ!?」
気付けば僕は、車の中で揺らされていた。
しかも、ただ揺らされているだけじゃない。手足はガムテープで巻かれ、口には猿ぐつわをされている。
――そうだ、これは噂のハイエースとやらに違いない!
そう確信した僕は、この状況から抜け出すため、ある行動を起こすのだった。
どうも。
今回は台本書きと小説書きの混合式で書かせていただきます。
このハイエース、前回のようなシリアス展開じゃあありません。
コメディ調に行きます。
それもですね、最近学園キノなんて読んでしまいまして、あの原作崩壊っぷりが面白くて仕方ないんですこれが。
ちゅーことでバリバリ学園キノに影響を受けて執筆しますのでよろしくお願いします。
あ、もちろんキャラ崩壊なんて当たり前なんでご了承ください。
時雨「……ん」
何かとてつもない違和感を感じて、僕は目覚めた。
あれっ、そもそも何で僕は寝てたんだろう?確か僕は夕立と休暇をとって、アホみたいにマジやべー極悪人を倒す――映画を見に行ったはずなのに?
時雨「……ふぁっ!」
待て。僕は何故か拘束されてるじゃないか。
後ろ手にガムテープを巻かれ、足にもガムテープ、口もガムテ……じゃなかった、猿ぐつわ。
しかも、横たわっている地面は、不規則に揺れている。
これってもしかして、もしかしなくても――
???「おっ、起きたみてぇだぞ。お前モーニングコール行ってこいや」
誘拐だぁーっ。かっこ、ぼう。
提督「早速章タイトルが荒ぶってるが、休暇だな。よし、行ってこい」
僕は提督と、気持ち悪い章タイトルに見送られながら、夕立と街に繰り出す。(作者注・気持ち悪いってなんだよこれは俺の本心であっt)本当に気持ち悪い。
夕立「時雨、『アホみたいにマジやべー極悪人』って何っぽい?」
しばらく歩き、交通機関に乗り、もう面倒くさいからその描写全てカットすると、ふと思い立ったか夕立が話しかけてきた。
時雨「ああ、『アホみたいにマジやべー極悪人』っていうのはね、アホみたいにマジやべー極悪人がマジやべーことをアホみたいに繰り返す、痛快コメディ映画のことだよ」
ちなみにこれはほとんどキャッチコピー、と付け足す。
夕立「ふーん……何かの間違いっぽい?」
確かに僕もこのマジやべーキャッチコピーを初めて聞いた時は目を疑ったけど、実際この映画についての口コミがたくさんあるんだから間違いじゃないんだろう。
評価は一括して星五。星四以下は一つもない。まるでAmazonカスタマーレビュー並の評価だ。
さらにさらに、何故か全国ネットで放送されたCMでは、全米が鼻で笑った、とのお墨付きが。何それ。
時雨「実際僕も間違いであって欲しいけどね……」
夕立「じゃあ何で貴重な休暇に、そんなアホみたいな映画を見るっぽい?」
もっともな意見だ。
時雨「それはね――」
そう言うと、僕は両手をばっと広げる。
時雨「僕の中の船霊が、これを見ろと叫んでるんだよぉっ!」
夕立「……ミーム汚染系のオブジェクトトっぽい?」
ちなみに今ので僕には周りからの視点が集中した。僕は人気者だね。
時雨「映画を見て、そして最高評価を口コミに書き込まなきゃならないんだ……。僕の船霊が、そう言っている」
夕立「間違いない、これはSCPオブジェクトっぽい」
さっきから夕立は僕と映画のことを褒めているみたいだ。すごいなぁ。マジやべー。
そうこうしているうちに、僕達は映画館の前に到着した。
時雨「すっ、すごい……!」
夕立「映画館が、あの映画の垂れ幕に覆い尽くされてるっぽい……」
ここまでされるなんて、やっぱりこの映画は面白いんだろう。全米が鼻で笑ったくらいだからね。
僕は期待を膨らませて映画館に突入して、映画のチケットを購入する。
何故か夕立は嫌々購入しているように見える。な、なんでだろう。僕が買ってあげた方がよかったのかな?
