2019-04-27 06:49:19 更新

2017年10月16日(月) PM:15:00


佐張(さわり)イチゴ狩り場


弥柳 「悪いね小野寺さん、

平日の講義後に、文化祭の準備の為とはいえ、こんなところに呼んで。」


小咲 「いいよ別に。

でも良かったよね、後期の午後からは、

私も弥柳くんも、午後は講義を入れて無くて。」



その日の講義後、

午後の講義を入れていない小咲と弥柳は、

佐張(さわり)大学の近くのイチゴ狩り場に来ていた。


小咲はケガをしないように、

長めの服装に麦わら帽子という、

農家娘(のうかむすめ)の様な格好(かっこう)で来ていた。


弥柳 蓮は、小咲と同じく菓子職人(パティシエ)を目指す、

実は土星ゾウのバオと契約している、

土星属性の星神でもある、

黒い眉まで掛かるやや長めの黒髪に、

丸い優しげな瞳をした少年だ。



小咲 「でも、まさか大学祭に出すショートケーキに入れるイチゴの為に、

わざわざイチゴ狩りに来るなんてね………。」


弥柳 「一流の菓子職人(パティシエ)なら、

料理だけじゃ無く、食材の調達も自分でするものだからね。」


小咲 「弥柳君は、前にもここに来たことがあるの?」


弥柳 「もちろん。

ショートケーキを作る時は勿論(もちろん)、

イチゴを食材に使う菓子を作る時は、

毎回来てるぜ。」


小咲 「すごーい!

やっぱり弥柳君は、菓子作りにスッゴく本気なんだね。」



そして、小咲と蓮のイチゴ狩りは

始まり………


小咲 「弥柳くーん!

こっちの木に、イチゴが沢山なってるよー!」


弥柳 「どれどれ………少し見せてくれよ。」


ガサッ


蓮は、小咲が勧めた木になっていたイチゴの内1つを手に取って見た。


弥柳 「ああ、これはまだ完全に熟して無い。

まだ、取っちゃダメだ。」


小咲 「え?でも、もう真っ赤に見えるけど………。」


弥柳 「俺は今まで何100という果物を生で味見して来たからな。

果実の色と艶を見れば、

完全に熟してるかどうか大体分かるんだ。」


小咲 「へーー!

やっぱり弥柳君、すごーい!」


弥柳 「別に、そんなに大した事じゃないよ………

ほら、あっちの木はさっき見たけど、

大半の実がもう完全に熟してた。

行くよ。」


小咲 「はい!」



スタスタ………


小咲 (あれ?なんだか変だな。

私、男の子と話す時はいつももっと緊張するのに、

まるでるりちゃんや千棘ちゃんと話す時みたいに、普通に話せてる………。)


小咲 (一条君と話してると、

幸せだけどドキドキしちゃうし、

特に恋愛感情が無い、舞子君と話してる時ですら、

男の子だからって、どこか他人行儀に構えちゃうのに、

弥柳君とだけは、女の子の友達と同じ様に気取らずに話せてる………)



弥柳 「ほら、この木だ。」


小咲 「わぁ〜〜、なんだかこの木のイチゴたち、他の木のより熟してて美味しそうに見える。」


弥柳 「お!小野寺さん中々見る目あるじゃん。

じゃあ、俺がOKだって言った実だけを取って籠(カゴ)に入れてくれ。」


小咲 「は…はい!」



ガサ ガサッ


弥柳 「この実と………

あ!あの枝の端に生えてる2個もいいぜ。」


小咲 「はーい。」


スッ


グサッ


小咲 「いったーい!」


小咲は、イチゴを取ろうと手を伸ばした時、

枝の先で指をケガしてしまった。


弥柳 「おい、大丈夫か!?」


小咲 「大丈夫だよこのくらい、

ナメておけば治るよ………。」


弥柳 「よくねーよ!

料理人たる者、手は大事にしなきゃ!

ほら、絆創膏(バンソーコー)持ってるから、見せてみな!」


小咲 「う、うん………。」


スッ


小咲は手を出した。


ドキッ


小咲 (やっぱり、弥柳君は優しいなあ………

こういうところが一条君に似てるよね。

でも、なんでだろう?

一条君と違って、緊張したり、

ドキドキし過ぎたりしない………むしろ、

身近に感じて、あったかい………)


ペタッ


蓮は、小咲のケガした指に絆創膏(バンソーコー)を貼った。


弥柳 「ほれ、これでいいだろう。」


小咲 「うん。ありがとう………」


小咲 「弥柳くん………。」


ドキッ


小咲の例の言葉に、蓮はドキッとした。


弥柳 「と、とにかく!

もうショートケーキ作りに十分な量は揃ったから、俺が持ち帰って、

ウチの厨房の食材保存用の冷蔵庫に入れておくから、

小野寺さん、今日はありがとう。

また明日大学でな。」


小咲 「はい。

こちらこそ、今日は菓子職人(パティシエ)を目指す者として、いい経験になりました。」


第1巻 第192話 完





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