第1巻 第206話 メンズノ
2017年10月19日(木) 16:00
LAB(ラボ) ファッション学園
デザイン科 1年教室
先生 「それでは、
今日の授業はここまででーす。
皆さん、気を付けて帰るようにー。」
生徒一同 「はーい。」
ガタッ
倉持 「千棘ちゃーん、一緒に帰らない?」
千棘 「あ、ゴメン綾ちゃん。
私、学祭で出すお洋服のアイデア、
今日も学校に残って考えたいんだ。」
スッ
千棘は、ファッションデザインのアイデアを纏める為の、スケッチブックをカバンから取り出して机の上に広げた。
綾 「今日も?
千棘ちゃん、ここ最近毎日学校に残って考えてるじゃん。」
千棘 「うん。
だって、出来るだけたくさん、
いいお洋服のアイデアを、自分で考えたいんだ。」
綾 「頑張るねぇ〜〜、千棘ちゃんは。
ウチのクラスで出す服は、
1人最低1つ出せばいいのに。
千棘ちゃんは頑張り屋さんだよ。」
千棘 「えへへ………
ありがと、綾ちゃん。」
綾 「私、千棘ちゃんが終わるまで、
待ってるよ!」
ガタッ
綾は千棘の隣の席に座った。
千棘 「綾ちゃん………ありがと!」
カキカキ カキカキ………
綾 「………千棘ちゃん、メンズの男の子の服のアイデアばっか描いてるね。
レディースの女の子の服のアイデアは描かないの?」
千棘 「え?
う、うん………。
私、小さい頃から鶫(つぐみ)に似合う、
女の子っぽい服ばっかり考えて、あの子に勧めて来たから、
この学校に来てから、男の子の服も考えたくなったの。」
倉持 「なるほど………
頑張って!」
千棘 (ホントは、楽に似合う服を考えて、
あいつに着て欲しいんだけどね………。)
カキカキ………
倉持 「………ねえ、千棘ちゃん。
異性の人の服のアイデアを考えたいなら、
いい方法があるよ。」
千棘 「え?」
倉持 「千棘ちゃん、大好きな彼氏さんがいるんでしょ?
ならちょうどいいよ!
その人が、どんな服を着たら似合うかイメージするの。
それだけ大好きで、長い間一緒にいた人なら、
その人に似合う服もイメージしやすいでしょ?」
千棘 「なるほど………
楽に似合う服かぁ………。」
その日の夜、スペクトル凡矢理 705号室
千棘 「ねえ、ダーリン。
ちょっとコレ着てよ。」
スッ
楽 「はぁ?」
千棘が、楽に着るように勧めたのは、
黒一色の長ズボンだった。
楽 「なんだそのズボン?
カジュアルだな………。」
千棘 「えへへ………
カッコいいでしょ?
私、今日は遅くまで学校に残って、
この服を作ったんだからね!」
楽 「この服、お前が自分で作ったのか?」
千棘 「もちろん!
LAB(ラボ)の学祭で私が売りに出す、
私のアパレルオーダー第2号よ!」
楽 「でも、いいのか?
コレ、店に売りに出すんだろ?
俺が着て………。」
千棘 「それは大丈夫よ!
私、LAB(ラボ)で先生に提出する分と、
あんたにあげる分、
2つを作ってきたから!
それで、こんなに帰りが遅くなったんだけどね。」
アハハ………
楽 「なんでわざわざ2つも………?」
千棘 (あんたに似合うズボンを必死で考えてたから、
あんたに真っ先に着て貰いたかったからよ………。)
楽 「まあいいや、着て来るわ。」
ガチャ
楽は、着替える為に自分の部屋に入った。
1分後
楽 「ほれ、コレでいいか?」
千棘 「わぁ〜〜………。」
千棘がデザインした黒い長ズボンを着た楽は、
普段から服装に気を使う千棘と違い、
いつも地味な特徴の無い服を着ている
彼の服装と違い。
一層(いっそう)、カジュアルに見えた。
千棘 「カッコいいよ、楽!」
楽 「お、おう………。」
楽 (千棘が俺の事をカッコいいって言うなんて、珍しいな………。)
第1巻 第206話 完
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