時雨「さあ、そろそろ上映の時間だね!シアターに移動しようか」
夕立「終わったら起こすっぽい」
僕らは受付の人にチケットを渡し、入場する。片手にはポップコーンを持つ。
そそくさと席に移動すると、僕は映画が上映されるのを待った。夕立はポップコーンを貪っていた。ちなみに高速で。
時雨「さあ、上映だね……」
夕立「ふあぁ……」
映画が始まる時の、あのブザーが鳴り響き、僕はスクリーンに注目する。
そして、『東映』の文字が映し出され、
それは始まった。
◆ ◆ ◆
時雨「うぅっ……!」
夕立「はぁ……」
僕達は上映シアターから出て、そして映画館からも出て、それぞれ言葉を漏らす。
時雨「この映画……」
夕立「この映画……」
「死ぬほどつまらなかった」「めちゃくちゃ面白かったっぽい」
僕と夕立は向かい合い、ぎょっと目を丸くする。
時雨「あ、あぁ、あの映画がかい!?」
夕立「あの映画以外に何があるっぽい?」
――なんてこった。遂に夕立は狂ったみたいだ。マジの方の狂犬だよこれ。
時雨「あの映画のどこが面白かったのかな?」
夕立「何処って……そりゃ、全部っぽい」
時雨「全部ぅ!?」
あまりの驚きから、僕は大声で叫んでしまう。あ、視線を浴びた。……恥ずかしい。
夕立「全部っぽい。配役から、演技から、ストーリーから――。二時間、全く飽きなかったっぽい。ぽいというか、飽きなかった。まる」
なんてこった。途中から僕は、飽きに飽きて、ポップコーンを貪っていたというのに。ちなみに高速で。
そう言えば、ある時から夕立のポップコーンを食べる手が止まっていた。寝たんだと思ってたけど、あれってもしかして……。
時雨「くっ、クソッ!こんなクソ映画、星一つだ!」
そう言うと、僕はスマホを起動し、映画口コミサイトに評価を書き込もうとした。ちなみにここまで〇.〇〇二秒。
――だが。
時雨「あっ、あれっ」
僕が書き込んだものは、例の映画を褒め称える哀れな文章と、星五の評価だった。
時雨「そんなっ」
何かの間違いかと、僕は評価を付け直そうとするが、僕が書いたのは同じような文章、そして星五。
僕はゾッとした。得体の知れない何かが、僕を操っているのかと。マジでやべー。
夕立「大丈夫っぽい?」
時雨「えっ!あっ、うん」
夕立に話しかけられ、僕は正気を取り戻したが、その勢いで、レビューの送信ボタンを押してしまう。
時雨「アッ-!」
何処ぞの✕✕✕男優のような声を上げながら、僕は慌てて投稿したレビューを消そうとするが、何故だろう、消すことが出来ない。
夕立「何やってるっぽい?」
明らかに慌てる僕を見て、夕立が僕のスマホを訝しげに覗いてきた。
時雨「な、何やって――」
夕立「あー、これ。何か、この映画についての投稿だけ、消せなくなってるっぽい」
時雨「ソースは!?」
夕立「これ」
夕立が何かのチラシを出す。奪い取るようにそれを見ると、そこには、夕立が言ったことと同じような事が書いてあった。
時雨「バカな……」
悔しさに、僕は膝をつく。
夕立「はぁ。まあ、そろそろ時間だから帰るっぽい」
時雨「……あ、本当だね。じゃ、帰ろうか……。はぁ」
スマホの時計を見れば、どうやら時間は帰宅予定の時間に。空も日が沈みはじめ、空を真っ赤に染めている。
出発は色々あって遅くなったからそれは仕方ないけど、貴重な休暇をこんな映画に使うくらいなら、他のことに使えばよかった。畜生。
夕立「今日は楽しかったっぽい!」
時雨「そっか。なら良かったよ……」
どうやらこの狂犬はとても満足してるようで、意気揚々に帰路を辿り始めた。何だコイツ。
僕は例のクソポスターを垂らす映画館を忌々しげに見て、そして先に行ってしまった夕立に着いて行った。
◆ ◆ ◆
時雨「ねぇ」
夕立「……」
時雨「これ、完全に」
「道に迷ったよね」「道に迷ったっぽい」
なんてこったパンナコッタ。あの後夕立に着いて行ったら、明らかにやべー奴がいそうな路地裏に迷い込んでしまった。
そもそも良くこんな辺境の地に迷い込めたな夕立よ。君そういうセンスでもあるの?方向音痴なだけ?
