第1巻 第242話 アキサメ
2017年10月27(金) 18:00
凡矢理駅への帰り道
ザーーッ ザーーッ
楽 「ふーー、中々スゲー雨だな。」
千棘 「そうね。」
楽と千棘は、今日は大学祭の準備がほぼ終わったので、
久々に一緒に帰っていた。
千棘 「それにしても、今年はなんだか雨が多いわね。」
楽 「そうだな。
そういやあ今日、変な事があってな。」
千棘 「変な事?」
楽は、大学で紅介が言った事の一部始終を千棘に話した。
千棘 「へーー、蒼也くんのお兄さんがそんな事をねぇ………。」
楽 「そうなんだよ。
この話、蒼也にも話した方がいいよな?」
千棘 「うん。
蒼也くんも、お兄さんの事は気にしてるみたいだし………。」
楽 「だよなー。
あとで蒼也に、電話かメールで聞いとくわ。」
千棘 「………ねぇ楽、そう言えば蒼也君のお兄さんの紅介って人、どんな人なの?
私、まだあんたや蒼也君から話で聞いただけで、
実際に会った事は一度も無いんだけど………。」
楽 「ん?
ああ、外見は顔も背丈も蒼也そっくりなんだけど、
性格がどこか違うんだよな。
なんてゆーか………内面が。」
千棘 「内面が?」
楽 「ああ。
ほら、蒼也って、鶫と同じで任務や訓練にマジメで、それでいて鶫より全然感情的にならないだろ?
でも、兄貴の紅介の方は、
なんつーか………
蒼也と同じ様に感情的にはならないけど………
どこか、飄々として相手を煽る感じなんだ。」
千棘 「そうなんだ………。
あ!そうだ、それより聞いてよ楽、
私も今日学校で、変な事と言うより、
ムカつく事があってね………。」
今度は千棘が、
自分が今日、LAB(ラボ)で皆川とあった事の一部始終を話した。
楽 「へーー、お前のクラスにそんな人がねぇ………。」
楽 (こいつがここ最近、服作りに異様にやる気を出し出したのはそれが原因の一つか………。)
楽 「まあ、いいんじゃねーのか?
お前はお前の、作りたい服を作れば。」
千棘 「そうよね!
あんな嫌な女の言う事なんて、気にしなくていいわよね!」
楽 「しっかし、お前はやっぱりどこの学校でも1人くらい、
橘と同じようにケンカする空いてが出てくるんだな。」
千棘 「万里花と同じなんかじゃ無いわよ!
万里花の方が全然根はいい子………
じゃなかった、マシよ!」
楽 ハッ
ニコッ
楽 「そうだな。
橘の方がいい奴だよな。」
千棘 「そうよ!
万里花の方が全然マシよ!」
楽 (こいつ、なんだかんだ言って、
橘の事、心底では友達として大事に思ってたんだな。
そうだよな。
お前は俺にも素直じゃ無いだけで、
根は大事に思っててくれたんだからな。)
ザーーザーー ザーー………
楽と千棘が話しながら歩いていると、
雨はますます強くなって降っていった。
千棘 「なんだか、雨がますます強くなってきたわね。」
楽 「ああ、雲は空全体に掛かってないのにな。
こういうの、秋雨って言うのか?」
楽の言う通り、雨雲は空全体では無く、
楽達のいる上空にのみ掛かり、
少し離れた場所の空は晴れていた。
千棘 「あ!見てよ、楽!」
スッ
楽 「ん?………あ!」
千棘が指差した先には、
ちょうど2人が通りかかった川に夕日が掛かり、それに雨も降り、
一層(いっそう)、美しい景色になっていた。
千棘 「キレイだね………。」
楽 「ああ、そうだな。
中々、風流な景色だよな。」
千棘 「クスッ、
ねえ楽、なんかロマンチックよね。
こういうの。」
楽 「え?」
千棘 「あんたと2人でこんなキレイな景色を観ながら傘を差して歩くなんて、
なんだか恋愛ドラマに出て来る恋人同士みたいで、いいじゃない?」
楽 ドキッ
カァァァ………。
楽 「ああ、そうだな………。」
楽 (ホントは、少し恥ずかしいんだけどな………。)
第1巻 第242話 完
このSSへのコメント