第1巻 第51話 ミヤナギ
2017年7月20日 和菓子屋おのでら
菜々子 「小咲ーー!弁当できたわよー。」
小咲 「あ、うん。ありがとうお母さん」
春 「お母さん、お姉ちゃん、行ってきまーす。」
小咲 (今日で終業式かぁ………夏休みはお菓子職人(パティシエ)の修行に励まきゃなぁ)
電車内
ガタンゴトン………
小咲 (う〜〜、今日も満員電車だよ〜,って、アレ?)
千棘 「ごめんね〜楽、あんたはもう夏休みなのに毎日駅まで送って貰って」
楽 「いーんだよ。俺はお前の彼氏だし、やっぱりお前と一緒にいたいしな。」
小咲 「おーい、一条君と千棘ちゃ………」
千棘 「ねぇ楽、またアレやってよ」
楽 「えーー?また電車でやんのかぁ?俺だって恥ずかしいんだぞ?」
小咲 (えっ?……………)
楽と千棘に話しかけようとした小咲は、そこで止まってしまった
千棘 「アレやってくれないと、私今日の裁縫の試験頑張れないよ〜〜?」
楽 「しょうがねぇなぁ………」
クイッ
小咲 (!)
千棘 「ひゃうっ!ん〜〜〜っ」
楽は千棘の顎をつまみ、撫でていた
千棘 「気持ちいい………」
小咲 (そっかぁ………2人はもうあんな事までしてるんだ。)
小咲 (そりゃそうだよね、もう高校の時の恋人のフリとは違う、本物の恋人同士だもんね。
キスも何回かしたって聞くし、当たり前だよね………)
小咲 (…………………………)
小咲 (いいなぁ、千棘ちゃん。)
佐張大学 栄養学部 前期試験会場
小咲 「えーっと、この場合の食品に入れるのに最適な調味料は………」
小咲 「……………………………」
小咲 (わ〜〜!ダメだ!朝の一条君と千棘ちゃんの事が頭に染み付いて試験勉強どころじゃないよ!)
小咲 (ダメだなぁ私………一条君は今は私より千棘ちゃんが中にいるんだよ?
今、一条君が本当に愛してるのは千棘ちゃんなのに、ずっと好きだったからやっぱりそんなにすぐには頭から離れないよぅ………)
小咲 (ヤダ、私千棘ちゃんに嫉妬してる。
かっこ悪い………恥ずかしいよぉ………)
小咲 (…………………………)
? 「アレ?小野寺さん、まだその問題解いてたの?」
小咲 「えっ!?わわっ!」
? 「どうしたの?そんなに慌てて………」
小咲 「ごめんなさい、私他事考えてて……….、えっと………」
? 「弥柳、弥柳 蓮(みやなぎ れん)」
小咲 「ああそうか弥柳君だったよね、同じ栄養学部の。ありがとう、ずっと解けなかったから………」
弥柳 「だって小野寺さん、その問題だけにもう1時間近くかけてたじゃん。」
小咲 「え?私、そんなにこの問題に行き詰まってた?」
弥柳 「なんか、見てて上の空というか、他事に頭がいってるって感じだったよ。」
小咲 「アハハ………(恥ずかしい………)」
弥柳 「小野寺さんの実家って、和菓子屋なんだよね?」
小咲 「え?あ、はい。よく知ってますね。」
弥柳 「だって俺もよく行くもん。」
小咲 「え?そーなんですか?」
弥柳 「妹の春ちゃんもよく知ってるよ、でもあんたはあの店番を最近は余りやってないよね?」
小咲 「あ、はい。私は菓子職人(パティシエ)になる為に料理教室の菓子科とケーキ屋さんのバイトをしてるから………」
弥柳 「えっ!?菓子職人(パティシエ)志望なの?俺と同じだ!」
小咲 「え?弥柳くんも?」
弥柳 「今度、俺がバイトしてる洋菓子屋教えるから、来れたら来てよ、今は試験頑張ろー。」
小咲 「はい!是非。」
小咲 (何だか一条君と似た雰囲気のひとだったなぁ………顔はあんまり似てないけど、よく知らない人にも優しくしてくれたり、話しかけてくれたりする所が………)
小咲はまだ知らない。今日出会ったこの菓子職人(パティシエ)志望の少年が、遠くない未来に自分の第2の恋の相手になる事を。
第51話 完
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