第1巻 第203話 コワガリ
2017年10月18日(水) PM:13:00
凡矢理遊園地
千棘 「ふーー、お昼美味しかったーー♪」
楽 「相変わらず、大食いだなお前………。
あんなデカ盛り弁当を、ものの数分で平らげちまって………。」
千棘 「何よ、悪い?
ご飯は命の元だもの、
たくさん食べて悪いわけなんて無いわ。」
楽 「へいへい。」
千棘 「それで楽、午後からはどこに行くの?」
楽 「そうだな………
午前中はお前が決めてばっかだったし、
次は俺が………
お、あそこなんてどうだ?」
千棘 「え?」
楽が入ろうと提案したのは、オバケ屋敷だった。
千棘 「オバケ屋敷?
楽、あんたこんなところに興味あったの?」
楽 「ああ、ちょっとな。」
楽 (ホントは、蛍のバドミントン部の出し物でオバケ屋敷もやるから、
その予行練習をしときたいんだけどな………。)
そして、楽と千棘はオバケ屋敷の受け付けまで行き………
店員E 「はーい。
オバケ屋敷一周で、お二人様で800円になりまーす。」
ガタッ
そして2人は、オバケ屋敷の扉(トビラ)を開けた。
千棘 「うぅ〜〜〜。」
ギュウッ
千棘は入ってすぐに、楽の腕にしがみついた。
楽 「おい千棘、あんまりしがみ付くなよ………。」
千棘 「だってだって、この中暗い上に狭いんだもん………。」
そのオバケ屋敷の中は、
電気が付いていない上に壁、床、天井全ての色が黒一色で統一されていて、
通路も狭かった。
暗所恐怖症、閉所恐怖症の千棘には大分キツいだろう。
楽 「仕方ねーな………
ほれ、手繋いでやるから。」
スッ
楽は千棘に右手を差し出した。
千棘 「うん、
ありがとう………。」
ガシッ
千棘は楽の右手を握って、楽と手を繋いだ。
そして、2人はオバケ屋敷の奥へと進み
………
ミイラ男 「ウガアーー!」
千棘 「キャアァァァーーッ!!」
ギュウウウゥッ
千棘は再び、楽に強くしがみついた。
楽 「いててっ!
千棘、いてーって!」
千棘 「だって………周りも暗いし狭いから、
尚更(なおさら)怖いんだもん………。」
楽 「んったく………。」
ギュッ
千棘 「ふえっ!?」
楽は、今度は千棘を抱きしめた。
楽 「少しは大丈夫になったか?」
千棘 「うん。
なんだか落ち着いてきた。
ありがとう、楽………。」
ドクン ドクン………
千棘には、楽の鼓動が伝わって来た。
千棘 (楽の心臓の音が伝わってくる、
なんだかあったかくて、気持ちいい………。)
楽 「よーし、さっさと進むぞ………」
スタスタ スタスタ………
ドラキュラ 「ガォーー!血を吸うぞーー!」
千棘 「いやーー!
血を吸われちゃうーー!
楽、助けてーー!」
ダッ
千棘は後ろに走り出した。
楽 「おいおい、落ち着けって千棘、
別に本物でもねーんだし………
って、うお!?」
千棘 「きゃっ?」
手を繋いだまま千棘が走り出したので、2人は転んでしまった。
ステーン
千棘 「いたた………。」
楽 「いてて………、
大丈夫か?千棘?」
千棘 「うん、大丈夫………。」
楽 ハッ
千棘 「?どーしたの楽、下の方をじっと見て………。」
ハッ
転んで尻餅(しりもち)をついた拍子(ひょうし)に、千棘のスカートがめくれて、白いパンツが丸見えになっていた。
千棘 「もう、エッチ!」
サッ
千棘はめくれた赤いスカートを直して、
パンツを隠した。
楽 「わ、わりぃ!」
楽は顔を真っ赤にして、目線をそらした。
千棘 「見えてるなら見えてるって、
ちゃんと言ってよね!」
楽 「わりぃ、とっさだったもんで………。」
千棘 「でも、ここはこんだけ暗いし、
あんた以外に見られる事は無いのか………。」
楽 「え?」
千棘 「な、なんでも無いわよ!」
楽 「しかし、お前そんなんで
出口まで行けんのか?」
千棘 「うーん………
確かに、ここ結構怖いし………。」
楽 「………しかたねーな。」
ガバッ
千棘 「ふえっ!?」
楽は千棘を持ち上げて、お姫様抱っこした。
千棘 「ら、楽!?あんたいきなり何を………?」
千棘は顔を真っ赤にして楽に尋ねた。
楽 「お前がそんなに怖がってんなら、
手を繋いでもさっきみたいにコケるかもしれねーから、中々出口までたどり着けねーだろ?」
千棘 「で、でも………
この中は暗くてあんまり見えないけど、
他のお客さんも見てるし、
は、恥ずかしいよこんなの!」
客A 「お、見ろよあそこのやつ、
彼女をお姫様抱っこしてるぜ。」
客B 「若いねー。」
楽 「俺だって恥ずかしいんだよ!
出口まで、我慢しろよ!」
千棘 (まったく………
こんな事になるなら、心の準備くらいさせてくれってのよ………。)
そして、千棘は楽に数100m(メートル)もの間お姫様抱っこされて、オバケ屋敷の出口までたどり着きました。
第1巻 第204話 完[link_ssmatome: SSまとめ速報作品URL ]
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