時雨「はぁ……。今日はついてないよ」
夕立「幸運艦の名が廃るっぽい」
時雨「いや夕立のせいだからねこれ!?」
僕は夕立に本職の芸人でさえすっ転んで驚愕しそうなツッコミ(異論は認めないよ)を入れる。
いや、マジでガチ目に迷ったよこれ。これで噂のハイエースでダンケダンケなんてされたらどうしようか。怖いなー。
時雨「さあ、どうやって帰ろうか、夕立?」
夕立「……」
時雨「あれ?夕立……」
僕はあさっての方向を見つつ夕立に問うた。だが、返事がない。ただのしかばねのようだ――そんなしかばね夕立の様子を見ようと、夕立の方へと振り返ろうとした瞬間――
時雨「ほげっ」
ピコピコハンマーに殴られ、僕は卒倒した。
ここまで回想。こんなことがあって、僕はハイエースされた訳だ。
お決まりのように章タイトルが荒ぶってるけど(作者注・いや俺自身の感想ですし)ますます気持ち悪い。
何とか僕を拘束するガムテープが取れないかともがいていると、前の席からひょっこりと顔が出てきた。
???「や、やあ。お目覚めかなぁ」
時雨「ふっ、ふぐっ!」
き、キモッ。それがこの男に対する第一印象だった。
キモくてデブ。喋り方もキモい。あの映画の極悪人よりも、ある意味やべー奴だった。
僕はコイツを、キモデブと呼称することにした。
キモデブ「よ、よかった。げ、元気みたいだねぇ。これからアレするから、げ、元気でいてもらわないと」
時雨「ふぁっ、ふぁふぇ?」
キモデブ「あ、あれ?って、もちろんアレにき、決まってるでしょ」
察した。これは、アレだ。放送禁止用語のアレだ。間違いない。地の文が言うんだから、間違いない。
というか、猿ぐつわされてるのに、言葉は通じてるんだね……。
???「俺たちの超☆絶テクに堕ちた奴は多いよなぁー」
うわっ、チャラっ。それが僕の以下略。
僕はコイツの事をチャラ男と以下略。
チャラ男「お前も、そしてお前のお友達も、そのうち俺たちによがるようになるから、覚悟しとけ」
お友達?そう言われ僕は隣を見渡す。すると、窓から入ってくる微かな光で見えているだけだが、そこには夕立が転がっていた。
バーカ……じゃなかったまぬけ……でもなかった大丈夫かな?
そして僕達はチャラ男の運転するハイエースにしばらく揺らされていると、やがて何処かに到着した。
時雨「……むぅっ!」
ここは!僕はそう叫ぶ。猿ぐつわの中でね。
知っているのか時雨!?そんな声が聞こえてきた。多分作者の声。
僕は身体を上げ、窓からそこを見ていたが――
はっきり言うと、全くわからない。どこ、ここ。(作者注・知らねーのかよ)
何と言うか、こう、廃工場ってことは分かるんだ。だけど、それ以外何もわからない。『安全第一』の看板があるって事しかわからない。
そしてもうしばらく揺らされると、車が止まった。
がららら。横開きのドアが開けられる。……ばこん。かなり雑に。
チャラ男「よっこいせ」
時雨「むっ、むぅぅっ!」
すると、僕はいきなりチャラ男に担ぎ上げられた。
――お姫様抱っこで。
畜生、こんなチャラチャラした変態誘拐クソ野郎にお姫様抱っこなんて!僕は計り知れない怒りと屈辱を感じる。
拘束から抜け出したらぎゃふんと言わせてやる。僕はそう言わんばかりにチャラ男を睨みつける。今更ぎゃふんと言う奴がいるのかは謎だが。
……おっ、あのバカ狂犬はキモデブに担がれてる。ざまぁみろwwww……じゃなかった、早く助けてあげないと。
チャラ男「じゃ、今晩楽しみにしてろよwww」
キモデブ「うはwwwww拙者も楽しみでござるwwww」
きっも!僕らは廃工場のどこかに降ろされてすぐ、こんな言葉を言われてしまった。キモい!
