第1巻 第111話 ベロベロ
2017年9月27日(水) PM:21:30
扇谷(おうぎや) 凡矢理店
楽 「ふーー、呑んだ呑んだ〜〜。
千棘と2人で外で呑んだのなんて始めてだったな〜〜〜。
今日はデートだったから2人きりだったけど、今度小野寺や集達も連れて来てみてーなー………」
千棘 ムニャ
すっかりお酒に酔い潰れ、楽の隣の席で座布団を枕にして眠っていた千棘が動いた
楽 「ん?ああ、千棘お前やっと起きたのかよ。全く、幾ら2人での初呑みだからってあんなに浴びるみてーに呑むから………」
千棘 「………ねぇダーリン。私、女の子っぽくなったよね?」
楽 「は!?」
千棘 「いやだから。私、あんたの前でも淑女らしいテーブルマナーで食べる様になって、少しは女らしくなったのかって聞いてんのよ!?」
千棘 「なったの?なってないの?
ねーー!!どっちなのよ!?」
楽 「何だよいきなり?そりゃ、お前は前より大分女の子らしくなったとは思うけど………!」
ハッ
楽は今から約2ヶ月前、大学が夏休みに入り実家に里帰りした初日の宴会の夜に起こった出来事を思い出していた
楽 「………ち…千棘…お前もしかして………あのウチでの宴会の時みたいに………酔ったのか?」
千棘 「えへへ………えへへへへ…………」
案の定(あんのじょう)、楽の予想道り千棘は顔を真っ赤に赤らめて、笑顔で楽の方を見つめていた
レオン (あーもう………やっぱりこうなったかぁぁ………)
楽 (な!レ…レオン!?)
現状に動揺し切っていた楽に、頭の中でレオンが星の光のテレパシーで話しかけて来た
レオン (楽、キミさぁ………あの夏のキミの実家に帰った初日の宴会での皆んながお酒を飲んで寝ちゃった後の事、忘れちゃったの?)
楽 (な!うっせーな!だってしょうがねーだろ!?千棘がこんな………俺の為に色々としてくれたんだから………そんな事すっかり頭から離れちまってたよ。)
レオン (全く………幾ら彼女と初呑みだからってデレデレしちゃって………)
楽 (で、どーすんだよレオン!?あの時みたいに千棘を止める手は何かねーのか?)
レオン (それはまだボクも思いつか無いよ!
だって千棘姉(ねえ)は鶫姉(ねえ)と同じくらい怪力だし………幾ら楽の筋力と星体技(せいたいぎ)が上達したからって、今の楽じゃあまだ本気の千棘姉(ねえ)には敵わ無いよ!)
楽 (んなっ!?考えてみればそーだよな………俺がこのゴリラ女相手に………)
千棘 「楽ぅぅ〜〜〜〜」
ギュッ
楽 「ななっ!?」
楽がレオンとテレパシーの会話で千棘を止める策を練っていると、千棘は楽に抱きついて来た
楽 「ちょっ!止めろよお前………この店も他のお客さんが見てるんだぞ?」
千棘 「いーじゃんそんなの〜〜〜♪
むしろ私達のラブラブっぷりを見せつけてやろーよ〜〜〜、ダーリン♪」
グイッ ムニュッ
楽 「んなっ!?」
千棘は楽の方に体を乗り出し、抱きついて来た
まだ9月下旬で残暑が抜け切ってい無い時期の為、彼女は胸を少し露出させた上着に下はホットパンツという露出度の高い服装をしている。
その半分露出した胸が楽の体に当たって来た
楽 「おいおい………!さっき、他のお客さんに見られたら恥ずかしいって言ったのはお前の方だろ!?
幾ら酔っ払ってるからって………」
千棘 「いーじゃないいーじゃない♪
あ、そうだダーリン、またキスしよーよ〜〜〜♪」
楽 「おいおいだから………ん?」
楽が千棘の過剰なスキンシップを星体技(せいたいぎ)で腕力を強化した両手で押さえて止めていると、再び頭の中でレオンから星の光のテレパシーによる会話の着信があった
レオン (楽!色々考えてみたけど、一つだけ方法が思いついたよ。)
楽 (え!?そんなんあるのか?今日は前の時みたいに蒼也もいねーんだぞ!?)
