第1巻 第109話 タベカタ
ステーキゲスト 凡矢理店
カチャ カチャ サクッ パクッ
千棘 「うーん、美味し〜〜♪」
楽 「もうそのステーキ料理3杯目だぜ………(汗)、相変わらずスゲー食欲だよなお前………」
千棘 「別にいいじゃない!ご飯は命の元だもの、ご飯を沢山食べる事が悪い事な訳がないわ!」
楽 「へいへい………」
千棘はナイフとフォークを使い、しっかりとしたテーブルマナーのシルバー裁(さば)きで次々とステーキ定食を平らげていた
楽 「………そういやお前、今日は何だか随分としっかりした食い方で食ってるよな?」
千棘 「え?」
楽の言う通り、千棘は大食感の食欲こそ昔の高校時代のままだが、テーブルマナーを使って丁寧に食べていた
高1時の初のニセデートの時に肉屋で肉を何杯もお代わりしていた時とはえらい違いだ
千棘 「ああ……私、去年からビーハイブの実家でパパと夜、ディナーを食べる時はこの食べ方だったのよ。
あんたと定期デートしてた時は、気取らない食べ方で食べてたけどね………でも………」
千棘は次の言葉を話す前に2〜3秒、間を置いた
楽 「………でも?」
千棘 「去年の秋と冬、スミレさんについて行ってファッションデザイナーの修行で世界中を周っていた時、お酒に強くなったり、料理を身につけたり、あんたのちゃんとした彼女になる為の花嫁修行もしたって言ったでしょ?
これもそれと同じよ。」
カチャ スッ フキフキ
千棘はフォークで肉の最後の一切れを口に運び、ナプキンで口元の食べカスを拭き取りながら話を続けた
千棘 「あんたはお淑やかで女の子らしいこが好きなんでしょ?
だから少しずつ頑張って変わったり、自分で直せる所は一つずつ直して行ったの。」
千棘 「小咲ちゃんや万里花みたいにはいきなりなれないけど、私なりに」
ニコッ
楽 ドキッ
千棘は楽に釣り合う女子になる為に地道にして来た努力を素直に吐き出し語り、素直な笑顔をまた見せた
楽はその笑顔に、ふたたびドキッとした
楽 (そっか………確かコイツ、2年の年明けの定期デートでも、俺の趣味に合わせてそば屋に連れてってくれた時、あんまり食べ過ぎないようにしてたよな………結局俺の分まで食ったけど(笑))
楽 (俺とホントに付き合うようになった事、そんなに真剣に考えてくれてたのか………)
楽 「………ありがとな千棘」
千棘 「え?」
楽 「その………俺なんかの為に色々そんなに頑張ってくれて。」
千棘 「え?いーのよ別にぃ!」
千棘 (頑張んなきゃ………私があんたにフラれちゃうとばかり思ってたからだけだし……)
楽 「………よーし、ご褒美をやるよ。」
千棘 「え?」
スッ
クイッ
千棘 「ひゃっ!?」
楽は店の机に体を乗り出し、千棘の顎を人差し指と親指で摘んで自分の方を向かせた
チュッ
千棘 「んっ!」
楽はそのまま千棘に口づけした
千棘 「や…やだ………恥ずかしいよ楽………こんなトコで………」
楽 「………俺だって恥ずかしいんだよ………でも、お前が俺の為に頑張ってくれてたんだから………久々にしようと思ったんだよ。」
千棘 「だ…だからってこんな公衆の面前でやる事無いでしょ!?食べ終わった後にお店の外とかでしてくれれば良かったのに………
ほら、見なさいよ!他のお客さん達が私達の事見てるじゃない!」
客A ヒューヒュー
客B 熱いねー、若い子はいいねー
楽 「うわっ!?わ…わりぃ!」
千棘 「と…とにかく、私もちょうどお腹いっぱいになったから、お会計済ませて早く店の外に出ましょ!」
店員 「ありがとうございましたー、お会計、4,400円になりまーす。」
カランコロン………
千棘 「もう!キスするんならもうちょっと場所を考えなさいよね、この鈍感もやし!」
楽 「悪かったって………」
楽 (しっかし一食で4,000円以上とか………相変わらずコイツとデートする時の食費はニセモノの恋人時代からべらぼーにかかるぜ。
まあ、今は小野寺んちでバイトしてるからいーんだけどな。)
楽 「で、次はどこ行くよ?」
千棘 「そうねぇ………お腹も一杯になったし………あ!そーだ!」
そして2人がステーキゲストの次に向かった先は……………
第109話 完
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