そして、奴らはどっかに行ってしまった。
時雨「……」
さて。どうしようか。
今僕は拘束されている。両手両足、ガムテープでガチガチに。
普通の人間じゃあ、この拘束からは抜け出せないだろう。今晩の執行を待つしかない。
――だけど、僕は違う。
僕は、艦娘なんだ。人間とは違う、兵士として鍛え上げられた存在なんだ。
残念だけど、隣で転がっている夕立も艦娘だ。あんなクソ映画を絶賛してしまう奴なのに。しかもこんな状況なのにのんきに寝ている奴だと言うのに。お前それでも軍人か?
だから、僕は力を発揮しなければ。この危機的状況を抜け出すための、力を。
時雨「……ふぁ、ひふほっ!」
さあ、行くよっ!猿ぐつわのせいで言えてないが、僕は掛け声を発し、拘束された両足で器用に立ち上がる。
時雨「ふぁふぇほのふぃふえのひはあ、みへへはへふほっ!」(佐世保の時雨の力、見せてあげるよっ!)
夕立「んー……?」
時雨「ふぇーん、ひん!」(変、身!)
しゅばっ、しゅばっ、しゅばばっ。拘束された両手を振り回すと、突然、僕の身体が光に包まれた。
僕はシルエット姿になり、俗に言うプリキュアの変身シーンのあの様な感じに。
まあ想像は付くと思うけど、僕の身体に服がぽいんっ、と形成されていって、くるくるくるーっと回って、そして、光が辺りに放たれる!――感じ。
そして、光が止んだ瞬間――
時雨改二「ふぃふえはいひ、ふぇんはん!」(時雨改二、見参!)
僕はポーズをばっしと決めて、決めて、……決めようとして、
……あれ?
変身はしたけど、拘束が解けていないじゃないか。
時雨改二「ひはははいはぁ」(仕方ないなぁ)
僕は両手に力を入れる。すると、
みしっびりびりごきゃっばきばきどかーん。
両手を留めていたガムテープを粉砕した。音?いや、何処もおかしくないでしょう?
そのまま、足の拘束と猿ぐつわも、
ばりばりばりみしっごきゃべきっちゅどーん。
まるでスライスチーズを半分に切り裂くように破壊した。例えが分かりにくいって?気にしない。
やっと完全にあらわになった僕の制服。大雑把に見ればあまり変わってないように見えるが、よくよく見ると変化したところはある。
例えば袖。捲ってある裾の形が、平坦でつまらなかったものが、起伏があってかっこよくなった。
そして、サービスでスカートが三ミリ短く。
さらにさらに、僕の絵柄ががらりと変わった!
時雨改二「さあ、起きろ夕立!」
さっそく行動を起こそうかと、多分隣で生意気にも寝ていた夕立を起こそうとすると、僕はいきなり足蹴りを食らった。
???「もうとっくに起きてるっぽい。ぽいと言うか、起きてる」
時雨改二「痛たた……はっ!その声、もしかして、もしかしなくても!」
僕はあからさまに驚いて、勢いよく振り返る。
すると、そこには何と!
夕立改二「何その顔。ムカつくっぽい」
変身した夕立が!なんてこった、こんな展開誰が想像したことだろう!驚きで顎が外れそう!
ちなみにこの夕立、緑色の目が禍々しい赤色に、そして金髪には寝癖のようにピンとはねた……結局なんだろう、寝癖?があった。
時雨改二「ぐふっ」
僕は拳を顔面に食らった。痛え!
