第1巻 第33話 アマミチ
5月も過ぎ去り6月、梅雨真っ只中
橘 万里花が予定より半年早い凡矢理への帰還を果たしてから2週間が経っていた
朝の電車の中
小野寺 「しかし、驚いたよねー。
千棘ちゃんとつぐみちゃんに続いて万里花ちゃんまで凡矢理に戻って来ちゃうなんて。」
集 「ショートカットの万里花ちゃんも、また良かったよね〜〜」
宮本 「集君、浮気は許さないわよ。」
鶫 「本田さんにもまた会いたいものだな。」
楽 「なー、今度みんなの都合が合う日に橘のマンションに遊びに行ってみねーか?」
集 「お!いいねー、それ。」
皆んなで橘の家に行く予定を立てて、その日の帰り道、楽はいつも通り専門帰りの千棘と合流して2人で帰っていた
ザーーーーーー
千棘 「あーーもう!何でこんなに降るのよ〜〜、天気予報には無かったじゃない!」
楽 「今は梅雨だからな………どうする?今日は俺も傘ねーし。」
千棘 「でも、このままじゃどんどん濡れちゃうし………あ!楽、あそこ!」
楽 「あ?なんだよ………って、え?あそこって………」
楽達は3年前に雨宿りしながら、林間学校の写真を見せ合った公園を見つけた。
楽 「ふー、とりあえずここで雨が止むか弱くなるまで待つか。」
千棘 「そうね。このまま帰ってたらますますズブ濡れになっちゃうし………」
楽 「……………………」
千棘 「?どうしたの?人の方じーっと見つめて」
楽 「あ、いや……」
そう言う楽は何処か顔も赤かった。
千棘 「…………ハッ!」
千棘は楽の視線を辿って自分の胸元を見てみると、服が雨で透けて、下着が薄っすら見えてしまっている。
千棘 「もう、エッチ!」
楽 「ご…ごめん!すぐに言おうとしたんだけど………」
楽は顔が真っ赤になっていた。
楽 「ホ…ホラ!これ着ろよ。そのままじゃあ、風邪引くだろ。」
楽は自分の上着を千棘に差し出した。
千棘 「ありがと」
スッ
千棘は楽から貸してもらった上着を羽織ると、ベンチから腰を上げて楽のすぐ隣に座り直した。
雨で濡れていたからか、さっきまで座っていた場所にはお尻の形をした後が残ってしまっている。
千棘 カァァ………………
楽 「………………………」
楽と千棘はお互い黙り込んでしまった
千棘 「昔も、こんな事あったよね。」
楽 「え?」
千棘 「ほら、林間学校の写真を見せっこしたあの高1の日、」
楽 「ああ、あったなそんな事も。」
千棘 「あの時、私言ったよね?」
千棘 「え?「このニセモノの恋人ってのも、案外悪くないかも」って。」
楽 「ん?ああ!あったなそんな事、あん時は俺をよくもからかって……」
千棘 「アハハ……ゴメンゴメン。」
千棘 「でも………」
楽 「あ?」
千棘 「あの頃はあんなに嫌いだった人が、今では私の本当の彼氏なんだなあ………って」
楽 ドキッ
楽と千棘はお互いに頬を赤らめた
楽・千棘 ドキドキドキドキ………
楽 「………今しても、雨の味しかしねーと思うけど」
千棘 「それでもいーよ私は、楽とならね。」
スッ チュッ
2回目の口づけをした楽と千棘はその2時間後、雨の止んだ空の元手を繋ぎながらスペクトル凡矢理に帰宅しました。
第33話 完
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