第1巻 第227話 コオロギ
? 「チリーン ジジジ………」
楽と千棘が聞いた鳴き声を教室の中で出していたのは、黄色い光を纏った、コオロギだった。
千棘 「なに?この子。」
楽 「黄色い光出してるぞ?
金星属性の星獣(せいじゅう)か?
でも、俺もお前も星匣(ほしはこ)光らなかったよな?」
レオン 「それは、「金星コオロギ」だよ。
楽。」
楽 「あっ、レオン!」
シルフ 「まったく………
やっと説明出来そうね。」
千棘 「シルフ!
あんた、この子の事知ってたの?」
レオン 「うん。
千棘ねえ、金星コオロギは電気をエサにする電気寄りの金星属性の星獣で、
人気の無い夜に現れて建物の電線なんかから、電気を食べるんだ、
電気しかエサにしなくて、
人を襲って星の光を奪わない星獣だから、
星匣も光らなかったんだよ。」
楽 「そんな星獣もいるのか………。」
千棘 「ん?ちょっと待ちなさいシルフ、
て事はあんた、私が怖がってるのに、
この子の正体をずっと黙ってたの?」
レオン&シルフ 「それは………
キミ(あんた)達が虫の鳴き声の解明に夢中で、ボク(あたし)達の話を全然聞かなかったからでしょ!」
楽&千棘 「ごめんなざい………。」
楽 「悪かったなレオン、話を聞かなくて。」
千棘 「私もよ。
ゴメンねシルフ、怖くて気が動転してて、
あんたの話を聞かなくて。」
シルフ 「分かったならいいのよ。」
金星コオロギ 「チリーン」
パアァァ………
楽&千棘 「!?」
金星コオロギは、黄色い鱗粉のようなものを巻いた。
楽 「なんだコレ?
こいつの攻撃か?」
レオン 「違うよ楽、金星コオロギは楽達に星の光を分けてくれたんだ。」
千棘 「えっ?
この子、そんな事出来るの?」
シルフ 「ええ。
金星コオロギは人前に出る事は珍しいから、
あんた達にお礼がしたかったんでしょうね。
星光値(せいこうち)が、僅かだけど上がる筈よ。」
千棘 「そっか………
ありがとね、金星コオロギちゃん。」
ナデナデ
千棘は金星コオロギの頭を撫でた。
千棘 「あ、そうだ楽、すっかり忘れてた!
私の教室行くわよ!」
楽 「あ!そうだった!
じゃあな金星コオロギ。
星の光を分けてくれて、ありがとな!」
タタッ
楽と千棘は、金星コオロギのいた教室を後にして、千棘の教室に向かった。
デザイン科 1年の教室
千棘 「あったー!
私のファッションの資料だーー!」
楽 「良かったな。
早く帰ろうぜ千棘。
急がねーと、終電が来ちまう。」
千棘 「そうね。
………ねえ、楽。」
楽 「あ?」
千棘 「ありがとう。
あんたについて来て貰って、やっぱり良かったわ。」
楽 「お、おう。
そうか………?」
千棘 「今日はただの無害な星獣だったけど、
もし凶暴な星獣や星神が現れても、
きっとあんたは、いつも通り私を守ってくれた。
いつもありがとう。」
スッ
チュッ
楽 「!」
千棘は、楽の頰(ほお)にキスをした。
楽 「お、おう………。
これからも、いつでも俺が守ってやるからな………。」
その後、楽は千棘の唇の感触が頰(ほお)に残る中、電車でスペクトル凡矢理まで、
千棘と手を繋いで帰りました。
第1巻 第227話 完
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