夕立改二「今度生意気なこと言ったら、その口を縫い合わすぞ」
時雨改二「コマンドーなのかいここは!?」
僕は強烈なツッコミ(異論は認めないよ)を御見舞する。
夕立改二「そんな事より、さっさと誘拐犯をぶちのめすっぽい」
時雨改二「よし分かったよ!野郎オブクラッシャーッ!」
夕立改二「負けそう」
……さて、誘拐犯でもボコボコにしようかな!
そう決心した僕は、扉を華麗に蹴破って壊し、部屋の外に出た。
◆ ◆ ◆
チャラ男「な、なんだお前!?」
時雨改二「なんだお前!?とは失礼な!僕はかの有名な『佐世保の時雨』だよ!」
キモデブ「さ、『佐世保の時雨』って、まさか……あ、あの!?」
部屋から容易に脱出した後、僕らは少しお散歩していた。
その時、例のクソ共と遭遇したという訳だ。
チャラ男「お、おい!なんか扉がぶっ壊されて部屋に誰もいなくなってるけど、あいつらはどうした!」
時雨改二「……は、はぁ?僕の姿が見えないの?」
チャラ男「見えてるわボケ!」
ど、どういうこっちゃ。そのいなくなったのが僕らのことなんだけど。
説明求むよ、夕立。
夕立改二「夕立みたいに、変身すると、自分の姿が他の人からは全くの別人に見えるらしいっぽい」
なるほどー、言えてる。夕立なんか特にそう。
夕立改二「あ?」
時雨改二「ひでぶ!」
僕の綺麗なお顔が、拳によって吹っ飛ばされた。
時雨改二「と、とりあえず……やい誘拐犯!投降するなら今のうちだよ!」
チャラ男「な、何を生意気なことを!女二人でなにができるっちゅうねん!」
扉が壊れてるのが見えないのかなぁ。
時雨改二「なら仕方ない。行けっ、ソロモンの悪夢!」
夕立改二「ソロモンよ、私は帰ってきたァァァァァ!」
何か僕が手を出すのも面倒なので、夕立に仕事を命じる。
すると、夕立にアナベル・ガトーでも乗り移ったか、訳分からんことを叫びながらチャラ男に突っ込んでいった。
チャラ男「こ、この野郎!」
チャラ男の強烈な右ストレート!
だが、これを夕立は軽々とかわす。
チャラ男「クソッタレ!」
チャラ男の左フック!
ボクシングでもやってんのかってくらい素早い一撃だが、夕立はそれを飛び退いてかわす。
夕立改二「会いたかったぞ、ガン〇ムッ!」
何を勘違いしたか、夕立……いや、ガトーはチャラ男をガ〇ダムと呼称した。
そして白兵戦、目にも止まらぬ早さで、ガトーはチャラ男に拳を御見舞する!
チャラ男「おぶぁぁぁぁぁぁぁっ!」
見事に拳は腹に入り、チャラ男は大きく吹っ飛ばされる。ホームランバットだね。……あっ、そうそう、ホームランコンテストはガノン二人でやると記録出しやすいよ。上から、下から攻撃していって……
夕立改二「無駄話は程々にするっぽい」
時雨改二「……はっ」
僕は正気を取り戻す。クソっ、ホムコン二人でやる友達なんていないのに……!
とりあえず、チャラ男は廃工場の一番端まで飛ばされていた。そんなパンチを受けて原型を保つ僕の顔、うわっ、すごすぎ……?
時雨改二「さて、次は君だね」
キモデブ「ひっ……!」
夕立の視線を感じたので、僕は腰を抜かしていたキモデブに視線を移す。おおっ、見事なまでにビビってるね。
時雨改二「さてさて、痛い目にあうか、それとも穏便に済ますか、どっちがいい?」
キモデブ「えっ、えっと……!」
うわぁ、こいつ、一人になると途端に弱くなるタイプのイキリオタクだ。気持ち悪い。作者みたいだね。(作者注・あんだとお前ぶっ飛ばすぞ覚悟しr)
言葉を詰まらせて俯いたキモデブだったが、何かの決心が付いたか、突然顔を上げた。
キモデブ「拙者と、行為をしていただきt」
時雨改二「変態」
キモデブ「ありがとうございまあべしっ!」
強烈な右ストレート!キモデブは倒れる。
時雨改二「またつまらぬものを殴ってしまった……」
夕立改二「どちらかと言えばいつも殴られてるのは時雨っぽい」
時雨改二「何だとこの野郎ぶべらっ」
殴られた。
◆ ◆ ◆
あの後、僕らは鎮守府に通報した。公衆電話で。持ち物は没収されてたからね。唯一ポケットに入っていた百円が、僕を助けてくれたよ。ありがとうポップコーンのお釣り!
