第1巻 第197話 ショート
2017年10月17日(火) PM:16:00
弥柳宅(みやなぎたく)
弥柳 「それじゃあ、
昨日のイチゴ狩りでイチゴの調達も終わった事だし、
今日から本格的な調理の練習を始めます。」
小咲 「はーい。」
小咲は、その日の佐張大学(さわりだいがく)の講義が終わった後に、蓮の家の厨房で大学祭のケーキ屋で出すケーキの料理の練習に来ていた。
弥柳 「じゃあ今日はまずは、
ショートケーキから作るよ。」
小咲 「はい。
あれ?でも、まずはレシピから作らなくていいの?」
弥柳 「ああ、それなら大丈夫。
すでに俺が作っておいた。」
パラッ
蓮は、自作したレシピ表を見せた。
小咲 「さっすが〜〜………。」
そして、2人(ふたり)はショートケーキの調理練習に取り掛かり………
小咲 「弥柳くん、スポンジケーキが焼けたよ!」
弥柳 「火の通りが甘い!
あと、5〜6秒長く焼くように!」
小咲 「はい!」
小咲 「うーん………
最初にクリームを混ぜた日より、
なんだか上手く混ざらない………。」
弥柳 「かき混ぜ方が甘い!
もっと力強く、ボウル全体のクリームを混ぜて!」
小咲 「弥柳くん、ケーキに乗せるイチゴはこれでいい?」
スッ
小咲は、自分が包丁で切ったイチゴを蓮に見せた。
蓮 「左側のイチゴの方が、少しだけ大きいよ。
俺たち菓子職人(パティシエ)は、どんなお客さんにも平等で無くてはならないんだ。」
小咲 「はい、ごめんなさい………。」
そして、調理は進み………
小咲 「出来たー!」
弥柳 「ふーー、やっと完成したね。」
小咲と蓮は、自作のクリームと自分達で取って来たイチゴを上に2個乗せた、
ショートケーキを完成させた。
弥柳 「しっかし小野寺さん、
あんた、こんなに盛り付けが上手かったんだな。」
小咲の盛り付けにより、ショートケーキは美しく整っていた。
小咲 「昔から、盛り付けだけは得意だったんです。
それ以外は、まだまだだけど………。」
弥柳 「今日も付き合ってくれてありがとう。
それと………悪かったな、厳しくし過ぎて。」
小咲 「とんでもない!
私がまだまだなだけだし………
弥柳君の、お客さんに商品を作る責任感もとっても伝わって来たし、
それに………」
弥柳 「それに?」
小咲 「普段は優しい弥柳君の、
真剣で必死な一面も見れて、なんだか良かったです。」
ドキッ
小咲の言葉に、蓮はドキッとした。
弥柳 「別に、俺は優しくなんては無いと自分では思うけどな………。」
小咲 「そんな事無いよ。」
アハハ………
小咲 (料理してる時の弥柳君、ホントに真剣な顔で生き生きとしてたな………。)
小咲 「それにしても、今日は楽しかったな。
私、友達が作ったレシピのお菓子を作ったのなんて、初めてだったし。」
蓮 「?あんた、今まで自分でレシピを作った事も無かったのか?」
小咲 「うん。
盛り付け以外は下手くそだから、まずは本に載ってる様なお菓子から作ろうと思って。」
蓮 「………なら、このショートケーキをあんたのレシピの1号にしたらどうだ?」
小咲 「レシピの1号?私の?」
蓮 「ああ、
菓子職人(パティシエ)は大体、
自分のレシピをいくつも持ってる。
俺ももう数十もの自作の菓子のレシピを持ってるし、
俺がこの大学祭のケーキ屋のケーキ兼ねて、まずはケーキのレシピを作ってやるから、
慣れて来たら、自分でレシピも作ってみたらどうだ?」
小咲 「私だけのお菓子のレシピかぁ………。
なんだか、素敵。
分かりました。
弥柳君の考えてくれたこのショートケーキ、
喜んで私の洋菓子のレシピの第1号にします!」
第1巻 第197話 完
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