レオン (あの時は蒼也兄(にい)が弓の札(ユミノフダ)で酔った皆んなに麻酔針を撃ってくれたんだよね………アレとは少し違う方法だけど、可能性はあるよ!)
楽 (で、その方法ってどんなんなんだ!?)
レオン (楽、あのパピヨンコクーンのオバさんと戦った時、あいつの木星の光を粉で被って動きが鈍ったでしょ?)
楽 (ん?あ!ああ………あのレイナとかいうオバさんと戦った時か………で、それがどうしたんだ?)
レオン (楽もあの時みたいに、自分の太陽の光を千棘姉(ねえ)に注ぎ込めばいいんだよ!
月の属性の千棘姉(ねえ)はそれで体の動きがニブる筈だから!)
楽 (なるほど………え?でも俺、あのオバさんや蒼也みたいに相手に星の光を注げるタイプの星札なんてもってねーぞ?)
レオン (だからね……………こうするんだよ。)
楽 (んなっ!?)
千棘 「ダーリン!さっきから何レオ君とテレパシーで会話ばかりしてるの〜〜〜?
早くまたキスしよーよ〜〜〜」
楽 「ひいっ!」
楽 (くそっ!こんな公衆の面前でやるのは恥ずかしいってさっき分かったばっかだが………やるしかねぇ!)
スッ グビッ
楽は水の入ったコップを一気に飲み干し、その水を口の中に溜めた そして………
ガッ
千棘 「ふにゃっ!?」
口に水を含んだまま、楽は千棘の両肩を掴んだ
楽 「悪りぃ千棘!お前の了承無しでやるが………お前の酔いを覚ます為には今はこれしかねぇんだ!」
チュウ
楽は千棘にキスして、そのまま口に含んでいた水を一気に千棘の口内に流し込んだ。
いわゆる………口移しという奴だ。
スーーー〜〜 ジワ〜〜〜
千棘の口の中には水の他に
いや、水を通して流し込まれた物がもう1つあった
千棘 「ムニャムニャ………ん?」
千棘は酔いを覚まし、正気を取り戻した。
千棘 「……………アレ?あたしどうしてたの?
って、ええっ!なんであたし服がハダけてんのよ!?」
そう、楽は自らの太陽の光を口の中で水に移し替えて、それを更に千棘の口の中に口移しで渡したのだ。
千棘の月の光に太陽の光を混ぜて、千棘の体の動きを鈍らせる為に。
楽 「何とか上手く行ったみたいだな………良かった………」
千棘 「ら…楽!?どーゆう事よコレは!?
まさかあんた、私が酔って眠ってる隙(スキ)に寝込みを襲おうと………」
ゴゴゴゴ……………
楽 「んなっ!?ちげーよ!実は……かくかくしかじかでなあ………」
楽は千棘に千棘が眠ってからの一部始終を説明した
千棘 「なぁんだ、そういう事だったのかぁ………結局また、私が酔っ払ってあんたに迷惑かけちゃってたのかあ………」
楽 「そうだな………ってえ!?」
千棘 「ん?どーしたの楽?」
楽 「いや………お前の事だから、「どんな理由があろうとも、1日に2回も公衆面前でキスなんて許さない!」とか言うとばかり………」
千棘 「な!?あんた私の事、そんな恩知らずな女の子だと思ってた訳!?」
楽 「あ!いや、そういう訳じゃねーけど………」
千棘 「………しないわよ。」
楽 「え?」
千棘 「………昔と違って今の私はもう、あんたの「ホンモノ」の恋人だもの。
酔っぱらってたのを助けてくれたあんたに文句を言ったり殴ったりしてたら………「ニセモノ」だった頃と何も変わら無いもの。」
楽 「………千棘、お前………」
楽は千棘が変わる為に努力したと改めて感じ、まだ酔いが覚め切ら無いまま、スペクトル凡矢理に2人で戻って行きました。
楽と千棘の半年記念日まであと、9日
第1巻 第111話 完
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