通報の内容を要約するとこうだ。
時雨「もしもし提督ぅ!?」
提督「うっは時雨じゃんwwwwいま何してんのwww」
時雨「いやー、なんか誘拐されちゃってさあ。迎え用意してくんない?」
提督「ええよwww憲兵も連れてくでwwwwww」
時雨「あ、……ありがと」
提督「うひょーwwwwツンデレktkr!!!!!11!!えっちょ憲兵さん?あっいやこれはアッー!」
こんな感じ。
夕立「かなり盛ってるっぽい」
時雨「うるせぇ狂犬!」
一発のパンチ。
時雨「うぐっ、さ、さて、提督はまだかな?」
夕立「まあ、艦娘が誘拐されるっている異常事態だから、早めに来るとは思うっぽい」
夕立がそんな事を言っていると、
「あっ、来た」「来たっぽい」
キキーッ、と甲高い音を立てながら、数台のバンが工場前に止まった。一応夜だっちゅーのに。
提督「うぉーい、大丈夫か!?」
時雨「大丈夫っ、ピンピンしてるよ!」
そしてバンから提督と数名の憲兵がぞろぞろ降りてくる。見ろ、人がゴミのようだ……!
提督「ヤられなかったか!?」
僕と夕立による突撃。提督は倒れる。
時雨「マナーって」夕立「知ってる?」
提督「本当に申し訳ない」
提督が自ら土下座の体勢を取ったところで、憲兵から報告が入る。
憲兵「誘拐犯、確保致しました」
提督「あ、了解。総員、帰投する」
憲兵「了解!」
流石、手早く犯人を車に押し込み、その車は撤収する。チャラ男とキモデブは、しばらくは豚箱で過ごすことになるだろう。
時雨「さあ、帰ろうか狂犬よ」
拳が飛んでくるが、僕はそれをすんでのところで回避する。
提督「さ、さあ、帰ろうか?」
夕立「……ぽ、ぽいっ」
もう一発拳が飛んできそうなところを、提督が引き止める。たまにはやるじゃん。……じゃなかった、ありがとう。
時雨「さあ、死なないうちに僕は帰るよっ!」
そう言って、僕は提督の乗ってきたバンに走り込む。あれ以上夕立といると、僕もスライスチーズになっちゃう!
しばらくすると、提督と夕立がバンに乗ってきた。提督はボロボロだが。これは痛そう。
憲兵「出発致します」
提督「頼む」
提督の声と共に、バンは発進する。
時雨「……ふう」
今日は大変だった。何故かあんなクソ映画を見て、夕立は狂い(拳が飛んできて殴られた)、夕立のせいで誘拐犯されて、夕立に殴られて――あれ、ほとんど夕立のせいだね?(拳が以下略)
提督「とりあえず、心のケアだ。休暇は明日まで延長とする」
時雨「本当かい!?太っ腹っ!百貫デブ!」
夕立「それって褒めてるっぽい?」
小さな笑いが車内に生まれる。
ああ、このまま平和だといいな。
何かこう、作戦行動中に深海棲艦にハイエースされそうだけど、きっと気のせいだよね。(伏線です。覚えておきましょう)人はこれをフラグとも言うんだよ。
とりあえず、今日はとことん夜更かししてやる!何故なら明日は休暇だ、寝坊の心配はいらない!(伏線)
そして、僕らは鎮守府に無事に帰ってきたのだった。
◆ ◆ ◆
工場中☆now
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